(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085715
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】自動車用の捺染繊維を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/263 20060101AFI20170213BHJP
D06M 13/02 20060101ALI20170213BHJP
D06M 13/144 20060101ALI20170213BHJP
D06M 15/13 20060101ALI20170213BHJP
D06M 15/03 20060101ALI20170213BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20170213BHJP
D06M 10/02 20060101ALI20170213BHJP
D06M 16/00 20060101ALI20170213BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20170213BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M13/02
D06M13/144
D06M15/13
D06M15/03
D06M11/00 111
D06M10/02 D
D06M10/02 C
D06M16/00
D06M101:32
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-508047(P2016-508047)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公表番号】特表2016-522861(P2016-522861A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】EP2014001067
(87)【国際公開番号】WO2014170033
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年11月25日
(31)【優先権主張番号】102013006763.4
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502156098
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】カスターニャ、 フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ジロメリティス、 ニック
(72)【発明者】
【氏名】ジーハ、 ミロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】レインバッハ、 インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、 ペーター ゲルト
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−126861(JP,A)
【文献】
特開2010−126853(JP,A)
【文献】
特開2004−025495(JP,A)
【文献】
特開2001−303462(JP,A)
【文献】
特開2003−247174(JP,A)
【文献】
特開2011−236548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/263
D06M 10/02
D06M 11/00
D06M 13/02
D06M 13/144
D06M 15/03
D06M 15/13
D06M 16/00
D06M 101/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の捺染織物を製造する方法であって、前記織物はポリエステルベースの上部材(2)及び下部材を有し、
フーラード加工において少なくとも増粘剤及び紫外線吸収剤が前記上部材(2)に導入され、
前記上部材(2)が乾燥され、
前記乾燥された上部材(2)にデジタル捺染加工が実行され、
前記捺染された上部材(2)は前記下部材に積層された場合に、
前記捺染加工においてインクを追加するときに前記上部材(2)に無色インクが適用され、前記無色インクが別個のプリントヘッドを用いて有色インクと同時に適用され、前記無色インクが無色の顔料を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フーラード加工において前記上部材(2)に親水化剤が導入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捺染加工を実行する前にコロナ又はプラズマ処理が実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記上部材(2)は、フーラード加工を実行する前に酵素処理を受けることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記フーラード加工において前記上部材(2)に脱気剤も導入されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記フーラード加工において前記上部材(2)に湿潤剤も導入されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記捺染加工は分散染料を用いて実行され、乾燥はその直後に行われることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記インクが定着されることに応じた定着工程は、捺染加工の後に実効されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記上部材(2)が前記捺染加工の後に洗浄されて乾燥されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記無色インクが、捺染加工において添加される有色インクと同じ又は少なくとも非常に類似した粘度を有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
いくつかの明るい色相について有色インクと少なくとも同じ量の無色インクが適用され、好ましくは無色インクの量は有色インクの2倍を超えるか又は3倍を超えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
すべての染料に亘り、有色インクに対する無色インクの比率は、好ましくは少なくとも20%及び最大で50%であり、特に30%と40%との間であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の捺染織物を製造する方法に関し、繊維はポリエステルベースの上部材と下部材からなり、その場合に、少なくとも増粘剤及び紫外線吸収剤がフーラード加工において上部材に導入され、上部材は乾燥され、デジタル捺染加工が乾燥された上部材に実行され、捺染された上部材は下部材に積層される。そのような方法は、従来技術において知られている。
【背景技術】
【0002】
例えば、欧州特許出願公開第2281940号明細書は、洗浄できる布に捺染する方法を記載している。欧州特許出願公開第0965681号明細書は、ポリエステル材料が特定の製品で前処理された場合に、捺染されたポリエステル繊維製品の製造を記載している。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、繊維及びその上に捺染された染料が特に耐摩耗であるように、上述の種類の捺染織物を製造する方法を改善する目的に基づいている。
【0004】
このことは、請求項1の特徴を含む方法によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0005】
自動車用の捺染織物を製造する方法では、織物はポリエステルベースの上部材及び下部材からなり、少なくとも増粘剤及び紫外線吸収剤がフーラード加工において上部材に導入され、上部材は乾燥され、デジタル捺染加工が乾燥された上部材に実行され、捺染された上部材は下部材に積層され、本発明によって、捺染加工において有色インクが添加されるときに上部材に無色インクが添加されることが規定される。無色インクは「ブラインドインク」とも同定され、好ましくは、別個のプリントヘッドを用いて有色インクと同時に適用される。有色インクの浸透は、したがって「重力」のために増加する。
【0006】
無色インクは、好ましくは、有色インクと同じ又は少なくとも非常に類似した粘度を有する。無色インクも顔料を有するが、無色の顔料である。無色インクは、明るい染料との関連で特に使用される。好ましくは、暗い染料は、無色インクの添加なしで適用される。他の好ましい実施形態では、いくつかの明るい色調のために有色インクと少なくとも同量の無色インクが適用される。好ましくは、有色インクの2倍を超える又は3倍を超える無色インクが適用される。すべての染料に亘り、有色インクに対する無色インクの比率は、好ましくは少なくとも20%及び最大で50%であり、特に30%と40%との間である。
【0007】
好ましくは、親水化剤は、フーラード加工において上部材に導入される。上部材は、それぞれ実質的に又は好ましくは完全にポリエステルからなり、したがって親水性あり、吸湿性であるように設計されている。後続の印刷加工において染料又はインクの吸収は、このことを通じて改善される。好ましくは、機能性ポリシロキサンを含有する親水性ポリマーの分散は、この目的のために使用される。例えば、このような効果を有する製品は、ハンツマン(Huntsman)によるウルトラフィル(ULTRAPHIL)という製品がある。
【0008】
他の好ましい実施形態では、コロナ又はプラズマ処理が印刷加工を実行する前に実行される。上部材の表面は、それによって高電圧による物理的前処理であるとみなされるコロナ法を用いても前処理される。プラズマ処理では、大気圧プラズマを使用することが好ましい。高度にイオン化されたガスとして製造され、上部材の表面に使用される。表面は、これを介して活性化される。その結果、これは、後に適用される染料のより良好な接着をもたらす。表面張力が低減される。その結果、上部材の改善された濡れ性やインクのより高い浸透深さが達成される。適用されたインク及び/又は染料の耐摩耗も同様に増加する。好ましくは、コロナ又はプラズマ処理は、フーラード加工を実行する前に実行される。
【0009】
本発明のさらに好適なさらなる展開においては、上部材のフーラード処理を実行する前に、酵素処理が施される。好ましくは、そのような酵素処理は、フーラード加工を実行する前に実行される。例えば、ここでは、チェコ共和国からのINOTEX spol. s.r.o.による製品TEXAZYM PESの使用が可能である。
【0010】
方法及びさらなる展開は。互いに組み合わせて実施することができる。具体的には、上部材のコロナ又はプラズマ加工の組み合わせ、及び捺染加工での無色インクの互いに組み合わせた使用が好ましい。また、酵素処理の無色インクとの組み合わせも可能である。酵素処理及びコロナ又はプラズマ処理の組み合わせも、特に耐摩耗に関して、捺染結果を改善するための選択肢である。
【0011】
好ましくは、使用される上部材は、完全にポリエステルか又は天然糸若しくは人工糸を有するポリエステルのいずれかで構成される。
【0012】
上部材は、それによって自動車内装デザイン製品を対象としている。織物は上部材及び下部材を有し、下部材は典型的には発泡体又は発泡材を有している。
【0013】
好ましくは、脱気剤は、フーラード加工にいて上部材に導入される。例えば、脱気剤がアルコールを含有することがあり得、特にアルコールをベースとすることがあり得る。好ましくは、湿潤剤もさらに導入される。好ましくは、脂肪族炭化水素及びアルコールの混合物であり得る。例えば、ここで、米国のハンツマンアドバンストマテリアル(Huntsman Advanced Materials)LLCによる製品LYOPRINT AIRは適切である。増粘剤も、好ましくは、フーラード加工において同時に導入される。これは、後の時点でのインクの流動を防止する。これは、例えば、ポリアクリレート、グアー又はアルギン酸塩であり得る。インクの流動は、その中に止められる。例えば、紫外線吸収剤は、トリアジン、特にO−ヒドロキシフェニルトリアジン混合物である。製品としては、例えば、ハンツマンによるTHERMACOL MPは増粘剤についてここで可能であり、ハンツマンによるUV−FAST Pが紫外線吸収剤として可能である。
【0014】
本発明の他のより好ましい実施形態では、捺染処理は分散染料を用いて実行され、乾燥した直後に行う。好ましくは、それによって乾燥は、上部材をクランプする工程において実行される。乾燥は、好ましくは熱風を用いて行われる。捺染染料の適用の状況においては、無色インク(ブラインドインク)の上記の導入は、捺染インクを適用する直前に、この位置で行うことができる。
【0015】
本発明の他のより好ましい実施形態では、定着工程は、インクが定着されたことに応じて、捺染加工後に実行される。このことは、蒸熱工程、又は好ましくは蒸熱加工とも称され、蒸気を用いた処理は100℃、好ましくは180℃を超えて実行される。上部材は、それによって、好ましくは、クランプフレームにクランプされる。これに代わる例では、乾燥は、高温の煙道で行うこともできる。この代わりの例において、この工程は、カレンダ装置又はマシンカレンダを使用して行うこともできる。
【0016】
好ましくは、上部材は、捺染加工及び定着工程の後の2つのさらなる工程で洗浄及び乾燥もされる。洗浄工程では、苛性ソーダ又は水硫化物及び分散剤又は界面活性剤を含む洗剤を使用することが好ましい。増粘剤及び未定着染料は、使用された洗剤によって洗い流される。耐摩耗は、これを通じてさらに改善される。上部材は、後続する乾燥工程で試される。好ましくは、これは、クランプフレームで行われる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この方法は、図面の唯一の図を参照して以下に詳細に説明する。
【0018】
ステップ1において、上部材2は、ローラ3上にクランプされ、容器4内で洗浄及び/又はすすぎをされる。クランプフレーム5での乾燥は、ローラ3上の同じクランプで行われる。コロナ又はプラズマ処理は本明細書でブロック9としてのみ図示されたステップ8で行われ、上部材2の表面はイオン化ガスによって又は高電圧を印加することによって処理されて、濡れ性が増大される。フーラード加工は次のステップ10で行われ、それは打撃工程又は圧搾工程とも同定される。上部材2は、それによって容器11のローラ12の間で圧搾される。容器11は、これを通じて上部材2に適用される添加剤を含む液体14を含んでいる。液体14において、特に増粘剤、紫外線吸収剤及び脱気剤が規定されている。増粘剤は、インクの流動を防止する。これは、例えば、ポリアクリレート又はグアーであり得る。これは、蒸熱処理として、又は好ましくは蒸熱加工としても称される。紫外線吸収剤は、紫外線照射に応じて上部材2の長寿命化を改善する。例えば、O−ヒドロキシフェニルトリアジン混合物をベースとする製品は、ここで使用することができる。また、親水化剤は、ステップ10で上部材2に導入される液体14に含有もされる。ポリエステルから構成される上部材2は、したがって親水性になり、後の時点で適用される染料、特にインクをより良く吸収する。
【0019】
ステップ8では、酵素を用いた上部材2の前処理が、代わりに、又は追加の独立した工程として行うこともできる。酵素処理に応じて、これは、好ましくは、独立した加工で行われ、例えば捺染機械において、又はフーラード処理にもよる。実際の捺染加工は、後続するステップ20で行われる。上部材2はローラ23上にクランプされ、それによってステップ21でデジタル捺染される。無色インクである「ブラインドインク」は、それによって濡れ性を改善するために適用することができる。実際の捺染は、ステップ21で同時に行われる。熱風を用いた乾燥は、ブロック22で行われる。これは、上部材2の同じクランプで、直後に行われる。定着工程は、ステップ30で行われる。上部材2は、ローラ33にクランプされ、蒸熱装置を通って案内される。上部材2は、インクがそれによって定着されるように、ここでは180℃で蒸気を用いて処理される。蒸熱装置は、ここでは34で同定される。ローラ44へのクランプはさらにステップ40で再び行われ、上部材2は容器41を通って案内され、容器41は苛性ソーダ又は水硫化物又は糖及び分散剤又は界面活性剤を含む洗剤を収容している。増粘剤はここですすがれ、未定着の染料はすすいで洗い流される。耐摩耗は、これを通じてさらに改善される。上部材2の同じクランプにおいて、クランプフレーム上での乾燥がステップ42で行われる。上部材2と下部材と及び発泡体又は発泡材の捺染された織物への積層は、後続するステップ50で行われる。この織物は、その後、サイズに切断され、個別の用途に適合するように正確に寸法決めされる。例えば、自動車用のシートカバー又は自動車用内装ライニングは、その後、その織物から作製することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 ステップ1
2 上部材
3 ローラ
4 容器
5 クランプフレーム
8 ステップ8
9 ブロック
10 ステップ10
11 容器
12 ローラ
14 液体
20 ステップ20
21 ステップ21
22 ブロック
30 ステップ30
33 ローラ
34 蒸熱装置
40 ステップ40
41 容器
42 ステップ42
44 ローラ
50 ステップ50