(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のバンドには、前記腕時計ケースのケース裏面の少なくとも一部を覆うとともに前記腕時計における6時側から前記腕時計における12時側に向かって厚みを増すように傾斜する傾斜部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンド。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1から
図4を参照しつつ、本発明に係るバンド取付構造の第1の実施形態を説明する。なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
図1は、本実施形態におけるバンド取付構造が適用された腕時計の側面図である。
図1に示すように、本実施形態において、腕時計1は、腕時計ケース2と、この腕時計ケース2に取り付けられたバンド3とを備えている。
【0013】
図示は省略するが、腕時計ケース2は、例えば、中空の短柱形状に形成され、内部に、表示装置やこの表示装置等を動作させるための各種電子部品等が搭載された時計モジュール等が収容されたケース枠体を備えている。なお、表示装置は、指針や文字板等を備えるアナログ式のものでもよいし、液晶パネルや有機EL(Electro-Luminescence)等で構成されたデジタル式のものでもよい。また、表示装置は、アナログ式のものとデジタル式のものとが組み合わされたものであってもよい。
ケース枠体の側部外周には、後述する第2のバンド3bの腕時計ケース2への取付側端部と一体化された外周部24が設けられている。外周部24は、第2のバンド3bと同じポリウレタン等の各種樹脂材料で形成されており、腕時計ケース2の側部外周を構成している。
このケース枠体の上部(
図1において上部)には、透明なガラス等で形成された風防部材(図示せず)が取り付けられている。
また、ケース枠体の下面(
図1において下面)には、裏蓋5が取り付けられている。
【0014】
なお、腕時計ケース2の形状は図示例に限定されない。また、腕時計ケース2の構成は、ここに例示したものに限定されず、例えば、ケース枠体と裏蓋5とが一体となった構成でもよい。また、表示装置が液晶パネル等を備えるデジタル式のものである場合には、表示装置を構成するガラス等が風防部材を兼ねていてもよい。
ケース枠体及び裏蓋5は、例えば各種樹脂材料や、ステンレス、チタニウム等の金属材料、セラミックス等、又はこれらの組み合せで形成されている。なお、ケース枠体及び裏蓋5を形成する材料は例示したものに限定されない。
なお、図示は省略するが、腕時計ケース2の上面や側部外周に、時刻合わせ等、種々の操作を行うための操作ボタンが設けられていてもよい。
【0015】
図2は、腕時計を裏面側(
図1において下面)から見た図であり、バンド部分を断面にしたものである。また、
図3は、腕時計の腕時計ケース及び第2のバンドを示す斜視図である。
図1及び
図3に示すように、本実施形態において、裏蓋5は、厚みを持った中実の板状部材であり、裏蓋5の内部であって、腕時計1の幅方向(
図2における縦方向)のほぼ中央部には、腕時計1における12時側(
図1から
図3における左側)から腕時計1における6時側(
図1から
図3における右側)に向かって、裏蓋5の長さ方向(
図2における横方向)のほぼ半分程度まで延在する案内溝51が形成されている。案内溝51は、後述するスライド移動部321の移動部本体321aの幅より僅かに大きく、案内溝51の内部を移動部本体321aが移動可能となっている。なお、案内溝51の長さはここに例示したものに限定されず、これよりも短くてもよいし、裏蓋5の長さ方向の全体に亘っていてもよい。
図3に示すように、案内溝51は、裏蓋5の腕時計1における12時側の側端面において開口している。
また、裏蓋5の裏面であって腕時計1の幅方向(
図2における縦方向)のほぼ中央部には、案内溝51に通じるスリット52が案内溝51に沿って形成されている。スリット52の幅は、後述するスライド移動部321の移動部本体321aの幅よりも小さく、脚部321bの幅よりも大きくなっている。
【0016】
また、
図2に示すように、裏蓋5の裏面(
図1において下面)には、スリット52とほぼ平行して複数の歯53aが列状に形成された鋸歯状歯列53がスリット52の両側にそれぞれ設けられている。鋸歯状歯列53の歯53aには、後述する第1のバンド3aの係止爪322aが咬合されるようになっている。
図1に示すように、本実施形態では、歯53aは、腕時計1における12時側の斜面の方が腕時計1における6時側の斜面よりも傾斜が緩やかとなっており、係止爪322aは、腕時計1における12時側から6時側には歯53aを乗り越えながら前進できるが、腕時計1における6時側から12時側には歯53aに係止されて後退できないようになっている。
このように、本実施形態では、この鋸歯状歯列53と後述する第1のバンド3aの係止部322とにより、腕時計1における12時側と6時側との間でのスライド移動可能に構成されているバンド3(本実施形態では、第1のバンド3a)の移動を一方向に制限するラチェット機構が構成されている。
鋸歯状歯列53の歯53aは、後述するツク棒孔301の間隔よりも狭い間隔(例えば1mm程度)で配置されている。このため、このラチェット機構により、バンド長を歯53a1つ分ずつ段階的に制限することが可能であり、尾錠310を留めることによるバンド長の調整よりも細かい微調整を行うことができるようになっている。
【0017】
腕時計ケース2の上下(
図1における左右)の両端部、すなわち腕時計の12時側(腕時計を腕に装着して表示部分を見たときにユーザから見て奥側となる側、
図1における左側)の端部及び6時側(腕時計を腕に装着して表示部分を見たときにユーザから見て手前側となる側、
図1における右側)の端部には、バンド3が配置されている。
本実施形態では、腕時計1における12時側に第1のバンド3aが配置され、腕時計1における6時側に第2のバンド3bが配置されている。
バンド3(第1のバンド3a及び第2のバンド3b)は、例えば、ポリウレタン等の各種樹脂材料で形成されている。なお、バンド3を形成する材料は例示したものに限定されない。例えば、ステンレス、チタニウム等の金属材料、セラミックス等、又はこれらの組み合せやこれらと各種樹脂材料との組み合せで形成されてもよい。
【0018】
図1及び
図2に示すように、腕時計1における6時側に配置されている第2のバンド3bは、前述のように、腕時計ケース2への取付側端部が腕時計ケース2の側部外周を構成する外周部24と一体化されており、第2のバンド3bは、腕時計ケース2の側部から外側に向かって延出している。本実施形態では、第2のバンド3bは、腕時計ケース2に対して裏面側(
図1において下方)に30度程度傾くように角度をもつように形成されている。これにより、第2のバンド3bは、腕時計ケース2の裏面側斜め下方に延垂するようになっている。なお、第2のバンド3bの腕時計ケース2に対する角度はここに例示したものに限定されない。腕時計ケース2に対して第2のバンド3bがさらに大きな角度をもっていてもよいし、腕時計ケース2の底面(ケース裏面)に対して第2のバンド3bがほぼ平行に設けられていてもよい。
なお、第2のバンド3bは、その腕時計ケース2への取付側端部が腕時計ケース2の側部外周を構成する外周部24と一体化されているものに限定されない。第2のバンド3bを腕時計ケース2に取り付ける構成は、例えば、腕時計ケース2の6時側の端部に第2のバンド3bを取り付けるためのバンド取付部を設け、第2のバンド3bの取付側端部に、このバンド取付部に対応するケース取付部を設けて、このバンド取付部とケース取付部とを嵌め合わせて連結させ、この連結部分にばね棒等の棒状部材を挿通させることで第2のバンド3bを腕時計ケース2に取り付ける等の構成であってもよい。
第2のバンド3bには、後述する第1のバンド3aのツク棒312が係止されるツク棒孔301がほぼ一定の間隔で複数設けられている。
【0019】
腕時計1の12時側に配置される第1のバンド3aは、腕時計ケース2のケース裏面(本実施形態では裏蓋5)に取り付けられている。このように一対のバンド3のうち第1のバンド3aのみが腕時計ケース2のケース裏面に取り付けられることにより、腕時計ケース2の厚みが、腕時計1の6時側における厚みよりも腕時計1の12時側における厚みの方が第1のバンド3aの厚み分だけ厚くなっている。
【0020】
図4は、本実施形態における第1のバンド3aを示す斜視図である。
図4に示すように、第1のバンド3aは、バンド本体31と、このバンド本体31における腕時計ケース2への取付側端部に設けられたケース取付部32と、を有している。バンド本体31には、腕時計ケース2への取付側とは反対側の端部に、カサ311とツク棒312とを備える尾錠310が取り付けられている。
なお、第1のバンド3aは、第2のバンド3bの先端部(剣先)が挿入される定革、遊革を備えていることが好ましいが、
図4では、定革、遊革の図示を省略している。
【0021】
本実施形態において、ケース取付部32は、裏蓋5の案内溝51に沿って案内されるスライド移動部321と、裏蓋5の鋸歯状歯列53と咬合し鋸歯状歯列53とともにラチェット機構を構成する係止部322とを備えている。
スライド移動部321は、裏蓋5の案内溝51内に挿入される移動部本体321aと、この移動部本体を支持する脚部321bとで構成されている。
スライド移動部321の脚部321bの幅は、裏蓋5に形成されたスリット52の幅よりも小さく形成されている。これにより、脚部321bはスリット52の間をスライド移動可能となっている。また、移動部本体321aの幅は、スリット52の幅よりも大きく形成されており、その幅及び高さは、案内溝51の幅及び高さよりも小さく形成されている。これにより、移動部本体321aは、案内溝51内をスライド移動可能であるとともに、スリット52から抜け落ちないようになっている。
また、係止部322は、鋸歯状歯列53の歯53aに咬合される係止爪322aと、この係止爪322aを支持するアーム部322bとで構成されている。係止部322は、裏蓋5に形成されている鋸歯状歯列53に対応して、スライド移動部321の両側に一対設けられている。
ケース取付部32のスライド移動部321及び係止部322は、挿入部材33を介してバンド本体31に取り付けられている。
【0022】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、バンド本体31における腕時計ケース2への取付側端部の内部には、ケース取付部32をバンド本体31に固定するための挿入部材33が挿入されている。挿入部材33は、例えばステンレス等の金属材料で形成されており、バンド本体31にビス止めや接着等により固定されている(
図2参照)。
挿入部材33の自由端側には、第1のバンド3aの幅方向に延在する支持軸34が取り付けられており、この支持軸34の長手方向のほぼ中央部には、スライド移動部321の脚部321bが、支持軸34の軸周りに回動自在となるように支持されている。
また、支持軸34における脚部321bの取り付け位置の両側部には、係止部322のアーム部322bがそれぞれ固定されている。なお、係止部322は挿入部材33又は支持軸34と一体的に構成されていてもよい。
【0023】
本実施形態では、ケース取付部32におけるスライド移動部321の移動部本体321aが腕時計ケース2のケース裏面である裏蓋5の案内溝51内に挿入され、案内溝51内をスライドすることによって、第1のバンド3aが腕時計1における12時側と6時側との間でスライド移動可能となっている。
また、裏蓋5に形成されている鋸歯状歯列53と、この鋸歯状歯列53の歯53aに咬合される係止爪322aを備える係止部322とによって、第1のバンド3aのスライド移動を制限して第1のバンド3aを固定し所定のスライド位置に調整する
スライド位置調整部としてのスライド位置調整機構50が構成されている。本実施形態では前述のように、スライド位置調整機構50はラチェット機構を備えており、第1のバンド3aのスライド移動は腕時計1における12時側から6時側への移動に制限される。
【0024】
また、本実施形態において、係止部322は、
図1及び
図4に示すように、バンド本体31の表面(腕時計1を腕に装着した際に外側となる面)に対してバンド3の裏面側に30度程度傾くように角度をもって形成されている。これにより、腕時計1を腕に装着し、バンド本体31が腕時計ケース2の裏面側斜め下方に延垂した状態(
図1において実線で示した状態)において、係止爪322aが鋸歯状歯列53の歯53aに咬合される。この状態において、第1のバンド3aは、腕時計1における6時方向にはスライド移動可能であるが、12時方向へのスライド移動は制限された状態となる。また、腕時計1を腕から外す際等に、第1のバンド3aを支持軸34を中心として上方向に回動させた状態(
図1において二点鎖線で示した状態)では、係止爪322aと歯53aとの咬合が解除されて、第1のバンド3aの腕時計1における12時方向へのスライド移動が自由に行える状態となる。
なお、係止部322のバンド本体31に対する角度はここに例示したものに限定されない。バンド本体31に対して係止部322がさらに大きな角度をもっていてもよいし、バンド本体31に対して係止部322が傾きをつけずに設けられていてもよい。
【0025】
なお、ケース取付部32のスライド移動部321の大きさや形状、係止部322の形状や大きさ、裏蓋5に設けられる案内溝51、スリット52の大きさ形状、鋸歯状歯列53の形状や大きさ等は、ここに示した図示例に限定されず、腕時計1のサイズや形状等に応じて適宜決定される。
【0026】
次に、本実施形態におけるバンド取付構造の作用について説明する。
本実施形態において、腕時計1における12時側に配置される第1のバンド3aを取り付ける際には、スライド移動部321の脚部321bをスリット52に通すとともに、移動部本体321aを案内溝51内に挿入し、移動部本体321aが案内溝51から外れない程度の位置までスライド移動させる。これにより、バンド3の取り付けが完了する。
腕時計1を腕に装着する際には、このようなバンド取付が完了した状態で、腕時計1を腕に巻きつけ、尾錠310のツク棒312を、第2のバンド3bのツク棒孔301のうち適度に腕に馴染むものに係止する。
尾錠310によりバンド3を留めた後、腕時計1が腕から浮いている等、バンド3が若干緩いと感じられる場合には、腕時計1が適度に腕にフィットする位置まで、第1のバンド3aの腕時計ケース2への取り付け側を、腕時計ケース2の12時側から6時側に向かって押し込む。これにより、移動部本体321aが案内溝51に沿って腕時計1の6時側にスライド移動する。このとき、係止部322の係止爪322aも、鋸歯状歯列53の歯53aを乗り越えながら腕時計1の6時側に移動する。また、係止爪322aが6時側から歯53aに咬合することにより、第1のバンド3aの逆方向(すなわち腕時計1の12時側)への移動が制限され、一旦押し込まれた第1のバンド3aが逆方向に戻らないように位置が保持される。これにより、バンド長の微調整が完了する。
腕時計1を外す際は、尾錠310のツク棒312をツク棒孔301から外すだけで、第1のバンド3aを移動させずに外すことができる。
また、第1のバンド3aを腕時計1の12時側(バンド3を緩める方向)に移動させたり、第1のバンド3aを腕時計ケース2から外す場合には、第1のバンド3aを支持軸34を中心として上方向(
図1において上方向)に回動させる。これにより、係止爪322aと歯53aとの咬合が解除されて、第1のバンド3aの腕時計1における12時方向へのスライド移動を自由に行うことができる状態となる。
また、本実施形態では、第1のバンド3aを腕時計ケース2から完全に取り外すことができる(
図3及び
図4参照)。このため、第1のバンド3aを腕時計ケース2のケース裏面の面内方向に180度反転させた向き(すなわち、尾錠310が設けられている側が腕時計1の6時側に位置する向き)にして腕時計ケース2に取り付けることも可能である。なお、図示は省略するが、腕時計ケース2の裏面等に係止部を設けて、第1のバンド3aを180度反転させた向きで取り付ける場合には、バンドの抜け落ちを防ぐために、第1のバンド3aをこの係止部に係止させることが好ましい。これにより、第1のバンド3aと第2のバンド3bとを同じ方向に揃えることができ、尾錠310等をキーホルダ等に引っ掛けて容易に持ち歩くことが可能となる。また、第1のバンド3aと第2のバンド3bとが同じ向きに揃い、重なり合った状態では、バンド3がかさばらず腕時計1をポケット等に収納しやすくなる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、第1のバンド3aが、腕時計1における12時側と6時側との間でスライド移動できるように、腕時計ケース2のケース裏面である裏蓋5に取り付けられている。
バンド3が腕時計ケース2の側部に設けられている場合、腕時計ケース2が腕の太さに対して大きい場合には、腕に装着した際に、腕時計ケース2に対してバンド3が直角に近い角度をもつ。このため、腕時計ケース2とバンド3との連結部分において腕との間に大きく隙間が開き、バンド3等が腕にフィットせず、装着性が悪くなりやすい。この点、バンド3のうちいずれか一方でも腕時計ケース2のケース裏面に取り付けた場合には、腕時計ケース2の大きさに関わらずバンド3が腕に沿って馴染みやすく、装着性が向上する。
また、第1のバンド3aが腕時計1の12時側に取り付けられていることにより、腕時計1の12時側における腕時計ケース2の厚みが第1のバンド3aの厚み分だけ厚くなる。このため、腕時計1の12時側へのバンド3の回転(ずれ)を抑止して、腕時計1が外側にずれるのを防止することができる。
そして、ケース裏面(本実施形態では裏蓋5)に取り付けられている第1のバンド3aがスライド移動可能に構成されていることにより、腕時計ケース2のケース裏面において、簡易にバンド長の調整を行うことができる。このようにケース裏面でバンド長の調整ができることにより、細い腕に腕時計1を装着する場合でもバンド3が腕から浮きにくく、フィット感が向上する。
また、スライド移動可能に構成されている第1のバンド3aを固定し所定のスライド位置に調整するスライド位置調整機構50を備えている。このため、第1のバンド3aの位置(長さ)は、ケース裏面で調整された状態のまま維持され、一旦バンド長の調整を行えば、腕時計1を使用するうちにバンドが緩んでくることもない。
さらに、スライド位置調整機構50は、スライド移動可能に構成されているバンド(本実施形態では第1のバンド3a)の移動を一方向(本実施形態では腕時計1の12時側から6時側への移動)に制限するラチェット機構を備えている。このため、腕時計における12時側から6時側へは自由に移動できるとともに、逆方向への移動は制限されるため、ユーザが特にバンド3を係止する操作等を行うことなく、一旦調整されたバンド長を維持することができる。
また、本実施形態では、バンド3を外す際等に第1のバンド3aを押し拡げ、上方向に回動させる動作をするだけで歯53aに係止された係止爪322aが外れて第1のバンド3aが腕時計における12時側にスライド移動可能となる。このため、腕時計を外そうとする動作をするだけで簡易に第1のバンド3aを自由に移動させることができ、便利である。
そして、鋸歯状歯列53を構成する歯53aの間隔は、ツク棒孔301の間隔よりも狭い。このため、ツク棒312を係止するツク棒孔301を1つずらすよりも細かい幅で、歯53a1つ分ずつ段階的にバンド長を微調整することができる。これにより、浮腫み等により腕の太さが微妙に変化した場合でも、ツク棒312を係止するツク棒孔301を変えることなく、第1のバンド3aをスライド移動させて係止爪322aを咬合させる歯53aを変えるだけで、簡易に腕の太さの微細な変化に対応することができる。
また、このようにケース裏面においてバンド長を微調整することができることにより、例えば腕時計1を装着して運動する場合のように、腕が大きく振られるような使用状況の下でもバンド3がずれないように、バンド3をユーザに合った適切な長さに調整して、表示部分が常に見やすい位置にあるように腕時計1の姿勢を維持することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、スライド移動部321をバンド3の幅方向のほぼ中央部に1つ設け、スライド位置調整機構50を構成する係止部322をこのスライド移動部321の両側部に一対設ける構成を例としたが、スライド移動部321及び係止部322の構成は、ここに例示したものに限定されない。
例えば、バンド3の幅方向のほぼ中央部にスライド位置調整機構50を構成する係止部を1つ設け、この係止部の両側部にスライド移動部を一対設ける構成としてもよいし、スライド移動部及び係止部をそれぞれ1つずつ設けてもよい。この場合には、ケース裏面である裏蓋5に設けられる案内溝、スリット、鋸歯状歯列も第1のバンド3aに設けられたスライド移動部及び係止部に対応する位置に配置される。
【0029】
また、本実施形態では、スライド位置調整機構50が、スライド移動可能に構成されているバンド(本実施形態では第1のバンド3a)の移動を一方向(本実施形態では腕時計1の12時側から6時側への移動)に制限するラチェット機構を備えている場合を例としたが、スライド位置調整機構50は第1のバンド3aを固定して所定のスライド位置に調整するものであればよく、ラチェット機構を備えているものに限定されない。
【0030】
[第2の実施の形態]
次に、
図5から
図9を参照しつつ、本発明に係るバンド取付構造の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、第1のバンドを腕時計ケースのケース裏面に取り付ける構成のみが第1の実施形態と異なるものであるため、以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0031】
図5は、本実施形態におけるバンド取付構造が適用された腕時計の側面図であり、
図6は、腕時計を裏面側(
図5において下面)から見た図であり、バンド部分を断面にしたものである。また、
図7は、腕時計の腕時計ケース及び第2のバンドと第1のバンドを示す分解斜視図である。
る。
図5から
図7に示すように、本実施形態において、裏蓋6の裏面であって腕時計ケース2の幅方向(
図6における縦方向)のほぼ中央部には、腕時計ケース2の長さ方向(
図6における横方向)に延在して、第1のバンド3cを係止するバンド係止部61が設けられている。
バンド係止部61は、裏蓋6の裏面とほぼ平行に、裏蓋6の裏面との間に僅かな隙間を持って配置された板状の部材であり、腕時計における6時側において一端が片持ち固定されている。バンド係止部61は、例えば金属材料又は樹脂等で形成されており、多少の可撓性を有している。なお、バンド係止部61は、裏蓋6と一体的に形成されていてもよいし、裏蓋6の裏面に接着、溶着、ビス止め等によって固定されていてもよい。
【0032】
バンド係止部61における、裏蓋6の裏面(
図5において下側の面)と対向する面は、
図5等に示すように、側面視において一定間隔の凹凸を有する側面視において波型形状の起伏部611となっている。起伏部611には、後述する第1のバンド3cの係止凸部354が係止されるようになっている。
なお、起伏部611の凹凸の周期(隣接する凸同士の幅)は、ツク棒孔301の間隔よりも狭い間隔(例えば1mm程度)となっている。このため、係止凸部354の係止位置を調整することにより、凸部1つ分ずつの段階的な調整が可能であり、尾錠310を留めることによるバンド長の調整よりも細かい微調整を行うことができるようになっている。また、起伏部611の凹凸の断面形状は特に限定されないが、係止凸部354が凹凸を乗り越えやすいように角のない滑らかな形状であることが好ましい。
【0033】
本実施形態における第1のバンド3cのケース取付部35は、例えば金属材料等で形成されたほぼ平板状の部材であり、
図5等に示すように、側面視において、くの字状に屈曲している。
図5においてケース取付部35の屈曲部分よりも下の部分(バンド本体31側の部分)は、バンド本体31内に挿入される挿入部351となっている。また、
図5においてケース取付部35の屈曲部分よりも上の部分(腕時計ケース2取り付け側の部分)は、バンド係止部61に係止される係止部352となっている。
ケース取付部35の屈曲の程度、すなわち、挿入部351に対する係止部352の角度は特に限定されないが、例えば係止部352は、バンド本体31の表面(腕時計を腕に装着した際に外側となる面)に対してバンド3の裏面側に30度程度傾くように角度をもって形成されている。これにより、係止部352をバンド係止部61に係止した際、バンド本体31が腕時計ケース2の裏面側斜め下方に延垂するようになっている。
なお、ケース取付部35の屈曲の程度はここに例示したものに限定されない。
【0034】
図5から
図7に示すように、ケース取付部35の屈曲部分であって第1のバンド3cの幅方向(
図6における縦方向)のほぼ中央部には、裏蓋6のバンド係止部61の幅よりも広い幅を有する切り欠き部353が形成されている。
係止部352をバンド係止部61に係止して、第1のバンド3cを腕時計における6時側にスライド移動させた際には、バンド係止部61がこの切り欠き部353から外側(腕時計における上方向(12時方向))に突出するようになっている。
【0035】
また、係止部352の下面(
図5において下側の面)には、バンド係止部61の起伏部611の凹凸と咬み合い、起伏部611に係止される係止凸部354が第1のバンド3cの幅方向に延在して設けられている。
本実施形態では、この係止凸部354とバンド係止部61の起伏部611とにより、第1のバンド3cのスライド移動を制限して第1のバンド3cを固定し所定のスライド位置に調整するスライド位置調整機構60が構成されている。
【0036】
なお、ケース取付部35の挿入部351及び係止部352の大きさや形状、係止凸部354の形状や大きさ、裏蓋6に設けられるバンド係止部61の起伏部611の形状や大きさ等は、ここに示した図示例に限定されず、腕時計のサイズや形状等に応じて適宜決定される。
【0037】
なお、その他の構成は、第1の実施形態と同様であることから、同一部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
次に、本実施形態におけるバンド取付構造の作用について説明する。
本実施形態において、腕時計における12時側に配置される第1のバンド3cを取り付ける際には、
図8及び
図9に示すように、第1のバンド3cのケース取付部35の係止部352を、裏蓋6とバンド係止部61との間の隙間に挿入し、係止部352がバンド係止部61から外れない程度の位置までスライド移動させる。このとき、バンド係止部61がケース取付部35の切り欠き部353から外側(腕時計における上方向(12時方向))に突出する(
図5参照)。これにより、バンド3の取り付けが完了する。
腕時計を腕に装着する際には、このようなバンド取付が完了した状態で、腕時計を腕に巻きつけ、尾錠310のツク棒312を、第2のバンド3bのツク棒孔301のうち適度に腕に馴染むものに係止する。
尾錠310によりバンド3を留めた後、腕時計が腕から浮いている等、バンド3が若干緩いと感じられる場合には、腕時計が適度に腕にフィットする位置まで、第1のバンド3cの腕時計ケース2への取り付け側を、腕時計ケース2の12時側から6時側に向かって押し込む(
図5及び
図9参照)。これにより、係止部352がバンド係止部61に沿って腕時計の6時側にスライド移動する。このとき、係止部352の係止凸部354の移動に伴ってバンド係止部61が若干撓むことにより、係止凸部354は、バンド係止部61の起伏部611の凹凸を乗り越えながら腕時計の12時側から6時側に移動する。
腕時計が腕から浮いていない状態では、バンド係止部61が腕によって裏蓋6側に圧迫される。これにより、係止凸部354が起伏部611の凹凸としっかりと咬合した状態が維持されるとともに、係止部352の上面が裏蓋6に押圧されることで係止部352が固定される。このため、第1のバンド3cの逆方向(すなわち腕時計の12時側)への移動が制限され、一旦押し込まれた第1のバンド3cが逆方向に戻らないように位置が保持される。これにより、バンド長の微調整が完了する。
腕時計を外す際は、尾錠310のツク棒312をツク棒孔301から外すだけで、第1のバンド3cを移動させずに外すことができる。
また、腕時計を外して腕によるバンド係止部61の裏蓋6側への圧迫を解除することにより、係止凸部354が起伏部611の凹凸と咬合した状態及び係止部352の上面が裏蓋6に押圧された状態が解除されて、第1のバンド3cの腕時計における12時側と6時側との間でスライド移動を自由に行うことができる状態となる。これにより、第1のバンド3cを腕時計1の12時側(バンド3を緩める方向)に移動させたり、腕時計ケース2から外すことが可能となる。
また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1のバンド3cを腕時計ケース2から完全に取り外すことができる(
図7及び
図8参照)。このため、第1のバンド3cを腕時計ケース2のケース裏面の面内方向に180度反転させた向き(すなわち、尾錠310が設けられている側が腕時計の6時側に位置する向き)にして腕時計ケース2に取り付けることも可能である。
【0039】
なお、その他の点については、第1の実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、以下の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態では、第1のバンド3cに係止凸部354を有する係止部352を設けて、この係止部352を腕時計ケース2の裏面(本実施形態では裏蓋6)に設けられたバンド係止部61に係止することで第1のバンド3cを腕時計ケース2に取り付けている。このため、第1のバンド3cを腕時計ケース2に取り付けるための構造が単純であり、第1のバンド3cの取り付けを誰でも簡易に行うことができる。
また、部品点数も少なくてすみ、各部の形状も比較的単純であることから、生産性やコスト面でも有利である。
また、係止部352をスライド移動させるだけでバンド長の調整ができるため、誰でも簡易に各自の腕に合ったバンド長に調整することが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態では、バンド係止部61に側面視において波型状の起伏部611を設けて、これに第1のバンド3cの係止凸部354が係止されるようにし、この起伏部611と係止凸部354とにより第1のバンド3cのスライド位置を調整するスライド位置調整機構60が構成されている例を示したが、スライド位置調整機構60の構成はこれに限定されない。
例えば、バンド係止部61に第1の実施形態に示したように、腕時計における12時側の斜面の方が腕時計における6時側の斜面よりも傾斜が緩やかとなっている歯が列状に形成された鋸歯状歯列を設け、第1のバンド3cに、この歯に係止される係止爪を設けてもよい。
この場合には、係止爪は、腕時計における12時側から6時側には歯を乗り越えながら前進できるが、腕時計における6時側から12時側には歯に係止されて後退できない。これにより、腕時計における12時側と6時側との間でスライド移動可能に構成されているバンド3(本実施形態では、第1のバンド3c)の移動を一方向に制限するラチェット機構が構成される。
【0042】
また、本実施形態では、バンド係止部61が可撓性を有する場合を例示したが、例えば第1のバンド3cの係止凸部354が多少変形可能な弾性を有する材料で形成されている場合には、バンド係止部61が可撓性を有していなくてもよい。
【0043】
[第3の実施の形態]
次に、
図10から
図13を参照しつつ、本発明に係るバンド取付構造の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、第1のバンドを腕時計ケースのケース裏面に取り付ける構成のみが第1の実施形態と異なるものであるため、以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0044】
図10は、本実施形態におけるバンド取付構造が適用された腕時計の側面図であり、
図11は、腕時計の腕時計ケース及び第2のバンドを示す斜視図であり、
図12は、第1のバンドを示す斜視図である。
図10から
図12に示すように、本実施形態において、裏蓋7の裏面(
図10における下側の面)であって腕時計ケース2の幅方向のほぼ中央部には、腕時計ケース2の長さ方向(
図10における横方向)に延在して、第1のバンド3dを係止するバンド係止部71が設けられている。
バンド係止部71は、裏蓋7の裏面から一段高く形成されており、バンド係止部71の両側面には、複数の歯711aが一定間隔に形成された鋸歯状歯列711が形成されている。
歯711aには、後述する第1のバンド3dの係止部922,932が係止されるようになっている。
なお、鋸歯状歯列711の歯711aは、ツク棒孔301の間隔よりも狭い間隔(例えば1mm程度)で配置されている。このため、係止部922,932の係止位置を調整することにより、歯711a1つ分ずつの段階的な調整が可能であり、尾錠310を留めることによるバンド長の調整よりも細かい微調整を行うことができるようになっている。
【0045】
また、バンド係止部71の両側部であって裏蓋7の裏面に接する部分には、バンド係止部71の側部に沿って延在する溝部712が形成されている。
溝部712は、後述する第1のバンド3dの取付枠体91における嵌合部913の厚みよりも僅かに広い幅を有する隙間である。第1のバンド3dを腕時計ケース2に取り付けた状態において、溝部712には、嵌合部913が嵌め込まれるようになっている。
【0046】
なお、バンド係止部71は、裏蓋7と一体的に形成されていてもよいし、裏蓋7の裏面に接着、溶着、ビス止め等によって固定されていてもよい。
また、バンド係止部71の形状や大きさ等は、図示例に限定されず、腕時計の大きさや形状等に応じて適宜決定される。
【0047】
本実施形態における第1のバンド3dのケース取付部36は、取付支持部8と係止構造体9とで構成されている。
本実施形態において、第1のバンド3dの取付支持部8は、バンド本体31と連続して一体的に構成されており、取付支持部8の上面(
図10における上側の面)に、第1のバンド3dを腕時計ケース2に取り付ける係止構造体9が固定されている。なお、係止構造体9を取付支持部8の上面に固定する手法は特に限定されず、接着、溶着、ビス止め等いずれの手法であってもよい。また、後述する係止構造体9の取付枠体91を取付支持部8と一体的に形成してもよい。
【0048】
図10等に示すように、取付支持部8は、バンド本体31に対してバンド3の裏面側に30度程度傾くように角度をもって形成されている。これにより、取付支持部8を腕時計ケース2のケース裏面(すなわち裏蓋7に設けられているバンド係止部71)に取り付けた際に、バンド本体31が、腕時計ケース2の裏面側斜め下方に延垂するようになっている。なお、取付支持部8のバンド本体31に対する角度はここに例示したものに限定されない。バンド本体31に対して取付支持部8がさらに大きな角度をもっていてもよいし、バンド本体31に対して取付支持部8が傾きをつけずに設けられていてもよい。
【0049】
また、本実施形態において、取付支持部8は、腕時計ケース2のケース裏面(本実施形態では裏蓋7及びバンド係止部71)の少なくとも一部を覆うとともに、腕時計における6時側(すなわち、取付支持部8の腕時計ケース2への取付側端部の側)から腕時計における12時側(すなわち、バンド本体31側)に向かって厚みを増すように傾斜する傾斜部となっている。
このように、取付支持部8に、腕時計1における6時側から腕時計における12時側に向かって徐々に厚みが厚くなるように傾斜が設けられていることにより、腕時計を腕に装着した際にバンド3が腕に沿って馴染み、フィット感が増すとともに、腕時計を腕に装着しているうちにバンド3が12時側に回転して(ずれて)しまうことを防ぐことができる。
なお、取付支持部8によって覆われる腕時計ケース2のケース裏面(本実施形態では裏蓋7)の範囲は特に限定されず、例えば、取付支持部8が腕時計ケース2のケース裏面全体を覆っていてもよい。この場合でも、取付支持部8に、腕時計1における6時側から腕時計1における12時側に向かって徐々に厚みが厚くなる傾斜を設けることにより、腕時計ケース2の12時側の厚みを6時側の厚みよりも厚くすることができ、12時側へのバンド3の回転(ずれ)を抑止することができる。
【0050】
係止構造体9は、バンド係止部71に係止される係止機構部90とこの係止機構部90を収納支持する取付枠体91とで構成されている。
図13(a)は、第1のバンド3dの取付支持部8及びこれに固定された取付枠体91を示す要部斜視図であり、
図13(b)は、係止機構部90を示す斜視図である。
図13(a)に示すように、取付枠体91は、バンド本体31側と腕時計ケース2への取り付け側が開口した枠状の部材であり、取付支持部8に固定された底面部911と、この底面部911の、バンド3における幅方向の両側部にそれぞれ立設された側壁912と、左右の側壁から幅方向の中央部に向かって延出する一対の嵌合部913とを備えている。
取付枠体91の嵌合部913は、取付枠体91の上面(
図10等において上側の面)を構成する板状の部であり、バンド取付状態においてバンド係止部71の両側部に形成された溝部712に嵌め込まれて、溝部712に沿ってスライド移動可能となっている。なお、本実施形態において、嵌合部913の端部の角は斜めに切り欠かれている。このように嵌合部913の端部の角に切り欠きを設けた場合には、溝部712への嵌め込みを円滑に行うことができ、好ましい。
また、取付枠体91の左右の側壁912には、それぞれ側壁912の厚さ方向に貫通する嵌合孔914が形成されている。嵌合孔914には、後述する係止機構部90の操作片924,934が嵌め込まれるようになっている。
【0051】
図13(b)に示すように、係止機構部90は、バンド3の幅方向に延在する一対の操作部材92,93を備えている。この一対の操作部材92,93は同一形状となっており、それぞれ、一端側に操作部921,931が設けられ、他端側に係止部922,932が設けられている。
操作部921,931には、バンド3の幅方向における外側に向かって操作片924,934が突設されている。
図12等に示すように、係止機構部90が取付枠体91内に収納された組み立て状態において、操作片924,934は、取付枠体91の左右の側壁912に形成された嵌合孔914に嵌め込まれる。
【0052】
係止部922,932における操作部921,931と対向する側には、バンド3の幅方向における内側に向かって拡開する楔形の係止用切り欠き部925,935が形成されている。
この係止用切り欠き部925,935は、第1のバンド3dを腕時計ケース2に取り付けた状態において、鋸歯状歯列711の歯711aに係止可能となっている。
【0053】
操作部材92,93は、取付枠体91内に、互いの係止用切り欠き部925,935が対向するように向かい合わせで点対称に配置される。
また、操作部材92,93の間には、互いの操作部921,931を離間させる方向に操作部材92,93を付勢する付勢部材94,95が配置されている。
本実施形態では、付勢部材94,95としてコイルバネを用いた例を示している。なお、付勢部材94,95は、操作部材92,93の操作部921,931を互いに離間する方向に付勢するものであればよく、コイルバネに限定されない。例えば、ゴム等の弾性を有する部材であってもよい。
【0054】
操作部材92,93は、取付枠体91内に収納された状態において、付勢部材94,95により常に操作部921,931がバンド3の幅方向の外側に向かって付勢されており、係止用切り欠き部925と係止用切り欠き部935とがバンド3の幅方向の内側に向かって付勢されている。この状態において、係止用切り欠き部925,935は鋸歯状歯列711の歯711aに係止されている。
係止機構部90は、操作片924,934を内側に押し込む(押圧する)と、付勢部材94,95が押し縮められ、操作部材92,93が、付勢部材94,95による付勢方向とは反対の方向にそれぞれ取付枠体91の中を移動する。このとき、係止部922,932は、互いにバンド3の幅方向における外側に向かって移動し、係止用切り欠き部925と係止用切り欠き部935との間が広がって、係止用切り欠き部925,935と鋸歯状歯列711の歯711aとの係止が解除されるようになっている。
【0055】
本実施形態では、この係止部922,932の係止用切り欠き部925,935とバンド係止部71の鋸歯状歯列711とにより、第1のバンド3dのスライド移動を制限して第1のバンド3dを固定し所定のスライド位置に調整するスライド位置調整機構70が構成されている。
【0056】
なお、ケース取付部36の取付支持部8と係止構造体9の大きさや形状、裏蓋7に設けられるバンド係止部71の形状や大きさ等は、ここに示した図示例に限定されず、腕時計のサイズや形状等に応じて適宜決定される。
【0057】
なお、その他の構成は、第1の実施形態等と同様であることから、同一部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
次に、本実施形態におけるバンド取付構造の作用について説明する。
まず、本実施形態における第1のバンド3dの組み立て手順について説明する。
第1のバンド3dを組み立てるには、まず、
図13(b)に示すように、2つの操作部材92,93を点対称に配置し、操作部材92,93の間に付勢部材94,95を配置して、係止機構部90を構成する。
そして、この係止機構部90を取付枠体91内に収納する。このとき、係止機構部90の操作片924,934が取付枠体91の嵌合孔914から外部に突出するように、操作片924,934を嵌合孔914に嵌め込む(
図12参照)。これにより、係止構造体9が構成される。
次に、本実施形態において、腕時計における12時側に配置される第1のバンド3dを腕時計ケース2に取り付ける際には、係止構造体9を腕時計ケース2の裏蓋7に設けられたバンド係止部71に係止する。具体的には、係止構造体9の嵌合部913をバンド係止部71の溝部712に嵌め込み、操作片924,934を押し込みながら、第1のバンド3dを腕時計における12時側から6時側に向かってスライド移動させる(
図10参照)。これにより、バンド3の取り付けが完了する。
腕時計を腕に装着する際には、このようなバンド取付が完了した状態で、腕時計を腕に巻きつけ、尾錠310のツク棒312を、第2のバンド3bのツク棒孔301のうち適度に腕に馴染むものに係止する。
尾錠310によりバンド3を留めた後、腕時計が腕から浮いている等、バンド3が若干緩いと感じられる場合には、操作片924,934を押し込みながら、腕時計が適度に腕にフィットする位置まで、第1のバンド3dを腕時計ケース2の12時側から6時側に向かってスライド移動させる(
図10参照)。操作片924,934を押し込んだ状態では、係止用切り欠き部925,935と鋸歯状歯列711の歯711aとの係止が解除され、第1のバンド3dを円滑にスライド移動させることができる。
バンド3が適度に締まった位置で操作片924,934の押し込み(押圧)を解除すれば、係止用切り欠き部925,935が鋸歯状歯列711の歯711aに係止され、しっかりと咬合した状態が維持される。このため、第1のバンド3dの移動が制限され、一旦押し込まれた第1のバンド3dが逆方向に戻らないように位置が保持される。これにより、バンド長の微調整が完了する。
腕時計を外す際は、尾錠310のツク棒312をツク棒孔301から外すだけで、第1のバンド3dを移動させずに外すことができる。
また、操作片924,934の押し込む(押圧する)ことで、係止用切り欠き部925,935と歯711aとの咬合した状態を解除すれば、第1のバンド3dのスライド移動を自由に行うことができる状態となる。これにより、第1のバンド3dを腕時計1の12時側(バンド3を緩める方向)に移動させたり、腕時計ケース2から取り外すことが可能となる。
また、本実施形態では、第1のバンド3dを腕時計ケース2から完全に取り外すことができる(
図11及び
図12参照)。このため、第1のバンド3dを腕時計ケース2のケース裏面の面内方向に180度反転させた向き(すなわち、尾錠310が設けられている側が腕時計の6時側に位置する向き)にして腕時計ケース2に取り付けることも可能である。
【0059】
なお、その他の点については、第1の実施形態等と同様であることから、その説明を省略する。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態等と同様の効果を得られる他、以下の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態では、操作片924,934を押し込むことで第1のバンド3dがスライド移動できるように構成しており、操作片924,934を押し込まない限り、第1のバンド3dの移動が制限される。これにより、バンド3を外した際等に誤って第1のバンド3dが腕時計ケース2から脱落するおそれがなく、第1のバンド3dの破損や紛失等を防止することができる。
また、係止構造体9は簡易に分解することが可能であるため、例えば使用に伴い付勢部材94,95が劣化したような場合に、当該部品だけを取り替えることもでき、便利である。
また、操作片924,934を押し込みながら第1のバンド3dをスライド移動させるだけでバンド長の調整ができるため、誰でも簡易に各自の腕に合ったバンド長に調整することが可能となる。
さらに、本実施形態では、取付支持部8に、腕時計1における6時側から腕時計における12時側に向かって徐々に厚みが厚くなるように傾斜が設けられている。これにより、腕時計を腕に装着した際にバンド3が腕に沿って馴染み、フィット感が増すとともに、腕時計を腕に装着しているうちにバンド3が12時側に回転して(ずれて)しまうことを防ぐことができる。
【0061】
なお、本実施形態では、バンド係止部71の両側に鋸歯状歯列711を設けた例を示したが、鋸歯状歯列711は、バンド係止部71の片側のみに設けられていてもよい。この場合には、ケース取付部36の係止構造体9にも、鋸歯状歯列に対応する側のみに係止用切り欠き部を設ければ足りる。
【0062】
また、本実施形態では、取付支持部8に、腕時計1における6時側から腕時計における12時側に向かって徐々に厚みが厚くなるように傾斜が設けられている場合を例としたが、取付支持部8の形状はここに例示したものに限定されず、傾斜を有しない平板状の部であってもよい。
この場合でも、ケース取付部36の厚み分だけ腕時計ケース2の12時側の厚みが6時側の厚みよりの厚くなるため、腕時計の12時側へのバンド3の回転(ずれ)を抑止することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、操作片924,934を押し込まない限り、係止用切り欠き部925,935が鋸歯状歯列711の歯711aに係止された状態が維持され、操作片924,934を押し込むことでこの係止状態が解除されて、第1のバンド3dが腕時計における12時側、6時側いずれにも自由に移動可能となる構成を例としたが、第1のバンド3dのスライド移動を制限して第1のバンド3dを固定し所定のスライド位置に調整するスライド位置調整機構70の構成はこれに限定されない。
例えば、バンド係止部71に第1の実施形態に示したように、腕時計における12時側の斜面の方が腕時計における6時側の斜面よりも傾斜が緩やかとなっている歯が列状に形成された鋸歯状歯列を設け、第1のバンド3dに、この歯に係止される係止部を設けてもよい。
この場合には、腕時計における12時側から6時側には操作片924,934を押し込まなくても係止部が歯を乗り越えながら前進できるが、腕時計における6時側から12時側には歯に係止されて後退できない。これにより、腕時計における12時側と6時側との間でスライド移動可能に構成されているバンド3(本実施形態では、第1のバンド3d)の移動を一方向に制限するラチェット機構が構成される。
【0064】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0065】
例えば、上記各実施形態では、第1のバンドが腕時計ケース2から完全に取り外すことができるものを例示したが、係止部材等を設けて、第1のバンドが腕時計ケース2から外れないように係止される構成としてもよい。
このように構成した場合には、バンド3を外す際等に第1のバンドが誤って外れて落下し破損したり、第1のバンドを紛失したりすることを防止することができる。
【0066】
また、上記各実施形態では、第1のバンドが裏蓋に取り付けられる場合を例としたが、第1のバンドが取り付けられるのはケース裏面であればよく、裏蓋でなくてもよい。
【0067】
また、上記各実施形態では、第1のバンドのみがスライド移動可能に構成されている場合を例示したが、スライド移動可能に構成されるバンド3は第1のバンドに限定されない。
すなわち、第1のバンド及び第2のバンドのうち、少なくとも一方のバンド3がスライド移動可能に構成されていればよく、第2のバンド3bがスライド移動可能に構成されていてもよい。また、第1のバンド、第2のバンド3bのいずれもがスライド移動可能となっていてもよい。
【0068】
また、上記各実施形態では、スライド位置調整機構が、鋸歯状歯列とこれに係止される係止爪等の係止部又は起伏部とこれに係止される係止凸部で構成され、歯1つ分又は凸部1つ分ずつ段階的にバンド長を調整できる場合を例としたが、スライド位置調整機構はこれに限定されない。スライド位置調整機構は、スライド移動可能に構成されているバンド3(実施形態において第1のバンド)を固定して所定のスライド位置に調整することができるものであればよく、例えば、腕時計ケースのケース裏面にバンド3を係止可能な係止突起等を設けて、これに適宜バンド3が係止される等の構成としてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、腕時計ケースのケース裏面に鋸歯状歯列又は起伏部を設け、第1のバンドのケース取付部に、鋸歯状歯列又は起伏部に係止される係止部(係止爪や係止凸部、係止用切り欠き部)を設ける例を示したが、第1のバンドを腕時計ケースのケース裏面に係止する構成は、これに限定されない。
例えば、上記に示した実施形態とは逆に、第1のバンドのケース取付部に鋸歯状歯列又は起伏部を設け、腕時計ケースのケース裏面に、鋸歯状歯列又は起伏部に係止される係止部(係止爪や係止凸部、係止用切り欠き部)を設けてもよい。
【0070】
また、上記各実施形態では、バンド3を構成する第1のバンド3a,3c,3d、第2のバンド3bが別体となったものを例示したが、バンド3の構成はこれに限定されない。
例えば、第1のバンドと第2のバンドとが中留によって連結され一つながりに構成されたバンドであってもよい。この場合にも、腕時計における12時側に配置される第1のバンドのケース取付部を腕時計ケースの裏面側に取り付け、腕時計における12時側と6時側との間でスライド移動可能に構成することにより、腕時計ケースのケース裏面においてバンドの長さ調整を行うことができる。
【0071】
また、第1の実施形態、第2の実施形態のように、バンド取付部の一部がバンド本体31内に挿入されている構成の場合には、バンド取付部はバンド本体と一体成型されていてもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では、バンド取付構造を腕時計に適用した場合を例として説明したが、バンド取付構造を適用するものは本体ケース(本実施形態では腕時計ケース)とこれに取り付けられるバンドを備えるものであればよく、腕時計に限定されない。例えば、歩数計、心拍計や脈拍計等の生体情報表示装置、高度情報や気圧情報等の表示装置、携帯型のプレーヤ等、バンドによって腕に装着可能な各種の機器に本発明のバンド取付構造を適用してもよい。
この場合、腕時計の12時側とは、腕時計等の機器を腕に装着して表示部分を見たときにユーザから見て奥側となる側を意味し、腕時計の6時側とは、腕時計等の機器を腕に装着して表示部分を見たときにユーザから見て手前側となる側を意味する。
【0073】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
バンドを腕時計ケースに取り付けるバンド取付構造において、
前記バンドは、腕時計における12時側に配置される第1のバンドと、腕時計における6時側に配置される第2のバンドと、からなり、
前記第1のバンド及び前記第2のバンドのうち、少なくとも一方のバンドは、前記腕時計における12時側と6時側との間でスライド移動できるように、前記腕時計ケースのケース裏面に取り付けられ、
当該スライド移動可能に構成されているバンドを固定して所定のスライド位置に調整するスライド位置調整機構を備えていることを特徴とするバンド取付構造。
<請求項2>
前記第1のバンドには、前記腕時計ケースのケース裏面の少なくとも一部を覆うとともに前記腕時計における6時側から前記腕時計における12時側に向かって厚みを増すように傾斜する傾斜部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンド取付構造。
<請求項3>
前記スライド位置調整機構は、前記スライド移動可能に構成されているバンドの移動を一方向に制限するラチェット機構を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバンド取付構造。
<請求項4>
請求項1から請求項3のいずれかに記載のバンド取付構造を備えたことを特徴とする時計。