特許第6086025号(P6086025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086025
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】感熱記録体及びその記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/323 20060101AFI20170220BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20170220BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B41M5/323 220
   B41M5/41 200
   C09B57/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-100266(P2013-100266)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-218055(P2014-218055A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年6月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 美彦
(72)【発明者】
【氏名】竹村 尚
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−138991(JP,A)
【文献】 特開2001−353965(JP,A)
【文献】 JOEM Handbook3 イメージング用有機材料,ぶんしん出版,1997年10月16日,198-199頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28 − 5/48
C09B 57/00 − 57/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に染料前駆体及び顕色剤を含有する感熱記録層を備えた感熱記録体において、前記支持体が金属光沢を有し、前記染料前駆体が黄色系の色調に発色する染料前駆体であり、発色像が金色メタル調の色調を呈することを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記感熱記録体を0.97mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.00以上であり、且つ前記感熱記録体を40〜220℃の熱板に9.8×10Paで5秒間接触させて得られる発色濃度が0.2となる静発色開始温度が50℃以上である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記黄色系の色調に発色する染料前駆体の含有量が0.7g/m以上である、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記黄色系の色調に発色する染料前駆体が、下記一般式(1)で表される分子構造にピリジン骨格を有する染料前駆体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【化1】
(式中、R及びRは水素原子もしくは炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記支持体が金属光沢を有しない基材の表面に金属光沢を付与したものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項6】
前記請求項1〜5に記載の感熱記録体の記録方法であって、サーマルヘッドによる加熱により、静発色開始温度以上となる印加エネルギーで金色メタル調の発色像を記録し、動発色濃度が1.00未満となる印加エネルギーで銀色メタル調に記録することを特徴とする感熱記録体の記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料前駆体と顕色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料前駆体と顕色剤との反応を利用し、熱エネルギーによって両物質を反応させて記録像を得るようにした感熱記録体は良く知られている。かかる感熱記録体は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトでその保守も容易であるため、ファクシミリやプリンター用の記録媒体としてのみならず幅広い分野において使用されている。
【0003】
しかしながら、用途の拡大に伴って要求される性能、品質も多様化しており、例えば高濃度化、画像安定化、及び発色像がメタル調の色調を有する感熱記録体等が挙げられる。特に応用範囲の広がる可能性がある発色像がメタル調の色調を有する感熱記録体については、感熱記録層上に天然雲母の表面に酸化チタン及び酸化鉄のうちの少なくとも1種類をコーティングした顔料を含む被覆層を形成すること(特許文献1参照)、感熱記録層上に無機パール顔料を含有する層を設けること(特許文献2参照)等が提案されているが、そのメタル調、発色濃度、発色像の保存性等に必ずしも満足すべき結果が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−206585号公報
【特許文献2】特開平6−297846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、染料前駆体と顕色剤との発色反応を利用した感熱記録体において、発色像が金属光沢を帯び、見た目に鮮やかな金色メタル調の色調を呈する感熱記録体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、上記問題点を解決するに至った。即ち、本発明は、下記の感熱記録体に係る。
【0007】
項1:支持体上に染料前駆体及び顕色剤を含有する感熱記録層を備えた感熱記録体において、前記支持体が金属光沢を有し、前記染料前駆体が黄色系の色調に発色する染料前駆体であることを特徴とする感熱記録体。
【0008】
項2:前記感熱記録体を0.97mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.00以上であり、且つ前記感熱記録体を40〜220℃の熱板に9.8×10Paで5秒間接触させて得られる発色濃度が0.2となる静発色開始温度が50℃以上である、項1に記載の感熱記録体。
【0009】
項3:前記黄色系の色調に発色する染料前駆体の含有量が0.7g/m以上である、項1または2に記載の感熱記録体。
【0010】
項4:前記黄色系の色調に発色する染料前駆体が、下記一般式(1)で表される分子構造にピリジン骨格を有する染料前駆体である、項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【0011】
【化1】
(式中、R及びRは水素原子もしくは炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0012】
項5:前記支持体が金属光沢を有しない基材の表面に金属光沢を付与したものである、項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【0013】
項6:前記項1〜5に記載の感熱記録体の記録方法であって、サーマルヘッドによる加熱により、静発色開始温度以上となる印加エネルギーで金色メタル調の発色像を記録し、動発色濃度が1.00未満となる印加エネルギーで銀色メタル調に記録することを特徴とする感熱記録体の記録方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感熱記録体は、発色像が金属光沢を帯び、見た目に鮮やかな金色メタル調の色調を呈し、これまで印刷分野が中心であった特色印刷製品の代替として、意匠性に優れた可変情報を記録できる。また、発色濃度が高く、発色像の保存性と耐光性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、支持体上に染料前駆体及び顕色剤を含有する感熱記録層を備えた感熱記録体において、支持体が金属光沢を有し、染料前駆体が黄色系の色調に発色する染料前駆体であることを特徴とする感熱記録体である。
【0016】
本発明における支持体は、少なくとも片面に金属光沢を有するものであればよく、種類、形状、寸法等に格別の限定はない。例えば、金属板、金属箔、金属膜等のそれ自体が金属光沢を有する支持体、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、板紙、段ボール、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の金属光沢を有しない基材に金属光沢を付与した支持体を適宜選択して使用することができる。基材は透明であっても、半透明であっても、不透明であってもよい。これらの中でも、見た目に鏡面光沢が得られるため、フィルムまたは合成紙に金属光沢を付与した支持体が好ましい。
【0017】
基材の表面に金属光沢を付与する方法としては、メッキする方法、アルミ箔など金属箔を貼合する方法や、金属蒸着層を有する紙またはフィルムを貼合する方法がある。さらに、基材に直接、アルミニウムや銀などの金属蒸着膜を設ける方法も存在する。この場合には、基材表面に平滑な樹脂層を予め設け、そこへ金属蒸気を付着させて金属層を形成させる直接蒸着法や、予めフィルムに設けられた金属蒸着層を、接着剤を介して基材と貼合してフィルムを剥離して転写する方法がある。また、基材に印刷、または塗布することにより、金属光沢層を設ける方法もある。この場合、金属の粉末、例えばアルミニウム粉末、またはアルミニウム粉末を溶剤に分散させたアルミニウムペーストをビヒクルと混合して得たメタルインクを使用して、金属光沢のある面を得ることが可能である。金属粉末ではなく、雲母、または雲母に酸化チタンをコーティングして得た顔料等の無機パール顔料を使用したインクを使用することも可能である。
【0018】
本発明における感熱記録層は、支持体上に形成されており、記録面側から見て支持体の有する金属光沢の一部または全部を覆っている。感熱記録層は、支持体の金属光沢を有する面側に形成されていてもよく、また、例えば透明な基材のように基材を通して目視で確認可能な金属光沢を有する支持体であれば、支持体の金属光沢を有する面の反対側に形成されていてもよい。支持体と感熱記録層との間には、下塗り層を設けることもできるが、下塗り層は支持体の有する金属光沢を隠蔽しないことが好ましい。
【0019】
本発明の感熱記録体では、感熱記録層中の染料前駆体が黄色系の色調に発色するが、記録面側から見て発色像が金属光沢を帯びるため、見た目に鮮やかな金色メタル調の色調を呈することができる。本発明では、感熱記録層中に微粒子状態で存在する染料前駆体及び加熱下に反応して前記染料前駆体を発色させる顕色剤が、サーマルヘッド等の印加エネルギーで一旦溶融して再び固化することにより、感熱記録層における乱反射を低減させて、感熱記録層を通して金色メタル調が得られるものと考えられる。本発明では、感熱記録層が支持体の有する金属光沢を遮るように覆っているが、発色像が金色メタル調を呈するため、感熱記録層が支持体の有する金属光沢を隠蔽している程度は、特に限定されず、記録面側から見てマット調の普通紙ライクであってもよいし、感熱記録層を通して金属光沢が目視で確認可能な程度であってもよい。
【0020】
本発明では、感熱記録体を0.97mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.00以上であり、且つ感熱記録体を40〜220℃の熱板に9.8×10Paで5秒間接触させて得られる発色濃度が0.2となる静発色開始温度が50℃以上であることが好ましい。これにより、プリンターへの負荷を減らし、コントラストを有する色調−温度曲線が得られ、発色濃度を高めて十分な金色メタル調を得ることができる。動発色濃度を1.00とすることにより目視で十分であると評価できるレベルに達するが、より好ましくは1.30以上であり、更に好ましくは1.60以上である。動発色濃度の上限は、特に限定されないが、2.0を超えると発色性は飽和することから、2.0以下程度とすることが好ましい。一方、静発色開始温度は、60℃以上であることがより好ましい。静発色開始温度の上限は、特に限定されないが、プリンターへの負荷を減らすため、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下が更に好ましい。ここで、発色濃度はY(イエロー)濃度を指す。所望の発色濃度のものを調整するには、例えば染料前駆体の含有量を調節したり、染料前駆体の形態を調節したりする等の方法が挙げられる。
【0021】
黄色系の色調に発色する染料前駆体の含有量は、感熱記録層中の乾燥重量で0.7g/m以上であることが好ましい。より好ましくは1.0g/m以上であり、更に好ましくは1.5g/m以上である。これにより、発色濃度を高めて、より一層鮮明な金色メタル調を得ることができる。含有量の上限は、特に限定されないが、6g/mを超えると発色性は飽和することから、6g/m以下とすることが好ましい。
【0022】
黄色系の色調に発色する染料前駆体の具体例としては、例えば、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ペンチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ヘキシルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−(2,6−ジフェニル−4−ピリジニル)−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ブトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ペンチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ヘキシルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、及び4−[2,6−ビス(2−オクチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン等の分子構造にピリジン骨格を有する染料前駆体が挙げられる。また、ピリジン骨格を有しない黄色系の色調に発色する染料前駆体としては、例えば、3,6−ジメトキシフルオラン、1−(4−n−ドデシルオキシ−3−メトキシフェニル)−2−(2−キノリル)エチレン、2,2−ビス(4−(2−(4−ジエチルアミノフェニル)キナゾリル)オキシフェニル)プロパン、1−(2−キノリル)−2−(3−メトキシ−4−ドデシルオキシフェニル)エテン、4−クロロ−N−(4−(N−(4−メチルベンジル)−N−メチルアミノ)ベンジリデン)アニリン等が挙げられる。
【0023】
本発明における黄色系の色調に発色する染料前駆体としては、発色像の保存性に優れていることが好ましい。発色像が退色すると、感熱記録層中の成分が結晶化するためか理由は定かでないが、見た目に黄色系の発色色調が褪せる以上に、メタル調が損なわれる恐れがある。本発明では、発色像の保存性を向上する観点から、黄色系の色調に発色する染料前駆体として下記一般式(1)で表される分子構造にピリジン骨格を有する染料前駆体が好ましい。
【0024】
【化2】
(式中、R及びRは水素原子もしくは炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0025】
更に発色濃度を高める観点から、前記一般式(1)中、RとRは、同時に水素原子である場合を除くことがより好ましい。前記一般式(1)中、R及びRは水素原子もしくは炭素数1〜8の分岐してもよいアルコキシ基であり、同一でも、異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4の分岐してもよいアルキル基を表すが、少なくともR及びRは直鎖状の飽和炭化水素基が工業的にも容易に導入できることから好ましい。
【0026】
本発明では、前記一般式(1)中、R及びRのいずれか一方を炭素数4〜8のアルコキシ基とすることが、本発明の効果を遺憾なく発揮できるため好ましい。更に、発色濃度をより一層高める観点から、R及びRのいずれか一方が水素原子を表すことが好ましい。
【0027】
本発明では、これら黄色系の色調に発色する染料前駆体の中でも、発色像の保存性をより一層向上する観点から、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ペンチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、及び4−[2−(2−ヘキシルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンからなる群から選ばれる1種を用いることが好ましい。
【0028】
本発明において、感熱記録層に含有される染料前駆体の形態については特に限定されるものではなく、固体分散微粒子の形態で感熱記録層中に含有されていてもよいし、染料前駆体と疎水性樹脂等の高分子化合物とを含む複合微粒子を形成した形態で感熱記録層中に含有されていてもよい。
【0029】
染料前駆体を固体分散微粒子の形態で使用する場合、例えば水を分散媒体として、サンドミル、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によって粉砕し、分散液とする。また、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩及びそれらの誘導体等の水溶性高分子化合物のほか、必要に応じて界面活性剤、消泡剤等の存在下で分散媒体中に分散させて分散液とすることもできる。この分散液を用いて感熱記録層を形成するための塗液を調製すればよい。また、染料前駆体を有機溶剤に溶解した後、この溶液を水中で上記水溶性高分子化合物を安定化剤として乳化分散後、この乳化液から有機溶剤を蒸発させ染料前駆体を固体分散微粒子化して使用することもできる。いずれの場合も固体分散微粒子の形態で使用する染料前駆体の固体分散微粒子の体積平均粒子径は、適切な記録感度を得るために0.2〜3.0μm程度であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0μm程度である。
【0030】
染料前駆体と疎水性樹脂とを含む複合微粒子を形成した形態としては、
(1)1種以上の染料前駆体を壁膜としての疎水性樹脂を用いてマイクロカプセル化した形態、
(2)1種以上の染料前駆体を多価イソシアネート等により得られた疎水性樹脂からなる母材中に含有せしめた形態、
(3)1種以上の染料前駆体の微粒子表面に不飽和炭素結合を有する化合物を重合せしめた形態、
等が挙げられる。例えば、(1)の形態の粒子の作製方法としては、特開昭60−244594号公報に記載された方法が挙げられる。(2)の形態の粒子の作製方法としては、特開平9−263057号公報に記載された方法が挙げられる。(3)の形態の粒子の作製方法としては、特開2000−158822号公報に記載された方法が挙げられる。
【0031】
複合微粒子を形成する疎水性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ウレア系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア−ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、ウレア系樹脂、ウレア−ウレタン系樹脂は耐熱地肌かぶり性に優れるため、第2染料前駆体がポリウレアまたはポリウレア−ポリウレタン樹脂と複合微粒子を形成している形態が好ましい。
【0032】
複合微粒子の作製に使用される多価イソシアネート化合物とは、水と反応することによりポリウレア、またはポリウレア−ポリウレタンを形成する化合物であり、多価イソシアネート化合物単独であってもよいし、または多価イソシアネート化合物及びこれと反応するポリオール、ポリアミンとの混合物、或いは多価イソシアネート化合物とポリオールの付加物、多価イソシアネート化合物のビウレット体、イソシアヌレート体等の多量体であってもよい。これらの多価イソシアネート化合物に、染料前駆体を溶解し、この溶液をポリビニルアルコール等の保護コロイド物質を溶解含有している水性媒体中に、体積平均粒子径が好ましくは0.2〜3.0μm程度、より好ましくは0.2〜1.5μm程度となるように乳化分散し、更に必要によりポリアミン等の反応性物質を混合後、この乳化分散液を加温することにより、多価イソシアネート化合物を重合させる。これによって多価イソシアネート化合物を高分子化し、染料前駆体を含む複合微粒子を形成することができる。
【0033】
前記複合微粒子中に含有させた染料前駆体は、外部との隔離性が高く、その発色体は、固体分散微粒子状態で発色させた発色体に比べて極めて良好な保存性、特に油や可塑剤に対する耐性の優れたものとなる。その理由については必ずしも明確ではないが、発色体と高分子物質(母材)が何らかの相互作用を有し、安定化しているものと考えられる。
【0034】
本発明で使用する複合微粒子の外観は、電子顕微鏡で観察するとほぼ球状をしているか、または多少なりとも窪んだ赤血球状である。電子顕微鏡による断面観察では、その形状は、内実体であるか、多孔質体、または中空体である。また体積平均粒子径は、適正な記録感度を得るために0.2〜1.5μm程度とすることが望ましい。0.2μm以上に設定することにより、油や可塑剤等に対する発色像の保存性を向上するという観点から望ましい。
【0035】
本発明で使用する複合微粒子は、染料前駆体のほかに、必要に応じて後述する紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤の他、感熱記録体で知られているような増感剤等が添加されていてもよい。
【0036】
これら複合微粒子の(1)及び(2)の形態は、感熱記録層の透明性が染料前駆体を固体分散微粒子の形態で使用する場合に比較して優れている。本発明では、透明性の高い感熱記録層を設けることにより、感熱記録層を通して地肌部が銀色メタル調を呈し、発色像が金色メタル調を呈する感熱記録体を得ることもできる。
【0037】
また、本発明では、動発色特性と静発色特性を利用して、例えばアルミ蒸着された支持体を用いて支持体の金属光沢を隠蔽するように感熱記録層を設けることにより、金色メタル調の発色像と銀色メタル調の像の双方を記録することもできる。この場合の好ましい記録方法としては、例えばプリンターのサーマルヘッドによる加熱により、静発色開始温度以上となる印加エネルギーで金色メタル調の発色像を記録し、動発色濃度が1.00未満となる印加エネルギーで銀色メタル調に記録することができる。静発色開始温度以上とすることにより、金色を呈するに十分な印加エネルギーが与えられ、動発色濃度を1.00未満とすることにより、金色を呈するには不十分であるが、染料前駆体または顕色剤の一部を溶融して支持体の有する金属光沢を発現し、銀色を呈することができる。
【0038】
染料前駆体の含有割合は、各感熱記録層の全固形量のうち5〜30質量%程度が好ましく、より好ましくは7〜30質量%程度、更に好ましくは7〜25質量%程度である。5質量%以上とすることにより発色濃度を向上できる。30質量%以下とすることにより、耐熱性を向上できる。
【0039】
本発明における感熱記録層に含有される顕色剤とは、温度の上昇によって液化、または溶解する性質を有し、染料前駆体と接触してこれを発色させる性質を有するものから選ばれ、代表的なものとしては、フェノール化合物、芳香族カルボン酸、或いはこれらの化合物の多価金属塩等の有機酸性物質等を挙げることができる。
【0040】
顕色剤は通常、複合微粒子中やマイクロカプセル中、及び固体分散微粒子の状態で存在する。顕色剤の含有量としては、各感熱記録層において染料前駆体の合計100質量部に対し、30〜1500質量部程度が好ましく、より好ましくは50〜1000質量部程度、更に好ましくは100〜600質量部程度、特に好ましくは140〜600質量部程度、最も好ましくは200〜500質量部程度である。なお、複合微粒子は、染料前駆体を含有する複合微粒子を調製する方法と同様の方法で調製することができる。
【0041】
代表的な顕色剤としては、例えば、4−tert−ブチルフェノール、4−アセチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−n−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、4−[4’−(1’−メチルエチルオキシ)フェニル]スルホニルフェノール、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、N−p−トリルスルホニル−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス(3−トシルウレイド)ジフェニルメタン等の化合物を挙げることができる。
【0042】
更に本発明において、顕色剤として使用できる化合物としては、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール化合物、または安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3,5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸等の芳香族カルボン酸、及び前記フェノール化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の多価金属との塩等の有機酸性物質等が挙げられる。
【0043】
これらの顕色剤の中でも、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−n−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス(3−トシルウレイド)ジフェニルメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより、より一層鮮やかな黄色系の発色色調が得られ、本発明の効果を遺憾なく発揮できる。更に、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、4,4’−ビス(3−トシルウレイド)ジフェニルメタン、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブトキシカルボニルフェニルウレアから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0044】
本発明では、感熱記録層中に、主に発色像の保存性をより一層高めるために、保存性改良剤を更に含有させることができる。このような保存性改良剤としては、例えば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、及び4,4’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール等のフェノール化合物、4−ベンジルオキシフェニル−4’−(2−メチル−2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、及び4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物、並びに1,3,5−トリス(2,6−ジメチルベンジル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。勿論、保存性改良剤はこれらに限定されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0045】
本発明では、感熱記録層中に、記録感度を向上させるために、更に増感剤を含有させることができる。増感剤としては、従来から感熱記録体の増感剤として知られている化合物を使用することができ、例えばパラベンジルビフェニル、ジベンジルテレフタレート、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、シュウ酸ジベンジルエステル、アジピン酸ジ−o−クロルベンジル、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジルエステル、2−ナフチルベンジルエーテル、ジフェニルスルホン、1,2−ジフェノキシメチルベンゼン、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、1,3−ビス(2−ナフトキシ)プロパン、メタターフェニル、ジフェニル、ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0046】
感熱発色層において使用する顕色剤、保存性改良剤及び増感剤等の助剤は、染料前駆体を固体分散微粒子の形態で使用する時と同じ方法で水中に分散させ、感熱記録層用塗液の調製の際にこれに混合すればよい。また、これらの助剤を溶剤に溶解し、水溶性高分子化合物を乳化剤として用いて水中に乳化して使用することもできる。また保存性改良剤及び増感剤は、染料前駆体を含有する複合微粒子中に含有させてもよい。
【0047】
感熱記録層の白色度向上、及び画像の均一性向上のため、白色度が高く、平均粒子径が10μm以下の微粒子顔料を感熱記録層に含有させることができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、珪藻土、合成珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料が使用できる。
【0048】
感熱記録層を構成する他の成分材料としてはバインダーを用い、更に必要により、架橋剤、ワックス類、金属石鹸、有色染料、有色顔料、及び蛍光染料等を用いることができる。バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン及びそれらの誘導体等の水溶性高分子材料、並びに、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の水不溶性重合体のラテックス等を挙げることができる。
【0049】
架橋剤としては、例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グリオキシル酸塩、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、並びに過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、及び塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物、又は硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー、ヒドラジド化合物、グリオキシル酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。架橋剤の使用量は、感熱記録層の全固形量100質量部に対し、1〜10質量部程度の範囲が好ましい。これにより、感熱記録層の耐水性を向上することができる。
【0050】
ワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、及びポリエチレンワックス等のワックス類、並びに例えばステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体等を挙げることができる。
【0051】
金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛等を挙げることができる。また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱記録層中に、更に撥油剤、消泡剤、粘度調節剤等の各種助剤を添加することができる。
【0052】
更に感熱記録層中に、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルまたは紫外線吸収剤の固体分散微粒子を含有させて、耐光性を大幅に向上することもできる。
【0053】
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0054】
更には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−4’−(2”−エチルヘキシル)オキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール(分子量約300)とメチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとの縮合物等のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系の紫外線吸収剤等を挙げることができる。勿論、これらに限られるものではなく、また必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0055】
これらの紫外線吸収剤の中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−4’−(2”−エチルヘキシル)オキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール(分子量約300)とメチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとの縮合物は、とりわけ顕著な耐光性改良効果を発揮するためより好ましい。
【0056】
紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセル、または紫外線吸収剤の固体分散微粒子の添加量については特に限定するものではないが、感熱記録層の全固形量のうち、5〜70質量%程度が好ましい。特に好ましくは15〜50質量%程度の範囲に調節する。5質量%以上とすることにより耐光性を向上できる。70質量%を超えると耐光性は飽和するので、記録感度を向上する点からも70質量%以下程度とすることが好ましい。なお、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセル、または紫外線吸収剤の固体分散微粒子は感熱記録層中に含有するより後述する保護層中に含有させたほうが、より有効に耐光性を改善することができる。
【0057】
本発明における感熱記録層は、例えば水を分散媒体とし、特定の染料前駆体、顕色剤、必要により保存性改良剤、増感剤等を共に、或いは別々に分散した分散液を用いて、必要により顔料、バインダー、架橋剤、その他助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗液を用いて、支持体が有する金属光沢を覆うように支持体上に塗布及び乾燥して形成される。
【0058】
本発明においては、感熱記録層の上に従来より公知の感熱記録体に使用されているような水溶性高分子材料と顔料を含有する保護層を設けることが望ましい。水溶性高分子材料及び顔料としては、前述の感熱記録層で例示したような材料を使用することができる。このとき架橋剤を添加して、保護層に耐水性を付与することがより望ましい。
【0059】
本発明においては、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルまたは紫外線吸収剤の固体分散微粒子を保護層に含有させることで、耐光性を大幅に向上することもできる。特に、ポリウレタン−ポリウレア樹脂、或いはアミノアルデヒド樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルは、耐熱性に優れるため、サーマルヘッドへのスティッキングを防止する目的で感熱記録層中、或いは保護層中に添加される無機顔料の機能をも果たすという優れた付随効果を発揮し、しかも、他の壁膜からなるマイクロカプセルや通常の顔料に比較して屈折率が低く、且つ形状が球形であるため、保護層中に多量に含有させても光の乱反射に起因する濃度低下を招く恐れがないので好ましく用いられる。
【0060】
更に、顔料を含有させることにより、サーマルヘッドに対するカス付着、及びスティッキング防止することができる。顔料の吸油量としては、50ml/100g以上の顔料を使用することが好ましい。顔料の含有割合は、発色濃度を低下させない程度の量、即ち、保護層の全固形量のうち50質量%以下であることが好ましい。
【0061】
保護層は、例えば水を分散媒体として、バインダー、必要により架橋剤、顔料、その他助剤等を混合することにより調製された保護層用塗液を、塗布量が乾燥重量で好ましくは0.1〜15g/m程度、より好ましくは0.5〜8g/m程度となるように、感熱記録層上に塗布及び乾燥して形成される。
【0062】
本発明においては、感熱記録体をUVインキ、フレキソインキ等で印刷することもできる。この場合、印刷は、支持体上、感熱記録層または保護層等の上に印刷してもかまわない。
【0063】
本発明では、感熱記録体の付加価値を高めるために、これに更に加工を施し、より高い機能を付与した感熱記録体とすることができる。例えば、裏面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等による塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙とすることができる。特に、本発明の偽造防止用記録体に粘着加工を施したものは感熱ラベルとして有用である。また、裏面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット記録用紙、ノーカーボン用紙、静電記録用紙、ゼオグラフィー用紙としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。勿論、両面感熱記録体とすることもできる。また、感熱記録体裏面からの油や可塑剤の浸透を抑制したり、カールコントロールや帯電防止のためにバック層を設けることもできる。
【0064】
支持体上に上記各層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、カーテン法、スロットダイ法、スライドダイ法及びエクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。
【0065】
本発明では、支持体上に形成された少なくとも1層がカーテン塗布法により形成された層であることが好ましい。これにより、均一な厚みを有する層を形成することができ、記録感度を高めたり、油、可塑剤、アルコール等に対するバリア性を高めたりすることができる。カーテン塗布法は、塗液を流下して自由落下させ、支持体に非接触で塗布する方法であり、スライドカーテン法、カップルカーテン法、ツインカーテン法等の公知のものを採用することができ、特に制限されるものではない。カーテン塗布法では、同時多層塗布することにより、より均一な厚みを有する層を形成することができる。同時多層塗布では、各塗液を積層した後、塗布し、その後、乾燥させて各層を形成してもよいし、下層を形成する塗液を塗布した後、乾燥することなく下層塗布面が湿潤状態のうちに、下層塗布面上に上層を形成する塗液を塗布し、その後、乾燥させて各層を形成してもよい。本発明では、感熱記録層と保護層を同時多層塗布する態様がバリア性を向上する観点から好ましい。
【0066】
感熱記録面をスーパーカレンダーやソフトカレンダー等の既知の平滑化方法を用いて平滑化処理することは、その記録感度を高める効果がある。感熱記録面を、カレンダーの金属ロール及び弾性ロールのいずれに当てて処理してもよい。
【実施例】
【0067】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、顕色剤、染料前駆体、及び保護層に配合する顔料の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200(島津製作所製)を用いて測定した。
【0068】
実施例1
・染料前駆体分散液(A液)の調製
黄色系の色調に発色する染料前駆体として、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、縦型サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が0.7μmとなるように粉砕して、A液を得た。
【0069】
・顕色剤分散液(B液)の調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、ウルトラビスコミルを用いて体積平均粒子径が1.5μmとなるまで粉砕して、B液を得た。
【0070】
・増感剤分散液(C液)の調製
1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、縦型サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmとなるように粉砕して、C液を得た。
【0071】
・感熱記録層用塗液の調製
A液20部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L1571、旭化成社製、固形分濃度48%)5部、10%ポリビニルアルコール水溶液(商品名:ポバール(登録商標)PVA−110、クラレ社製)25部、B液23部、C液11部、5%界面活性剤水溶液(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)2部、及び水17部からなる組成物を混合撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0072】
・カオリン分散液(D液)の調製
カオリン(商品名:UW−90(登録商標)、BASF社製)80部、ポリアクリル酸ナトリウムの40%水溶液(商品名:アロンT−50、東亞合成社製)1部、及び水53部を混合し、サンドミルを用いて体積平均粒子径が1.6μmとなるまで粉砕して、D液を得た。
【0073】
・保護層用塗液の調製
D液25部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマー(登録商標)Z−200、日本合成化学工業社製、重合度:約1000、鹸化度:約98モル%)の15%水溶液50部、パラフィンワックス(商品名:ハイドリンP−7、中京油脂社製、固形分濃度30%)7.5部、5%界面活性剤水溶液(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)5部、グリオキザール(日本合成化学工業社製、固形分濃度40%)0.3部、及び水12.5部からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を得た。
【0074】
・感熱記録体の作製
支持体としてアルミ蒸着紙(商品名:アルミックT、トッパンレーベル社製、厚さ50μm)のアルミ蒸着層が設けられた面上に、感熱記録層用塗液、保護層用塗液をそれぞれ乾燥後の塗布量が乾燥後の塗布量が5.5g/m(黄色系の色調に発色する染料前駆体の含有量1.5g/m)、3.0g/mとなるようにメイヤーバーにて塗布及び乾燥した後、スーパーカレンダー処理を行い、感熱記録体を得た。
【0075】
実施例2
実施例1のA液の調製において、黄色系の色調に発色する染料前駆体を4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0076】
実施例3
実施例1のA液の調製において、黄色系の色調に発色する染料前駆体を4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、1−(4−n−ドデシルオキシ−3−メトキシフェニル)−2−(2−キノリル)エチレンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0077】
実施例4
実施例1のA液の調製において、黄色系の色調に発色する染料前駆体として4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、4−[2−(2−ヘキシルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0078】
実施例5
実施例1のA液の調製において、黄色系の色調に発色する染料前駆体として4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、4−[2−(2−ペンチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0079】
実施例6
実施例1のA液の調製において、黄色系の色調に発色する染料前駆体として4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、4−[2,6−ビス(2−ブトシキフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0080】
実施例7
実施例1のA液の調製において、黄色系の色調に発色する染料前駆体として4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、4−(2,6−ジフェニル−4−ピリジニル)−N,N−ジメチルベンゼンアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0081】
実施例8
実施例1の感熱記録体の作製において、感熱記録層用塗液の乾燥後の塗布量を5.5g/mに代えて、2.5g/m(黄色系の色調に発色する染料前駆体の含有量0.7g/m)とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0082】
実施例9
実施例1の感熱記録体の作製において、感熱記録層用塗液の乾燥後の塗布量を5.5g/mに代えて、4.0g/m(黄色系の色調に発色する染料前駆体の含有量1.1g/m)とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0083】
実施例10
実施例1の感熱記録体の作製において、感熱記録層用塗液の乾燥後の塗布量を5.5g/mに代えて、20.0g/m(黄色系の色調に発色する染料前駆体の含有量5.6g/m)とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0084】
実施例11
実施例1の感熱記録体の作製において、支持体をアルミ蒸着紙に代えて、アルミ蒸着フィルム(商品名:VM−PET、東レ社製、厚さ50μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0085】
比較例1
実施例1の感熱記録体の作製において、支持体としてアルミ蒸着紙に代えて、金属光沢を有しない合成紙(商品名:FPG−80、ユポ・コーポレーション社製、厚さ80μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0086】
比較例2
実施例1のA液の調製において、黄色系の色調に発色する染料前駆体を4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、黒色系の色調に発色する染料前駆体である3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アリニノフルオランを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0087】
かくして得られた感熱記録体について、以下の評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
【0088】
(発色色調)
感熱記録用シミュレーター(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー0.968mJ/dot条件にて記録し、記録部の見た目の発色色調を目視にて評価した。
【0089】
(金属光沢)
熱風乾燥機を用いて、乾燥機内の温度120℃条件にて発色させた焼き面を作成し、焼き面を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:金属光沢が強い。
○:金属光沢がある。
×:金属光沢がない。
【0090】
(動発色濃度)
感熱記録用シミュレーター(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー0.968mJ/dotの条件にて記録し、記録部の発色濃度としてx−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、エックスライト社製、色彩測定使用)でY濃度を測定した。十分な金色を得るには、発色濃度が1.00以上であることが好ましく、より好ましくは1.30以上であり、更に好ましくは1.60以上である。
【0091】
(静発色開始温度)
熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、押圧9.8×10Pa、接触時間5秒間の条件、40〜220℃の範囲で、10℃毎に発色させ、記録部の発色濃度としてx−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、エックスライト社製、色彩測定使用)でY濃度を測定し、発色濃度が0.2を挟む温度の間で、線形補間を行って、発色濃度0.2に相当する温度を求めた。十分な金色を得るには、発色濃度が0.2となる温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。
【0092】
(発色像の保存性)
感熱記録用シミュレーター(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー0.968mJ/dotの条件にて記録し、記録部を有する感熱記録体を用いて、50℃、80%RHの環境下で24時間放置する処理を施した後、x−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、エックスライト社製、色彩測定使用)で記録部のY濃度を測定し、下記式により記録部の発色濃度の残存率を求めた。発色濃度の残存率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。
発色濃度の残存率(%)=[(処理後の発色濃度)/(処理前の発色濃度)]×100
【0093】
(発色像の耐光性)
感熱記録用シミュレーター(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー0.968mJ/dotの条件にて記録し、記録部を有する感熱記録体を、蛍光灯下で5000ルクス×100時間の照射処理を行った後、x−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、エックスライト社製、色彩測定使用)で記録部のY濃度を測定し、上記の発色像の保存性と同様に記録部の発色濃度の残存率を求めた。発色濃度の残存率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0094】
(色度)
感熱記録用シミュレーター(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー0.968mJ/dotの条件にて記録し、x−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、エックスライト社製、色彩測定使用)で記録部の色度b値を測定した。十分な金色を得るには、+50.0以上が好ましい。
【0095】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の感熱記録体は、支持体の有する金属光沢により、見た目の色調が感熱記録層に含有される染料前駆体の発色色調とは異なる発色像が得られ、鮮明な金色メタル調を呈することができる。このため、本発明の感熱記録体は、鮮明な金色メタル調の色調を活かした可変情報を記録可能であり、例えば金券、クーポン券などの各種チケット、レシート、ラベル、籤、見本帳、値札、荷札、ダイレクトメール、メッセージカード、広告や看板などのディスプレイ、梱包・包装材料等のほか、金箔の代用等の用途に好適に用いられる。