特許第6086118号(P6086118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086118ポリアミック酸溶液組成物、及びポリイミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086118
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ポリアミック酸溶液組成物、及びポリイミド
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20170220BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170220BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20170220BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C08L79/08 Z
   C08K3/36
   C08G73/10
   C08J5/18
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-512696(P2014-512696)
(86)(22)【出願日】2013年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2013062301
(87)【国際公開番号】WO2013161970
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-103920(P2012-103920)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】中山 知則
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛成
(72)【発明者】
【氏名】加峯 哲治
(72)【発明者】
【氏名】北山 直樹
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−280807(JP,A)
【文献】 特開2010−030972(JP,A)
【文献】 特開2010−235641(JP,A)
【文献】 特表2010−513591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00− 101/14
C08G 73/00− 73/26
C08K 3/00− 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイスの製造方法であって、
フッ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物1種以上からなるテトラカルボン酸成分と、フッ素原子を含有するジアミン1種以上からなるジアミン成分とを溶媒中で反応させて得られるポリアミック酸溶液に、シリカの量がテトラカルボン酸成分とジアミン成分の合計量100質量部に対して1〜100質量部の量になるように、有機溶媒にコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液を添加してなるポリアミック酸溶液組成物をキャリア基板上に塗布し、加熱処理して固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程、
前記ポリイミド樹脂膜上に回路を形成する工程、及び、
前記回路が表面に形成されたポリイミド樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程
を含ことを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項2】
添加されるシリカの量が、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の合計量100質量部に対して、5〜70質量部の量であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルデバイスの製造方法
【請求項3】
前記シリカの粒子径が、1〜60nmであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のフレキシブルデバイスの製造方法
【請求項4】
前記ポリアミック酸溶液組成物を加熱処理して得られるポリイミドが、膜厚10μmのフィルムでの波長400nmの光透過率が70%以上であり、且つ、300〜400℃の線膨張係数が350ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルデバイスの製造方法
【請求項5】
前記ポリアミック酸溶液組成物を加熱処理して得られるポリイミドが、300〜400℃の線膨張係数が250ppm/℃以下であることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブルデバイスの製造方法
【請求項6】
前記フッ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物が、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物であり、
前記フッ素原子を含有するジアミンが、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び/又は2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブルデバイスの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れ、線膨張係数(CTE)、特に高温での線膨張係数が比較的低く制御されたポリイミドを得ることができるポリアミック酸溶液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリイミドは、耐熱性、機械的強度、電気特性、耐溶剤性などの特性が優れるために、電気電子産業分野などで広く用いられている。しかし、ポリイミドは有機溶媒への溶解性が悪いので、通常は、ポリイミド前駆体のポリアミック酸を溶媒に溶解した溶液組成物(ポリアミック酸溶液組成物)を、例えば基材表面上に塗布し、次いで高温で加熱して脱水閉環(イミド化)させることでポリイミドを得ている。
【0003】
しかしながら、ポリイミドは、一般に、分子内共役や電荷移動錯体の形成により本質的に黄褐色に着色する傾向があり、用途によっては透明性の向上が求められている。
【0004】
特許文献1には、脂環式テトラカルボン酸二無水物であるシクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとから得られる、光透過性に優れたポリイミドが開示されている。しかしながら、脂環式テトラカルボン酸二無水物および/または脂環式ジアミンをモノマー成分として使用したポリイミドは、芳香族ポリイミドと比較して、耐熱性や耐薬品性が劣る傾向がある。
【0005】
特許文献2には、フルオレン骨格を有する、透光性に優れたポリイミドが開示されている。しかしながら、このフルオレン骨格を有するポリイミドは、必ずしも十分な透明性を有してはいないことがある。また、フルオレン骨格を有するポリイミドは、線膨張係数が比較的高い傾向がある。
【0006】
特許文献3には、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物および4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物を含む芳香族二無水物成分と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホンおよびビス(4−アミノフェニル)スルホンの中から選ばれた1種または2種以上を含む芳香族ジアミン成分とから得られる、透明性に優れたポリイミドが開示されている。しかしながら、このポリイミドは、必ずしも十分に低い線膨張係数を有してはいないことがあり、特に200℃を超える高温(例えば300℃〜400℃)での線膨張係数については、より低く制御されることが望ましい。
【0007】
一方で、特許文献4には、分子鎖末端が酸無水物となるように調製されたポリアミド酸と、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等の高分子と結合し得る置換基を有する化合物(カップリング試薬)とを反応させ、次いで、テトラエトキシシランを加えて反応(加熱イミド化・シリカへの転化反応)させて得られる、ポリイミド/シリカハイブリッド材料が開示されている。しかしながら、この方法では、熱イミド化時にアミノプロピル基が熱分解して、得られるポリイミドの透過率が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−30972号公報
【特許文献2】特開2010−235641号公報
【特許文献3】特表2010−513591号公報
【特許文献4】特開2006−312680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、透明性に優れ、線膨張係数、特に高温での線膨張係数が比較的低く制御されたポリイミドを得ることができるポリアミック酸溶液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の事項に関する。
1. フッ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上の量で含むテトラカルボン酸成分と、フッ素原子を含有するジアミンを50モル%以上の量で含むジアミン成分とを溶媒中で反応させて得られるポリアミック酸溶液に、シリカの量がテトラカルボン酸成分とジアミン成分の合計量100質量部に対して1〜100質量部の量になるように、有機溶媒にコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液を添加してなるポリアミック酸溶液組成物。
2. 添加されるシリカの量が、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の合計量100質量部に対して、5〜70質量部の量であることを特徴とする前記項1に記載のポリアミック酸溶液組成物。
3. 前記シリカの粒子径が、1〜60nmであることを特徴とする前記項1〜2のいずれかに記載のポリアミック酸溶液組成物。
【0011】
4. ポリアミック酸溶液組成物を加熱処理して得られるポリイミドが、膜厚10μmのフィルムでの波長400nmの光透過率が70%以上であり、且つ、300〜400℃の線膨張係数が350ppm/℃以下であることを特徴とする前記項1〜3のいずれかに記載のポリアミック酸溶液組成物。
5. ポリアミック酸溶液組成物を加熱処理して得られるポリイミドが、300〜400℃の線膨張係数が250ppm/℃以下であることを特徴とする前記項4に記載のポリアミック酸溶液組成物。
【0012】
6. 前記フッ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物が、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物であり、
前記フッ素原子を含有するジアミンが、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び/又は2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンであることを特徴とする前記項1〜5のいずれかに記載のポリアミック酸溶液組成物。
【0013】
7. 前記項1〜6のいずれかに記載のポリアミック酸溶液組成物を製造する方法であって、
フッ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上の量で含むテトラカルボン酸成分と、フッ素原子を含有するジアミンを50モル%以上の量で含むジアミン成分とを溶媒中で反応させてポリアミック酸溶液を製造する工程と、
得られたポリアミック酸溶液に、シリカの量がテトラカルボン酸成分とジアミン成分の合計量100質量部に対して1〜100質量部の量になるように、有機溶媒にコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液を添加し、混合する工程と
を有するポリアミック酸溶液組成物の製造方法。
【0014】
8. 前記項1〜6のいずれかに記載のポリアミック酸溶液組成物を加熱処理して得られるポリイミド。
9. 前記項8に記載のポリイミドを含む電気装置、電子装置、光学装置、表示装置、タッチパネル、太陽電池、又はLED照明装置。
【0015】
10. 表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイスの製造方法であって、
前記項1〜6のいずれかに記載のポリアミック酸溶液組成物をキャリア基板上に塗布し、加熱処理して固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記ポリイミド樹脂膜上に回路を形成する工程、及び、前記回路が表面に形成されたポリイミド樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程を含むことを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
11. 前記項10に記載のフレキシブルデバイスの製造方法により製造された表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、透明性に優れ、線膨張係数、特に高温での線膨張係数(例えば300〜400℃の線膨張係数)が比較的低く制御されたポリイミドを得ることができるポリアミック酸溶液組成物を提供することができる。
【0017】
本発明のポリアミック酸溶液組成物から得られるポリイミド、すなわち本発明のポリイミドは、透明性が高く、且つ線膨張係数、特に高温での線膨張係数(例えば300〜400℃の線膨張係数)が比較的低く制御されている。本発明のポリイミドは、電気装置、電子装置、光学装置に好適に用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置、タッチパネルや、太陽電池、LED照明装置の基板、又は保護膜などとして好適に用いることができる。特に、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、薄膜太陽電池の受光素子等の受光デバイスなどのフレキシブルデバイスの基板として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリアミック酸溶液組成物中のポリアミック酸は、フッ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上の量で含むテトラカルボン酸成分と、フッ素原子を含有するジアミンを50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上の量で含むジアミン成分とから得られるものである。なお、テトラカルボン酸成分には、テトラカルボン酸と、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸誘導体が含まれる。
【0019】
したがって、本発明のポリアミック酸は、下記化学式(1)で表される繰返し単位からなる。
【0020】
【化1】
【0021】
化学式(1)のAは、テトラカルボン酸成分に由来する化学構造であって、テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、Bは、ジアミン成分に由来する化学構造であって、ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であり、ただし、Aの50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上が、フッ素原子を含有するテトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、Bの50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上が、フッ素原子を含有するジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。
【0022】
本発明において用いるフッ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記式(2)で示される2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5,5’−[2,2,2−トリフルオロ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチリデン]ジフタル酸無水物、5,5’−[2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(トリフルオロメチル)プロピリデン]ジフタル酸無水物、1H−ジフロ[3,4−b:3’,4’−i]キサンテン−1,3,7,9(11H)−テトロン、5,5’−オキシビス[4,6,7−トリフルオロ−ピロメリット酸無水物]、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4−(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、1,4−ジフルオロピロメリット酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物などが挙げられる。中でも、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物を好適に用いることができる。
【0023】
【化2】
【0024】
なお、フッ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物は、1種を用いても、2種以上を用いてもよい。
【0025】
本発明において用いるフッ素原子を含有するジアミンとしては、例えば、下記式(3)で示される2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFMB)、下記式(4)で示される2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ジアミノベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ベンゼン(ジメタンアミン)、2,2’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、2,2’,6,6’−テトラフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−オキシビス(2,3,5,6−テトラフルオロアニリン)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFMB)、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル、1,4−ビス[4−アミノ−2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン、2,2−ビス[4−[4−アミノ−2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ヘキサフルオロプロパン、3,5−ジアミノベンゼントリフロリド、4,4−ジアミノ−2−(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテルなどが挙げられる。中でも、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル及び2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを好適に用いることができる。
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】
【0028】
なお、フッ素原子を含有するジアミンは、1種を用いても、2種以上を用いてもよい。
【0029】
本発明のポリアミック酸は、本発明の特性を損なわない範囲で、他のテトラカルボン酸成分および/または他のジアミン成分を使用して得られるものであってもよい。例えば、全テトラカルボン酸成分100モル%中、50モル%以下、好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下が1種以上の他のテトラカルボン酸成分であってもよく、また、ジアミン成分100モル%中、50モル%以下、好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下が1種以上の他のジアミン成分であってもよい。
【0030】
使用可能な他のテトラカルボン酸成分としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3;5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−エタノ−1H,3H−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジフラン1,3,5,7−テトロンなどの脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)などのフルオレン骨格を含むテトラカルボン酸二無水物、4,4’−チオジフタル酸二無水物などの硫黄原子を含有するテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ジメチルシラジイル)ジフタル酸二無水物などのケイ素原子を含有するテトラカルボン酸二無水物や、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0031】
使用可能な他のジアミン成分としては、例えば、trans−1,4−シクロヘキサンジアミン(CHDA)、cis−1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1.3−アダマンタンジアミン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)アダマンタン、1,3−シクロヘキサンジアミンなどの脂環式ジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、9.9−ビス[(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレンなどのフルオレン骨格を含むジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’−ジアミノジフェニルスルフィドなどの硫黄原子を含有するジアミン、4,4−(ジメチルシラジイル)ジアミノベンゼンなどのケイ素原子を含有するジアミンや、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−トルエンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン、2,4−ジアミノトルエンなどが挙げられる。
【0032】
本発明のポリアミック酸は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを溶媒中で反応させることによって、ポリアミック酸溶液(またはポリアミック酸溶液組成物)として得ることができる。
【0033】
この反応は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等モル用い、イミド化反応を抑制するために、例えば100℃以下、好ましくは80℃以下の比較的低温で行なわれる。限定するものではないが、通常、反応温度は25℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは50℃〜80℃であり、反応時間は0.1〜24時間程度、好ましくは2〜12時間程度であることが好ましい。反応温度及び反応時間を前記範囲内とすることによって、効率よく高分子量のポリアミック酸の溶液組成物を得ることができる。なお、反応は、空気雰囲気下でも行うことができるが、通常は不活性ガス雰囲気下、好ましくは窒素ガス雰囲気下で好適に行われる。
【0034】
また、テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比[テトラカルボン酸成分/ジアミン成分]は、好ましくは0.90〜1.10程度、より好ましくは0.95〜1.05程度である。
【0035】
ポリアミック酸を調製する際に使用する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。さらに、その他の一般的な有機溶剤、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒や、フェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒、生分解性の乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなども使用できる。使用する有機溶剤は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。
【0036】
本発明のポリアミック酸溶液組成物は、少なくとも本発明のポリアミック酸と溶媒とを含む。溶媒としては、ポリアミック酸が溶解すればよく、特に限定されないが、ポリアミック酸を調製する際に使用する溶媒と同じものを挙げることができる。溶媒は2種以上の混合物であってもよい。
【0037】
本発明のポリアミック酸溶液組成物は、さらに、シリカを、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の合計量100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは10〜90質量部の量で含む。ある実施態様においては、ポリアミック酸溶液組成物は、さらに、シリカを、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の合計量100質量部に対して5〜70質量部の量で含むことが好ましい。この範囲の量でシリカを添加することによって、ポリアミック酸溶液組成物から得られるポリイミドの高い透明性を維持しつつ、高温での線膨張係数(例えば300〜400℃の線膨張係数)を低下させることができる。また、シリカの添加量により、得られるポリイミドの、特に高温での線膨張係数を制御することが可能である。
【0038】
本発明において用いるシリカは、得られるポリイミドの透明性およびシリカの分散性の観点から、動的光散乱法で測定した粒子径が200nm以下、より好ましくは1〜60nm、特に好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは10〜30nmのものであることが好ましい。
【0039】
本発明のポリアミック酸溶液組成物は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを溶媒中で反応させてポリアミック酸溶液(またはポリアミック酸溶液組成物)を得た後、これにシリカを、シリカの量がテトラカルボン酸成分とジアミン成分の合計量100質量部に対して1〜100質量部の量になるように、添加することで製造することができる。
【0040】
本発明においては、得られるポリイミドの分子量の観点から、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを溶媒中で反応させて得られるポリアミック酸溶液に、有機溶媒にコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液を添加し、混合することでポリアミック酸溶液組成物を製造することが好ましい。
【0041】
コロイダルシリカの溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(NPC)、エチレングリコール(EG)、イソプロパノール(IPA)、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。コロイダルシリカの溶媒は、所望の物性が得られるように、ポリアミック酸溶液の溶媒に応じて選択することが好ましく、通常、ポリアミック酸溶液との相溶性が高い溶媒であることが好ましい。溶媒の選択によって、得られるポリイミドの透明性および/または線膨張係数が変わることがある。
【0042】
なお、使用する有機溶媒は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。
【0043】
添加するコロイダルシリカの溶液は、コロイダルシリカの含有量が、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは15〜30質量%であることが好適である。
【0044】
本発明のポリアミック酸溶液組成物は、必要に応じて、他の添加成分、例えば、シリカ以外のフィラーなどを添加することもできる。得られるポリイミドの透明性およびフィラーの分散性の観点から、添加するフィラーは、粒子径が200nm以下、より好ましくは50nm以下であることが好ましい。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの各種無機フィラーを用いることができる。
【0045】
本発明において、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の対数粘度は、特に限定されないが、30℃での濃度0.5g/dLのN−メチル−2−ピロリドン溶液における対数粘度が0.2dL/g以上、好ましくは0.4dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.2dL/g以上では、ポリイミド前駆体の分子量が高く、得られるポリイミドの機械強度や耐熱性に優れる。
【0046】
本発明のポリアミック酸溶液組成物は、ポリアミック酸に起因する固形分濃度が、特に限定されるものではないが、ポリイミド前駆体と溶媒との合計量に対して、好ましくは5質量%〜45質量%、より好ましくは7質量%〜40質量%、さらに好ましくは9質量%〜30質量%であることが好適である。固形分濃度が5質量%より低いと生産性、及び使用時の取り扱いが悪くなることがあり、45質量%より高いと溶液の流動性がなくなることがある。
【0047】
また、本発明のポリアミック酸溶液組成物の30℃における溶液粘度は、特に限定されないが、好ましくは1000Pa・sec以下、より好ましくは0.1〜500Pa・sec、さらに好ましくは0.1〜300Pa・sec、特に好ましくは0.1〜200Pa・secであることが取り扱い上好適である。溶液粘度が1000Pa・secを超えると、流動性がなくなり、金属やガラスなどへの均一な塗布が困難となることがあり、また、0.1Pa・secよりも低いと、金属やガラスなどへの塗布時にたれやハジキなどが生じることがあり、また高い特性のポリイミド、或いはポリイミドフレキシブルデバイス用基板等を得ることが難しくなることがある。
【0048】
前述の通り、本発明のポリアミック酸溶液組成物は、透明性に優れ、線膨張係数、特に高温での線膨張係数が比較的低く制御されたポリイミドを得ることができるものである。
【0049】
本発明のポリアミック酸溶液組成物は、例えば、加熱処理によって溶媒を除去するとともにイミド化(脱水閉環)することによって好適にポリイミドを得ることができる。加熱処理条件は、特に限定されないが、50℃〜150℃、150℃〜250℃の温度範囲で乾燥した後、更に300℃〜400℃、好ましくは350℃〜400℃の温度で加熱処理することが好ましい。
【0050】
この加熱処理は、常圧下で好適に行うこともできるが、溶媒を効率よく除去するために減圧下で行ってもよい。また、初期段階で減圧下、比較的低温で加熱処理して脱泡処理してもよい。いきなり加熱処理温度を高くすると、発泡などの不具合が生じて良好な特性を有するポリイミドを得ることができないことがある。
【0051】
また、イミド化反応は、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸をピリジン、トリエチルアミンなどの触媒存在下にて脱水試薬と化学反応させることによっても行うことができる。
【0052】
なお、イミド化の方法は特に限定されず、公知の熱イミド化、または化学イミド化の方法を好適に適用することができる。
【0053】
本発明のポリアミック酸溶液組成物から得られるポリイミドは高い透明性を有する。本発明によれば、例えば、膜厚10μmのフィルムにしたとき、波長400nmの光透過率が70%以上、さらには75%以上、さらには80%以上であるポリイミドを得ることができる。
【0054】
本発明のポリアミック酸溶液組成物から得られるポリイミドは、特に200℃を超える高温の線膨張係数が比較的低く制御されており、本発明によれば、例えば、300〜400℃の線膨張係数が350ppm/℃以下、さらには250ppm/℃以下、さらには10〜200ppm/℃であるポリイミドを得ることができる。
【0055】
本発明によれば、膜厚10μmのフィルムでの波長400nmの光透過率が70%以上であり、且つ、300〜400℃の線膨張係数が350ppm/℃以下、さらには250ppm/℃以下であるポリイミドを得ることができる。このような透明性に優れ、同時に、特に高温での線膨張係数が低く制御されたポリイミドを得ることができるポリアミック酸溶液組成物は従来にはなかったものである。
【0056】
なお、本発明のポリイミドからなるフィルムの厚みは、用途に応じて適宜選択でき、好ましくは1μm〜100μm程度、さらに好ましくは1μm〜50μm程度である。
【0057】
本発明のポリアミック酸溶液組成物から得られるポリイミドは高い透明性を有しているので、透明性が要求される電気装置、電子装置、光学装置に好適に用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置、タッチパネルや、太陽電池、LED照明装置の基板、又は保護膜などとして好適に用いることができる。特に、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、薄膜太陽電池の受光素子等の受光デバイスなどのフレキシブルデバイスの基板として好適に用いることができる。
【0058】
なお、本発明のポリアミック酸溶液組成物は、得られるポリイミドの用途に応じて、他の添加成分を含有していてもよい。
【0059】
本発明のポリアミック酸溶液組成物は、フレキシブルデバイス基板用のポリイミド前駆体組成物として特に好適に用いることができる。
【0060】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法においては、ポリアミック酸溶液組成物を、基材の表面に塗布或いは吹き付けしてポリアミック酸溶液組成物層からなる塗膜を形成し、そのポリアミック酸溶液組成物を加熱処理してポリイミドフレキシブルデバイス用基板を得る。
【0061】
本発明において、ポリアミック酸溶液組成物は、加熱処理によって溶媒を除去するとともにイミド化(脱水閉環)することによって好適にポリイミドフレキシブルデバイス用基板を得ることができる。加熱処理条件は、特に限定されないが、50℃〜150℃、150℃〜250℃の温度範囲で乾燥した後、更に300℃〜400℃、好ましくは350℃〜400℃の温度で加熱処理することが好ましい。
【0062】
この加熱処理は、常圧下で好適に行うこともできるが、溶媒を効率よく除去するために減圧下で行ってもよい。また、初期段階で減圧下、比較的低温で加熱処理して脱泡処理してもよい。いきなり加熱処理温度を高くすると、発泡などの不具合が生じて良好なフレキシブルデバイス用基板を得ることができないことがある。
【0063】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法においては、ポリイミド前駆体組成物(ポリアミック酸溶液組成物)を支持体であるキャリア基板上に塗布し、加熱処理して固体状のポリイミド樹脂膜を形成し、このポリイミド樹脂膜上に回路を形成した後、回路が表面に形成されたポリイミド樹脂膜をキャリア基板から剥離する。
【0064】
ポリアミック酸溶液組成物の塗布は、キャリア基板(支持体)上に均一な厚みの塗膜を形成できる方法であれば、いずれも適用できる。例として、ダイコーティングやスピンコーティング、スクリーン印刷による塗布が可能である。
【0065】
キャリア基板上にポリアミック酸溶液組成物からなる塗膜を形成し、比較的低温で加熱処理して溶媒除去を行って自己支持性膜(皮膜の流動が発生しない状態、溶媒の除去と共に重合及び一部イミド化反応が進んでいる)を形成し、次いで自己支持性膜をそのままの状態、或いは必要に応じて基材から剥がした状態で加熱処理して脱水・イミド化する方法によってフレキシブルデバイス用基板を好適に得ることができる。ここで用いた「溶媒除去」或いは「脱水・イミド化」は、当該工程で、それぞれ溶媒除去のみ或いは脱水・イミド化のみが進行することを意味しない。溶媒除去工程でも相当程度の脱水・イミド化は進行するし、脱水・イミド化工程でも残存溶媒の除去が進行する。
【0066】
本発明のポリアミック酸溶液組成物は、得られるポリイミドフレキシブルデバイス用基板の用途に応じて、他の添加成分を含有していてもよい。また、得られるポリイミドフレキシブルデバイス用基板は、さらに他の樹脂層を積層したものであってもよい。
【0067】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法において、ポリイミド樹脂膜の厚さは、1〜20μmであることが望ましい。厚さが1μm未満である場合、ポリイミド樹脂膜が十分な耐性を保持できず、フレキシブルデバイス基板として使用したとき応力に耐えきれず破壊されることがある。また、ポリイミド樹脂膜の厚さが20μmを超えて厚くなると、フレキシブルデバイスの薄型化が困難となってしまう。フレキシブルデバイスとして十分な耐性を保持しながら、より薄膜化するには、ポリイミド樹脂膜の厚さは、2〜10μmであることがより望ましい。
【0068】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法においては、以上のようにして形成したポリイミド樹脂膜の上に、表示デバイス又は受光デバイスに必要な回路を形成する。この工程はデバイスの種類により異なる。例えば、TFT液晶ディスプレイデバイスを製造する場合には、ポリイミド樹脂膜の上に、例えばアモルファスシリコンのTFTを形成する。TFTは、ゲート金属層、窒化ケイ素ゲート誘電体層、ITI画素電極を含む。この上に、さらに液晶ディスプレイに必要な構造を、公知の方法によって形成することも出来る。本発明において得られるポリイミド樹脂膜は耐熱性、靱性等各種特性に優れるので、回路等を形成する手法は特に制限されない。
【0069】
以上のようにして回路等を表面に形成したポリイミド樹脂膜をキャリア基板から剥離する。剥離方法に特に制限はなく、例えばキャリア基板側からレーザー等を照射することで剥離を行うことができる。本発明により得られるポリイミド樹脂膜は、高い可とう性、靭性を有するので、キャリア基板(支持体)と単に物理的に剥離することも可能である。
【0070】
本発明におけるフレキシブルデバイスとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーといった表示デバイス、太陽電池、CMOSなどの受光デバイスを挙げることが出来る。本発明は、特に、薄型化かつフレキシブル性を付与したいデバイスへの適用に好適である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
以下の例で使用した化合物の略号は以下のとおりである。
6FDA:2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
2,2’−TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル
6FAP:2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
【0073】
以下の例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
【0074】
(固形分濃度)
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は、ポリアミック酸溶液を350℃で30分間乾燥し、乾燥前の重量Wと乾燥後の重量Wとから次式によって求めた値である。
【0075】
固形分濃度(重量%)=(W/W)×100
【0076】
(対数粘度)
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T1)を測定した。対数粘度は、ブランクの水の流下時間(T0)を用いて、次式から算出した。
【0077】
対数粘度={ln(T1/T0)}/0.5
【0078】
(線膨張係数(CTE))
膜厚10μmのポリイミド膜を幅4mmの短冊状に切り取って試験片とし、TMA/SS6100(エスアイアイ・テクノロジー社製)を用い、チャック間長15mm、荷重2g、昇温速度20℃/minで400℃まで昇温した。得られたTMA曲線から、50℃から200℃、300℃から400℃までの線膨張係数を求めた。
【0079】
(光透過率)
分光光度計U−2910(日立ハイテク製)を用いて、ポリイミド膜の波長400nmにおける透過率を測定した。そして、ランバード・ベール(Lambert−Beer Law)を用いて膜厚10μmにおける透過率を算出した。
【0080】
〔参考例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン440gを加え、2,2’−TFMBを25.12g(0.0785モル)と、6FDAを34.88g(0.0785モル)を加え、50℃で撹拌して、固形分濃度11.43%、対数粘度0.60のポリアミック酸溶液を得た。
【0081】
〔比較例1〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
〔実施例1〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、N,N−ジメチルアセトアミドにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、DMAc−ST;シリカ粒子固形分濃度:20wt%;シリカの粒子径:10〜20nm)を6g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して2質量部である。
【0083】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
〔実施例2〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、N,N−ジメチルアセトアミドにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、DMAc−ST)を15g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して5質量部である。
【0085】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
〔実施例3〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、N,N−ジメチルアセトアミドにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、DMAc−ST)を60g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して20質量部である。
【0087】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0088】
〔実施例4〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、N,N−ジメチルアセトアミドにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、DMAc−ST)を120g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0089】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
〔実施例5〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカの粒子径:10〜20nm)を40g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して20質量部である。
【0091】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表2に示す。
【0092】
〔実施例6〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST)を80g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0093】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表2に示す。
【0094】
〔実施例7〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST)を120g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して60質量部である。
【0095】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表2に示す。
【0096】
〔実施例8〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、NPC−ST−30;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカの粒子径:10〜20nm)を80g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0097】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表2に示す。
【0098】
〔実施例9〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、NPC−ST−30)を120g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して60質量部である。
【0099】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表2に示す。
【0100】
〔実施例10〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、エチレングリコールにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、EG−ST;シリカ粒子固形分濃度:20wt%;シリカの粒子径:10〜20nm)を120g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0101】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表2に示す。
【0102】
〔実施例11〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、エチレングリコールにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、EG−ST)を180g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して60質量部である。
【0103】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表2に示す。
【0104】
〔実施例12〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、イソプロパノールにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、IPA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカの粒子径:10〜20nm)を80g添加して攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0105】
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上に厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。
そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表2に示す。
【0106】
〔参考例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン440gを加え、6FAPを27.11g(0.0740モル)と、6FDAを32.89g(0.0740モル)を加え、50℃で攪拌して、固形分濃度11.47%、対数粘度0.19のポリアミック酸溶液を得た。
【0107】
〔比較例2〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表3に示す。
【0108】
〔実施例13〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を80g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して40質量部である。
【0109】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表3に示す。
【0110】
〔実施例14〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を160g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して80質量部である。
【0111】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表3に示す。
【0112】
〔実施例15〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、メチルエチルケトンにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、MEK−ST−40;シリカ粒子固形分濃度:40wt%;シリカ粒子径10〜15nm;表面改質無し)を80g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して40質量部である。
【0113】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表3に示す。
【0114】
〔実施例16〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、メチルエチルケトンにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、MEK−AC−2101;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm;表面改質有り)を80g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して40質量部である。
【0115】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表3に示す。
【0116】
〔実施例17〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、NPC−ST−30;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を80g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して40質量部である。
【0117】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表3に示す。
【0118】
〔実施例18〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、イソプロパノールにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、IPA−ST−30;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を80g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して40質量部である。
【0119】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表4に示す。
【0120】
〔実施例19〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、イソプロパノールにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、IPA−ST−S;シリカ粒子固形分濃度:25wt%;シリカ粒子径8〜10nm)を96g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して40質量部である。
【0121】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表4に示す。
【0122】
〔実施例20〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、イソプロパノールにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、IPA−ST−S;シリカ粒子固形分濃度:15wt%;シリカ粒子径9〜15nm)を160g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して40質量部である。
【0123】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表4に示す。
【0124】
〔実施例21〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、エチレングリコールにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、EG−ST;シリカ粒子固形分濃度:20wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を120g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP)100質量部に対して40質量部である。
【0125】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表4に示す。
【0126】
〔比較例3〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、参考例2で得られたポリアミック酸溶液を214g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表5に示す。
【0127】
〔実施例22〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、参考例2で得られたポリアミック酸溶液を214gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を114g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0128】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表5に示す。
【0129】
〔実施例23〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、参考例2で得られたポリアミック酸溶液を214gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を228g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP+2,2’−TFMB)100質量部に対して80質量部である。
【0130】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表5に示す。
【0131】
〔実施例24〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、参考例2で得られたポリアミック酸溶液を500gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を160g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0132】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表5に示す。
【0133】
〔実施例25〕
参考例1で得られたポリアミック酸溶液に、参考例2で得られたポリアミック酸溶液を500gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を320g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP+2,2’−TFMB)100質量部に対して80質量部である。
【0134】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表5に示す。
【0135】
〔実施例26〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、参考例1で得られたポリアミック酸溶液を214gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を114g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0136】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表5に示す。
【0137】
〔実施例27〕
参考例2で得られたポリアミック酸溶液に、参考例1で得られたポリアミック酸溶液を56gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにコロイダルシリカを分散させてなるコロイド溶液(日産化学工業株式会社製、PMA−ST;シリカ粒子固形分濃度:30wt%;シリカ粒子径10〜15nm)を89g加えて攪拌し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。シリカの添加量はモノマー成分(6FDA+6FAP+2,2’−TFMB)100質量部に対して40質量部である。
【0138】
このポリアミック酸溶液組成物を基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、120℃にて60分間、150℃にて30分間、200℃にて30分間、400℃にて1分間加熱処理し、ガラス板上の厚さが10μmのポリイミド膜を形成した。そして、ガラス板からポリイミド膜を剥離し、このポリイミド膜の線膨張係数および光透過率を測定した。その結果を表5に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明によって、透明性に優れ、線膨張係数、特に高温での線膨張係数が比較的低く制御されたポリイミドを得ることができるポリアミック酸溶液組成物を提供することができる。
【0145】
本発明のポリアミック酸溶液組成物を加熱処理して得られるポリイミドは、高い透明性を有し、線膨張係数、特に高温での線膨張係数が比較的低いために、電気装置、電子装置、光学装置等に好適に用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置、タッチパネルや、太陽電池、LED照明装置の基板、又は保護膜などとして好適に用いることができる。特に、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、薄膜太陽電池の受光素子等の受光デバイスなどのフレキシブルデバイスの基板として好適に用いることができる。