(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085610
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】クラスIIハイドレート貯留層を変換するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
E21B 37/06 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
E21B37/06
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-538801(P2014-538801)
(86)(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公表番号】特表2014-532822(P2014-532822A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】US2012057196
(87)【国際公開番号】WO2013066527
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】13/285,936
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルシェウスキー、ジョン ティー.
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−293219(JP,A)
【文献】
特表2008−510085(JP,A)
【文献】
特開2009−030378(JP,A)
【文献】
特開2010−261252(JP,A)
【文献】
米国特許第03310110(US,A)
【文献】
米国特許第05002127(US,A)
【文献】
米国特許第03386514(US,A)
【文献】
特表2009−530468(JP,A)
【文献】
特開平11−157908(JP,A)
【文献】
特開平03−079690(JP,A)
【文献】
特表2003−506527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
E21C 25/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動帯水層を下に横たえた地表下クラスレート層の生産性を改善する方法であって、
該可動帯水層に近接する深さにまで掘削孔を穿つこと;及び
該可動帯水層に材料を注入することを含み、該材料と注入される量は、該材料が孔空間
を通過してクラスレート層の下にあるバリアーを形成し、該可動帯水層からの液流がクラ
スレート層と接触するのを実質的に妨げるように選択される、
上記方法。
【請求項2】
バリアーを形成するための注入の後、クラスレートの少なくとも一部に解離を誘導して
流体材料を生産し、及び
クラスレート層内に穿孔した掘削孔又は追加の坑井を介して流体材料を生産することを
さらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記誘導がクラスレートの前記一部に阻害剤を添加することを含む、請求項2記載の方
法。
【請求項4】
前記誘導がクラスレートの前記一部に熱を適用することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記誘導がクラスレートの前記一部の領域で圧力を制御することを含む、請求項2記載
の方法。
【請求項6】
前記材料が硬化性材料を含み、地表下クラスレート層からの生産に先立って、該硬化性
材料を硬化させる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記硬化性材料がさらに、該硬化性材料の硬化時間を遅延させるように選ばれた遅延剤
を含み、遅延剤の非存在下での硬化性材料の拡散に比べて、材料の注入部位からの材料の
拡散が硬化前に増加する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記硬化性材料が可動帯水層に存在する流体よりも低い平均密度を有する、請求項6記
載の方法。
【請求項9】
前記硬化性材料が、セメント、セメントスラリー、発泡セメント、及び中空の球状領域
を含むセメントからなる群から選ばれる材料、又はそれらの組み合わせを含む、請求項6
記載の方法。
【請求項10】
前記材料が、可動帯水層中の水と結合してクラスレート層の下にハイドレート層を形成
するように選択されたハイドレート形成材料又は材料の組み合わせを含み、形成されたハ
イドレート層はクラスレート層の安定性よりも高い安定性を有する、請求項1記載の方法
。
【請求項11】
可動帯水層を下に横たえる地表下クラスレート層の生産性を改善するための装置であっ
て、
帯水層中に末端部分を位置させることのできるドリルストリング;
該ドリルストリングの外壁中の複数の開口部であって、末端部分を帯水層に位置付けた
ときに、開口部がクラスレート層から帯水層を分離する境界領域の下に位置付けられるよ
うに位置付けられた上記開口部;及び
開口部を通して注入可能な材料の源であって、該材料と注入される量は、該材料が孔空
間を通過するのに適合し、クラスレート層の下にあるバリアーを形成し、該可動帯水層か
らの液流がクラスレート層と接触するのを実質的に妨げるように選択されるものである、
上記装置。
【請求項12】
開口部のより遠い末端部分を通る液流速が開口部のより近い末端部分を通る液流よりも
大きくなるように開口部が配置され配列されている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
バリアー材料の方向性のある注入を可能とするために、開口部をドリルストリングの特定の側だけに位置づけている、請求項11記載の装置。
【請求項14】
ドリルストリングが別々の流体流路を含み、材料の源が該別々の流路に複数の様々な材
料を提供するように配置され、ドリルストリングがさらに混合領域を含み、該複数の様々
な材料が開口部を通過するのに先立って混合領域で混合するようになっている、請求項1
1記載の装置。
【請求項15】
クラスレート層内のドリルストリングの外壁に複数の生産開口部をさらに含み、クラス
レート解離誘導材料の源が該複数の生産開口部を介して該クラスレート解離誘導材料を注
入するように配置されアレンジされている、請求項11記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にクラスレート貯留層(包摂化合物リザーバー)の開発に関し、より詳細にはクラスレート貯留層の復元可能性を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
クラスレート(包摂化合物)は1種以上の化合物又は元素(ゲスト)の1個以上の分子が、他の化合物(ホスト)の結晶格子内の1つ以上のキャビティ(空洞)を満たす物質である。結晶格子が水分子から形成されているクラスレートは通常ハイドレート(水和物)と呼ばれる。本発明の局面は、ゲスト分子が1種以上の気体である一般にあらゆる種類のクラスレートに関し、以下これをガスクラスレート(気体包摂化合物)という。本発明の目的のために、「クラスレート」という用語はあらゆる種類のガスクラスレートを指すものと理解されるべきである。炭化水素探査と開発の分野では、対象となるクラスレートは一般には、ゲストが1種以上の炭化水素ガスであり、ホストが水分子であるクラスレートである。これらはまた、天然ガスハイドレートと呼ばれることもあり、メタンハイドレートが例として挙げられる。それらは例えば、深海や永久凍土層領域を含む低温及び/又は高圧環境に見出すことができる。
【0003】
クラスレート貯留層は3つのクラス系に分類される。クラスI貯留層は、遊離ガス貯留層が下に横たわり、遊離ガス貯留層と流体連結しているクラスレートである。クラスII貯留層は、可動帯水貯留層が下に横たわり、可動帯水貯留層と流体連結しているクラスレートである。クラスIII貯留層は比較的透過性の低い層を下に横たえるクラスレートである。クラスI貯留層は一般に、例えばクラスレート貯留層を貫いて遊離ガス貯留層へと通じる1基以上の生産井を穿設することにより炭化水素を生産することが比較的容易であると考えられる。この方法により、炭化水素が生産されるにつれて、遊離ガス貯留層の圧力が下がり、この圧力低下が最終的に、クラスレート貯留層が特定の種類のクラスレートについてもはや相安定領域でなくなり、解離(クラスレートの水と気体(単数又は複数)への分離)が始まる程度にまで、上層のクラスレート貯留層の圧力低下を引き起こす。放出されたガスは実際、下層の遊離ガス貯留層を再充填し、貯留層からの生産を延長する。残念なことに、クラスI貯留層は比較的稀である。可動帯水層が上層のクラスレート貯留層内の圧力を比較的高く保ち、解離に干渉するか解離を妨げるように作用するので、一般にクラスII貯留層は、炭化水素を生産することはずっと難しくなると考えられる。クラスII貯留層は比較的普通に見られる。一般に、クラスIII貯留層はクラスI貯留層と同様に、開発することは比較的容易であると考えられる(例えば、クラスIII貯留層からの生産を記載する米国特許第7,537,058号明細書参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、クラスII貯留層をクラスIII貯留層に変換して、そこから炭化水素を生産する能力を改善することが有用であると決定した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の一局面は、可動帯水層を下に横たえた地表下クラスレート層の生産性を改善するための方法を包含し、該方法は該可動帯水層に近接する深さにまで掘削孔を穿ち、該可動帯水層に材料を注入し、その材料が孔空間を通過してクラスレート層の下にあるバリアーを形成し、該可動帯水層からの液流がクラスレート層と接触するのを実質的に妨げるようにすることを含む。
該方法は、クラスレート層の少なくとも一部において解離を誘導して流動性材料を製造し、掘削孔を介して、又はクラスレート層に穿孔した追加の坑井を介して該流動性材料を製造することを含んでもよい。
【0006】
本発明の態様の一局面は、セメント、セメントスラリー、エポキシ、すなわち始めは液体である材料を注入するか載置することを含んでもよい。この材料の物理的状態は、a)上層のクラスレート貯留層と下層の可動帯水貯留層との間の界面での又はその近傍での載置又は注入、及びb)広い領域を覆うためのそのような材料の放射状の拡散を容易にする。これらの材料は最終的には物理的状態を液体から固体へと変化させ、それにより上層のクラスレート貯留層と下層の可動帯水貯留層との間の比較的不透過性のバリアとなる。
【0007】
本発明の態様の他の局面は、1種以上のゲスト分子を注入するか又は載置するためのシステムを含んでもよい。このゲスト分子としては、例えば、エタン、プロパン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が挙げられるが、これらには限定されない。これらはすなわち下層の可動帯水貯留層と接触し、上層のクラスレート貯留層より高温で、及び/又はより低圧で存在することができるタイプのクラスレートを形成するゲスト分子であり、上記と同様にa)上層のクラスレート貯留層と下層の可動帯水貯留層との間の界面での又はその近傍での載置又は注入、及びb)広い領域を覆うためのそのような材料の放射状の拡散を容易にする。これらの材料は最終的には水とガスの混合物からクラスレートへと変化し、それにより上層のクラスレート貯留層と下層の可動帯水貯留層との間の比較的不透過性のバリアーとなる。
【0008】
態様の一局面は、先述の方法のいずれかを実施するためのシステムを含んでもよい。
【0009】
本発明の態様の局面は、先述の方法のいずれかを実施するための、及び/又は先述のシステムのいずれかを制御するためのコンピューターで実行可能な指示でコード化されたコンピューターで読み取り可能な媒体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書に記載された他の特徴は、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を読めば当業者には、より容易に明らかとなるであろう。
【0011】
【0012】
【
図2】
図2はクラスI貯留層における生産方法の図式的説明である。
【0013】
【
図3】
図3はクラスII貯留層における試行生産の方法の図式的説明である。
【0014】
【
図4】
図4はクラスIII貯留層における生産方法の図式的説明である。
【0015】
【
図5】
図5は本発明の実施態様に従ったクラスII貯留層を改善する方法の図式的説明である。
【0016】
【
図6】
図6は本発明の実施態様に従ったクラスII貯留層に示された生産装置の実施態様の図式的説明である。
【0017】
【
図7】
図7は本発明の実施態様に従ったクラスII貯留層に示された生産装置の他の実施態様の図式的説明である。
【0018】
【
図8】
図8は本発明の実施態様に従ったクラスII貯留層に示された生産装置の他の実施態様の図式的説明である。
【0019】
【0020】
【
図10】
図10は本発明の実施態様に従ったクラスII貯留層に示された生産装置の他の実施態様の図式的説明である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
図1は海底下又は地表10下の領域を交互に表す地表下領域を図式的に説明する。地表下クラスレートについては、クラスレート安定ゾーン12を定義することができ、そこでは温度及び圧力条件が特定のクラスレートの形成に好ましいものとなっている。このゾーンは底部14により規定され、特定の深さで直線として説明されてはいるが、これはその領域を横切る特定の条件によって変化するある範囲の深さとしてより広く理解されるべきである。一般に、底部14の下では、ホスト分子がその結晶構造を喪失し、そのためゲスト分子をリース(lease)するので、特定のクラスレートの形成と安定性にとっては温度が高すぎるか、及び/又は圧力が低すぎる。
【0022】
地表下領域内では、貯留層タイプの4つの例が説明される。ガス22を含む遊離ガス貯留層20は底部14の下の領域に示されている。図示してはいないが、このようなガス貯留層は、シェール(頁岩)層又はトップシール24を形成する塩層のような、非透過性の(すなわち、より正確には透過性の低い)層の存在により垂直の動きが制限されるであろう。このタイプの遊離ガスは当業者により理解されるような既知の方法に従って生産することができる。
【0023】
クラスI貯留層26は底部14と重なる領域に示されている。このタイプの貯留層では、炭化水素貯留層が部分的に安定ゾーン12内に、部分的に底部14の下に横たわる。底部14の下には、貯留層が遊離ガス22を含み、その上にクラスレート28を含む。
図2で説明されるように、遊離ガスは一般に遊離ガス領域内に穿孔を開けること40により従来の方法で生産することができる。ガスを除くにつれ、結果としてクラスレート28の底部の圧力が低下し、これにより格子構造に変化をもたらし、クラスレート28に捉えられたガスの少なくとも一部を放出させ、継続的な従来の生産のための遊離ガス貯留層を再充填させる。同様に、熱(例えば、熱流)が外部熱源から、又はより深い、より熱い遊離ガス層の熱からクラスレートに追加され、及び/又は化学クラスレート阻害剤をクラスレートの解離速度を上げるために注入することができる。
【0024】
底部と重なる同様の領域で、クラスII貯留層30が
図1に示されている。クラスII貯留層30では、クラスレート28の下には遊離ガス貯留層ではなく、むしろ一般的に可動性の水を含む帯水層32が横たわる。
図3に説明されているように、帯水層44に又はクラスレートに穿孔を開けること42により試行生産を行うことができる。いずれの場合も、ポンプ43を用いて貯留層から水を汲み上げることにより圧力を下げる試みは、さらなる水が周囲の領域から生産ゾーンに入ることにより、一般に行われる。同様に、解離を起こす試みで加えられた阻害剤及び/又は熱は水に吸収され、分散される。貯留層内の水は可動性であるため、対流によりクラスレートから大量の熱及び/又は阻害剤を除去することができ、クラスレートを加熱又は阻害する効率を制限する。
【0025】
底部14の上の領域では、クラスIII貯留層34が示されている。このタイプでは、貯留層全体は、遊離ガスや水なしでクラスレート28からなる。低透過性トップシール24に加えて、低透過性ボトムシール36が存在する。システムは実質的に閉鎖されているので、クラスレート‐阻害材料の減圧及び/又は加熱及び/又は注入はクラスII貯留層におけるよりも生産の見込みがより高いことが示される。
図4に示すように、貯留層はクラスレートに直接穿孔46を開け、例えばポンプ43を用いて圧力降下を引き起こし、引き続いてクラスレートの解離を開始し維持し、得られる遊離ガスを生産することにより開発することができるであろう。クラスIII貯留層での生産に適したクラスレートのそのような生産方法の一つは、米国特許第7,537,058号に記載されており、これは参照することによりその全体が本明細書に取り込まれるものとする。
【0026】
この点で、本発明はクラスII貯留層がクラスIII貯留層と同様に振舞うようにクラスII貯留層を変更することが価値のあることであると決定した。
【0027】
図4はクラスII貯留層を改良する方法を説明する。帯水層ゾーン32を穿孔する48。好ましくはドリル端50は帯水層32のちょうど内部に、クラスレートと帯水層の間の境界の比較的近くに位置づける。岩石の孔を通って流れ、境界の領域にバリアーを形成することができるように選択した材料を帯水層の中に注入する。
【0028】
理解できるように、適切な材料はドリルストリング流体流路と親和性があるべきである。材料は岩石の孔を十分に良く流れるように選択した粘度を有するべきである。材料は注入点から拡散してクラスレートの大部分を分離する高い能力を有しているべきである。さらに、それらは混入した固体粒子を含む程度に(以下詳述する)、そのような粒子もまた帯水層を通って輸送可能であるように選択されるべきである。材料はまた、一旦所定の位置にあれば、帯水層32からクラスレート28へと水の流れを実質的に妨げるように選択すべきである。
【0029】
バリアーが確立すると、ドリルストリングの注入部分はクラスレートゾーンでの生産開始に先立ってパッカー52の使用により上部から分離することができる。このアプローチにより、ドリルストリングの上部54に穿孔を導入することができる。或いは、追加の坑井を生産目的のために穿設することができる。
【0030】
本発明の実施態様に従ったバリアーの形成に適した材料としては、セメント、セメントスラリー、及び穿孔及び生産操作に典型的に使用されるタイプのエポキシが挙げられる。なお、バリアー材料の密度を減少させる補助材料を含ませ、これにより帯水層流体の上部に浮く能力を向上させることは有益であろう。例えば、発泡した又は中空の球状領域をセメント混合物に含ませ、その浮力を上昇させることができる。さらに、硬化性の材料を使用する場合は、硬化時間を長くする遅延補助剤を含ませることが有用である。理解されるように、硬化時間を長引かせると硬化に先立って硬化性材料の輸送に追加の時間が掛かり、それにより密封された領域のサイズが大きくなる。
【0031】
他のアプローチでは、バリアー材料は、元々のクラスレートよりも安定性に優れたクラスレート形成材料を含んでもよい。例えば、エタン、ブタン、CO
2、He、及びO
2はいずれも、例えば坑井で生産される望ましい炭化水素ガスであるメタンクラスレートよりも高い温度で及び/又は低い圧力で安定な水中クラスレートを形成することができる。それらの分子又はこのようなゲスト分子の混合物は、有益な寿命を超えた生産ゾーンの変化の間期待される温度、圧力、クラスレート阻害剤、及び分子置換に対応する際に設計の自由度を与えることができる。
【0032】
バリアー材料を注入する装置を
図6に示す。図に示されるように、ドリルストリング48はその周囲に多数の開口部60を含む。図には一列の開口部が示されているが、多数の列の開口部が使用できること、及び開口部のサイズと位置は変えることができることが理解されるであろう。ドリルストリングは、上述のようにバリアー材料の注入のために、開口部がクラスレート貯留層と帯水層との間の境界よりも下の深度に位置するように位置決めすることができる。
【0033】
図7に示す特定の例では、バリアー領域により近く位置した開口部60’が、ドリルストリングのより末端の部分に位置する開口部60”によって生産されるよりも低い流速を生産するように配置されている。
【0034】
図8に示すもうひとつの特定の例では、開口部60”をバリアー材料の方向性のある注入を可能とするようにドリルストリングの特定の側だけに位置づけことができる。このような装置は、クラスレート層が特定の配位を有することの主原因となる環境における操作に適したものとすることができる。ドリルストリングの端の回転は例えばバリアー材料の流出の方向の制御を可能にするであろう。
【0035】
例示として、
図8の装置は
図9に図式的に示すタイプの地層に十分に適している。
図9に示す地層では、クラスレートと帯水層が傾斜し、捕捉構造56が傾斜貯留層の下端を形成する。図示するように、方向性開口部により傾斜方向に沿って上方に流れる材料の注入が可能となり、帯水層からクラスレート層を密封する。
【0036】
図10に示す他の特定の例では、ドリルストリングは、2つの部分のエポキシがドリルストリングの末端部分に別々に輸送されるように別々の流体流路62、64を含むことができる。注入開口部の近くには、2つの部分のエポキシをブレンドさせる混合領域66があり、帯水層の地層中に注入する直前に硬化プロセスを開始する。理解されるように、2つの部分が記載され説明されているが、混合領域に2つより多くの流体が注入されてもよい。例えば、遅延剤を別に輸送して混合領域でエポキシ成分と混合してもよい。
【0037】
理解されるように、本明細書に記載の方法は、有形的表現媒体上に機械実行可能な指示を保存したコンピューターシステムを用いて実施することができる。指示は、方法の各部分を自発的に、又はオペレータからの入力の助けを得て実行するように実施可能である。或る実施態様では、システムにはデータの入力と出力を可能にするための構造と、プロセス工程の中間体及び/又は最終生成物を表示するように配置されアレンジされたディスプレイを含む。或る態様による方法は、炭化水素資源のための開発及び/又は調査穿孔のための位置を自動的に選択することを含んでもよい。
【0038】
当業者であれば本明細書に記載され開示された実施態様は例示のためだけのものであり、多くの変更が存在するであろうことを理解するであろう。本発明は本明細書に記載の実施態様を包含するだけでなく、当業者に明らかな変更をも包含する、特許請求の範囲によってのみ制限される。さらに、本明細書のいずれの実施態様に示され又は記載された構造的特徴又は方法工程が他の実施態様でも同様に使用できることは理解されるべきである。