特許第6085787号(P6085787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6085787-放熱部材の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085787
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】放熱部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/06 20160101AFI20170220BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20170220BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20170220BHJP
   B23K 1/20 20060101ALN20170220BHJP
   G12B 15/06 20060101ALN20170220BHJP
【FI】
   C23C4/06
   H01L23/36 Z
   C04B41/88 S
   !B23K1/20 E
   !G12B15/06
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-248611(P2012-248611)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-95137(P2014-95137A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北野 宏樹
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−294696(JP,A)
【文献】 特表平07−501855(JP,A)
【文献】 特開2004−221228(JP,A)
【文献】 特開2009−099753(JP,A)
【文献】 特開2008−124258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00
H01L 23/36
G12B 15/06
H05K 5/00 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC、Al23、Si34、MgO、AlN、及びBNの中から選ばれる少なくとも一種のセラミックスの多孔質体によって形成された多孔質セラミックス部に対し、Cu、Sn、及びNiの中から選ばれる少なくとも一種の金属材料、又は当該金属材料を含有する材料のいずれかである金属系材料を溶射することにより、前記金属系材料の微粒子を前記多孔質セラミックス部の細孔内に入り込ませるとともに、前記金属系材料を前記多孔質セラミックス部の表面に堆積させて、固着対象箇所に対してはんだ付けによる接合が可能な溶射被膜部を形成する
放熱部材の製造方法
【請求項2】
前記溶射被膜部は、被膜の厚さが10μm以上とされている
請求項1に記載の放熱部材の製造方法
【請求項3】
前記多孔質セラミックス部が、5W/(m・K)以上の熱伝導率を有する
請求項1又は請求項2に記載の放熱部材の製造方法
【請求項4】
前記金属系材料は、磁性材料又は磁性材料を含有する材料のいずれかである
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の放熱部材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱を促すために、発熱箇所や発熱箇所の近傍に取り付けられる放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に内蔵される電子部品(例えば、各種半導体素子など)は、高速化・高集積化が進むのに伴って発熱性が高くなっている。そのため、発熱性の高い電子部品や、そのような電子部品が実装された回路基板からの放熱対策が重要視されている。このような放熱対策のために利用される放熱部材の一つとして、多孔質セラミックスで構成される放熱部材は既に提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−57505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1には、同文献に記載された放熱部材(多孔質セラミックス)に関し、どのような手法で固着対象箇所に対して固着するのかについて、具体的な説明はない。
【0005】
一般的な放熱部材(例えば、金属材料からなる放熱部材など)であれば、多くの場合、放熱部材を回路基板上の固着対象箇所に取り付ける際には、ねじ止めなどを行っている。
しかし、上記特許文献1に記載されているような多孔質セラミックスの場合、多孔質セラミックスをねじ止めによって固定しようとすると、ねじからの力を受けて多孔質セラミックスが割れてしまうことがあるので、この種の多孔質セラミックスをねじで固定することは困難である。また、ねじ止めの場合、ねじが必要な分だけ部品点数が増える上に、ねじを一箇所ずつ締める作業には人手も時間もかかる。
【0006】
ねじ止め以外の固定方法としては、例えば、両面テープなどの固着手段で放熱部材を固着する、という手法も考え得る。しかし、両面テープの場合、固着箇所と放熱部材との間に両面テープが挟まれるので、固着箇所から放熱部材への熱移動が両面テープによって阻害されるおそれがあり、その場合、放熱効率が低下するという問題がある。また、両面テープの場合、ねじ止めなどに比べて固着力が弱い、という問題もある。
【0007】
また、上述のようなねじや両面テープを利用しない固着方法としては、はんだ付けのような固着方法が考えられるが、この種の多孔質セラミックスは、一般に、はんだとの馴染みが悪いので、多孔質セラミックス製の放熱部材の場合、単にはんだ付けするだけでは適切に固着することが困難である。
【0008】
セラミックス材料からなる部材をはんだ付けする方法としては、事前にセラミックス表面にめっき被膜を形成しておいて、そのめっき部分をはんだ付けするという方法が考えられる。
【0009】
しかし、セラミックス表面にめっき被膜を施すには、通常、無電解めっき法でめっき被膜を形成することになるので、放熱部材の全面にめっき被膜が形成されてしまう。そのため、放熱部材の一部(例えば、はんだ接合面)だけに部分的にめっき被膜を形成したい場合には、事前のマスキング作業や事後の被膜除去作業など、何らかの製造工程が増えることになり、放熱部材の製造に相応の手間がかかるという問題がある。
【0010】
また、無電解めっき法によるめっき被膜の場合、膜厚を十分に厚くすることが難しく、膜厚が薄い場合、はんだ付けの際にめっき食われ(めっき被膜を形成する金属がはんだ側へ溶解する現象)が発生すると、はんだがめっき被膜を貫通してしまうことがある。この場合、はんだがめっき被膜を貫通した箇所では、めっき被膜を設けたことによる効果が失われてしまうので、放熱部材と固着対象箇所との接合強度が低下してしまうという問題がある。
【0011】
以上のような事情から、多孔質セラミックス製の放熱部材は、高い放熱性能は備えているものの、簡便な手法で回路基板の表面に対して適切に実装することが難しく、この点に改善の余地が残されていた。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、多孔質セラミックス製でありながら、はんだ付けが可能で、その接合強度も十分に高めることができる放熱部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の放熱部材は、セラミックスの多孔質体によって形成された多孔質セラミックス部と、金属又は金属を含有する材料のいずれかである金属系材料を、前記多孔質セラミックス部に対して溶射することによって形成されており、固着対象箇所に対してはんだ付けによる接合が可能な溶射被膜部とを有する。
【0014】
このように構成された放熱部材によれば、溶射被膜部を固着対象箇所に対してはんだ付けすることにより、当該箇所に放熱部材を固着することができる。しかも、溶射被膜部は、多孔質セラミックス部に対して金属系材料を溶射することによって形成されているので、無電解めっき法によって形成されるめっき被膜に比べ、溶射被膜部の厚さを格段に厚くすることができる。
【0015】
したがって、はんだ付けをする際に仮に金属食われが発生したとしても、その程度でははんだが溶射被膜部を貫通しない程度まで溶射被膜部の厚さを厚くすることができ、これにより、はんだ付け部分の接合強度を十分に高めることができる。
【0016】
また、溶射被膜部を形成する際には、多孔質セラミックス上において必要な範囲だけをターゲットにして、金属系材料を溶射することができる。そのため、めっき対象物の全面にめっき被膜が形成されてしまう無電解めっき法に比べ、より容易に部分的な溶射被膜を形成することができる。
【0017】
さらに、溶射被膜部は、金属系材料の微粒子が溶融若しくは軟化した状態で多孔質セラミックスの表面に向かって噴射され、多孔質セラミックスの表面に堆積・凝固することによって形成される。そのため、溶射被膜部も微粒子間の空隙が微細な気孔として残る多孔質体となっており、はんだ接合面は微細な凹凸を有する表面積の大きい面になる。したがって、このような溶射被膜部を備える放熱部材であれば、溶射被膜部が有する空隙ないし凹凸に、溶融したはんだが入り込むので、はんだ接合面が平滑になっているものに比べ、より強固なはんだ接合を行うことができる。
【0018】
また、溶射被膜部を形成する際、上述のように金属系材料の微粒子が多孔質セラミックスの表面に向かって噴射されると、一部の微粒子は多孔質セラミックス側の細孔内に入り込む。そのため、更に細孔外に微粒子が吹き付けられた際、細孔の内外で金属系材料の微粒子同士が接合されると、多孔質セラミックスの表面とその表面に堆積した金属系材料には機械的な噛み合いが生じるので、そのアンカー効果によって多孔質セラミックス部と溶射被膜部を物理的に強固に接合することができる。
【0019】
なお、本発明の放熱部材において、溶射被膜部を形成する際の溶射方式は任意であり、フレーム溶射、高速フレーム溶射、爆発溶射、電気式溶射などの溶射方式を利用することができる。
【0020】
ところで、溶射被膜部の被膜厚は、はんだ付けに伴う金属食われが発生しても、はんだが溶射被膜部を貫通しない程度に設定されていればよく、その厚さははんだ付け工程の時間条件や温度条件によっても左右される。ただし、一般的な条件を想定して具体的な目安を例示すれば、前記溶射被膜部は、被膜の厚さが10μm以上とされていると好ましい。このような被膜厚が確保された放熱部材とすれば、はんだ食われに起因する接合強度の低下を防止ないし抑制できるので、固着対象箇所に対する接合強度を十分に高めることができる。
【0021】
なお、被膜の厚さが10μmを下回ると、はんだ付けに伴う金属食われが発生した際に十分な被膜厚を確保することが難しくなる傾向がある。一方、被膜の厚さが10μm以上あれば所期の接合強度を確保できるので、接合強度の確保という観点からは、被膜厚について特に上限はない。
【0022】
ただし、過剰に被膜を厚くしても既に十分に確保された接合強度はそれ以上向上しないので、このような点だけを考慮するのであれば、例えば、被膜厚を10〜500μm程度の範囲内で調節するとよい。その一方、別の点を考慮するのであれば、被膜厚を500μm以上としてもよい。例えば、溶射被膜部にはんだ接合部としての機能以外の別機能を持たせたい場合には、その別機能に必要となる被膜厚として、500μm以上の被膜厚を確保することも考え得る。
【0023】
つまり、はんだ接合以外の他の事情も考慮した場合には、必要に応じて被膜厚を適宜決めることができるのである。溶射方式で被膜を形成する場合、例えば10mm厚程度の被膜であっても形成可能なので、本発明においても、そのような厚い溶射被膜を形成してもよい。
【0024】
また、多孔質セラミックス部を形成する多孔質セラミックスについては、放熱を図ることができる程度に熱伝導率が高ければよいが、一つの目安としては、例えば、5W/(m・K)以上の熱伝導率を有するものが好ましい。
【0025】
放熱を図ることができる程度に熱伝導率が高く、工業的に放熱部材を製造する上で実用的な材料を例示すれば、前記多孔質セラミックス部は、SiC、Al23、Si34、MgO、AlN、及びBNの中から選ばれる少なくとも一種のセラミックスの多孔質体によって形成されていると好ましい。これらの多孔質セラミックスは、いずれも十分に熱伝導率が高く、放熱部材として所期の性能を確保することができる。
【0026】
また、溶射被膜部を形成する金属系材料については、溶射によって溶射被膜部を形成することができ、かつ、溶射被膜部を形成したことによってはんだ付けが可能となる材料であれば、特に限定されないが、一例を挙げれば、前記金属系材料は、Cu、Sn、及びNiの中から選ばれる少なくとも一種の金属材料、又は当該金属材料を含有する材料であると好ましい。金属材料(Cu、Sn、Ni)を含有する材料としては、当該金属材料(Cu、Sn、Ni)を含有する合金や当該金属材料(Cu、Sn、Ni)を含む複合組成物を挙げることができる。このような材料で形成された溶射被膜部を備えていれば、固着対象箇所に対するはんだ付けを行うことができ、その接合強度を十分に高めることができる。
【0027】
また、溶射被膜部を形成する金属系材料については、溶射によって溶射被膜部を形成することができ、かつ、溶射被膜部を形成したことによってはんだ付けが可能となる材料であることに加え、はんだ付けとは別の観点で新たな機能を付加できる材料を選定してもよい。
【0028】
一例を挙げれば、前記金属系材料は、磁性材料又は磁性材料を含有する材料のいずれかであると好ましい。磁性材料の例としては、Fe,Co,Niに、Fe,Co,Ni,Y,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Si,Bなどを添加したものを用いることができ、より具体的には、FeNi合金(パーマロイ)や電磁ステンレス鋼やCoZrNb合金などを挙げることができる。このような材料で形成された溶射被膜部を備えていれば、固着対象箇所に対するはんだ付けを行うことができる他、溶射被膜部によって電磁波を減衰ないし遮断できるようになるので、これにより、放熱部材をノイズ抑制部材としても利用することができるようになる。なお、磁性材料を用いて溶射被膜部を作成する場合、溶射被膜は厚い方が磁性材料による効果を得ることができるので、その場合の被膜厚さは10μm〜10mmの範囲内で調節されればよく、どの程度の被膜厚とするかについては、必要とされる性能とコストを鑑み決定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a)は放熱部材の概略的な構造を示す説明図、(b)は放熱部材が回路基板にはんだ付けされた状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[放熱部材の構造]
図1(a)に示す放熱部材1は、自動実装機を使用してプリント配線板上に実装可能なもので、セラミックスの多孔質体によって形成された多孔質セラミックス部3と、金属系材料によって形成された溶射被膜部5を有する構造とされている。
【0031】
本実施形態において、多孔質セラミックス部3は、多孔質化されたセラミックスによって形成され、その熱伝導率は10W/(m・K)となっている。また、溶射被膜部5は、多孔質セラミックス部3となるセラミックスの多孔質体に対して、金属系材料を溶射することによって形成されている。本実施形態において、溶射被膜部5を形成する金属系材料としては、Cu−Ni系合金が使用されている。
【0032】
また、本実施形態において、放熱部材1のサイズは20mm×20mm×3mmとされ、溶射被膜部5の被膜厚は約50μmとされている。
[放熱部材の製造例]
多孔質セラミックス部3となるセラミックスの多孔質体は、様々な製法で製造することができるが、本実施形態においては、以下のような製法を利用した。
【0033】
まず、セラミックス原料としては、平均粒子径12μmのSiC:30重量部、平均粒子径35μmのSiC:30重量部、平均粒子径1μmのAl23:10重量部、及び平均粒子径1μmのSiO2:30重量部の混合物を用意し、このセラミックス原料:100重量部に対し、平均粒子径1μmの酸化鉄を少量(1重量部以下)とバインダー(ポリビニールアルコール)と水を加え、ニーダーを使って混練して、粒子径100〜500μm程度の造粒物を製造した。なお、バインダーの配合量は、最終的に得られるセラミックスの多孔質体の気孔率が45%程度となるように調節した。
【0034】
この造粒物を金型に入れて成形し、焼成後に20×20×3mmの板状体となる成形体を作製し、この成形体を大気雰囲気下1350℃の温度条件で焼成して、所期のセラミックス多孔質体を得た。このセラミックス多孔質体を基材として、高速フレーム溶射法(HVOF)によってCu−Ni系合金を溶射し、基材上に厚さ50μmの溶射被膜を形成し、上述の放熱部材1を完成させた。
【0035】
[放熱部材の使用例]
以上のように構成された放熱部材1は、図1(b)に例示するように、プリント配線板などの回路基板11上にはんだ付けされる。すなわち、放熱部材1は、金属系材料で形成された溶射被膜部5を備えているので、多孔質セラミックス部3が多孔質セラミックス製とされているにもかかわらず、リフローソルダリング等の方法で回路基板11上にはんだ13を介して接合することができる。
【0036】
多孔質セラミックス部3は、そのままでも放熱部として機能するが、多孔質セラミックス部3に対して機器の筐体(図示略)を接触させることにより、多孔質セラミックス部3から筐体へ熱を逃がすように構成してもよい。あるいは、多孔質セラミックス部3に重ねて放熱フィン(図示略)を設け、多孔質セラミックス部3から放熱フィンへ熱を逃がすように構成してもよい。
【0037】
上記放熱フィンのような別の放熱手段を多孔質セラミックス部3に付加する場合、多孔質セラミックス部3と隣接する位置には、上記別の放熱手段を多孔質セラミックス部3に固着するための粘着層(図示略)を設けてあってもよい。あるいは、上記筐体との間に空隙が形成されるのを避けるため、多孔質セラミックス部3と筐体との間に挟み込まれる位置に、熱伝導性の高いグリース層やエラストマー層が設けられていてもよい。
【0038】
すなわち、放熱部材1は、少なくとも多孔質セラミックス部3と溶射被膜部5が積層された構造とされているが、更に目的に応じて別の機能を有する層が積層されていてもよい。ただし、このような層を積層する場合には、放熱部材1の有する放熱性能を阻害することがないように、十分に熱伝導性の高い層を付加することが重要である。
【0039】
[効果]
以上のように構成された放熱部材1によれば、溶射被膜部5を回路基板11に対してはんだ付けすることにより、放熱部材1を回路基板11に固着することができる。しかも、溶射被膜部5は、多孔質セラミックス部3に対して金属系材料を溶射することによって形成されるので、無電解めっき法によって形成されるめっき被膜に比べ、溶射被膜部5の厚さを厚くすることができる。
【0040】
したがって、はんだ付けをする際に仮に金属食われが発生したとしても、その程度でははんだが溶射被膜部5を貫通しない程度まで溶射被膜部5の厚さを厚くすることができ、これにより、はんだ付け部分の接合強度を十分に高めることができる。
【0041】
また、溶射被膜部5を形成する際には、多孔質セラミックス部3の一部の範囲だけをターゲットにして、金属系材料を溶射することができる。そのため、めっき対象物の全面にめっき被膜が形成されてしまう無電解めっき法に比べ、より容易に必要箇所だけに溶射被膜部5を形成することができる。
【0042】
さらに、溶射によって形成される溶射被膜部5は、金属系材料の微粒子間の空隙が微細な気孔として残る多孔質体となっており、はんだ接合面は微細な凹凸を有する表面積の大きい面になっている。したがって、このような溶射被膜部5を備える放熱部材1であれば、はんだ接合される面が平滑になっているものに比べ、より強固なはんだ接合を行うことができる。
【0043】
また、溶射被膜部5を形成する際、金属系材料の微粒子が多孔質セラミックス側の細孔内に入り込み、多孔質セラミックスの表面とその表面に堆積した金属系材料には機械的な噛み合いが生じるので、アンカー効果によって多孔質セラミックス部3と溶射被膜部5を物理的に強固に接合することができる。
【0044】
さらに、上記実施形態では、溶射被膜部5を形成する金属系材料として、磁性材料としての成分を含むCu−Ni系合金を使用したので、溶射被膜部5を利用してはんだ付けができるのはもちろんのこと、溶射被膜部5によって電磁波を減衰ないし遮断することもできる。したがって、放熱部材1をノイズ抑制部材としても利用することができる。
【0045】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0046】
例えば、上記実施形態では、所定の被膜厚(厚さ50μm)とされた溶射被膜部5を例示したが、溶射被膜部5の被膜厚は10μm以上とされていればよく、これにより、はんだ食われに起因する接合強度の低下を防止ないし抑制できるので、固着対象箇所に対する接合強度を十分に高めることができる。特に、はんだ付けを目的とする場合、溶射被膜部5の被膜厚は10〜500μm程度とされていればよいが、更に別の目的があれば、溶射被膜部5の被膜厚は10μm〜10mm程度の範囲内で調節してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、溶射被膜部5を形成する金属系材料として、磁性材料としての成分を含むものを例示したが、磁性材料を含むか否かは任意である。
また、上記実施形態では、特定のセラミックス材料で形成されたセラミックス多孔質部を例示したが、多孔質セラミックス部については、放熱を図ることができる程度の熱伝導率(例えば5W/(m・K)以上)を確保することができるものであれば任意であり、例えば、SiC、Al23、Si34、MgO、AlN、及びBNの中から選ばれる少なくとも一種のセラミックスの多孔質体であれば、これらのいずれを含有するか、また、その配合比をどの程度とするかは任意である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・放熱部材、3・・・多孔質セラミックス部、5・・・溶射被膜部、11・・・回路基板、13・・・はんだ。
図1