(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明に係る好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0011】
<植物育成支援システム100の構成>
図1は、本実施形態の植物育成支援システム100の全体構成例を示す図である。
図1に示すように、植物育成支援システム100は、植物育成支援装置1と、情報端末2とが無線によりデータ送受信可能に構成されている。
植物育成支援システム100は、鉢3に植えられた観葉植物Pの育成を支援するためのシステムである。鉢3は、適当量の培養土Sで満たされている。鉢3の底部には、水遣り時の余剰な水分を逃がすための排水孔31が設けられている。
【0012】
<植物育成支援装置1の構成>
植物育成支援装置1は、
図1に示すように、保持台4、排水路5、流量センサ6、受け皿7、質量センサ8、制御部9、記憶部10、無線通信部11、表示部12、音声出力部13、計時部14、操作部15、電源部16等を備えて構成されている。
【0013】
保持台4は、鉢3を保持するための台である。保持台4には、排水スリット41が設けられている。水遣り時に鉢3の排水孔31から溢れて流出した水は、保持台4の排水スリット41を通って排水路5に集められて流量センサ6へと流入し、その後、受け皿7へと排出されるようになっている。排水路5までの経路は、水の通りやすいように傾斜していることが好ましい。
【0014】
流量センサ6は、排水孔31から流出された水量を検出し、検出結果を制御部9に出力する。流量センサ6の検出方式としては、電磁式、羽根車式、浮き子式、超音波式等様々なものが存在するが、何れを用いてもよい。本実施形態において、流量センサ6は、鉢3の底から流出した水を検知するための水検知センサとして機能する。流量センサ6において検出した水量が0より大きい場合、鉢3の排水孔31から流出した水を検知したことを示す検知情報となる。なお、水検知センサとしては、鉢3の排水孔31から流出した水を検知できればよく、特に流量センサ6に限定されない。
【0015】
質量センサ8は、例えば、アナログ式の天秤ばかりや電子天秤等により構成され、鉢3(鉢3に植えられた観葉植物P、培養土S、鉢3内の水分等を含む)の質量を測定し、測定結果を制御部9に出力する。
【0016】
制御部9は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備えて構成される。制御部9のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出し、RAMのワークエリアに展開し、該プログラムに従って各部を制御し、後述する植物育成支援処理等を実行する。制御部9は、植物育成支援処理を実行することにより、判定手段、第2の判定手段、算出手段として機能する。
【0017】
記憶部10は、不揮発性メモリにより構成され、各種データを記憶する。
例えば、記憶部10は、植物の種類を一意に識別するための植物番号と、植物の種類を示す植物名とを対応付けたテーブル(図示せず)を記憶している。このテーブルは、記憶部23に記憶されているものと共通である。
【0018】
また、記憶部10は、水遣り中止タイミング決定直線101a〜101c、水遣り通知時間テーブル102を記憶している。
図2に、水遣り中止タイミング決定直線101a〜101cの一例を示す。水遣り中止タイミング決定直線101a〜101cは、後述する植物育成支援処理において適切な水遣り量への到達タイミングを判定する際に使用される直線である。詳細は後述する。
図3に、水遣り通知時間テーブル102の一例を示す。水遣り通知時間テーブル102は、後述する植物育成支援処理において適切な水遣りタイミングを判定する際に使用されるテーブルである。
図3に示すように、水遣り通知時間テーブル102は、観葉植物を特性(健全な生育のための水分の必要度合い)によりグループ分けしたときのグループ名と、そのグループに属する観葉植物の情報(植物番号:植物名)と、そのグループに属する観葉植物が乾燥状態になってから水遣りを促す通知を行うまでの時間Tとを対応付けて記憶する。
図3に示すグループ1に属する観葉植物は、生育に多くの水を必要とする観葉植物である。グループ2に属する観葉植物は、生育にやや多めの水を必要とする観葉植物である。グループ3に属する観葉植物は、生育にあまり多くの水を必要としない観葉植物である。グループ4に属する観葉植物は、種類や特性が不明な観葉植物である。
【0019】
また、記憶部10は、操作部15又は無線通信部11を介して情報端末2により入力(登録)された鉢3のサイズ(鉢サイズ)と、観葉植物Pの植物番号又はグループ名(グループ1〜グループ4の何れか)と、を記憶している。本実施形態において植物育成支援装置1で使用可能な鉢サイズは、大、中、小の3種類として説明するが、これに限定されるものではない。
【0020】
無線通信部11は、無線通信モジュール等により構成され、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の所定の無線通信回線を介して情報端末2等の外部装置と接続し、データ送受信を行う。
【0021】
表示部12は、水遣りを止めるように促す通知を表示するためのLED(Light Emitting Diode)、水遣りを促す通知を表示するためのLED等を備えて構成され、制御部9からの指示に基づいて点滅、消灯する。
音声出力部13は、制御部9からの指示に基づいて音声を出力する。
【0022】
計時部14は、RTC(Real Time Clock)等により構成され、現在日時を計測して制御部9に出力する。
【0023】
操作部15は、観葉植物Pの植物番号、グループ名(グループ1〜グループ4の何れか)、鉢3のサイズ等を入力するための数字ボタン等を備え、ユーザによる各ボタンの押下入力を受け付けてその操作情報を制御部9に出力する。
【0024】
本実施形態において、グループ名や鉢サイズには予め番号が対応付けられており、ユーザが入力したいグループ名や鉢サイズに対応する番号の数字ボタンを押下することにより、グループ名や鉢サイズを入力することができる。
【0025】
制御部9は、操作部15により鉢3のサイズと、観葉植物Pの植物番号又はグループ名とが入力されると、入力された鉢サイズと、植物番号又はグループ名とを記憶部10に記憶させる。なお、鉢3のサイズ、観葉植物Pの植物番号又はグループ名は情報端末2から行うこととしてもよい。情報端末2から送信された鉢サイズと、植物番号又はグループ名とが無線通信部11により受信されると、制御部9は、受信された鉢サイズと、植物番号又はグループ名とを記憶部10に記憶させる。
【0026】
電源部16は、蓄電池あるいは乾電池等により構成され、植物育成支援装置1の各部に電源供給を行う。
【0027】
<情報端末2の構成>
情報端末2は、植物育成支援装置1から送信された情報に基づいて、水遣りを支援するための情報を出力したり、観葉植物Pの成長状態を判定したりするための装置である。情報端末2は、スマートフォン、PDA(Personal Data Assistants)、PC(Personal Computer)等から構成されている。
【0028】
図4に、情報端末2の構成例を示す。
図4に示すように、情報端末2は、制御部20、操作部21、表示部22、記憶部23、無線通信部24、音声出力部25、電源部26等を備えて構成されている。
【0029】
制御部20は、情報端末2の各部を制御するものである。具体的には、制御部20は、図示は省略するが、CPU、RAM、ROMを備えて構成される。制御部20のCPUは、ROMや記憶部23に記憶されているプログラムを読み出し、RAMのワークエリアに展開し、該プログラムに従って各部を制御し各種処理を実行する。制御部20は、後述する成長状態判定処理を実行することにより、成長状態判定手段として機能する。
【0030】
操作部21は、カーソルキー、各種機能キーを備え、ユーザによる各キーの押下入力を受け付けてその操作情報を制御部20に出力する。また、操作部21は、表示部22の表面を覆うように透明電極を格子状に配置したタッチパネル等を有し、手指やタッチペン等で押下された位置を検出し、その位置情報を操作情報として制御部20に出力する。
【0031】
本実施形態において、操作部21は、観葉植物Pの種類を識別するための植物番号又は観葉植物を大きさで分類したときのグループ名(ここでは、グループL、グループM、グループS、グループXの何れか)を入力(登録)する。グループLに属する観葉植物は、大型の観葉植物である。グループMに属する観葉植物は、中型〜やや大型の観葉植物である。グループSに属する観葉植物は、やや小型の観葉植物である。グループXに属する観葉植物は、種類や大きさが不明な(どのくらい育つかわからない)観葉植物である。
制御部20は、操作部21により観葉植物Pの植物番号又はグループ名が入力されると、入力された植物番号又はグループ名を記憶部23に記憶させる。
【0032】
表示部22は、LCD等により構成され、制御部20からの表示制御信号に従って、各種表示を行う。
【0033】
記憶部23は、不揮発性の半導体メモリ等により構成される。記憶部23には、制御部20で実行される各種プログラム、これらのプログラムの実行に必要なデータ等が記憶されている。プログラムは、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードの形態で格納されている。CPU21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0034】
例えば、記憶部23は、植物の種類を一意に識別するための植物番号と、植物名とを対応付けたテーブル(図示せず)を記憶している。このテーブルは、記憶部10に記憶されているものと共通である。
【0035】
また、記憶部23は、後述する成長状態判定処理で使用される成長判定係数テーブル201を記憶している。
図5に、成長判定係数テーブル201のデータ格納例を示す。
図5に示すように、成長判定係数テーブル201は、観葉植物を大きさによりグループ分けしたときのグループ名(グループL、グループM、グループS、グループX)と、そのグループに属する観葉植物の情報(植物番号:植物名)と、そのグループに属する観葉植物に対して予め定められた成長判定係数gとを対応付けて記憶している。
【0036】
また、記憶部23は、操作部21により入力(登録)された植物番号又はグループ名を記憶している。
更に、記憶部23は、植物育成支援装置1から送信された質量Xmax(詳細後述)をその質量Xmaxが取得された日時に対応付けて記憶するためのログ記憶領域を有する。
【0037】
無線通信部24は、無線通信モジュール等により構成され、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の所定の無線通信回線を介して植物育成支援装置1等の外部装置と接続し、データ送受信を行う。
【0038】
音声出力部25は、制御部20からの指示に基づいて音声を出力する。
電源部26は、蓄電池あるいは乾電池等により構成され、情報端末2の各部に電源供給を行う。
【0039】
<植物育成支援システムの動作>
次に、本実施形態における動作について説明する。
(植物育成支援処理)
まず、植物育成支援装置1において実行される植物育成支援処理について説明する。
図6に、植物育成支援処理のフローチャートを示す。植物育成支援処理は、植物育成支援装置1の電源がON状態である間、制御部9のCPUとROMに記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0040】
ここで、一般的に、観葉植物Pへの水遣りは排水孔31から水が溢れて流出するまで行うのがよいとされている。しかし、観葉植物Pに水遣りを行った際の鉢3内の培養土S中への水の浸透は、土の種類や粒径、乾燥状態などにより不均一な浸透挙動を示すことが多いため、望ましくは排水孔31から水が流出をはじめてからも数秒間水を遣り続けて水が培養土S中に十分に行き渡った状態(最大保水状態という)にしてやるのが良い。しかし、最大保水状態を超えてから更に水遣りを行ってしまうと、排水孔31からの余剰水の排出が追いつかず、鉢3の下部に水が溜まり、根腐れが起こし易くなる等の問題が発生してしまうことがある。そのため、適切なタイミングで水遣りを止める必要があるが、水遣りを止めるタイミングを見極めるのは難しい。
そこで、植物育成支援処理のステップS1〜S9の処理では、水遣り開始後、適切な水遣り量に到達したタイミングを判定して水遣りを止めるように促す通知を出力することで、適切な量の水遣りが行えるように支援を行う。
【0041】
まず、制御部9は、質量センサ8の測定値が上昇を開始したか否かを判断する(ステップS1)。ここで、水遣りが開始されると、鉢3内の土が水を含むこととなるので質量センサ8の測定値が上昇する。
質量センサ8の測定値が上昇を開始したと判断した場合(ステップS1;YES)、制御部9は、計時部14から現在の時刻t1を取得する(ステップS2)。時刻t1は、質量センサ8の測定値が上昇を開始した時刻、即ち、水遣りが開始された時刻である。
【0042】
次いで、制御部9は、流量センサ6において水の検知が開始されたか否かを判断する(ステップS3)。ここで、鉢3の底から流出した水が流量センサ6に到達すると、流量センサ6において水の検知が開始される。
流量センサ6において水の検知が開始されたと判断した場合(ステップS3;YES)、制御部9は、計時部14から現在の時刻t2を取得する(ステップS4)。時刻t2は、流量センサ6に鉢3の底から流出した水が流量センサ6に到達した時刻である。
【0043】
次いで、制御部9は、時刻t2と時刻t1の差分を算出することにより、水遣り開始から流量センサ6に水が達するまでの時間t0を算出する(ステップS5)。そして、制御部9は、t0と鉢3のサイズから、流量センサ6に水が到達してから水遣りを続けるべき時間tを算出する(ステップS6)。
【0044】
ここで、鉢3のサイズが大きいほど水遣り開始から流量センサ6に水が到達するまでの時間t0が長くなる。鉢3のサイズが同じであれば、培養土Sの保水力によって水遣り開始から流量センサ6に水が到達するまでの時間t0が変化する。
保水力のある土の場合、水遣りした水は土中に蓄えられながら下に下りてくるので、水遣りを開始してから流量センサ6に水が到達するまでの時間t0は長くなる。この場合、流量センサ6に水が達した時点でほぼ培養土S全体に水が行き渡っているため、水遣りを続ける時間tは短くする必要がある。
保水力のない土の場合、水遣りした水は土中全体に行き渡らずにすぐに下から出て行ってしまうため、水遣りを開始してから流量センサ6に水が到達するまでの時間t0は短い。一方で、土中全体に水を行き渡らせるためには流量センサ6に水が達してからもしばらくは水遣りを続けたほうがよく、保水力がない土ほど時間tは長くする必要がある。
即ち、t0が大きくなるほどtは短くなるという関係にある。
【0045】
記憶部10に記憶されている水遣り中止タイミング決定直線101a〜101c(
図2参照)は、植物育成支援装置1で使用可能な鉢サイズ毎の時間t0と時間tの関係を示す直線である。水遣り中止タイミング決定直線101aは、鉢サイズが大のときの時間t0と時間tの関係を示す直線である。水遣り中止タイミング決定直線101bは、鉢サイズが中のときの時間t0と時間tの関係を示す直線である。水遣り中止タイミング決定直線101cは、鉢サイズが小のときの時間t0と時間tの関係を示す直線である。
これらの直線は、実験的経験的に求められたものであり、ステップS6においては、登録された鉢サイズに応じた水遣り中止タイミング決定直線101a〜101cを用いてt0の値に対応するtを算出する。
【0046】
次いで、制御部9は、流量センサ6による水の検知開始から時間tが経過するまで待機し、流量センサ6による水の検知開始から時間tが経過すると(ステップS7;YES)、適切な水遣り量に到達したと判定し(ステップS8)、水遣りを止めるように促す通知を出力する(ステップS9)。
【0047】
ステップS9において、制御部9は、例えば、無線通信部11により情報端末2との間で無線により接続を確立し、無線通信部11により情報端末2に水遣りを止めるように促す通知情報を送信することで、情報端末2に当該通知を出力させる。情報端末2においては、無線通信部24により通知情報を受信すると、制御部20は、表示部22に水遣りを止めるように促す通知を表示させる。
或いは、制御部9は、表示部12に水遣りを止めるように促す通知情報を表示させることとしてもよい。例えば、表示部12の水遣りを止めるように促す通知を表示するためのLEDを点滅させることとしてもよい。また、音声出力部13に水遣りを止めるように促す通知を音声出力させることとしてもよい。
この通知により、ユーザは、水遣りを止めるべき適切なタイミングを知ることができるので、勘や経験に頼ることなく毎回安定的な量の水遣りを行うことが可能となる。
【0048】
ステップS10〜S13においては、最大保水状態の鉢3の質量Xmaxを測定して情報端末2に送信する処理を行う。
まず、制御部9は、流量センサ6において水の流入が止まったことが検知されるまで(即ち、流量センサ6により鉢3の排水孔31から流出した水量が0となるまで)待機する(ステップS10)。流量センサ6において水の流入が止まったことが検知されると(ステップS10;YES)、制御部9は、鉢3の培養土Sが最大保水状態となったと判定する(ステップS11)。
【0049】
図7は、鉢3の底から流出した水量(総量)の経時的変化を示すグラフである。横軸は水遣りからの経過時間、縦軸は鉢3から流出した水量(総量)を示す。
図7において、t3は水遣りを止めた時間、t4は流量センサ6への水の流入が止まった時間を示す。
図7に示すように、水遣りを開始すると、鉢3から流出した水量(総量)は増加を始め、水遣りを止めた後、鉢3内にある余剰な水分が全て外部に排出されるまで増加を続ける。鉢3から余剰な水分の流出が終了すると(t4)、流量センサ6への水の流入は止まり、水量(総量)は一定となる。このときの鉢3内の状態は、鉢3内の培養土S中に水が十分に行き渡った状態、即ち最大保水状態である。
【0050】
次いで、制御部9は、質量センサ8による鉢3の最大保水状態の質量Xmaxの測定値を取得し、計時部14から出力される現在日時と対応付けて記憶部10に記憶させるとともに(ステップS12)、無線通信部11により質量Xmaxの測定値及び現在日時の情報を情報端末2に送信する(ステップS13)。情報端末2においては、無線通信部24により質量Xmaxの測定値及び現在日時の情報が受信されると、制御部20は、受信された情報を記憶部23のログ記憶領域に記憶する。
【0051】
ステップS13までの処理が終了すると、制御部9は、ステップS14以降の処理において定期的(例えば、1時間毎)に鉢3の質量変化を測定し、測定結果に基づいて水遣りタイミングを特定して通知を出力する処理を行う。
【0052】
図8に、水遣り後の鉢3の質量変化の一例を示す。
図8において、横軸は水遣りからの経過日数、縦軸は鉢3の質量[g]である。水遣り後、鉢3の質量は
図8に示すように減少曲線を示す。ここで、水遣り時に鉢3の排水孔31から溢れた水は受け皿7に移動しており、鉢3の質量には影響しないので、質量センサ8により測定された鉢3の質量変化は培養土Sの含水量の増減そのものを示している。
一般的に、水遣り直後は培養土の含水量の減少幅が大きいが、時間の経過とともにその減少幅wは小さくなっていく傾向がある。そこで、本実施形態においては、
図8に示すように、一定時間当たりの(例えば、2日間当たりの)鉢3の質量の減少幅w(含水量の減少幅に相当)が予め定められた閾値Swより小さくなった場合に、培養土Sが「乾燥状態に遷移した」と判定する。
【0053】
鉢3の質量を測定してから一定時間が経過すると(ステップS14;YES)、制御部9は、質量センサ8による鉢3の質量の測定値を取得し、計時部14から出力される現在日時と対応付けて記憶部10に記憶させる(ステップS15)。次いで、制御部9は、一定時間当たりの鉢3の質量の減少幅wを算出し、減少幅wが予め定められた閾値Swより小さいか否かを判断する(ステップS16)。減少幅wが予め定められた閾値Swより小さくないと判断すると(ステップS16;NO)、制御部9は、ステップS14に戻り、ステップS14〜S16の処理を繰り返し実行する。ステップS16において、減少幅wが予め定められた閾値Swより小さいと判断すると(ステップS16;YES)、制御部9は、培養土Sが乾燥状態に遷移したと判定する(ステップS17)。そして、予め定められた時間Tが経過するまで待機し、時間Tが経過したと判断すると(ステップS18;YES)、水遣りを促す通知を出力する(ステップS19)。
【0054】
ここで、時間Tは、観葉植物Pが生育に多くの水を必要とする植物であるか否かによって、即ち、植物の種類に応じて変化することが好ましい。本実施形態においては、制御部9は、記憶部10に登録されている観葉植物Pの植物番号又はグループ名に対応する時間Tを水遣り通知時間テーブル101(
図3参照)から読み出し、読み出したTを用いてステップS18の判定を行うことで、観葉植物Pの種類に応じて時間Tを変化させることができる。
例えば、グループ2で登録されている植物の場合、培養土Sが乾燥状態になってから72時間後(3日後)に水遣りを促す通知を出力する。
このように、観葉植物Pの種類に応じてTを変化させることで、観葉植物Pの種類に応じた適切なタイミングで水遣りを促す通知を出力することができる。
【0055】
ステップS19においては、例えば、無線通信部11により情報端末2との間で無線により接続を確立し、無線通信部11により情報端末2に水遣りを促す通知情報を送信する。情報端末2においては、無線通信部24により通知情報を受信すると、制御部20は、表示部22に水遣りを促す通知を表示させる。
或いは、制御部9は、例えば、表示部12の水遣りを促す通知を表示するためのLEDを点滅させることとしてもよい。また、音声出力部13により水遣りを促す通知を音声出力させることとしてもよい。
この通知により、ユーザは、水遣りをすべきタイミングを知ることができるので、勘や経験に頼ることなく毎回安定的な水遣りを行うことが可能となる。
【0056】
(成長状態判定処理)
次に、情報端末2において実行される成長状態判定処理について説明する。
図9に、成長状態判定処理のフローチャートを示す。成長状態判定処理は、操作部21により成長状態判定処理の実行が指示された際に、制御部20のCPUとROMに記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0057】
まず、制御部20は、記憶部23のログ記憶領域に記憶されている各時点の鉢3の質量Xmaxを読み出す(ステップS31)。
【0058】
次いで、制御部20は、読み出した各時点の鉢3の質量Xmaxと最初に測定された質量Xmaxとの差分を算出することにより、各時点における観葉植物Pの成長量[g]を算出する(ステップS32)。ここで、水遣り後の最大保水状態の鉢3の質量Xmaxは、水遣りの際の余剰な水を含まない(余剰な水は受け皿7に移行している)ため、最大保水状態の鉢3の質量Xmaxを長期的に観察していくと、質量Xmaxの値は植物の成長分だけ徐々に増加していく。
【0059】
次いで、制御部20は、成長判定係数テーブル201(
図5参照)を参照し、記憶部23に記憶されている、登録された植物番号又はグループ名(グループL、グループM、グループS、グループXの何れか)に対応する成長判定係数gを取得する(ステップS33)。
【0060】
次いで、制御部20は、各時点の観葉植物Pの成長量と成長判定係数gの積を算出することにより、観葉植物Pの各時点における成長指数を算出する(ステップS34)。
【0061】
そして、制御部20は、観葉植物Pの成長指数の変化をグラフ化して表示部22に表示させ(ステップS35)、成長状態判定処理を終了する。
【0062】
図10は、グループL、M、Sの植物の成長量[g]の経時的な変化を示すグラフ及び
表である。グラフの横軸は、測定開始時点からの経過時間[月]を示す。縦軸は、植物の成長量[g]を示す。
一般的に、一定期間の植物の成長量[g]は、大型の植物ほど大きいので、
図10のグラフを見ると、グループLほど成長が大きいように見える。しかしながら、例えば、大型の植物と小型の植物の成長量(質量Xmaxの増加)が同じである場合、小型の植物の
方が成長の度合いは大きいといえる。これを考慮したのが成長指数である。
【0063】
図11は、
図10の値に基づいて算出した、グループL、M、Sの植物の成長指数の経時的な変化を示すグラフ及び表である。グラフの横軸は、測定開始時点からの経過時間[月]を示す。縦軸は、成長指数を示す。
図11に示すように、成長指数でみると、多少の違いはあるものの、9ヶ月目ごろまではグループL、M、S間で植物の成長指数は変わっていない。即ち、いずれのグループも同じような度合いで成長をしていることがわかる。
【0064】
このように、成長状態判定処理では、鉢3の質量Xmaxに基づいて、観葉植物Pの成長状態を示すグラフを出力するので、ユーザは、観葉植物Pの成長の様子を知ることができる。
【0065】
<変形例>
以下、本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態においては、質量センサ8の値が上昇を開始した時刻t1と流量センサ6が検知を開始した時刻t2との差分t0と鉢3の鉢サイズとに基づいて、流量センサ6における水量の検出開始から適切な水遣り量に到達したと判定するまでの時間tを算出することとして説明した。変形例においては、予め登録した鉢3の鉢サイズと培養土Sの種類に基づいてtを決定する態様について説明する。
【0066】
変形例においては、記憶部10に、鉢サイズ毎に、土の種類とtの値とを対応付けたテーブル(t算出テーブルと呼ぶ。図示せず)が記憶されている。
このt算出テーブルにおいて、土の種類に対応付けられたtの値は、予め、各鉢サイズの鉢3に、各種の土(ここでは、川砂、黒土、赤土、赤玉、田土)を満たして水遣りを行い、質量センサ8の測定値が上昇を開始してから流量センサ6が鉢3の排水孔31から流出した水の検知を開始するまでの時刻t0を測定し、このt0を各鉢サイズに応じた水遣り中止タイミング決定直線101a〜101c上にプロットする(
図12参照)ことにより求めた値である。
【0067】
培養土Sの種類は、操作部15又は情報端末2により入力(登録)することができる。
入力(登録)された培養土Sの種類は、鉢サイズ、植物番号等とともに記憶部10に記憶される。
【0068】
植物育成支援処理においては、制御部9は、ステップS1〜S6に代えて、以下の処理により時間tを決定する。
流量センサ6により鉢3の排出孔31から流出した水の検出が開始されると、制御部9は、記憶部10に記憶されている鉢3の鉢サイズと培養土Sの種類を読み出し、記憶部10に記憶されているt算出テーブルから鉢3の鉢サイズと培養土Sの種類に対応するtを求める。
このように、鉢3の鉢サイズと培養土Sの種類に応じてtは変化するので、鉢3の鉢サイズと培養土Sの種類に応じた適切なタイミングで水遣りの中止を促すことができる。
【0069】
なお、土の種類と保水性は
図13に示す対応関係にある。また、鉢サイズと鉢の容積は、
図14に示す対応関係にある。よって、これらの関係を示すテーブルを記憶部10に記憶しておくこととすれば、培養土Sの保水性や鉢の容積がわかっている場合に、操作部15や情報端末2よりこれらを設定することによってtの値を算出することができる。即ち、培養土Sの保水性や鉢の容積に応じた適切なタイミングで水遣りの中止を促すことができる。
【0070】
以上説明したように、植物育成支援システム100によれば、植物育成支援装置1は、観葉植物Pが植えられた鉢の底からの水の流出を流量センサ6により検知し、制御部9により、その検知結果に基づいて観葉植物Pへの水遣りの状態を判定するので、従来の電極を用いた土壌水分センサとは異なり、肥料や土壌pH、鉢の深さなどに影響されずに水遣りの状態を取得することができる。
【0071】
また、判定した水遣りの状態に基づいて、水遣りを支援するための情報を出力するので、ユーザは勘や経験に頼ることなく、安定した水遣りを行うことが可能となる。
【0072】
具体的に、植物育成支援装置1の制御部9において、流量センサ6により鉢3の底からの水の流出が検知されてから時間tが経過した場合に、適切な水遣り量に到達したと判定し、情報端末2において、水遣りを止めるように促す通知情報を出力するので、ユーザは勘や経験に頼ることなく、安定した量の水遣りを行うことが可能となる。
【0073】
また、質量センサ8による測定値が水遣りにより上昇を開始してから流量センサ6により水の流出が検知されるまでに要した時間に基づいて時間tを算出するようにすることで、観葉植物Pが植えられた培養土Sの保水性や鉢3のサイズを考慮して、適切な水遣り量に到達したことを判定することができる。
【0074】
また、時間tを鉢3のサイズに応じて変化するようにすることで、操作部15により鉢3のサイズが設定された場合に、設定された鉢3のサイズを考慮して、適切な水遣り量に到達したことを判定することが可能となる。また、時間tを鉢3に盛り込まれた培養土Sの種類に応じて変化するようにすることで、操作部15により培養土Sの種類が設定された場合に、培養土Sの種類に応じて適切な水遣り量に到達したことを判定することができる。
【0075】
また、制御部9は、質量センサ8による測定値に基づいて、鉢3に盛り込まれた培養土Sの状態を判定する。具体的には、質量センサ8による測定値の一定時間当たりの減少幅が予め定められた閾値以下になった場合に、培養土Sが乾燥状態であると判定するので、培養土Sの状態(乾燥状態)を取得することができる。
また、制御部9において、培養土Sが乾燥状態であると判定されてから時間Tが経過した場合に、観葉植物Pが水遣りが必要な状態であると判定し、情報端末2等から水遣りを促す通知情報を出力するようにすることで、ユーザは勘や経験に頼ることなく、安定した適切なタイミングで水遣りを行うことが可能となる。
【0076】
時間Tは、植物の種類によって変化するようにすることで、ユーザは、観葉植物Pの種類に応じた適切なタイミングで水遣りを行うことが可能となる。
【0077】
また、制御部9により、流量センサ6により水の流出が止まったことが検知された場合に、最大保水状態と判定し、最大保水状態において質量センサ8により測定された鉢3の質量の履歴を情報端末2に送信し、情報端末2の制御部20により、鉢3の質量の履歴に基づいて観葉植物Pの成長状態を判定し、判定結果を表示部22から出力するようにすることで、ユーザは、観葉植物Pの成長の様子を知ることが可能となる。
【0078】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明に係る植物育成支援システムの好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0079】
例えば、上記実施形態においては、植物育成支援装置1に表示部12や音声出力部13を備えることとして説明したが、情報端末2において通知情報等を出力する構成とした場合は、これらは必ずしも備える必要はない。
また、成長状態判定処理は、植物育成支援装置1側で行うこととしてもよい。
【0080】
さらに、上記の各処理を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体として、ROMやハードディスク等の他、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを所定の通信回線を介して提供する媒体としては、キャリアウェーブ(搬送波)も適用される。
【0081】
その他、通信システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0082】
(付記)
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
<請求項1>
植物が植えられた鉢の底からの水の流出を検知する水検知センサと、
前記水検知センサによる検知結果に基づいて前記植物への水遣りの状態を判定する判定手段と、
を備える植物育成支援システム。
<請求項2>
前記判定手段による判定結果に基づいて、水遣りを支援するための情報を出力する出力手段を備える請求項1に記載の植物育成支援システム。
<請求項3>
前記判定手段は、前記水検知センサにより前記鉢の底からの水の流出が検知されてから所定時間が経過した場合に、適切な水遣り量に到達したと判定し、
前記出力手段は、前記判定手段により適切な水遣り量に到達したと判定された場合に、水遣りを止めるように促す通知情報を出力する請求項2に記載の植物育成支援システム。
<請求項4>
前記所定時間は、前記鉢のサイズに応じて変化する請求項3に記載の植物育成支援システム。
<請求項5>
前記所定時間は、前記鉢に盛り込まれた土の種類に応じて変化する請求項3又は4に記載の植物育成支援システム。
<請求項6>
前記鉢の質量を経時的に測定する質量センサを備え、
前記質量センサによる測定値が水遣りにより上昇を開始してから前記水検知センサにより水の流出が検知されるまでに要した時間に基づいて前記所定時間を算出する算出手段を備える請求項3に記載の植物育成支援システム。
<請求項7>
前記鉢の質量を経時的に測定する質量センサを備え、
前記質量センサによる測定値に基づいて、前記鉢に盛り込まれた土の状態を判定する第2の判定手段を備える請求項1〜6の何れか一項に記載の植物育成支援システム。
<請求項8>
前記土の状態は、乾燥状態である請求項7に記載の植物育成支援システム。
<請求項9>
前記第2の判定手段は、前記質量センサによる測定値の一定時間当たりの減少幅が予め定められた閾値以下になった場合に、前記土が乾燥状態であると判定する請求項8に記載の植物育成支援システム。
<請求項10>
前記判定手段は、前記第2の判定手段によって前記土が乾燥状態であると判定されてから第2の所定時間が経過した場合に、前記植物が水遣りが必要な状態であると判定し、
前記出力手段は、前記判定手段により前記植物が水遣りが必要な状態であると判定された場合に、水遣りを促す通知情報を出力する請求項8又は9に記載の植物育成支援システム。
<請求項11>
前記第2の所定時間は前記植物の種類によって変化する請求項10に記載の植物育成支援システム。
<請求項12>
前記判定手段は、更に、前記水検知センサによる検知結果に基づいて、前記鉢の最大保水状態を判定し、
前記判定手段により最大保水状態と判定された時に前記質量センサにより測定された前記鉢の質量の履歴を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された履歴に基づいて前記植物の成長状態を判定し、判定結果を前記出力手段により出力させる成長状態判定手段と、
を備える請求項6〜11の何れか一項に記載の植物育成支援システム。
<請求項13>
植物が植えられた鉢の底からの水の流出を検知する水検知センサを備える植物育成支援装置に用いられるコンピュータを、
前記水検知センサによる検知結果に基づいて前記植物への水遣りの状態を判定する判定手段、
として機能させるためのプログラム。
<請求項14>
植物が植えられた鉢の底からの水の流出を検知する検知工程と、
前記検知工程における検知結果に基づいて前記植物への水遣りの状態を判定する判定工程と、
を含む植物育成支援方法。