(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹部は、タイヤ幅方向に並ぶ少なくとも2つの前記陸部に設けられており、当該凹部が車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されていることを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
前記凹部が設けられた前記側壁をなす前記溝の溝底から当該凹部のタイヤ径方向中央位置までの距離D1と当該溝の溝深さDとが0.10≦D1/D≦0.60の範囲を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献に記載の空気入りタイヤのように、溝壁(ブロックの側壁)に凹部を形成することで排水性の性能が改善され、凹部の断面積(体積)を適宜変えることで偏摩耗が改善されることが知られている。その一方で、空気入りタイヤは、乗り心地を改善することが望まれている。また、特許文献に記載の空気入りタイヤのように、溝壁(ブロックの側壁)に凹部を形成すると、ブロック剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。
【0005】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操縦安定性の悪化を抑えつつ、排水性および乗り心地性の性能を改善することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の発明の空気入りタイヤは、車両装着時での車両内外の向きが指定され、トレッド面に複数の溝が形成されることで複数の陸部を備える空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向に並ぶ各前記陸部のタイヤ幅方向に向く複数の側壁のうちの少なくとも1つに対し、前記溝の延在方向に沿って連続して形成された凹部が設けられ、当該凹部が単数の場合にタイヤ赤道面より車両内側または車両外側のいずれか一方に寄って配置される前記側壁に設けられ、当該凹部がタイヤ幅方向で複数の場合に車両最内側または車両最外側のいずれか一方に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側他方に近い位置ほど体積が小さく形成されていることを特徴とする。
【0007】
この空気入りタイヤによれば、凹部を設けたことにより排水性を改善することができる。また、凹部をタイヤ赤道面より車両内側に寄って配置される側壁に設けたことにより、凹部を設けた車両外側の陸部の剛性よりも、車両内側の陸部の剛性が低くなる。車両内側の陸部は、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部により負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することができる。その反面、陸部の側壁に凹部を設けると、陸部のブロック剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤによれば、凹部をタイヤ赤道面より車両内側に寄って配置される側壁に設けたことにより、凹部を設けた車両内側の陸部の剛性よりも、車両外側の陸部の剛性が高くなる。車両外側の陸部は、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部により負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0008】
さらに、この空気入りタイヤによれば、複数の凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両外側の陸部の剛性よりも、車両内側の陸部の剛性が低くなる。車両内側の陸部は、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部により負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することができる。その反面、陸部の側壁に凹部を設けると、陸部のブロック剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤによれば、複数の凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両内側の陸部の剛性よりも、車両外側の陸部の剛性が高くなる。車両外側の陸部は、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部により負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0009】
また、第2の発明の空気入りタイヤは、第1の発明において、前記陸部がタイヤ周方向に沿って延在する主溝とタイヤ周方向に交差するラグ溝とによりブロック状に形成されており、前記凹部は、タイヤ幅方向に並ぶ各前記陸部のタイヤ幅方向に向く複数の側壁のうちの少なくとも2つに対し、前記陸部のタイヤ周方向の両端部に開口して前記主溝の延在方向に連続して設けられ、当該凹部が車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されていることを特徴とする。
【0010】
この空気入りタイヤによれば、少なくとも2つの凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両外側の陸部の剛性よりも、車両内側の陸部の剛性が低くなる。車両内側の陸部は、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部により負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することができる。その反面、陸部の側壁に凹部を設けると、陸部の剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤによれば、少なくとも2つの凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両内側の陸部の剛性よりも、車両外側の陸部の剛性が高くなる。車両外側の陸部は、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部により負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0011】
また、第3の発明の空気入りタイヤは、車両装着時での車両内外の向きが指定され、トレッド面に複数の溝が形成されることで複数の陸部を備える空気入りタイヤにおいて、前記陸部がタイヤ周方向に沿って延在する主溝とタイヤ周方向に交差するラグ溝とによりブロック状に形成されており、タイヤ幅方向に並ぶ各前記陸部のうちの少なくとも1つであって当該陸部のタイヤ周方向に向く各側壁に対し、前記陸部のタイヤ幅方向の両端部に開口して前記ラグ溝の延在方向に沿って連続して凹部が設けられ、当該凹部が単数の前記陸部に設けられている場合にタイヤ赤道面より車両内側に寄って配置される前記側壁に設けられ、当該凹部が複数の前記陸部に設けられている場合に車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されていることを特徴とする。
【0012】
この空気入りタイヤによれば、凹部を設けたことにより排水性を改善することができる。また、凹部をタイヤ赤道面より車両内側に寄って配置される陸部の側壁に設けたことにより、凹部を設けた車両外側の陸部の剛性よりも、車両内側の陸部の剛性が低くなる。車両内側の陸部は、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部により負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することができる。その反面、陸部の側壁に凹部を設けると、陸部の剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤによれば、凹部をタイヤ赤道面より車両内側に寄って配置される陸部の側壁に設けたことにより、凹部を設けた車両内側の陸部の剛性よりも、車両外側の陸部の剛性が高くなる。車両外側の陸部は、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部により負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0013】
さらに、この空気入りタイヤによれば、タイヤ幅方向に並ぶ複数の陸部の側壁に設けた凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両外側の陸部の剛性よりも、車両内側の陸部の剛性が低くなる。車両内側の陸部は、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部により負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することができる。その反面、陸部の側壁に凹部を設けると、陸部の剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤによれば、タイヤ幅方向に並ぶ複数の陸部の側壁に設けた凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両内側の陸部の剛性よりも、車両外側の陸部の剛性が高くなる。車両外側の陸部は、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部により負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0014】
また、第4の発明の空気入りタイヤは、第3の発明において、前記凹部は、タイヤ幅方向に並ぶ少なくとも2つの前記陸部に設けられており、当該凹部が車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されていることを特徴とする。
【0015】
この空気入りタイヤによれば、タイヤ幅方向に並ぶ複数の陸部の側壁に設けた凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両外側の陸部の剛性よりも、車両内側の陸部の剛性が低くなる。車両内側の陸部は、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部により負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することができる。その反面、陸部の側壁に凹部を設けると、陸部の剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤによれば、凹部を設けたことにより排水性を改善することができる。また、タイヤ幅方向に並ぶ複数の陸部の側壁に設けた凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両内側の陸部の剛性よりも、車両外側の陸部の剛性が高くなる。車両外側の陸部は、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部により負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0016】
また、第5の発明の空気入りタイヤは、車両装着時での車両内外の向きが指定され、トレッド面に複数の溝が形成されることで複数の陸部を備える空気入りタイヤにおいて、前記陸部がタイヤ周方向に沿って延在する主溝とタイヤ周方向に交差するラグ溝とによりブロック状に形成されており、タイヤ幅方向に並ぶ各前記陸部のタイヤ幅方向に向く複数の側壁のうちの少なくとも2つに対し、前記陸部のタイヤ周方向の両端部に開口して前記主溝の延在方向に連続して凹部が設けられ、当該凹部が車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成され、かつタイヤ幅方向に並ぶ各前記陸部のうちの少なくとも2つであって当該陸部のタイヤ周方向に向く各側壁に対し、前記陸部のタイヤ幅方向の両端部に開口して前記ラグ溝の延在方向に沿って連続して凹部が設けられ、当該凹部が車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されていることを特徴とする。
【0017】
この空気入りタイヤによれば、少なくとも2つの凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両外側の陸部の剛性よりも、車両内側の陸部の剛性が低くなる。車両内側の陸部は、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部により負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することができる。その反面、陸部の側壁に凹部を設けると、陸部の剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤによれば、凹部を設けたことにより排水性を改善することができる。また、少なくとも2つの凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両内側の陸部の剛性よりも、車両外側の陸部の剛性が高くなる。車両外側の陸部は、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部により負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0018】
しかも、この空気入りタイヤによれば、タイヤ幅方向に並ぶ複数の陸部の側壁に設けた凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両外側の陸部の剛性よりも、車両内側の陸部の剛性が低くなる。車両内側の陸部は、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部により負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することができる。その反面、陸部の側壁に凹部を設けると、陸部の剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤによれば、タイヤ幅方向に並ぶ複数の陸部の側壁に設けた凹部を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部を設けた車両内側の陸部の剛性よりも、車両外側の陸部の剛性が高くなる。車両外側の陸部は、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部により負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0019】
また、第6の発明の空気入りタイヤは、第1〜第5のいずれか一つの発明において、前記凹部が設けられた前記側壁をなす前記溝の溝底から当該凹部のタイヤ径方向中央位置までの距離D1と当該溝の溝深さDとが0.10≦D1/D≦0.60の範囲を満たすことを特徴とする。
【0020】
D1/Dが0.10未満や0.60を超える場合、陸部の付け根近傍や先端近傍に凹部が設けられるため陸部の剛性差を生じさせる効果が低い。一方、D1/Dが0.10以上で0.60以下の範囲である場合、陸部の中央寄りに凹部が設けられるため陸部の剛性差を生じさせる効果が顕著に得られる。
【0021】
また、第7の発明の空気入りタイヤは、第2、第5、第6のいずれか一つの発明において、前記陸部のタイヤ幅方向に向く側壁に設けられた凹部について、最も車両内側に配置される前記凹部の溝深さ方向の開口幅B1と当該凹部が設けられる前記側壁をなす前記主溝の溝深さDとが0.10≦B1/D≦0.35の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される前記凹部の溝深さ方向の開口幅B2と当該凹部が設けられる前記側壁をなす前記主溝の溝深さDとが0.05≦B2/D≦0.20の範囲を満たし、かつ最も車両内側に配置される前記凹部の最大深さA1と当該凹部が設けられる前記側壁をなす前記主溝の開口幅Wとが0.10≦A1/W≦0.30の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される前記凹部の最大深さA2と当該凹部が設けられる前記側壁をなす前記主溝の開口幅Wとが0.05≦A2/W≦0.20の範囲を満たすことを特徴とする。
【0022】
最も車両内側の凹部の開口幅B1および最大深さA1と、最も車両外側の凹部の開口幅B2および最大深さA2とを上記範囲とすることにより、陸部の剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることができる。
【0023】
また、第8の発明の空気入りタイヤは、第4〜第6のいずれか一つの発明において、前記陸部のタイヤ周方向に向く側壁に設けられた凹部について、最も車両内側に配置される前記凹部の溝深さ方向の開口幅B1と当該凹部が設けられる前記側壁をなす前記ラグ溝の溝深さDとが0.10≦B1/D≦0.35の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される前記凹部の溝深さ方向の開口幅B2と当該凹部が設けられる前記側壁をなす前記ラグ溝の溝深さDとが0.05≦B2/D≦0.20の範囲を満たし、かつ最も車両内側に配置される前記凹部の最大深さA1と当該凹部が設けられる前記側壁をなす前記ラグ溝の開口幅Wとが0.10≦A1/W≦0.30の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される前記凹部の最大深さA2と当該凹部が設けられる前記側壁をなす前記ラグ溝の開口幅Wとが0.05≦A2/W≦0.20の範囲を満たすことを特徴とする。
【0024】
最も車両内側の凹部の開口幅B1および深さA1と、最も車両外側の凹部の開口幅B2および深さA2とを上記範囲とすることにより、陸部の剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることができる。
【0025】
また、第9の発明の空気入りタイヤは、第2、第5〜第7のいずれか一つの発明において、前記陸部のタイヤ幅方向に向く側壁に設けられた凹部について、最も車両外側に配置される前記凹部のタイヤ周方向での平均断面積Soutと最も車両内側に配置される前記凹部のタイヤ周方向での平均断面積Sinとが1.1≦Sin/Sout≦15の範囲を満たすことを特徴とする。
【0026】
最も車両外側の凹部のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側の凹部のタイヤ周方向での平均断面積Sinとの関係を上記範囲とすることにより、陸部の剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることができる。
【0027】
また、第10の発明の空気入りタイヤは、第4〜第6、第8のいずれか一つの発明において、前記陸部のタイヤ周方向に向く側壁に設けられた凹部について、最も車両外側に配置される前記凹部のタイヤ周方向での平均断面積Soutと最も車両内側に配置される前記凹部のタイヤ周方向での平均断面積Sinとが1.1≦Sin/Sout≦15の範囲を満たすことを特徴とする。
【0028】
最も車両外側の凹部のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側の凹部のタイヤ周方向での平均断面積Sinとの関係を上記範囲とすることにより、陸部の剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る空気入りタイヤは、操縦安定性の悪化を抑えつつ、排水性および乗り心地性の性能を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0032】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図であり、
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
【0033】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0034】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、
図1に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
【0035】
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート主溝である複数(本実施形態では3本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、
図2に示すように、トレッド面21は、各陸部23において、主溝22に交差するラグ溝24が設けられている。このため、ラグ溝24によって陸部23がタイヤ周方向で複数に分割されたブロック状の陸部23Aが形成されている。なお、
図2は、トレッド部2を概略化したものであり、主溝22は、タイヤ周方向に沿って延在しつつ屈曲や湾曲して形成されていてもよく、ラグ溝24は、タイヤ周方向に対して傾斜して延在しつつ屈曲や湾曲して形成されていてもよい。
【0036】
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
【0037】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
【0038】
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
【0039】
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
【0040】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両(図示せず)に装着した場合、タイヤ幅方向において、車両の内側および外側に対する向きが指定されている。向きの指定は、図には明示しないが、例えば、サイドウォール部4に設けられた指標により示される。以下、車両に装着した場合に車両の内側に向く側を車両内側、車両の外側に向く側を車両外側という。なお、車両内側および車両外側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の内側および外側に対するリムの向きが決まっている。このため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両の内側(車両内側)および外側(車両外側)に対する向きが指定される。また、トレッド部2において、車両内側とは、車両に装着した場合にタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLよりも車両の内側の範囲を言い、車両外側とは、車両に装着した場合にタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLよりも車両の外側の範囲を言う。
【0041】
[実施形態1]
図3〜
図6は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す斜視図である。本実施形態の空気入りタイヤ1は、ブロック状の陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23aに凹部10が設けられている。
【0042】
図3に示す空気入りタイヤ1では、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのタイヤ幅方向に向く複数の側壁(主溝22の溝壁に相当)23aのうちの1つに設けられている。この凹部10は、陸部23Aのタイヤ周方向の両端部に開口して主溝22の延在方向に沿って連続して設けられた1つの溝状に形成されている。また、凹部10は、タイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設けられている。また、図には明示しないが、凹部10は、タイヤ周方向に並ぶ各陸部23Aにおいて、タイヤ幅方向の同位置の側壁23aに設けられている。なお、
図3において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのタイヤ幅方向に向く複数の側壁23aのうち、車両最内側(車両内側で最もタイヤ赤道面CLから離れる側)の側壁23aに配置されている例を示しているが、車両内側に寄って配置される他の側壁23aに配置されていてもよい。
【0043】
この
図3に示す空気入りタイヤ1によれば、凹部10を設けたことにより排水性(および排雪性)を改善することが可能になる。また、凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設けたことにより、凹部10を設けた車両外側の陸部23Aの剛性よりも、車両内側の陸部23Aの剛性が低くなる。車両内側の陸部23Aは、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部23Aにより負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することが可能になる。その反面、陸部23Aの側壁23aに凹部を設けると、陸部23Aの剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤ1によれば、凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設けたことにより、凹部10を設けた車両内側の陸部23Aの剛性よりも、車両外側の陸部23Aの剛性が高くなる。車両外側の陸部23Aは、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部23Aにより負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることが可能になる。
【0044】
図4〜
図6に示す空気入りタイヤ1では、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのタイヤ幅方向に向く複数の側壁23aのうちの少なくとも2つに設けられている。この凹部10は、陸部23Aのタイヤ周方向の両端部に開口して主溝22の延在方向に沿って連続して設けられた1つの溝状に形成されている。また、凹部10は、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されている。凹部10の体積は、凹部10のタイヤ径方向の幅や側壁23aに対する深さにより変えることができる。なお、
図4において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ異なる陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23aに配置されている例を示している。
図5において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ陸部23Aのうちの1つのタイヤ幅方向に向く両側壁23aに配置されている例を示している。
図6において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23aに配置されている例を示している。また、各図には明示しないが、凹部10は、タイヤ周方向に並ぶ各陸部23Aにおいて、タイヤ幅方向の同位置の側壁23aに設けられている。
【0045】
この
図4〜
図6に示す空気入りタイヤ1によれば、凹部10を設けたことにより排水性(および排雪性)を改善することが可能になる。また、少なくとも2つの凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部10を設けた車両外側の陸部23Aの剛性よりも、車両内側の陸部23Aの剛性が低くなる。車両内側の陸部23Aは、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部23Aにより負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することが可能になる。その反面、陸部23Aの側壁23aに凹部を設けると、陸部23Aの剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤ1によれば、少なくとも2つの凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部10を設けた車両内側の陸部23Aの剛性よりも、車両外側の陸部23Aの剛性が高くなる。車両外側の陸部23Aは、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部23Aにより負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることが可能になる。
【0046】
なお、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得るには、
図6に示すように、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23aに凹部10が配置され、最も車両内側の凹部10の体積が最大で、車両外側に向かって漸次凹部10の体積が減少する形態が最も好ましい。この形態であれば、隣接する陸部23Aの剛性差を抑えて偏摩耗の発生を抑制することが可能になる。
【0047】
図7は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す拡大斜視図である。
図3〜
図6に示す空気入りタイヤ1は、
図7に示すように、凹部10が設けられた側壁23aをなす主溝22の溝底から当該凹部10のタイヤ径方向中央位置までの距離D1と、当該主溝22の溝深さDとが、0.10≦D1/D≦0.60の範囲を満たすことが好ましい。
【0048】
D1/Dが0.10未満や0.60を超える場合、陸部23Aの付け根近傍や先端近傍に凹部10が設けられるため陸部23Aの剛性差を生じさせる効果が低い。一方、D1/Dが0.10以上で0.60以下の範囲である場合、陸部23Aの中央寄りに凹部10が設けられるため陸部23Aの剛性差を生じさせる効果が顕著に得られる。
【0049】
図8〜
図14は、本実施形態に係る空気入りタイヤの凹部を示す拡大断面図である。凹部10の断面形状は、例えば、
図8に示すように、溝底側に向かって溝幅を狭めた略台形とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図9に示すように、矩形とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図10に示すように、半円状とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図11および
図12に示すように、三角形の断面形状とされており、三角形状が、凹部10の開口部側を底辺とした二等辺三角形状(
図11)であってもよく、凹部10の開口部側を底辺とし、頂点を主溝22の溝底側に向けた三角形状(
図12)、または凹部10の開口部側を底辺とし、頂点を主溝22の溝底側に向けた三角形状(図示せず)であってもよい。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図13および
図14に示すように、凹部10の最も凹んだ部分に凸部10aを有する断面形状であってもよい。このとき、凸部10aが凹部10の開口部から陸部23Aの側壁23a側に突出しない。
【0050】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、
図7〜
図14に示すように、最も車両内側に配置される凹部10の開口幅B1と、当該凹部10が設けられる側壁23aをなす主溝22の溝深さDとが、0.10≦B1/D≦0.35の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される凹部10の開口幅B2と当該凹部10が設けられる側壁23aをなす主溝22の溝深さDとが0.05≦B2/D≦0.20の範囲を満たし、かつ最も車両内側に配置される凹部10の最大深さA1と当該凹部10が設けられる側壁23aをなす主溝22の開口幅Wとが0.10≦A1/W≦0.30の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される凹部10の最大深さA2と当該凹部10が設けられる側壁23aをなす主溝22の開口幅Wとが0.05≦A2/W≦0.20の範囲を満たすことが好ましい。なお、凹部10がタイヤ幅方向最外側(車両最内側や車両最外側)の側壁23aに配置される場合、その側壁23aをなす主溝22として、タイヤ幅方向最外側(車両最内側や車両最外側)の主溝22を対象とする。
【0051】
最も車両内側の凹部10の開口幅B1および深さA1と、最も車両外側の凹部10の開口幅B2および深さA2とを上記範囲とすることにより、陸部23Aの剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることが可能になる。
【0052】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、最も車両外側に配置される凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側に配置される凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Sinとが、1.1≦Sin/Sout≦15の範囲を満たすことが好ましい。
【0053】
最も車両外側の凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側の凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Sinとの関係を上記範囲とすることにより、陸部23Aの剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることが可能になる。
【0054】
図15は、本実施形態の変形例に係る空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。上述した実施形態では、主溝22とラグ溝24とによりブロック状の陸部23Aをトレッド部2に形成した空気入りタイヤ1について説明した。この変形例として、
図15に示すように、ラグ溝24を設けず、主溝22によりリブ状の陸部23をトレッド部2に形成した空気入りタイヤ1において、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23のタイヤ幅方向に向く複数の側壁23aのうちの少なくとも1つに対し、主溝22の延在方向に沿って連続して形成された凹部10(図示せず)が設けられていてもよい。
【0055】
そして、凹部10が単数(1つ)の場合、タイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設ける。また、凹部10が複数(少なくとも2つ)の場合、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成する。
【0056】
この
図15に示す空気入りタイヤ1によれば、凹部10を設けたことにより排水性(および排雪性)を改善することが可能になる。また、凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設けたり、少なくとも2つの凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したりすることにより、凹部10を設けた車両外側の陸部23Aの剛性よりも、車両内側の陸部23Aの剛性が低くなる。車両内側の陸部23Aは、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部23Aにより負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することが可能になる。その反面、陸部23Aの側壁23aに凹部を設けると、陸部23Aの剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤ1によれば、1つの凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設けたり、少なくとも2つの凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したりすることにより、凹部10を設けた車両内側の陸部23Aの剛性よりも、車両外側の陸部23Aの剛性が高くなる。車両外側の陸部23Aは、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部23Aにより負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることが可能になる。
【0057】
[実施形態2]
図16〜
図19は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す斜視図である。
【0058】
図16に示す空気入りタイヤ1では、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのうちの1つであって当該陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁(ラグ溝24の溝壁に相当)23bに設けられている。この凹部10は、陸部23Aのタイヤ幅方向の両端部に開口してラグ溝24の延在方向に沿って連続して設けられた1つの溝状に形成されている。1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、相互の体積が等しく形成されている。また、凹部10は、タイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される陸部23Aの側壁23bに設けられている。また、図には明示しないが、凹部10は、タイヤ周方向に並ぶ各陸部23Aの側壁23bに設けられている。なお、
図16において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのうち、車両最内側(車両内側で最もタイヤ赤道面CLから離れる側)の陸部23Aの側壁23bに配置されている例を示しているが、車両内側に寄って配置される他の陸部23Aの側壁23bに設けてもよい。
【0059】
この
図16に示す空気入りタイヤ1によれば、凹部10を設けたことにより排水性(および排雪性)を改善することが可能になる。また、凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される陸部23Aの側壁23bに設けたことにより、凹部10を設けた車両外側の陸部23Aの剛性よりも、車両内側の陸部23Aの剛性が低くなる。車両内側の陸部23Aは、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部23Aにより負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することが可能になる。その反面、陸部23Aの側壁23aに凹部を設けると、陸部23Aの剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤ1によれば、凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される陸部23Aの側壁23bに設けたことにより、凹部10を設けた車両内側の陸部23Aの剛性よりも、車両外側の陸部23Aの剛性が高くなる。車両外側の陸部23Aは、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部23Aにより負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることが可能になる。
【0060】
図17〜
図19に示す空気入りタイヤ1では、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ少なくとも2つの陸部23Aであって当該陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁(ラグ溝24の溝壁に相当)23bに設けられている。この凹部10は、陸部23Aのタイヤ幅方向の両端部に開口してラグ溝24の延在方向に沿って連続して設けられた1つの溝状に形成されている。1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、相互の体積が等しく形成されている。また、凹部10は、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されている。凹部10の体積は、凹部10のタイヤ径方向の幅や側壁23bに対する深さにより変えることができる。なお、
図17において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ異なる陸部23Aのタイヤ周方向に向く側壁23bに配置されている例を示している。
図18において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aのタイヤ周方向に向く側壁23bに配置され、1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、タイヤ幅方向に一定の断面積で形成されている。
図19において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aのタイヤ周方向に向く側壁23bに配置され、1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、車両内側から車両外側に向かって漸次断面積が減少して形成されている例を示している。また、各図には明示しないが、凹部10は、タイヤ周方向に並ぶ各陸部23Aの側壁23bに設けられている。
【0061】
この
図17〜
図19に示す空気入りタイヤ1によれば、凹部10を設けたことにより排水性(および排雪性)を改善することが可能になる。また、タイヤ幅方向に並ぶ少なくとも2つの陸部23Aの側壁23bに設けた凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部10を設けた車両外側の陸部23Aの剛性よりも、車両内側の陸部23Aの剛性が低くなる。車両内側の陸部23Aは、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部23Aにより負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することが可能になる。その反面、陸部23Aの側壁23aに凹部を設けると、陸部23Aの剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ幅方向に並ぶ少なくとも2つの陸部23Aの側壁23bに設けた凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部10を設けた車両内側の陸部23Aの剛性よりも、車両外側の陸部23Aの剛性が高くなる。車両外側の陸部23Aは、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部23Aにより負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることが可能になる。
【0062】
なお、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得るには、
図19に示すように、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aのタイヤ周方向に向く側壁23bに凹部10が配置され、1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、車両内側から車両外側に向かって漸次断面積が減少する形態が最も好ましい。この形態であれば、隣接する陸部23Aの剛性差を抑えて偏摩耗の発生を抑制することが可能になる。
【0063】
図20は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す拡大斜視図である。
図16〜
図19に示す空気入りタイヤ1は、
図20に示すように、凹部10が設けられた側壁23bをなす主溝22の溝底から当該凹部10のタイヤ径方向中央位置までの距離D1と、当該主溝22の溝深さDとが、0.10≦D1/D≦0.60の範囲を満たすことが好ましい。
【0064】
D1/Dが0.10未満や0.60を超える場合、陸部23Aの付け根近傍や先端近傍に凹部10が設けられるため陸部23Aの剛性差を生じさせる効果が低い。一方、D1/Dが0.10以上で0.60以下の範囲である場合、陸部23Aの中央寄りに凹部10が設けられるため陸部23Aの剛性差を生じさせる効果が顕著に得られる。
【0065】
凹部10の断面形状は、例えば、
図8に示すように、溝底側に向かって溝幅を狭めた略台形とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図9に示すように、矩形とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図10に示すように、半円状とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図11および
図12に示すように、三角形の断面形状とされており、三角形状が、凹部10の開口部側を底辺とした二等辺三角形状(
図11)であってもよく、凹部10の開口部側を底辺とし、頂点を主溝22の溝底側に向けた三角形状(
図12)、または凹部10の開口部側を底辺とし、頂点を主溝22の溝底側に向けた三角形状(図示せず)であってもよい。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図13および
図14に示すように、凹部10の最も凹んだ部分に凸部10aを有する断面形状であってもよい。このとき、凸部10aが凹部10の開口部から陸部23Aの側壁23b側に突出しない。
【0066】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、
図20、
図8〜
図14に示すように、最も車両内側に配置される凹部10の開口幅B1と、当該凹部10が設けられる側壁23bをなすラグ溝24の溝深さDとが、0.10≦B1/D≦0.35の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される凹部10の開口幅B2と当該凹部10が設けられる側壁23bをなすラグ溝24の溝深さDとが0.05≦B2/D≦0.20の範囲を満たし、かつ最も車両内側に配置される凹部10の最大深さA1と当該凹部10が設けられる側壁23bをなすラグ溝24の開口幅Wとが0.10≦A1/W≦0.30の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される凹部10の最大深さA2と当該凹部10が設けられる側壁23bをなすラグ溝24の開口幅Wとが0.05≦A2/W≦0.20の範囲を満たすことが好ましい。
【0067】
最も車両内側の凹部10の開口幅B1および最大深さA1と、最も車両外側の凹部10の開口幅B2および最大深さA2とを上記範囲とすることにより、陸部23Aの剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることが可能になる。
【0068】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、最も車両外側に配置される凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側に配置される凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Sinとが、1.1≦Sin/Sout≦15の範囲を満たすことが好ましい。
【0069】
最も車両外側の凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側の凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Sinとの関係を上記範囲とすることにより、陸部23Aの剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることが可能になる。
【0070】
[実施形態3]
図21〜
図23は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す斜視図である。本実施形態の空気入りタイヤは、上述した実施形態1および実施形態2の空気入りタイヤの双方を含むものである。
【0071】
図21に示す空気入りタイヤ1では、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのタイヤ幅方向に向く複数の側壁(主溝22の溝壁に相当)23aのうちの1つに設けられている。この凹部10は、陸部23Aのタイヤ周方向の両端部に開口して主溝22の延在方向に沿って連続して設けられた1つの溝状に形成されている。また、凹部10は、タイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設けられている。また、図には明示しないが、凹部10は、タイヤ周方向に並ぶ各陸部23Aにおいて、タイヤ幅方向の同位置の側壁23aに設けられている。なお、
図21において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのタイヤ幅方向に向く複数の側壁23aのうち、車両最内側(車両内側で最もタイヤ赤道面CLから離れる側)の側壁23aに配置されている例を示しているが、車両内側に寄って配置される他の側壁23aに配置されていてもよい。
【0072】
さらに、
図21に示す空気入りタイヤ1では、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのうちの1つであって当該陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁(ラグ溝24の溝壁に相当)23bに設けられている。この凹部10は、陸部23Aのタイヤ幅方向の両端部に開口してラグ溝24の延在方向に沿って連続して設けられた1つの溝状に形成されている。1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、相互の体積が等しく形成されている。また、凹部10は、タイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される陸部23Aの側壁23bに設けられている。また、図には明示しないが、凹部10は、タイヤ周方向に並ぶ各陸部23Aの側壁23bに設けられている。なお、
図21において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのうち、車両最内側(車両内側で最もタイヤ赤道面CLから離れる側)の陸部23Aの側壁23bに配置されている例を示しているが、車両内側に寄って配置される陸部23Aの側壁23bに設けてもよい。
【0073】
この
図21に示す空気入りタイヤ1によれば、凹部10を設けたことにより排水性(および排雪性)を改善することが可能になる。また、凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設け、かつ凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される陸部23Aの側壁23bに設けたことにより、凹部10を設けた車両外側の陸部23Aの剛性よりも、車両内側の陸部23Aの剛性が低くなる。車両内側の陸部23Aは、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部23Aにより負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することが可能になる。その反面、陸部23Aの側壁23aに凹部を設けると、陸部23Aの剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤ1によれば、また、凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される側壁23aに設け、かつ凹部10をタイヤ赤道面CLより車両内側に寄って配置される陸部23Aの側壁23bに設けたことにより、凹部10を設けた車両内側の陸部23Aの剛性よりも、車両外側の陸部23Aの剛性が高くなる。車両外側の陸部23Aは、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部23Aにより負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることが可能になる。
【0074】
図22および
図23に示す空気入りタイヤ1では、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ各陸部23Aのタイヤ幅方向に向く複数の側壁23aのうちの少なくとも2つに設けられている。この凹部10は、陸部23Aのタイヤ周方向の両端部に開口して主溝22の延在方向に沿って連続して設けられた1つの溝状に形成されている。また、凹部10は、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されている。凹部10の体積は、凹部10のタイヤ径方向の幅や側壁23aに対する深さにより変えることができる。なお、
図22において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ異なる陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23aに配置されている例を示している。
図23において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ陸部23Aのうちの1つのタイヤ幅方向に向く両側壁23aに配置され、かつタイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aの側壁23aに配置されている例を示している。また、各図には明示しないが、凹部10は、タイヤ周方向に並ぶ各陸部23Aにおいて、タイヤ幅方向の同位置の側壁23aに設けられている。
【0075】
さらに、
図22および
図23に示す空気入りタイヤ1では、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ少なくとも2つの陸部23Aであって当該陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁(ラグ溝24の溝壁に相当)23bに設けられている。この凹部10は、陸部23Aのタイヤ幅方向の両端部に開口してラグ溝24の延在方向に沿って連続して設けられた1つの溝状に形成されている。1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、相互の体積が等しく形成されている。また、凹部10は、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成されている。凹部10の体積は、凹部10のタイヤ径方向の幅や側壁23bに対する深さにより変えることができる。なお、
図22において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ異なる陸部23Aのタイヤ周方向に向く側壁23bに配置されている例を示している。
図23において、凹部10は、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aのタイヤ周方向に向く側壁23bに配置され、1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、車両内側から車両外側に向かって漸次断面積が減少して形成されている例を示している。また、各図には明示しないが、凹部10は、タイヤ周方向に並ぶ各陸部23Aの側壁23bに設けられている。
【0076】
この
図22および
図23に示す空気入りタイヤ1によれば、凹部10を設けたことにより排水性(および排雪性)を改善することが可能になる。また、陸部23Aの側壁23aに設けた少なくとも2つの凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成し、かつタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも2つの陸部23Aの側壁23bに設けた凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部10を設けた車両外側の陸部23Aの剛性よりも、車両内側の陸部23Aの剛性が低くなる。車両内側の陸部23Aは、車両直進時に負荷がかかり乗り心地性への寄与が高い。このため、車両直進時に剛性の低い車両内側の陸部23Aにより負荷を受け流すことから乗り心地性を改善することが可能になる。その反面、陸部23Aの側壁23aに凹部を設けると、陸部23Aの剛性が低下するため、旋回時の操縦安定性が悪化する傾向となる。この点、この空気入りタイヤ1によれば、陸部23Aの側壁23aに設けた少なくとも2つの凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成し、かつタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも2つの陸部23Aの側壁23bに設けた凹部10を、車両最内側に近い位置ほど体積が大きく、車両最外側に近い位置ほど体積が小さく形成したことにより、凹部10を設けた車両内側の陸部23Aの剛性よりも、車両外側の陸部23Aの剛性が高くなる。車両外側の陸部23Aは、車両旋回時に車両内側よりも負荷がかかり操縦安定性への寄与が高い。このため、車両旋回時に剛性の高い車両外側の陸部23Aにより負荷を受けることから操縦安定性の悪化を抑えることが可能になる。
【0077】
なお、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得るには、
図23に示すように、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23aに凹部10が配置され、最も車両内側の凹部10の体積が最大で、車両外側に向かって漸次凹部10の体積が減少する形態が最も好ましい。この形態であれば、隣接する陸部23Aの剛性差を抑えて偏摩耗の発生を抑制することが可能になる。さらに、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得るには、
図23に示すように、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部23Aのタイヤ周方向に向く側壁23bに凹部10が配置され、1つの陸部23Aのタイヤ周方向に向く各側壁23bに設けられた各凹部10は、車両内側から車両外側に向かって漸次断面積が減少する形態が最も好ましい。この形態であれば、隣接する陸部23Aの剛性差を抑えて偏摩耗の発生を抑制することが可能になる。
【0078】
なお、実施形態の空気入りタイヤ1は、上述した実施形態1および実施形態2と同様に(
図7および
図20参照)、凹部10が設けられた側壁23aをなす主溝22の溝底から当該凹部10のタイヤ径方向中央位置までの距離D1と、当該主溝22の溝深さDとが、0.10≦D1/D≦0.60の範囲を満たすことが好ましい。
【0079】
D1/Dが0.10未満や0.60を超える場合、陸部23Aの付け根近傍や先端近傍に凹部10が設けられるため陸部23Aの剛性差を生じさせる効果が低い。一方、D1/Dが0.10以上で0.60以下の範囲である場合、陸部23Aの中央寄りに凹部10が設けられるため陸部23Aの剛性差を生じさせる効果が顕著に得られる。
【0080】
また、凹部10の断面形状は、上述した実施形態1および実施形態2と同様に(
図8〜
図14参照)、例えば、
図8に示すように、溝底側に向かって溝幅を狭めた略台形とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図9に示すように、矩形とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図10に示すように、半円状とされている。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図11および
図12に示すように、三角形の断面形状とされており、三角形状が、凹部10の開口部側を底辺とした二等辺三角形状(
図11)であってもよく、凹部10の開口部側を底辺とし、頂点を主溝22の溝底側に向けた三角形状(
図12)、または凹部10の開口部側を底辺とし、頂点を主溝22の溝底側に向けた三角形状(図示せず)であってもよい。また、凹部10の断面形状は、例えば、
図13および
図14に示すように、凹部10の最も凹んだ部分に凸部10aを有する断面形状であってもよい。このとき、凸部10aが凹部10の開口部から陸部23Aの側壁23a側に突出しない。
【0081】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、上述した実施形態1と同様に(
図7〜
図14)、陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23aに設けられた凹部10において、最も車両内側に配置される凹部10の開口幅B1と、当該凹部10が設けられる側壁23aをなす主溝22の溝深さDとが、0.10≦B1/D≦0.35の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される凹部10の開口幅B2と当該凹部10が設けられる側壁23aをなす主溝22の溝深さDとが0.05≦B2/D≦0.20の範囲を満たし、かつ最も車両内側に配置される凹部10の最大深さA1と当該凹部10が設けられる側壁23aをなす主溝22の開口幅Wとが0.10≦A1/W≦0.30の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される凹部10の最大深さA2と当該凹部10が設けられる側壁23aをなす主溝22の開口幅Wとが0.05≦A2/W≦0.20の範囲を満たすことが好ましい。なお、凹部10がタイヤ幅方向最外側(車両最内側や車両最外側)の側壁23aに配置される場合、その側壁23aをなす主溝22として、タイヤ幅方向最外側(車両最内側や車両最外側)の主溝22を対象とする。
【0082】
しかも、本実施形態の空気入りタイヤ1は、上述した実施形態1と同様に(
図7〜
図14、
図20参照)、陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23bに設けられた凹部10において、最も車両内側に配置される凹部10の開口幅B1と、当該凹部10が設けられる側壁23bをなすラグ溝24の溝深さDとが、0.10≦B1/D≦0.35の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される凹部10の開口幅B2と当該凹部10が設けられる側壁23bをなすラグ溝24の溝深さDとが0.05≦B2/D≦0.20の範囲を満たし、かつ最も車両内側に配置される凹部10の最大深さA1と当該凹部10が設けられる側壁23bをなすラグ溝24の開口幅Wとが0.10≦A1/W≦0.30の範囲を満たすとともに、最も車両外側に配置される凹部10の最大深さA2と当該凹部10が設けられる側壁23bをなすラグ溝24の開口幅Wとが0.05≦A2/W≦0.20の範囲を満たすことが好ましい。
【0083】
最も車両内側の凹部10の開口幅B1および深さA1と、最も車両外側の凹部10の開口幅B2および深さA2とを上記範囲とすることにより、陸部23Aの剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることが可能になる。
【0084】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、上述した実施形態1と同様に、陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23aに設けられた凹部10において、最も車両外側に配置される凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側に配置される凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Sinとが、1.1≦Sin/Sout≦15の範囲を満たすことが好ましい。
【0085】
さらに、本実施形態の空気入りタイヤ1は、上述した実施形態2と同様に、陸部23Aのタイヤ幅方向に向く側壁23bに設けられた凹部10において、最も車両外側に配置される凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側に配置される凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Sinとが、1.1≦Sin/Sout≦15の範囲を満たすことが好ましい。
【0086】
最も車両外側の凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Soutと、最も車両内側の凹部10のタイヤ周方向での平均断面積Sinとの関係を上記範囲とすることにより、陸部23Aの剛性差のバランスを保つことができ、乗り心地性の改善効果および操縦安定性の悪化を抑える効果を顕著に得ることが可能になる。
【実施例】
【0087】
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、排水性、操縦安定性および乗り心地性に関する性能試験が行われた(
図24〜
図29参照)。
【0088】
この性能試験では、タイヤサイズ215/60R16の空気入りタイヤを、正規リムにリム組みし、正規内圧(220[kPa])を充填して、試験車両(排気量2500[cc]の後輪駆動車)に装着した。
【0089】
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0090】
排水性の評価方法は、上記試験車両にて、水深10±1[mm]かつ旋回半径100[m]のテストコースを走行し、タイヤの最大横加速度が発生した時の試験車両の走行速度を測定する。そして、この測定結果に基づいて、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど排水性が優れていることを示している。
【0091】
操縦安定性の評価方法は、上記試験車両にて、乾燥したテストコースを速度60[km/h]から120[km/h]で走行し、直進時における直進安定性ならびにレーンチェンジ時およびコーナリング時における旋回安定性、剛性感、操舵性の項目について、熟練のテストドライバー2名による官能評価によって行う。この官能評価は、各項目を1点〜10点の評点をつけ、熟練のテストドライバー2名の評点の平均を求め、これにより従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、この指数が92よりも大きければ操縦安定性の悪化が抑えられていることを示している。
【0092】
乗り心地性の評価方法では、上記試験車両にて、平坦で乾燥したテストコースを速度60[km/h]で走行し、走行振動について、熟練のテストドライバー1名による官能評価によって行う。この官能評価は、走行振動を5段階で評価し、3回の平均を、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、この指数が大きいほど乗り心地性が優れていることを示している。
【0093】
図24は、陸部のタイヤ幅方向に向く側壁に凹部を設けた実施例である。
図24において、従来例の空気入りタイヤは、凹部を有していない。また、比較例1の空気入りタイヤは、
図3の車両内側と車両外側とを逆にしたものであって実施例1と比較する。また、比較例2の空気入りタイヤは、陸部のタイヤ幅方向に向く側壁に凹部を有しているが、
図25に示すように、タイヤ幅方向において凹部の体積が均等であるって実施例4〜実施例11と比較する。一方、
図24において、実施例1〜実施例11の空気入りタイヤは、陸部のタイヤ幅方向に向く側壁に凹部を有し、タイヤ幅方向において凹部の体積が異なる。実施例1は、
図3に対応する。実施例2は、
図4に対応する。実施例3は、
図5に対応する。実施例4〜実施例11は、
図6に対応する。実施例5〜実施例11は、凹部の位置(D1/D)が規定の範囲である。実施例7〜実施例11は、溝深さDや溝開口幅Wに対する凹部の関係(B1/D,A1/W,B2/D,A2/W)が規定の範囲である。実施例9〜実施例11は、凹部の平均断面積の関係(Sin/Sout)が規定の範囲である。
【0094】
図26は、陸部のタイヤ周方向に向く側壁に凹部を設けた実施例である。
図26において、従来例の空気入りタイヤは、凹部を有していない。また、比較例3の空気入りタイヤは、
図16の車両内側と車両外側とを逆にしたものであって、実施例12と比較する。また、比較例4の空気入りタイヤは、陸部のタイヤ周方向に向く側壁に凹部を有しているが、
図27に示すように、タイヤ幅方向において凹部の体積が均等であって、実施例14〜実施例22と比較する。一方、
図26において、実施例12〜実施例22の空気入りタイヤは、陸部のタイヤ周方向に向く側壁に凹部を有し、タイヤ幅方向において凹部の体積が異なる。実施例12は、
図16に対応する。実施例13は、
図17に対応する。実施例14は、
図18に対応する。実施例15〜実施例22は、
図19に対応する。実施例16〜実施例22は、凹部の位置(D1/D)が規定の範囲である。実施例18〜実施例22は、溝深さDや溝開口幅Wに対する凹部の関係(B1/D,A1/W,B2/D,A2/W)が規定の範囲である。実施例20〜実施例22は、凹部の平均断面積の関係(Sin/Sout)が規定の範囲である。
【0095】
図28は、陸部のタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に向く側壁に凹部を設けた実施例である。
図28において、従来例の空気入りタイヤは、凹部を有していない。また、比較例5の空気入りタイヤは、
図21の車両内側と車両外側とを逆にしたものであって、実施例23と比較する。また、比較例6の空気入りタイヤは、陸部のタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に向く側壁に凹部を有しているが、
図29に示すように、タイヤ幅方向において凹部の体積が均等であって、実施例25〜実施例31と比較する。一方、
図28において、実施例23〜実施例31の空気入りタイヤは、陸部のタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に向く側壁に凹部を有し、タイヤ幅方向において凹部の体積が異なる。実施例23は、
図21に対応する。実施例24は、
図22に対応する。実施例25〜実施例31は、
図23に対応する。実施例26〜実施例31は、凹部の位置(D1/D)が規定の範囲である。実施例28〜実施例31は、溝深さDや溝開口幅Wに対する凹部の関係(B1/D,A1/W,B2/D,A2/W)が規定の範囲である。実施例30および実施例31は、凹部の平均断面積の関係(Sin/Sout)が規定の範囲である。
【0096】
そして、
図24、
図26、
図28の試験結果に示すように、実施例1〜実施例31の空気入りタイヤは、操縦安定性の悪化が抑えられ、排水性および乗り心地性の性能が改善されていることが分かる。