(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085642
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】混合燃料製造装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20060101AFI20170213BHJP
C25B 1/04 20060101ALI20170213BHJP
C25B 15/02 20060101ALI20170213BHJP
C25B 11/08 20060101ALI20170213BHJP
C10L 1/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/02 302
C25B11/08 Z
C10L1/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-115456(P2015-115456)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-2346(P2017-2346A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】515154919
【氏名又は名称】近藤 欣四郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 欣四郎
【審査官】
宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−142154(JP,A)
【文献】
特開昭63−024084(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/069164(WO,A1)
【文献】
特開昭63−024087(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/126137(WO,A1)
【文献】
特開2014−189839(JP,A)
【文献】
特開2012−031488(JP,A)
【文献】
特開平08−260176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 − 15/08
C10L 1/00 − 1/32
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスと酸素ガスが2対1の体積混合比で混ざり合った酸水素ガスを燃料に加えて混合燃料を製造する混合燃料製造装置であって、
水を電気分解して得られる水素ガスと酸素ガスから前記酸水素ガスを製造するガス製造手段と、前記酸水素ガスを前記燃料に均一に混合する混合手段と、前記ガス製造手段に電力を供給する直流電源とを備え、
前記ガス製造手段は、電気分解する水を貯留する密閉式の一つの電解槽と、
前記一つの電解槽内に隙間を設けて互いに平行に立設され、表面に白金又は白金合金からなる粉末皮膜が設けられた複数の陰極板、及び隣り合う該陰極板の中間位置にそれぞれ該陰極板に対して平行に立設され、表面にイリジウム又はイリジウム合金からなる粉末皮膜が設けられた複数の陽極板を備えた電解用電極部と、
前記直流電源と接続し、前記各陽極板と該陽極板の両側に配置された前記陰極板との間にそれぞれ所定電流を流して電気分解を行う電流調節器を備えた電流制御部と、
前記電解槽内の水位を一定に保つ水供給部とを有し、
前記各陰極板は共通となって、前記電流調節器の陰極側接続部に接続されていることを特徴とする混合燃料製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の混合燃料製造装置において、前記陰極板は、上側の左右方向の一方側に第1の凸部が形成され、表面に前記白金又は白金合金からなる粉末皮膜が設けられた正方形又は矩形のチタン板と、下端側が前記第1の凸部に取付けられ上端側が上方に突出する陰極側端子部材とを有し、前記陽極板は、上側の左右方向の他方側に第2の凸部が形成され、表面に前記イリジウム又はイリジウム合金からなる粉末皮膜が設けられた正方形又は矩形のチタン板と、下端側が前記第2の凸部に取付けられ上端側が上方に突出する陽極側端子部材とを有することを特徴とする混合燃料製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の混合燃料製造装置において、隣り合う前記陰極側端子部材及び隣り合う前記陽極側端子部材のそれぞれの取付け位置は互いに左右方向にずれていることを特徴とする混合燃料製造装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の混合燃料製造装置において、前記電流制御部は、前記電解槽から前記混合手段に供給される前記酸水素ガスの圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサで求めたガス圧力に基づいて台数を増減して前記電解槽内の前記酸水素ガスの圧力変動を一定範囲内に調節する前記複数の電流調節器とを有し、前記電解槽には該電解槽内の前記酸水素ガスの圧力が設定圧力を超えると該酸水素ガスを大気中に放散する開放弁が設けられていることを特徴とする混合燃料製造装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の混合燃料製造装置において、前記電流制御部は、前記電解槽から前記混合手段に供給される前記酸水素ガスの圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサで求めたガス圧力に基づいて電流を増減して前記電解槽内の前記酸水素ガスの圧力変動を一定範囲内に調節する前記複数の電流調節器とを有し、前記電解槽には該電解槽内の前記酸水素ガスの圧力が設定圧力を超えると該酸水素ガスを大気中に放散する開放弁が設けられていることを特徴とする混合燃料製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の混合燃料製造装置において、前記燃料は液体燃料であって、前記混合手段は渦流混合ポンプであることを特徴とする混合燃料製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合燃料製造装置において、前記直流電源は、該混合燃料製造装置の起動時に前記電流制御部に電力を供給する蓄電池と、1)該混合燃料製造装置で製造された前記混合燃料の一部、又は2)前記ガス製造手段で製造された前記酸水素ガスの一部を使用し発電を行う発電機と、得られた電力を前記蓄電池に充電する充電器とを有することを特徴とする混合燃料製造装置。
【請求項8】
請求項7記載の混合燃料製造装置において、前記発電機で得られた電力を別途利用可能とすることを特徴とする混合燃料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関や燃焼装置の燃焼効率を高めるために、燃料に酸水素ガスを加えた混合燃料を製造する混合燃料製造装置に関する。
ここで、酸水素ガス(ブラウンガス、あるいはHHOガスともいう)は、水素ガスと酸素ガスが2対1の体積混合比で混ざり合ったもので、例えば、水の電気分解によって生成される水素ガスと酸素ガスから形成される。
【背景技術】
【0002】
内燃機関や燃焼装置の改造を伴わずに燃焼効率を高める方法として、内燃機関や燃焼装置で使用する燃料に酸水素ガスを混合することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−142154号公報
【特許文献2】特開2013−234654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載された混合燃料を使用して内燃機関や燃焼装置を安定して運転するためには、混合燃料の消費に合わせて混合燃料を継続的に供給する必要がある。そのためには、混合燃料の製造に必要な量の酸水素ガスが安定して得られなければならない。ここで、特許文献1、2に記載された酸水素ガスの発生装置では、発生する酸水素ガス量が、電解槽内に設置する電極数に比例するため、多量の酸水素ガスを発生させるためには、電解槽内に設ける電極(対となる陰極と陽極)の個数を増加させる必要がある。そして、電極数を増加することは、電解槽の容積を増大させることに繋がり、内燃機関や燃焼装置の設置面積に制約が存在する場合、電解槽の容積を増大することに関しては上限値が存在するという問題がある。
【0005】
そこで、電解槽の容積増大を伴わずに酸水素ガスの発生量を増大させるには、水の電気分解効率を高める必要がある。水の電気分解効率を高めるには、対となる陰極と陽極との間の距離を狭くして電流密度を高めればよい。なお、対となる陰極と陽極の距離を狭くすると、電解槽内に設置できる電極数も増加するという利点も生じる。しかしながら、対となる陰極と陽極の距離を狭くし過ぎると、陰極と陽極との間に過電流が流れる(過電流密度となる)という問題が生じる。従って、陰極と陽極との間の距離の接近も、過電流が流れない範囲内で行わねばならず、電流密度を高めて酸水素ガスを高効率で発生させることにも限界が生じる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、水の電気分解効率を高めて酸水素ガスの発生量を増大させることにより、酸水素ガスを燃料に加えて燃焼効率の高い混合燃料を効率的に製造することが可能な混合燃料製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る混合燃料製造装置は、水素ガスと酸素ガスが2対1の体積混合比で混ざり合った酸水素ガスを燃料に加えて混合燃料を製造する混合燃料製造装置であって、
水を電気分解して得られる水素ガスと酸素ガスから前記酸水素ガスを製造するガス製造手段と、前記酸水素ガスを前記燃料に均一に混合する混合手段と、前記ガス製造手段に電力を供給する直流電源とを備え、
前記ガス製造手段は、電気分解する水を貯留する密閉式の
一つの電解槽と、
前記
一つの電解槽内に隙間を設けて互いに平行に立設され、表面に白金又は白金合金
からなる粉末皮膜が設けられた複数の陰極板、及び隣り合う該陰極板の中間位置にそれぞれ該陰極板に対して平行に立設され、表面にイリジウム又はイリジウム合金
からなる粉末皮膜が設けられた複数の陽極板を備えた電解用電極部と、
前記直流電源と接続し、前記各陽極板と該陽極板の両側に配置された前記陰極板との間にそれぞれ所定電流を流して電気分解を行う電流調節器を備えた電流制御部と、
前記電解槽内の水位を一定に保つ水供給部とを有
し、
前記各陰極板は共通となって、前記電流調節器の陰極側接続部に接続されている。
なお、前記直流電源は、該混合燃料製造装置の起動時に前記電流制御部に電力を供給する蓄電池と、1)該混合燃料製造装置で製造された前記混合燃料の一部、又は2)前記ガス製造手段で製造された前記酸水素ガスの一部を使用し発電を行う発電機と、得られた電力を前記蓄電池に充電する充電器とを有することもできる。また、前記発電機で得られた電力を別途利用可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る混合燃料製造装置においては、陰極板の表面に白金又は白金合金
からなる粉末皮膜を設けることにより、陰極板の表面に微細な凹凸を形成することができ、陽極板の表面にイリジウム又はイリジウム合金
からなる粉末皮膜を設けることにより陽極板の表面に微細な凹凸を形成することができる。これにより、陰極板及び陽極板(電解用電極部)の表面積を増大させることができ、陰極板及び陽極板からそれぞれ発生する水素ガス量及び酸素ガス量を増加させることが可能になる。
また、各陽極板と陽極板の両側に配置された陰極板との間にそれぞれ所定電流を流す電流調節器を備えた電流制御部を設けるので、陰極板と陽極板の距離を接近させても過電流が流れる(過電流密度となる)ことを防止できる。その結果、電解槽を増大させずに陰極板と陽極板の数を増やすことにより酸水素ガスの発生量を増大させることができ、混合燃料を効率的に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る混合燃料製造装置のブロック図である。
【
図2】(A)及び(B)は同混合燃料製造装置で使用する陰極板の側面図、(C)は同混合燃料製造装置で使用する陽極板の側面図、(D)は同混合燃料製造装置の電解槽に陰極板、陽極板を配置する際の取付け状況を示す側断面図である。
【
図3】同混合燃料製造装置の電解槽内の陰極板及び陽極板の配置状況を示す平面図である。
【
図4】電解槽内に配置された陽極板とその両側の配置された陰極板との間に電流を流す電流調節器の接続状態を示す説明図である。
【
図7】変形例に係る直流電源を有する混合燃料製造装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る混合燃料製造装置10は、水素ガスと酸素ガスが2対1の体積混合比で混ざり合った酸水素ガスを燃料の一例である液体燃料に加えて混合燃料を製造するものであって、水を電気分解して得られる水素ガスと酸素ガスから酸水素ガスを製造するガス製造手段11と、酸水素ガスを液体燃料に均一に混合する混合手段の一例である渦流混合ポンプ12と、ガス製造手段11に電力を供給する直流電源13とを備えている。ここで、液体燃料とは、例えば、内燃機関(ICE)に使用される燃料で、例えば、A重油、C重油、軽油等の化石燃料や、バイオマスから製造されるメタノール、エタノール等をさす。
【0011】
図1に示すように、ガス製造手段11は、電気分解する水14(
図4参照)を貯留する密閉式の一槽の電解槽15と、電解槽15内に隙間を設けて交互に平行に立設され、表面に白金又は白金合金の粉末の溶射により形成された白金系皮膜16が設けられたそれぞれ複数の陰極板17、17a(
図2(A)、(B)、
図3参照)、隣り合う陰極板17と陰極板17aの中間位置にそれぞれ陰極板17、17aに対して平行に立設され、表面にイリジウム又はイリジウム合金の粉末の溶射により形成されたイリジウム系皮膜18が設けられた複数の陽極板19(
図2(C)、
図3参照)を備えた電解用電極部20と、直流電源13と接続し、各陽極板19と陽極板19の両側に配置された陰極板17との間に(陽極板19と対向する陰極板17、17aとの間に)それぞれ所定電流を流して電気分解を行う電流調節器42(
図4、
図5参照)を備えた電流制御部22と、電解槽15内の水14の水位を一定に保つ水供給部23とを有している。
ここで、一槽の電解槽15内に複数の陰極板17、17a及び陽極板19を交互に並べて配置する場合、隣り合う陰極板17と陰極板17aの中間位置に陽極板19をそれぞれ並べて電解用電極部20を形成し、電解用電極部20の両側には陰極板17が配置されるようにする。以下、詳細に説明する。
【0012】
電解用電極部20の一端側を起点として、奇数番目に配置される陰極板17は、
図2(A)に示すように、上側の左右方向の一方側に第1の凸部24が形成され、表面に白金系皮膜16が設けられた正方形又は矩形のチタン板25と、下端側が第1の凸部24に取付けられ上端側が上方に突出する、例えば、チタン製の陰極棒26(陰極側端子部材の一例)とを有している。また、偶数番目に配置される陰極板17aは、
図2(B)に示すように、チタン板25を有している(陰極側端子部材は取付けられていない)。ここで、チタン板25の厚さは、例えば、1〜2mm、白金系皮膜16の厚さは1〜2μmであり、第1の凸部24の一方側には貫通孔71が形成されている。また、陰極棒26の外径は、例えば、3〜5mm、陰極棒26の長手方向の中間部より上側には、外径が6〜10mmで厚さが1〜2mmの平面視して環状の鍔部27が形成され、陰極棒26の上端側には雄ねじ部28が形成されている。なお、陰極棒26の下端側を第1の凸部24に取付ける際、陰極棒26の下端側と第1の凸部24との連結領域の長さは、例えば、第1の凸部24の突出高さの1/2程度とする。これによって、陰極板17の隣に配置される陽極板19と陰極棒26が干渉するのを防止できる。
【0013】
図2(C)に示すように、陽極板19は、上側の左右方向の他方側に第2の凸部29が形成され、表面にイリジウム系皮膜18が設けられた正方形又は矩形のチタン板30と、下端側が第2の凸部29に取付けられ上端側が上方に突出する、例えば、チタン製の陽極棒31(陽極側端子部材の一例)とを有している。ここで、チタン板30はチタン板25と同一形状であって、イリジウム系皮膜18の厚さは1〜2μmである。また、陽極棒31の外径は、例えば、3〜5mm、陽極棒31の長手方向の中間部より上側には、外径が6〜10mmで厚さが1〜2mmの平面視して環状の鍔部32が形成され、陽極棒31の上端側には雄ねじ部33が形成されている。なお、陽極棒31の下端側を第2の凸部29に取付ける際、陽極棒31の下端側と第2の凸部29との連結領域の長さは、例えば、第2の凸部29の突出高さの1/2程度とする。これによって、陽極板19の両側に配置される陰極板17、17a(チタン板25)と陽極棒31が干渉するのを防止できる。
【0014】
チタン板25の表面に白金系皮膜16を溶射により形成する場合に使用する粉末(溶射原料)の粒径は、例えば、1〜2μmであり、チタン板30の表面にイリジウム系皮膜18を溶射により形成する場合に使用する粉末(溶射原料)の粒径は、例えば、1〜2μmである。ここで、白金系皮膜16、イリジウム系皮膜18をそれぞれ形成する場合、溶射原料を完全に溶融させず、表層部分のみを溶融状態にして溶射を行うことが好ましい。これによって、溶射原料がチタン板25、30に付着する際、溶射原料が大きく変形することを防止して、白金系皮膜16、イリジウム系皮膜18のそれぞれの表面に微細な凹凸を形成することができる。その結果、陰極板17、17a、陽極板19の表面積を増大させることができる。
【0015】
陰極棒26の下端側を第1の凸部24に取付ける際、陰極棒26の下端側と第1の凸部24との連結領域の長さは、例えば、第1の凸部24の突出高さの1/2程度とし、陽極棒31の下端側を第2の凸部29に取付ける際、陽極棒31の下端側と第2の凸部29との連結領域の長さは、例えば、第2の凸部29の突出高さの1/2程度とするので、
図2(A)〜(C)に示すように、チタン板25から第1の凸部24を除いた領域の上側の左右両側と下側の左右両側に、チタン板30から第2の凸部29を除いた領域の上側の左右両側と下側の左右両側にそれぞれ貫通孔71aを形成することができる。これにより、チタン板25とチタン板30にそれぞれ形成した貫通孔71aの間に絶縁部材の一例である樹脂製環状スペーサ部材72(外径は貫通孔71aの内径より大きく、内径は貫通孔71aの内径に一致し、厚さは隣り合う隣り合うチタン板25とチタン板30との間の距離に一致)を中心位置が貫通孔71aの中心位置に一致するように配置しながら陰極板17、17aと陽極板19を交互に所定枚数だけ積み重ねることにより、両側に陰極板17が配置され、陰極板17、17aの間に(中央に)陽極板19が配置された集合体を形成することができる。そして、集合体の一側に配置された陰極板17の貫通孔71aから絶縁部材の一例である樹脂製棒74aを差し込み、他側に配置された陰極板17の貫通孔71aから突出させ、樹脂製棒74aの両端部に樹脂製ストッパー(図示せず)を取付けることにより集合体を一体化することができる。なお、樹脂製環状スペーサ部材72の厚さを調節することにより、陰極板17、17aと隣り合う陽極板19との間の距離を所望の値に設定することができる。
【0016】
図3に示すように、それぞれ複数の陰極板17、17a、陽極板19、樹脂製環状スペーサ部材72、樹脂製棒74a及び樹脂製ストッパーを用いて集合体を構成した際に、陰極板17、17aのチタン板25にそれぞれ形成した貫通孔71の中心位置は一つの直線上に並ぶ。従って、隣り合う第1の凸部24に形成した貫通孔71の間にチタン製環状スペーサ部材73(外径は貫通孔71の内径より大きく、内径は貫通孔71の内径に一致し、厚さは隣り合う第1の凸部24間の距離に一致)を中心位置を貫通孔71の中心位置に合わせて配置し、先側に雄ねじ部(図示せず)が設けられたチタン製棒74を積層体の一側に配置した陰極板17の貫通孔71から差し込み、他側に配置された陰極板17の貫通孔71から突出するチタン製棒74の先側に形成した雄ねじ部にチタン製ナットを螺合させることにより、複数の陰極板17、17aをチタン製棒74を介して接続することができ、電解用電極部20が形成される。
【0017】
図3に示すように、隣り合う陰極棒26の第1の凸部24に対する取付け位置は一致している。なお、状況に応じて、隣り合う陰極棒26の第1の凸部24に対する取付位置を互いに左右方向にずらしてもよい。これによって、陰極棒26同士が干渉することを防止できる。また、隣り合う陽極棒31(隣り合うチタン板30の第2の凸部29に取付ける陽極棒31)の取付け位置は互いに左右方向にずれている。これにより、隣り合う陽極棒31の接触(鍔部32同士の接触)を防止できる。
また、
図4に示すように、電解槽15を、例えば、強化プラスチック(例えば、強化塩化ビニル)製で上端側に開口部が設けられた立方体又は直方体の水貯留部34と、水貯留部34の外側に設けられた金属製の補強枠体(図示せず)と、水貯留部34に図示しない締結機構を介して密接状態で取付けられる強化プラスチック製の蓋部35(
図2(D)参照)とを有する構成とする。
【0018】
ここで、蓋部35の一方側には、水貯留部34内に配置しようとする複数の陰極板17の位置に基づいて、陰極板17に設けた陰極棒26が挿通可能な孔36が並べて形成されており、蓋部35の他方側には、水貯留部34内に配置しようとする複数の陽極板19の位置に基づいて、陽極板19に設けた陽極棒31が挿通可能な孔37が並べて形成されている。従って、
図2(D)に示すように、孔36に陰極棒26の上端側を、陰極棒26の鍔部27と蓋部35の間に陰極棒26の上端側に挿通させた円環状のシール部材38を介して挿通し、押え金具39を介して雄ねじ部28に羅合するナット40を用いて締結すると、孔36からのガス漏れを防止して蓋部35に陰極棒26を固定することができ、孔37に陽極棒31の上端側を、陽極棒31の鍔部32と蓋部35の間に陽極棒31の上端側に挿通させた円環状のシール部材38を介して挿通し、押え金具39を介して雄ねじ部33に羅合するナット40を用いて締結すると、孔37からのガス漏れを防止して蓋部35に陽極棒31を固定することができる。これにより、陰極板17と陽極板19の距離が、例えば、2〜3mmになるようにして、陰極板17と陽極板19を蓋部35に並べて固定することができる。
【0019】
次いで、陰極棒26及び陽極棒31がそれぞれ固定された蓋部35を水貯留部34に密接させることにより、密閉式の電解槽15内に、隙間を設けて互いに平行に立設され、表面に白金系皮膜16が設けられた複数の陰極板17、17aと、隣り合う陰極板17、17aの中間位置にそれぞれ陰極板17、17aに対して平行に立設され、表面にイリジウム系皮膜18が設けられた複数の陽極板19を備えた電解用電極部20を構成することができる。
なお、チタン板25、30の表面積(即ち、縦寸法及び横寸法)と、陰極板17、17a及び陽極板19の枚数(電極数)は、一組の陰極板17、17a及び陽極板19の単位面積当たりの酸水素ガスの発生量に応じてそれぞれ設定する。
【0020】
図1、
図4に示すように、電流制御部22は、各陽極板19とその両側に配置された陰極板17、17aとの間に一定電流を流す複数(陽極板19の個数と一致)の電流調節器42と、電解槽15から渦流混合ポンプ12に図示しないガス供給配管を介して供給される酸水素ガスの圧力を検出し、検出値を各電流調節器42に入力する圧力センサ41と、ガス供給配管の圧力センサ41より下流側となる位置に取付けられ、通過する酸水素ガスの流量を検出し、検出値を各電流調節器42に入力する流量計41aとを有している。そして、電流調節器42には、稼働圧力範囲がそれぞれ設定されており、圧力センサ41から入力された検出値が稼働圧力範囲の上限値を超えた場合、電流の供給を停止する。これにより、ガス供給配管内の酸水素ガスの圧力が上昇することに伴って、電流の供給を行う電流調節器42の台数を徐々に減少させることができ、電解槽15内の酸水素ガスの圧力変動を一定範囲内に調節することができると共に、陽極板19と陰極板17、17a間の距離の影響を受けずに、陽極板19とその両側の陰極板17、17aとの間に一定電流を流すことができ、陰極板17、17aと陽極板19との距離を2〜3mmとしても過電流が流れる(過電流密度となる)ことを防止できる。また、各電流調節器42は、流量計41aから入力された検出値が0の場合に電流を停止する機能を備えている。これにより、ガス製造手段11に損傷が生じた際に迅速に対応することができる。
ここで、符号43は、電解槽15(例えば、蓋部35)に取付けられ、電解槽15内の酸水素ガスの圧力が設定圧力を超えると酸水素ガスを大気中に放散する開放弁、符号43aは、ガス供給配管の圧力センサ41より上流側となる位置に取付けられ、酸水素ガス中に含まれる水分を分離するミストセパレータである。
【0021】
図5に、電流制御部22を構成する複数の電流調節器42を示す。各電流調節器42は、直流電源13から供給される電力を用いて一定電流を出力する電流発生部75と、圧力センサ41、流量計41aからそれぞれ入力される検出値に基づいて作動し、直流電源13から電流発生部75への電力供給を入り切りするスイッチ部76とを有している。
【0022】
図3に示すように、複数の陰極板17、17aはチタン製棒74を介して接続しており、陰極板17、17aの総数は陽極板19の総数より1つ多い。このため、電解用電極部20の一方の端側に並んで配置される2つの陽極板19の陽極棒31と陽極側接続部がそれぞれ接続する電流調節器42の陰極側接続部は一方の端側に配置される陰極板17の陰極棒26と接続し、電解用電極部20の他方の端側に並んで配置される2つの陽極板19の陽極棒31と陽極側接続部がそれぞれ接続する電流調節器42の陰極側接続部は他方の端側に配置される陰極板17の陰極棒26と接続する。そして、残りの陽極板19の陽極棒31と陽極側接続部がそれぞれ接続する電流調節器42の陰極側接続部は、隣に配置される陰極板17の陰極棒26と接続する。このような、構成とすることにより、複数の電流調節器42の中で、任意の電流調節器42の稼働を停止させても、稼働中の電流調節器42と接続する陽極板19とその両側に配置される陰極板17、17aとの間で水14の電気分解を行うことができる。
【0023】
図1、
図6に示すように、液体燃料に酸水素ガスを混合する渦流混合ポンプ12は、側面視して円形のポンプ本体44と、ポンプ本体44の外周部に内部と連通状態で取付けられ、燃料タンク45と図示しない搬送配管を介して接続して液体燃料をポンプ本体44内に導入する流入口46と、ポンプ本体44内に設けられ、図示しないモータと連結する回転軸47にポンプ本体44の内周面との間に隙間48を設けて取付けられ、外周部には周方向に沿って一定角度位置毎に半径方向外側に突出する小羽根49が形成された羽根車50とを有している。更に、渦流混合ポンプ12は、ガス供給配管と接続し、流入口46の下流側と隙間48との合流領域51内に酸水素ガスを排出するガス吹込み口52と、ポンプ本体44の外周部において、流入口46に対して羽根車50の回転方向の下流側となる位置に内部と連通状態で取付けられ、液体燃料に酸水素ガス混合させた混合燃料を排出する排出口53とを有している。
【0024】
このような構成とすることにより、回転軸47を介して羽根車50を回転させると、流入口46から合流領域51に進入した液体燃料とガス吹込み口52から吹き込まれた酸水素ガスは、それぞれ隙間48内に押し込まれる。ここで、隙間48内に押し込まれた液体燃料は、小羽根49間に形成される羽根溝54内と隙間48との間で渦流となるので、吹き込まれた酸水素ガスは液体燃料中に、例えば、20〜50μmの気泡となって混合する。なお、酸水素ガスの混合率は、例えば、酸水素ガスの圧力、流量を調節することにより任意に設定可能となる。更に、内燃機関(ICE)への混合燃料の供給圧力も、現状の内燃機関への液体燃料の供給圧力に合わせることができる。
【0025】
図1に示すように、直流電源13は、混合燃料製造装置10の起動時に電流制御部22に設けられた各電流調節器42に電力を供給する蓄電池55と、ガス製造手段11で製造された酸水素ガスの一部を燃料に使用し発電を行う発電機56と、得られた電力を蓄電池55に充電する充電器57とを有している。なお、発電機56は、酸水素ガスを燃料にして駆動する内燃機関58と、内燃機関58と接続して回転するロータ(図示せず)を備えた発電部59とを有している。また、符号58a、58bはそれぞれ、内燃機関58に燃料として酸水素ガスを供給するガス配管に取付けた逆火防止器、開閉弁である。
【0026】
図7に変形例に係る直流電源60を示す。直流電源60は、混合燃料製造装置61の起動時に電流制御部22に設けられた各電流調節器42に電力を供給する蓄電池55と、混合燃料製造装置61で製造された混合燃料の一部を燃料に使用して発電を行う発電機62と、得られた電力を蓄電池55に充電する充電器57とを有している。ここで、発電機62は、混合燃料で駆動する内燃機関63と、内燃機関63と接続して回転するロータ(図示せず)を備えた発電部64とを有している。また、符号65は、内燃機関63に混合燃料を供給する燃料配管に取付けた開閉弁である。
【0027】
図1、
図8に示すように、水供給部23は、例えば、水を貯留する水タンク66と、電解槽15内の水14の水位を検出する水位センサ67と、水タンク66と電解槽15の間に設けられた水供給配管68と、水供給配管68に設けられ、水タンク66から電解槽15に水を圧送する送水ポンプ69と、電解槽15内の水14の水位が設定された下限値以下の場合に送水ポンプ69に運転信号を、電解槽15内の水14の水位が設定された上限値を超える場合に送水ポンプ69に停止信号を出力する制御器70とを有している。なお、電解槽15内の水14には予め電解質、例えば、炭酸水素ナトリウムを濃度が3〜5質量%となるように溶解させている。電解槽15内の水14を電気分解すると、水14の質量は減少するが、炭酸水素ナトリウムの質量は不変なので、電解槽15内の水14の減少に伴って水タンク66から水を補充して電解槽15内の水位を一定範囲に調節すると、電解槽15内の水14中の炭酸水素ナトリウムの濃度を一定範囲に保持することができる。これにより、各陽極板19と隣り合う陰極板17、17aとの間にそれぞれ一定電流を流すことにより、水の電気分解速度(酸水素ガスの生成速度)を一定範囲に保持することができる。
【0028】
例えば、内側の縦寸法が300mm、横寸法が300mm、高さ(深さ)が360mmとなって耐圧が0.35MPaの電解槽15を作製し、この電解槽15内に、厚さが1mmで第1の凸部24を除いた縦寸法と横寸法が200mmの陰極板17、17aを5mmの間隔を設けて8枚平行に配置し、隣り合う陰極板17、17aの中央位置にそれぞれ、厚さが1mmで第2の凸部29を除いた縦寸法と横寸法が200mmの陽極板19を配置して(従って、それぞれ隣り合う陰極板17、17aと陽極板19の距離は2mmとなる)、8枚の陰極板17、17aと7枚の陽極板19で構成された電解用電極部20を設ける。また、電解槽15に取付ける開放弁43の作動圧力を0.25〜0.3MPa、電流調節器42に設定する上限圧力を0.2〜0.25MPa、下限圧力を0.1〜0.15MPaにそれぞれ設定して、陽極板19と陰極板17、17aの間に12〜18アンペア(例えば15アンペア)の電流を流して水14(電解質として、炭酸水素ナトリウムを3〜5質量%(例えば4質量%)の濃度に溶解させる)の電気分解を行うと、ガス製造手段11により平均圧力が0.15MPaの酸水素ガスを1分間当たり1.5リットル製造することができる。
【0029】
続いて、本発明の一実施の形態に係る混合燃料製造装置10の作用について説明する。
図2、
図3に示すように、陰極板17、17aの表面に白金又は白金合金の粉末を溶射した白金系皮膜16を設けることにより、陰極板17、17aの表面に微細な凹凸を形成することができ、陽極板19の表面にイリジウム又はイリジウム合金の粉末を溶射しイリジウム系皮膜18を設けることにより陽極板19の表面に微細な凹凸を形成することができる。これにより、陰極板17、17a及び陽極板19(電解用電極部20)の表面積を増大させることができ、陰極板17、17a及び陽極板19からそれぞれ発生する水素ガス量及び酸素ガス量を増加させることができる。
【0030】
また、
図4に示すように、陽極板19と陽極板19の両側に配置された陰極板17、17aとの間にそれぞれ一定電流を流す電流調節器42を配置するので、陰極板17、17aと陽極板19の距離を接近させても過電流が流れる(過電流密度となる)ことを防止できる。そして、陰極板17、17aと陽極板19の距離を接近させることができるため、電解槽15を増大させずに電解槽15内に配置する陰極板17、17aと陽極板19の数を増やすことができる。その結果、酸水素ガスの発生量を増大させることができ、発電機56の運転用燃料及び混合燃料(発電機62の運転用燃料も含む)を効率的に製造することが可能になる。
なお、
図1、
図7に示すように、発電機56、62から電力を供給できない事情が発生した場合は、外部電源(例えば、商用電源、ソーラパネル)77から電力を貰うこともできる。
【0031】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、本実施の形態では、ガス供給配管内の酸水素ガスの圧力が上昇することに伴って、電流の供給を行う電流調節器の台数を徐々に減少させたが、酸水素ガスの圧力に基づいて各電流調節器から流す電流値を調節するようにしてもよい。これにより、渦流混合ポンプに供給される酸水素ガスの圧力変動幅を小さくすることができる。
また、本実施の形態では、酸水素ガス、混合燃料を内燃機関に供給する場合について説明したが、燃焼装置に供給することもできる。
更に、発電機で得られた電力を別途利用可能とすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
10:混合燃料製造装置、11:ガス製造手段、12:渦流混合ポンプ、13:直流電源、14:水、15:電解槽、16:白金系皮膜、17、17a:陰極板、18:イリジウム系皮膜、19:陽極板、20:電解用電極部、22:電流制御部、23:水供給部、24:第1の凸部、25:チタン板、26:陰極棒、27:鍔部、28:雄ねじ部、29:第2の凸部、30:チタン板、31:陽極棒、32:鍔部、33:雄ねじ部、34:水貯留部、35:蓋部、36:孔、37:孔、38:シール部材、39:押え金具、40:ナット、41:圧力センサ、41a:流量計、42:電流調節器、43:開放弁、43a:ミストセパレータ、44:ポンプ本体、45:燃料タンク、46:流入口、47:回転軸、48:隙間、49:小羽根、50:羽根車、51:合流領域、52:ガス吹込み口、53:排出口、54:羽根溝、55:蓄電池、56:発電機、57:充電器、58:内燃機関、58a:逆火防止器、58b:開閉弁、59:発電部、60:直流電源、61:混合燃料製造装置、62:発電機、63:内燃機関、64:発電部、65:開閉弁、66:水タンク、67:水位センサ、68:水供給配管、69:送水ポンプ、70:制御器、71、71a:貫通孔、72:樹脂製環状スペーサ部材、73:チタン製環状スペーサ部材、74:チタン製棒、74a:樹脂製棒、75:電流発生部、76:スイッチ部、77:外部電源