(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0022】
固定具用磁着補助具1(以下、磁着補助具1という)は、ドライバービット40を挿嵌して使用される補助具である。
図4等に示してあるように、磁着補助具1は、複数の永久磁石21を、中央に中空貫通孔13が形成されるように、隣接する永久磁石21の同一極性の端部同士を、隙間なく束状に接合させて、花弁状の筒状体に形成された磁着補助具本体Aと、磁着補助具本体Aの先端側に付設した筒形状の強磁性体よりなり、ドライバービット40を挿嵌するようにされた磁力補強材50とを備えている。
【0023】
複数の永久磁石21は、中空貫通孔13に挿嵌されるドライバービット40の軸線に対して、磁力線が傾斜角度をもって先端に向かうように磁化方向が規定され、磁力補強材50を通過するようになっている。
【0024】
永久磁石21と中空貫通孔13との関係は、
図2(a)に示したものの他に、
図9のような形態が可能であり、中央の中空貫通孔13は、望ましくは、正n角形を構成しているが、そのような形状には限定されない。なお、本例の中空貫通孔13は、断面が正六角形のドライバービット40に対応した正六角形の断面とされる。
【0025】
ついで、
図1および
図2を参照して、磁着補助具1の構成部材である磁着補助具本体Aについて、さらに具体的に説明する。
【0026】
図1に示した磁着補助具本体Aは、中央に中空貫通孔13を有した円柱形状とされる(
図1(a)参照)。図例の中空貫通孔13は、正六角柱形状とされ、円の中心位置に配されている。
【0027】
この磁着補助具本体Aは、本体ケース10、永久磁石21、ゴムなどの弾性材料で構成されたクッション材22およびヨーク15を有している。これらのうち、永久磁石21、クッション材22およびヨーク15は
図2に見るように、中空貫通孔13の貫通方向に沿って配されている。なお、ヨーク15は設けなくてもよい。
【0028】
本体ケース10は、磁着補助具本体Aの円柱形状を概ね形づくる非磁性体の樹脂で製されており、上部に開口を有し、下部に中空貫通孔13を形成するための六角開口を有した本体11と、上部の開口を塞ぐ蓋体12とで構成される。
【0029】
永久磁石21は、6個の同一形状のものが花弁の形状を保持するように、本体ケース10の本体11内に樹脂材料16を充填している。個々の永久磁石21の横断面形状は、
図2(a)に示すように、矩形と等脚台形とを組み合わせてなる六角形状になっている。また、極性の配置も永久磁石21間で同一であり、本図例のものは、中空貫通孔13側がN極となるように配列しているが、S極、N極を逆配置としてもよい。
【0030】
6個の永久磁石21は、隣設された永久磁石21の間が隙間を形成しないようにして、図例では、等脚台形の脚辺どうしが接するように、つまり脚辺に相当する両面を面取接合面25として、これらを相互に密着させるようにして花弁状に配列されている。
【0031】
このように、同形状のn個の永久磁石21を用いれば筒状体を正n角形に形成できる。筒状体が正n角形であれば、ドライバービット40を隙間なく挿嵌することができる。また、隣接する永久磁石21間が面取接合面どうしで密着しているため、磁気の漏れを防止することができる。
【0032】
また、複数の永久磁石21のそれぞれにおける中空貫通孔13と反対の端面には、クッション材22が配設されていることが望ましく、クッション材22を設けることで、中空貫通孔13に挿入されるビット径に多少の大小があっても、その誤差を吸収する。このクッション材22により、隣接する永久磁石21の面取接合面25間にずれが生じるおそれがあるが、平面どうしの接合であるため隙間が生じるおそれはない。
【0033】
本体ケース10の本体11内では、6個の永久磁石21が同一磁極が向き合うように配列されているので、同一極性どうしの反発力を生じる。そのため、永久磁石21は、クッション材22による微動は許容される程度に、かつ花弁の形状を崩さない程度に本体11内には樹脂材料16を充填して拘束されることが望ましい。なお、6個の永久磁石21が本体11に収容されて上記の程度に固定されていれば、樹脂材料16の充填がされていなくてもよい。
【0034】
また、磁着補助具1の他の構成部材である磁力補強材50は、
図3(a)(b)に示すように、先端にテーパ部52を有した筒体とされ、強磁性体で形成されている。
【0035】
この磁力補強材50は、磁着補助具本体Aと同様、ドライバービット40が挿嵌されて使用される。そのため、中央に設けたビット挿通孔51は磁着補助具本体Aの中空貫通孔13と略同一径とされる。一方、磁力補強材50の外径は、本実施形態の図例で示したように磁着補助具本体Aの外径よりも小さいことが望ましい。
【0036】
ついで、
図4および
図5を参照して、磁着補助具1の使用要領について説明する。なお、この図例としては、ヨーク15(
図1等参照)を有さない磁着補助具本体Aを示した。
【0037】
磁着補助具本体Aを構成する複数の永久磁石21は、それぞれの磁化の向きを矢印で示すように、中空貫通孔13に挿入されるドライバービット40の軸線43(
図3参照)に対して先端41に向かうように、傾斜させて磁化させている。さらに、この磁着補助具本体Aの先端側に隣接するように、ドライバービット40が挿入された磁力補強材50がさらに配されている。この磁力補強材50は、ドライバービット40に対して磁着補助具本体Aの磁力により磁着が可能とされる。よって、いったん磁力補強材50をドライバービット40に取り付ければ、使用中に磁力補強材50がずり落ちるおそれはない。
【0038】
一般的に、ステンレス製のビスなどの固定具は磁化できないために、磁着させることはできないが、ステンレスのうちでも、オーステナイト系(SUS304)のものは、通常時は非磁性材料であるが、大きい負荷を加えて変形させた場合には、マルテンサイトに変態して磁化させることができることが知られている。本発明者は、通常の建築物に使用されているSUS304のステンレス製のビスなどは、その頭部にドライバービット40の先端41を嵌め入れる挿入溝を形成する工程で、すでに、そのような変態を生じていることを知得して、本発明に到達している。
【0039】
本磁着補助具1では、
図4に示したように、磁着補助具本体Aの中空貫通孔13と、磁力補助材50のビット挿通孔51とに、強磁性体よりなるドライバービット40が挿入されると、磁着補助具本体Aによりドライバービット40は磁化されて、ステンレス製のビスなどのステンレス固定具45の頭部46に形成されたビット挿入溝48をドライバービット40の先端41に近づけると、ステンレス製のビス45を吸着させることができる。なお、
図4の符号47はビス45の軸部である。
【0040】
図4に示したように、磁着補助具1の2部材にドライバービット40が差し込まれた状態では、2点鎖線で図示したような磁力線32が放射される磁場が形成される。なお、
図4、
図5には、磁極間を結ぶ軸線に沿った磁力線31を磁力線32とは区別して図示した。
【0041】
すなわち、中空貫通孔13とビット挿通孔51にドライバービット40が挿嵌された状態では、磁着補助具本体Aの6個の永久磁石21の磁束が中空貫通孔13に集中してドライバービット40に入り込み、さらにドライバービット40に入った磁束は、先端に向けて磁着補助具本体Aの先端側に入り込む磁束ループと、基端側に入り込んで磁着補助具本体の後端に入り込む磁束ループを構成するので、このときドライバービット40の先端41に多くの磁力線32を導くことができれば、その先端41には、鉄製だけでなく、ステンレス製のビスでも磁着させる強い磁力を作用させることができる。
【0042】
なお、磁力補助材50がない場合でも概ね
図5と同様の磁場が形成されるが、磁力補助材50を取り付けることで磁力を強化するように作用する。この磁力補助材50の作用については、
図6の説明とともに後述する。
【0043】
本発明は、複数の永久磁石21を上述したように、隙間なく束状に接合させて、中央に中空貫通孔13を形成して、花弁状の筒状体を構成する基本構造によって、それぞれの永久磁石から放射される磁束を中空貫通孔に集中させて強い磁場を形成するので、ドライバービット40を磁化して、ドライバービット40の先端41に、ステンレス製のビスなどのステンレス固定具45を吸着させることができる。
【0044】
本発明者は、永久磁石21からドライバービット40に入り込む磁束を、ドライバービット40の基端42側よりも先端41側に向かう磁束が多くなるように偏らせ(
図4、
図5の磁力線31の方向を参照)、さらに磁力補強材50を隣接して取り付けることで、ドライバービット40の先端41により高い磁束密度が得られることを知得した。
【0045】
磁束をドライバービット40の先端41側に偏らせる形態は、花弁状の筒状体を構成する永久磁石21のそれぞれの磁化の向きを、中空部貫通孔13に挿入されるドライバービット40の先端41側に向けたもので、このような構造は、永久磁石21の磁化の向きを、ドライバービット40の軸線43に対して、角度を持たせることで容易に実施できる。
【0046】
図6は、永久磁石21の磁化の方向を説明するための図である。この図には、永久磁石21の磁化の方向をドライバービット40の軸線43に対して、Wだけ傾斜して着磁させたものを模式的に示してある。
【0047】
図6に示したものは、永久磁石21の磁化の方向が、ドライバービット40の軸線43に対して、傾斜した角度Wに設定したもので、この態様では、永久磁石21は、S極とN極との境界が中空貫通孔13、ビット挿通孔51の方向に平行となっておらず、ドライバービット40の先端41側の磁極分岐点35がドライバービット40の表面から遠ざかるように傾斜している。
【0048】
永久磁石21から放射された磁束は、ドライバービット40の先端41側が基端42側より多くなっているので、その傾斜角度Wを変化させることで、先端41側により大きな磁束密度が得られる最適値を探ることができる。
【0049】
持着補助具本体Aの先端側のN極から先端に向かう磁力線は、隣接して設けた磁力補強材50により誘導され、磁力補強材50の中を通るため、ドライバービット40の磁力線は他方向へ曲がることがない。そのため、ドライバービット40の先端41では磁束密度が十分に大きくなる。
【0050】
なお、磁力補強材50を取り付けない場合は、磁力補強材50による磁力誘導作用が発生しないから、磁着補助具本体Aの先端側のN極から先端41に向かおうとする磁力線31は、
図6において破線で示したようにS極に戻ろうとする。そのため、ドライバービット40の先端41における磁束密度は、磁力補強材50を設けたものに比べると小さくなる。
【0051】
また、本発明者の検討によれば、ドライバービット40の先端41での磁束の大きさは、S極とN極の境界線の、ドライバービット40の先端41側の境界点(磁極分岐点35)から、N極側の永久磁石21の端面までの距離Lの長さによって概ね定まることが知見によって得られている。
【0052】
これによれば、磁極分岐点35がドライバービット40の表面から遠い位置にあるほど、ドライバービット40の先端41に大きな磁束を集中させることができるので、より厚めの永久磁石21を用いればドライバービット40の先端41で強い磁力が発生する。
【0053】
ようするに、磁極分岐点35がドライバービット40の表面から遠いことと、磁力補強材50の磁力誘導作用とがあいまって、ドライバービット40の先端41での磁束密度を大きくすることができる。
【0054】
また、
図6に示した構成の磁着補助具本体Aでは、ドライバービット40の軸線43に対して、先端方向に向う傾斜角度Wを持った磁力線31を多く放射するので、厚みを厚くしなくても、ドライバービット40の先端41で磁力を強めることができる。
【0055】
永久磁石21の磁化方向を、ドライバービット40の軸線43に対して、傾斜角度Wを20度、25度、30度、45度、90度に変化させたものについて、ドライバービット40の先端41での磁力を計測する試験を行った。永久磁石21としては、残留磁束密度が高い希土類磁石のネオジウム磁石を用いたが、それぞれは、20000Gの磁束密度で磁化して、5000Gの残留磁気密度が得られたものを6個束ねて、6面体の花弁状の筒状体として構成したものを使用した。
【0056】
また、永久磁石21からドライバービット40の先端41までの突出長は短いほど先端41での磁力は強くなるが、磁力補助材50を取り付ける構成であるため、磁力補助材50を装着できる程度の突出長であることが望ましい。
【0057】
発明者は、全長40mmの磁着補助具本体Aと、全長10mmの磁力補助材50とを組み合わせ、上記突出長を16mmにし、上記5種の傾斜角度Wについて試験を行ったが、傾斜角度Wが30度のもので大きな磁束密度が得られた。具体的には、傾斜角度Wが30度のものでは、ドライバービット40の先端41の磁束密度は8500ガウス以上であった。なお、傾斜角度Wが20度または25度の場合でも8000ガウス以上の磁束密度が計測された。また、傾斜角度Wが45度、90度の場合はいずれも、磁束密度は7000ガウス未満であった。
【0058】
また、その他種々の傾斜角度Wのもので試験を行ったところ、傾斜角度Wが20度〜35度のものが適切とされ、25度〜30度が特に好ましいことが判明した。また、傾斜角度Wが35度よりも大きくなると、基端42側に向かう磁力線の量が増え、先端41側に向かう量が減る。
【0059】
このように、この磁着補助具1によれば上記のような十分に大きい磁束密度が得られるため、この磁着補助具1を取り付けたドライバービット40で十分にステンレス固定具45を磁着することができる。
【0060】
また、永久磁石21からドライバービット40の先端41までの突出長は、磁力補助材50が10mmであることを考慮すれば、14〜16mmであることが望ましい。また、操作のしやすさを考慮すれば、上方からドライバービット40の先端41方向を見た場合、先端41が磁着補助具1によって隠れない程度とすることが望ましい。本実施形態の磁着補助具1は、磁力補助材50が磁着補助具本体Aよりも径小となっており、かつ先端にテーパ部52が設けられているので、この磁力補助材50によって視界は遮られるおそれはほとんどない。このテーパ部52は、磁力補助材50を通る磁力線の漏れの減少にも寄与する。角を設ければ磁力線は空中に漏れやすくなるので、テーパ部52に成形することでそれを防げるからである。
【0061】
以上のように、永久磁石21として6個のネオジウム磁石を用い、それらを隙間なく花弁状に束ねた磁着補助具本体Aと、強磁性体により形成された磁力補助材50とを有した磁着補助具1を用いることで、ドライバービット40の先端41を強力に磁化できることが確認できた。
【0062】
また、磁力補助材50として、磁着補助具本体Aに隣接する側をS極、先端側をN極とする永久磁石を用いても同様の磁力補強の効果が得られることは言うまでもない。
【0063】
また、
図7に示すように、花弁状の筒状体を構成する複数の永久磁石21の外周に、中空貫通孔13の貫通孔の方向に沿って磁極を揃えた補助永久磁石23を付設してもよい。
【0064】
図7の形態では、複数の補助永久磁石23は、図示したように、その磁極が中空貫通孔13の貫通方向の沿って配され、さらにN極をドライバービット40の先端41側に配するように補助永久磁石23を配設している。
【0065】
このような永久磁石21と補助永久磁石23との組み合わせによれば、ドライバービット40の先端41側の磁極分岐点35をさらに遠い位置に形成することができ(距離Lを大きくでき)、そのため、磁力補助材50の作用ともあいまって、ドライバービット40の先端41側ではさらに強い磁力が発生する。
【0066】
つぎに、磁着補助具1の他の使用態様について、
図8にもとづいて説明する。
この使用態様では、磁力補助材50を用いず、その代わりに電動式ドライバー70(
図11参照)用のソケット部材68を取り付けて使用されるものである。
【0067】
ソケット部材68は、強磁性体で形成され、中空孔68aを有し、一方の端部68bからはドライバービット40の先端41を挿嵌でき、他方の端部68cからは取り替え用(ソケット部材68で延長させて利用できる)取り替えビット(不図示)を装着することができる部材である。このソケット部材68は市販でも入手できるものでもよく、その構造の図示は省略するが、チャック筒部68dを
図7の矢印方向に移動させて取り替えビットを着脱できる構造となっている。なお、ドライバービット40には磁着補助具本体Aが取り付けられているので、その磁力でソケット部材68を吸着でき、そのためドライバービット40の先端41を挿入するほうの一方の端部68b側にドライバービット40を挟着するチャック筒部68dのような構造を有する必要はない。
【0068】
このように、磁力補助材50に代えてソケット部材68を取り付ければ、他種のドライバーとして使用できる。また、ソケット部材68が磁力補助材50と同等に作用して磁着補助具本体Aの磁力線を有効に先端41に集中させることができる。
【0069】
ついで、
図9を参照して、本実施形態の他の磁着補助具1について説明する。
この磁着補助具1は、
図9に示すように、
図1〜
図6に示した磁着補助具本体Aおよび磁力補助材50に加えて、磁気シールドケース60を備えている。
【0070】
この磁気シールドケース60は、磁着補助具本体Aの磁気が洩れないようにシールドするもので、強磁性体よりなる有底筒体61を有し、少なくとも磁着補助具本体Aを取り付けたドライバービット40を収容できるようになっている。
【0071】
本実施形態に示した磁気シールドケース60は、
図9(a)に示すように、一組の磁性体よりなる有底筒体61、63を有し、一方の有底筒体61(本体)の開口部61aに他方の有底筒体63(蓋)の開口部63aを外嵌できるようになっている。
【0072】
それぞれの有底筒体61、63は強磁性体よりなり、それぞれの内底61b、63bには非磁性体よりなる、クッション性を有したビット端部保護材62、64が配されている。
【0073】
この磁気シールドケース40は、たとえば
図9(b)に示したように、径小の有底筒体61(本体)に、磁着補助具本体Aが装着されたドライバービット40の先端側を挿入し、後端側に径大の有底筒体63(蓋)を被せてドライバービット40の全体を覆うようにして使用される。
【0074】
このように、磁着補助具本体Aを取り付けたドライバービット40の全体が強磁性体の筒体で覆われるので、磁気の漏れを防ぐことができる。また、内底61b、63bにビット端部保護材62、64が配されているので、ドライバービット40の両端を好適に保護することができる。
【0075】
もちろん、
図9(b)に示すように、磁力補助材50をさらに取り付けたドライバービット40を収容するようにしてもよい。
【0076】
また、有底筒体63(蓋)を径大としているため、
図9(b)のものよりも径大で有底筒体61(本体)に収容できないような寸法の磁着補助具本体Aについては、有底筒体63(蓋)で磁着補助具本体Aを保護するように使用することもできる。
【0077】
さらに、磁着補助具本体Aが装着されたドライバービット40が電動式ドライバー70(
図11参照)に装着した状態では、2つの有底筒体61、63のうちの一方のみを被せるようにして使用することもできる。
【0078】
以上のように、本実施形態の磁気シールドケース60は、強磁性体よりなる有底筒体61、63を有し、有底筒体61、63の内底61b、63bにドライバービット40の先端を配するようにして、有底筒体61、63の側壁61c、63cで磁着補助具本体Aを覆う構成となっているが、電動式ドライバー70(
図11参照)に装着して使用する場合を考慮すれば、磁気シールドケース60は2つの有底筒体61、63のうちの一方のみで構成されたものであってもよい。
【0079】
ついで、磁着補助具本体Aに用いられる花弁状の筒状体について、
図10(a)〜(e)を参照しながら説明する。
【0080】
これらは、中空貫通孔13として、断面が6角形以外の形状のものを有している。
図9(a)(b)では中空貫通孔13が円形、
図10(c)では正方形、
図10(d)では5角形、
図10(e)では長方形となっている。
【0081】
永久磁石21としては、
図10(a)では同一の弧状の3個の永久磁石21が用いられ、
図10(b)では同一の弧状の4個の永久磁石21が用いられている。また、
図10(c)(d)(e)では、
図2(a)に示した永久磁石21と同様に、断面が矩形と等脚台形を組み合わせた6角形状のものが用いられている。
図10(c)(d)では複数の永久磁石21が相互に同一形状となっているが、
図10(e)では長方形の辺長に対応するように2種の形状の永久磁石21が用いられている。
【0082】
図9に示した5種の形状のものも、
図2に示したものと同様、隣設された永久磁石21は面どうしが密着しているため、磁束の漏れは発生しにくく、ドライバービット40の先端41(
図5参照)に効率よく強い磁力を持たせることができる。
【0083】
以上に説明した種々の磁着補助具本体Aは、電動式ドライバーのドライバービット40に取り付けて使用することができる。
図11には、磁着補助具1と、磁着補助具1に挿脱するドライバービット40とを備えた電動式ドライバー70の説明図である。以下の電動式ドライバー70は、ドリルドライバー、インパクトドライバーのいずれにも適用が可能である。
【0084】
電動式ドライバー70は、ドライバー本体71と、ドライバービット40と、ドライバービット40に着脱される磁着補助具1とを備えている。ドライバービット40は、ドライバー本体71のチャック部74に対して着脱自在とされたものでもよいし、一体化されたものであってもよい。磁着補助具1は、磁着補助具本体Aと、磁力補助材50とを有してなる。
【0085】
この電動式ドライバー70は、ドライバー本体71に内装されたモータ72aによりドライバービット40を回転させてねじ締め作業を行う構成になっている。
【0086】
図11(a)に示すように、ドライバー本体71は、モータ72aを内装した胴部72と、スイッチ73aを有したハンドル部73と、ドライバービット40を保持するチャック部74とを有している。
【0087】
ドライバービット40は、鉄製とされ、図例のものは先端41がマイナス形状となっているが、固定具に対応させてプラス形状などの種々の形状のものであってもよい。
【0088】
図11(a)に示すように、ドライバービット40の軸部には、周面より外方に突出した環状突起を有している。この環状突起は、磁着補助具本体Aを適切な位置に取り付けるための位置決め部40aである。この位置決め部40aは、その環状突起に磁着補助具本体Aの後端側端部1bを当接させることで、磁着補助具1の取付け位置を規制しているが、この環状突起は、別体のリング体を圧嵌して形成してもよい。
【0089】
この位置決め部40aは、磁着補助具1(磁力補助材50)の先端側端部1aからドライバービット40の先端41までの距離を定めて、ドライバービット40の先端41に固定具を磁着するのに十分な磁力が発生するようにしている。特に、上述したように、ドライバービット40でステンレス固定具45(
図5参照)を吸着するためには強い磁力が必要であるが、このように位置決め部40aに合わせて磁着補助具1を正しく取り付けることで、ステンレス固定具45を磁着できる強い磁力を発生させることができる。
【0090】
この位置決め部40aは、ドライバービット40の基端42側への磁着補助具本体Aの移動を規制するためのものでもあり、環状突起によらなくてもよく他の形状の突部であってもよい。また、位置決め部40aは、
図11(b)に示すように、磁着補助具本体Aの先端側端部1cの位置を定める、たとえば拡大図に示すような目盛り付きの複数の細溝であってもよい。なお、目盛りとしては、その位置決め部40aに磁着補助具本体Aを位置合わせしたときに先端で生じる磁力の強さを表す相対番号を付記してある。また、たとえば強、中、弱や、鉄強、鉄中、鉄弱、ステンレスなどのように、ビット先端に磁着させる補助具の素材に応じた区別表示をしてあってもよい。
【0091】
また、
図11(c)は、さらに他の位置決め部40aの例を示した図である。このドライバービット40には位置決め部40aとして目印線が設けられており、その目印線に磁着補助具本体A(移動を想定して図中の右側の2点鎖線で図示)の先端側端部1cを合わせた場合は、鉄製の固定具を適切に磁着でき、一方、目印線に磁着補助具本体A(図中の左側の2点鎖線で図示)の後端側端部1bを合わせて、先端側端部1cからのドライバービット40の突出長さを短くしたときには、ステンレス固定具45(
図4参照)を適切に磁着できるようになっている。なお、ステンレス固定具45に対応する目印線と、鉄製の固定具に対応する目印線とを個別に設けてもよい。
【0092】
前述した実施例では、本磁着補助具1は、ドライバービット40に対する後付け部材となっているので、簡単に装着してドライバービット40を有効に磁化させることができる。特に、上記のような位置決め部40aを設けたものでは適切な効果が表れる位置に迅速に取り付けできるため、固定具のねじ締め作業を効率的に行うことができる。磁着補助具本体Aは、ドライバービット40に予め一体化させた構造にしてもよく、磁力補助材50のみを着脱できるようにしてもよい。
【0093】
また、ドライバー本体71に対し着脱自在なドライバービット40は、チャック部54で固定保持されるように、基端側に嵌着接続のための窪み(不図示)が形成されているが、先端側、特に磁着補助具1の先端側端部1aよりも先端側には窪みや凹部、凸部などは形成されていないことが望ましい。このようにストレートな形状とするのは、ドライバービット40の表面と磁着補助具1との間にギャップが生じて磁束の漏れが発生することを回避するためである。なお、
図11(a)の環状突起による位置決め部40aは磁着補助具1の後端側にあるため、突起形状であってもほとんど問題はないし、
図11(b)の細溝による位置決め部40aは切り溝程度の凹部であるため、先端側に形成されていてもほとんど問題はない。
【0094】
以上に示した磁力補助材50は、磁着補助具本体Aによりドライバービット40に強力に磁着され、それのみを取り外すことが困難な場合には磁着補助具本体Aを先端41にずらして押し出すように取り外せばよい。頻繁に磁着補助具本体Aをスライド操作するので、
図11(a)〜(c)に図示したドライバービット40の位置決め部40aが有効に作用する。
ドライバービットを挿入して磁化させることで、ビットの先端に鉄製だけでなく、ステンレス製の固定具も磁着できる固定具用磁着補助具、それを用いた電動式ドライバーを提供する。
複数の永久磁石21を、中央に中空貫通孔13が形成されるように、隣接する永久磁石21の同一極性の端部同士を、隙間なく束状に接合させて、花弁状の筒状体に形成された磁着補助具本体Aと、磁着補助具本体Aより径小とした筒形状の強磁性体よりなる磁力補強材50とを備えている。複数の永久磁石21は、中空貫通孔13に挿嵌されるドライバービット40の軸線に対して、磁力線が傾斜角度をもって先端41に向かうように磁化方向が規定され、磁力線が、磁着補助具本体Aの先端側に隣接するようにドライバービット40が挿嵌された磁力補強材50を通過するようになっている。