(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明における補助プラットフォームを適用できる作業機械としては、クローラクレーン(クローラ式の移動式クレーン)、ホイールクレーン(ホイール式の移動式クレーン)、固定式のクレーン(例えば、作業船に搭載されるクレーン)、コンテナクレーンなどの様々な作業機械を挙げることができる。
【0012】
(補助プラットフォームの配置例)
まず、
図1を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る補助プラットフォーム1,31のクローラクレーンにおける配置例について説明する。
【0013】
図1にはクローラクレーン100を構成する上部本体の一部を示している。ブーム(不図示)、ガントリ(不図示)などが取り付けられるメインフレームとしての旋回フレーム50の両側にデッキ51,52(右デッキ51、左デッキ52)が固定される。デッキ51,52には、キャブ(不図示)、エンジン(不図示)などが搭載される。旋回フレーム50、デッキ51,52はクローラクレーン100を構成する上部本体の一部である。なお、
図1中に、クローラクレーン100の前後方向および左右方向を矢印で示している。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のクローラクレーン100では、左デッキ52の側面に複数の補助プラットフォーム1が取り付けられ、右デッキ51の側面に複数の補助プラットフォーム31が取り付けられている。なお、デッキ51,52の左右方向の側面ではなく、デッキ51,52の前後方向の側面に補助プラットフォーム1,31が取り付けられてもよいし、旋回フレーム50の前後方向の側面に補助プラットフォーム1,31が取り付けられてもよい。
【0015】
(デッキの側面に設けられた穴)
デッキ51,52の側面には、補助プラットフォーム1,31を取り付けるための複数の穴53がそれぞれ設けられる。この穴53の構造を説明する。例えば
図2に示すように、左デッキ52を構成するフレーム部材52aには穴53が開けられており、穴53の上部には、下方へ向かって張り出す第1張出部としての板部材54がフレーム部材52aの内面に固定されることで配置されている。また、穴53の下部には、上方へ向かって張り出す第2張出部としての板部材55が板部材56を介してフレーム部材52aの内面に固定されることで配置されている。板部材54の下端端面、および板部材55の上端端面は、いずれも水平且つ平坦な面とされる。板部材54および板部材55の背面側には底板57が設けられている。
【0016】
なお、本実施形態では、底板57(板部材54および板部材55よりも上部本体の旋回中心側に設けられた当接部)を有する有底の孔53とされているが、底板57を省略してもよい(底板57は無くてもよい)。
図3には、右デッキ51を構成するフレーム部材51aに設けた穴53を示している。左デッキ52の側面に設けた穴53と、右デッキ51の側面に設けた穴53とは、その構造は同じである。
【0017】
(補助プラットフォームの構成)
次に、
図2〜
図5を参照しつつ補助プラットフォーム1の構成を説明する。補助プラットフォーム1は、プラットフォーム本体2と、プラットフォーム本体2の基端部に棒状部材としてのボルト16を介して回転可能に取り付けられる取付部としての取付ブラケット3とを具備している。なお、取付ブラケット3は、1つの補助プラットフォーム1について所定の間隔をあけて少なくとも2つ設けられる(後述する本体プレート5(および補助プレート6)、浮上り防止ブラケット4についても同様)。
【0018】
<プラットフォーム本体>
プラットフォーム本体2は、三角形状の(
図2参照)本体プレート5と、本体プレート5の側面に固定された平断面視L字状の(
図4参照)補助プレート6と、本体プレート5および補助プレート6の上面に固定されることでこれら本体プレート5および補助プレート6に支持される天板7(ステップ)とを有する。
【0019】
なお、
図2,4,5に示す補助プラットフォーム1と、
図3に示す補助プラットフォーム31との違いは、プラットフォーム本体2(32)のみであり、その相違点は、本体プレート5の両側面のうちのいずれの面に補助プレート6が固定されているのかの違いだけである。すなわち、本体プレート5に対する補助プレート6の上記配置を除いては、
図2に示す補助プラットフォーム1を反対側から(図奥側から手前へ向けて)視た側断面視は、
図3に示す補助プラットフォーム31の側断面視と同じである。そのため、補助プラットフォーム1を説明するのに、
図3に示す補助プラットフォーム31を適宜参照する。また、補助プラットフォーム1の説明は、補助プラットフォーム31の説明でもある。なお、補助プラットフォーム1と補助プラットフォーム31とに関し、同一または類似の部材には同じ符号を付している。
【0020】
図2に示すように、本体プレート5の基端部側にはボルト16が挿入される長孔5aが設けられ、この長孔5aと同形状・同寸法の長孔6aが補助プレート6にも設けられている。また、本体プレート5および補助プレート6の下端部には、プラットフォーム本体2の角度調整部材18が固定されている。角度調整部材18は、本体プレート5および補助プレート6に固定される固定部材19と、固定部材19に溶接固定されるナット20と、ナット20に螺合されるボルト21とで構成される。ナット20からのボルト21の突出量を調整することで、天板7の水平度を調整する。
【0021】
<取付ブラケット>
取付ブラケット3は、上方へ向かって延びる第1係止部8と、第1係止部8の下方に設けられた第2係止部9とを有する。第1係止部8の先端部は、板部材54に当接する側の面は平坦な面とされ、その反対側の面は先細りの曲面とされている。第2係止部9は、下方へ向かって開口する溝形状の切欠き部10(切欠き形状部分)を有し、この切欠き部10は、第1面10a、第2面10b、第3面10cを有する(本実施形態では計3面)。取付ブラケット3が取り付けられた状態において、第1面10aおよび第3面10cは鉛直方向に延びる鉛直面であり、第2面10bは水平面である。
【0022】
また、取付ブラケット3の基端部側にはボルト16が挿入される円形の孔3aが設けられ、且つ孔3aの下方には格納ピン23が挿入される円形の孔3bが設けられている。孔3bの下方には、上記角度調整部材18のボルト21が当接する当接部22が設けられている。なお、ボルト16回りに取付ブラケット3が自重で回転可能なように、孔3aの中心は、取付ブラケット3の重心からずれた位置とされる。また、第1係止部8の先端部(上端部)は孔3aの中心よりも上方に位置し、第2係止部9の切欠き部10は孔3aの中心よりも下方に位置する。
図3に示すように、格納ピン23は、本体プレート5に取り付けられピン24で抜け止め処置が施される。
【0023】
プラットフォーム本体2の間隔をあけて配置された本体プレート5と補助プレート6との間に、取付ブラケット3の基端部を挿入し、その後、プレート5,6の長孔5a,6a、および取付ブラケット3の孔3aにボルト16を挿入、そしてナット17を締め込むことで、プラットフォーム本体2と取付ブラケット3とは相互に回転可能に固定される。
【0024】
<浮上り防止ブラケット>
補助プラットフォーム1は、当該補助プラットフォーム1が左デッキ52の側面に取り付けられた状態において浮き上がるのを防止するための浮上り防止ブラケット4をさらに備えている。
【0025】
浮上り防止ブラケット4は、本体プレート11(
図2参照)と、本体プレート11の側面に固定された平断面視L字状の(
図4参照)補助プレート12とを有する。浮上り防止ブラケット4を構成する本体プレート11には、前記板部材54の下端部に係合する凹部4aが上端部に設けられており、浮上り防止ブラケット4は取付ピン14によって取付ブラケット3にピン止めされる。なお、取付ピン14はピン15で抜け止め処置が施される。
【0026】
上記凹部4a内には、
図2に示すように当接板13が配置されている。この当接板13は、間隔をあけて配置された本体プレート11と補助プレート12との間に掛け渡すように配置されてプレート11,12に固定される。
図3に示すように、本体プレート11の上端面(凹部4aの上端面)は、補助プレート12の上端面よりも高くされており、補助プレート12の上端面と、当接板13の上面とは面一とされ(高さが合わせられ)、且つ当接板13は水平配置とされる。
【0027】
(補助プラットフォームの格納)
図2に示す補助プラットフォーム1(プラットフォーム本体2)の姿勢は、補助プラットフォーム1使用時の姿勢である。補助プラットフォーム1を使用しないときは、後述するように、左デッキ52から補助プラットフォーム1を取り外しておくことができるが、例えば上部本体を保管しておくときなどで取り外さない場合は、補助プラットフォーム1(プラットフォーム本体2)を
図5に示す格納姿勢とすることができる(格納できる)。
【0028】
図2に示す状態から、ボルト16回りに(ボルト16を回転中心にして)プラットフォーム本体2を約90°回転させるとともに、長孔5a,6aの長さ分下方にずらすことで、プラットフォーム本体2を取付ブラケット3に対して立設した状態とする。そして、位置合わせしたプレート5,6の長孔5a,6a、と取付ブラケット3の孔3bとに格納ピン23を挿入し、抜け止めのためのピン24を格納ピン23にさし込むことでプラットフォーム本体2を固定する。これにより、補助プラットフォーム1(プラットフォーム本体2)は格納された状態となる。
【0029】
(補助プラットフォームの取付け方法)
デッキ側面への補助プラットフォーム1の取付け方法を
図6を参照しつつ説明する。
【0030】
取付ブラケット3の第1係止部8先端部の曲面部分を、左デッキ52の側面に設けられた穴53の下部の縁に当てながら、第1係止部8から補助プラットフォーム1の取付ブラケット3を穴53に挿入する(
図6A)。そして、補助プラットフォーム1を第1係止部8回りに回転させる(
図6B)。第1係止部8の上端部が板部材54の裏面に当接したら、補助プラットフォーム1を降ろして、第2係止部9の切欠き部10を板部材55に嵌め込む(
図6C)。これにより、第1係止部8の上端部が板部材54の裏面に当接し、且つ、第2係止部9の切欠き部10の第1面10aおよび第2面10bが、それぞれ、板部材55の表側面および上面に当接する。次いで、浮上り防止ブラケット4の凹部4aを板部材54の下端部に係合させ(
図6D)、浮上り防止ブラケット4を取付ブラケット3に取付ピン14およびピン15(抜け止め)でピン止めする(
図6E)。
【0031】
補助プラットフォーム1の天板7の上に人が乗ったとき、鉛直下向きの力と、プラットフォーム取付部から人の踏み位置までの距離によるモーメントが生じる。鉛直下向きの力は、切欠き部10の第2面10bで受ける。モーメントは、板部材54と第1係止部8との接触および板部材55と切欠き部10の第1面10aとの接触で受ける。
【0032】
なお、取付ブラケット3の第1係止部8を穴53に対して斜めに挿入することで(斜めに挿入する角度をできるだけ大きく設定することで)、小さな穴53とすることができ、これによりデッキの強度を確保しやすい。
【0033】
(補助プラットフォームの取外し方法)
浮上り防止ブラケット4と取付ブラケット3とを連結する取付ピン14およびピン15を取り外し(
図7A)、浮上り防止ブラケット4を外す(
図7B)。そして、ボルト16回りにプラットフォーム本体2を約85°回転させる(
図7C)。次いで、左デッキ52の側面から離れる方向の斜め上方へ向かってプラットフォーム本体2を持ち上げて、第2係止部9の切欠き部10の板部材55への嵌まり込みを外す(
図7D)。切欠き部10の板部材55への嵌まり込みが外れると、取付ブラケット3は自重でボルト16回りに回転し、これにより穴53から外れる(
図7E)。
【0034】
(作用・効果)
本発明に係る補助プラットフォーム1,31によれば、クローラクレーン100を分解して上部本体をトレーラーなどに搭載して輸送する場合に、上部本体(デッキ52,51)の側面に設けられた穴53から(換言すれば、板部材54および板部材55から)補助プラットフォーム1,31を取り外すことで、上部本体の側面から突出する補助プラットフォームがなくなる。すなわち、補助プラットフォーム関連部品が上部本体の輸送時などにその側面から突出しないようにすることができる。また、補助プラットフォーム関連部品を上部本体の下面側に取り付けないので、上部本体の下面側スペースを補助プラットフォーム関連部品で犠牲にすることはない。
【0035】
また、
図5に示したように、補助プラットフォーム不使用時、プラットフォーム本体2をボルト16回りに回転させることでプラットフォーム本体2を取付ブラケット3に対して立設した状態とし、この立設状態でプラットフォーム本体2と取付ブラケット3とが格納ピン23で固定されるようにしている。これによると、例えば上部本体を保管しておくときなどで補助プラットフォーム1,31を上部本体から特に取り外すまでのことは行わない場合に、プラットフォーム本体2を取付ブラケット3に対して立設した状態とすることで(補助プラットフォームの格納)、上部本体の側面からの補助プラットフォーム1,31の突出量を抑えることができる。
【0036】
また本実施形態の補助プラットフォーム1,31は、取付ブラケット3が自重で回転可能となるように、ボルト16が挿入される取付ブラケット3に設けられた孔3aの中心が取付ブラケット3の重心からはずれた位置とされている。この構成によると、
図7Eに示したように取付ブラケット3が自重で回転するので、補助プラットフォーム1,31の取外しをスムーズに行うことができる。
【0037】
また本実施形態の補助プラットフォーム1,31は、取付ブラケット3にピン止めされる浮上り防止ブラケット4をさらに備え、浮上り防止ブラケット4に形成されている凹部4aを板部材54の下端部に係合させるとともに、デッキ52,51の側面に取り付けられた取付ブラケット3に浮上り防止ブラケット4をピン止めすることで、補助プラットフォーム1,31の浮上りを防止している。
【0038】
この構成によると、補助プラットフォーム1,31の上部本体の側面からの張出し部を、当該張出し部に人が乗るときに踏んだ際や、補助プラットフォーム1,31が取り付けられたクローラクレーン100が荒れ地を走行する際などに、衝撃・振動などで、補助プラットフォーム1,31が上部本体の側面から外れてしまうことを防止することができる。
【0039】
(変形例)
上記実施形態では、第2係止部9の切欠き部10を、第1面10a、第2面10b、第3面10cを有するコ字形状(溝形状)としているが、これに代えて、第1面10a、第2面10bという相互に直交する2つの面のみを有するL字形状の切欠き部(切欠き形状部分)としてもよい。すなわち、第3面10cを省略してもよい。但し、本実施形態のように第3面10cも有するコ字形状(溝形状)の切欠き部10としたほうが、取付ブラケット3が外れにくいし、且つ取付ブラケット3の形状・各部寸法を設計しやすい。
【0040】
さらには、第2係止部9に切欠きを特に設けなくてもよい。板部材55(第2張出部)の上面に第2係止部9の下面が当接し、且つ上部本体に設けた穴53の底板57(底面)に第2係止部9の裏面が当接するようにすれば、前記した鉛直下向きの力とモーメントとをいずれも受けることができるからである。この場合、底板57も強度部材(モーメントに耐える部材)とする。
【0041】
前記した実施形態では、浮上り防止ブラケット4の凹部4a内に当接板13を配置したが、この当接板13を省略してもよい。但し、当接板13があれば、補助プラットフォーム1,31が浮き上がった場合に、板部材54(第1張出部)の平坦かつ水平な面に、当接板13が面で当たるので、補助プラットフォーム1,31の浮上りはより防止される。さらに言及すれば、浮上り防止ブラケット4自体を省略してもよい。
【0042】
プラットフォーム本体2に関し、前記した補助プレート6を省略してもよい。また、浮上り防止ブラケット4に関し、前記した補助プレート12を省略してもよい。また、プラットフォーム本体2と取付ブラケット3とは一体であってもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態およびその変形について説明したが、その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。