(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機溶剤を吸着可能な吸着材を有し、有機溶剤を含む被処理ガスと前記吸着材から有機溶剤を脱着するための加熱蒸気とが交互に供給される処理槽を少なくとも3つ以上有し、
複数の前記処理槽から選択された一つの前記処理槽に前記加熱蒸気を導入する加熱蒸気供給部と、
残りの複数の前記処理槽を直列多段接続にして、直列多段接続された複数の前記処理槽に前記被処理ガスを導入する被処理ガス供給部と、
前記加熱蒸気供給部と連通された気相部を有し、前記加熱蒸気の供給時に前記処理槽から排出された脱着ガスから有機溶剤を回収するコンデンサおよび/またはセパレータを含む回収機構部と、を備え、
前記被処理ガス供給部は、
前記被処理ガスを導入する処理ガス入口ラインと、
前記処理ガス入口ラインに設けられ、前処理用吸着材が収容される前処理用吸着槽と、を有し、
前記回収機構部は、
前記脱着ガスによって前記コンデンサおよび/またはセパレータから押し出される戻りガスを、前記処理ガス入口ラインの前処理用吸着槽よりも上流側に戻す戻りラインを有する、ガス処理装置。
前記前処理用吸着材は、粒状活性炭、活性炭素繊維、ゼオライト、シリカゲル、イオン交換樹脂、および、活性アルミナの群の少なくとも一つから選択される材料である、請求項1または2に記載のガス処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸着に関与する細孔が粒状活性炭では、マクロポアであるのに対し、ACFでは、ミクロポアであることから、有機溶剤の吸着・脱着速度がACFの方が速く、また脱着時間が短時間で終了するため回収溶剤の品質が良いことが挙げられる。
【0008】
また、吸着材を水蒸気にて脱着を行なうと、一旦吸着材が湿ることにより、吸着性能を長期間の運転において維持するには吸着材を次の脱着までに乾燥させる必要がある。この乾燥が不十分であると運転が進むにつれ吸着材の湿る部分が広がり、吸着性能を大幅に低下させる。ACFは粒状活性炭に比べ乾燥が極めて速く行なわれることから、吸着工程が乾燥を兼ねるケースが一般的であった。
【0009】
しかしながら、被処理ガスの有機溶剤濃度が増すにつれ、処理風量当たりの吸着材の重量が多くなることから、乾燥を吸着工程で兼ねることは困難となり、下記の様々な対策が取られてきた。
【0010】
(1)単独にて乾燥工程を設ける:この対策は、乾燥用の吸着槽を1槽追加する必要があり、ガス処理装置が大型化し、処理系統が複雑になる。
【0011】
(2)被処理ガスの吸着前温度を上げる:この対策は、吸着温度を上げるに従い、吸着効率が低下する。
【0012】
(3)被処理ガスの吸着前相対湿度を下げる:この対策は、水分除去の付属装置が必要である。
【0013】
(4)被処理ガスを希釈して風量を増加させる:この対策は、吸着する有機溶剤濃度が下がるため、吸着効率も下がる。
【0014】
上述する対策を行なっても、吸着工程、特に吸着工程の初期においては乾燥が十分でなく、吸着材が湿っており高温であることから、吸着材の吸着能力が完全に回復していないため、処理済ガス中に有機溶剤が漏れだすことがあった。
【0015】
また、吸着材の取り付け部の隙間や充填による隙間が極微量ではあるが発生するため、これらの隙間から被処理ガスが漏れ出すなどにより、1段のみの吸着工程での除去性能は98〜99%が限界となり、さらに除去性能を高めるには直列接続の多段吸着方式を行なう必要があった。
【0016】
また、脱着工程により脱着された脱着ガスはコンデンサで冷却され、さらにセパレータで回収溶剤として分離回収される。コンデンサおよび/またはセパレータには加圧防止のため、コンデンサおよび/またはセパレータの気相部分を開放しておく必要がある。
【0017】
しかし、脱着ガスによって押し出されるコンデンサおよび/またはセパレータに滞留しているガスは、飽和蒸気圧に近い未濃縮の高濃度有機溶剤含有ガスであるため、高濃度有機溶剤含有ガスを処理する酸化分解設備や回収設備を付設する必要があった。以下、脱着ガスによって押し出されるコンデンサおよび/またはセパレータに滞留している高濃度有機溶剤含有ガスを「戻りガス」と呼ぶ。特に高い除去性能が求められる直列多段吸着方式では「戻りガス」の完全処理が絶対条件であった。
【0018】
脱着工程の初期段階では、吸着槽内に滞留した被処理ガスが脱着用蒸気でコンデンサおよび/またはセパレータへ押し出される。しかし被処理ガスの殆どは冷却濃縮されないため、吸着槽の約容積分だけの「戻りガス」が短時間で排出される。その後は、殆ど冷却凝縮される有機溶剤含有蒸気がコンデンサおよび/またはセパレータへ送られるため、「戻りガス」の風量は著しく低下する。
【0019】
つまり「戻りガス」の風量は脱着工程初期で最も大きくなり、その後著しく低下するため、「戻りガス」中の有機溶剤を高効率で回収することは困難とされていた。
【0020】
また、分離回収された有機溶剤は、環境配慮や製造コスト削減の意識から再利用されることも多いため、回収率の向上のためには高濃度の有機溶剤を含有している「戻りガス」を効率よく回収する必要がある。
【0021】
したがって、本発明は、吸着材を用いて有機溶剤含有ガスの吸脱着を高効率かつ連続的に行なうことを可能とした、ガス処理装置およびこのガス処理装置を用いたガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
近年の環境認識の向上に伴い、排出ガス中の有機溶剤含有量の規制が強化されたことから、有機溶剤含有量の低減化が活発となってきている。被処理ガスの有機溶剤濃度が高濃度の場合においては、除去性能が99%以上を求められるため、直列多段吸着方式で行なうケースが増してきている。
【0023】
直列多段吸着方式の順序としては、被処理ガスを最初に吸着処理する1段目の工程を第1吸着工程とし、その後に処理効率が上がるに従い処理経路に直列に接続された吸着工程を2段目(第2吸着工程)、3段目(第3吸着工程)と増していくことになる。
【0024】
なお、脱着効率を落とさないために、脱着工程は吸着処理の1段目である第1吸着工程が終了した後に行なうことが最良であり、直列2段吸着方式を例に取ると、特定の吸着槽での処理サイクルは脱着工程→第2吸着工程→第1吸着工程→脱着工程のサイクルを繰り返すとよい。
【0025】
本発明は、直列多段吸着方式において、被処理ガス供給部の前段に前処理用吸着材が充填された前処理用吸着槽を設け、脱着ガスによって押し出される戻りガスを前処理用吸着槽の前段に送り、被処理ガスと混合させた後、前処理用吸着槽を通過させて1段目吸着槽で処理する手段を設けることで、戻りガスによる吸着工程入口ガス濃度の変動を大幅に緩和して平準化できるため、吸着熱による吸着材の劣化や性能低下を防ぐことができる。また戻りガスを別途処理設備で処理した時よりも有機溶剤を高収率で回収でき、従来よりもコンパクトでありランニングコストも安価となるガス処理装置を提供するものである。
【0026】
本発明に係るガス処理装置においては、有機溶剤を吸着可能な吸着材を有し、有機溶剤を含む被処理ガスと上記吸着材から有機溶剤を脱着するための加熱蒸気とが交互に供給される処理槽を少なくとも3つ以上有し、複数の上記処理槽から選択された一つの上記処理槽に上記加熱蒸気を導入する加熱蒸気供給部と、残りの複数の上記処理槽を直列多段接続にして、直列多段接続された複数の上記処理槽に上記被処理ガスを導入する被処理ガス供給部と、上記加熱蒸気供給部と連通された気相部を有し、上記加熱蒸気の供給時に上記処理槽から排出された脱着ガスから有機溶剤を回収するコンデンサおよび/またはセパレータを含む回収機構部と、を備える。
【0027】
上記被処理ガス供給部は、上記被処理ガスを導入する処理ガス入口ラインと、上記処理ガス入口ラインに設けられ、前処理用吸着材が収容される前処理用吸着槽と、を有する。
【0028】
上記回収機構部は、上記脱着ガスによって上記コンデンサおよび/またはセパレータから押し出される戻りガスを、上記処理ガス入口ラインの前処理用吸着槽よりも上流側に戻す戻りラインを有する。
【0029】
1つの実施態様では、上記吸着材は、活性炭素繊維または粒状活性炭である。
1つの実施態様では、上記前処理用吸着材は、粒状活性炭、活性炭素繊維、ゼオライト、シリカゲル、イオン交換樹脂、および、活性アルミナの群の少なくとも一つから選択される材料である。
【0030】
本発明に係るガス処理方法は、有機溶剤を含む被処理ガスから有機溶剤を回収するガス処理方法であって、上述のいずれかに記載のガス処理装置を用い、上記脱着ガスによって上記コンデンサおよび/またはセパレータから押し出される上記戻りガスを上記被処理ガスに混合し、上記前処理用吸着槽を通過させた後の上記脱着ガスを、上記被処理ガス供給部から、直列接続された残りの複数の上記処理槽に導入して、有機溶剤を含む被処理ガスから有機溶剤を回収する。
【発明の効果】
【0031】
この発明に基づいたガス処理装置およびこのガス処理装置を用いたガス処理方法によれば、吸着材を用いて有機溶剤含有ガスの吸脱着を高効率かつ連続的に行なうことを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一または対応する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない場合がある。また、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0034】
本明細書において用いる有機溶剤とは、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、O−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、フロン−112、フロン−113、HCFC、HFC、臭化プロピル、ヨウ化ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ビニル、プロピオン酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、炭酸ジエチル、蟻酸エチル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アニソール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、O−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アクリロニトリル、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、イソノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、テトラデカン、デカリン、ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシド等を指す。
【0035】
(ガス処理装置100)
図1を参照して、本実施の形態におけるガス処理装置100の構成について説明する。
図1は、本実施の形態におけるガス処理装置100の構成を示す図である。このガス処理装置100は、直列多段吸着方式が実現できるように構成され、第1処理槽2、第2処理槽3、および第3処理槽4を備える。
【0036】
第1処理槽2は、円筒形状の第1吸着材5Aを含み、第2処理槽3は、円筒形状の第2吸着材5Bを含み、第3処理槽4は、円筒形状の第3吸着材5Cを含む。第1吸着材5A、第2吸着材5B、および、第3吸着材5Cは、外側から内側に向けて被処理ガスが通過して吸着工程が実施され、内側から外側に向けて加熱蒸気が通過して脱着工程が実施される。第1吸着材5A、第2吸着材5B、および、第3吸着材5Cには、ACFが用いられる。
【0037】
第1処理槽2、第2処理槽3、および第3処理槽4は、処理ガス導入ライン31および脱着ガスライン24に連通されている。処理ガス導入ライン31への連通の開閉、および、脱着ガスライン24への連通の開閉を行なうため、第1処理槽2、第2処理槽3、および第3処理槽4には、それぞれ、第1自動下ダンパ9、第2自動下ダンパ10、および、第3自動下ダンパ11が設けられている。
【0038】
処理ガス導入ライン31の第1処理槽2に分岐する第1分岐ライン31Aには、第1導入開閉弁21が設けられ、第1分岐ライン31Aには、第1処理ガス導入ライン31Bが連結され、さらに、第1処理ガス導入ライン31Bには、第1希釈ガス導入ライン31Cが連結されている。第1処理ガス導入ライン31Bには、第2導入開閉弁18が設けられている。
【0039】
処理ガス導入ライン31の第2処理槽3に分岐する第2分岐ライン31Dには、第3導入開閉弁22が設けられ、第2分岐ライン31Dには、第2処理ガス導入ライン31Eが連結され、さらに、第2処理ガス導入ライン31Eには、第2希釈ガス導入ライン31Fが連結されている。第2処理ガス導入ライン31Eには、第4導入開閉弁19が設けられている。
【0040】
処理ガス導入ライン31の第3処理槽4に分岐する第3分岐ライン31Gには、第5導入開閉弁23が設けられ、第3分岐ライン31Gには、第3処理ガス導入ライン31Hが連結され、さらに、第3処理ガス導入ライン31Hには、第3希釈ガス導入ライン31Iが連結されている。第3処理ガス導入ライン31Hには、第6導入開閉弁20が設けられている。
【0041】
第1処理槽2の上方には、被処理ガスの流通を制御する第1自動上ダンパ6、第1導出ライン31J、第2導出ライン31Kが設けられている。第1導出ライン31Jには、第1導出開閉弁12が設けられ、第2導出ライン31Kには、第2導出開閉弁15が設けられている。
【0042】
第2処理槽3の上方には、被処理ガスの流通を制御する第2自動上ダンパ7、第3導出ライン31L、第4導出ライン31Mが設けられている。第3導出ライン31Lには、第3導出開閉弁13が設けられ、第4導出ライン31Mには、第4導出開閉弁16が設けられている。
【0043】
第3処理槽4の上方には、被処理ガスの流通を制御する第3自動上ダンパ8、第5導出ライン31N、第6導出ライン31Pが設けられている。第5導出ライン31Nには、第5導出開閉弁14が設けられ、第6導出ライン31Pには、第6導出開閉弁17が設けられている。
【0044】
脱着ガスライン24には、コンデンサ25が連結され、コンデンサ25に連結される回収液ライン26には、セパレータ27が連結されている。セパレータ27は、液相領域27Aおよび気相領域27Bを有する。セパレータ27の液相領域27Aからは、回収ライン27Cにより回収溶剤Kが回収される。
【0045】
コンデンサ25およびセパレータ27の気相領域には、戻りガスライン28が連結されている。戻りガスライン28は、処理ガス入口ライン32に導入されている。処理ガス入口ライン32は、処理ガス導入ライン31に連結しており、処理ガス入口ライン32には、前処理用吸着槽29および送風機1が設けられている。前処理用吸着槽29は、前処理用吸着材30を有する。
【0046】
ガス処理装置100は、加熱蒸気供給装置34を有し、加熱蒸気供給装置34から送り出される加熱蒸気は、加熱蒸気ライン35を通じて、第1処理槽2、第2処理槽3、および第3処理槽4に供給される。
【0047】
第1処理槽2には、加熱蒸気ライン35から分岐する第1加熱蒸気分岐ライン35Aが連通し、第1加熱蒸気分岐ライン35Aには、第1蒸気開閉弁36が設けられている。第2処理槽3には、加熱蒸気ライン35から分岐する第2加熱蒸気分岐ライン35Bが連通し、第2加熱蒸気分岐ライン35Bには、第2蒸気開閉弁37が設けられている。第3処理槽4には、加熱蒸気ライン35から分岐する第3加熱蒸気分岐ライン35Cが連通し、第3加熱蒸気分岐ライン35Cには、第3蒸気開閉弁38が設けられている。
【0048】
なお、上記ガス処理装置100において、第1自動上ダンパ6、第2自動上ダンパ7、第3自動上ダンパ8、第1自動下ダンパ9、第2自動下ダンパ10、第3自動下ダンパ11、第1導入開閉弁21、第2導入開閉弁18、第3導入開閉弁22、第4導入開閉弁19、第5導入開閉弁23、第6導入開閉弁20、第1導出開閉弁12、第2導出開閉弁15、第3導出開閉弁13、第4導出開閉弁16、第5導出開閉弁14、第6導出開閉弁17、加熱蒸気供給装置34、第1蒸気開閉弁36、第2蒸気開閉弁37、第3蒸気開閉弁38、コンデンサ25、セパレータ27、および、送風機1は、図示しない制御装置により、以下に示すガス処理方法を実現するように運転および開閉が適宜制御される。
【0049】
なお、上記ガス処理装置100において、少なくとも、加熱蒸気供給装置34、第1加熱蒸気分岐ライン35A、第1蒸気開閉弁36、第2加熱蒸気分岐ライン35B、第2蒸気開閉弁37、第3加熱蒸気分岐ライン35C、および、第3蒸気開閉弁38により、加熱蒸気供給部が構成される。
【0050】
また、少なくとも、送風機1、処理ガス入口ライン32、処理ガス導入ライン31、第1分岐ライン31A、第1処理ガス導入ライン31B、第1希釈ガス導入ライン31C、第2導入開閉弁18、第1導入開閉弁21、第2分岐ライン31D、第2処理ガス導入ライン31E、第2希釈ガス導入ライン31F、第4導入開閉弁19、第3導入開閉弁22、第3分岐ライン31G、第3処理ガス導入ライン31H、第3希釈ガス導入ライン31I、第6導入開閉弁20、および、第5導入開閉弁23により、被処理ガス供給部が構成される。
【0051】
また、少なくとも、脱着ガスライン24、コンデンサ25、回収液ライン26、セパレータ27、および、回収ライン27Cにより、回収機構部が構成される。
【0052】
(ガス処理方法)
次に、
図1から
図3を参照して、上記構成を有するガス処理装置100を用いたガス処理方法について説明する。
図1から
図3は、本実施の形態におけるガス処理装置100を用いたガス処理方法の第1から第3工程を示す図である。
【0053】
図1に示す第1工程においては、ガス処理装置100の第1処理槽2は、第1吸着工程が実施され、第2処理槽3は、第2吸着工程が実施され、第3処理槽4は、脱着工程が実施される。
【0054】
図2に示す第2工程においては、ガス処理装置100の第1処理槽2は、脱着工程が実施され、第2処理槽3は、第1吸着工程が実施され、第3処理槽4は、第2吸着工程が実施される。
【0055】
図3に示す第3工程においては、ガス処理装置100の第1処理槽2は、第2吸着工程が実施され、第2処理槽3は、脱着工程が実施され、第3処理槽4は、第1吸着工程が実施される。
【0056】
<第1工程>
(第1処理槽2の第1吸着工程)
図1を参照して、有機溶剤含有ガスを含んだ被処理ガスAは、処理ガス入口ライン32から、送風機1にて第1吸着工程となっている第1処理槽2に送られる。第1自動下ダンパ9は、第1分岐ライン31Aを開放し、脱着ガスライン24を閉鎖するように制御される。
【0057】
第1自動上ダンパ6は、第1吸着材5Aにおける被処理ガスAの流通を可能とする開状態に制御される。また、第1導入開閉弁21は開状態、第3導入開閉弁22および第5導入開閉弁23は閉状態に制御される。
【0058】
第1処理槽2の第1吸着材5Aでガス吸着が行われ、第1吸着工程出口ガスBとして、第2導出ライン31Kから導出される。第2導出開閉弁15は開状態に制御され、第1導出開閉弁12は閉状態に制御される。また、第1加熱蒸気分岐ライン35Aの第1蒸気開閉弁36は閉状態に制御される。
【0059】
(第2処理槽3の第2吸着工程)
第1吸着工程出口ガスBには、第1吸着工程で漏れ出した有機溶剤が含まれていることから、さらに吸着処理を行なうため、第2吸着工程となっている第2処理槽3に直列接続され、第2吸着入口ガスCとして、第2処理ガス導入ライン31Eに送られる。第2自動下ダンパ10は、第2分岐ライン31D側を開放し、脱着ガスライン24を閉鎖するように制御される。
【0060】
この時、第2吸着工程中に第2処理槽3の第2吸着材5Bの乾燥を促進するため、第2吸着入口ガスCに、第2希釈ガス導入ライン31Fから風量制御された希釈ガスLが混入される。第4導入開閉弁19は、開状態に制御される。
【0061】
希釈ガスLとは、第2吸着工程以降の吸着工程で吸着材の乾燥を促進するために追加されるガスであり、外気、計装用空気、窒素ガス、アルゴンガスのいずれかひとつを含んで構成されるとよい。
【0062】
第2吸着入口ガスCは、第2処理槽3にて、第2吸着材5Bにより吸着処理後、清浄空気Dとなって、第3導出ライン31Lから、ガス処理装置100の系外へ導出される。第2自動上ダンパ7は、第2吸着材5Bにおける第2吸着入口ガスCの流通を可能とする開状態に制御される。また、第3導出開閉弁13は開状態、第4導出開閉弁16は閉状態に制御される。また、第2加熱蒸気分岐ライン35Bの第2蒸気開閉弁37は閉状態に制御される。
【0063】
(第3処理槽4の脱着工程)
第1工程においては、第3処理槽4には被処理ガスを送ることはなく、第3自動下ダンパ11で、第3分岐ライン31Gは閉鎖され、脱着ガスライン24が開放された状態に制御される。また、第3自動上ダンパ8は、第3吸着材5Cの外側から内側へのガスの流通が閉鎖され、加熱蒸気供給装置34からの脱着用の加熱蒸気が、第3加熱蒸気分岐ライン35Cを通じて、第3吸着材5Cの内側から外側への流通を可能に導入される。第3加熱蒸気分岐ライン35Cの第3蒸気開閉弁38は開状態に制御される。
【0064】
第3処理槽4内では、加熱蒸気が噴出し、第3吸着材5Cに吸着された有機溶剤が、第3吸着材5Cから脱着される。脱着された有機溶剤ガスは、脱着ガスライン24を通ってコンデンサ25へ送られる。
【0065】
脱着された有機溶剤ガスと加熱蒸気はコンデンサ25にて凝縮し、高濃度の有機溶剤を含んだ凝縮液が回収液ライン26を通ってセパレータ27へ送られる。凝縮液は、セパレータ27において、有機溶剤と水とに分離され、回収ライン27Cから回収溶剤Kが回収される。
【0066】
コンデンサ25およびセパレータ27内に滞留している戻りガスは、脱着ガスによって押し出され、戻りガスライン28を通って処理ガス入口ライン32に導入され、被処理ガスAに混合される。
【0067】
処理ガス入口ライン32から導入される被処理ガスAおよび戻りガスは、前処理用吸着槽29で処理された後、第1処理槽2に送られる。第1工程においては、以上の工程が繰り返し行なわれて、回収ライン27Cから回収溶剤Kが回収される。
【0068】
<第2工程>
図2を参照して、第2工程では、ガス処理装置100の第1処理槽2は、脱着工程が実施され、第2処理槽3は、第1吸着工程が実施され、第3処理槽4は、第2吸着工程が実施されるように、図示しない制御装置により、第1自動上ダンパ6、第2自動上ダンパ7、第3自動上ダンパ8、第1自動下ダンパ9、第2自動下ダンパ10、第3自動下ダンパ11、第1導入開閉弁21、第2導入開閉弁18、第3導入開閉弁22、第4導入開閉弁19、第5導入開閉弁23、第6導入開閉弁20、第1導出開閉弁12、第2導出開閉弁15、第3導出開閉弁13、第4導出開閉弁16、第5導出開閉弁14、第6導出開閉弁17、コンデンサ25、セパレータ27、送風機1、加熱蒸気供給装置34、第1加熱蒸気分岐ライン35A、第1蒸気開閉弁36、第2加熱蒸気分岐ライン35B、第2蒸気開閉弁37、第3加熱蒸気分岐ライン35C、および、第3蒸気開閉弁38の運転、各開閉弁の開閉切換えが適宜制御される。
【0069】
<第3工程>
図3を参照して、第3工程では、ガス処理装置100の第1処理槽2は、第2吸着工程が実施され、第2処理槽3は、脱着工程が実施され、第3処理槽4は、第1吸着工程が実施されるように、図示しない制御装置により、第1自動上ダンパ6、第2自動上ダンパ7、第3自動上ダンパ8、第1自動下ダンパ9、第2自動下ダンパ10、第3自動下ダンパ11、第1導入開閉弁21、第2導入開閉弁18、第3導入開閉弁22、第4導入開閉弁19、第5導入開閉弁23、第6導入開閉弁20、第1導出開閉弁12、第2導出開閉弁15、第3導出開閉弁13、第4導出開閉弁16、第5導出開閉弁14、第6導出開閉弁17、コンデンサ25、セパレータ27、送風機1、加熱蒸気供給装置34、第1加熱蒸気分岐ライン35A、第1蒸気開閉弁36、第2加熱蒸気分岐ライン35B、第2蒸気開閉弁37、第3加熱蒸気分岐ライン35C、および、第3蒸気開閉弁38の運転、各開閉弁の開閉切換えが適宜制御される。
【0070】
以上のように、各処理槽における処理サイクルが、脱着工程→第2吸着工程→第1吸着工程→脱着工程のサイクルを繰り返すように制御することで、本実施の形態におけるガス処理装置100においては、連続的に被処理ガスAの処理を行なうことが可能となる。
【0071】
このように、本実施の形態におけるガス処理装置100によれば、直列接続された2段以上の処理槽で被処理ガスAである有機溶剤含有ガスを処理する直列多段吸着方式により、1段吸着方式に比べて高い除去率を達成できる。
【0072】
また、本実施の形態におけるガス処理装置100によれば、戻りガスを前処理用吸着槽29の前段に送り、被処理ガスAと混合して前処理用吸着槽29を通過させることで、処理槽に設けられる吸着材を劣化させる物質を前処理用吸着槽29で除去することができる。
【0073】
ここでいう吸着材を劣化させる物質とは、沸点200℃以上の高沸点物質などの難脱着物質や酸化性ガス、重合性物質などを指す。また、戻りガスによる吸着工程入口ガス濃度の変動を大幅に緩和して平準化することも可能となる。これにより1段目吸着槽で発生する吸着熱による熱暴走を抑制でき、吸着材の劣化や吸着性能の低下を防ぐことを可能とする。
【0074】
また、本実施の形態におけるガス処理装置100によれば、戻りガスを被処理ガスと混合して1段目の処理槽で再び吸着回収処理することにより、戻りガスを酸化分解設備や回収設備で別途処理するよりも有機溶剤の高い回収効率を得ることが期待できる。
【0075】
また、本実施の形態におけるガス処理装置100によれば、戻りガスを別途処理する設備を必要としないため、ガス処理装置の省スペース化が可能となり、さらに製造コストを従来のガス処理装置よりも安価に抑えることが期待できる。
【0076】
また、本実施の形態におけるガス処理装置100によれば、戻りガスを別途処理する設備を必要としないため、ガス処理装置のランニングコストを従来よりも安価に抑えることが期待できる。
【0077】
また、本実施の形態におけるガス処理装置100によれば、戻りガスを1段目の処理槽で処理を行なうため、被処理ガス濃度が上昇することになるが、第1吸着工程で漏れ出した有機溶剤含有ガスは直列接続された第2段目の吸着材によって問題なく吸着されるため、従来の直列多段吸着方式と同じ除去性能で被処理ガスを処理することができる。
【0078】
本実施の形態におけるガス処理装置100に使用される吸着材はACFまたは粒状活性炭を用いるとよい。ここでいうACFとはアクリロニトリル(PAN)系繊維、レーヨン系、石炭ピッチ系、フェノール樹脂系、石油ピッチ系、植物由来系など原料繊維を既存の方法にて処理して得られた比表面積300〜3000m
2/g、繊維直径が2μm〜30μm程度、繊維長さが0.5mm〜100mm程度、平均細孔直径が4Å〜30Å程度であるとよい。
【0079】
以下、実施例を挙げて本実施の形態におけるガス処理装置100をより詳細に説明する。
【0080】
<実施例>
被処理ガスの一例となる有機溶剤含有ガスには塩化メチレン、吸着材には東洋紡株式会社製のACF「K−FILTER」3.8kg/槽を用い、一回の脱着に必要な蒸気量は1.9kgとした。
【0081】
塩化メチレンを22,000ppm含む25℃の被処理ガスを、風量2.7Nm
3/minで送風機1より第1吸着工程となっている第1処理槽2に送風した。続いて第1処理槽2から排出される第1吸着工程出口ガスBには、第2吸着入口ガスCとして第2吸着工程となっている第2処理槽3に送風された。この時、第2吸着入口ガスCは0.6Nm
3/minの外気で希釈され、40℃に温度調節された。第2処理槽3で処理された後は清浄空気として、第3導出ライン31Lから系外に排出された。
【0082】
第1処理槽2から排出される第1吸着工程出口ガスBの塩化メチレン濃度が1,100ppmに達した時点で各工程を切り替えた。第1処理槽2が第1吸着工程を行なっている間、第3処理槽4では脱着用蒸気を噴出して脱着工程を行なった。
【0083】
脱着ガスはコンデンサ25で凝縮され、セパレータ27で有機溶剤と水に分離された。コンデンサ25およびセパレータ27に滞留しているガスは脱着ガスによって押し出され、戻りガスとして戻りガスライン28を通って前処理用吸着槽29の前段の処理ガス入口ライン32に送られた。前処理用吸着槽29の前処理用吸着材30には粒状活性炭を用いた。
【0084】
特定の処理槽での処理サイクルは、脱着工程→第2吸着工程→第1吸着工程の順番で行なわれ、脱着工程→第2吸着工程→第1吸着工程を1サイクルとし、合計8サイクルを実施した。8サイクル運転で1セットとし、これを100セット繰り返し、各処理槽ACFの劣化確認を実施した。
【0085】
<比較例1>
直列2段階吸着方式に前処理用吸着槽29を設けていない以外は、上記実施例と同様のガス処理を行なって、ACFの劣化確認を実施した。
【0086】
<比較例2>
直列2段階吸着方式に戻りガスライン28および前処理用吸着槽29がなく、戻りガスは酸化分解処理装置で別途処理した。それ以外は上記実施例と同様のガス処理を行なって、ACFの劣化確認を実施した。
【0087】
<比較例3>
被処理ガス、吸着材、脱着蒸気量の条件は、上記実施例と同様に設定し、直列2段階吸着方式ではなく1段階吸着方式でガス処理を実施した。脱着ガスによって押し出されたコンデンサおよびセパレータに滞留しているガスは戻りガスとして前処理用吸着槽前に送られた。吸着工程→脱着工程の2工程で1サイクルとし、合計12サイクルを実施した。12サイクル運転で1セットとし、これを66セット繰り返し、ACFの劣化確認を実施した。
【0088】
実施例、比較例1から3の吸着工程において、吸着工程最終出口から系外に排出されるガスの濃度、および第1吸着工程入口ガスの濃度は島津製作所製の総炭化水素計の測定器を用いて測定した。
【0089】
劣化確認実施前後のACFのBET比表面積は、マイクロメリティックスジャパン合同会社製の比表面積・細孔分布測定装置(Gemini2375)を用いて測定した。ACFを120℃で12時間真空乾燥し、液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。相対圧0.02〜0.15の範囲での結果をもとに、BET法により算出した。
【0090】
劣化確認実施前後のACFの細孔直径10Å以下のマイクロポア細孔容積は、マイクロメリティックスジャパン合同会社製の比表面積・細孔分布測定装置(Gemini2375)を用いて測定した。ACFを120℃で12時間真空乾燥し、液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。
【0091】
この結果をMP法によって解析範囲0〜20Å、t決定式H.Jの条件で解析し、吸着時のマイクロポア細孔径分布数表の結果より全マイクロポア細孔容積から細孔直径10.03Å以上のマイクロポア細孔容積を引いて算出した。
【0092】
図4に、実施例、および、比較例1から3の吸着工程入口および出口の塩化メチレン濃度、サイクル終了後のセパレータで分離された液体塩化メチレンの回収率、約800回吸脱着サイクルを繰り返した後のACFの表面物性を示す。
【0093】
サイクル運転前のACFの表面物性は、BET比表面積が1610m
2/g、10Å以下の全マイクロポア容積が0.64m
3/gであった。
【0094】
図4より、本実施例におけるガス処理装置およびこのガス処理装置を用いたガス処理方法によれば、直列2段吸着方式かつ戻りガスがあり、前処理用吸着槽を設けない比較例1と比べて吸着工程出口濃度および塩化メチレン回収率は同等であった。
【0095】
しかし、約800回吸脱着サイクルを繰り返した後のACFの表面物性評価では比較例1で劣化が見られたのに対し、本実施例におけるガス処理装置ではまったく劣化しないことが明らかとなった。これは被処理ガスを前処理用吸着槽へ通過させて吸着入口濃度が平準化したことにより、吸着熱による過剰なACFの昇温を抑制できたことが有効であったといえる。
【0096】
本実施例におけるガス処理装置は、直列2段吸着方式かつ戻りガスなし、前処理用吸着槽なしの比較例2と比べて約800回吸脱着サイクルを繰り返した後のACFの表面物性は同等でまったく劣化が見られなかった。
【0097】
また、吸着出口の平均塩化メチレン濃度も同等であったが、塩化メチレン回収率は約11.4%向上することが明らかとなった。これは本実施例の戻りガスライン28および前処理用吸着槽29が有機溶剤の回収率向上に有効であるといえる。また、実施例で回収できなかった塩化メチレン4.9%はセパレータ内の水層側に溶解または分散した量を意味するため、系外への排出量とは無関係である。
【0098】
本発明のガス処理装置は、1段階吸着方式かつ戻りガスあり、前処理用吸着槽ありのガス処理装置(比較例3)よりも吸着出口の平均塩化メチレン濃度が大幅に低く、液体塩化メチレン回収率も約1.0%向上することが明らかとなった。
【0099】
以上より、本実施例のガス処理装置によれば、直列多段吸着方式に戻りガスラインおよび前処理用吸着槽を設けることによって、有機溶剤の平均除去率向上と回収率向上、および吸着材の劣化抑制で効果が発揮されることを実証することができた。
【0100】
以上、本実施の形態におけるガス処理装置、およびこのガス処理装置を用いたガス処理方法によれば、直列多段吸着方式において戻りガスを前処理用吸着槽の前段に送り、被処理ガスと混合させた後、前処理用吸着槽へ通過させて1段目吸着槽で処理する手段を設けることで、従来の装置よりも高除去率を達成できるだけでなく、吸着材を劣化させる物質を前処理用吸着槽で除去することができる。
【0101】
また、戻りガスによる吸着工程入口ガス濃度の変動を大幅に緩和して平準化することができるため、吸着熱による吸着材の劣化や性能低下を防ぐことができる。また、戻りガスを1段目吸着槽で処理することで、別途処理設備で処理した時よりも有機溶剤を高い回収率で得ることができる。さらに、戻りガスを別途処理する設備を必要としないため、従来よりもコンパクトでありランニングコストも安価となるガス処理装置を提供することができる。
【0102】
なお、上記実施の形態のガス処理装置100は、直列多段吸着方式を実現するために、第1処理槽2、第2処理槽3、および第3処理槽4の3槽構造を用いることで、直列2段吸着方式を採用し、各処理槽において、脱着工程→第2吸着工程→第1吸着工程→脱着工程のサイクルを順次繰り返す方法について説明したが、直列2段吸着方式に限定されるものではなく、直列3段吸着方式、直列4段吸着方式等、直列多段吸着方式に採用した場合であっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0103】
今回開示した上記実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。