(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
鉄道車両は、営業運転中に故障する確率がゼロではない。このため、鉄道車両は、他の鉄道車両(以下、救援車両ともいう)によって、故障が発生した場所から整備工場まで回送される可能性がある。この場合において、救援される鉄道車両(以下、被救援車両ともいう)は、救援車両に連結され、整備工場まで搬送される。
【0011】
この場合、例えば、救援車両のブレーキ装置が電気指令式空気ブレーキ装置であり、被救援車両のブレーキ装置が自動空気ブレーキ装置である場合が考えられる。このような場合、救援車両は、ブレーキ管を有していない。よって、救援車両は、被救援車両のブレーキ管を利用した被救援車両の制動を行うことができない。このため、救援車両及び被救援車両が連結された車両編成では、救援車両のブレーキ装置のみを用いて救援車両及び被救援車両を制動する必要がある。したがって、この車両編成において、迅速な車両制動を行い難いため、救援車両及び被救援車両は、高速で走行できず、被救援車両の回送作業に時間がかかってしまう。
【0012】
特許文献1に記載の発明は、救援車両及び被救援車両の双方にブレーキ管を有する構成が前提であり、ブレーキ管を有しない鉄道車両との接続は、考慮されていない。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、鉄道車両用ブレーキ装置において、当該鉄道車両用ブレーキ装置が搭載される鉄道車両を制動するためにブレーキ管を用いない構成であっても、ブレーキ管を有する他の鉄道車両用ブレーキ装置を使用できるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる鉄道車両用ブレーキ装置は、鉄道車両に設けられる鉄道車両用ブレーキ装置である。前記鉄道車両用ブレーキ装置は、元空気管に接続された第1弁装置であって、所定の電気信号としての第1電気指令に応じた開閉量の第1ゲートを形成し、前記元空気管からの流体圧力を駆動圧力として前記第1ゲートからブレーキアクチュエータへ出力する第1弁装置を有する、第1ブレーキ制御装置と、前記鉄道車両とは別の鉄道車両としての相手側鉄道車両に備えられた自動空気ブレーキ装置のブレーキ管圧力を設定する
ことにより、前記相手側鉄道車両のブレーキ制御を実行可能とするための、第2ブレーキ制御装置と、を備え、前記第2ブレーキ制御装置は、第2弁装置を有し、前記第2弁装置は、所定の電気信号としての第2電気指令に基づいて動作することで、前記元空気管からの流体圧力を給気または排気することで、前記ブレーキ管圧力を設定可能に構成されて、
前記ブレーキ管圧力を、前記第1ゲートから出力される前記駆動圧力の値と関連付けられた値に設定する。
【0015】
この構成によると、鉄道車両用ブレーキ装置は、当該鉄道車両用ブレーキ装置が設けられる鉄道車両(以下、自車ともいう。)において、電気指令式空気ブレーキ装置を実現できる。さらに、鉄道車両用ブレーキ装置は、相手側鉄道車両に備えられた、ブレーキ管による自動空気ブレーキ装置を使用できる。より具体的には、鉄道車両用ブレーキ装置は、第1電気指令の指令値に応じた制動力が生じるように、自車のブレーキアクチュエータを駆動させることができる。また、鉄道車両用ブレーキ装置は、第2電気指令に基づいて、ブレーキ管圧力を、相手側鉄道車両のブレーキ管に設定することができる。このように、本発明によると、鉄道車両用ブレーキ装置が搭載される鉄道車両を制動するためにブレーキ管を用いない構成であっても、ブレーキ管を有する相手側鉄道車両のブレーキ装置を使用することができる。その結果、自車及び相手側鉄道車両を、より迅速に減速することもできる。
【0016】
(2)好ましくは、前記第1弁装置は、前記元空気管に接続され、前記第1電気指令に基づいて動作することで、前記流体圧力を第1制御圧力に変換して出力する第1電空変換弁と、前記第1ゲートを有し、前記第1制御圧力に応じて前記第1ゲートの開閉量を設定する第1中継弁と、を含んでいる。
【0017】
この構成によると、パイロット圧である第1制御圧力に応じて、第1中継弁にて必要な容量の流体を、第1電気指令に応じた駆動圧力として、ブレーキアクチュエータへ出力できるため、電磁弁等からなる第1電空変換弁の構成がコンパクトになる。
【0018】
(3)
上記(1)の構成において、前記第2弁装置は、前記駆動圧力の値と関連付けられた値の前記ブレーキ管圧力を設定可能に構成されている。
【0019】
この構成によると、ブレーキ管内の流体を自車のブレーキアクチュエータへ供給される駆動圧力と、ブレーキ管圧力とが互いに関連した状態となる。その結果、鉄道車両用ブレーキ装置は、自車の制動状態と、相手側鉄道車両の制動状態とを、より確実に一致させることができる。その結果、自車の鉄道車両用ブレーキ装置と、相手側鉄道車両の自動空気ブレーキ装置との協働により、自車及び相手側鉄道車両を、より迅速に減速できる。
【0020】
(4)好ましくは、前記第1弁装置は、前記第2ブレーキ制御装置から前記ブレーキ管圧力が減圧されてから所定時間経過後に、前記駆動圧力を前記ブレーキアクチュエータへ供給するように構成されている。
【0021】
この構成によると、第1弁装置は、電気信号である第1電気指令を受けたことに応じて、駆動圧力を出力し、ブレーキアクチュエータを動作させる。よって、第1弁装置は、第1電気指令を受けてから駆動圧力を出力するまでの時間が短く、応答性が高い。一方、相手側鉄道車両においては、ブレーキ管内の圧力変化に応じて、相手側鉄道車両のブレーキアクチュエータが動作される。よって、相手側鉄道車両のブレーキ装置においては、ブレーキ管内の圧力変動の伝搬速度が、電気信号の伝搬速度よりも遅く、応答性が比較的低い。このような特性に鑑み、第1弁装置からの駆動圧力の供給開始時点が、第2弁装置からのブレーキ管圧力の減圧開始時点よりも遅くされている。これにより、自車のブレーキアクチュエータの動作タイミングと、相手側鉄道車両のブレーキアクチュエータの動作タイミングとの一致度が、より高くなる。その結果、制動時に相手側鉄道車両が過度に自車を押すことがなくなるので、連結器に悪影響を与えることがない。
【0022】
(5)好ましくは、前記第2ブレーキ制御装置は、前記元空気管及び前記相手側鉄道車両の前記ブレーキ管に接続される主ブレーキ管を有し、前記第2弁装置は、前記主ブレーキ管に接続され、前記第2電気指令に基づいて動作することで、前記流体圧力を第2制御
圧力に変換して出力する第2電空変換弁と、前記流体圧力を前記ブレーキ管圧力に調整して出力するための第2ゲートを含み、前記第2制御圧力に応じて前記第2ゲートの開閉量を設定する第2中継弁と、を有している。
【0023】
この構成によると、電気信号としての第2電気指令に応じた、ブレーキ管圧および必要な分量の空気量を生成することができる。これにより、相手側鉄道車両の制動量を、より精度よく設定できる。
【0024】
(6)より好ましくは、前記第2ブレーキ制御装置は、前記第2中継弁からの前記ブレーキ管圧力が伝達されるように構成された開放弁装置を含み、前記開放弁装置は、前記主ブレーキ管内の流体を急速に放出可能に構成されている。
【0025】
この構成によると、相手側鉄道車両のブレーキアクチュエータを駆動する際の、ブレーキ管圧力の急速な減圧動作を、鉄道車両用ブレーキ装置において行うことができる。
【0026】
(7)より好ましくは、前記開放弁装置は、主開放弁を有し、前記主開放弁は、非常ブレーキを作動させる際に、前記主ブレーキ管内の流体を急速に放出可能に構成されている。
【0027】
この構成により、最も強いブレーキ力を発生させる非常ブレーキの作動時において、相手側鉄道車両のブレーキ管の圧力を急速に減圧することができるので、ブレーキ力を迅速に作用させることができる。
【0028】
(8)好ましくは、前記開放弁装置は、電磁弁を有し、前記電磁弁は、前記鉄道車両の非常ブレーキ動作指令に基づいて、前記主ブレーキ管内の流体を急速に放出可能に構成されている。
【0029】
この構成によると、自車の非常ブレーキ指令に基づいて電磁弁が開くことで、主ブレーキ管内の圧力、即ち、相手側鉄道車両のブレーキ管内の圧力を、強制的に排気することできる。これにより、相手側鉄道車両を、より迅速に制動できる。
【0030】
(9)好ましくは、前記第2ブレーキ制御装置は、前記主ブレーキ管に接続され、前記開放弁装置を迂回するバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管において第2弁装置へ向かう圧力伝達を規制する一方弁と、を有している。
【0031】
この構成によると、相手側鉄道車両のブレーキ管からのブレーキ圧が主ブレーキ管に作用した場合に、主ブレーキ管内の流体を、開放弁装置に循環させることができる。これにより、開放弁装置内の状態を維持することができる。
【0032】
(10)好ましくは、前記第2ブレーキ制御装置は、前記主ブレーキ管内の径を部分的に小さくする絞り部を有し、前記絞り部を通過した前記主ブレーキ管内の流体が、前記第2中継弁を介して前記相手側鉄道車両の前記ブレーキ管に供給されるように構成されている。
【0033】
この構成によると、単位時間あたりに主ブレーキ管から相手側鉄道車両のブレーキ管に供給される流体の量が、所定量以上に大きくなることを抑制できる。その結果、例えば、相手側鉄道車両の自動ブレーキ弁又は図示しない車掌弁が操作された場合において、流体の供給量より放出量が多くなるように設けられていれば、ブレーキ管内の減圧が、より確実に達成される。その結果、上記自動ブレーキ弁等が操作されたことによる、相手側鉄道車両の制動が、より確実に行われる。さらに、絞り部は、第2中継弁の動作によるブレーキ管圧力変動の応答性に影響を与え難くするように配置されている。よって、迅速なブレーキ管圧力変動が可能である。
【0034】
(11)好ましくは、前記相手側鉄道車両の前記ブレーキ管圧力を検出する圧力検出部を備え、前記第1弁装置は、前記ブレーキ管圧力に基づいて設定された前記駆動圧力を、前記第1ゲートから前記ブレーキアクチュエータへ出力可能である。
【0035】
この構成によると、例えば、相手側鉄道車両が自車を牽引する場合に、相手側鉄道車両のブレーキ管圧力、即ち、相手側鉄道車両の制動量に応じた駆動圧力を、第1弁装置において生成できる。これにより、相手側鉄道車両が自車を牽引する場合等において、相手側鉄道車両のブレーキ装置と自車のブレーキ装置との協働によって、相手側鉄道車両と自車とを、より迅速に制動できる。
【0036】
(12)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる鉄道車両は、前記の鉄道車両用ブレーキ装置を備えている。
【0037】
この構成によると、鉄道車両を制動するためにブレーキ管を用いない構成であっても、ブレーキ管を有する相手側鉄道車両のブレーキ装置を使用できる。
【0038】
(13)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる鉄道車両編成は、順次連結された複数の鉄道車両と、前記の鉄道車両用ブレーキ装置と、を備え、前記鉄道車両用ブレーキ装置は、複数の前記鉄道車両において、先頭車両及び後端車両の一方または両方に設けられている。
【0039】
この構成によると、鉄道車両を制動するためにブレーキ管を用いない構成であっても、ブレーキ管を有する相手側鉄道車両のブレーキ装置を使用できる。また、相手側鉄道車両のブレーキ装置を使用するためのブレーキ管は、複数の鉄道車両のうち、相手側鉄道車両に連結可能な車両にのみ、設けられている。これにより、鉄道車両編成の構成を、より簡素にできる。
(A1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる鉄道車両用ブレーキ装置は、鉄道車両に設けられる鉄道車両用ブレーキ装置において、元空気管に接続された第1弁装置であって、所定の電気信号としての第1電気指令に応じた開閉量の第1ゲートを形成し、前記元空気管からの流体圧力を駆動圧力として前記第1ゲートからブレーキアクチュエータへ出力する第1弁装置を有する、第1ブレーキ制御装置と、前記鉄道車両とは別の鉄道車両としての相手側鉄道車両に備えられた自動空気ブレーキ装置のブレーキ管圧力を設定することにより、前記相手側鉄道車両のブレーキ制御を実行可能とするための、第2ブレーキ制御装置と、を備え、前記第2ブレーキ制御装置は、第2弁装置を有し、前記第2弁装置は、所定の電気信号としての第2電気指令に基づいて動作することで、前記元空気管からの流体圧力を給気又は排気することで、前記ブレーキ管圧力を設定可能に構成され、前記第1弁装置は、前記第2ブレーキ制御装置から前記ブレーキ管圧力が減圧されてから所定時間経過後に、前記駆動圧力を前記ブレーキアクチュエータへ供給するように構成されている。
(A2)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる鉄道車両用ブレーキ装置は、鉄道車両に設けられる鉄道車両用ブレーキ装置において、元空気管に接続された第1弁装置であって、所定の電気信号としての第1電気指令に応じた開閉量の第1ゲートを形成し、前記元空気管からの流体圧力を駆動圧力として前記第1ゲートからブレーキアクチュエータへ出力する第1弁装置を有する、第1ブレーキ制御装置と、前記鉄道車両とは別の鉄道車両としての相手側鉄道車両に備えられた自動空気ブレーキ装置のブレーキ管圧力を設定することにより、前記相手側鉄道車両のブレーキ制御を実行可能とするための、第2ブレーキ制御装置と、を備え、前記第2ブレーキ制御装置は、第2弁装置と、前記元空気管及び前記相手側鉄道車両の前記ブレーキ管に接続される主ブレーキ管と、を有し、前記第2弁装置は、前記主ブレーキ管に接続され、所定の電気信号としての第2電気指令に基づいて動作することで、前記流体圧力を第2制御圧力に変換して出力する第2電空変換弁と、前記流体圧力を前記ブレーキ管圧力に調整して出力するための第2ゲートを含み、前記第2制御圧力に応じて前記第2ゲートの開閉量を設定する第2中継弁と、を有し、前記第2電気指令に基づいて動作することで、前記元空気管からの流体圧力を給気又は排気することで、前記ブレーキ管圧力を設定可能に構成され、さらに、前記第2ブレーキ制御装置は、前記第2中継弁からの前記ブレーキ管圧力が伝達されるように構成された開放弁装置を含み、前記開放弁装置は、前記主ブレーキ管内の流体を急速に放出可能に構成され、前記開放弁装置は、電磁弁を有し、前記電磁弁は、前記鉄道車両の非常ブレーキ動作指令に基づいて、前記主ブレーキ管内の流体を急速に放出可能に構成されている。
(A3)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる鉄道車両用ブレーキ装置は、鉄道車両に設けられる鉄道車両用ブレーキ装置において、元空気管に接続された第1弁装置であって、所定の電気信号としての第1電気指令に応じた開閉量の第1ゲートを形成し、前記元空気管からの流体圧力を駆動圧力として前記第1ゲートからブレーキアクチュエータへ出力する第1弁装置を有する、第1ブレーキ制御装置と、前記鉄道車両とは別の鉄道車両としての相手側鉄道車両に備えられた自動空気ブレーキ装置のブレーキ管圧力を設定することにより、前記相手側鉄道車両のブレーキ制御を実行可能とするための、第2ブレーキ制御装置と、を備え、前記第2ブレーキ制御装置は、第2弁装置と、前記元空気管及び前記相手側鉄道車両の前記ブレーキ管に接続される主ブレーキ管と、を有し、前記第2弁装置は、前記主ブレーキ管に接続され、所定の電気信号としての第2電気指令に基づいて動作することで、前記流体圧力を第2制御圧力に変換して出力する第2電空変換弁と、前記流体圧力を前記ブレーキ管圧力に調整して出力するための第2ゲートを含み、前記第2制御圧力に応じて前記第2ゲートの開閉量を設定する第2中継弁と、を有し、前記第2電気指令に基づいて動作することで、前記元空気管からの流体圧力を給気又は排気することで、前記ブレーキ管圧力を設定可能に構成され、さらに、前記第2ブレーキ制御装置は、前記第2中継弁からの前記ブレーキ管圧力が伝達されるように構成された開放弁装置を含み、前記開放弁装置は、前記主ブレーキ管内の流体を急速に放出可能に構成され、さらに、前記第2ブレーキ制御装置は、前記主ブレーキ管に接続され、前記開放弁装置を迂回するバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管において第2弁装置へ向かう圧力伝達を規制する一方弁と、を有している。
(A4)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる鉄道車両用ブレーキ装置は、鉄道車両に設けられる鉄道車両用ブレーキ装置において、元空気管に接続された第1弁装置であって、所定の電気信号としての第1電気指令に応じた開閉量の第1ゲートを形成し、前記元空気管からの流体圧力を駆動圧力として前記第1ゲートからブレーキアクチュエータへ出力する第1弁装置を有する、第1ブレーキ制御装置と、前記鉄道車両とは別の鉄道車両としての相手側鉄道車両に備えられた自動空気ブレーキ装置のブレーキ管圧力を設定することにより、前記相手側鉄道車両のブレーキ制御を実行可能とするための、第2ブレーキ制御装置と、を備え、前記第2ブレーキ制御装置は、第2弁装置と、前記元空気管及び前記相手側鉄道車両の前記ブレーキ管に接続される主ブレーキ管と、を有し、前記主ブレーキ管に接続され、所定の電気信号としての第2電気指令に基づいて動作することで、前記流体圧力を第2制御圧力に変換して出力する第2電空変換弁と、前記流体圧力を前記ブレーキ管圧力に調整して出力するための第2ゲートを含み、前記第2制御圧力に応じて前記第2ゲートの開閉量を設定する第2中継弁と、を有し、前記第2電気指令に基づいて動作することで、前記元空気管からの流体圧力を給気又は排気することで、前記ブレーキ管圧力を設定可能に構成され、さらに、前記第2ブレーキ制御装置は、前記主ブレーキ管内の径を部分的に小さくする絞り部を有し、前記絞り部を通過した前記主ブレーキ管内の流体が、前記第2中継弁を介して前記相手側鉄道車両の前記ブレーキ管に供給されるように構成されている。
(A5)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる鉄道車両用ブレーキ装置は、鉄道車両に設けられる鉄道車両用ブレーキ装置において、元空気管に接続された第1弁装置であって、所定の電気信号としての第1電気指令に応じた開閉量の第1ゲートを形成し、前記元空気管からの流体圧力を駆動圧力として前記第1ゲートからブレーキアクチュエータへ出力する第1弁装置を有する、第1ブレーキ制御装置と、前記鉄道車両とは別の鉄道車両としての相手側鉄道車両に備えられた自動空気ブレーキ装置のブレーキ管圧力を設定することにより、前記相手側鉄道車両のブレーキ制御を実行可能とするための、第2ブレーキ制御装置と、前記相手側鉄道車両の前記ブレーキ管圧力を検出する圧力検出部と、を備え、前記第2ブレーキ制御装置は、第2弁装置を有し、前記第2弁装置は、所定の電気信号としての第2電気指令に基づいて動作することで、前記元空気管からの流体圧力を給気又は排気することで、前記ブレーキ管圧力を設定可能に構成され、前記第1弁装置は、前記ブレーキ管圧力に基づいて設定された前記駆動圧力を、前記第1ゲートから前記ブレーキアクチュエータへ出力可能である。
【発明の効果】
【0040】
本発明によると、制動するためにブレーキ管を用いない鉄道車両であっても、ブレーキ管を有する相手側鉄道車両のブレーキ装置を使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、以下の実施形態で例示した形態に限らず、鉄道車両用ブレーキ装置として広く適用することができる。
【0043】
[鉄道車両編成の概略構成]
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両用ブレーキ装置を備える鉄道車両編成10の概念図である。
図2は、鉄道車両編成10とは別の鉄道車両編成である相手側鉄道車両編成100の概念図である。
図1及び
図2を参照して、鉄道車両編成10は、例えば、旅客車両等である。鉄道車両編成10は、順次連結された複数の車両としての、先頭車両11、中間車両12、及び後端車両13を有している。中間車両12は、1又は複数(本実施形態では、複数)設けられている。
【0044】
各車両11,12,13には、電気指令線群14が設置されている。また、各車両11,12,13には、元空気管15(MRP:Main Reservoir Pipe)が設置されている。元空気管15は、各車両11,12,13に通しで設けられている。元空気管15内には、空気圧縮機(図示せず)で圧縮された圧縮空気が充填されている。先頭車両11及び後端車両13のそれぞれにおいて、元空気管15には、仕切弁18,19が設けられている。仕切弁18,19は、鉄道車両編成10が単独で走行する場合、閉じられている。一方、対応する仕切弁18,19は、鉄道車両編成10が相手側鉄道車両編成100に連結されている場合に、開かれている。
【0045】
先頭車両11は、鉄道車両用ブレーキ装置20を有している。同様に、後端車両13は、鉄道車両用ブレーキ装置20(以下、単にブレーキ装置20ともいう)を有している。尚、先頭車両11のブレーキ装置20と、後端車両13のブレーキ装置20とは、同様の構成である。よって、以下では、後端車両13のブレーキ装置20について主に説明し、先頭車両11のブレーキ装置20の詳細な説明は、省略する。
【0046】
鉄道車両用ブレーキ装置20は、本実施形態において、電気指令式空気ブレーキ装置としての構成を用いて、鉄道車両編成10を制動する。一方、ブレーキ装置20は、自動空気ブレーキ装置としての構成を用いて、相手側鉄道車両編成100を制動可能である。
【0047】
ブレーキ装置20は、ブレーキ設定器21と、ブレーキアクチュエータ22と、第1ブレーキ制御装置23と、第2ブレーキ制御装置24と、を有している。
【0048】
ブレーキ設定器21は、各車両11,12,13の制動力(ブレーキ力)を設定するために設けられている。ブレーキ設定器21は、鉄道車両編成10の運転手等によって操作されるように構成されている。ブレーキ設定器21は、運転手によって操作されたことに応じて、電気信号としての第1電気指令E11、及び第2電気指令E21を出力する。ブレーキ設定器21は、例えば、第1電気指令E11及び第2電気指令E21を同期して出力する。尚、第1電気指令E11及び第2電気指令E21は、独立して出力されてもよい。第1電気指令E11及び第2電気指令E21の指令内容は、例えば、ブレーキ解除指令、常用ブレーキ動作指令、又は非常ブレーキ動作指令である。
【0049】
ブレーキ解除指令とは、制動動作を解除する旨の指令を意味する。常用ブレーキ動作指令とは、運転手によって指定された制動力で、制動動作を行う旨の指令を意味する。非常ブレーキ動作指令は、設定上の最大の制動力で、制動動作を行う旨の指令を意味する。
【0050】
ブレーキ設定器21は、電気指令線群14を介して、第1電気指令E11を第1ブレーキ制御装置23へ出力し、且つ、電気指令線群14を介して、第2電気指令E21を第2ブレーキ制御装置24へ出力する。第1電気指令E11を受信した第1ブレーキ制御装置23は、ブレーキアクチュエータ22を動作させる。
【0051】
ブレーキアクチュエータ22は、空気圧によって動作するように構成されており、本実施形態では、空気圧シリンダである。本実施形態において、ブレーキアクチュエータ22は、ピストン(図示せず)を有しており、第1ブレーキ制御装置23からの駆動圧力P11に応じた出力で、ピストンが動作する。このピストンの動作によって、ブレーキパッド(図示せず)が動作し、ブレーキパッドが車輪(図示せず)に摩擦抵抗を付与する。これにより、鉄道車両編成10が制動される。このように、鉄道車両編成10を制動させるためのブレーキアクチュエータ22の動作は、第1ブレーキ制御装置23によって制御される。即ち、第2ブレーキ制御装置24は、ブレーキアクチュエータ22に駆動圧力P11を供給する構成ではない。
【0052】
[第1ブレーキ制御装置の概略構成]
第1ブレーキ制御装置23は、駆動圧力管26と、第1弁装置27と、圧力センサ28と、非常ブレーキ装置29と、を有している。
【0053】
駆動圧力管26は、ブレーキアクチュエータ22を駆動するための駆動圧力P11を、ブレーキアクチュエータ22へ伝達するために設けられている。駆動圧力管26は、元空気管15と、ブレーキアクチュエータ22のシリンダ室(図示せず)とに接続されている。駆動圧力管26の途中部は、第1弁装置27に接続されている。
【0054】
第1弁装置27は、第1電気指令E11として、常用ブレーキ指令が与えられた場合に、この常用ブレーキ指令の指令値に応じた駆動圧力P11を発生させるように構成されている。第1弁装置27は、駆動圧力管26を介して、元空気管15に接続されている。
【0055】
第1弁装置27は、ブレーキ制御器30と、第1電空変換弁31と、第1制御管32と、複式逆止弁33と、第1中継弁34と、を有している。
【0056】
ブレーキ制御器30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する制御装置である。ブレーキ制御器30は、第1電気指令E11として、常用ブレーキ指令を受信した場合に、第1電空変換指令E12を出力する。具体的には、ブレーキ制御器30は、第1電空変換指令E12を設定するために、第1電気指令E11と、圧力センサ28からの圧力検出値D11と、を参照する。
【0057】
圧力センサ28は、後端車両13のサスペンション装置としての空気ばね(図示せず)に接続されており、当該空気ばねの空気室内の圧力を検出する。尚、圧力センサ28によって検出される圧力検出値D11は、後端車両13の乗客等を含めた総重量に応じて変化する。
【0058】
ブレーキ制御器30は、第1電気指令E11で示されている制動指令値と、圧力検出値D11とを元に、第1電空変換指令E12を算出及び出力する。この第1電空変換指令E12は、第1電空変換弁31に与えられる。
【0059】
第1電空変換弁31は、電気信号を空気圧力信号に変換する弁として設けられている。第1電空変換弁31は、例えば、電動弁であり、当該弁31の開閉量を、複数段階に設定可能である。第1電空変換弁31は、当該弁31の開閉量を、第1電空変換指令E12に応じた値に設定する。第1電空変換弁31は、第1制御管32の途中部に設けられている。
【0060】
第1制御管32は、駆動圧力管26から分岐するように設けられている。第1電空変換弁31は、第1制御管32を介して、元空気管15に接続されている。元空気管15の流体圧力P10は、第1電空変換弁31において、第1制御圧力P12に変換される。上記の構成により、第1電空変換弁31は、第1電気指令E11に基づいて動作することで、元空気管15からの流体圧力P10を、第1制御圧力P12に変換して出力する。第1制御管32の途中部は、第1制御圧力P12が供給される複式逆止弁33に接続されている。
【0061】
複式逆止弁33は、2つの入力ポートと、1つの出力ポートと、を有する弁である。複式逆止弁33は、上記2つの入力ポートのそれぞれに異なる圧力の流体が与えられた場合に、圧力の大きいほうの流体を出力ポートに供給するように構成されている。複式逆止弁33の一方の入力ポートは、第1制御管32を介して、第1電空変換弁31に接続されており、第1制御圧力P12を受ける。複式逆止弁33の出力ポートは、第1中継弁34に接続されている。
【0062】
第1中継弁34は、第1電空変換弁31からの第1制御圧力P12、又は非常ブレーキ装置29からの後述する第1制御圧力P12’が与えられることで動作する弁である。第1中継弁34は、駆動圧力管26の途中部に接続されている。第1中継弁34は、第1ゲート34aを有している。この第1ゲート34aは、駆動圧力管26内に連続しており、この第1ゲート34aの開閉量に応じて、駆動圧力管26内の流体の通過状態が変化する。本実施形態では、第1中継弁34は、当該第1中継弁34に与えられた第1制御圧力P12、又は第1制御圧力P12’に応じて、第1ゲート34aの開閉量を設定する。
【0063】
上記の構成により、第1弁装置27は、元空気管15からの流体圧力P10を、駆動圧力P11に変換し、この駆動圧力P11を、第1ゲート34aからブレーキアクチュエータ22へ出力する。
【0064】
上述したように、第1制御圧力P12’は、非常ブレーキ装置29から出力される。非常ブレーキ装置29は、第1電気指令E11として、非常ブレーキ指令が出力された場合に、非常ブレーキ動作を生じさせるように構成されている。
【0065】
非常ブレーキ装置29は、非常ブレーキ管35と、複数の圧力調整弁36,37と、切替電磁弁38と、動作電磁弁39と、を有している。
【0066】
非常ブレーキ管35は、駆動圧力管26を介して、元空気管15に接続されている。非常ブレーキ管35の途中部には、複数の圧力調整弁36,37が設けられている。圧力調整弁36,37は、第1制御圧力P12’の値を設定するために設けられている。本実施形態では、高圧側圧力調整弁36と、低圧側圧力調整弁37が設けられている。これらの圧力調整弁36,37は、何れも、流体圧力P10を第1制御圧力P12’に変換するために設けられている。圧力調整弁36,37は、択一的に、第1制御圧力P12’を出力するように構成されている。高圧側圧力調整弁36から出力される第1制御圧力P12’は、低圧側圧力調整弁37から出力される第1制御圧力P12’よりも大きい。これらの圧力調整弁36,37は、切替電磁弁38に接続されている。
【0067】
切替電磁弁38は、高圧側圧力調整弁36からの第1制御圧力P12’と、低圧側圧力調整弁37からの第1制御圧力P12’とを、択一的に出力するように構成された、電磁弁である。切替電磁弁38は、電気指令線群14を介してブレーキ設定器21等に電気的に接続されている。これにより、切替電磁弁38は、ブレーキ設定器21からの指令等に応じて、何れの第1制御圧力P12’を出力するかを設定する。第1制御圧力P12’は、第1電空変換弁31からの第1制御圧力P12よりも大きい。
【0068】
尚、切替電磁弁38は、ブレーキ制御器30と電気的に接続されていてもよい。この場合、切替電磁弁38は、圧力センサ28の圧力検出値D11に応じた、第1制御圧力P12’を出力できる。第1制御圧力P12’は、動作電磁弁39を介して、複式逆止弁33へ出力される。
【0069】
動作電磁弁39は、非常ブレーキ動作を開始させるために設けられている。動作電磁弁39は、電気指令線群14を介して、ブレーキ設定器21と電気的に接続されている。
動作電磁弁
39は、第1電気指令E11として、非常ブレーキ指令が与えられた場合に、当該弁39の弁体を開く。これにより、第1制御圧力P12’は、複式逆止弁33を介して、第1中継弁34へ与えられる。これにより、第1中継弁34において、第1ゲート34aの開度(開き量)は、第1制御圧力P12に基づく第1ゲート34aの開度よりも大きくなる。これにより、駆動圧力P11は、常用ブレーキ指令が発せられた場合よりも大きくなり、その結果、ブレーキアクチュエータ22の動作量が、より大きくなる。その結果、鉄道車両編成10の制動力は、より大きくなる。
【0070】
以上が、第1ブレーキ制御装置23の概略構成である。次に、第2ブレーキ制御装置24の概略構成を説明する。
【0071】
[第2ブレーキ制御装置の概略構成]
第2ブレーキ制御装置24は、相手側鉄道車両編成100の後述する自動空気ブレーキ装置としての第4ブレーキ制御装置124のブレーキ管116におけるブレーキ管圧力BPを設定するために、設けられている。前述したように、第2ブレーキ制御装置24は、当該第2ブレーキ制御装置24が搭載されている鉄道車両編成10のブレーキアクチュエータ22を動作させる駆動圧力P11は、生成しない。
【0072】
第2ブレーキ制御装置24は、主ブレーキ管41と、第2弁装置42と、開放弁装置43と、バイパス管44と、一方弁45と、ブレーキ管圧力検出部46と、を有している。
【0073】
主ブレーキ管41は、ブレーキ管圧力BPを、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116へ伝達するために設けられている。主ブレーキ管41は、元空気管15と、後端車両13の連結器16とに接続されている。主ブレーキ管41は、連結器16において仕切弁47と接続されている。この仕切弁47は、鉄道車両編成10が単独で走行する場合、閉じられている。一方、仕切弁47は、鉄道車両編成10が相手側鉄道車両編成100に連結されている場合に、開かれている。この仕切弁47が開くことで、主ブレーキ管41内の空間は、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116内の空間に開かれる。主ブレーキ管41の途中部は、第2弁装置42に接続されている。
【0074】
第2弁装置42は、主ブレーキ管41を介して、元空気管15に接続されている。第2弁装置42は、ブレーキ設定器21から例えば、第1電気指令E11と同期して出力される第2電気指令E21に基づいて動作する。これにより、第2弁装置42は、元空気管15からの流体圧力P10を、給気又は排気することでブレーキ管圧力BPに変換する。本実施形態では、第2弁装置42は、第1ブレーキ制御装置23における駆動圧力P11の圧力値と関連付けられた圧力値のブレーキ管圧力BPを、設定可能である。
【0075】
第2弁装置42は、第2制御管48と、第2電空変換弁49と、第2中継弁50と、を有している。
【0076】
第2制御管48は、主ブレーキ管41から分岐するように設けられている。第2制御管48の途中部は、第2電空変換弁49に接続されている。
【0077】
第2電空変換弁49は、電気信号を空気圧力信号に変換する弁として設けられている。第2電空変換弁49は、ブレーキ解除時には当該弁49を、例えば全開にしている。第2電空変換弁49は、第2電気指令E21として、常用ブレーキ指令を受信した場合に動作するように構成されている。第2電空変換弁49は、例えば、電動弁であり、当該弁49の開閉量を、複数段階に設定可能である。第2電空変換弁49は、当該弁49の開閉量を、第2電気指令E21で示されている制動指令値に応じた値に設定する。
【0078】
第2電空変換弁49は、第2制御管48及び主ブレーキ管41を介して、元空気管15に接続されている。元空気管15の流体圧力P10は、第2電空変換弁49において、第2制御圧力P21に変換される。上記の構成により、第2電空変換弁49は、第2電気指令E21に基づいて動作することで、元空気管15からの流体圧力P10を、第2制御圧力P21に変換して出力する。第2制御管48の途中部は、空気タンク51に接続されている。空気タンク51は、アキュムレータとして設けられており、第2制御管48における圧力の脈動を抑制する。また、第2制御管48は、第2中継弁50に接続されている。
【0079】
第2中継弁50は、第2電空変換弁49からの第2制御圧力P21が与えられることで動作する弁である。第2中継弁50は、主ブレーキ管41の途中部に接続されている。第2中継弁50は、第2ゲート50aを有している。この第2ゲート50aは、主ブレーキ管41内に連続しており、この第2ゲート50aの開閉量に応じて、主ブレーキ管41内の流体の通過状態が変化する。本実施形態では、第2中継弁50は、当該第2中継弁50に与えられた第2制御圧力P21に応じて、第2ゲート50aの開閉量を設定する。
【0080】
上記の構成により、第2弁装置42は、元空気管15からの流体圧力P10を、ブレーキ管圧力BPに調整して第2ゲート50aから出力する。
【0081】
尚、主ブレーキ管41において、第2中継弁50と元空気管15との間には、第1絞り部52が設けられている。第1絞り部52は、主ブレーキ管41内の径を部分的に小さくするために設けられている。第1絞り部52を通過した主ブレーキ管41内の空気が、第2中継弁50、及び開放弁装置43を介して、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116に供給される。
【0082】
開放弁装置43は、主ブレーキ管41の途中部に接続されており、第2中継弁50からのブレーキ管圧力BPが伝達される。この開放弁装置43は、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116内のブレーキ管圧力BPを外部に急速に放出可能に構成されている。
【0083】
具体的には、開放弁装置43は、主開放弁53と、電磁開放弁54と、を有している。
【0084】
図3は、主開放弁53の拡大図である。
図1及び
図3を参照して、主開放弁53は、電磁開放弁54からの第2室60の圧力排出により、ブレーキ管116内の空気を放出可能に構成されている。
【0085】
主開放弁53は、弁箱55と、ピストン56と、弁体57と、ばね58と、を有している。
【0086】
弁箱55は、中空の箱状に形成されている。弁箱55内の空間は、ピストン56によって、第1室59と第2室60とに分けられている。ピストン56の外周部には、Oリングが巻かれており、弁箱55とピストン56との間が、気密的にシールされている。ピストン56が変位することで、第1室59の容積と第2室60の容積が変化する。
【0087】
第1室59は、第2中継弁50からのブレーキ管圧力BPが相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116に伝達される部分として設けられている。また、第2室60にも第2中継弁50からのブレーキ管圧力BPがかかっている。
【0088】
弁箱55には、第1〜第4ポート61〜64と、開放口65と、が形成されている。第1ポート61及び第2ポート62は、第1室59に開放されており、主ブレーキ管41に接続されている。この構成により、ブレーキ管圧力BPは、第1ポート61、第1室59及び第2ポート62を通って、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116に伝達される。
【0089】
第3ポート63及び第4ポート64は、第2室60に開放されている。第3ポート63は、第1ポート61と並列に接続されており、第2中継弁50からのブレーキ管圧力BPが入力されるように構成されている。第4ポート64は、電磁開放弁54に接続されている。
【0090】
開放口65は、第1室59に連続しており、第1室59と弁箱55の外部の空間とに連続している。開放口65は、弁体57によって塞がれている。弁体57は、ピストン56に固定されており、ピストン56と同期して変位する。ピストン56の変位に伴い、弁体57が変位し、これにより、開放口65が開かれる。開放口65が開かれることで、第1室59の流体が放出される。即ち、ブレーキ管116内のブレーキ管圧力BPが減圧される。
【0091】
ピストン56には、ばね58が取り付けられている。ばね58は、ピストン56を付勢(加圧)することで、開放口65を塞ぐ力を、ピストン56及び弁体57に付与している。
【0092】
上記の構成を有する主開放弁53は、電磁開放弁54に接続されている。電磁開放弁54は、電磁弁であり、第4ポート64を介して、主開放弁53の第2室60に接続されている。電磁開放弁54は、電気指令線群14を介して、ブレーキ設定器21に電気的に接続されている。電磁開放弁54は、第2電気指令E21として、非常ブレーキ指令を受信した場合に、当該弁54を開くように構成されている。これにより、第2室60内は排気され、第1室59内の圧力でピストン56及び弁体57は上昇して相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116内のブレーキ管圧力BPは外部に排出される。
【0093】
主開放弁53の近傍に、バイパス管44が設けられている。バイパス管44は、主ブレーキ管41に接続され、主開放弁53を迂回するように構成されている。バイパス管44の一端は、主ブレーキ管41における第1ポート61と第3ポート63との分岐部と、主開放弁53の第1ポート61との間に接続されている。また、バイパス管44の他端は、主ブレーキ管41において、主開放弁53の第2ポート62と接続されている部分に接続されている。バイパス管44の途中部は、一方弁45に接続されている。
【0094】
一方弁45は、バイパス管44において、第2弁装置42へ向かう圧力伝達を規制するように設けられている。本実施形態では、一方弁45は、バイパス管44の一端から他端へ向かう圧力伝達を規制している。主ブレーキ管41において、バイパス管44が接続される部分の近傍に、ブレーキ管圧力検出部46が設けられている。
【0095】
ブレーキ管圧力検出部46は、ブレーキ管116内のブレーキ管圧力BPの圧力値を検出するために設けられている。ブレーキ管圧力検出部46は、ブレーキ管圧力導入管66(以下、圧力導入管66ともいう)を有している。圧力導入管66の一端は、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116に接続されている。圧力導入管66の他端は、圧力センサ67に接続されている。この圧力センサ67は、ブレーキ管116内の圧力BPを検出し、検出した圧力検出値D21を、電気指令線群14を介して、ブレーキ制御器30に電気信号として出力する。ブレーキ制御器30は、ブレーキ管116内の圧力に基づいて第1電気指令E11を生成可能である。この場合の第1電気指令E11は、電気指令線群14を介して、非常ブレーキ装置29の動作電磁弁39へも出力可能である。これにより、鉄道車両編成10が相手側鉄道車両編成100によって牽引される場合において、ブレーキ管116内の圧力BPに対応した制動力がブレーキアクチュエータ22に生じるように、第1電気指令E11を生成することができる。即ち、第1弁装置27は、ブレーキ管圧力BPに基づいて設定された駆動圧力P11を、第1ゲート34aからブレーキアクチュエータ22へ出力可能である。
【0096】
圧力導入管66の途中部は、第2絞り部68を有している。第2絞り部68は、圧力導入管66内の径を部分的に小さくしている。また、圧力導入管66の途中部は、アキュムレータとしての空気タンク69を有している。これにより、圧力導入管66における圧力の脈動が抑制されている。
【0097】
以上がブレーキ装置20の概略構成である。
【0098】
[中間車両における鉄道車両用ブレーキ装置]
【0099】
各中間車両12は、図示しないブレーキ装置を有している。このブレーキ装置は、第1ブレーキ制御装置23と同様のブレーキ制御装置と、ブレーキアクチュエータ22と同様のブレーキアクチュエータと、を有しており、ブレーキ設定器21の電気指令に基づいて動作する。即ち、鉄道車両編成10において、ブレーキ装置20は、先頭車両11及び後端車両13にのみ設けられている。尚、ブレーキ装置20は、先頭車両11及び後端車両13の何れか一方にのみ設けられていてもよい。
【0100】
[相手側鉄道車両編成の概略構成]
次に、相手側鉄道車両編成100の構成を説明する。
図2を参照して、相手側鉄道車両編成100は、例えば、旅客車両等である。相手側鉄道車両編成100は、順次連結された複数の車両としての、先頭車両111、複数の中間車両112、及び後端車両113を有している。
【0101】
各車両111,112,113には、電気指令線群114が設置されている。また、各車両111,112,113には、元空気管115及びブレーキ管116が設置されている。元空気管115及びブレーキ管116は、それぞれ、各車両111,112,113に通しで設けられている。元空気管115内及びブレーキ管116内には、それぞれ、空気圧縮機(図示せず)で圧縮された圧縮空気が充填されている。先頭車両111及び後端車両113において、元空気管115及びブレーキ管116には、仕切弁101,102,103,104が設けられている。仕切弁101,102,103,104は、相手側鉄道車両編成100が単独で走行する場合、閉じられている。一方、相手側鉄道車両編成100が鉄道車両編成10に連結されている場合において、仕切弁101,102,103,104のうち鉄道車両編成10に連結されている連結器118の弁は、開かれている。
【0102】
相手側鉄道車両編成100の先頭車両111及び後端車両113は、何れも、ブレーキ設定器105と、自動ブレーキ弁106とを有している。
【0103】
ブレーキ設定器105は、第1電気指令E11と同様の電気信号としての第3電気指令E31を生成するように構成されており、電気指令線群114と電気的に接続されている。自動ブレーキ弁106は、ブレーキ管116内の流体圧力を減圧するために設けられており、ブレーキ管116に接続されている。
【0104】
各車両111,112,113は、鉄道車両用ブレーキ装置120(以下、単にブレーキ装置120ともいう)を有している。尚、各車両111,112,113のブレーキ装置120の構成は同様である。よって、以下では、後端車両113のブレーキ装置120の構成を主に説明し、他のブレーキ装置120の説明の詳細は、省略する。
【0105】
ブレーキ装置120は、ブレーキアクチュエータ122と、電気指令式空気ブレーキ装置としての第3ブレーキ制御装置123と、自動空気ブレーキ装置としての第4ブレーキ制御装置124と、を有している。
【0106】
ブレーキアクチュエータ122は、ブレーキアクチュエータ22と同様の構成を有しており、例えば、空気圧シリンダである。ブレーキアクチュエータ122は、ピストン(図示せず)を有しており、第3ブレーキ制御装置123からの第3制御圧力P31、又は第4ブレーキ制御装置124からの第4制御圧力P41に応じた駆動圧力P30を与えられる。ブレーキアクチュエータ122のピストンは、この駆動圧力P30によって動作する。このピストンの動作によって、ブレーキパッド(図示せず)が車輪(図示せず)に摩擦抵抗を付与する。これにより、相手側鉄道車両編成100が制動される。
【0107】
[第3ブレーキ制御装置の概略構成]
第3ブレーキ制御装置123は、駆動圧力管126と、第3弁装置127と、空気ばね圧導入管128と、を有している。
【0108】
駆動圧力管126は、ブレーキアクチュエータ122を駆動するための駆動圧力P30を、ブレーキアクチュエータ122へ伝達するために設けられている。駆動圧力管126は、元空気管115と、ブレーキアクチュエータ122のシリンダ室(図示せず)とに接続されている。駆動圧力管126の途中部は、第3弁装置127に接続されている。
【0109】
第3弁装置127は、第3電気指令E31として、常用ブレーキ指令が与えられた場合に、この常用ブレーキ指令の指令値に応じた駆動圧力P30を発生させるように構成されている。第3弁装置127は、駆動圧力管126を介して、元空気管115に接続されている。
【0110】
第3弁装置127は、ブレーキ制御器130と、第3電空変換弁131と、第3制御管132と、複式逆止弁133と、応荷重弁134と、第3中継弁135と、を有している。
【0111】
ブレーキ制御器130は、例えば、CPU、ROM、RAM等を有する制御装置である。ブレーキ制御器130は、第3電気指令E31として、常用ブレーキ指令を受信した場合に、第3電気指令E31で示されている制動指令値を基に、第3電空変換指令E32を出力する。この第3電空変換指令E32は、第3電空変換弁131に与えられる。
【0112】
第3電空変換弁131は、例えば、電動弁である。第3電空変換弁131は、当該弁131の開閉量を、第3電空変換指令E32に応じた値に設定する。第3電空変換弁131は、第3制御管132の途中部に設けられている。
【0113】
第3制御管132は、駆動圧力管126から分岐するように設けられている。元空気管115の流体圧力P10は、第3電空変換弁131において、第3制御圧力P31に変換される。第3制御管132の途中部は、第3制御圧力P31が供給される複式逆止弁133に接続されている。
【0114】
複式逆止弁133は、2つの入力ポートと、1つの出力ポートと、を有する弁である。複式逆止弁133は、上記2つの入力ポートのそれぞれに異なる圧力の流体が与えられた場合に、圧力の大きいほうの流体を出力ポートに供給するように構成されている。複式逆止弁133の一方の入力ポートは、第3制御管132を介して、第3電空変換弁131に接続されており、第3制御圧力P31を受ける。複式逆止弁133の出力ポートは、応荷重弁134に接続されている。
【0115】
応荷重弁134は、空気ばね圧導入管128を介して、後端車両113のサスペンション装置としての空気ばね(図示せず)に接続されており、当該空気ばねの空気室内の圧力が伝達される。応荷重弁134は、この空気ばねの圧力に応じた第3制御圧力P31’、又は後述する第4制御圧力P41’を、第3中継弁135に出力する。
【0116】
第3中継弁135は、第3制御圧力P31’、又は第4制御圧力P41’が与えられることで動作する弁である。第3中継弁135は、駆動圧力管
126の途中部に接続されている。第3中継弁135は、第3ゲート135aを有している。この第3ゲート135aは、駆動圧力管
126内に連続しており、この第3ゲート135aの開閉量に応じて、駆動圧力管126内の流体の通過状態が変化する。本実施形態では、第3中継弁135は、第3制御圧力P31’、又は第4制御圧力P41’に応じて、第3ゲート135aの開閉量を設定する。
【0117】
上記の構成により、第3弁装置127は、元空気管115からの流体圧力P101を、駆動圧力P30に変換して第3ゲート135aからブレーキアクチュエータ122へ出力する。
【0118】
以上が、第3ブレーキ制御装置123の概略構成である。次に、第4ブレーキ制御装置124の概略構成を説明する。
【0119】
[第4ブレーキ制御装置の概略構成]
第4ブレーキ制御装置124は、ブレーキ管116と、分配弁141と、補助タンク142と、作用室143と、を有している。
【0120】
ブレーキ管116は、第1管116a〜第4管116dを有している。ブレーキ管116のうちの第1管116aが、各車両111,112,113に通しで設けられている。第2管116bは、第1管116aから分岐しており、分配弁141に接続されている。
【0121】
分配弁141は、ブレーキ管圧力BPを分配する部分として設けられている。分配弁141は、第3管116cを介して、補助タンク142に接続されている。また、分配弁141は、第4管116dを介して、複式逆止弁133の他方のポートに接続されている。尚、第4管116dには、作用室143が接続されている。これにより、補助タンク142の容積につりあう作用室容積が形成される。
【0122】
分配弁141は、自動ブレーキ弁106が緩め位置(ブレーキ力を作用させない状態)となっている場合等、ブレーキ管圧力BPが供給されている場合に、ブレーキ管116の第1管116a内の空気を、補助タンク142へ分配する。一方、自動ブレーキ弁106がブレーキ位置(ブレーキ力を作用させる状態)で第1管116a内のブレーキ管圧力BPが減圧されると、分配弁141は、補助タンク142内の圧縮空気を、第4管116dを介して複式逆止弁133へ分配する。これにより、補助タンク142内のブレーキ圧は、第4制御圧力P41に変換され、複式逆止弁133及び応荷重弁134を介して、第4制御圧力P41’に変換される。この第4制御圧力P41’は、第3中継弁135へ出力される。
【0123】
以上が、相手側鉄道車両編成100の概略構成である。
【0124】
[鉄道車両編成と相手側鉄道車両編成とが連結されている場合の動作]
次に、鉄道車両編成10と相手側鉄道車両編成100とが連結されている場合の、ブレーキ装置20,120の動作の一例を説明する。具体的には、鉄道車両編成10が相手側鉄道車両編成100を牽引している場合の(1)ブレーキ解除時の動作、(2)常用ブレーキ動作、及び(3)非常ブレーキ動作を説明する。また、(4)相手側鉄道車両編成100が鉄道車両編成10を牽引している場合のブレーキ装置20の動作を説明する。
【0125】
尚、上記(1)〜(4)の説明においては、鉄道車両編成10の連結器16と相手側鉄道車両編成100の連結器118とが互いに連結されているとして説明する。尚、以下では、流体圧力が作用している部分のうち、説明に必要な箇所を例示的に、太線で図示する。
【0126】
[(1)鉄道車両編成10が相手側鉄道車両編成100を牽引している場合のブレーキ解除時の動作]
図4は、鉄道車両編成10の動作の一例を説明するための図である。
図5は、相手側鉄道車両編成100の動作の一例を説明するための図である。
図4及び
図5を参照して、上記(1)の場合、ブレーキ装置20の第1ブレーキ制御装置23においては、駆動圧力管26内には、第1ブレーキ制御装置23の第1中継弁34、及び第1電空変換弁31まで、元空気管15の流体圧力P10が作用している。また、第2ブレーキ制御装置24においては、第2電空変換弁49は、第2制御圧力P21を出力している。これにより、第2中継弁50が開かれている。その結果、元空気管15から流体圧力P10が、第2中継弁50においてブレーキ管圧力BPに変換され、開放弁装置43、及び連結器16,118を介して、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116の第1管116aに伝達される。これにより、第2中継弁50からの空気は、分配弁141を介して、補助空気タンク142に溜められる。また、第3ブレーキ制御装置123においては、元空気管15を介して元空気管115に伝達された流体圧力P10が、駆動圧力管126内において、第3電空変換弁131及び第3中継弁135まで作用している。
【0127】
[(2)鉄道車両編成10が相手側鉄道車両編成100を牽引している場合の常用ブレーキ動作]
図6は、鉄道車両編成10の動作の一例を説明するための図である。
図7は、相手側鉄道車両編成100の動作の一例を説明するための図である。
図6及び
図7を参照して、上記(2)の場合、鉄道車両編成10の運転手がブレーキ設定器21を操作することにより、第1電気指令E11及び第2電気指令E21として、常用ブレーキ指令がブレーキ設定器21で生成される。その結果、第1ブレーキ制御装置23においては、第1電空変換弁31からの第1制御圧力P12が第1中継弁34に伝わる。これにより、第1中継弁34の第1ゲート34aが所定量開き、第1電気指令E11の制動指令値に応じた駆動圧力P11が、第1中継弁34からブレーキアクチュエータ22に伝達される。
【0128】
また、第2ブレーキ制御装置24においては、第2電空変換弁49は、第2中継弁50から出力されるブレーキ管圧力BPが低下するように、第2制御圧力P21を変化させる。これにより、第2中継弁50の開度が、例えば少なくなり、相手側鉄道車両編成100の第4ブレーキ制御装置124においても、ブレーキ管116内のブレーキ管圧力BPが低下する。第4ブレーキ制御装置124において、分配弁141は、この圧力低下量に応じて、補助タンク142の圧縮空気を、複式逆止弁133へ供給する。その結果、第4制御圧力P41が、応荷重弁134に作用し、更に、応荷重弁134から出力される第4制御圧力P41’が、第3中継弁135に作用する。これにより、第2電気指令E21の制動指令値に応じた駆動圧力P30が、第3中継弁135からブレーキアクチュエータ122に伝達される。
【0129】
尚、常用ブレーキ動作時において、ブレーキ設定器21は、駆動圧力P11がブレーキアクチュエータ22に供給開始されるタイミングを、第2中継弁50からのブレーキ管圧力BPの供給開始タイミングよりも所定時間遅くなるように、第1電気指令E11を設定する。これにより、第1中継弁34は、第2ブレーキ制御装置24からブレーキ管圧力BPが減圧されてから所定時間(例えば、数秒)経過後に、駆動圧力P11をブレーキアクチュエータ22へ供給する。
【0130】
[(3)鉄道車両編成10が相手側鉄道車両編成100を牽引している場合の非常ブレーキ動作]
図8は、鉄道車両編成10の動作の一例を説明するための図である。
図8を参照して、上記(3)の場合、鉄道車両編成10の運転手がブレーキ設定器21を操作することにより、第1電気指令E11及び第2電気指令E21として、非常ブレーキ指令がブレーキ設定器21で生成される。この場合、第1ブレーキ制御装置23においては、動作電磁弁39が開かれる。その結果、圧力調整弁36又は圧力調整弁37(
図8では、例えば、圧力調整弁37)を介した、元空気管15からの圧力が、切替電磁弁38、動作電磁弁39、及び複式逆止弁33を介して、第1中継弁34に供給される。これにより、元空気管15の駆動圧力P11は、第1制御圧力P12’に変換されて、第1中継弁34に作用する。その結果、第1中継弁34の第1ゲート34aが大きく開き、設定上の最大の駆動圧力P11が、第1中継弁34からブレーキアクチュエータ22に伝達される。
【0131】
また、第2ブレーキ制御装置24においては、第2電気指令E21を受信した電磁開放弁54が開かれ、主開放弁53を介して、圧力が外部に放出される。これにより、ブレーキ管圧力BPが迅速に低下される。尚、この場合の相手側鉄道車両編成100の動作は、上記(2)の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0132】
尚、非常ブレーキ動作時においては、ブレーキ設定器21は、駆動圧力P11がブレーキアクチュエータ22に供給開始されるタイミングと、電磁開放弁54からのブレーキ管圧力BPの放出開始タイミングとを一致させることにより、迅速な非常ブレーキ動作の開始を実現できる。
【0133】
[(4)相手側鉄道車両編成100が鉄道車両編成10を牽引している場合の、鉄道車両編成10のブレーキ装置20の動作]
図9は、鉄道車両編成10の動作の一例を説明するための図である。
図9を参照して、上記(4)の場合、鉄道車両編成10の元空気管15及び主ブレーキ管41は、それぞれ、相手側鉄道車両編成100の元空気管115及びブレーキ管116(
図9では図示せず)に接続されている。この場合において、第2中継弁50は閉じられており、第2ブレーキ制御装置24の主ブレーキ管41の一部、及び圧力導入管66には、ブレーキ管圧力BPが作用する。このブレーキ管圧力BPは、相手側鉄道車両編成100の運転手が、自動ブレーキ弁106を操作することで変動する。圧力センサ67は、このブレーキ管圧力BPの圧力検出値D21を、ブレーキ制御器30に出力する。ブレーキ制御器30は、ブレーキ管圧力BPの圧力検出値D21に基づいて、第1電気指令E11を生成する。ブレーキ制御器30は、この第1電気指令E11に基づいて第1電空変換指令E12を出力可能である。また、ブレーキ制御器30は、第1電気指令E11を、非常ブレーキ指令として、電気指令線群14を介して、非常ブレーキ装置29へ出力可能である。これにより、前述した、常用ブレーキ動作、及び非常ブレーキ動作が、ブレーキ装置20において行われる。
【0134】
以上説明したように、本実施形態のブレーキ装置20によると、ブレーキ装置20は、鉄道車両編成10において、電気指令式空気ブレーキ装置の構成を実現できる。さらに、ブレーキ装置20は、相手側鉄道車両編成100に備えられたブレーキ管116による、自動空気ブレーキ装置としての第3ブレーキ制御装置123を、使用できる。より具体的には、ブレーキ装置20は、第1電気指令E11の指令値に応じた制動力が生じるように、ブレーキアクチュエータ22を駆動させることができる。また、ブレーキ装置20は、第2電気指令E21に基づいて、ブレーキ管圧力BPを、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116に設定することができる。このように、鉄道車両編成10を制動するためにブレーキ管を用いない構成であっても、ブレーキ管116を有する相手側鉄道車両編成100のブレーキ装置120を使用することができる。その結果、鉄道車両編成10及び相手側鉄道車両編成100を、より迅速に減速することができる。よって、迅速な車両搬送を実現できる。
【0135】
また、ブレーキ装置20によると、第1中継弁34は、第1電空変換弁31からの第1制御圧力P12に応じて第1ゲート34aの開閉量を設定できる。この構成によると、パイロット圧である第1制御圧力P12に応じて、第1中継弁34にて必要な容量の流体を、第1電気指令E11に応じた駆動圧力P11として、ブレーキアクチュエータ22へ出力できるため、電磁弁等からなる第1電空変換弁31の構成がコンパクトになる。
【0136】
また、ブレーキ装置20によると、第2弁装置42は、駆動圧力P11の値と関連付けられた値のブレーキ管圧力BPを設定可能である。この構成によると、ブレーキアクチュエータ22へ供給される駆動圧力P11と、ブレーキ管圧力BPとが互いに関連した状態となる。その結果、ブレーキ装置20は、鉄道車両編成10の制動状態と、相手側鉄道車両編成100の制動状態とを、より確実に一致させることができる。その結果、ブレーキ装置20,120の協働により、鉄道車両編成10及び相手側鉄道車両編成100を、より迅速に減速できる。
【0137】
また、ブレーキ装置20によると、第1弁装置27は、常用ブレーキ動作において、第2ブレーキ制御装置24からブレーキ管圧力BPが減圧されてから所定時間経過後に、駆動圧力P11をブレーキアクチュエータ22へ
供給するように構成されている。この構成によると、第1弁装置27は、電気信号である第1電気指令E11を受けたことに応じて、駆動圧力P11を出力し、ブレーキアクチュエータ22を動作させる。よって、第1弁装置27は、第1電気指令E11を受けてから駆動圧力P11を出力するまでの時間が短く、応答性が高い。一方、相手側鉄道車両編成100においては、ブレーキ管116内の圧力変化に応じて、相手側鉄道車両編成100のブレーキアクチュエータ122が動作される。よって、ブレーキ装置120では、ブレーキ管116内の圧力変動の伝搬速度が、電気信号の伝搬速度よりも遅く、応答性が比較的低い。このような特性に鑑み、第1弁装置27からの駆動圧力P11の供給開始時点が、第2弁装置42からのブレーキ管圧力BPの減圧開始時点よりも遅くされている。これにより、ブレーキアクチュエータ22の動作タイミングと、ブレーキアクチュエータ122の動作タイミングとの一致度が、より高くなる。その結果、制動時に相手側鉄道車両編成100が過度に鉄道車両編成10を押すことがなくなるので、連結器16,118に悪影響を与えることがない。
【0138】
また、ブレーキ装置20によると、第2中継弁50は、第2電空変換弁49からの第2制御圧力P21に応じて第2ゲート50aの開閉量を設定する。この構成によると、電気信号としての第2電気指令E21に応じたブレーキ管圧力BPおよび必要な分量の空気量を生成することができる。これにより、ブレーキ装置20は、相手側鉄道車両編成100の制動量を、より精度よく設定できる。
【0139】
また、ブレーキ装置20によると、開放弁装置43は、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116内の流体を急速(意図的)に放出可能に構成されている。この構成によると、相手側鉄道車両編成100のブレーキアクチュエータ122を駆動する際の、ブレーキ管圧力BPの非常ブレーキ作動時の急速な減圧動作を、鉄道車両編成10のブレーキ装置20において行うことができる。
【0140】
また、ブレーキ装置20によると、第2電気指令E21としての非常ブレーキ動作指令に基づいて電磁開放弁54が開くことで、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116内の圧力を、強制的に減圧できる。これにより、相手側鉄道車両編成100を、より迅速に制動できる。
【0141】
また、ブレーキ装置20によると、バイパス管44に一方弁45が設けられている。この構成によると、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116内の流体を、開放弁装置43の主開放弁53に循環させることができる。これにより、開放弁装置43内の状態を維持することができる。
【0142】
また、ブレーキ装置20によると、主ブレーキ管41に第1絞り部52が設けられている。この構成によると、単位時間あたりに主ブレーキ管41から相手側鉄道車両編成100のブレーキ管116に供給される流体の量が、所定量以上に大きくなることを抑制できる。その結果、例えば、相手側鉄道車両編成100の自動ブレーキ弁106又は図示しない車掌弁が操作された場合において、流体の供給量より放出量が多くなるように設けられていれば、ブレーキ管116内の減圧が、より確実に達成される。その結果、自動ブレーキ弁106等が操作されたことによる、相手側鉄道車両編成100の制動が、より確実に行われる。さらに、第1絞り部52は、第2中継弁50の動作によるブレーキ管圧力BP変動の応答性に影響を与え難いように配置されている。よって、迅速なブレーキ管圧力BP変動が可能である。
【0143】
また、ブレーキ装置20によると、第1弁装置27は、ブレーキ管圧力BPに基づいて設定された駆動圧力P11を、第1ゲート34aからブレーキアクチュエータ22へ出力可能である。この構成によると、例えば、相手側鉄道車両編成100が鉄道車両編成10を牽引する場合に、相手側鉄道車両編成100のブレーキ管圧力BP、即ち、相手側鉄道車両編成100の制動量に応じた第1電気指令E12を、ブレーキ制御器30において生成できる。これにより、相手側鉄道車両編成100が鉄道車両編成10を牽引する場合等において、ブレーキ装置20とブレーキ装置120との協働によって、相手側鉄道車両編成100と鉄道車両編成10とを、より迅速に制動できる。
【0144】
以上の次第で、ブレーキ装置20によると、鉄道車両編成10を制動するためにブレーキ管を用いない構成であっても、ブレーキ管116を有する相手側鉄道車両編成100のブレーキ装置120を使用することができる。
【0145】
また、鉄道車両編成10によると、ブレーキ装置20は、各車両11,12,13のうち、先頭車両11及び後端車両13の一方または両方に設けられている。この構成によると、相手側鉄道車両編成100のブレーキ装置120を使用するための第2ブレーキ制御装置24は、複数の車両11,12,133のうち、相手側鉄道車両編成100に直接連結可能な車両にのみ、設けられている。これにより、鉄道車両編成10の構成を、より簡素にできる。
【0146】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は、上述した実施形態に限られず、請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0147】
(1)第1弁装置は、第1電気指令に基づいて、常用ブレーキ指令の指令値に応じた駆動圧力を出力できればよく、具体的な構成は、上記した構成に限定されない。第2弁装置は、第2電気指令に基づいて、常用ブレーキ指令の指令値に応じたブレーキ管圧力を出力できればよく、具体的な構成は、上記した構成に限定されない。
【0148】
(2)上述の実施形態では、第1電気指令及び第2電気指令は、別の電気信号である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、第1電気指令及び第2電気指令は、同一の電気信号であってもよい。また、第1電気指令及び第2電気指令は、互いに無相関な信号であってもよい。