(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
免疫賦活剤の投与と同時に、別々に又は順次に免疫原性細胞死治療を受けることを意図された患者における腫瘍性疾患の治療及び/又は制御に使用するための、非病原性の熱殺菌された全細胞マイコバクテリウムを含む免疫賦活剤であって、
前記マイコバクテリウムは、M.obuenseであり、
前記免疫原性細胞死療法が、マイクロ波照射療法、標的放射線療法、動脈塞栓術、凍結療法、超音波療法、強力集束超音波療法、サイバーナイフ療法、温熱療法、ラジオ波切除療法、冷凍切除術、電気メス加熱術、温水注入療法、アルコール注入療法、動脈塞栓術、放射線照射療法、光線力学的療法、レーザービーム照射療法、及びこれらの組み合わせから選択され、
前記免疫原性細胞死療法が、前記腫瘍性疾患の腫瘍の完全な除去又は根絶を意図しない次善のレベルで実施され、
前記免疫賦活剤の投与が、前記免疫原性細胞死療法の前及び後である、
免疫賦活剤。
前記非病原性の熱殺菌されたマイコバクテリウムが、非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路又は肺経路で投与するためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫賦活剤。
前記腫瘍が、前立腺癌、肝臓癌、腎癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、脳腫瘍、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、上皮性悪性腫瘍、頭頸部癌、皮膚癌及び軟部組織肉腫から選択される癌に関連する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の免疫賦活剤。
【背景技術】
【0002】
近年、免疫応答は、非常に早い段階で多くの腫瘍を消失させ、時にはそれらを何年も平衡状態で、完全に消失しないように維持することで、癌生物学において中心的役割を担っていることが明らかになってきている(Dunnら、Annu Rev Immunol 2004年、22、329〜360頁)。疾患の臨床症状を有するこの平衡相からの最終的な脱出は、例えば、慢性炎症又は免疫抑制などを示す異常調節免疫応答を伴う。免疫システムが癌の発現、構造的本質及び進行に大きく関与していることが強力にかつより一層裏付けられることにより、この分類の疾患を治療するための免疫療法戦略に新たな関心が寄せられている。現在まで、こうした戦略を開発するほとんどの試みは、患者自身の腫瘍又は腫瘍細胞株から誘導された抗原の使用及びex−vivoで拡大させた腫瘍抗原特異的細胞傷害性細胞集団及び抗原提示細胞集団の移行を活用するものであった。
【0003】
Rudolf Virchowが新生物組織内に白血球を発見し、炎症と癌とを初めて結び付けた1863年以来、癌は炎症と関連付けられている(Balkwillら、Lancet2001年、357、539〜545頁)。それ以来、慢性的な炎症は癌の危険因子であると考えられている。こうした報告により、炎症性環境が腫瘍の発現を助長し、腫瘍部位で観測されたものと一致することがわかる。しかし、癌と炎症との関係は、慢性炎症による疾患の発症に限定されるものではない。Schwartsburd(Cancer and Metastasis reviews 2003年、22、95〜102頁)は、腫瘍環境ストレスにより慢性炎症が発生すること及びこれにより免疫システムから防御物が発生することを提示した。近年、腫瘍微小環境は、血流の増加、悪性疾患に伴う免疫抑制、及び腫瘍転移の確立に関する新血管形成及び脈管膨張の双方に寄与するケモカイン、サイトカイン、リンパ球及びマクロファージを介して、腫瘍の進行をかなり支持しており、炎症部位に似ていることが明らかになった。さらに、この炎症部位腫瘍発現微小環境は、免疫システムからの防御及び癌進行の促進におけるその重要な役割とは別に、現在の癌治療の成功に対する悪影響を有する。実際に、癌の炎症反応により、化学療法剤の薬力薬理学が損なわれ得ることが明らかになっている(Slavieroら、Lancet Oncol 2003年、4、224〜32頁)。
【0004】
さらに、転移性癌細胞は、腫瘍をリンパ球、血小板及び腫瘍細胞を含む微小コロニーとして残す。炎症は、腫瘍の増殖をもたらすサイトカイン環境を作り出すことによって、転移部位において引き続き役割を果たす。
【0005】
免疫ホメオスタシスは、炎症誘発性シグナルと抗炎症性シグナルとの緊密に調節された相互作用からなる。例えば、抗炎症性シグナルの損失により、慢性炎症及び増殖シグナルの伝達がもたらされる。興味深いことに、腫瘍細胞の増殖の促進及び抑制をいずれも行うサイトカインが腫瘍部位で作り出される。例えば癌が発生する場合、これらの様々な過程の影響が不均衡であることが癌の促進をもたらす。
【0006】
癌の治療に最も効果的な種類の免疫応答は、CD4
+Th1細胞応答及びCD8
+CTL応答の誘導を促進するタイプ1型であると考えられる。癌ワクチンとの関連で、多くの免疫刺激剤が使用されており、これらの免疫刺激剤により、Th1応答の発現が促進され、Th2応答の産生が阻害されると考えられる。
【0007】
現在まで、効果的な癌免疫療法を開発する試みにとって大きな障壁は、腫瘍部位で免疫抑制を破壊できず、免疫反応性の正常なネットワークを復元できないことである。免疫療法の生理学的方法は、内因性腫瘍抗原が再び認識され、これらの抗原を保有する細胞に対して効果的な細胞傷害性反応が発現するように免疫反応を正常化することである。
【0008】
近年、化学療法及び放射線治療の作用に伴う抗癌免疫応答が検討され、こうした応答が、残留癌細胞の排除及び休止状態の微小転移巣の維持による治療の成功に欠かせないことが示されている(Zitvogelら、J Clin Invest 2008年、118、1991〜2001頁)。しかし、この参考文献では、そのような免疫応答を常に増強するために使用できる単純な免疫療法戦略は存在しないことが明らかにされている。
【0009】
特定の形態の免疫原性癌細胞死を誘導する治療手段によっても腫瘍抗原の放出がもたらされることは、明らかである。細胞死には、3つの主要なタイプ、アポトーシス(タイプ1)、オートファジー(タイプ2)及びネクローシス(タイプ3)がある(Tesniereら、Cell Death Differ 2008年、15、3〜12頁)。アポトーシス、又はプログラムされた細胞死は、一般的かつ定期的に発生する現象であり、特に子宮内のみならず子宮外においても組織のリモデリングに必須である。アポトーシスは、細胞核内のDNA断片化及び細胞質の凝縮により特徴づけられ、これらにより食細胞によって囲まれ、消化される「アポトーシス小体」が形成される。オートファジーでは、細胞小器官及び細胞質が細胞から押し出された小胞中に隔離される。これにより、不利な栄養条件又はその他のストレスの多い状況下において、細胞が生存する手段がもたらされるが、過剰なオートファジーは細胞死をもたらす。ネクローシスは、細胞内小器官への損傷及び細胞膨張により特徴づけられ、細胞膜の破裂及び細胞内物質の放出をもたらす「より荒い」プロセスである。
【0010】
アポトーシスは、その生理学的役割及び抗炎症媒介物質の放出により局所炎症が抑制されることが明らかになったことから予想されるとおり、免疫学的に「サイレント」であると広く考えられている。更に近年では、様々な形態のアポトーシスがあり、いくつかは免疫原性であることが提示されている(Zitvogelら、Adv Immunol 2004年、84、131〜179頁)。オートファジーと免疫原性との関係はあまり理解されていないが、ネクローシスは確実に多くの抗原を放出する。しかしながら進行癌では、こうしたネクローシスなどが腫瘍の増殖を助ける慢性炎症を増悪させることもある(Vakkilaら、Nat Rev Immunol2004年、4、641〜648、Zehetal, J Immunother2005年、28、1〜9頁)。この意味で癌は、治癒せず慢性的炎症を起こしている外傷に似ている(Dvorak.N Engl JMed 1986年、315、1650〜1659頁)。
【0011】
ネクローシスは、主に免疫原性細胞死として分類される。限られた数の研究では、免疫原性細胞死を誘導する手段により媒介物質及び腫瘍抗原が放出され、これらは細胞障害性CD8
+T細胞及びNK細胞の活性化などの免疫応答を誘導でき、また樹状細胞(DC)に接近しやすい提示抗原などの標的としても作用でき、原理上in vivoDCワクチンを生成できることが示されている。
【0012】
このような細胞死の精密なメカニズムにかかわらず、細胞死を免疫原性及び非免疫原性の形態に分類することはさらに有用である。有益な免疫調節の修復を伴う治療状況では、免疫原性細胞死から放出された抗原は、特に、危険関連(又は損傷関連)分子パターン(DAMP)の存在下において放出される場合、次いで効果的な抗腫瘍免疫応答を引き出すことができる(Jeromeら、N.Eng.J.Med.2004年、350、41141〜2頁)。
【0013】
当該技術分野において、腫瘍を治療するために、切除術及び化学療法を組み合わせたものを提供する取り組みが行われてきた。国際公開第2000064476号及び米国特許第20050187207号では、転移性腫瘍の治療に光線力学的治療と組み合わせた免疫アジュバントの使用が開示されている。これらの文書では、免疫アジュバントは、マイコバクテリア細胞壁骨格及び脱‐3‐O‐アシル化リピドAを含み、腫瘍中に注入投与されることを開示している。Castanoら(Nat Rev Cancers 2006年、6、535頁)、Korbelikら(J Photochem and Photobiol 1998年、44、151頁)及びKorbelikら(J Photochem and Photobiol、2001年、73、403頁)も、光線力学的治療と免疫アジュバントとしてのマイコバクテリア細胞壁抽出物の投与とを組み合わせて用いる腫瘍治療について開示している。
【0014】
マイコバクテリア細胞壁は、既知の免疫刺激剤であるトレハロースジミコレート及びムラミールジペプチドなどの化合物を含む。当該分野での併用療法において使用されるマイコバクテリア細胞壁抽出物は、炎症誘発性サイトカイン、反応性窒素種を誘導し、かつ消化管に虚血性病巣及び出血性病巣を有する関連脂質血症、低血糖及び腹膜炎を伴い、TNF−α媒介悪液質による重量減少などの病理学と関連する白血球を誘引する。このため、当該分野の併用療法は、炎症反応を悪化させ、重篤な副作用を有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によって明示されているように、免疫賦活剤は、タイプ1応答を刺激してTh2応答を下方制御する成分であり、また、免疫調節を介して免疫システムの正常な平衡を回復させる成分である。
【0020】
本発明は、免疫原性細胞死療法を必要とする。本療法により、アポトーシス(タイプ1)、オートファジー(タイプ2)及びネクローシス(タイプ3)を含む腫瘍免疫原性細胞死が誘導され、そのときに、細胞傷害性CD8
+T細胞及びNK細胞の活性などの免疫応答の誘導及び樹状細胞に接近しやすい提示抗原などの標的としての作用がいずれも可能な腫瘍抗原が放出される。以下に腫瘍の免疫原性細胞死をもたらす手段を示す。
【0021】
本発明において、「免疫原性腫瘍細胞死療法」は、腫瘍を認識し標的とするために、細胞が免疫システムによって使用される抗原を放出できるように、物理的に腫瘍又は腫瘍細胞内で損傷を誘導できる能力を示す。本用語は、切除術を含む。腫瘍抗原の放出は、例えば、リコール応答及び細胞傷害性T細胞応答の増加が観察されることによって示される。
【0022】
免疫原性細胞死療法は、次善のレべル、すなわち、腫瘍の完全な除去又は根絶を意図するものではないが、それでもなお一部の腫瘍細胞又は組織が壊死するような非治癒的療法で施行されてもよい。
【0023】
当業者は、使用する技術、患者の年齢、疾病状態及び特に腫瘍又は転移癌の大きさ及び位置に応じて、これを得るために必要な治療の範囲について理解するであろう。
【0024】
本明細書に明示されているように、同時投与は、互いに約2時間以内又は約1時間以内に、さらに好ましくは同時に、免疫賦活剤の投与及び細胞死療法手段を行うことを含む。
【0025】
個別投与は、本明細書に明示されているように、数週間、数日間若しくは約12時間、又は約8時間、又は約6時間、又は約4時間、又は約2時間離して免疫賦活剤の投与及び細胞死療法手段を行うことを含む。
【0026】
順次投与は、本明細書に明示されているように、複数のアリコ−トで及び/若しくは用量で並びに/又は別々の時に、免疫賦活剤の投与及び細胞死療法手段を行うことを含む。好ましくは、免疫賦活剤は、細胞死療法手段を始める前に投与されるか、細胞死療法手段を始めた後に引き続き投与される。更に好ましくは、免疫賦活剤は、腫瘍退化治療後に引き続き患者に投与される。
【0027】
本発明の1つの態様では、免疫賦活剤は熱殺菌マイコバクテリウムを含む。本発明に使用する好ましいマイコバクテリ種は、M.vaccae、M.thermoresistibile、M.flavescens、M.duvalii、M.phlei、M.obuense、M.parafortuitum、M.sphagni、M.aichiense、M.rhodesiae、M.neoaurum、M.chubuense、M.tokaiense、M.komossense、M.aurum、M.w、M.tuberculosis、M.microti、M.africanum、M.kansasii、M.marinum、M.simiae、M.gastri、M.nonchromogenicum、M.terrae、M.triviale、M.gordonae、M.scrofulaceum、M.paraffinicum、M.intracellulare、M.avium、M.xenopi、M.ulcerans、M.diernhoferi、M.smegmatis、M.thamnopheos、M.flavescens、M.fortuitum、M.peregrinum、M.chelonei、M.paratuberculosis、M.leprae、M.lepraemurium及びこれらの組み合わせを含む。
【0028】
好ましくは、熱殺菌マイコバクテリウムは、非病原性である。非病原性熱殺菌マイコバクテリウムは、M.vaccae、M.obuense、M.parafortuitum、M.aurum、M.w、M.phlei及びこれらの組み合わせから選択される。更に好ましくは、非病原性熱殺菌マイコバクテリウムは、ラフ変異株である。患者への免疫賦活剤投与量は、腫瘍細胞の切除後又は免疫原性細胞死後に、患者の免疫システムが腫瘍細胞抗原に対し効果的な免疫応答を行えるように、患者の保護免疫応答の誘導に十分な量である。本発明のある実施形態では、特定の量の免疫調節薬を被験者に投与することが好ましい。このように、本発明のある実施形態では、本発明において使用するために有効量の熱殺菌マイコバクテリウムを含む封じ込め手段が提供される。この手段では、典型的に、微生物数は10
3〜10
11、好ましくは10
4〜10
10、更に好ましくは10
6〜10
10、更に好ましくは10
6〜10
9であってよい。本発明において使用するための有効量の熱殺菌マイコバクテリウムは、微生物数10
3〜10
11、好ましくは微生物数10
4〜10
10、好ましくは微生物数10
6〜10
10、更に好ましくは微生物数10
6〜10
9であってよい。本発明において使用するための熱殺菌マイコバクテリウムの量は、最も好ましくは、微生物数10
7〜10
9である。典型的には、本発明による組成物は、ヒト及び動物に使用する場合、投与量10
8〜10
9細胞で投与してもよい。あるいは、用量は、懸濁液又は乾燥製剤のいずれかとして示される微生物数が0.01mg〜1mg又は0.1mg〜1mgである。
【0029】
M.vaccaeは、免疫応答を調節する能力を有する。そのタイプ1アジュバント特性は熱殺菌による影響を受けないのに対し、BCGなど他のマイコバクテリアは、殺菌されるとタイプ1アジュバント効果をほとんど有さない。また、M. vaccaeは、タイプ1応答を増強する能力とは独立していると考えられる方法で、既存のTh2応答を下方制御する。この効果は、現在、CD4
+CD45RB
low調節T細胞の誘導に寄与すると考えられており、肺のアレルギー性炎症の実験モデルにおいて、これらのT細胞がアレルギー受容体に移ると、アレルギー性炎症及び気道過敏を抑えることができる。M.obuenseも、免疫調節効果を示す。
【0030】
単一のサイトカイン媒介物質を標的とする薬剤とは異なり、M.vaccaeは、IL−10及び形質転換成長因子(TGF)−βを含む機構を介してTh2を下方制御する調節T細胞の誘導を含む免疫調節機構を介して、IL−4、IL−5及びIL−13を含むいくつかのTh2サイトカインを減少させる能力により、幅広い効果を有する。
【0031】
M.vaccae及びM.obuenseは、宿主において、複合免疫応答を誘導する。これらの製剤を用いた治療では、他のマイコバクテリア製剤(例えば、生弱毒化BCG及びマイコバクテリア細胞壁抽出物)を用いる治療によって観察されるものと同種の先天的免疫かつタイプ1の免疫(Th1及びCD8
+CTL)を刺激する。しかし、M.vaccae及びM.obuenseを用いた治療のさらに重要な有益点は、長期の免疫反応及び過度の免疫反応(例えば、腫瘍の切除後)を制御及び調節する調節細胞(調節表現型を有するT調節細胞及びDC細胞)の誘導を介した免疫応答の調節である。免疫調節を介する免疫反応の堅固な制御は、組織病理学を制限するのみでなく、エネルギー効率の良い定常の免疫平衡への迅速な復帰を確実にする。
【0032】
本発明を使用して、腫瘍性疾患を治療、制御又は阻害することができる。本発明によって治療し得る癌としては、これらに限定されないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、胸、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、前立腺、皮膚、腹、睾丸、舌又は子宮の細胞又は新生物が挙げられる。また癌は具体的には以下の組織型であってよいがこれらに限定されるものではない:悪性新生物;癌腫;未分化癌腫;巨細胞癌及び紡錘形細胞腫瘍;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母細胞腫;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌と胆管癌との複合癌;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープ内腺癌;家族性大腸ポリポージス腺癌;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞上皮腺癌;乳頭腺癌;嫌色素性細胞癌;好酸性細胞癌;好酸性腺腫;好塩基性腺腫;透明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌;乳頭及び濾胞状腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質細胞癌;子宮内膜性腫瘍;皮膚付属器腫瘍;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘液性類表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;ムチン性嚢胞腺癌;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性乳癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質細胞癌;悪性莢膜細胞腫、;悪性顆粒膜細胞腫;悪性細胞腫、;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞癌;悪性脂質細胞癌;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;悪性グロームス腫瘍(glomangiosarcoma);悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;悪性黒色腫巨細胞色素性母斑;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質細胞肉腫;混合腫瘍;ミューラー混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉細胞腫;悪性ブレンナー腫;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周囲細胞腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮肉腫;悪性エナメル上皮腫;悪性エナメル上皮線維肉腫;松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣細胞腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;グリア芽細胞腫;乏突起膠腫;乏突起膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大細胞悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;他の特異的非ホジキン病リンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;及び有毛細胞性白血病。好ましくは、腫瘍性疾患は、前立腺癌、肝臓癌、腎癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、脳腫瘍、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、皮膚癌と軟部組織肉腫及び/又は他の形態の癌腫から選択される癌に関連する腫瘍であってよい。腫瘍は、転移性又は悪性腫瘍であり得る。
【0033】
腫瘍の切除による損傷は、例えば抗原の漏出、細胞残屑及び媒介物質の放出によって特徴付けられ、これらは強い免疫反応を生じさせる。先行技術のマイコバクテリア細胞壁抽出物の腫瘍内投与により引き起こされるものなどの損傷がさらに加わることで免疫システムがさらに刺激され、共通抗原及び腫瘍抗原に対するさらなる炎症及び免疫反応がもたらされる。この性質のため、マイコバクテリア細胞壁抽出物に対するこの応答はさらに制御不能になり得る。熱殺菌全細胞M.vaccae及びM.obuenseを用いた前治療により、先天性免疫及びタイプ1型免疫の発現のみならずより効果的に適切な免疫機能を回復させる免疫調節も含む、より複雑な免疫が生じる。
【0034】
免疫原性細胞死療法は、好ましくは、原発腫瘍よりもむしろ転移性癌細胞又は組織に実施される。転移性癌細胞は、原発腫瘍から拡大した癌細胞である。治療は、免疫システムによって認識できる腫瘍抗原の放出があるように、腫瘍の破裂を引き起こすことを目的として実施される。したがって治療は、致死量以下でかつ最小限の細胞損傷を誘導するのに十分な量で行い得る。転移性癌の細胞又は組織は、原発腫瘍の細胞又は組織とは異なる器官内又は部位内において存在し得る。
【0035】
転移性細胞は、実験室試験、X線写真、コンピューター断層撮影(CT)法、磁気共鳴映像(MRI)法及び陽電子放射断層撮影法(PET)、又はこれらの組み合わせなど、当該分野の従来の技術を用いて識別し得る。
【0036】
本治療は、根絶に至る必要はないが、免疫応答を誘導するために細胞又は組織の集団の破壊を目指すことができる。例えば、治療により転移性癌細胞又は組織の集団のネクローシスが起こり得る。この点で、本技術は、単に細胞又は組織の集団を破壊することを必要とする次善の条件下で適用できる。
【0037】
腫瘍組織の破壊前及び/又は破壊後に、有効量の免疫賦活剤、例えば全細胞マイコバクテリウムは、複数の(反復)用量で投与でき、例えば、約2週間、又は約4週間又は約8週間の間隔で、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、10回以上又は20回以上反復投与できる。
【0038】
あるいは、免疫原性細胞死療法は、有効量の免疫賦活剤(例えば、全細胞マイコバクテリウム)の投与と同時に実施し得る。
【0039】
更なる実施形態では、免疫原性細胞死療法は、有効量の免疫賦活剤(例えば、全細胞マイコバクテリウム)の投与後に実施し得る。
【0040】
更なる実施形態では、免疫原性細胞死療法は、有効量の免疫賦活剤(例えば、全細胞マイコバクテリウム)の投与後に実施又は投与し得る。
【0041】
更なる実施形態では、免疫原性細胞死療法は、有効量のマイコバクテリウム投与前に実施又は投与し得る。
【0042】
免疫賦活剤は、非経口経路、舌下経路、経鼻経路又は肺経路を介して患者に投与し得る。好ましい実施形態では、免疫賦活剤は皮下(subcutaneous)、皮内、皮下(subdermal)、腹腔内、静脈内、血管注入から選択される非経口経路を介して投与される。更に好ましくは、非経口経路による投与は、マイコバクテリア細胞壁抽出物の腫瘍内注入を含まない。
【0043】
免疫原性細胞死療法は、物理的変性又は腫瘍の切除を含む腫瘍組織の破壊など、任意の手段を含み得る。切除は、悪性組織を破壊するために設計された、正常の周囲細胞への損傷が最小限である任意の低侵襲技術を含んでもよい。これらの技術は、近年、価格の低減、低死亡率及び外来患者環境の活用の可能性により、かなりの利益を得ている。
【0044】
また、外科的切除とは対照的に、再発した腫瘍はこうした最新の切除治療により迅速に治療され得る。好ましい実施形態では、切除的腫瘍破壊療法は、マイクロ波照射、高周波切除術、標的放射線療法、動脈塞栓術、凍結療法、超音波療法、高光度集束超音波、サイバーナイフ療法、温熱療法、冷凍切除術、電気メス加熱術、温水注入、アルコール注入、動脈塞栓術、セシウム−131シード近接照射療法(内部放射線治療)などの放射線照射、光線力学的治療、レーザービーム照射及びこれらの組み合わせから選択され得る。しかし、物理的変性又は破壊手段は、これらの例に限定されず、腫瘍組織の腫瘍細胞の免疫原性細胞死を誘導し得る任意の手段を使用できる。更に好ましくは、2種類以上の切除的腫瘍療法を好適に組み合わせてもよい。腫瘍組織の物理的変性手段又は破壊手段は、好ましくは腫瘍細胞の少なくとも一部のネクローシス又はアポトーシスを生じる。腫瘍組織の物理的変性手段又は破壊手段は、腫瘍細胞又は組織の少なくとも一部に亜致死障害を引き起こし得る。
【0045】
特に好ましい実施形態では、免疫原性腫瘍細胞死療法の手段は、ガンマ線、紫外線C照射、標的照射などの電離放射線を含む放射線治療を含む。
【0046】
別の実施形態では、本治療法は、ガンマ線、紫外線C照射、標的照射などの電離放射線を含み、免疫賦活剤投与と併用される放射線治療を含み、この治療においては放射線量が分割される。好適な放射線治療線量計画には、単独の総量又はそれぞれが総量の約40%以上を含む約3画分、又はそれぞれが総量の約30%以上を含む約5画分、又は当業者に既知の用量及び分画が挙げられる。
【0047】
別の特に好ましい実施形態では、免疫原性細胞死療法の手段は、ガンマ線、紫外線C照射、標的照射などの電離放射線を含む放射線治療を含み、免疫賦活剤投与と併用され、その結果、遠達効果を生じる。
【0048】
「標的から離れて」を意味するラテン語「ab scopus」由来の遠達効果(abscopal effect)として周知のように、電離放射線は、放射領域外での腫瘍増殖を減少させることができる。これは、複数の悪性腫瘍において報告されてきたが、遠達効果は依然として稀であり、あまり理解されていない事象である。この効果が稀にしか起こらないことは、確立された腫瘍の微小環境の既存の免疫抑制特性を破壊するために標準放射線療法だけでは不十分であることを示している。
【0049】
遠達効果は、PET‐CTによって評価されるように、放射線領域外の任意の測定可能な病変において測定可能な応答として定義される。
【0050】
具体的には、放射線療法は、腫瘍内においてシグナルの上方制御又は放出を引き起こし、それが樹状細胞(DC)の腫瘍への移行、腫瘍抗原の取り込み及び成熟を引き起こす。これらの抗原を取り込んだDCは、局所的リンパ節へ移行し、腫瘍を破壊できる腫瘍抗原特異的T細胞を活性化する。最終的に、放射線治療は、さもなければ効果的な抗腫瘍性T細胞応答の発現を妨げる調節免疫細胞集団を除去し得る(Morseら、commentary;Oncology:2008 年8月、第22巻、第9号)。
【0051】
別の好ましい実施形態では、免疫原性細胞死療法の手段は、ガンマ線、紫外線C照射、標的照射などの電離放射線を含む放射線治療を含み、免疫賦活剤投与と併用され、その結果、局所的な腫瘍の退化及び/又は遠隔転移によって示されるように、遠達効果を生じる。
【0052】
別の特に好ましい実施形態では、本発明は、免疫賦活剤の投与と同時に、別々に、又は順次にサイバーナイフ療法による免疫原性細胞死治療を受けることを意図された患者における腫瘍性疾患の治療のため使用する、また任意に、結腸直腸癌又はそこから誘導される転移性癌の治療のための免疫賦活剤を提供する。
【0053】
本発明による好適な投与計画は、前記切除又は免疫原性腫瘍細胞死療法の2週間前及び当日に免疫賦活剤を投与し、その後、2週後及び4週後に前記免疫賦活剤を更に投与することを含む。更なる免疫賦活剤の投与は、毎週又は第8週、第10週及び第12週など、隔週の間隔で行われ得る。好ましくは、免疫賦活剤は、切除術又は免疫原性細胞死療法後第16週目まで引き続き投与され、その後、最初の投与から12ヶ月後まで4週ごとに繰り返される。
【0054】
いくつかの例では、免疫原性細胞死療法は、開腹術による腫瘍の露出を必要とする場合があるが、ほとんどは最小限のリスクで腹腔鏡的又は経皮的に実施できる。コストの節減に加えて、経皮経路は、意識下鎮静において実施できるため、さらに死亡率が低下する。
【0055】
ラジオ波切除療法(RFA)及び凍結切除術は、主に肝腫瘍に使用され、プローブの挿入を必要とする侵襲的方法であり、リスクを伴う方法である。腫瘍の直接的な破壊に加えて、抗腫瘍免疫応答がこの手段によって生成されるという強力な証拠がある(Napoletanoら、Int J Oncol 2008年、32、481〜490頁)。
【0056】
RFA、レーザー及びマイクロ波による切除は、すべて温熱による損傷を介して組織死を生み出す。RFAは、ラジオ波の周波数範囲(460〜500kHz)で、交流電流を用いて熱傷を生み出す。周囲組織でのその後のイオン攪拌により摩擦熱が起こり、この熱は導通を介して電極から外側に拡大する。米国で市販されている好適なRF装置は、RITA Medical Systems Inc.,(マウンテンビュー、カリフォルニア州)及びRadiotherapeutics(マウンテンビュー、カリフォルニア州)から入手可能である。これらの装置は、様々な数の湾曲した電極を放射状に隣接組織に配置する可動式ハブを備えた針からなる。複数の電極の配置は、大きい球状熱傷を生成するように設計される。更なる装置(Radionics、バーリントン、マサチューセッツ州)は、直線状の内部冷却針電極からなる。内部冷却は、隣接組織の炭化を防止し、こうしてより大きい熱損傷を防止するように設計される。その他の好適な器具は、任意により水冷式治療用プローブ(Cool−Tip、ValleyLab、ボルダー、コロラド州)を適用するコンピューター支援型ラジオ波発生器(Elektrotom106HF、Berchtold、ツットリンゲン、ドイツ)を含む。8mmの能動先端を備える(SMK−15、Cotop、アムステルダム、オランダ)などのRFA針をRF損傷発生システム(モデルRFG‐3B、Radionics、バーリントン、マサチューセッツ州)と組み合わせて使用し得る。好ましくは、治療により、特定の腫瘍又は転移腫瘍において、先端温度が75〜80℃になるか、又は100℃を上回る。先端温度が50℃未満である場合、好ましくは、同じ位置において別の切除術を行う。
【0057】
レーザー誘起温熱療法による腫瘍の損傷後に起こる腫瘍抗原の漏出が、治療の後に細胞傷害性T細胞応答の増強が認められるという観察結果によって裏付けられる。結腸直腸癌の肝臓転移癌11例を対象にした研究では、治療により同種腫瘍株に対するCD3
+T細胞、CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の細胞溶解活性が有意に増加した(Voglら、Cancer Immunol Immunother 2009年、58、1557〜1563頁)。また、SABRも熱ショックタンパク質などのDAMP存在下で腫瘍抗原の漏出を誘導することによって、抗腫瘍性免疫応答が増強される環境を作り出すことが明らかになった(Finkelsteinら、Clin and Dev Immunol、第2011巻、ID439752)。ここでは、腫瘍に対する自律的長期的な免疫反応を確立し抗腫瘍免疫を促進する免疫治療剤と共に、低線量照射を用いてこれらの効果を誘導できることを提示する。
【0058】
いずれのRFA技術を用いた場合も重篤な合併症は稀であるが、ほとんどのシリーズで特定の治療を必要としない軽度の合併症を有する患者が数例報告されている。報告された合併症のなかで、最も一般的なものは疼痛であるが、これは、典型的には持続期間が短い。その他の報告された合併症には、発熱、腹腔内出血、肝内出血、胆道出血、血胸、横隔膜損傷、胸水、胆嚢炎、アミノ基転移酵素濃度の上昇及び針穿刺経路播種が挙げられる。
【0059】
本発明において、物理的腫瘍破壊の形態として、体幹部定位放射線治療(SABR)を使用し、免疫原性腫瘍細胞の細胞死を誘発し得る。SABRは、胴体内の腫瘍用の放射線外科の形態である。SABR(また、SBRTと呼ばれる場合もある)は、手術不可能な及び手術可能なステージ1の非小細胞肺癌細胞(NSCLC)の治療が保証されることを示す。効果的な放射線外科用量の範囲は15〜20グレイ(Gy)である。定位放射線治療を実施するシステム及び方法は、当該分野において既知であり、Adlerへの1993年5月4日出願の米国特許第5,207,223号及びSchweikardへの1995年10月17日出願の米国特許第5,458,125号に開示されており、これらは、参考として本明細書に援用される。
【0060】
組織の熱凝結を生み出す代替手段として使用し得るマイクロ波による切除術は、超高速(2450MHz)交流電場を誘発するマイクロ波の使用を含み、その結果、水分子が回転する。同様に、マイクロ波による切除術は、針電極を直接標的腫瘍に設置することを含む。好適な器具としては、2.45GHzで操作し、ラジオ波切除療法(RFA)装置及び低出力915MHzマイクロ波システムと比較して非常に強力な器具であるAcculis Microwave Tissue Ablation (MTA)システム(Microsulis Medical製)が挙げられる。本システムは、針状アプリケーターの幅広い選択肢により、開腹術、腹腔鏡下及び経皮的手段など、使用できる手段の種類を最大限にする。マイクロ波エネルギーは、アプリケーターの先端から放出され、周囲組織によって吸収される。吸収の深さは、マイクロ波の振動数及び出力によって異なる。これは、Sulis VpMTA generatorを介して制御される。マイクロ波エネルギーは、2.45GHzで、組織内に2cm浸透する。これは能動型マイクロ波加熱ゾーンである。能動型マイクロ波加熱ゾーン内において、マイクロ波は水分子を回転させ、迅速に加熱する。次いで、能動型マイクロ波加熱ゾーンからの熱は外側に伝わり、第二熱伝導加熱ゾーンを作り出す。これにより治療が終了する。凝固ゾーンは、主に球形であり、アプリケーターの軸方向にわずかに伸長している。出力及び時間を選択することによって、使用者は凝固ゾーンの大きさ及び発現率をいずれも制御できる。能動型マイクロ波による加熱により標的ゾーン内に目に見える蒸気形態が形成され、これを術中超音波又はCT画像によりリアルタイムで監視してリアルタイム制御を行える。
【0061】
報告されているマイクロ波による切除術の合併症は、RFAと同様であり、典型的に軽度で、疼痛、熱、肝酵素の上昇、腹水/胸水、隔膜損傷及び針穿刺経路播種などを含む。
【0062】
代替的実施形態では、レーザー切除術を使用できる。この技術では、ネオジウムイットリウムアルミニウムガーネット(Nd−YAG)レーザーを用いて高エネルギー光を標的病変に送達させる。その後、光は、組織内で散乱し、熱に変換される。光ファイバーは、経皮的に刺入した針を介して、腫瘍内に挿入される。複数の光ファイバーを定期的な間隔で、ネクローシス領域を拡大するために腫瘍内に挿入できる。治療時間は異なるが、大規模な切除術では1時間を超えることもある。別の方法は、局所レーザー除去術(FLA)であり、これはレーザーによる組織の熱破壊として定義される。FLA作用は、光熱効果に基づいており、熱作用は、非常に短い時間(数秒)での熱エネルギーを含む組織収容発色団による放射エネルギーの吸収に由来する。
【0063】
このように上昇した温度は、不可逆的損傷及び間接的にin vivoでの破壊を引き起こし得る。熱効果は、熱エネルギーの供給量だけでなく、光の分布の深さにも依存する。その結果、深部組織の損傷は、実施中のレーザーの波長に依存する。水又はヘモグロビンによる吸収が弱いことから、典型的に590nm〜1064nmの波長を使用して、さらに深い組織浸透を得る。熱による組織損傷の拡大は、温度及び加熱時間の双方に依存する。細胞生存率は、いくつかの重要なタンパク質の熱安定性と関係がある。不可逆的なタンパク質変性は、約60℃で発生し、その一方で、60℃を超えての凝固はほぼ瞬間的であり、本発明での使用に好ましい範囲である、42℃〜60℃では、より長い加熱期間で熱損傷を得る。60℃未満の超生理学的高熱を受けた部位では、治療後24時間〜72時間内に凝固壊死が発現する。
【0064】
冷凍切除術を、加熱により組織に熱損傷を与える代替手段として使用してもよい。冷凍切除術は、凍結剤が循環するプローブを介して氷点下温度を送ることにより、組織を破壊する。細胞死は、直接凍結、細胞タンパク質の変性、細胞膜の破裂、細胞脱水、及び虚血性低酸素症によってもたらされる。凍結により、すべての熱技術において最も規模の大きい除去が生み出される可能性があるが、最もよく行わる形態での手段は、プローブを設置するために全身麻酔及び開腹術を必要とする。冷凍切除術は、約マイナス40℃、又は約マイナス60℃の温度で実施してもよく、又は液体窒素(マイナス170℃)を用いて実行してもよく、かつCryobar器具(東理社)を用いた接触法によって適用してもよい。冷凍切除術の間、凍結/未凍結肝臓の接触面は、後部音響増影法を用いた音波発生端の外観による術中超音波を用いて簡単に評価でき、これはRFAを上回る冷凍切除術の利点である。このため、ある実施形態では、冷凍切除術は、熱的方法と比較して、免疫原性腫瘍細胞死を含む好ましい方法である。
【0065】
冷凍切除術は、病変の大きさによって制限されないが、冷凍切除術の合併症率は、RFAの合併症率よりもさらに高い可能性がある。さらに、肺の炎症が冷凍切除術に特有の合併症であり、切除された組織の解凍相に関連し得るという証拠がある。
【0066】
代替的実施形態では、エタノール切除術を、除去療法として使用し得る。経皮的エタノール注入(PEI)は、実施が比較的簡易であり、最も安価で、必要な器具も最低限である。PEIは、経皮的に刺入した針を介して直接腫瘍内に無水アルコールを注入することによって実施される。エタノール注入によって生じるネクローシスは、細胞の脱水及び血管内血栓からの組織虚血に起因する。また、以前に代替的低侵襲技術を用いて扱われた再発又は一部治療を受けた疾患に対して、エタノール切除術が考えられる。治療禁忌には、RFAについて上述したもの並びに主要門脈の血栓症が挙げられる。閉塞性黄疸の患者も、胆汁性腹膜炎などの合併症のリスクが高いことがある。前記の技術と同様に、エタノールを用いた完全切除率は、小さい腫瘍であればさらに高い。
【0067】
動脈塞栓術は、肝腫瘍治療のための確立された技術である。動脈塞栓術は、血管内技術であり(血管内から実施される)、腫瘍の血管を遮断する。動脈塞栓術は、カテーテル及び血管造影技術を使用して実施される。動脈塞栓術手段として、非常に細いカテーテルを鼠径部から例えば、脳、頭部及び首又は脊椎付近の腫瘍血管に直接進める。X線誘導下で、カテーテルを介して物質を注入し、腫瘍血管を恒久的に遮断及び閉鎖する。使用される物質には、粒子又は小さなプラチナコイルが挙げられる。塞栓剤の選定は、リスクと効果とのバランスによって行う。小さめの粒子(45〜150ミクロン)及び液体塞栓剤(ブクリレート、エタノール、エチレンビニルアルコール)は、腫瘍に良く浸透し、多くのネクローシスを起こす。術者が塞栓剤を選択する場合は、リスクと効果とのバランスによって行う。微小粒子の臨界粒径は、一般に、150ミクロン超と考えられる。ある研究では、腫瘍抗原α‐フェトプロテインのエピトープに特異的なCD4
+T細胞集団が、動脈塞栓術中及び動脈塞栓術後有意に拡張された(Ayaruら、lmmunol.2007年、178、1914〜1922頁)。これらのT細胞は、Th2サイトカインIL−5でなくTh1サイトカイン(IFN−γ及びTNF−α)を産生し、著者らは、これらの結果により、動脈塞栓術と免疫療法とを組み合わせるための論理的根拠がもたらされたとの結論に至った。別の研究(Zerbiniら、Cancer Res 2006年、66、1139〜1146頁)では、動脈塞栓術1ヶ月後、患者においてTh2細胞数の増加が明らかになり、細胞では細胞毒性マーカーの発現が増加した。しかし、これらのT細胞により疾患の再発が防止され、一例において、新たな結節が発現し、その抗原はT細胞によって認識されず、免疫回避を示した。このため、免疫認識を維持するためにさらなる免疫療法戦略が必要である。
【0068】
さらなる実施形態において、光線力学的治療は、切除療法として使用することができる。光線力学的治療は、被験者への有効量の光増感剤の投与及びその被験者への光増感剤に吸収された光の照射を含む。光増感剤の有効量は0.05〜10mg/kg、又は0.05〜1mg/kg、又は1〜10mg/kgの範囲内にあり得る。癌治療の第一のPDTステップで、光増感剤を血流中に注入する。本剤は、身体全体のあらゆる箇所の細胞によって吸収されるが、癌細胞内には、正常細胞内よりも長く留まる。注入後、約24時間〜72時間で、本剤のほとんどは正常細胞内から離れるが癌細胞には残留しており、腫瘍が光に曝露される。腫瘍内の光増感剤は光を吸収し、近くの癌細胞を破壊する酸素の活性体を生成する。癌細胞を直接死滅させることに加えて、PDTは、腫瘍を2つのその他の方法で収縮又は破壊させると考えられる。光増感剤は腫瘍内の血管を損傷でき、これによって、癌が必要な栄養素を摂取しないようにする。本発明に必要な場合、PDTは免疫システムを活性化し、腫瘍細胞を攻撃する。PDTに使用する光は、レーザー又は他の供給源から発生し得る。レーザー光線は、光ファイバーケーブル(光線を転送する薄いファイバー)を介して、光線を体内の領域に送るために、方向付けできる。例えば、光ファイバーケーブルは、内視鏡(体内の組織を見るために使用される薄いライト付チューブ)を介して肺又は食道に挿入し、これらの器官内の癌を処置できる。他の光源は、発光ダイオード(LED)を含み、皮膚癌などの表在性腫瘍に使用され得る。
【0069】
光増感剤は、静脈内又は腫瘍内に投与してもよく、放射線治療は、好ましくは腫瘍に局部集中させる。好適な光増感剤は、例えば、BPD−MA、EA6若しくはB3などのベンゾポルフィリン誘導体(BPD)又はグリーンポルフィリンを含む。このような光増感剤は、リポソーム製剤内で配合し得る。
【0070】
本発明による免疫原性細胞死療法又は切除的腫瘍破壊療法を受ける患者は、同時に、別々に又は順次、免疫賦活剤を投与され得る。好ましくは、免疫賦活剤は、腫瘍組織の物理的腫瘍破壊療法前に患者に投与される。更に具体的には、免疫賦活剤は、腫瘍破壊療法前約4週〜1週に患者に投与し得る。好ましくは、免疫賦活剤は、それぞれが有効量の免疫賦活剤を含む1つ又は複数のアリコートとして、腫瘍破壊療法前の4週〜1週に1回又は複数回の間隔で投与でき、かつ/又は免疫賦活剤は、本療法後に投与し得る。更に好ましくは、免疫賦活剤は、それぞれが有効量の免疫賦活剤を含む1つ又は複数のアリコートとして、腫瘍破壊療法後の4週〜1週に1回又は複数回で投与でき、かつ/又は免疫賦活剤は、本療法後に投与し、本療法前又は後に、少なくとも約2回、4回、6回、8回、10回、12回、15回又は20回以上、繰り返される。
【0071】
本発明の一実施形態では、免疫賦活剤は、実施例に記載した投与形態及び/又は予定で患者に投与される薬剤の形態であってよい。
【0072】
本発明の態様では、有効量の免疫賦活剤は、単回投与として投与し得る。あるいは、有効量の免疫賦活剤は、複数回(繰り返し)投与、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、10回以上、又は20回以上の反復投与にて投与し得る。好ましくは、免疫賦活剤は、腫瘍組織の腫瘍破壊療法前の約4週〜前日に投与され、更に好ましくは、約4週〜1週に、又は約3週〜1週に、又は約3週〜2週に投与される。投与は、単回投与又は複数回投与で示されてもよい。
【0073】
本発明による容器は、場合によっては、バイアル、アンプル、注射器、カプセル、錠剤又はチューブであってよい。場合によっては、マイコバクテリアは、投与前に再懸濁させるために、凍結乾燥し、配合してもよい。しかし、その他の場合、マイコバクテリアは、薬学的に許容可能な液体容積中に懸濁される。最も好ましい実施形態のいくつかには、薬学的に許容可能な担体に懸濁されるマイコバクテリアの単回投与量を含む容器が提供され、単位用量は約1x10
6〜約1x10
10CFUのマイコバクテリアを含む。一部の非常に特定の実施形態では、懸濁されたマイコバクテリアを含む液体は、約0.1ml〜10ml、約0.3ml〜2ml又は約0.5ml〜2mlの容量で提供される。特定の場合において、封じ込め手段でマイコバクテリアを含む組成物が凍結(すなわち、摂氏約ゼロ度未満で維持する)されることは、更に理解されるであろう。前述の組成物は、本明細書に記載の免疫療法を適用するために、理想的な単位を提供する。
【0074】
本明細書に記述されている他の任意の方法又は組成物に関して、本発明の方法及び/又は組成物について論じている実施形態を使用してもよい。このため、1つの方法又は組成物に関する実施形態は、本発明の他の方法及び組成物にも適用し得る。
【0075】
場合によっては、熱殺菌マイコバクテリアは、被験者上の又は被験者内の特定部位に投与される。例えば、特にM.obuenseを含む組成物など、本明細書によるマイコバクテリア組成物は、腫瘍周囲の組織の水分を抜くものなど、腫瘍に隣接して又はリンパ節に隣接して投与され得る。このため、場合によっては、マイコバクテリア組成物の投与部位は、後頚部、扁桃後部、後腋窩、後鼠径部、前頚部、顎下腺、顎下リンパ節又は鎖骨上リンパ節付近であってよい。このような投与部位は、身体の右側、左側又はその両方であってよい。非常に特定の実施形態では、マイコバクテリア組成物は、腋窩、頸部及び/又は鼠径リンパ節付近に送達される。例えば、マイコバクテリアの用量は、右側及び左側腋窩リンパ節及び右側及び左側鼠径リンパ節に近接する組織内に分布し得る。
【0076】
非常に特定の実施形態では、マイコバクテリア投与物は皮内注入により被験者に投与され、投与物は身体の両側の腋窩部及び鼠径部に分布され、各部位に2回注入(すなわち、2つの丘疹)する。
【0077】
本発明の更なるいくつかの実施形態において、本発明の方法は、1日又はそれを超える期間をおいてマイコバクテリアを2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回以上投与することを含む。特定の好ましい実施形態では、このような個別投与は、数日間、1週間、2週間、又は1ヶ月以上間をあけて行われる。例えば、本発明による方法は、3週間以上にわたり、マイコバクテリアを1〜5回投与することを含み得る。更なる実施形態では、本発明の方法は約3週間にわたり1〜5回、1〜4回、1〜3回、1〜2回又は2回、マイコバクテリアを投与することを含む。各投与量は、前回の投与量又は次回の投与量と同じであっても異なってもよい。例えば、ある場合において、好ましくは、マイコバクテリアの用量は、以前投与されたいかなる用量よりも少ない。このため、いくつかの特定の例では、1回分の熱殺菌マイコバクテリアの投与量は、以前のあらゆる治療において投与された量の約半分で投与されることもある。このような方法は、その後の治療中にマイコバクテリアに対する被験者の免疫応答が大きい場合に好ましい。このため、ある例では、免疫賦活剤は最小限の回数、例えば、10回、9回、8回、7回、6回、5回、4回、又は3回以下の個別投与で投与し得る。いくつかの例では、マイコバクテリア組成物は2回投与される。あるいは、免疫賦活剤は、癌又は腫瘍(複数可)が患者に存在する期間あるいは癌が退行するか又は安定するまでの期間、投与され得る。また、免疫賦活剤は、一旦癌又は腫瘍が退行するかあるいは安定した後も、患者に引き続き投与され得る。
【0078】
本発明によるマイコバクテリア組成物は、典型的には薬学的に許容可能な担体中に溶解しているか又は分散している、有効量のマイコバクテリアを含む。語句「薬学的に又は薬理学的に許容可能な」は、必要に応じて動物、例えば、ヒトに投与したとき、副作用、アレルギー反応又はその他の有害反応を生み出さない分子的実体及び組成物を指す。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(Mack Printing Company、1990年)に例示されているように、マイコバクテリアを含む薬学的組成物の調製は、本発明を考慮して、当業者にとって既知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)に投与する場合、製剤は、無菌性、発熱性、一般的安全性及び純度に関する標準に適合するべきであることは理解されるであろう。本明細書に記載されているとおり、薬理学的に許容可能な担体の具体的な例は、ホウ酸塩緩衝剤又は滅菌生理食塩(0.9%NaCI)である。
【0079】
本明細書で使用するとき「薬学的に許容可能な担体」は、任意かつすべての溶媒、分散媒、被覆剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌薬)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬剤、薬剤安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、分解剤、潤滑剤、甘味剤、香料添加剤、染料、同様の材料及びこれらの組み合わせを含み、当業者に周知のとおりである(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990年、1289〜1329頁を参照)。
【0080】
好ましい実施形態では、免疫賦活剤は皮下(subcutaneous)、皮内、皮下(subdermal)、腹腔内、静脈内、血管注入から選択される非経口経路を介して投与される。皮内注入はマイコバクテリア組成物の全集団を、免疫学的監視に接近しやすく、したがって局所的リンパ節における抗癌免疫応答の選定及び免疫細胞増殖の促進が可能な真皮層に送達できる。
【0081】
本発明の非常に好ましい実施形態では、マイコバクテリア組成物は直接の皮内注入により投与されるが、いくつかの例では、その他の投与方法を用いてもよいことが企図される。このため特定の例では、当業者に周知のように(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990年参照)、本発明の熱殺菌マイコバクテリアは、注射、注入、持続注入、静脈内注入、皮内注入、動脈内注入、腹腔内注入、病変内注入、硝子体内注入、腟内注入、直腸内注入、局所内注入、腫瘍内注入、筋肉内注入、腹膜内注入、皮下内注入、結膜内注入、小胞体内注入、粘膜内注入、心膜内注入、臍帯内注入、眼内注入、経口注入、頭蓋内注入、関節内注入、前立腺内注入、胸膜内注入、気管内注入、鼻腔内注入、局所注入、部分的注入、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、カテーテル経由、洗浄経由、又はその他の方法若しくは前述の任意の組み合わせにより投与され得る。更に好ましくは、非経口経路による投与は、マイコバクテリア細胞壁抽出物の腫瘍内注入を含まない。
【0082】
上の明細書に記述されているすべての出版物は、参考として本明細書に援用される。記載されている方法の様々な修正形態及び変更形態並びに本発明のシステムは、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せず、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関して記載されているが、請求項に係る本発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されないことが理解されるべきである。実際に、生化学及び免疫学又は関連分野の当業者にとって明らかである本発明を実施するために記載された様式の種々の修正形態は、以下の特許請求の範囲内であることを意図したものである。
【0083】
本発明は、更に、以下の非限定実施例を参照して記述される。
実施例1
【0084】
本発明を詳しく研究するために、Renca腫瘍細胞の接種材料を皮下投与し、IMM−101(Mycobacterium obuense、ラフ株、熱殺菌)と組み合わせた放射線療法により治療した雌Balb/cマウスで研究を行った。
【0085】
要約すると、成年マウスを、SPF条件下、制御された温度(23±2℃)、湿度(45±10%)及び光周期(12時間明期/12時間明期暗期)で維持した。水及び食料は、自由に摂取された。マウスは、識別のために、個別にタグを付けた。
【0086】
第0日目に、容積0.2mlのRPMI1640媒質中の10
5のRenca腫瘍細胞の接種材料をマウスの右脇腹に皮下投与した。毎日、腫瘍の確立及び増殖を監視した。腫瘍が明確(第25日目に100mm
3〜200mm
3)になると、マウスを無作為化し3つの群に分けた。群1は未処置であり、群2及び群3は、次の処置を受けた。群2)2日ごとに2Gy/日にて腫瘍に1回照射するサイクルを2回、合計3照射/サイクルで行った(総照射線量12Gy、予定は、[Q2Dx3]x2であって、第25日目に開始し、引き続き第28日目、第30日目、第32日目、第35日目及び第37日目に行う)。群3)第25日目に開始し、継続して第28日目、第30日目、第32日目、第35日目、第37日目、第39日目、第42日目など、ほぼ2日ごとに皮下に反復投与したIMM−101(0.1mg)との相乗効果において、上述のとおり、照射サイクルを2回行った。
【0087】
毎日、動物を監視し、2回/週、キャリパーで腫瘍の長さ及び幅を測定し、腫瘍容積(1/2x長さx幅
2)を概算した。各マウスについて、個体重量及び腫瘍容積を記録した。3つの治療群において、データをグラフで示し、時間に対する腫瘍容積の変化を追跡した(
図1)。
【0088】
対照無処置動物と比較して、放射線照射及びIMM−101を受けたマウスでは、腫瘍容積の有意の減少が認められることを明らかにした(Anova,Dunnett’s comparison)。これにより、この併用治療が改善された療法及び改善された生存率をもたらすことが示される。
実施例2
【0089】
以前に結腸直腸癌治療した患者を対象に、放射線誘発免疫原性腫瘍のネクローシスと組み合わせた熱殺菌全細胞M.obuense(IMM−101)調製物に関する調査研究を、表1に記載のプロトコールに従い患者で実施した。患者は、サイバーナイフエネルギーの的確な集束に必要なベースラインが確立され金マーカー(fudicial seeds)が挿入された同日に、M.obuense IMM−101の投与を受けた。
【0090】
腫瘍ネクローシスを誘導するためにサイバーナイフ技術を使用して、患者は第14日目にM.obuense(IMM−101)の更なる投与と共に次のSBRTを受けた。患者は、第28日目にM.obuense(IMM−101)の更なる投与を受け、次いで、第8週〜第12週に、隔週でM.obuense(IMM−101)の投与を引き続き受け、包括的に、1年にわたる研究の残りの期間中、投薬回数を減らして月1回にした。次いで、患者は、腫瘍の退化及び疾患の安定化について、第12週目に評価され、その後、12週ごとに評価された。この結果から、サイバーナイフ療法の初回適用後に引き続きM.obuense(IMM−101)を投与した第12週目に腫瘍の退化が示され、また第24週目における疾患の安定化の広がりが明らかである。
【表1】
【0091】
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