(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085764
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】酸化ガリウム単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板
(51)【国際特許分類】
C30B 29/16 20060101AFI20170220BHJP
C30B 15/34 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B15/34
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-117108(P2012-117108)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-241316(P2013-241316A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】会田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】西口 健吾
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】池尻 憲次朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 元一
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−056098(JP,A)
【文献】
特開2011−153054(JP,A)
【文献】
Aida, H., et al.,"Growth of β-Ga2O3 single crystals by the edge-defined, film fed growth method",Japanese Journal of Applied Physics,2008年11月14日,Vol. 47, No. 11,pp. 8506-8509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EFG法によって製造され、転位密度が1×106〜3×107個/cm2であり、転位が引き上げ方向であるb軸方向に沿って存在する、ことを特徴とする酸化ガリウム単結晶。
【請求項2】
ネック径が0.4〜1.3mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の酸化ガリウム単結晶。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の酸化ガリウム単結晶からなり、CMP加工が施されていることを特徴とする酸化ガリウム単結晶基板。
【請求項4】
その表面にエッチングが施され、転位が存在する箇所に溝状のエッチピットが生じることで、基板表面に凹凸が形成されている、ことを特徴とする請求項3に記載の酸化ガリウム単結晶基板。
【請求項5】
少なくとも1インチサイズである、ことを特徴とする請求項3または4に記載の酸化ガリウム単結晶基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ガリウム単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ガリウム(Ga
2O
3)単結晶からなるGa
2O
3基板は、例えば、GaN系の薄膜デバイスを成膜し発光素子などを作ることに用いられている。このようなGa
2O
3単結晶は、種々の方法により製造することが提案されているが、大型の単結晶基板を製造するための結晶育成法として、EFG(Edge Defined Film Fed Growth)法が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Ga
2O
3融液を受容するルツボに立設されたスリットを有するダイを備え、ダイの断面内に設けられたスリット上昇したGa
2O
3融液に種結晶を接触させた後に種結晶を引き上げることにより、所定のサイズ、形状のGa
2O
3単結晶を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−56098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、GaN系の薄膜デバイスの成長基板に用いられるGa
2O
3単結晶のような結晶では、原子が理想的な周期的配列をしていることが好ましいが、実際の結晶育成においては、種結晶と融液を接触させた際の熱衝撃や、不適切な結晶成長速度で育成されることによって、主に結晶の成長方向に沿って、直線上に並んだ原子の位置がまとまってずれてしまうことがあり、このような線状の結晶欠陥は転位と呼ばれている。
【0006】
一般に、高い発光効率を得るためには転位の無いGa
2O
3単結晶基板を用いることが好ましいが、無転位の単結晶基板を得ることは難しく、現在のEFG法による結晶育成技術で製造されるGa
2O
3単結晶は、有限の転位を含んでいる。
【0007】
転位が表面に存在するGa
2O
3基板上にデバイス、例えば、GaN系LEDを作製する場合、Ga
2O
3基板上の転位が、成長したGaN膜にも伝播し、発光層中の転位密度が大きくなり発光効率が低下してしまうという問題があるため、Ga
2O
3単結晶基板の転位密度は可能な限り低くする必要がある。
【0008】
転位の少ない結晶を得るために、高温で細いネックを作製することや、結晶の育成速度を抑えることが一般に行われているが、酸化ガリウム単結晶育成において、これらの実施は注意を要する。酸化ガリウムは融点以上における蒸気圧が高く、結晶育成中の原料蒸発は大きな課題である。転位低減のためにより高温で結晶育成を行った場合、蒸発量は更に増えてより大量の原料が失われてしまう。また、育成速度を遅くすることも同様で、結晶育成が長時間になるとより多くの原料が失われるため好ましくない。
【0009】
結局のところ、現在の酸化ガリウム単結晶の育成においては、転位の抑制と原料ロスの低減がトレードオフの関係にある中で、転位密度が1×10
6個/cm
2未満の1インチ以上の大型単結晶を製造することは難しく、このような単結晶を加工して得られる基板の表面には、1×10
6個/cm
2以上の転位が存在する。
【0010】
一方で基板上にGaN膜を形成するプロセスにおいては、Lateral Epitaxy on the Patterned Substrate(LEPS)法と呼ばれる、GaN膜の転位密度を低減する技術がある。この方法は、基板表面に幅2〜10μmの凹凸を形成し、凸部から横方向にGaN膜を成長させることで、基板‐GaN界面で生じた転位が上方に伸びていく途中で横方向に屈曲するため、膜の表面近傍での転位密度を、基板に凹凸を形成しない場合と比較して1/3程度に低減させることが出来、紫外LEDを高効率化することが可能である。
【0011】
この方法を用いることで、転位密度の大きいGa
2O
3基板からであっても、GaN膜の表面の転位密度を減少させて、紫外LEDを高効率化することが可能になるが、しかし一般にLEPS法のための表面に凹凸を備えた基板を作製するには、フォトリソグラフィ技術を用いて基板表面にマスクを形成し、ウェットエッチング等によってマスクの開口部を凹状に加工するため、複雑な工程を要し製造コストが高くなる課題があった。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、通常は存在することが好ましくない単結晶中の転位を逆に積極的に利用することで、高品質の半導体デバイス膜を作製することができるLEPS法を行うのに好適な凹凸が表面に形成されたGa
2O
3基板を低コストで提供すること、および、そのために必要な転位を含んだ酸化ガリウム単結晶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる酸化ガリウム単結晶は、
EFG法によって製造され、転位密度が1×10
6〜3×10
7個/cm
2であ
り、転位が引き上げ方向であるb軸方向に沿って存在する、ことを特徴とする。
【0014】
例えば、ネック径が0.4〜1.3mmであることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の観点にかかる酸化ガリウム単結晶基板は、
第1の観点にかかる酸化ガリウム単結晶からなり、
CMP加工が施されていることを特徴とする。
【0016】
基板主面の表面上に、面内方向に沿って転位が存在することを特徴とする。
その表面にエッチングが施され、転位の存在する箇所と存在しない箇所とのエッチングレート差によって、フォトレジストのようなマスクを用いること無く、転位が存在する箇所に溝状のエッチピットを生じることで、基板表面に凹凸が形成されていることを特徴とする。
また、少なくとも1インチサイズであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、LEPS法を行うのに好適な凹凸が表面に形成された基板を低コストで作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)EFG法による酸化ガリウム単結晶の製造方法の一例の育成炉を説明する模式断面図である。(b)
図1(a)の種結晶と酸化ガリウム単結晶、及びダイトップ上の酸化ガリウム融液部分を示す、部分拡大図である。
【
図2】EFG法により作製される酸化ガリウム単結晶の概略図である。
【
図3】EFG法による転位を含んだ酸化ガリウム単結晶の概略図である。
【
図4】表面に凹凸が形成された酸化ガリウム単結晶基板の一例を示す説明図である。
【
図5】表面に凹凸が形成された酸化ガリウム単結晶基板の一例を示す斜視図である。
【
図6】転位密度とピット幅及びピット間隔との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の酸化ガリウム(Ga
2O
3)単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板について図面を参照して説明する。本実施の形態では、酸化ガリウム単結晶をEFG(Edge Defined Film Fed Growth)法で(101)面の結晶をb軸方向に引き上げることにより製造する場合を例に本発明を説明する。
【0020】
EFG法とは、スリットを有するダイが収容されたルツボに酸化ガリウム原料を投入して加熱し、スリットを介してその上部に溢出した酸化ガリウム原料の融液と種結晶とを接触させて酸化ガリウム単結晶を製造(育成)する方法である。
図1(a)は、EFG法による酸化ガリウム単結晶の製造方法の一例の育成炉を説明する模式断面図であり、同図(b)は
図1(a)の種結晶と酸化ガリウム単結晶、及びダイトップ上の酸化ガリウム融液部分を示す、部分拡大図である。まず、酸化ガリウム単結晶の製造装置を用いた酸化ガリウム単結晶の製造方法について簡単に説明する。
【0021】
図1(a)に示すように、酸化ガリウム単結晶の製造装置1の内部には、酸化ガリウム単結晶の原料としての酸化ガリウム融液2を受容するルツボ3が配置されている。ルツボ3は、有底円筒状に形成され、支持台4上に載置されており、その底面の温度を熱電対7によって測定されている。ルツボ3は、酸化ガリウム融液2を受容できるように、耐熱性を有する金属材料、例えば、イリジウム(Ir)により形成され、図示しない原料投入部によりルツボ3内に必量な量の原料が投入される。
【0022】
ルツボ3内には、ダイ5が配置されている。ダイ5は、例えば、略直方体状に形成され、その下端から上端(開口5B)に延びる1つまたは複数のスリット5Aが設けられている。例えば、
図1(a)では、ダイ5は、その厚さ方向の中央に1つのスリット5Aが設けられている。このダイ5は、製造する酸化ガリウム単結晶の形状、枚数等に応じて所望のものが用いられる。
【0023】
1つのスリット5Aは、ダイ5のほぼ全幅にわたって、ダイ5の厚さ方向に所定の間隔のスリット幅を有するように設けられている。このスリット5Aは、酸化ガリウム融液2を毛細管現象によってダイ5の下端からスリット5Aの開口5Bに上昇させる役割を有する。
【0024】
ルツボ3の上面には、蓋6が配置されている。蓋6は、ダイ5を除くルツボ3の上面が閉塞される形状に形成されている。このため、ルツボ3の上面に蓋6が配置された状態で、スリット5Aの開口5Bを除くルツボ3の上面が閉塞される。このように、蓋6は、ルツボ3から高温の酸化ガリウム融液2が蒸発することを防止し、さらにスリット5Aの上面以外に酸化ガリウム融液2の蒸気が付着することを抑制する。
【0025】
また、ルツボ3を包囲するように設けられた断熱材8の周囲には、例えば、高周波コイルからなるヒータ部9が配置されている。このヒータ部9によりルツボ3が所定の温度に加熱され、ルツボ3内の原料が融解して酸化ガリウム融液2になる。原料の融解温度は、例えば、ダイ5の開口5B上に置いた酸化ガリウム粒子の溶ける温度として確認される(チップメルト)。断熱材8は、ルツボ3と所定の間隔を有するように配置されており、ヒータ部9により加熱されるルツボ3の急激な温度変化を抑制する保温性を有する。
【0026】
また、スリット5Aの上部には、種結晶10を保持する種結晶保持具11が配置されている。種結晶保持具11は、種結晶保持具11(種結晶10)を昇降可能に支持するシャフト12に接続されている。
【0027】
そして、シャフト12により種結晶保持具11を降下して、毛細管現象で上昇し、開口5Bから露出したダイトップ上の融液2Aと種結晶10とを接触させて(シードタッチ)、さらに、シャフト12により種結晶保持具11を上昇させて、細いネック部13aを形成(ネッキング工程)する(
図1(b)参照)。その後、単結晶13をダイ5の幅方向に拡張するように結晶成長させてスプレッド部13bを育成(スプレディング工程)し、ダイ5の幅まで拡幅した(フルスプレッド)後は、ダイ5と同じ幅の直胴部13cが育成される(直胴工程)。
【0028】
このような酸化ガリウム単結晶の製造装置により製造(育成)された酸化ガリウム単結晶13の概略図を
図2に示す。
図2に示すように、酸化ガリウム単結晶13は、略シート状に形成されている。酸化ガリウム単結晶13は、育成工程に対応した結晶形状に形成されており、ネッキング工程で形成されるネック部13aと、スプレディング工程で形成されるスプレッド部13bと、直胴工程で形成される直胴部13cとを備えている。なお、酸化ガリウム単結晶基板21として利用するのは、通常、直胴部13cの結晶である。
【0029】
本発明の酸化ガリウム単結晶13には、
図3の引き出し番号14で示すように、転位が酸化ガリウム単結晶の引き上げ方向に沿って存在し、その転位密度は1×10
6〜3×10
7個/cm
2である。酸化ガリウム単結晶13の転位密度をかかる範囲にすることにより、後述するように、Lateral Epitaxy on the Patterned Substrate(LEPS)法によるGaNエピタキシャル膜成長に好適な、
図4及び
図5に示すような表面に凹凸が形成された酸化ガリウム単結晶基板を製造することができる。この基板にGaNエピタキシャル膜をLEPS法により成膜してGaN系LEDデバイスを作製すると、発光層に伝播する転位を低減することが可能となり、発光効率の損失を抑制することができる。このため、転位14を含んだ酸化ガリウム単結晶13からであっても高品質のGaN系LEDデバイスを作製することが可能になる。
【0030】
酸化ガリウム単結晶13の転位密度は、1×10
6〜3×10
7個/cm
2であることが好ましい。かかる範囲とすることにより前記LEPS法に好適な凹凸が表面に形成された基板が得られ、GaN系LEDデバイスの発光効率をさらに向上させることができるためである。
【0031】
本件における酸化ガリウム単結晶の転位密度は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて転位を濃淡模様として観察し、その数を計測することにより測定される。
【0032】
また、酸化ガリウム単結晶13は、そのネック径(ネック部13aの径)が0.4〜1.3mmであることが好ましい。酸化ガリウム単結晶13のネック径をかかる範囲にすることにより、その転位密度を1×10
6〜3×10
7個/cm
2に調整しやすいためである。
【0033】
図3中の破線で示される酸化ガリウム単結晶基板21は、転位14を含む酸化ガリウム単結晶13を、所定のサイズ、例えば、1インチサイズに切り出した基板である。酸化ガリウム単結晶基板21を半導体デバイス基板に用いる場合、その表面を原子レベルで平坦にする必要がある。そのための仕上げ加工にCMP(Chemical Mechanical Polish)加工が適応される。なお、CMP加工は化学的なエッチング効果と機械加工とを組み合わせた加工である。
【0034】
この転位14を含む酸化ガリウム単結晶基板21にCMP加工を用いて仕上げ研磨を行った後に、公知の方法にてエッチングを行うと、転位14が存在する箇所を起点として腐食が進行し、
図5に示すような溝状のエッチピット22が形成され、表面に凹凸が形成された基板を得ることができる。このとき単結晶の転位密度を適宜選択することで、凹凸の幅を調整することができる。また、転位が伸びる方向で隣り合った転位を起点とした複数のエッチピット同士がエッチングの進行と共に一つに合わさることでより長いエッチピットが形成される。これによりエッチピットの長さは、転位の伸びる方向によって異なるが、概ね10μm〜数mmとなる。なお、
図5ではエッチピット22の断面は矩形だが、その他にも三角溝形や、前記矩形の角部が丸まった断面形状であっても良い。
【0035】
ピット幅とピット間隔が2〜10μm程度に揃うように基板にエッチングを施すと、上述したように表面に転位が存在する箇所を起点に腐食が進行し、
図4及び
図5のように表面に凹凸が形成された基板をマスク無しで作製することができる。通常、基板表面に凹凸を形成する際は、基板を研磨加工した後にフォトレジスト等によるマスクを基板表面に形成し、マスクの開口部をエッチングすることで凹面を形成する。しかし、本発明の方法によれば、マスク形成に要する工程がまったく不要となり、大幅にコスト削減した表面に凹凸が形成された基板を実現できる。
【0036】
基板の転位密度とエッチングにより形成されたピット幅および間隔、つまり凹凸の形状との関係を調べたところ、
図6の結果が得られた。
図6から、酸化ガリウム単結晶基板21に形成される凹凸部の幅を、LEPS法に好適な2〜10μmにするには、酸化ガリウム単結晶13の転位密度を1×10
6〜3×10
7個/cm
2にすれば良いことが分かる。このため、本実施の形態の酸化ガリウム単結晶13によれば、酸化ガリウム単結晶基板21に形成される凹凸部の幅を、LEPS法に好適な2〜10μmにすることができる。
【0037】
また、このような表面に凹凸が形成された基板上にLEPS法によりGaN系の薄膜デバイスを成膜すると、元々転位が多く存在した基板凹部に成長したGaN膜は、基板凸部に成長したGaN膜が横方向成長することで覆われてしまうため、基板‐GaN界面で発生した転位がデバイス表面、例えばLED素子の発光層まで伝播することは無い。また、この横方向成長時には基板‐GaN界面で発生した転位が上方に伸びていく途中で屈曲し横方向に伝播するため、凸部上部では転位密度の低減が図られ、転位の多い酸化ガリウム基板からであっても、結果として
図7のような高品質のGaN基板を作製することができる。
【0038】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の各実施例にのみ限定されるものではない。
【0039】
(実施例1〜4)
本実施の形態の効果を確認するため、実施例1〜4として、ネック径を0.4〜1.3mmの範囲で制御することで転位密度の異なる酸化ガリウム単結晶を作製し、これらの単結晶を切り出して1インチ基板を得た後にエッチングにより表面に凹凸を形成した。
【0040】
(比較例1〜2)
本実施の形態の効果を確認するための比較例として、ネック径が0.2mmおよび1.5mmの酸化ガリウム単結晶を作製し、これらの単結晶を切り出して1インチ基板を得た後にエッチングにより表面に凹凸を形成した。
【0041】
作製した単結晶基板の転位密度、これらの基板をエッチングすることで形成された凹凸の形状、およびそれぞれの単結晶を作製したときのネック径を表1に示す。なお、シードタッチ温度(シードタッチ時の熱電対7の表示温度)は1930℃とした。
【0043】
表1に示すように、本発明によれば、転位密度が1×10
6〜3×10
7個/cm
2の酸化ガリウム単結晶が、ネック径を0.4〜1.3mmとすることにより得られ、また、凹凸部の幅がLEPS法に好適な2〜10μmとなることを確認した。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、酸化ガリウム単結晶の転位密度が1×10
6〜3×10
7個/cm
2であるので、この酸化ガリウム単結晶から加工された表面に凹凸を備えた基板を用いることにより、高品質のGaN膜を作製することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。例えば、上記実施の形態では、EFG法での(101)面の結晶育成により酸化ガリウム単結晶を製造する場合を例に本発明を説明したが、酸化ガリウム単結晶の製造方法はEFG法に限定されるものではなく、転位密度が1×10
6〜3×10
7個/cm
2の酸化ガリウム単結晶13が形成可能な各種の方法を用いることができる。また、育成する結晶面も(101)面に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、本発明の酸化ガリウム単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 酸化ガリウム単結晶の製造装置
2 酸化ガリウム融液
3 ルツボ
4 支持台
5 ダイ
5A スリット
5B 開口
6 蓋
7 熱電対
8 断熱材
9 ヒータ部
10 種結晶
11 種結晶保持具
12 シャフト
13 酸化ガリウム単結晶
13a 酸化ガリウム単結晶のネック部
13b 酸化ガリウム単結晶のスプレッド部
13c 酸化ガリウム単結晶の直胴部
21 酸化ガリウム単結晶基板
22 エッチピット