(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗布面は、前記凹部と前記凸部とが滑らかに連続することにより、前記側方視でS字状に延在する曲面状とされていることを特徴とする請求項2記載の化粧料塗布容器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る化粧料塗布容器を示す縦断面図、
図2は
図1の化粧料塗布容器において移動体の前進限の状態を示す
図1の縦断面位置を90°異なる位置とした縦断面図、
図3は
図1の化粧料塗布容器を一部断面化して示す分解斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の化粧料塗布容器100は、その内部に充填した化粧料Mを使用者の操作により適宜吐出する(押し出す)ものである。
【0015】
この化粧料Mとしては、例えば、アイライナー、アイブロー、リップライナー、アイシャドウ、ボディーペイント、エナメル、リップグロス、アイカラー、チークカラー、コンシーラー、ヘアーカラー等を始めとした種々の化粧料を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(ジェル(ゲル)状、半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)ものを用いるのが好適である。また、化粧料Mとして、顔料、化粧料油剤、ワックス等に加え、揮発性溶剤(例えば、シクロペンタシロキサン等のシリコン油や、イソドデカン、イソヘキサデカン等の炭化水素油)を配合することにより、その持ちのよさを高めることができる。
【0016】
また、化粧料Mとしては、低粘度から高粘度のものを用いることができ、特に好ましいとして0.1N〜0.3N程度の硬度を有する化粧料Mを用いている。この化粧料Mの硬度は、化粧品において硬度を計るために使用される一般的な測定方法により求められるものである。ここでは、例えばFUDOH RHEO METER[RTC-2002D.D](株式会社レオテック社製)を測定器として用い、雰囲気温度25℃条件下にてφ3mmの鋼棒を6cm/minの速度で化粧料Mに深さ10mm程度挿入したときに当該化粧料Mに生じるピーク時の力(強度)を硬度(針入度)としている。
【0017】
図1〜3に示すように、化粧料塗布容器100は、化粧料Mが充填される充填領域1xを内部に備えた先筒である充填部材1と、その前半部に充填部材1の後半部を内挿して当該充填部材1を軸線方向(前後方向)及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒3と、を外形構成として具備している。なお、「軸線」とは、化粧料塗布容器100の前後に延びる中心線を意味する(以下、同じ)。
【0018】
この化粧料塗布容器100は、その内部に、本体筒2(充填部材1でも可)と操作筒3との相対回転により軸線方向に移動する移動体6と、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域1xの後端を構成(形成)する押出部としてのピストン7と、当該相対回転による移動体6の移動を可能とする螺合部としての螺子筒4と、螺子筒4に対し一方向のみ相対回転可能なラチェット部材5と、を概略備えている。さらにまた、この化粧料塗布容器100は、本体筒2及び操作筒3の相対回転を一方向のみ許容するラチェット機構8を備えている。
【0019】
本体筒2は、円筒状に構成され、その軸線方向中央部の内周面に、充填部材1及び螺子筒4を回転方向に係合するためのものとして、周方向に多数の凹凸状が並設されて当該凹凸状が軸線方向に所定長延びるローレット2aを有している。また、本体筒2の先端部の内周面には、充填部材1を軸線方向に係合するための環状突部2bが設けられている。本体筒2の後部側の内周面には、操作筒3を軸線方向に係合するためのものとして、周方向に沿って延びる突部2cが形成されている。
【0020】
操作筒3は、樹脂による射出成形品とされており、前方に開口する有底円筒状を呈している。操作筒3は、その前端側に外径が小径とされる前端筒部3aを備え、この前端筒部3aの外周面には、本体筒2の突部2cに軸線方向に係合するための環状溝部3bが設けられている。また、操作筒3の底部中央には、軸体3cが立設されている。軸体3cは、円柱体の外周面に軸線方向に延びる突条3dを複数有する横断面(軸線方向と直交する断面)非円形形状とされ、この突条3dは、移動体6の回止め部の一方を構成する。
【0021】
また、操作筒3は、その内周面に、底部から先端側に向かって延びる突条3eを周方向八等配の位置に備えている。この操作筒3は、その前端筒部3aから本体筒2に内挿され、その環状溝部3bが本体筒2の突部2cに係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。
【0022】
螺子筒4は、樹脂による射出成形品とされており、段付き円筒状の外形を呈している。この螺子筒4は、前端筒部4xと、前端筒部4xよりも大径の外形を有する中央筒部4yと、中央筒部4yよりも小径の外形を有する後端筒部4zと、を前方から後方に向かってこの順に有している。一方、螺子筒4の内周面は、段差なく軸線方向に沿って真っ直ぐ延在している。
【0023】
前端筒部4xは、螺子筒4の前端部分を構成し、その内周面には、螺合部(押出機構)9の一方を構成する雌螺子4eが設けられている。中央筒部4yは、螺子筒4の中央部分及び中央部分の前端寄りを構成し、その外周面において周方向の複数の位置には、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するための突条4cが形成されている。
【0024】
後端筒部4zは、螺子筒4の後端部分及び中央部分の後端寄りを構成し、その後端面には、ラチェット機構8を構成するものとして、ラチェット部材5に係合するラチェット歯8aが周方向に沿って複数設けられている。ここでのラチェット歯8aは、後端面において周方向四等配の位置に突設されている。
【0025】
この螺子筒4は、本体筒2に内挿され、その突条4cが本体筒2のローレット2aに回転方向に係合する。また、螺子筒4は、その後端筒部4zが操作筒3に内挿される。これにより、螺子筒4は、本体筒2に回転方向に係合され、本体筒2に対し同期回転可能となるよう装着されている。
【0026】
ラチェット部材5は、樹脂による射出成形品とされており、略円筒状に構成されている。ラチェット部材5の前端面には、ラチェット機構8を構成するものとして、螺子筒4のラチェット歯8aに係合するラチェット歯8bが周方向に沿って複数設けられている。ここでのラチェット歯8bは、ラチェット部材5の前端面において周方向八等配の位置に突設されている。
【0027】
このラチェット部材5の周壁において中央部から後端に至る部分には、略螺旋状のスリット5aが形成されている。これにより、ラチェット部材5は、ラチェット歯8bをラチェット歯8a側である前方へ向けて付勢するバネ部5bとしての機能を有する。また、ラチェット部材5の外周面の前端部には、操作筒3の突条3eに回転方向に係合するものとして、周方向に所定幅を有して軸線方向に延びる縦リブ5eが設けられている。縦リブ5eは、ラチェット部材5の外周面の前端部において周方向八等配の位置に設けられている。
【0028】
このラチェット部材5は、その後方から操作筒3に内挿され、その縦リブ5eが操作筒3の突条3e,3e間に進入し、当該縦リブ5eが突条3eに回転方向に係合されている。これと共に、ラチェット部材5は、螺子筒4の後端側に突き当てられ、そのラチェット歯8bが螺子筒4のラチェット歯8aと係合可能とされている。これらにより、ラチェット部材5は、ラチェット歯8a,8bによって螺子筒4に対し一の回転方向のみ相対回転可能となる回転規制状態で、操作筒3に組み付けられている。
【0029】
また、ラチェット部材5は、螺子筒4の後端側と操作筒3の底面とにより軸線方向に挟み付けられ、そのバネ部5bによる付勢力(弾性力)が生じてラチェット歯8bが前方側へ付勢され、これにより、互いに係合したラチェット歯8a,8bがクリック係合の状態とされる。
【0030】
移動体6は、円筒状に構成され、その前端部の後側から後端部に亘る外周面に、螺合部9の他方を構成する雄螺子6bを備えている。また、移動体6の内周面において周方向に六等配の位置には、移動体6の回止め部の他方を構成するものとして、径方向内側に突出し且つ軸線方向に延びる突条6cが設けられている。この移動体6は、操作筒3の軸体3cに外挿されると共に螺子筒4に内挿され、その雄螺子6bが螺子筒4の雌螺子4eと螺合している。これと共に、移動体6は、その突条6cが軸体3cの突条3d、3d(
図1参照)間に係合し、操作筒3に軸線方向移動可能にして回転方向に係合し装着されている。
【0031】
ピストン7は、化粧料Mの色調とは異なる色調(例えば、白色)を有するTPEE(ポリエステル系エラストマー)、TPU(ポリウレタン系エラストマー)、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン7は、外形が概略円柱状に形成されており、その前端面が軸線方向に直交する平面状を成すと共に、その後端面に凹部が設けられている。つまり、ピストン7は、前面が平らとなっており、縦断面視で後方に開口するコの字形状を有している。凹部の内周面には、移動体6に対し軸線方向に所定長移動可能にして係合する環状突部7bが設けられている。
【0032】
このピストン7は、移動体6の前端部に外挿され、その環状突部7bが移動体6に軸線方向に係合することで、移動体6に対し軸線方向移動可能(所定の範囲内を移動可能)にして装着されている。
【0033】
充填部材1は、例えば、揮発性溶剤の耐透過性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)、ポリプロピレン(PP)等の射出成形プラスチックで形成されており、外囲を構成する外側充填筒10と、この外側充填筒10の内側で充填領域1xを画設する内側充填筒11と、充填部材1の先端部を構成し化粧料Mを塗布するためのペン先部材12と、を含んで構成されている。
【0034】
外側充填筒10は、着色材料(例えば、黒色)で形成されており、円筒状の本体部10aと、当該本体部10aの前側に連続するテーパ部10bと、を有している。本体部10aは、その外周面において軸線方向中央に、本体筒2の環状突部2bに軸線方向に係合する環状凹部10cを有している。また、本体部10aは、その外周面の環状凹部10cの前側に、本体筒2の前端面に当接する円環状の鍔部10dが設けられている。この本体部10aの外周面において後端部には、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸状が並設されて当該凹凸状が軸線方向に所定長延びるローレット10eが設けられている。
【0035】
テーパ部10bは、先細りの錐台筒状を呈し、横断面外形が扁平円形状とされている。テーパ部10bの前端部には、断面扁平円形状の開口10gが形成されている。このテーパ部10bでは、軸線方向と直交する一方向A(
図1の上下方向)が長軸方向とされ、軸線方向及び一方向と直交する他方向B(
図2の上下方向)が短軸方向とされている。また、本体部10aの外周面における鍔部10dの前側には、環状に延在するOリング用溝が設けられ、このOリング用溝には、後述のキャップC1内の気密性及び嵌合安定性を高める環状弾性体として機能するOリングRが嵌め込まれて装着されている。
【0036】
内側充填筒11は、透明材料で形成され、その内部の充填領域1xにおける化粧料Mが透けて見えるような光透過性を有している。この内側充填筒11は、円筒状の本体部11aと、当該本体部11aの前側に連続するテーパ部11bと、当該テーパ部11bの前側に段差を介して連続する前端部11dと、を有している。
【0037】
本体部11aは、充填領域1x内の空気及び化粧料Mの一部を充填領域1x外へ通ずる通路部として、孔部11eを有している。孔部11eは、本体部11aの後端部の周壁において互いに対向する位置に一対形成されている。テーパ部11bは、横断面外形が扁平円形状とされた先細りの錐台筒状を呈している。前端部11dは、横断面外形が扁平円形状とされた筒状を呈している。テーパ部11b及び前端部11dでは、上記一方向Aが長軸方向とされ、上記他方向Bが短軸方向とされている。この内側充填筒11は、外側充填筒10に対し内挿されて装着されている。なお、以下の説明では、上記一方向Aを長軸方向Aと称し、上記他方向Bを短軸方向Bと称す。
【0038】
図4〜7は、
図1の化粧料塗布容器におけるペン先部材を示す各図である。
図4〜7に示すように、本実施形態の充填部材1は、上述したように、化粧料Mを塗布するためのものとして、軟質材で形成されたペン先部材12を備えている。軟質材としては、例えば、加硫により加熱し成形する熱硬化性の一般的なゴムや、プラスチックの一種であって熱により可塑化させ金型に流し込んで成形する熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0039】
一般ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム(Si)が主として挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、オレフィン系エラストマー(TPO)、ウレタン系エラストマー(TPU)が主として挙げられる。中でも、ウレタン系エラストマーにおいては、ハードセグメントがポリウレタンでソフトセグメントがポリエステルタイプ又はポリエーテルタイプの2種類の何れを用いることができ、化粧料Mに対しては、ソフトセグメントがポリエーテルタイプのものが特に適している。
【0040】
このペン先部材12は、好ましいとして、JIS K 6253で規定されているタイプAデュロメータによる硬さが60±20とされている。ペン先部材12は、先端側に尖形のペン先(ペン先部)13と、ペン先13の基端側に段差14を介して連続する基端部16と、を含んでいる。
【0041】
ペン先13は、横断面外形が扁平円で且つ側方視において刃状に形成されている。ここでは、ペン先13は、横断面の長軸方向Aにおける一方側(
図4において上側)が、先端側から見て鋭角に尖る尖形状に形成されている。また、ペン先13は、先端側に行くに従い短軸方向Bの長さが短くされた先細り形状とされている。このペン先13では、その先端面により、使用者の肌等の塗布対象に当接される塗布面Sが構成されている。
【0042】
塗布面Sは、ペン先13の横断面の短軸方向Bにおいては真っ直ぐ延びる曲面とされている。塗布面Sの先端には、頂点Pが形成されている。また、塗布面Sは、その先端側に、側方視(短軸方向B視)で基端側に凹むような凹部81を有している。さらにまた、塗布面Sは、凹部81の基端側に、側方視で先端側に膨らむような凸部82を有している。ここでは、凹部81と凸部82とが滑らかに連続しており、これにより、塗布面Sは、側方視でS字状(サインカーブ状、3次曲線状、又は波状ともいう)に延在する曲面状とされている。換言すると、凹部81は、頂点Pを通る所定の基準平面85を設定したとき、当該基準平面85に対し凹むように形成されている一方、凸部82は、この基準平面85に対し隆起するように形成されている。
【0043】
つまり、塗布面Sにあっては、側方視において、ペン先13の先端の尖部を構成する頂点Pから、基端側(後側)に向かいながら軸線G方向に対し傾斜しつつ、基端側に凹むような凹状を先端側に有すると共に、当該凹状の後方に先端側に膨らむような凸状を有する曲面とされている。このとき、塗布面Sの軸線G方向に対する傾斜角度(接線の傾き)は、頂点Pから基端側に行くに従って、徐々に大きくなり、これにより、凹部81が形成され、その後、徐々に小さくなり、これにより凸部82が形成される。この塗布面Sは、長軸方向Aから見て、軸線G方向に沿う方向に細長の扁平円形状とされている(
図5(b)参照)。換言すると、塗布面Sは、前後に細長の面形状を有している。
【0044】
また、ペン先13の両側面において塗布面Sの外縁から所定長基端側に亘る領域には、塗布面S側に先細りとなるよう傾斜するテーパ面17が形成されている。ペン先13の軸線G位置には、軸線G方向に沿って延在する断面略円形の貫通孔18が形成されている。この貫通孔18における塗布面Sの開口部分は、化粧料Mを吐出するための吐出口18aを構成する。
【0045】
吐出口18aは、先端側(軸線G方向)から見て、塗布面Sの中央位置に形成されており、長軸方向Aにおける他方側が膨らむような滴状とされている(
図6(a)参照)。また、吐出口18aは、長軸方向Aから見て、前方側が長円状となるような略卵形状とされている(
図5(b)参照)。
【0046】
基端部16は、筒状を呈し、その横断面外形がペン先13よりも大径の扁平円形状とされている。この基端部16の外周面において前端から中央に亘る領域には、上記外側充填筒10のテーパ部10b(
図2参照)に係合するものとして、先細りとなるよう傾斜するテーパ面19が形成されている。基端部16の筒孔20は、貫通孔18よりも大径に形成されており、貫通孔18に連通するように軸線G方向に沿って延在している。
【0047】
図1〜7に示すように、このペン先部材12は、そのペン先13が外側充填筒10の開口10gに内挿されることで、外側充填筒10に対し回転方向に係合されて装着されている。また、その基端部16の筒孔20が内側充填筒11の前端部11dに外挿されることで、内側充填筒11に対し回転方向に係合されて密着されている。このとき、このペン先部材12は、その段差14が外側充填筒10のテーパ部10bの前端部に軸線方向に係合されていると共に、その基端部16の後端面が内側充填筒11の段差11cに軸線方向に係合され、これにより、外側充填筒10及び内側充填筒11により軸線方向に挟持され保持されている。
【0048】
このような外側充填筒10、内側充填筒11及びペン先部材12を備えた充填部材1においては、内側充填筒11を先端側で栓をして塞いで充填領域1xに化粧料Mを後側から注入した後、当該栓を外し、この内側充填筒11をペン先部材12が装着された外側充填筒10に組み込むことで、化粧料Mが充填される。
【0049】
そして、化粧料Mが充填された充填部材1にあっては、その後部側から本体筒2に内挿され、その外側充填筒10の環状凹部10cが本体筒2の環状突部2bに係合すると共に、その外側充填筒10のローレット10eが本体筒2のローレット2aに係合することで、本体筒2に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒2と一体化される。
【0050】
これと共に、充填部材1は、その内側充填筒11の後端部に、ピストン7が気密に密着するようにして内挿されて装着される。このとき、上述したように、内側充填筒11の後端部に孔部11eが設けられていることから、充填領域1x内の化粧料Mとピストン7との間にエアが存在する場合でも、かかる間からエアを孔部11eを介して適度に逃がすことができ、充填領域1xの内圧が高まるのを抑制することができる。そして、充填部材1は、その先端側からキャップC1が取り付けられる。なお、このキャップC1内には、外側充填筒10の先端側に外挿されて装着される中筒C3が設けられている。
【0051】
次に、上述したペン先部材12のペン先13の形状を立体形成する場合(方法)について説明する。なお、ここでの説明においては、ペン先13にテーパ面17が形成されていない例を実施例として説明する。
【0052】
図8及び
図9は、ペン先の形状の立体形成を説明するための図である。本実施形態では、ペン先13の形状の立体形成に際し、好ましいとしてサーフェス系CAD(Computer Aided Design)を用いており、例えばライノセラス(RobertMcNeel & Associates製ソフトウェア)を用いている。
【0053】
まず、
図8(a)に示すように、ペン先13の軸線G方向基端(図示右側)に対応する位置に、長軸L1及び短軸H1を有し且つ中心に向かって円形を平らに変形させた扁平状の基端形状51を描く。続いて、基端形状51に対し軸線G方向先端側(図示左側)に一定距離だけ離間する位置に、当該基端形状51と平行で長軸L2及び短軸H2を有し且つ中心に向かって円形を平らに変形させた扁平状の先端形状52を描く。
【0054】
このとき、基端形状51の長軸L1の方向と先端形状52の長軸L2の方向とは、互いに等しくされており、ここでは、長軸方向Aとされている。また、基端形状51の短軸H1の方向と先端形状52の短軸H2の方向とは、互いに等しくされており、ここでは、短軸方向Bとされている。基端形状51及び先端形状52の長径(長軸L1,L2の長さ)は、互いに略等しくしている。一方、先端形状52の短径(短軸H2の長さ)は、基端形状51の短径(短軸H1の長さ)に対して短くしている。また、先端形状52は、その長軸方向Aの一方側に、長軸方向Aの他方側よりも鋭角に尖る角部としての尖形部53が形成されている。なお、基端形状51及び先端形状52が離間する一定距離は、ペン先13の軸線G方向長さに対応する距離としている。
【0055】
続いて、
図8(b)に示すように、基端形状51及び先端形状52により、これらを端面として有する先細り形状の扁平円柱(扁平状の柱体)54を構成する。そして、長軸L1,L2を含む平面55上において、先端形状52の外縁と長軸L2との一交点56から、基端側に向かいながら傾斜する曲線57を設定する。
【0056】
具体的には、平面55上において、先端形状52の尖形部53の端が長軸L2と交わる一交点56を通り、基端側に向かいながら傾斜しつつ、基端側に凹むような凹状を先端側に有すると共に当該凹状の後方に先端側に膨らむような凸状を有する曲線57を、扁平円柱54の側面の基端側を通るように描画する。ここでの曲線57は、徐々に接線の傾きが変化するS字状の自由曲線で描画されている。この自由曲線における接線と軸線Gとの傾き(傾斜角度)は、一交点56から基端側に沿って、徐々に大きくなった後、徐々に小さくなっている。
【0057】
続いて、
図9(a)に示すように、曲線57を通り短軸H1,H2方向に延びる切断面58で扁平円柱54を切断する。換言すると、平面55を基準にして側方向(当該平面55の法線方向)一方側及び他方側に曲線57をそれぞれ張り出して成る切断面58により、扁平円柱54を切断する。これにより、扁平円柱54と切断面58との交線(つまり、扁平円柱54が切断面58と交わる面の外形線)が先端面外縁Eとなる。さらに、切断面58の先端面外縁Eよりも平面55の法線方向へ張り出している部分(
図9(a)における切断面58の扁平円柱54と交わっていない部分)を切り取ることによって塗布面Sが形成される。そして、
図9(b)に示すように、基端形状51の中央と先端形状52の中央とを繋ぐように断面円形の貫通孔59を軸線G方向に沿って設け、軸線G方向から見て、切断面58で切断された扁平円柱54の先端面中央にて開口59aを設ける。
【0058】
以上により、横断面外形が扁平円で且つ側方視において刃状に形成されたペン先13が立体形成される。そして、切断面58で切断された扁平円柱54の先端面によって、少なくとも凹部81を先端側に有する上記塗布面S(ここでは、凹部81及び凸部82を有するS字状の上記塗布面S)が立体形成される。さらに、一交点56によって上記頂点Pが立体形成され、開口59aによって上記吐出口18aが立体形成される。
【0059】
以上のように構成され
図1に示す初期状態の化粧料塗布容器100にあっては、使用者によりキャップC1及び栓C2が取り外され、本体筒2と操作筒3とが繰出し方向である一方向に相対回転されると、螺子筒4の雌螺子4e及び移動体6の雄螺子6bから成る螺合部9と操作筒3の突条3d及び移動体6の突条6cから成る回止め部との協働により、移動体6及びピストン7が前進する。
【0060】
そして、
図2に示すように、移動体6及びピストン7が前進することにより、充填部材1の充填領域1xに満たされた化粧料Mがペン先部材12の吐出口18aから吐出される。使用者は、この状態で、ペン先13の塗布面Sを目のきわ等の塗布対象に押し当てて化粧料ラインを描画する。
【0061】
ここで、本実施形態では、上述したように、塗布面Sの先端側が側方視で基端側に凹むような凹部81を有している。これにより、ペン先13は、
図10(a),(b)に示すように、凹部81を有さない塗布面S´が形成された従来のペン先13´に比べ、使用時において塗布面Sと塗布対象である肌50との接触を少なくすることができる。その結果、塗布面Sに対する接触感を抑制して心地よい使用感を得ることが可能となる。また、塗布面Sでは凹部81が肌50への接触を弱めることから、従来の塗布面S´に比べ、吐出口18aから吐出された化粧料Mが側方向に広がらないため、細いラインを好適に描くことができる。
【0062】
加えて、当該凹部81によってペン先13の先端側を細くすることができ、
図11(a),(b)に示すように、ペン先13の先端角度θは、従来のペン先13´の先端角度θ´に比べ鋭角化されることとなる。その結果、細いラインを容易に描くことが可能となる。また、このようにペン先13の先端側を細くできるため、当該先端側をしなやかで(柔らかい)肌当たりよいものにする、つまり、当該先端側に柔軟性を付与することが可能となり、心地よい使用感を一層得ることができる。従って、本実施形態の化粧料塗布容器100によれば、心地よい使用感を得ることができ、且つ細いラインを容易に描くことが可能となる。
【0063】
また、本実施形態の塗布面Sは、上述したように、側方視で先端側に膨らむような凸部82を凹部81の基端側に有している。この場合、
図12(a),(b)に示すように、従来のペン先13´に比べ、よりペン先13の先端側から化粧料Mが吐出されることになる。その結果、
図13(a),(b)に示すように、化粧料塗布容器100では、従来のペン先13´を具備する化粧料塗布容器100´に比べ、肌50に対し立てて使用することが容易になる。すなわち、ペン先13においての肌50に対する使用角度φは、従来のペン先13´においての使用角度φ´に比べ、大きい角度にすることが可能となる。
【0064】
これにより、例えば左右両方のアイラインを描く際において、利き手側と反対側のアイラインを利き手では寝かせて描き難いという実情に好適に対応できる。その結果、左右のアイライン(特に、利き手側と反対側のアイライン)を好適に描くことができる。
【0065】
また、本実施形態の塗布面Sは、上述したように、凹部81と凸部82とが滑らかに連続して側方視でS字状に延在する曲面状となっている。この構成により、心地よい使用感を得ることができる上記作用効果、細いラインを容易に描くことができる上記作用効果、及び、化粧料塗布容器100を立てて使用することが容易になる上記作用効果を、好適に一挙に実現することが可能となっている。
【0066】
また、本実施形態のペン先13の形状は、上述したように、柱体54の平面55上において、一交点56から基端側に向かいながら傾斜しつつ凹状と凸状とを有する曲線57を設定し、この曲線57を通る切断面58で柱体54を切断することによって立体形成される。これにより、凹部81及び凸部82を有する塗布面Sを、好適に立体形成することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、以下の作用効果も奏される。
【0068】
すなわち、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されたとき、ラチェット部材5のバネ部5bの弾性力でラチェット歯8bが軸線方向前側に付勢されることから、ラチェット機構8におけるラチェット歯8a,8bの係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返される。すなわち、ラチェット歯8aの側面がラチェット歯8bの側面に回転方向に係合し、ラチェット歯8aがラチェット歯8bの側面を駆け上がるように摺動する。そして、ラチェット歯8aがラチェット歯8bを乗り越えて当該係合が解除された後、これら側面が再び回転方向に係合する。その結果、ラチェット歯8a,8bの係合及び係合解除の度に、使用者にクリック感が付与される。ここでは、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対的に1/8回転(45°)されたときにクリック感が1度生じるようになっている。
【0069】
他方、本体筒2と操作筒3とが繰戻し方向である他方向に相対回転しようとしても、ラチェット歯8aの側面がラチェット歯8bの側面に当接して回転方向に係止され、螺子筒4とラチェット部材5とが相対回転しないようにこれらの相対回転が規制される。その結果、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されないこととなる。よって、本実施形態では、ラチェット機構8により、他方向における本体筒2及び操作筒3の相対回転を規制し、一方向における本体筒2及び操作筒3の相対回転のみを許容することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、ペン先13の色を化粧料Mの色と異なるものにすることで、化粧料Mの使用状況を視認によって容易に認識可能となる。また、ペン先13が長軸方向Aに撓ると、吐出口18aが短軸方向Bに圧縮・変形され、この圧縮・変形された吐出口18aから化粧料Mが少量ずつ吐出されるため、化粧料Mを肌50に塗布する際、液切れする(かすれる)ことなく細く長い化粧料ラインを描画することが可能となる。
【0071】
また、上述したように、ペン先13を立体形成する際、先端形状52において一交点56に対応する部分は、鋭角に尖る角部としての尖形部53とされており、先端形状52の外縁と長軸L2との他交点56’(
図8参照)に対応する部分よりも尖っている。これにより、塗布面Sの先端側を尖るように立体形成して塗布面Sに頂点Pを形成でき、その結果、細い化粧料ラインを特に容易に描画することが可能となる。また、頂点Pを小さい球状頂点として丸めることにより(頂点Pが小さい半径(R)の球面を有することにより)、被塗布部である肌50への当たりを和らげるように調整することも可能である。
【0072】
また、上述したように、ペン先13を立体形成する際、短軸H2の長さが短軸H1の長さよりも短くされ、扁平円柱54が先細り形状とされている。これにより、ペン先13の形状を先細り形状で立体形成することができ、化粧料ラインを一層容易に描画することが可能となる。
【0073】
また、上述したように、切断面58で扁平円柱54を切断することにより立体形成される塗布面Sは、長軸方向Aから見て、軸線G方向に沿う方向を長手方向とする細長の扁平円形状とされ、その先端には、頂点Pが形成されている。これにより、細い化粧料ラインを一層容易に描画することが可能となる。
【0074】
また、上述したように、本実施形態のペン先13は、その両側面にテーパ面17を有しており、
図5(b)に示すように、短軸方向Bにおいて一定の傾斜角度で先細りされるのではなく、その先端側で特に先細りするように構成されている。その結果、ペン先13の基端側の太さを維持して、ペン先13の剛性を高めることが可能となる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0076】
例えば、上記実施形態の塗布面Sは、凹部81及び凸部82を有しているが、凹部81のみ有していてもよい。また、塗布面Sは、凹部81及び凸部82が連続的に形成されて側方視でS字状とされているが、凹部81及び凸部82が断続的に形成されてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、先端形状52に尖形部53を形成することによってペン先13の塗布面Sの先端に頂点Pを立体形成しているが、これに限定されるものではなく、後加工によって塗布面Sの先端に頂点Pを形成してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ペン先13を立体形成する際の切断面58(
図9参照)が、曲線57を側方向の両側に張り出して成る面とされているが、これに限定されるものではなく、切断面58は、曲線57を通る面であればよい。例として、切断面58は、曲線57を頂部にして先端側に曲面的に膨らむような面としてもよく、この場合、ペン先13の塗布面Sは、曲線57に対応する部分を頂部として曲面的に先端側に膨らむような形状で立体形成される。他の例として、切断面58は、曲線57を船底にして基端側に曲面的に窪むような面としてもよく、この場合、ペン先13の塗布面Sは、曲線57に対応する部分を船底として曲面的に基端側に窪むような形状で立体形成される。
【0079】
また、上記実施形態は、本体筒2(容器前部)と操作筒3(容器後部)との相対回転で移動体6及びピストン7を移動させる容器とされているが、ノック機構で移動体6及びピストン7を移動させる容器であってもよい。また、移動体6及びピストン7を前進させることにより化粧料Mを押し出すのに代えて若しくは加えて、移動体6及びピストン7を後退させることにより化粧料Mを引き戻す(後退させる)場合もある。また、充填部材1内に化粧料Mが含浸された中綿を設け、当該化粧料Mを中継芯による毛管現象でペン先13の吐出口18aから吐出させる容器でもよい。さらには、蛇腹状の調整機構を用い毛管現象でペン先13から化粧料Mを吐出させる容器でもよい。
【0080】
また、ペン先13の立体形成時に設定した曲線57(
図8参照)は、平面55上において扁平円柱54の側面の基端側を通るように描画されているが、これに限定されるものではない。曲線57は、一交点56から基端側に向かいながら傾斜すると共に基端側に凹むような凹状を先端側に有するものであれば、種々の軌跡を有していてもよい。
【0081】
また、化粧料Mとして、例えば、リップ、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を用いた化粧料塗布容器に対しても、本発明は勿論適用可能である。
【0082】
また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。また、上記実施形態では、バネ部5bがラチェット部材5と一体に設けられているが、このバネ部5bは、ラチェット部材5と別体に設けられていてもよい。なお、上記において、ラチェット機構8がクリック機構を兼用しており、ラチェット歯8a,8bが一対のクリック突起(クリック歯)に対応する。また、上記実施形態のラチェット歯8a,8bについては、容器前部と容器後部との相対回転1回転で8回のクリック感が生じるクリック数に設定されているが、より細かく化粧料Mを吐出させるために、相対回転1回転で12回又は18回等のクリック感が生じるクリック数へ増やしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、「扁平状」として、円形を平らに変形(扁平)させた楕円や長円等の扁平円形状を基本とし、先端形状52は楕円を変化させた尖形部を有する滴形状としているが、本発明の扁平形状にあっては、当該扁平円形状をさらに変化させた、細長い楕円リーフ形状や猫目形の細長い形状、略三角形状、略五角形状、略六角形状等の略多角形状を選択することができる。