(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するアタッチメント監視システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
また、以下では、アタッチメントが油圧ブレーカであり、かかる油圧ブレーカが取り付けられる作業機械が「油圧ショベル」である場合を主たる例に挙げて説明を行う。なお、油圧ブレーカについては以下、「ブレーカ」と記載する。
【0015】
また、以下では、同一の構成要素が複数個ある場合、かかる構成要素の符号に「−n」(nは自然数)の形式で付番を行い、それぞれを識別可能にあらわす場合がある。なお、かかる構成要素を総称する場合、上述の付番は行わない。
【0016】
まず、実施形態に係るブレーカ監視システムの概要について、
図1A〜
図1Cを参照して説明する。
図1A〜
図1Cは、本実施形態に係るブレーカ監視システム1の概要説明図(その1)〜(その3)である。
【0017】
図1Aに示すように、ブレーカ監視システム1は、複数の油圧ショベル10と、ネットワークNと、インターネットWと、サーバ装置20と、各種端末30,40とを含んでいる。なお、
図1Aでは、便宜上、3台の油圧ショベル10−1,10−2,10−3を図示しているが、無論、油圧ショベル10の台数を限定するものではない。
【0018】
油圧ショベル10−1,10−2,10−3にはそれぞれ、ブレーカ15−1,15−2,15−3が取り付けられる。また、油圧ショベル10−1,10−2,10−3にはそれぞれ、端末装置17−1,17−2,17−3が設けられている。
【0019】
端末装置17−1,17−2,17−3はそれぞれ、対応するブレーカ15−1,15−2,15−3の稼働状況をネットワークNへ送信する(ステップS1)。ネットワークNは、たとえば携帯電話回線網である。
【0020】
ここで、
図1Aに示すM1部を拡大した
図1Bおよび
図1Cを参照して、ブレーカ15の稼働状況を取得する方法について説明する。
図1Bに示すように、ブレーカ監視システム1は、計測ユニット16を備える。
【0021】
計測ユニット16は、油圧ショベル10のアーム14(「作業アーム」の一例に相当)に取り付けられる。また、計測ユニット16は、個体識別情報に基づいて識別されるブレーカ15の駆動時における振動および油圧を計測可能に設けられる。
【0022】
ブレーカ15の個体識別は、たとえばRFID(Radio Frequency Identifier)を利用して行われる。具体的には、ブレーカ15の個体識別情報は、たとえばかかる個体識別情報が記録されたIC(Integrated Circuit)タグ15aがブレーカ15に貼り付けられることによって、ブレーカ15側に保持される。
【0023】
かかる場合、計測ユニット16は、ICタグ15aの個体識別情報を、無線通信によって読み取り可能に設けられる。たとえば、ICタグ15aがパッシブタグであれば、計測ユニット16は、ICタグ15aへ向けて電波を送信し、その反射波に乗せられて返された個体識別情報を受信することによって、ブレーカ15を個体識別する(ステップS1−1)。
【0024】
なお、ここではICタグ15aがパッシブタグである例を挙げたが、アクティブタグやセミアクティブタグであってもよい。また、RFIDを利用する場合に限らなくともよい。したがって、有線通信であってもよい。
【0025】
また、具体的には
図2B以降において図示するが、計測ユニット16は、油圧センサ16bと、振動センサ16cとを備える。計測ユニット16は、かかる油圧センサ16bと、振動センサ16cとによって、ブレーカ15の振動および油圧を計測する(ステップS1−2)。なお、本実施形態では、ブレーカ15を駆動させる作動油に関し、油圧センサ16bによりその油圧を計測する例を挙げて説明を進めるが、流量を計測してもよい。その場合、計測ユニット16は、たとえば流量計を備えることとなる。
【0026】
そして、さらに、計測ユニット16は、油圧ショベル10に設けられた端末装置17と通信可能に設けられている。端末装置17は、かかる通信可能な計測ユニット16から、ブレーカ15の個体識別情報および計測結果を取得する(ステップS1−3)。
【0027】
このように、本実施形態では、ブレーカ15を個体識別し、かかるブレーカ15ごとの個体識別情報および計測結果を紐付けて取得することとした。したがって、
図1Cに示すように、たとえば同一のブレーカ15−1が、作業機械DIG_1,DIG_2,RBT_1に順次取り付けられ、使用されても、作業機械との組み合わせに関わりなく、ブレーカ15−1個体の稼働状況を随時取得することが可能となる。
【0028】
図1Aの説明に戻り、つづいてサーバ装置20について説明する。サーバ装置20は、たとえばインターネットW上の仮想サーバとして設けられ、ステップS1において送信された各ブレーカ15−1,15−2,15−3の稼働状況を、ネットワークNを介して収集する(ステップS2)。
【0029】
また、サーバ装置20は、収集した各稼働状況を解析し、ブレーカ稼働情報DB(データベース)22aへ蓄積する(ステップS3)。また、サーバ装置20は、解析した解析結果の内容を含む、ブレーカ15ごとの稼働情報を各種端末30,40へ提供する(ステップS4)。
【0030】
かかる情報提供は、たとえばWeb画面を介した閲覧形式にて行われる。したがって、各種端末30,40を保有する保守拠点の保守員や、営業マン、該当のブレーカ15を実際に使用中のエンドユーザ等が、時や場所を問わずに、所望のブレーカ15の稼働情報を閲覧することができる。
【0031】
また、稼働情報には、たとえば計測ユニット16の計測結果に基づいて推定されるブレーカ15の異常やその予兆、ブレーカ15ごとの累積稼働時間や現在位置等を含むことができる。また、ブレーカ15の異常やその予兆に対しては、かかる異常や予兆の内容を示すアラーム通知を行うことができる。
【0032】
したがって、たとえば、ブレーカ15の部品に深刻なダメージを与える前に保守員にメンテナンスを促すことができるので、修理コストが嵩むのを抑えることができる。なお、計測ユニット16の計測結果に基づいてブレーカ15の異常やその予兆を推定する方法の一例については、
図6A〜
図7Bを用いた説明で後述する。
【0033】
また、たとえばブレーカ15の累積稼働時間に基づき、経年劣化に伴うメンテナンス予測等を行うことができる。また、営業マンにとっては、累積稼働時間を含むブレーカ15ごとの稼働情報を正確に把握することができるため、エンドユーザとのたとえばリース契約交渉において、部品交換の最適なタイミングの提示等を含めた適切な交渉を行うことができる。また、ブレーカ15を構成する消耗部品の交換時期の予測と告知を可能にすることもできる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、作業機械との組み合わせに関わりなく、ブレーカ15ごとの稼働状況を監視することができるとともに、その監視結果により、保守員、営業マン、エンドユーザら各関係者の業務活動が良質なものとなるように支援することができる。
【0035】
以下、より具体的に、ブレーカ監視システム1を構成する各構成要素について説明してゆく。
図2Aは、油圧ショベル10の構成を示す図である。また、
図2Bは、計測ユニット16の構成を示す図である。
【0036】
図2Aに示すように、油圧ショベル10は、クローラー11と、基台部12と、ブーム13と、アーム14と、ブレーカ15と、計測ユニット16と、端末装置17と、照明18とを備える。
【0037】
クローラー11は、不整地での移動を可能に設けられた移動機構であって、たとえば
図2Aに示すように無限軌道として構成される。基台部12は、クローラー11に対し、図示略の鉛直軸まわりに旋回可能に設けられ、操縦するためのコックピットを備える。
【0038】
ブーム13は、基端部において、基台部12に対し図示略の水平軸まわりに回動可能に設けられる。ブーム13は、基台部12とブーム13とを連結する第1シリンダ12aの伸縮によって回動する。
【0039】
アーム14は、基端部において、ブーム13の先端部に対し図示略の水平軸まわりに回動可能に設けられる。アーム14は、ブーム13とアーム14とを連結する第2シリンダ13aの伸縮によって回動する。
【0040】
ブレーカ15は、アーム14の先端部に設けられ、アーム14の先端部に対し図示略の水平軸まわりに揺動可能に設けられる。ブレーカ15は、アーム14とブレーカ15とを連結する第3シリンダ14aの伸縮によって揺動する。
【0041】
なお、第1シリンダ12a、第2シリンダ13a、第3シリンダ14aはそれぞれ油圧シリンダであるが、
図2Aではこれらを伸縮させる油圧系統については、説明の便宜上、図示を省略している。
【0042】
また、基台部12は、その内部に、作動油タンク12bと、油圧ポンプ12c(「流体圧発生装置」の一例に相当)と、コントロールバルブ12dと、フットペダル12eとを備える。コントロールバルブ12dからは、ブーム13およびアーム14沿いにブレーカ15用の配管12f(「第1給排路」の一例に相当)が延びている。
【0043】
ブレーカ15は、チゼル15bと、シリンダ15cと、油圧ホース15d(「第2給排路」の一例に相当)とを備える。ブレーカ15は、作業員によるフットペダル12eの操作に応じ、油圧ポンプ12c側から配管12f、油圧ホース15dを介して給排される作動油の流体圧によって、シリンダ15cのピストンを連続的に昇降させる(図中の矢印201参照)。なお、かかる昇降には、シリンダ15cのピストン上部に封入された窒素ガス等のガスも寄与しており、かかるガスは、ピストンの上昇に伴う圧縮に対し反発することによって下降するピストンを加速させ、ピストンへ強い打撃力を付与する。そして、かかるピストンの下降の際、チゼル15bの基端部を打撃することによってチゼル15bへ衝撃力を伝達する。
【0044】
チゼル15bは、ピストンより伝達された衝撃力によって、先端部において接した物を打撃することにより、その物を破壊する。なお、ブレーカ15の作動原理は公知であるので、ここでのより詳細な説明については省略する。
【0045】
端末装置17は、たとえば基台部12のコックピット内に配置される。なお、コックピット内の作業員が携帯していてもよい。照明18は、たとえばブーム13の先端部に設けられ、夜間作業の際等に使用される。なお、
図2Aに示す例の場合、かかる照明18用電源がブーム13の先端部の近傍に設けられている。
【0046】
計測ユニット16は、配管12fと、油圧ホース15dとを接続しつつ、アーム14に設けられる。具体的には、
図2Bに示すように、計測ユニット16は、油圧ポンプ12c側からの配管12fと、ブレーカ15側の油圧ホース15dとの間に設けられ、配管12fと油圧ホース15dとを接続する。すなわち、計測ユニット16は、配管12fおよび油圧ホース15dのジョイント部として機能する。
【0047】
計測ユニット16は、通信部等を含む制御部16aと、油圧センサ16bと、振動センサ16cと、給排路16dとを備える。制御部16aは、たとえば緩衝材Bによって保護されるように設けられることが好ましい。これにより、言わばデリケートな構成部品である制御部16aを、ブレーカ15から伝達される強い衝撃から保護することができる。緩衝材Bとしては、たとえばアルファーゲル(登録商標)等の衝撃吸収・振動吸収素材を用いることができる。
【0048】
油圧センサ16bは、給排路16dに設けられ、給排路16dを流れる作動油の油圧を検出する。振動センサ16cは、アーム14へ伝達されるブレーカ15の駆動時における振動を検出する。なお、計測ユニット16への供給電源は、前述の照明18用電源を利用することができる。このような構成により、計測ユニット16を、ブレーカ15に直接設けるよりも衝撃を受けにくい位置に、かつ、ブレーカ15の振動および油圧を計測可能な位置に、配置することができる。
【0049】
なお、
図2Bでは、模式的に計測ユニット16内の各種機器の配置を示したが、あくまで説明の便宜上のものであって、これら各種位置の計測ユニット16内における配置位置を限定するものではない。また、
図2Bには、計測ユニット16の電源に関し、照明18用電源を利用する例を示したが、計測ユニット16への給電形態を限定するものではなく、たとえば電池により給電されてもよいし、無線給電を利用してもよい。
【0050】
次に、
図3は、本実施形態に係るブレーカ監視システム1のブロック図である。なお、
図3では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素を機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0051】
換言すれば、
図3に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。たとえば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。たとえば上述した作動油の流量をさらに計測するケースには、計測ユニット16の内部に流量計が追加される。
【0052】
なお、
図3を参照した説明では、これまで既に述べた構成要素については、説明を簡略化するか、省略する場合がある。
【0053】
まず、油圧ショベル10側から説明する。既に述べたが、
図3に示すように、油圧ショベル10は、ブレーカ15と、計測ユニット16と、端末装置17とを備える。ブレーカ15は、ICタグ15aを介し、個体識別情報を保持する。
【0054】
計測ユニット16は、制御部16aと、油圧センサ16bと、振動センサ16cと、通信インタフェース16e,16fとを備える。通信インタフェース16eは、たとえば近距離無線通信用の通信規格に対応したインタフェースである。通信インタフェース16fは、たとえばBluetooth(登録商標)に対応したインタフェースである。
【0055】
制御部16aは、取得部16aaと、通信部16abとを備える。取得部16aaは、通信インタフェース16eを介したブレーカ15側との通信によって、ICタグ15aからブレーカ15の個体識別情報を取得する。
【0056】
通信部16abは、取得部16aaによって取得されたブレーカ15の個体識別情報ごとの、油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果を、通信インタフェース16fを介し、端末装置17へ向けて送信する。なお、通信部16abは、油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果をアナログ−デジタル変換する機能を有する。
【0057】
端末装置17は、制御部17aと、通信インタフェース17b,17cとを備える。通信インタフェース17bは、前述の通信インタフェース16fに応じた、たとえばBluetooth(登録商標)に対応したインタフェースである。通信インタフェース17cは、たとえばネットワークN、すなわち携帯電話回線網に対応したインタフェースである。なお、ここでは、計測ユニット16および端末装置17間の通信形態が無線通信である場合を例に挙げているが、有線通信であってもよい。したがって、通信インタフェース16f,17bは有線通信用の規格に対応したインタフェースであってもよい。また、ネットワークNも携帯電話回線網に限らず無線LAN等を利用したものであってもよい。
【0058】
制御部17aは、データ整形部17aaと、通信部17abとを備える。データ整形部17aaは、通信インタフェース17b、通信部17abを介して受信した、ブレーカ15の個体識別情報ごとの、油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果を、データクレンジングする処理を行う。
【0059】
通信部17abは、データ整形部17aaによってデータクレンジングされたデータを、通信インタフェース17cを介し、ネットワークNへ向けて送信する。
【0060】
ここで、計測ユニット16および端末装置17がそれぞれ送信するデータ形式の一例について述べておく。
図4Aは、計測ユニット16が送信するデータ形式の一例を示す図である。また、
図4Bは、端末装置17が送信するデータ形式の一例を示す図である。
【0061】
図4Aに示すように、計測ユニット16は、たとえばブレーカ15の個体識別情報に対し、油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果を紐付けたデータ形式のデータを端末装置17へ向けて送信する。
【0062】
これに対し、
図4Bに示すように、端末装置17は、計測ユニット16から受信したデータに対し、データ整形部17aaにより、通信効率が向上するようにたとえばデータを圧縮したり、処理効率が向上するように不要部分を削除したり、不足部分を補ったりといったデータクレンジングを施す。
【0063】
そして、かかるデータクレンジングを施した整形後のデータ形式のデータに対し、さらに現在位置といった情報を付加したうえで、ネットワークNへ向けて送信することも可能である。たとえば現在位置は、GPS(Global Positioning System)衛星から受信する電波に基づいて自装置の現在位置を取得する処理を行うGPS部に相当するデバイスを、たとえば端末装置17が備えることで取得することができる。
【0064】
なお、GPS部は、たとえば油圧ショベル10自体が備えていてもよいし、端末装置17がたとえばコックピット内の作業員の保有する携帯電話等である場合、かかる携帯電話が備えるGPS部を利用することができる。
【0065】
図3の説明に戻り、つづいてサーバ装置20について説明する。
図3に示すように、サーバ装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信インタフェース23とを備える。制御部21は、通信部21aと、収集部21bと、解析部21cと、蓄積部21dと、提供処理部21eとを備える。
【0066】
記憶部22は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、ブレーカ稼働情報DB22aを記憶する。通信インタフェース23は、インターネットWへの接続に対応したインタフェースである。
【0067】
制御部21は、サーバ装置20の全体制御を行う。通信部21aは、通信インタフェース23を介したデータの送受信処理を行う。収集部21bは、通信インタフェース23および通信部21a経由で、各ブレーカ15の稼働状況を適宜収集する処理を行う。また、収集部21bは、収集した各ブレーカ15の稼働状況を解析部21cへ渡す処理をあわせて行う。
【0068】
解析部21cは、収集した各ブレーカ15の稼働状況を解析する処理を行う。また、解析部21cは、解析した解析結果を蓄積部21dへ渡す処理をあわせて行う。また、解析部21cは、解析した解析結果にたとえばブレーカ15の異常やその予兆を示す内容が含まれる場合に、提供処理部21eに対し、かかる異常やその予兆に応じたアラーム通知の処理要求を行う。
【0069】
蓄積部21dは、解析部21cの解析結果に基づき、各ブレーカ15の現在の状態を含むブレーカ15ごとの稼働情報を、ブレーカ稼働情報DB22aへ蓄積する処理を行う。
【0070】
提供処理部21eは、解析部21cによるアラーム通知の処理要求を受け付けた場合に、かかる処理要求に応じたアラーム通知を生成し、各種端末30,40や端末装置17に対して通信部21aおよび通信インタフェース23経由で送信する処理を行う。
【0071】
また、提供処理部21eは、各種端末30,40や端末装置17から通信インタフェース23および通信部21a経由で、たとえば所望のブレーカ15の稼働情報に対する提供要求を受け付けた場合に、かかる提供要求に応じた稼働情報をブレーカ稼働情報DB22aから抽出する処理を行う。
【0072】
また、提供処理部21eは、抽出した稼働情報に基づき、たとえばWeb画面上で閲覧者が一目で把握が可能となるように、グラフや画像等を含ませつつ稼働情報の閲覧画面を生成し、各種端末30,40や端末装置17に対して通信部21aおよび通信インタフェース23経由で送信する処理をあわせて行う。
【0073】
次に、
図5Aおよび5Bを参照してブレーカ稼働情報DB22aに蓄積されるデータ形式の具体例について説明する。
図5Aは、ブレーカ稼働情報DB22aに蓄積されるデータ形式の一例を示す図である。また、
図5Bは、
図5Aに示す「累積稼働時間」の変形例を示す図である。
【0074】
図5Aに示すように、ブレーカ稼働情報DB22aには、たとえば「ブレーカ個体識別情報」によって識別されるブレーカ15ごとの稼働状況に関する稼働情報が随時蓄積される。たとえば、
図5Aでは、「ブレーカ個体識別情報」がそれぞれBR_1,BR_2,BR_3で識別されるブレーカ15ごとの稼働情報を一例として示している。
【0075】
たとえばブレーカ稼働情報DB22aには、BR_1,BR_2,BR_3のブレーカ15ごとの「累積稼働時間」が蓄積される。かかる「累積稼働時間」は、取り付けられる作業機械に関わらない、ブレーカ15個体の累計稼働時間である。
【0076】
また、たとえばブレーカ稼働情報DB22aには、BR_1,BR_2,BR_3のブレーカ15ごとの「現在位置」が格納される。かかる「現在位置」は、たとえばブレーカ15の所在位置の確認だけでなく、ブレーカ15が盗難された場合の探索にも利用することができる。
【0077】
また、たとえばブレーカ稼働情報DB22aには、BR_1,BR_2,BR_3のブレーカ15ごとの「現在状況」が格納される。「現在状況」にはたとえば「正常」や「注意喚起」、「異常」を示す値が格納されており、「注意喚起」の場合には、これに該当するBR_2のブレーカ15の関係者(保守員やエンドユーザ)に対し「注意喚起」を示すアラーム通知を行うよう、提供処理部21eが処理を行う。関係者はかかるアラーム通知を受けたならば、異常が起こる予防保全のための作業準備を行うことができる。
【0078】
また、たとえば「異常」の場合には、これに該当するBR_3のブレーカ15の関係者に対し「異常」を示すアラーム通知を行うよう、提供処理部21eが処理を行う。関係者はかかるアラーム通知を受けたならば、異常によりそれ以上ブレーカ15の不具合が進んで修理コストが嵩むことのないよう、即座に修理作業を行うことができる。
【0079】
また、たとえばブレーカ稼働情報DB22aには、BR_1,BR_2,BR_3のブレーカ15ごとの現在の「接続機械」や、過去の「アラーム履歴」、「リース履歴」等を含むことができる。
【0080】
「アラーム履歴」は、たとえばそのブレーカ15が不具合を起こしやすいものであるかの目安に利用することができる。また、「リース履歴」を加味すれば、たとえばそのブレーカ15が不具合を起こしにくい優良品であるかの目安に利用することができる。
【0081】
たとえば、「リース履歴」が多いにも関わらず、「アラーム履歴」が少ないならば、これに該当するブレーカ15は不具合を起こしにくい優良品と判定することができ、たとえば営業マンはお薦めのブレーカ15としてエンドユーザに提示することができる。
【0082】
ところで、
図5Aには、単なる「累積稼働時間」を示したが、
図5Bに示すように、かかる「累積稼働時間」をさらに詳細に区分して蓄積してもよい。たとえば
図5Bに示すように、「累積稼働時間」中、物に対する通常打撃が行われている「通常打撃時間」、ブレーカ15に異常を誘発させかねない「空打ち時間」および「はわき時間」等のそれぞれの累計を蓄積していってもよい。
【0083】
ここで、
図6Aおよび
図6Bを参照して、ブレーカ15の「空打ち」および「はわき」について説明しておく。
図6Aは、ブレーカ15の「空打ち」の説明図である。また、
図6Bは、ブレーカ15による「はわき」の説明図である。
【0084】
図6Aに示すように、「空打ち」は、破壊すべき物Dに対し、チゼル15bが接していない状態で、シリンダ15cのピストンを昇降させてしまう稼働状況を指す(図中の矢印601参照)。かかる「空打ち」が行われると、シリンダ15cからの打撃によりチゼル15bに対し伝達される衝撃力は物Dに伝達されず、ブレーカ15自体を打撃することとなるので、ブレーカ15自体に異常を誘発しやすい。
【0085】
また、
図6Bに示すように、「はわき」は、たとえば地面Gに転がった破砕片等をチゼル15bを用いて掃くように動作させてしまう稼働状況を指す(図中の矢印602参照)。かかる「はわき」が行われると、ブレーカ15が打撃を行っていないにも関わらず、たとえば地面Gとの接触により無用な振動がブレーカ15に伝達されるので、やはりブレーカ15自体に異常を誘発しやすい。
【0086】
こうした「空打ち」や「はわき」等のブレーカ15の稼働状況を、サーバ装置20は、解析部21cにより、ブレーカ15ごとの油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果の組み合わせに基づいて推定することができる。
【0087】
かかる場合の一例について、
図7Aおよび
図7Bを参照して説明する。
図7Aおよび
図7Bは、ブレーカ15の稼働状況の推定の一例を示す図(その1)および(その2)である。なお、油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果の組み合わせは、いずれか一方のみを用いる場合を含むものとする。
【0088】
たとえば
図7Aに示すように、解析部21cは、油圧センサ16bの検出結果に基づき、ブレーカ15の稼働状況が「通常打撃」であるか「空打ち」であるかを推定することができる。具体的には、解析部21cは、油圧センサ16bによって検出される油圧が、ブレーカ15が打撃中であることを示す所定の閾値を超える波形を示す場合に、たとえばかかる波形の形によって「通常打撃」であるか「空打ち」であるかを推定する。
【0089】
すなわち、
図7Aに示すように、解析部21cは、たとえば所定の閾値を大幅に超え、より急峻な波形の形を示す場合を「空打ち」と推定する。また、所定の閾値を超えるものの、「空打ち」の場合よりも急峻でなく幅広な波形の形を示す場合を「通常打撃」と推定する。
【0090】
そして、解析部21cは、それぞれ「通常打撃」および「空打ち」と推定される時間の幅を切り出し、たとえば
図5Bに示した「累計稼働時間」の「通常打撃時間」および「空打ち時間」にそれぞれ累計する。
【0091】
なお、
図7Aには図示していないが、たとえばブレーカ15によって打撃中であるにも関わらず、前述の所定の閾値を超えない場合には、解析部21cはたとえばブレーカ15の「セッティング異常」と推定することとしてもよい。かかる場合には、提供処理部21eに対し、該当するブレーカ15の関係者へ「セッティング異常」である旨をアラーム通知させることによって、該当の関係者にブレーカ15のセッティングのチェックを迅速に行わせることができる。
【0092】
また、たとえば
図7Bに示すように、解析部21cは、油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果に基づき、ブレーカ15の稼働状況が「はわき」であるかを推定することができる。具体的には、解析部21cは、油圧センサ16bによって検出される油圧が、所定の閾値に満たない、ブレーカ15が打撃待機中であることを示す波形を示す場合に、たとえば振動センサ16cによって振動が検出されたならば(図中のM2部参照)、かかる場合を「はわき」であると推定する。
【0093】
そして、解析部21cは、「はわき」と推定される時間の幅を切り出し、たとえば
図5Bに示した「累計稼働時間」の「はわき時間」に累計する。
【0094】
また、解析部21cは、かかる場合には、提供処理部21eに対し、該当するブレーカ15を実際に使用中のエンドユーザに「はわきは異常を誘発しやすいので控えるべき」旨をアラーム通知させることによって、エンドユーザに異常の予防保全に相応しい運用を行わせることができる。
【0095】
このように、サーバ装置20は、ブレーカ15ごとの油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果の組み合わせに基づいてブレーカ15の稼働状況を推定する。なお、これまで述べた例以外にも、たとえば油圧センサ16bの検出結果に基づいて解析部21cにブレーカ15の打撃力を演算させ、その演算結果がブレーカ15の有する性能値の範囲内であるか否かを判定させることもできる。また、たとえば振動センサ16cの検出結果に基づいて解析部21cにシリンダ15c(
図2A参照)のピストンの一定時間(たとえば、分)ごとの打撃数を演算させ、その演算結果がブレーカ15の有する性能値の範囲内であるか否かを判定させることもできる。これらの判定結果により、たとえば上述した「セッティング異常」を推定することが可能である。また、油圧や振動に限らず、上述したようにたとえば作動油の流量を計測して、その計測結果をさらに組み合わせた解析を行うことにより、ブレーカ15の稼働状況を推定してもよい。
【0096】
したがって、本実施形態によれば、ブレーカ15ごとの稼働状況をより詳しい内容を伴って監視することができ、その内容に応じた適切な作業を行えるよう関係者を支援することができる。
【0097】
上述してきたように、実施形態に係るブレーカ監視システム1(「アタッチメント監視システム」の一例に相当)は、油圧ショベル10(「作業機械」の一例に相当)と、ブレーカ15(「アタッチメント」の一例に相当)と、計測ユニット16と、端末装置17と、サーバ装置20とを備える。
【0098】
油圧ショベル10は、アーム14(「作業アーム」の一例に相当)を有する。ブレーカ15は、アーム14の先端部に取り付けられ、油圧(「流体圧」の一例に相当)によって駆動可能に設けられる。計測ユニット16は、個体識別情報に基づいて識別されるブレーカ15の駆動時における振動および油圧を計測可能に設けられる。
【0099】
端末装置17は、油圧ショベル10に設けられ、計測ユニット16の計測結果を取得する。サーバ装置20は、端末装置17からブレーカ15ごとの計測結果を収集し、収集した計測結果に基づいてブレーカ15ごとの稼働状況を解析する。
【0100】
したがって、本実施形態に係るブレーカ監視システム1によれば、ブレーカ15ごとの稼働状況を監視することができる。
【0101】
ところで、上述した実施形態では、ブレーカ15の個体識別情報をICタグ15aによってブレーカ15側において保持し、計測ユニット16の取得部16aaが無線通信によってICタグ15aから個体識別情報を取得する例を挙げたが、これに限られない。たとえば個体識別情報は、手入力によって入力されてもよい。
【0102】
図8は、その他の実施形態に係る油圧ショベル10Aのブロック図である。なお、
図8は、
図3に示した油圧ショベル10のブロック図に対応しているため、重複する説明は避け、
図3とは異なる部分についてのみ説明する。
【0103】
図8に示すように、油圧ショベル10Aのブレーカ15AはICタグ15aを有さない。また、計測ユニット16Aは、ブレーカ15Aに対し、対応する通信インタフェース16eを有さない。
【0104】
取得部16aaは、たとえばブレーカ15Aを取り付けるセッティングの際に、たとえば手入力Hを受け付けることによって、ブレーカ15Aの個体識別情報を取得する。取得された個体識別情報は、計測ユニット16Aの図示しない内部メモリ等に保持され、油圧センサ16bの検出結果および振動センサ16cの検出結果に紐付けられて端末装置17へ向けて送信されることとなる。
【0105】
その他の実施形態に係る油圧ショベル10Aを採用した場合、RFIDを用いるためのICタグ15aや通信インタフェース16eが不要となるので、計測ユニット16Aの低コスト化に資するというメリットがある。
【0106】
また、上述した各実施形態では、アーム14が作業アームの一例に相当し、計測ユニット16はかかる作業アームに設けられることとしたが、作業アームには、ブーム13が含まれてもよい。すなわち、計測ユニット16は、ICタグ15aとの通信が可能な範囲にあり、かつ、ブレーカ15の駆動時における振動および油圧が計測可能であるならば、ブーム13に設けられてもよい。
【0107】
また、上述した各実施形態では、計測ユニット16は作業アームに設けられることとしたが、計測ユニット16の筐体の剛性や、緩衝材B等を用いた計測ユニット16内部の構成部品の保護等により、計測ユニット16の耐久性および計測性能を確保できれば、計測ユニット16はブレーカ15に設けられてもよい。
【0108】
また、上述した各実施形態では、ブレーカ15が油圧によって駆動可能であることとして説明したが、上述のように窒素ガス等のガス圧を併用するものであってもよい。また、ガス圧のみを用いるものであってもよい。これらを採用する場合、油圧センサ16bに対応するセンサはガス圧を含めた流体圧を計測可能であればよい。
【0109】
また、上述した各実施形態では、ブレーカ15の個体識別情報を計測ユニット16,16Aが取得することとしたが、端末装置17が取得してブレーカ15を個体識別してもよい。この場合、計測ユニット16,16Aは、各センサ16b,16cの検出結果を端末装置17へ送信し、個体識別情報と各センサ16b,16cの検出結果との紐付けは、端末装置17にて行われることとなる。
【0110】
また、上述した各実施形態では、解析部21cがサーバ装置20側に配置される場合を例に挙げたが、端末装置17側に配置されてもよい。この場合、端末装置17は、計測ユニット16によって計測された計測結果に基づいてブレーカ15,15Aの稼働状況を解析する処理を行い、たとえば解析結果をデータ整形部17aaおよび通信部17abを介してサーバ装置20側へ送信する。なお、解析結果にたとえばブレーカ15,15Aの異常やその予兆を示す内容が含まれる場合、端末装置17がまず端末装置17自体の表示部等へかかる異常やその予兆に応じたアラーム通知を行ってもよい。サーバ装置20では、収集部21bが各端末装置17における解析結果を収集し、収集された解析結果に基づいて蓄積部21dが各ブレーカ15,15Aの稼働情報をブレーカ稼働情報DB22aへ蓄積する。
【0111】
また、上述した各実施形態では、アタッチメントがブレーカ15,15Aである場合を例に挙げたが、アタッチメントの種別を限定するものではない。たとえば、アタッチメントとして、バケットや、油圧クラッシャー、油圧カッター等が取り付けられる場合であってもよい。
【0112】
また、上述した各実施形態では、作業機械が油圧ショベル10,10Aである場合を例に挙げたが、作業機械の種別を限定するものではない。作業アームを有し、かかる作業アームにアタッチメントを取り付け可能であれば、たとえば作業機械はロボットであってもよい。
【0113】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【解決手段】実施形態の一態様に係るアタッチメント監視システムは、作業機械と、アタッチメントと、計測ユニットと、端末装置と、サーバ装置とを備える。作業機械は、作業アームを有する。アタッチメントは、作業アームの先端部に取り付けられ、流体圧によって駆動可能に設けられる。計測ユニットは、個体識別情報に基づいて識別されるアタッチメントの駆動時における振動および流体圧を計測可能に設けられる。端末装置は、作業機械に設けられ、計測ユニットの計測結果を取得する。サーバ装置は、端末装置からアタッチメントごとの計測結果を収集し、収集した計測結果に基づいてアタッチメントごとの稼働状況を解析する。