(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085775
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】オプティカルフローセンサ、光センサ及び光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H04N 5/369 20110101AFI20170220BHJP
H04N 5/351 20110101ALI20170220BHJP
H01L 51/42 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
H04N5/335 690
H04N5/335 510
H01L31/08 T
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-270679(P2012-270679)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-116853(P2014-116853A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】笠井 克幸
(72)【発明者】
【氏名】片桐 祥雅
【審査官】
鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−176191(JP,A)
【文献】
特開2000−267223(JP,A)
【文献】
特開2002−310793(JP,A)
【文献】
特開平04−311954(JP,A)
【文献】
特開平04−312081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30 − 5/378
H01L 21/339
H01L 27/14 −27/148
H01L 29/762
H01L 31/00 −31/02
H01L 31/0232
H01L 31/0248
H01L 31/0264
H01L 31/08
H01L 31/10
H01L 31/107 −31/108
H01L 31/111
H01L 31/18
H01L 51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層及び第2光電変換層を有する複数の光電変換素子を平面状に配列して構成されており、前記各光電変換素子から出力される出力電流をパラメータとしてオプティカルフローを算出するものであり、
前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層の組み合わせが、野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質及び遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、又は、互いに異なる野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、又は、互いに異なる遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質であるオプティカルフローセンサ。
【請求項2】
前記複数の光電変換素子からの出力電流値それぞれを、前記複数の光電変換素子に対応して配列して形成される電流分布に基づいてオプティカルフローを算出する請求項1記載のオプティカルフローセンサ。
【請求項3】
前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層が、バイオ材料由来の光受容性タンパク質からなり、
前記光電変換素子が、透光性を有する第1導電性層上に前記第1光電変換層が被膜されてなる第1電極と、第2導電性層上に前記第2光電変換層が被膜されてなる第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の両方に接触する電解液とを有するものである請求項1又は2記載のオプティカルフローセンサ。
【請求項4】
光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層及び第2光電変換層を有し、前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層の間に電流出力回路が形成され、前記電流出力回路からの出力電流により光情報を生成するものであり、
前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層の組み合わせが、野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質及び遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、又は、互いに異なる野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、又は、互いに異なる遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質である光センサ。
【請求項5】
光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層及び第2光電変換層を有し、前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層の間に電流出力回路が形成されたものであり、
前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層の組み合わせが、野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質及び遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、又は、互いに異なる野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、又は、互いに異なる遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質である光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オプティカルフローセンサ、光センサ並びに前記オプティカルフローセンサ及び前記光センサに用いられる光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自律移動型ロボットでは、その運動を制御するために、特許文献1に示すように、ロボットに搭載された撮像手段により連続する複数の画像データを取得し、互いに異なる時間に取得した複数の画像データからオプティカルフローを抽出し、得られたオプティカルフローから例えば周囲の障害物を検出するように構成されている。
【0003】
しかしながら、複数の画像データからオプティカルフローを抽出するためには、デジタル演算回路を用いた画像処理機能を如何に高めるかが問題となっており、デジタル技術のみでは限界があり、自律移動型ロボットにおける消費電力、占有空間、コスト等の制約を克服することは困難である。
【0004】
ところで、特許文献2に示すように、バイオ由来の光受容性タンパク質であるバクテリオロドプシン(bR)の光化学反応サイクル(プロトンポンプ)を利用した移動体検出素子が考えられている。この移動体検出素子は、表面に複数の画素電極が2次元配列状に形成された第1基板と、表面に対向電極が形成された第2基板と、両電極間に配された誘電体とを備え、前記対向電極の表面にバクテリオロドプシンを含む紫膜の配向膜が形成されている。
【0005】
しかしながら、この移動検出素子では、光情報(画像)に含まれる移動体の輪郭情報が取得できるものの、その他の移動方向や移動速度は、互いに異なる時間に取得した複数の輪郭情報を用いて演算する必要がある。そうすると、従来の画像データからオプティカルフローを演算するのと同様に、デジタル演算回路を用いた画像処理機能を如何に高めるかが問題となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−320024号公報
【特許文献2】特開2000−267223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、本願発明者は、前記バクテリオロドプシンを用いた双極型光検出器についての研究を行っている。具体的にこの双極型光検出器は、網膜神経節細胞の受容野の機能をシミュレートして、
図8に示すように、興奮領域に対応する部分にバクテリオロドプシン薄膜を形成するとともに、抑制領域に対応する部分にバクテリオロドプシン薄膜を形成して構成されている。この双極型光検出器において輪郭情報(エッジ)を移動させると、当該移動に伴って光応答電流が
図8に示すように変化する。
【0008】
そして、本願発明者は、
図8に示す特性を生かしてオプティカルフロー検出機能を作り出すことができるのではないかと考え、例えば光受容性タンパク質等の光電変換材料が種類によって光応答時定数が異なることに着目し、これによって本発明がなされたものである。つまり、本発明は、単一の時間に取得した出力電流からオプティカルフローを算出することができるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係るオプティカルフローセンサは、光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層及び第2光電変換層を有する複数の光電変換素子を平面状に配列して構成されており、前記各光電変換素子から出力される出力電流をパラメータとしてオプティカルフローを算出することを特徴とする。ここで光応答時定数とは、光電変換層が光を受光して光応答電流が発生するまでの応答の速さを示す特性値である。
【0010】
このようなものであれば、光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層及び第2光電変換層を用いているので、それら光電変換層の光応答時定数の違いから移動体における輪郭の移動方向によって光電変換素子から出力される電流が異なることになる。これにより、移動体における輪郭の移動方向を算出することができる。また、それら光電変換層の光応答時定数の違いから移動体における輪郭の移動速度によって光電変換素子から出力される電流が異なることになる。これにより、移動体における輪郭の移動速度を算出することができる。したがって、各光電変換素子からの出力電流をパラメータとしてオプティカルフローを容易に算出することができる。本発明は、互いに異なる時間に取得した複数の出力電流を用いることなく、単一の時間に取得した出力電流によってオプティカルフローを算出することができる。また、このように構成したオプティカルフローセンサの光電変換素子は、外部からの電力供給無しに出力電流を出力するため、省電力化が可能となる。さらに、ロボットに適用した場合には、その姿勢制御や周囲の障害物を検出するためのジャイロセンサ、超音波センサ又はレーダ等のセンシングデバイスを不要とすることが可能となり、ロボットの構造の簡素化や小型化が可能となる。
【0011】
特に、移動体の輪郭の移動方向を的確に算出するためには、前記各光電変換素子における前記第1光電変換層の受光面及び前記第2光電変換層の受光面が、平面方向において互いにずれて配置されていることが望ましい。
【0012】
前記複数の光電変換素子からの出力電流値それぞれを、前記複数の光電変換素子に対応して配列して形成される電流分布に基づいてオプティカルフローを算出することが望ましい。例えば、当該電流分布におけるエッジ部分に対応する光電変換素子とゼロクロス部分に対応する光電変換素子とに基づいてオプティカルフローを算出することが考えられる。
【0013】
前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層の組み合わせが、野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質及び遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、又は、互いに異なる野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、又は、互いに異なる遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質であることが望ましい。これならば、低コストでセンサを構成することができるとともに、大面積化も可能であり、センサに柔軟性を持たせることも容易となる。また、バイオ材料であるため、環境に負担が少ないものとすることができる。
【0014】
前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層が、バイオ材料由来の光受容性タンパク質からなり、前記光電変換素子が、透光性を有する第1導電性層上に前記第1光電変換層が被膜されてなる第1電極と、第2導電性層上に前記第2光電変換層が被膜されてなる第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の両方に接触する電解液とを有するものであることが望ましい。
【0015】
また本発明に係る光センサは、光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層及び第2光電変換層を有し、前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層の間に電流出力回路が形成され、前記電流出力回路からの出力電流により光情報を生成することを特徴とする。
【0016】
さらに本発明に係る光電変換素子は、光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層及び第2光電変換層を有し、前記第1光電変換層及び前記第2光電変換層の間に電流出力回路が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、光応答時定数の互いに異なる第1光電変換層及び第2光電変換層を用いているので、双極型光検出器の出力電流からオプティカルフローを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態のオプティカルフローセンサの構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態の光電変換素子の構成を示す模式図。
【
図3】同実施形態の各光電変換層の光応答電流(時定数)を示す模式図。
【
図4】直線状に配列した複数の光電変換素子により得られる出力電流を示す図(規格化速度v=1,5,10,50,100)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係るオプティカルフローセンサについて図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態のオプティカルフローセンサ100は、
図1及び2に示すように、光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層22及び第2光電変換層32を有する複数の光電変換素子10を平面状に配列して構成されている。この複数の光電変換素子10からの出力電流は、オプティカルフロー算出部11に出力される。なお、平面状に配列された複数の光電変換素子10は、
図1に示すように、縦横マトリックス状に配置されるものの他、所定の中心から放射状に配置されるものであっても良く、種々の配置態様とすることができる。
【0021】
各光電変換素子10は、双極型光検出器であり、
図2に示すように、透光性を有する第1導電性層21上に第1光電変換層22が被膜されてなる第1電極2と、透光性を有する第2導電性層31上に第2光電変換層32が被膜されてなる第2電極3と、第1電極2及び第2電極3の両方に接触する電解液4と、第1光電変換層22及び第2光電変換層32の間に形成された電流出力回路5とを有するものである。ここで、第1電極2による電流と第2電極3による電流とは逆向きとなるように構成されている。また、電解液4は、例えば塩化カリウム(KCl)溶液である。
【0022】
第1導電性層21は、例えばITO薄膜等の薄膜状電極であり、透明ガラス基板23上に形成されている。また、第2導電性層31も、前記第1導電性層21と同様に、例えばITO薄膜等の薄膜状電極であり、透明ガラス基板33上に形成されている。なお、透明ガラス基板23は、複数の光電変換素子10において共通の単一基板であり、透明ガラス基板33も同様に、複数の光電変換素子10において共通の単一基板である。
【0023】
前記第1導電性層21の表面に形成された第1光電変換層22及び前記第2導電性層31の表面に形成された第2光電変換層32は、例えばバイオ材料由来の光受容性タンパク質であるバクテリオロドプシン(bR)から形成された光受容性タンパク質薄膜である。これらの第1光電変換層22及び第2光電変換層32は、ディップコート法を用いて形成されたものであり、引き上げ速度及びバクテリオロドプシン溶液の濃度を制御することによって、例えば膜厚が4nm〜200nmとなるように制御されている。なお、その他、膜厚制御が困難であるが、キャスト法を用いて形成しても良いし、スピンコート法を用いても良い。
【0024】
そして、本実施形態の第1光電変換層22及び第2光電変換層32は、光応答時定数が互いに異なるものである。具体的に第1光電変換層22は、野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質、つまり野生型のバクテリオロドプシンにより形成されており、第2光電変換層32は、遺伝子組み換えされたバイオ材料由来の光受容性タンパク質、つまり遺伝子組み換えされたバクテリオロドプシン(例えばD96N変異型バクテリオロドプシン)により形成されている。ここで
図3に示すように、野生型のバクテリオロドプシンの光応答時定数は、D96N変異型バクテリオロドプシンの光応答時定数よりも小さい。なお、
図3のグラフにおける横軸は、変異型バクテリオロドプシンの立ち上がり時定数で規格化した時間であり、具体的には実験結果から得た時定数を用いて算出される。また、同グラフの縦軸は、光応答電流値であり、任意単位(arbitrary unit)で表される。
【0025】
また、本実施形態の光電変換素子10では、第1光電変換層22の受光面22a及び第2光電変換層32の受光面32aが、平面方向においてが互いにずれて配置されている。具体的に第1光電変換層22の受光面22a及び第2光電変換層32の受光面32aが互いに重ならないように配置されている。また、この光電変換素子10は、網膜神経節細胞の受容野の機能をシミュレートして、興奮領域に対応する部分に第1光電変換層22が設けられ、その両側である抑制領域に対応する部分に第2光電変換層32が設けられている。
【0026】
この光電変換素子10に照射領域のエッジ(輪郭)が一定速度で移動するように光を照射した場合、照射領域のエッジの移動速度に応じて光電変換素子10から出力される光応答電流値の変化態様(波形)が異なる。これにより、照射領域の移動速度を算出することができる。
【0027】
そして本実施形態のオプティカルフローセンサ100は、複数の光電変換素子10から出力される出力電流をパラメータとしてオプティカルフローを算出するオプティカルフロー算出部11を有している。このオプティカルフロー算出部11は、複数の光電変換素子10からの出力電流値それぞれを、複数の光電変換素子10に対応して配列して形成される電流分布に基づいてオプティカルフローを算出するものである。
【0028】
具体的に算出部11は、前記電流分布におけるエッジ部分に対応する光電変換素子10(A)とゼロクロス部分に対応する光電変換素子10(B)とに基づいてオプティカルフローを算出する。簡単のため、複数の光電変換素子10を直線状に配列した場合について
図4に示す。なお、
図4は、100個の光電変換素子10を直線状に配列した場合である。また、規格化速度vは、隣接する光電変換素子10間の距離を変異型バクテリオロドプシンの立ち上がり時定数で割ったものである。規格化速度をv=1,5,10,50,100と変化させた場合の電流分布の変化をそれぞれ
図4の(a)〜(e)に示している。
図4の(a)〜(e)から分かるように、移動体(光照射領域)の移動速度に伴って、エッジ部分に対応する光電変換素子10(A)とゼロクロス部分に対応する光電変換素子10(B)の距離が大きくなっており、電流分布から、エッジ部分に対応する光電変換素子10(A)及びゼロクロス部分に対応する光電変換素子10(B)を特定することによって、オプティカルフローを算出することができる。その他、電流分布におけるピーク電流値又は当該ピーク電流値を示す光電変換素子10に基づいてオプティカルフローを算出するようにしても良いし、電流分布における波形形状に基づいてオプティカルフローを算出するようにしても良い。
【0029】
このように構成した本実施形態に係るオプティカルフローセンサ100によれば、光応答時定数が互いに異なる第1光電変換層22及び第2光電変換層32を用いているので、それら光電変換層22、32の光応答時定数の違いから移動体における輪郭の移動方向によって光電変換素子10から出力される電流が異なることになる。これにより、移動体における輪郭の移動方向を算出することができる。また、それら光電変換層22、32の光応答時定数の違いから移動体における輪郭の移動速度によって光電変換素子10から出力される電流が異なることになる。これにより、配列された複数の光電変換素子からの電流分布を用いて移動体における輪郭の移動速度を算出することができる。したがって、各光電変換素子10からの出力電流をパラメータとしてオプティカルフローを算出することができる。
【0030】
また、本実施形態のオプティカルフローセンサ100によれば、互いに異なる時間に取得した複数の出力電流を用いることなく、単一の時間に取得した出力電流によってオプティカルフローを算出することができる。また、このように構成したオプティカルフローセンサ100の光電変換素子10は、外部からの電力供給無しに、出力電流を出力するため、省電力化が可能である。さらに、ロボットに適用した場合には、その姿勢制御や周囲の障害物を検出するためのジャイロセンサ、超音波センサ又はレーダ等のセンシングデバイスを不要とすることが可能となり、ロボットの構造の簡素化や小型化が可能となる。
【0031】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態の第1光電変換層22及び第2光電変換層32の組み合わせが、野生型のバクテリオロドプシン及び遺伝子組み換えされたバクテリオロドプシンであったが、その他の組み合わせとしては、互いに異なる野生型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質であっても良いし、互いに異なる遺伝子組み換え型のバイオ材料由来の光受容性タンパク質であっても良い。また、第1光電変換層22及び第2光電変換層32の光応答時定数が異なるものであれば、第1光電変換層22及び第2光電変換層32が互いに異なる有機化合物であっても良いし、互いに異なる半導体材料であっても良い。
【0032】
また、光電変換素子10における第1光電変換層22及び第2光電変換層32としては、
図5に示すように、第1光電変換層22及び第2光電変換層32を1つずつ有するものであっても良いし、第1光電変換層22及び第2光電変換層32の一部が平面方向において一部重なるように配置されたものであっても良い。なお、
図6に示すように、透明な材料を光電変換層に用いる場合においては、第1光電変換層22及び第2光電変換層32の全体が平面方向に重なるように配置してもよい。また、第1光電変換層22及び第2光電変換層32の一部が平面方向に重なるように配置してもよい。
【0033】
さらに、外部に差分回路を設置する場合または応答極性の異なる光電変換層を用いる場合においては、
図7に示すように、光電変換素子10における第1電極2及び第2電極3を同一の基板に配置したものであっても良い。
【0034】
加えて、本発明のオプティカルフローセンサは、ロボット・移動体におけるモーション検出、移動車両の相対速度の検出、死角に入った車両や並列・追い越し車両の検出、歩行者・障害物の検出、車両等の衝突危険回避、インターネット等の通信手段を介したロボット、移動体等のリモート制御用センサ等に利用することができる。
【0035】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
100・・・オプティカルフローセンサ
10 ・・・光電変換素子
2 ・・・第1電極
21 ・・・第1導電性層
22 ・・・第1光電変換層
3 ・・・第2電極
31 ・・・第2導電性層
32 ・・・第2光電変換層
4 ・・・電解液
5 ・・・電流出力回路