(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
疎水性繰り返し単位が、スチレン類、(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上の単量体に由来する繰り返し単位である請求項4に記載のブロッキング剤。
スルフィニル基を側鎖に有する繰り返し単位を有する重合体で一部または全部がコーティングされていることを特徴とする標的物質に対する抗原または抗体が固定化された担体。
体外診断による検体中の標的物質の検出方法であって、請求項7または8に記載の固定化された担体と、標的物質を含む可能性のある検体とを混合することを特徴とする検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔ブロッキング剤〕
本発明のブロッキング剤は、スルフィニル基を側鎖に有する繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A)とも称する)を有する重合体を含有するものである。
【0015】
<繰り返し単位(A)>
上記繰り返し単位(A)としては親水性を示すものが好ましい。ここで、本明細書において、親水性とは、水との親和力が強い性質を持つことを意味する。具体的には1種の繰り返し単位のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万〜10万程度のもの)が、常温(25℃)において純水100gに対して1g以上溶解する場合にはその繰り返し単位は親水性である。
また、上記繰り返し単位(A)としては、親水疎水の尺度を示すHydrophile−Lipophile Balance(HLB値)が10以上のものが好ましい。高い親水性を得る場合には、HLB値は15以上がより好ましく、20〜40がさらに好ましく、20〜30が特に好ましい。
また、本明細書において、HLB値は、化合物の有機性の値と無機性の値の比率から算出されるもの(小田式)を意味し、「Formulation Design with Organic Conception Diagram」[1998年、NIHON EMULSION CO.,LTD]に記載の計算方法により算出できる。例えば、後述する実施例に記載のN−1−1の共重合体に含まれる繰り返し単位(A)のHLB値は、(60×1+140×1+100×3)/(20×10+40×1+(−10)×3)×10=23.8である。
【0016】
また、繰り返し単位(A)は特に限定されないが、ノニオン性のものが好ましい。
また、繰り返し単位(A)は、スルフィニル基の他に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、リン酸基、アルデヒド基等の親水性基を有していてもよい。また、斯かる親水性基の位置および個数は任意であるが、その位置は好ましくは重合体の側鎖である。一方、スルフィニル基以外の親水性基の個数としては、適度な親水性を得る観点から、繰り返し単位1個中に、0〜12個が好ましく、0〜10個がより好ましく、0〜5個が更に好ましく、0〜3個が更に好ましく、1〜3個が更に好ましく、2または3個が特に好ましい。また、上記親水性基の中でも、適度な親水性を得る観点から、ヒドロキシ基が好ましい。なお、本発明の効果が失われない範囲で、重合体に含まれる複数のスルフィニル基の一部がスルフィド基やスルホニル基となっていてもよい。
【0017】
また、上記繰り返し単位(A)の好適な具体例としては、下記式(1)で表される構造を側鎖中に少なくとも1つ含む繰り返し単位が挙げられる。式(1)で表される構造を側鎖中に有する繰り返し単位となるポリマー種としては公知のものを用いることができ、中でも(メタ)アクリレート系のポリマー種、(メタ)アクリルアミド系のポリマー種、スチレン系のポリマー種等が好ましい。より具体的には、下記式(2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0019】
〔式(1)中、R
3は、直接結合または炭素数1〜24の2価の有機基を示し、R
4は、炭素数1〜10の有機基を示す。〕
【0021】
〔式(2)中、R
1は、水素原子またはメチル基を示し、R
2は、基−O−、基*−(C=O)−O−、基*−(C=O)−NR
5−、基*−NR
5−(C=O)−(R
5は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(2)中のR
1が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示し、R
3およびR
4は前記と同義である。〕
ここで、式(1)および(2)中の各記号について詳細に説明する。
【0022】
R
1は、水素原子またはメチル基を示すが、メチル基が好ましい。
【0023】
また、R
2は、基−O−、基*−(C=O)−O−、基*−(C=O)−NR
5−、基*−NR
5−(C=O)−またはフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0024】
また、上記R
5で示される有機基の炭素数は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは2〜8であり、更に好ましくは2〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基を包含する概念である。
【0025】
上記R
5における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0026】
上述のようなR
2の中でも、ブロッキング効果の観点から、基*−(C=O)−O−、フェニレン基が好ましく、基*−(C=O)−O−が特に好ましい。
【0027】
R
3は、直接結合または炭素数1〜24の2価の有機基を示す。斯かる直接結合としては、単結合が挙げられる。
【0028】
斯様なR
3の中でも、炭素数1〜24の2価の有機基が好ましい。斯かる2価の有機基の炭素数は、好ましくは2〜18であり、より好ましくは2〜10であり、更に好ましくは2〜9であり、特に好ましくは3〜6である。
【0029】
上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が挙げられる。2価の炭化水素基は、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基であり、直鎖状でも分岐状でもよい。具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。
【0030】
また、上記2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素−炭素結合間にエーテル結合を含んでいてもよい。
上記2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、前記親水性基が挙げられる。該置換基の個数は、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1または2である。
また、上記2価の炭化水素基が含んでいてもよいエーテル結合の個数としては、0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
【0031】
また、2価の有機基の好適な具体例としては、下記式(3)で表される連結基、炭素数1〜24のアルカンジイル基が挙げられ、より好ましくは式(3)で表される連結基である。
【0033】
〔式(3)中、R
6は、単結合、基−R
8−O−(R
8は、炭素数1〜4のアルカンジイル基を示す)または下記式(4)で表される連結基を示し、R
7は、炭素数1〜4のアルカンジイル基を示し、nは1または2を示し、**は、式(1)、(2)中のイオウ原子と結合する位置を示す。〕
【0035】
〔式(4)中、R
9は、炭素数1〜4のアルカンジイル基を示し、R
10は、炭素数2または3のアルカンジイル基を示し、m
1は1または2を示し、m
2は1〜3の整数を示す。〕
【0036】
上記R
6としては、単結合、基−R
8−O−が好ましく、単結合が特に好ましい。
【0037】
また、上記R
7、R
8およびR
9で示されるアルカンジイル基の炭素数は1〜4であるが、1または2が好ましい。
また、上記アルカンジイル基は直鎖状でも分岐でもよく、前述のアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
【0038】
また、上記R
10で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2である。また、該アルカンジイル基としては、R
7で示されるものと同様のものが挙げられる。なお、m
2が2または3の場合、m
2個のR
10は同一であっても異なっていてもよい。
また、nおよびm
1としては1が好ましく、m
2としては1または2が好ましい。
【0039】
また、R
4は、炭素数1〜10の有機基を示す。斯かる有機基としては、R
5で示されるものと同様のものが挙げられる。また、R
4が炭化水素基である場合、斯かる炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基およびその個数としては、前記2価の炭化水素基が有していてもよいものと同様のものが挙げられる。また、親水性の観点から、R
4としては、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の環構造を含まないものが好ましい。
【0040】
上述のようなR
4の好適な具体例としては、前記親水性基を有する炭素数1〜10の有機基が挙げられ、より好ましくは下記式(5)で表される1価の基、炭素数1〜10のアルキル基であり、更に好ましくは式(5)で表される1価の基である。
【0042】
〔式(5)中、k
1は、1〜4の整数を示し、k
2は、0〜4の整数を示し、***は、式(1)、(2)中のイオウ原子と結合する位置を示す。〕
【0043】
式(5)中、k
1としては、1または2が好ましい。また、k
2としては、0〜2の整数が好ましく、0または1がより好ましい。
【0044】
また、繰り返し単位(A)の合計含有量の下限としては、水溶性の付与、ブロッキング効果の観点から、全繰り返し単位中、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が更に好ましい。
一方、上限としては、担体との吸着の観点から、全繰り返し単位中、99モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が更に好ましく、80モル%以下が更に好ましく、70モル%以下が更に好ましい。
なお、繰り返し単位(A)の含有量は
13C−NMR等により測定可能である。
【0045】
<繰り返し単位(B)>
また、本発明で用いる重合体としては、更に疎水性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(B)とも称する)を有するものが好ましい。ここで、疎水性とは、水との親和性が低い性質を持つことを意味する。具体的には、1種の繰り返し単位のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万〜10万程度のもの)が、常温(25℃)において純水100gに対して溶解する量が1g未満である場合にはその繰り返し単位は疎水性である。
また、上記繰り返し単位(B)のHLB値としては、高い疎水性を得る場合には、20未満が好ましく、15未満がより好ましく、0.1以上10未満が更に好ましく、0.1〜5が特に好ましい。
【0046】
繰り返し単位(B)としては、疎水性を示す公知のものが挙げられ、特に限定されないが、担体との吸着の観点から、スチレン類、(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上の単量体に由来するものが好ましく、スチレン類に由来するものがより好ましい。
【0047】
上記スチレン類に由来する繰り返し単位としては、下記式(6)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0049】
〔式(6)中、R
11は、水素原子またはメチル基を示し、R
12は、炭素数1〜10の有機基を示し、pは0〜5の整数を示す。〕
【0050】
式(6)中、R
12で示される有機基としては、R
5で示されるものと同様のものが挙げられるが、その炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。また、親水性基がないものが好ましい。なお、斯かる有機基は、炭素数1〜3のアルコキシ基等が置換していてもよい。また、pが2〜5の整数の場合、p個のR
12は同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
また、pは0〜5の整数を示すが、0〜3が好ましく、0がより好ましい。
【0052】
スチレン類に由来する繰り返し単位の具体例としては、スチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、α―メチルスチレン等に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0053】
また、上記(メタ)アクリレート類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸C
1-10アルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸C
6-10シクロアルキル;(メタ)アクリル酸1−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸C
1-10アルコキシC
1-10アルキル;(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−(1−アダマンチルエチル)、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル等の炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、これら(メタ)アクリレート類において、上記C
1-10アルキル基としてはC
1-8アルキル基が好ましく、上記C
6-10シクロアルキル基としてはC
6-8シクロアルキル基が好ましく、上記C
1-10アルコキシ基としてはC
1-6アルコキシ基が好ましく、炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基としては、炭素数8〜12の橋かけ環炭化水素基が好ましい。
【0054】
また、上記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N,N−ジC
1-10アルキル(メタ)アクリルアミド;N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN−C
1-10アルキル(メタ)アクリルアミド;N−(1,1−ジメチル−2−アセチルエチル)(メタ)アクリルアミド等のN−C
2-10アルカノイルC
1-10アルキル(メタ)アクリルアミドの他、(メタ)アクリロイルピペリジン等が挙げられる。また、これら(メタ)アクリルアミド類において、上記C
1-10アルキル基としては、C
3-10アルキル基が好ましく、上記C
2-10アルカノイル基としては、C
2-6アルカノイル基が好ましい。
【0055】
また、繰り返し単位(B)の合計含有量の下限としては、担体との吸着の観点から、全繰り返し単位中、1モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましく、20モル%以上が更に好ましく、30モル%以上が更に好ましい。
一方、上限としては、水溶性の付与の観点から、全繰り返し単位中、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下が更に好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
なお、繰り返し単位(B)の含有量は、繰り返し単位(A)の含有量と同様にして測定すればよい。
【0056】
また、重合体に含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比〔(A):(B)〕としては、ブロッキング効果の観点から、10:1〜10:30が好ましく、10:2〜10:20がより好ましく、10:3〜10:15が更に好ましい。
【0057】
また、本発明で用いる重合体は、前記繰り返し単位(A)及び(B)以外の親水性繰り返し単位(C)を有していてもよい。斯様な親水性繰り返し単位(C)としては、アニオン性の単量体(アニオン性モノマー)、カチオン性の単量体(カチオン性モノマー)、またはノニオン性の単量体(ノニオン性モノマー)に由来するものが挙げられ、これらを1種または2種以上含んでいてもよい。
【0058】
上記アニオン性モノマーとしては、ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマー;スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸モノマーが挙げられる。
【0059】
また、カチオン性モノマーとしては、アリルアミン、アミノスチレン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩等の1〜4級アミノ基と不飽和結合を有するものが挙げられる。
【0060】
また、ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン等のヒドロキシ基を有する不飽和カルボン酸エステルモノマー;N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーが挙げられる。
【0061】
上記繰り返し単位(C)の合計含有量としては、全繰り返し単位中、0〜49モル%が好ましく、0〜20モル%がより好ましく、0〜10モル%が更に好ましく、0〜1モル%が特に好ましい。
【0062】
また、本発明で用いる重合体が共重合体である場合、その繰り返し単位の配列の態様は特に限定されず、共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0063】
また、本発明で用いる重合体の数平均分子量(M
n)としては、5000〜100万が好ましく、7000〜20万がより好ましく、1万〜15万が特に好ましい。数平均分子量を5000以上とすることにより、ブロッキング効果が向上し、一方、100万以下とすることにより、粘度が抑制され取扱いが容易になる。
また、本発明で用いる重合体の重量平均分子量(M
w)としては、5000〜500万が好ましく、7000〜100万がより好ましく、7000〜20万が更に好ましい。
また、分子量分布(M
w/M
n)としては、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜4.0がより好ましく、1.0〜3.0が更に好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。
なお、上記数平均分子量および重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0064】
また、本発明で用いる重合体としては、ブロッキング効果の観点から、水溶性のものが好ましい。ここで、本明細書において、水溶性とは、1質量%のポリマー固形分となるように重合体を水(25℃)に添加・混合したときに、目視で透明となることをいう。
また、本発明で用いる重合体としては、ノニオン性のものが好ましい。
【0065】
また、本発明で用いる重合体としては、水溶性の付与、ブロッキング効果の観点から、HLB値が10〜22の範囲であるものが好ましい。
【0066】
次に、本発明で用いる重合体の製造方法について説明する。
本発明で用いる重合体は、(1)公知の重合体の側鎖中にスルフィド基を導入し、斯かるスルフィド基をスルフィニル基に変換すること、(2)重合させたときに側鎖となる部分にスルフィド基を有するモノマーを、重合または他のモノマーと共重合させ、得られた(共)重合体のスルフィド基をスルフィニル基に変換すること、(3)或いは重合させたときに側鎖となる部分にスルフィニル基を有するモノマーを、重合または他のモノマーと共重合させること等により製造できる。
上記製造方法を、下記共重合体(N−1)の製造方法を例に挙げて具体的に説明する。
すなわち、工程1−A−1および工程1−A−2により、或いは工程1−Bまたは工程1−Cにより、共重合体(S−1)を得、これを用いて共重合体(G−1)を経て共重合体(N−1)を得る。
【0069】
(式中の各記号は前記と同義である。)
【0070】
<工程1−A−1>
工程1−A−1は、化合物(A−1−1)と化合物(B−1)とを重合開始剤の存在下で重合させ、共重合体(M−1)を得る工程である。
化合物(A−1−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、化合物(B−1)としては、前記スチレン類が挙げられ、その合計使用量としては、化合物(A−1−1)に対し、0.001〜1.5モル当量が好ましい。
【0071】
また、上記重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤;ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の過酸化物が挙げられ、これら重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
重合開始剤の合計使用量は、化合物(A−1−1)に対し、通常0.0002〜0.2質量倍程度である。
【0072】
また、工程1−A−1には溶媒、連鎖移動剤を使用してもよい。溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;1、4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられ、これら溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これら溶媒の合計使用量は、化合物(A−1−1)に対し、通常0.5〜15質量倍程度である。
また、上記連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、tert−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
【0073】
また、工程1−A−1の反応時間は特に限定されないが、通常0.5〜24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常0〜120℃程度である。
【0074】
<工程1−A−2>
工程1−A−2は、工程1−A−1で得た共重合体(M−1)の−R
2を、化合物(C−1)のグリシジル基またはオキセタニル基に対し開環付加させ、共重合体(S−1)を得る工程である。
工程1−A−2で用いる化合物(C−1)としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられ、その合計使用量としては、共重合体(M−1)中の化合物(A−1−1)に由来する繰り返し単位に対し、1.5〜10モル当量が好ましい。
【0075】
また、工程1−A−2は、触媒存在下で行うのが好ましい。触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の四級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド等の四級ホスホニウム塩が挙げられ、これら触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記触媒の合計使用量は、共重合体(M−1)中の化合物(A−1−1)に由来する繰り返し単位に対し、通常0.01〜0.2モル当量程度である。
また、工程1−A−2で好適に使用される溶媒としては、工程1−A−1と同様のものが挙げられる。
【0076】
また、工程1−A−2の反応時間は特に限定されないが、通常1〜24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常40〜200℃程度である。
【0077】
<工程1−Bおよび工程1−C>
工程1−Bおよび工程1−Cは、化合物(A−1−2)または化合物(A−1−3)と、化合物(B−1)とを重合開始剤の存在下で重合させ、共重合体(S−1)を得る工程である。
化合物(A−1−2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタニル(メタ)アクリレートが挙げられ、化合物(A−1−3)としては、ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
工程1−Bおよび工程1−Cは、上記工程1−A−1と同様にして行えばよい。
【0078】
<工程2>
工程2は、工程1−A−2、工程1−Bまたは工程1−Cで得た共重合体(S−1)のグリシジル基またはオキセタニル基に対し、−SR
4を開環付加させ、共重合体(G−1)を得る工程である。
工程2で用いるR
4SHで表される化合物としては、チオグリセロール、メルカプトエタノールが挙げられるが、親水性向上の観点から、チオグリセロールが好ましい。
上記化合物の合計使用量は、化合物(A−1−1)、(A−1−2)または(A−1−3)に由来する繰り返し単位に対し、通常0.1〜20モル当量であり、好ましくは1〜10モル当量である。
【0079】
また、工程2は、触媒存在下で行うのが好ましい。触媒としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の塩基性触媒が挙げられ、これら触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記触媒の合計使用量は、化合物(A−1−1)、(A−1−2)または(A−1−3)に由来する繰り返し単位に対し、通常0.01〜40モル当量である。
【0080】
また、工程2は、溶媒存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、工程1で使用できる溶媒の他、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、その合計使用量は、共重合体(S−1)に対し、通常0.5〜20質量倍程度である。
【0081】
また、工程2の反応時間は特に限定されないが、通常1〜8時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常40〜100℃程度である。
【0082】
なお、工程2を工程1−Bまたは工程1−Cの前に実施し、その後工程1−Bまたは工程1−Cの重合を実施してもよい。
【0083】
<工程3>
工程3は、酸化剤を用いて、工程2で得た共重合体(G−1)のスルフィド基をスルフィニル基に変換し、共重合体(N−1)を得る工程である。なお、本発明の効果が失われない範囲で、共重合体中に含まれる複数のスルフィニル基の一部がスルフィド基やスルホニル基となってもよい。
【0084】
上記酸化剤は、有機酸化剤と無機酸化剤とに大別され、有機酸化剤としては、例えば、過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸等が挙げられる。一方、無機酸化剤としては、例えば、過酸化水素、クロム酸、過マンガン酸塩等が挙げられる。なお、これら酸化剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、酸化剤の使用量は、化合物(A−1−1)、(A−1−2)または(A−1−3)に由来する繰り返し単位に対し、通常1.0〜10.0モル当量程度である。
【0085】
工程3は、溶媒存在下で行うのが好ましい。斯かる溶媒としては、水;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられ、これら溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できるが、水、アルコール系溶媒が好ましい。
上記溶媒の合計使用量は、共重合体(G−1)に対し、通常1〜20質量倍程度である。
【0086】
また、工程3の反応時間は特に限定されないが、通常1〜24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常25〜70℃程度である。
【0087】
なお、前記各工程において、各反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、再沈殿、透析、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
【0088】
そして、後記実施例に示すように、上記のようにして得られるスルフィニル基を側鎖に有する繰り返し単位を有する重合体で、検体中の標的物質に対する抗原または抗体が固定化された担体をコーティングすることによって、担体に対する非特異吸着によるノイズが著しく低減される。また、増感剤が引き起こすノイズも低減可能である。
したがって、上記重合体は、ブロッキング剤として有用であり、ブロッキング方法に使用することができる。
そして、斯かる重合体は、ブロッキング剤としてそのまま使用してもよく、ブロッキング剤を製造するための素材として使用することもできる。また、本発明のブロッキング剤は、溶媒への溶解性が良好なため取扱いが容易であり、経時劣化しにくく保存安定性にも優れる。
【0089】
ここで、本明細書において、ブロッキングとは、体外診断において、検体中の標的物質と該標的物質に対する抗原または抗体との抗原抗体反応以外に起因する非特異的な吸着を防止すること、また上記非特異的な吸着による担体の凝集の発生を防ぐことをいう。なお、検体中の標的物質が標的物質に対する抗原または抗体を介さずに担体に吸着すると測定値の異常が発生することがあり、それを防ぐことも含む。
上記体外診断としては、ラテックス凝集法、ELISA法、化学発光法、免疫比濁法(TIA)法、放射免疫測定(RIA)、イムノクロマトグラフィー等による診断が挙げられるが、本発明のブロッキング剤は、ラテックス凝集法における上記非特異的な吸着による担体の凝集の防止に特に有用である。
なお、ラテックス凝集とは、抗体(または抗原)が結合したラテックス粒子と、検体中の標的物質である抗原(または抗体)とが結合し、2粒子以上の凝集体を形成することをいう。
また、検体としては、通常、血清や血漿、尿、唾液等の各種生物学的液体サンプル、糞便や食品の検体粉砕物等が挙げられる。測定サンプルとして、pH緩衝液、タンパク質、アミノ酸等で検体を希釈した検体希釈液を用いてよい。また、斯かる検体に含まれる標的物質は、通常、レセプター、酵素、血中タンパク、感染症関連抗原、微生物、ウイルス、ホルモン、環境関係物質(例えば、環境ホルモン等)等の抗原や、これら抗原に対する抗体等であり、該抗体は、特定の抗原に対する結合性を有すればよく、抗体のフラグメントも含まれる。
【0090】
また、本発明のブロッキング剤中、上記重合体の含有量としては、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。斯様な低濃度であっても優れたブロッキング効果を奏する。
【0091】
本発明のブロッキング剤は上記重合体の他に溶剤、本発明の重合体以外のブロッキング剤を含んでいてもよく、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせてもよい。
上記溶剤としては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル;ジメチルホルムアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド等が挙げられる。また、上記ブロッキング剤は、牛血清アルブミン(BSA)等の生体由来の水溶性ポリマー、化学合成により得られた水溶性ポリマーのいずれでもよい。
【0092】
〔固定化された担体〕
本発明の標的物質に対する抗原または抗体が固定化された担体は、スルフィニル基を側鎖に有する繰り返し単位を有する重合体で一部または全部がコーティングされていることを特徴とするものである。
上記担体は特に限定されないが、ラテックス粒子、金ナノ粒子、ELISA用プレート、イムノクロマトグラフィー用メンブレン等が挙げられる。この中でも、ラテックス粒子が好ましい。本発明の固定化された担体は、ラテックス凝集法による検体中の標的物質の検出に特に有用である。
上記ラテックス粒子としては、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロプル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライド4級塩、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリセロール(メタ)クリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;アクロレイン等の不飽和アルデヒド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸化合物または不飽和無水カルボン酸化合物;スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸化合物;スチレン、アミノスチレン等のスチレン化合物の他、アリルアミン、N−ビニル−2−ピロリドン等のモノマーから誘導されるポリマーの粒子が挙げられる。斯様なポリマー粒子の中でも、スチレン化合物と不飽和カルボン酸化合物との共重合体であるものが好ましく、スチレンと、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸から選ばれる不飽和カルボン酸化合物との共重合体であるものがより好ましい。
また、上記担体の平均粒子径は、好ましくは0.01〜1μmである。
【0093】
また、上記標的物質に対する抗原または抗体としては、上記抗原や抗体と同様のものが挙げられる。
【0094】
また、標的物質に対する抗原または抗体を担体に固定化する方法は、疎水−疎水相互作用による物理吸着、水溶性カルボジイミド系縮合剤を用いた化学的結合等の常法に従って両者を接触させればよい。
具体的な方法としては、(1)本発明で用いる重合体を含有する溶液に担体を接触させ、分散媒を残したまま溶液中で上記重合体を担体表面に物理吸着させる方法、(2)本発明で用いる重合体を含有する溶液に担体を接触させた後、分散媒を除去し、上記重合体の乾燥膜を担体表面に形成させる方法等が挙げられる。さらに具体的には、本発明で用いる重合体を含む溶液中に担体を分散させた後、遠心分離を行い、上澄み液を除去し再度担体を水または緩衝液により再分散させることが挙げられる。
【0095】
また、上記重合体は、担体100質量部に対し、0.01〜1000質量部使用するのが好ましく、0.1〜500質量部使用するのがより好ましい。
また、コーティングするときの上記重合体の溶液中の濃度としては、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。斯様な低濃度であっても優れたブロッキング効果を奏する。
【0096】
〔試薬〕
本発明の体外診断による検体中の標的物質の検出に用いるための試薬は、上記固定化された担体を含有することを特徴とするものである。本発明の試薬中、本発明の固定化された担体の含有量は、0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。
本発明の試薬は上記固定化された担体の他に、溶剤、本発明の重合体以外のブロッキング剤を含んでいてもよく、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。本発明の重合体以外のブロッキング剤は上記と同様であるが、溶剤は、上記本発明のブロッキング剤に含まれていてもよい溶剤の他、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、グッド緩衝液、トリス緩衝液、アンモニア緩衝液等の各種緩衝液が挙げられる。
なお、本発明の試薬はラテックス凝集法による検体中の標的物質の検出に特に有用である。
【0097】
〔キット〕
本発明の体外診断による検体中の標的物質の検出に用いるためのキットは、上記試薬を少なくとも備えることを特徴とするものである。
本発明のキットとしては、上記本発明の固定化された担体を含有する試薬(第2試薬とも称する)に加えて、アルブミンを含有する反応緩衝液(第1試薬とも称する)を更に備えるものが好ましい。
上記アルブミンとしては血清アルブミン等が挙げられ、プロテアーゼ処理されていてもよい。第1試薬中のアルブミンの含有量は、通常、0.001〜5質量%である。
上記第1試薬は、溶剤、ラテックス凝集測定用増感剤を含んでいてもよい。該溶剤としては水性媒体が挙げられる。該水性媒体としては、上記各種緩衝液が挙げられる。
また、上記ラテックス凝集測定用増感剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
また、本発明のキットは、上記第1試薬及び第2試薬の他に、陽性コントロール、陰性コントロール、血清希釈液等を備えていてもよい。陽性コントロール、陰性コントロールの媒体は、測定しうる標的物質が含まれていない血清、生理食塩水のほか、溶剤でもよい。該溶剤としては、上記水性媒体が挙げられる。
【0098】
本発明のキットは、通常の体外診断による検体中の標的物質の検出に用いるためのキットと同様にして、本発明の標的物質の検出方法に使用できる。また、常法に従い標的物質の濃度も測定できる。特に、ラテックス凝集法による検体中の標的物質の検出に有用である。
【0099】
〔標的物質の検出方法〕
本発明の体外診断による検体中の標的物質の検出方法は、上記固定化された担体と、標的物質を含む可能性のある検体とを混合することを特徴とするものである。
【0100】
また、上記担体と検体との混合は、pH4.0〜10の範囲で行うのが好ましい。また、混合温度は通常25〜45℃の範囲であり、混合時間は通常1〜20分である。
また、本検出方法は、溶剤を使用するのが好ましい。溶剤は本発明の試薬が含有していてもよいものと同様である。
また、本発明の固定化された担体の濃度としては、反応系中、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
【0101】
そして、上記担体と検体との混合の結果として生じる凝集反応を光学的に検出することで、検体中の標的物質が検出され、更に標的物質の濃度も測定できる。凝集反応の光学的な検出は、散乱光強度、透過光強度、吸光度等を検出できる光学機器を用いて常法に従い行えばよい。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0103】
実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
<分子量測定>
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、東ソー社製 TSKgel α−Mカラムを用い、流量:0.5ミリリットル/分、溶出溶媒:NMP溶媒(H
3PO
4:0.016M、LiBr:0.030M)、カラム温度:40℃の分析条件で、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
<NMRスペクトル>
13C−NMRスペクトルは、溶媒および内部標準物質としてd6−DMSOを用いて、BRUKER製モデルAVANCE500(500MHz)により測定した。
【0104】
実施例1 共重合体(N−1−1)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−1)を得た。
【0105】
【化9】
【0106】
グリシジルメタクリレート113gおよびスチレン113gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)6.8gと、N,N−ジメチルホルムアミド475gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。この溶液をメタノールによる再沈殿で精製し、減圧乾燥することで共重合体(S−1−1)を得た。
得られた共重合体(S−1−1)において、グリシジルメタクリレートに由来する繰り返し単位の含有量は48モル%であり、スチレンに由来する繰り返し単位の含有量は52モル%であった。なお、これら含有量は
13C−NMRにより測定した。
【0107】
次いで、得られた共重合体(S−1−1)10gおよびチオグリセロール32.1gと、N,N−ジメチルホルムアミド95gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン120gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−1)を得た。
次いで、得られた共重合体(G−1−1)10gを85.5gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を4.5g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−1)を得た(収率:13%)。この共重合体(N−1−1)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−1)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−1)の数平均分子量は19000であり、重量平均分子量は30000であり、分子量分布は1.59であった。
共重合体(N−1−1)の構造は
13C−NMRで確認した。
【0108】
実施例2 共重合体(N−1−2)の合成
上記実施例1と同様の合成経路で共重合体(N−1−2)を得た。
グリシジルメタクリレート170gおよびスチレン56.8gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)6.8gと、N,N−ジメチルホルムアミド475gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。この溶液をメタノールによる再沈殿で精製し、減圧乾燥することで共重合体(S−1−2)を得た。
得られた共重合体(S−1−2)において、グリシジルメタクリレートに由来する繰り返し単位の含有量は67モル%であり、スチレンに由来する繰り返し単位の含有量は33モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0109】
次いで、得られた共重合体(S−1−2)10gおよびチオグリセロール44.7gと、N,N−ジメチルホルムアミド95gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン167gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−2)を得た。
【0110】
次いで、得られた共重合体(G−1−2)10gを84.4gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を5.6g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−2)を得た(収率:18%)。この共重合体(N−1−2)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−2)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−2)の数平均分子量は31000であり、重量平均分子量は56000であり、分子量分布は1.81であった。
共重合体(N−1−2)の構造は
13C−NMRで確認した。
【0111】
実施例3 共重合体(N−1−3)の合成
上記実施例1と同様の合成経路で共重合体(N−1−3)を得た。
グリシジルメタクリレート170gおよびスチレン56.8gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)2.27gと、酢酸エチル450gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。この溶液をメタノールによる再沈殿で精製し、減圧乾燥することで共重合体(S−1−3)を得た。
得られた共重合体(S−1−3)において、グリシジルメタクリレートに由来する繰り返し単位の含有量は67モル%であり、スチレンに由来する繰り返し単位の含有量は33モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0112】
次いで、得られた共重合体(S−1−3)10gおよびチオグリセロール44.7gと、N,N−ジメチルホルムアミド95gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン167gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−3)を得た。
【0113】
次いで、得られた共重合体(G−1−3)10gを84.4gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を5.6g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−3)を得た(収率:15%)。この共重合体(N−1−3)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−3)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−3)の数平均分子量は33000であり、重量平均分子量は60000であり、分子量分布は1.82であった。
共重合体(N−1−3)の構造は
13C−NMRで確認した。
【0114】
上記実施例1〜3で得た共重合体(N−1−1)〜(N−1−3)のHLB値(小田式)を以下の表1に示す。なお、共重合体(N−1−1)〜(N−1−3)が有する繰り返し単位(A)からなるホモポリマーを合成し、1gを純水100gに添加したところ常温(25℃)で溶解した。また、共重合体(N−1−1)〜(N−1−3)が有する繰り返し単位(B)からなるホモポリマーを合成し、1gを純水100gに添加したところ常温(25℃)で溶解しきらなかった。
【0115】
【表1】
【0116】
実施例4 標的物質検出用試薬の調製(1)
免疫診断用ラテックス粒子(品番:G0305(平均粒子径:0.31μm、表面COOH基の含有量:0.21mmol/g−LTx、JSR株式会社製))の10質量%水溶液1mLと、HEPES緩衝液(0.05M、pH7.5)9mLとを混合し(粒子の濃度=1質量%)、これに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(同仁化学社製)を、最終濃度が0.05質量%となるように添加した。更に、この粒子分散液に、抗CRP(C反応性蛋白)抗体(ウサギ)の10mg/mL水溶液を0.5mL加えて室温で3時間攪拌し、抗体を粒子の表面に固定化させた。
その後、この粒子分散液に共重合体(N−1−1)の0.5質量%水溶液を0.5mL加え、室温で10時間ゆっくり回転攪拌し、これを15,000rpmにて15分間遠心分離し、粒子を沈殿として回収した。
次いで、HEPES緩衝液(0.05M、pH7.5)10mLに上記粒子を再懸濁させ、超音波で10分間分散させた。この再懸濁および分散の操作をもう一度繰り返した後、粒子分散液に0.02質量%牛血清アルブミン(BSA)含有10mM HEPES緩衝液(pH7.5)を200mL加えて粒子固形分が0.05質量%となるように調整し、超音波で10分間分散させ、0.8μmディスクフィルターに通した。
これら一連の操作により、共重合体(N−1−1)でコーティングされた抗体固定化ラテックス粒子の分散液(第2試薬)を得た。
【0117】
実施例5 標的物質検出用試薬の調製(2)
実施例4において、共重合体(N−1−1)の代わりに共重合体(N−1−2)を用いた以外は実施例4と同様の操作で抗体固定化ラテックス粒子の分散液を得た。
【0118】
実施例6 標的物質検出用試薬の調製(3)
実施例4において、共重合体(N−1−1)の代わりに共重合体(N−1−3)を用いた以外は実施例4と同様の操作で抗体固定化ラテックス粒子の分散液を得た。
【0119】
比較例1
実施例4において、共重合体(N−1−1)の0.5質量%水溶液の添加を行わなかった以外は実施例4と同様の操作で抗体固定化ラテックス粒子の分散液を得た。
【0120】
比較例2
実施例4において、共重合体(N−1−1)の代わりに牛血清アルブミン(BSA)を用いた以外は実施例4と同様の操作で抗体固定化ラテックス粒子の分散液を得た。
【0121】
試験例1 ブロッキング効果評価試験(1)
プラスチック製の透明セルに、3μLの生理食塩水と150μLの第1試薬(0.1質量%牛血清アルブミン水溶液と1.0質量%ポリビニルアルコール(分子量2万)を含有する10mM HEPES緩衝液(pH7.5))を加えて均一攪拌した後、5分間保持した。
次いで、実施例4〜6及び比較例1〜2で調製した分散液(第2試薬)150μLをそれぞれセルに加えて均一攪拌した後、50秒経過時の吸光度と200秒経過時の吸光度との差を、日立7180型自動分析装置(使用波長570nmおよび測定温度37℃)を用いて計測した。結果を表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
試験例2 ブロッキング効果評価試験(2)
まず、生理食塩水の代わりに、濃度が異なりかつ濃度既知である5種のCRP抗原生理食塩水溶液をそれぞれ用いた以外は試験例1と同様にして吸光度の差を計測し、得られた吸光度の差とCRP抗原濃度の関係から検量線を作成した。
次に、生理食塩水の代わりに、あらかじめ別法で濃度が正確に測定されている(これら濃度をそれぞれ抗原濃度Xとする)50人分のCRP濃度既知の検体をそれぞれ用いた以外は試験例1と同様にして吸光度の差を計測し、得られた吸光度の差から上記で作成した検量線を使用してCRP抗原濃度を算出した(これら算出抗原濃度をそれぞれ抗原濃度Yとする)。
そして、各CRP抗原濃度XをX軸に、各CRP抗原濃度YをY軸にそれぞれプロットし、この関数について相関係数R
2を求めた。結果を表3に示す。
なお、相関係数R
2の値が1に近いほど、検体に含まれている成分が原因となる過剰な凝集の影響が少なくブロッキング効果が優れていることを意味する。
【0124】
【表3】
【0125】
試験例1および2の結果から、本発明のブロッキング剤は、優れたノイズ低減効果を有することがわかる。