(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085964
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】食品改質剤
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20170220BHJP
A23J 3/16 20060101ALN20170220BHJP
A21D 2/02 20060101ALN20170220BHJP
A21D 2/26 20060101ALN20170220BHJP
A21D 2/18 20060101ALN20170220BHJP
A21D 2/36 20060101ALN20170220BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20170220BHJP
A23L 17/00 20160101ALN20170220BHJP
A23L 13/00 20160101ALN20170220BHJP
A23L 11/00 20160101ALN20170220BHJP
【FI】
A23L7/109 A
!A23J3/16 501
!A21D2/02
!A21D2/26
!A21D2/18
!A21D2/36
!A23L5/00 M
!A23L17/00 A
!A23L13/00 A
!A23L11/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-273837(P2012-273837)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-117206(P2014-117206A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163647
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 為明
(72)【発明者】
【氏名】田中 克幸
【審査官】
西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−142200(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/043384(WO,A1)
【文献】
特開2002−238501(JP,A)
【文献】
特開昭53−029954(JP,A)
【文献】
特開2009−153396(JP,A)
【文献】
特開2003−018964(JP,A)
【文献】
特開2000−333590(JP,A)
【文献】
J. Fd. Technol.,1983年,Vol.18,pp.719-730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J
A21D
A23L 7/
A23L 5/
A23L 13/
A23L 17/
A23L 11/
A23L 35/
A23L 21/
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/WPIDS/FSTA/FROSTI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆蛋白、多糖類および無機塩の混合物をエクストルーダーにて加熱溶融混練する工程を含む、食品改質剤の製造方法であって、
該多糖類がサイリウムシードガムを含み、そして該無機塩が乳酸カルシウムを含む、方法。
【請求項2】
前記混合物中の前記大豆蛋白、前記多糖類、および前記無機塩の割合が、前記大豆蛋白3質量部に対し、前記多糖類0.1質量部〜2質量部および前記無機塩0.01質量部〜1質量部である、請求項1に記載の食品改質剤の製造方法。
【請求項3】
前記エクストルーダーを通じて前記混合物に付加される温度が60℃から150℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エクストルーダーが2軸エクストルーダーである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の品質改良の目的で、小麦蛋白が広く利用されている。例えば、特許文献1および2には、改質グルテン粉末が、畜肉加工食品、水産練り加工食品、および麺類を含む小麦粉食品に対して、硬さ、ねばり、滑らかさなどの食感および伸展性を付与できることが記載されている。
【0003】
大豆蛋白もまた、食品の品質改良のために広く利用されている。大豆蛋白は、大豆蛋白自体が蛋白源として優れるので、栄養の強化のために、そして小麦蛋白の代替材料としても注目されている。大豆蛋白は、畜肉加工食品および水産練り加工食品に添加されて、そのゲル化力によって、これらの食品に硬さのある歯切れのよい食感を付与することができる。しかし、もちもち感、弾力感、ねばり感などの粘弾力のある食感を食品に付与することができなかった。
【0004】
また、大豆蛋白を含有する麺類が開発されている。例えば、特許文献3には、麺類の栄養価を強化するために、酵素分解処理した大豆蛋白を配合した麺類が記載されている。しかし、分離大豆蛋白を配合した麺類では、製麺性が悪化し、麺質が劣化するという問題点があった。特許文献4には、大豆ペプチドの機能性を付与しかつ麺質が劣化しない即席麺を製造することを目的として、大豆ペプチド、サイリウムガム、および乳酸カルシウムを含有する麺生地を調製することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−204649号公報
【特許文献2】特開2007−000046号公報
【特許文献3】特公昭63−56789号公報
【特許文献4】特開2007−202519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、食品に粘弾力のある食感を付与することができる食品改質剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、大豆蛋白、多糖類および無機塩の混合物をエクストルーダーにて加熱溶融混煉することによって、食品に粘弾力のある食感を付与することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、大豆蛋白、多糖類および無機塩の混合物をエクストルーダーにて加熱溶融混煉することによって得られる食品改質剤を提供する。
【0009】
1つの実施態様では、上記混合物中の上記大豆蛋白、上記多糖類および上記無機塩の割合は、該大豆蛋白3質量部に対し、該多糖類0.1質量部〜2質量部および該無機塩0.01質量部〜1質量部である。
【0010】
1つの実施態様では、上記多糖類は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギナン、カロブビーンガム、グァーガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、タラガムおよびペクチンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0011】
1つの実施態様では、上記無機塩は乳酸カルシウムである。
【0012】
本発明はまた、上記食品改質剤を含む食品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食品に粘弾力のある食感(例えば、もちもち感、弾力感、ねばり感)を付与することができる食品改質剤を提供することができる。本発明の食品改質剤は、主成分の大豆蛋白が栄養に優れるので、食品に添加されることによって食品の栄養を強化することができる。また、小麦蛋白を含有する食品改質剤の代替材料として利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の食品改質剤は、大豆蛋白、多糖類および無機塩の混合物をエクストルーダーにて加熱溶融混煉することによって得られる。
【0015】
大豆蛋白としては、特に限定されず、例えば、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、および大豆蛋白分解物、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
分離大豆蛋白とは、脱脂大豆から非蛋白性化合物が除去され、例えば、蛋白が乾物換算で90%以上含有量まで精製されたものである。分離大豆蛋白としては、例えば、市販品、大豆蛋白を原料に調製したものを用いることができる。大豆蛋白を原料に調製する方法としては、特に限定されず、当業者が通常用いる方法が挙げられる。例えば、脱脂大豆に水を加えた液からおからを除去して豆乳を得、この豆乳に酸を加えて、上澄み部のホエーを除去し、次いで、沈殿物を中和および乾燥して、分離大豆蛋白を得ることができる。
【0017】
濃縮大豆蛋白とは、脱脂大豆から油脂の大部分と水溶性非蛋白性化合物が除去され、例えば、蛋白が乾物換算で70%以上含有量まで精製されたものである。濃縮大豆蛋白としては、例えば、市販品、大豆蛋白を原料に調製したものを用いることができる。大豆蛋白を原料に調製する方法としては、特に限定されず、当業者が通常用いる方法が挙げられる。例えば、脱脂大豆にアルコールまたは酸を加えた液から上澄み部のホエーを除去し、次いで、残りの成分を中和および乾燥して、濃縮大豆蛋白を得ることができる。
【0018】
大豆蛋白分解物とは、大豆蛋白を酸、酵素などにより加水分解して得られたものである。大豆蛋白分解物は、本発明の食品改質剤の効果を損なわない程度に加水分解されていてもよい。大豆蛋白分解物の分子量の範囲としては、特に限定されない。
【0019】
大豆蛋白としては、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白が好ましく、本発明の食品改質剤および食品改質剤を添加した食品の物性改質が良好となる観点から、分離大豆蛋白がより好ましい。大豆蛋白の性状としては、特に限定されず、例えば、粉末状、粒状、繊維状が挙げられるが、好ましくは粉末状である。本発明の食品改質剤に含有される大豆蛋白の含有量としては、特に限定されず、例えば、60質量%〜99質量%である。
【0020】
多糖類としては、特に限定されず、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギナン、カロブビーンガム、グァーガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、タラガムおよびペクチン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、食品において増粘剤、ゲル化剤、または安定剤として使用することができる多糖類であるアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギナン、カロブビーンガム、グァーガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、タラガムおよびペクチン、ならびにこれらの組み合わせであり、より好ましくは、本発明の食品改質剤および食品改質剤を添加した食品の物性改質が良好となる観点から、サイリウムシードガムである。サイリウムシードガムは、オオバコ科ブロンドサイリウム(Plantago ovata FOESK.)または同種植物の種子外皮に含まれる多糖類をいう。多糖類の性状としては、特に限定されず、例えば、粉末状、粒状が挙げられるが、好ましくは粉末状である。多糖類の精製度は、特に限定されないが、精製度が高い方が色調の点で好ましい。本発明の食品改質剤に含有される多糖類の含有量としては、特に限定されず、例えば、1質量%〜40質量%である。
【0021】
無機塩としては、特に限定されず、例えば、カルシウム塩、およびマグネシウム塩、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくはカルシウム塩である。カルシウム塩としては、特に限定されず、例えば、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、およびリン酸二カルシウム、ならびにこれらの組み合せが挙げられる。無機塩としては、特に、乳酸カルシウムが好ましい。本発明の食品改質剤に含有される無機塩の含有量としては、特に限定されず、例えば、0.1質量%〜5質量%である。
【0022】
本発明の食品改質剤は、その効果を阻害しない範囲で、他の添加剤を含有してもよく、そのような添加剤としては、例えば、小麦蛋白、卵白、乳化剤が挙げられる。その添加量は、本発明の食品改質剤の効果を阻害しない範囲である限り、特に限定されない。
【0023】
本発明の食品改質剤を得るために、大豆蛋白と多糖類とを混合してエクストルーダーにて加熱溶融混煉する。加水してもよい。必要に応じて、無機塩をさらに混合してもよい。混合の順番は特に限定されない。混合比率は、材料に応じて適宜設定されるが、例えば、大豆蛋白(分離大豆蛋白)3質量部に対して、多糖類(サイリウムシードガム)0.1質量部〜2質量部、好ましくは1質量部、必要に応じて、無機塩(乳酸カルシウム)0.01質量部〜1質量部、好ましくは0.2質量部である。
【0024】
本発明で用いるエクストルーダーは、50℃〜200℃に加熱することができる限り、特に限定されない。吐出ノズルの形状は特に限定されず、例えば、円形である。1軸または2軸のいずれであってもよいが、2軸エクストルーダーが好ましい。2軸エクストルーダーとしては、特に限定されず、例えば、市販のエクストルーダーが挙げられる。市販のエクストルーダーとしては、特に限定されないが、スクリュー直径65mm、L/D21が好ましい。
【0025】
加熱の温度は、各バレルの設定により適宜設定することができる。加熱の時間は、スクリューの回転速度の設定により適宜設定することができる。加熱の温度としては、特に限定されないが、好ましくは60℃〜150℃、より好ましくは90℃〜110℃である。加熱の温度は、原料投入口(ホッパー)から吐出ノズルに向かうに従い低く設定することが好ましい。加熱の時間としては、特に限定されないが、好ましくは15秒〜120秒、より好ましくは15秒〜60秒である。加熱の温度および時間の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば、加熱の温度が100℃程度の場合、加熱の時間は、好ましくは15秒〜120秒、より好ましくは15秒〜60秒である。
【0026】
エクストルーダーの吐出ノズルから吐出された混合物は、通常は室温まで冷却される。冷却方法は特に限定されない。その後、適宜乾燥、切断、粉砕されてもよい。
【0027】
上記食品改質剤の性状としては、特に限定されないが、好ましくは粉末状である。
【0028】
上記食品改質剤は、食品原料に予め添加および混合することによって、食品の品質を改良することができる。添加および混合は、他の添加剤と併用してもよい。添加および混合の方法は、上記食品改質剤が原料に均一に分散させることができる限り、特に限定されない。例えば、液状食品に対する溶解、練り食品に対する生地への練り込み、食品表面への塗布が挙げられる。上記食品改質剤が予め添加および混合された食品原料から、食品を製造することができる。
【0029】
本発明は、上記食品改質剤を含む食品もまた提供する。好ましくは、穀粒、穀粉、および澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として含む食品、ならびに動物性蛋白質または植物性蛋白質を主成分として含む食品である。本発明の食品は、粘弾力のある食感(例えば、もちもち感、弾力感、ねばり感)を有し得る。すなわち、本発明の食品改質剤は、食品に粘弾力のある食感(例えば、もちもち感、弾力感、ねばり感)を付与し得る。
【0030】
上記穀粒、穀粉、および澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として含む食品としては、特に限定されず、例えば、麺類、団子状食品、およびシート状食品が挙げられる。上記麺類としては、特に限定されず、例えば、うどん、きしめん、日本そば、中華麺、素麺、パスタなどの小麦粉またはそば粉を主成分とする麺類;春雨などの緑豆澱粉を主成分とする麺類;およびビーフンなどの米粉またはジャガイモなどに由来する澱粉を主成分とする麺類が挙げられる。団子状食品としては、特に限定されず、例えば、わらび餅、かしわ餅などの餅類、および白玉団子が挙げられる。シート状食品としては、特に限定されず、例えば、餃子の皮およびワンタンが挙げられる。上記穀粒、穀粉、および澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として含む食品としては、特に限定されず、例えば、ピザ、中華饅頭、饅頭、どら焼、パンなどの生地、スポンジケーキ、ホットケーキ、クッキー、マフィン、ブッセ、およびシュー皮が挙げられる。これらの食品に対して上記食品改質剤は、例えば、生地への練り込みによって、添加および混合される。
【0031】
上記動物性蛋白質または植物性蛋白質を主成分として含む食品としては、特に限定されず、例えば、豆腐、凍り豆腐、変わり豆腐、豆腐ステーキ、豆腐竹輪、油揚げ(調味付けしたものも含む)、がんもどき、湯葉、大豆ハンバーグなどの大豆加工食品;ハンバーグ、ハム、ソーセージなどの畜肉加工食品(レトルト食品またはその具材も含む);かまぼこ、ちくわなどの水産練り加工食品;ならびにゼリー、ババロアなどの菓子類が挙げられる。これらの食品に対して上記食品改質剤は、例えば、生地への練り込みによって、添加および混合される。
【0032】
上記食品は、例えば、常温または低温下で流通される調理済み食品(市販弁当の具材、調理麺など)、乾燥食品(即席麺類など)、冷蔵食品(チルド食品)、冷凍食品などとして利用される食品であってもよい。
【0033】
食品に含有される食品改質剤の量は、その効果を阻害しない範囲内である限り、特に限定されない。例えば、上記麺類(特に生麺、茹で麺)では、原料の粉(例えば、小麦粉)の質量に対して、例えば0.1質量%〜5質量%、好ましくは0.3質量%〜3質量%で添加される。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。また、以下の実施例において、特に言及しない限り、「質量部」は「部」と表す。
【0035】
(実施例1:大豆蛋白混合物をエクストルーダーにて加熱溶融混煉して得られた食品改質剤の物性評価)
分離大豆蛋白(以下、単に「大豆蛋白」という)3部、サイリウムシードガム1部および乳酸カルシウム0.2部をミキサーにて均一に混合した。
【0036】
次いで、得られた混合物を、2軸エクストルーダー(5バレル、スクリュー直径65mm、L/D21、吐出ノズル形状は円形)のホッパーに原料フィード100kg/時間にて供給した。各バレルの温度設定は、ホッパーに近いバレル1〜3を100℃、次のバレル4を50℃、および吐出ノズルに近いバレル5を20℃とした。エクストルーダーによる加熱溶融混煉時間は、スクリューの回転速度を調整して30秒に設定した。吐出ノズルから得られた加熱溶融混煉物を室温まで冷却して粉末状の食品改質剤を得た。食品改質剤15部に対して精製水100部の割合で精製水を添加して、ミキサーにて均一に混合した。得られたペースト状の混合物をテフロン(登録商標)樹脂製の円柱枠(直径20mm×高さ10mm)に流し込み、恒温乾燥機を用いて90℃にて120分間加温し、次いで、10℃にて24時間保管した後、円柱枠より取り出した。取り出した加熱溶融混煉物は、ゲル状であった。
【0037】
得られたゲルについて、テキソグラフ(株式会社日本食品開発研究所製)を用いて、物性を評価した。具体的には、円柱状ゲルを測定用のステイに載せ、直径3cmの円盤型プランジャーを0.1mm/秒の速度にて上からゲルを圧縮し、ゲルが完全につぶれる変形率を100%として65%の変形率になるまでゲルを圧縮し、圧縮に要した過重(Pa)を測定した。結果を以下の表1に示す。
【0038】
(比較例1:大豆蛋白混合物を乾熱処理して得られた食品改質剤の物性評価)
エクストルーダーによる加熱溶融混煉に代えて、大豆蛋白混合物を、恒温乾燥機を用いて90℃にて90分間加温したこと以外は実施例1と同様にしてゲルを得、実施例1と同様にしてゲルの物性を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0039】
(実施例2〜4:エクストルーダーによる加熱条件がゲル物性に及ぼす影響)
エクストルーダーによる加熱条件を以下の表1に示す条件にしたこと以外は実施例1と同様にしてゲルを得、実施例1と同様にしてゲルの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、実施例のエクストルーダーによる加熱は、比較例1の従来の乾熱と比較して、大豆蛋白混合物由来の食品改質剤に大きな粘弾力を付与することができることがわかった。また、エクストルーダーによる加熱温度は100℃、加熱時間は30秒がほぼ最適であることがわかった。さらに、エクストルーダーによる加熱時間が2分を超えるとゲルの粘弾力が低下することがわかった。これは、蛋白の熱変性が過大になったためと考えられる。
【0042】
(実施例5:実施例1〜4および比較例1の食品改質剤を添加した調理麺うどんの物性評価)
実施例1〜4および比較例1で得られた混合物を練り水(食塩2gおよび水40gを含む食塩水)へ投入し(混合物1.0g/42g練り水)、撹拌した後、3分間放置し、分散液を得た。混合物を投入しない練り水をコントロールとした。
【0043】
次いで、得られた分散液を、表2に示すように、小麦粉80gおよび加工澱粉20gに添加し、8分間ミキシング(混練)を行い、60分間熟成し、生地を得た。生地を延ばし、9番角刃(2.7mm)を用いて22cm麺線を切り出し、400gの生麺を得た。生麺を8分間茹で(茹で水にはpH調整剤0.05%を添加)、水洗および冷却し、調理麺うどんを得た。調理麺うどんを100gずつ盛り付け、10℃にて冷蔵保管した。
【0044】
【表2】
【0045】
得られた調理麺うどんについて、テキソグラフ(株式会社日本食品開発研究所製)を用いて物性を測定した。具体的には、冷蔵保管から取り出した調理麺うどんを5cm長さに切断し、測定用のステイに載せ、くさび型プランジャーを0.1mm/秒の速度にて上からうどんを圧縮し、うどんの破断変形荷重(N/m
2)を測定した(測定回数 n=4)。また、変形率(%)を測定し、変形率(%)を横軸に表し、変形荷重(N/m
2)を縦軸に表したときに、変形率0%から破断するまでの変形荷重(N/m
2)の積算値を圧縮仕事率(Nm/m
2)として求めた。結果を以下の表3に示す。
【0046】
また、得られた調理麺うどんを、冷蔵保管24時間後、6名のパネラーに試食させ、もちもち感、弾力感、ねばり感に関して、五段階の評価基準で評価した。五段階評価は、もちもち感、弾力感、ねばり感のいずれにおいても点数が高いほど良好であることを表す。6名のパネラーの平均値(小数点第1位を四捨五入)を以下の表4に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
表3から明らかなように、実施例のエクストルーダーによる加熱溶融混煉は、比較例1の従来の乾熱と比較して、調理麺うどんに大きな粘弾力を付与することができることがわかった。
【0050】
表4から明らかなように、実施例のエクストルーダーによる加熱溶融混煉は、比較例1の従来の乾熱と比較して、コントロールからの粘弾力のある食感向上効果が顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、食品に粘弾力のある食感(例えば、もちもち感、弾力感、ねばり感)を付与することができる食品改質剤を提供することができる。本発明の食品改質剤は、大豆蛋白が栄養に優れるので、食品に添加することによって食品の栄養を強化することができる。また、小麦蛋白を含有する食品改質剤の代替材料として利用することができる。