特許第6086136号(P6086136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086136無菌充填システム、容器殺菌ユニット、および無菌充填方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6086136
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】無菌充填システム、容器殺菌ユニット、および無菌充填方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/06 20060101AFI20170220BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20170220BHJP
   B67C 7/00 20060101ALI20170220BHJP
   B29C 49/76 20060101ALI20170220BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20170220BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20170220BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B65B55/06 B
   B65B55/04 C
   B67C7/00
   B29C49/76
   B29C49/42
   A61L2/04
   A61L2/18
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-174980(P2015-174980)
(22)【出願日】2015年9月4日
【審査請求日】2016年10月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小南 憲一
(72)【発明者】
【氏名】勝田 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 桂紹
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−86879(JP,A)
【文献】 特開2004−307062(JP,A)
【文献】 特開2015−157651(JP,A)
【文献】 特開2012−184034(JP,A)
【文献】 特開平11−227725(JP,A)
【文献】 特表平11−502175(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137486(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0199604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/06
A61L 2/04
A61L 2/18
B29C 49/42
B29C 49/76
B65B 55/04
B67C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌された内容液を殺菌済みの容器に無菌環境下で充填する無菌充填システムであって、
容器のブロー成形を行う容器成形ユニットと、前記容器成形ユニットの下流側に配置された容器殺菌ユニットと、前記容器殺菌ユニットの下流側に配置され前記容器内に内容液を充填する充填ユニットと、前記充填ユニットの下流側に配置されたキャッピングユニットとを備え、
前記容器殺菌ユニットは、前記容器を加熱殺菌する加熱殺菌部と、前記加熱殺菌部の下流側において前記容器の口部に冷却処理を施す冷却部とを有し、
前記無菌充填システムは、前記容器成形ユニットに設置されたブローホイールの下流側から前記容器殺菌ユニットの前記加熱殺菌部の上流側の間において、前記容器の口部に冷却処理を施す他の冷却部を有することを特徴とする無菌充填システム。
【請求項2】
前記容器殺菌ユニットは、前記容器の口部を保持して前記容器を搬送するグリッパを備え、前記グリッパは、該グリッパを冷却するグリッパ冷却手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の無菌充填システム。
【請求項3】
前記グリッパ冷却手段は、前記グリッパに潤滑用の流体を供給して、該グリッパを冷却するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の無菌充填システム。
【請求項4】
上流側の容器成形ユニットと下流側の充填ユニットとの間に設置され、容器に殺菌処理を施す無菌充填システム用の容器殺菌ユニットであって、
前記容器を加熱殺菌する加熱殺菌部と、前記加熱殺菌部の下流側において前記容器の口部に冷却処理を施す冷却部と、前記加熱殺菌部の上流側において、前記容器の口部に冷却処理を施す他の冷却部とを有することを特徴とする容器殺菌ユニット。
【請求項5】
殺菌された内容液を殺菌済みの容器に無菌充填する無菌充填方法であって、
ブロー成形によって前記容器を成形し、成形された前記容器に加熱殺菌し、加熱殺菌済みの前記容器の口部に冷却処理を施した後に前記殺菌された内容液を充填・密封し、前記ブロー成型より下流側から前記加熱殺菌の上流側において、前記容器の口部に冷却処理を更に施すことを特徴とする無菌充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌された内容液を殺菌済みの容器に無菌充填する無菌充填システム、容器殺菌ユニット、および無菌充填方法に関し、特に、容器成形から内容液の充填・密封までを一貫して行うインラインブロー式の無菌充填システム、容器殺菌ユニット、および無菌充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、殺菌された内容液を殺菌済みの容器に無菌環境下で充填する無菌充填(アセプティック充填)方法が広く採用されている(例えば特許文献1を参照)。このような無菌充填方法では、容器殺菌ユニットにおいて、容器に温水または温薬剤液を吹き付けて容器を加熱殺菌した後、殺菌済みの容器内に殺菌された常温の内容液を充填し、次いで、容器に殺菌済みのキャップをキャッピングして容器を密閉する。
【0003】
このような無菌充填方法では、殺菌された常温の内容液が容器内に充填されることから、容器に耐熱性能が要求されず、そのため、容器の口部を結晶化していない非耐熱性ポリエステルボトルが一般に用いられる。このような非耐熱性ポリエステルボトルには、容器を軽量化および薄肉化し易くコストダウンが可能であり、ボトルの耐熱処理を不要として製造方法を簡略化できるという利点がある。
【0004】
ところが、非耐熱性ポリエステルボトル、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主材とした非耐熱性ペットボトルの場合は、約70℃程度の温度で軟化が始まり、また、上述した容器の加熱殺菌時には、容器に対して約60℃〜90℃程度の温水または約55℃〜75℃程度の温薬剤液が吹き付けられることから、容器の加熱殺菌後には容器の変形が生じ易い状態となる。そのため、このような容器の変形を抑制することを目的として、容器の加熱殺菌後に、低温の無菌水等を容器に吹き付ける等の方法で容器を冷却することも一般に知られている(例えば特許文献2、3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−231356号公報
【特許文献2】特開平11−227726号公報
【特許文献3】特開2008−133049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、同一工場内において、容器成形から容器への内容液の充填までを一貫して行うインラインブロー式の無菌充填システムが採用されつつある。このインラインブロー式の無菌充填システムでは、上述した容器殺菌ユニットの上流側に、容器のブロー成形を行う容器成形ユニットを設置し、容器成形ユニットから搬出された容器を容器殺菌ユニット内に搬入し、容器殺菌ユニットにおいて上述した容器の加熱殺菌を行う。
【0007】
ところが、このようなインラインブロー式の無菌充填システムにおいては、無菌充填システムから排出された密封済みの容器の一部に、キャッピング不良、すなわち、容器の口部に対してキャップが良好に装着されていない事象が発生する場合がある。
【0008】
発明者らは、このキャッピング不良の原因は、容器成形ユニットから搬出された容器の口部には、ブロー成形時のプリフォーム加熱の余熱が残存しており、この余熱が容器に残存したままの状態で、容器に加熱殺菌処理が施されるためではないかと推察した。
【0009】
上記を詳細に説明すると、まず、近年、この様なインラインブロー式の無菌充填システムでは、システム全体の小型化等を目的として、容器成形ユニットと容器殺菌ユニットとを隣接もしくは近接して設置する傾向がある。この場合、容器成形ユニットと容器殺菌ユニットとの間における容器の受け渡し搬送中に、ブロー成形時のプリフォーム加熱の余熱が容器から除去されることがないため、容器の口部にプリフォーム加熱の余熱が残存したままの状態で、容器殺菌ユニットに容器が搬入されることになる。
そして、容器成形ユニットから搬出された直後の容器の口部の表面温度は約50℃程度であり、この約50℃程度の余熱が容器に残存した状態で容器殺菌ユニットに容器が搬入され、容器殺菌ユニット内で、約60℃〜90℃程度の温水又は55℃〜75℃の温薬剤を容器に吹き付けた場合、前記余熱が除去された容器を加熱殺菌した場合と比較して、容器の口部の温度がポリエチレンテレフタレート樹脂のガラス転移点温度である約70℃程度に早期に達し、その結果、容器の口部の軟化した状態が長時間維持されることになる。
この容器の口部が軟化した状態で、図3に示すような容器の口部を保持して容器を受け渡し搬送するグリッパによって容器の口部が挟まれると、容器の加熱殺菌後に容器を冷却するだけでは冷却不足となり、グリッパによる把持時における衝撃や圧力が容器の口部に加わり、容器の口部の断面形状が僅かに歪む等、容器の口部に変形が生じ、その結果、容器の口部に対するキャップの装着が良好に行われないことに起因するのではないかと推察した。
【0010】
上述した現象は、容器の口部が、他の箇所(胴部等)と比べて肉厚に形成されているため、容器の口部の内側(芯部)に余熱が残存し易いことも一因であると考えられる。
【0011】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、容器成形から容器への内容液の充填までを一貫して行う場合であっても、容器の口部の変形を確実に抑制して、容器の口部にキャップを良好にキャッピングすることが可能な無菌充填システム、容器殺菌ユニット、および無菌充填方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無菌充填システムは、殺菌された内容液を殺菌済みの容器に無菌環境下で充填する無菌充填システムであって、容器のブロー成形を行う容器成形ユニットと、前記容器成形ユニットの下流側に配置された容器殺菌ユニットと、前記容器殺菌ユニットの下流側に配置され前記容器内に内容液を充填する充填ユニットと、前記充填ユニットの下流側に配置されたキャッピングユニットとを備え、前記容器殺菌ユニットは、前記容器を加熱殺菌する加熱殺菌部と、前記加熱殺菌部の下流側において前記容器の口部に冷却処理を施す冷却部とを有し、前記無菌充填システムは、前記容器成形ユニットに設置されたブローホイールの下流側から前記容器殺菌ユニットの前記加熱殺菌部の上流側の間において、前記容器の口部に冷却処理を施す他の冷却部を有することにより、前記課題を解決するものである。
本発明の容器殺菌ユニットは、上流側の容器成形ユニットと下流側の充填ユニットとの間に設置され、容器に殺菌処理を施す無菌充填システム用の容器殺菌ユニットであって、前記容器を加熱殺菌する加熱殺菌部と、前記加熱殺菌部の下流側において前記容器の口部に冷却処理を施す冷却部と、前記加熱殺菌部の上流側において、前記容器の口部に冷却処理を施す他の冷却部とを有することにより、前記課題を解決するものである。
本発明の無菌充填方法は、殺菌された内容液を殺菌済みの容器に無菌充填する無菌充填方法であって、ブロー成形によって前記容器を成形し、成形された前記容器に加熱殺菌し、加熱殺菌済みの前記容器の口部に冷却処理を施した後に前記殺菌された内容液を充填・密封し、前記ブロー成型より下流側から前記加熱殺菌の上流側において、前記容器の口部に冷却処理を更に施すことにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本請求項1、に係る発明によれば、ブロー成形によって成形された容器を加熱殺菌した後に容器の口部に冷却処理を施すことにより、容器に残存したブロー成形時の余熱および加熱殺菌に起因した熱を除去した後に、充填・キャッピングをすることが可能である。このため、容器の口部が軟化した状態の時間を短縮することができ、その結果、容器成形から容器への内容液の充填までを一貫して行うインラインブロー式の無菌充填において、容器の口部の変形を確実に抑制して、容器の口部にキャップを良好にキャッピングすることができる。
【0014】
本請求項に係る発明によれば、容器成形ユニットに設置されたブローホイールの下流側から容器殺菌ユニットの加熱殺菌部の上流側の間において、容器の口部に冷却処理を更に施すことにより、容器の口部の内側(深部)に残存したブロー成形時の余熱をも確実に除去した後、容器を加熱殺菌することが可能である。このため、より確実に容器の口部の変形を抑制して、容器の口部にキャップを良好にキャッピングすることができる。
本請求項に係る発明によれば、容器殺菌ユニットは、容器の口部を把持して容器を搬送するグリッパを備え、グリッパを冷却するグリッパ冷却手段を更に備えることにより、容器搬送時に容器の口部に接触するグリッパを利用して、容器の口部から余分な熱を除去することが可能であり、容器の口部に残存したブロー成形時の余熱がグリッパに伝熱・蓄熱され、蓄熱されたグリッパが更に容器の口部を熱することを防ぐため、簡素な構成で容器口部の変形を更に確実に抑制することができる。
本請求項に係る発明によれば、グリッパ冷却手段は、グリッパに潤滑用の流体を供給してグリッパを冷却するように構成されていることにより、グリッパを冷却する手段とグリッパを潤滑する手段とを別個に設ける必要がないため、システム構成の簡素化を図ることができる。
本請求項に係る発明によれば、容器殺菌ユニットの加熱殺菌部の下流側において容器の口部に冷却処理を施す他の冷却部を更に有することにより、容器の口部の内側(深部)に残存したブロー成形時の余熱をも確実に除去した後、容器を加熱殺菌することが可能である。このため、より確実に容器の口部の軟化および変形を確実に抑制することができる。また、他の冷却部を容器殺菌ユニット内とすることにより、冷却手段の冷媒種類の幅を広げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る無菌充填システムを示す説明図。
図2】各工程における容器の状態を概略的に示す説明図。
図3】グリッパによる容器の保持状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係る無菌充填システム10について、図面に基づいて説明する。
【0017】
まず、無菌充填システム10は、容器Cの成形および殺菌された内容液を殺菌済みの容器Cに無菌充填するものであり、図1に示すように、容器Cのブロー成形を行う容器成形ユニット20と、容器成形ユニット20の下流側に隣接もしくは近接して配置された容器殺菌ユニット30と、容器殺菌ユニット30の下流側に配置され、容器C内に内容液を充填する充填ユニット40と、充填ユニット40の下流側に配置され容器の口部C1に殺菌済みのキャップを装着するキャッピングユニット50と、出口搬送ゾーン70と、容器Cを容器殺菌ユニット30の上流から下流に向けて搬送する容器搬送手段60とを備えている。
ここで、容器殺菌ユニット30における容器Cの殺菌工程、充填ユニット40における内容液の充填工程、キャッピングユニット50におけるキャッピング工程等の各工程は、無菌状態に維持された無菌チャンバー内で行われる。無菌チャンバーは、充填ユニット40において外部から無菌エアを導入し、容器殺菌ユニット30(第1の冷却部32付近)および出口搬送ゾーン70において、無菌エアが回収(排気)されているため、前述の無菌チャンバー内は陽圧に保たれている。
【0018】
図2図3に示す本実施形態の容器Cは、容器口部C1が結晶化されていない非耐熱性ポリエステルボトルであり、このような非耐熱性ポリエステルボトルがペットボトルである場合、約70℃程度の温度で軟化が始まる。なお、口部C1が結晶化されていない非耐熱性ポリエステルボトルにおいては、口部C1の変形に対する抑制効果を働かせるため、容器Cの予備成形体であるプリフォームの容器口部C1の含水率を3000ppm以下とすることが好ましい。
【0019】
以下に、無菌充填システム10の各構成要素について、図1図3に基づいて説明する。
【0020】
まず、容器成形ユニット20は、加熱したプリフォームを金型内に配置した後に、プリフォームを長手方向に引き伸ばしながら、加圧空気を吹き込んで周方向に膨らませることで、容器Cをブロー成形するように構成されている。
【0021】
容器殺菌ユニット30は、図1図2に示すように、容器Cに殺菌処理を施す加熱殺菌部31と、加熱殺菌部31の上流側において、容器Cの口部C1に冷却処理を施す第1の冷却部32と、加熱殺菌部31の下流側において容器Cに冷却処理を施す第2の冷却部33とを有している。
【0022】
加熱殺菌部31は、約60℃〜90℃程度の温水または約55℃〜75℃程度の温薬剤液を容器Cに吹き付けることで容器Cを殺菌するものである。本実施形態では、図1図2に示すように、第5ターレット62−5〜第8ターレット62−8の周囲に設置された複数の殺菌用スプレーノズル31aから、温水または温薬剤液を容器Cの外面及び/または内面に吹き付けることで容器Cを殺菌する。
【0023】
第1の冷却部32は、図1図2に示すように、容器成形ユニット20の下流側、すなわち、容器成形ユニット20から容器Cが搬出された直後において、無菌水、無菌エア、無菌液化ガス等の低温の冷却流体を容器Cの口部C1に噴出することで、口部C1を冷却するものである。冷却流体の温度は約50℃以下、好適には20℃〜40℃とすることが、各種ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)を主材とした各種ポリエステルボトルの口部C1に残存したブロー成形時のプリフォーム加熱の余熱による口部C1の変形を確実に抑制できるため好ましい。本実施形態では、図1図2に示すように、第2・第3ターレット62−2、62−3の外周側に設置された複数の第1の冷却用スプレーノズル32aから、約30℃〜40℃の無菌水を容器口部C1の外面に吹き付けることで、容器Cの口部C1付近を冷却する。各第1の冷却用スプレーノズル32aからの冷却流体の噴出時間は、約0.25〜5.0秒程度である。
また、本実施形態のように、容器Cの口部C1のみを冷却する場合は、口部C1のみ局部的に冷却流体を集中させられるような吹き出し口形状、例えば、扁平又は小口径等の吹き出し口形状のノズルを適宜選択することがより好ましい。
【0024】
なお、無菌水等の冷却流体を吹き付ける位置については、上記の容器Cの口部C1の外面に限定されず、口部C1の内面にも吹き付けることが、容器Cの口部C1を短時間で確実に冷却できるため好ましい。また、容器Cの外面全体及び/または容器Cの内面全体にも、口部C1を確実に冷却できる温度に調整した冷却流体を吹き付けてもよい。
また、上述したように、隣接する複数のターレット62(第2・第3ターレット62−2、62−3)の外周側に設置された第1の冷却用スプレーノズル32aから冷却流体を容器Cの口部C1に噴出することで、周方向における口部C1の片面だけでなく口部C1の全面に冷却流体を吹き付けることができる。図1においては、第1の冷却用スプレーノズル32aは隣接する複数のターレット62に分けて設置されているが、1つのターレットの内周側、外周側に対向配置しても良い。
【0025】
第2の冷却部33は、加熱殺菌部31の下流側、すなわち、加熱殺菌部31によって容器Cに殺菌処理を施した直後において、無菌水、無菌エア、液化ガス等の低温の冷却流体を容器Cに噴出することで、容器Cの口部C1を冷却するものである。本実施形態では、図1図2に示すように、第9ターレット62−9の外周側および内周側に対向配置された3組の第2の冷却用スプレーノズル33aから、約30℃〜40℃の無菌水を口部C1の外面に吹き付けることで、容器口部C1付近を冷却する。また、各第2の冷却用スプレーノズル33aからの冷却流体の噴出時間は、約0.25〜5.0秒程度である。
【0026】
なお、無菌水等の冷却流体を吹き付ける位置については、上述した第1の冷却部32と同様であり、口部C1の内面、容器Cの外面全体及び/または容器Cの内面全体にも、口部C1を確実に冷却できる温度に調整した冷却流体を吹き付けてもよい。特に、本実施形態のように、加熱殺菌部31及び第2の冷却部33における容器Cの搬送が倒立で行われる場合は、無菌水のような液体の冷却流体を容器Cの外面及び/または内面の全体に吹き付けると、液体の冷却流体は口部C1に集まって流れ落ちるため、口部C1にのみ局部的に冷却流体(無菌水・無菌エア・無菌液化ガス)を吹き付けた時と同様の効果を得られる。
また、第2の冷却用スプレーノズル33aの配置についても、上述した第1の冷却用スプレーノズル32aのような分割配置にしてもよい。しかし、加熱殺菌部31での容器Cの殺菌が約65℃〜90℃程度と高いため、殺菌直後に急冷させることが好ましく、本実施形態のように第2の冷却用スプレーノズル33aを複数組対向配置させることが好適である。
【0027】
容器搬送手段60は、図1図3に示すように、容器Cの口部C1を左右両側から挟み込んで保持する複数のグリッパ61と、上下軸を中心として回転可能な複数のターレット62(62−1〜62−10)とを有している。
【0028】
グリッパ61は、各ターレット62の外周に複数設置され、容器Cの口部C1を保持した状態で、各ターレット62の回転に伴って公転し、各ターレット62の外周に沿って容器Cを搬送する。また、隣接するターレット62間で、容器Cを受け渡しする際には、図3に示すように、一方のターレット62に設置されたグリッパ61によって容器Cの口部C1のネックC2の下部を保持し、他方のターレット62に設置されたグリッパ61によって容器口部C1のカブラC3の下部を保持することで、容器Cの受け渡しを行う。
【0029】
本実施形態では、図1図3に示すように、第1〜第3ターレット62−1〜62−3においては、正立状態(すなわち、容器口部C1を上方に向けた状態)で容器Cが搬送された後に、第4ターレット62−4において、容器の姿勢を正立状態から倒立状態(すなわち、容器口部C1を下方に向けた状態)に反転させ、次に、第5〜第9ターレット62−5〜62−9においては、倒立状態で容器Cが搬送された後に、第10ターレット62−10において、容器Cの姿勢を倒立状態から正立状態に反転させ、容器殺菌ユニット30から容器Cが正立状態で搬出される。
なお、容器殺菌ユニット30内の各工程における容器Cの姿勢については、上記に限定されず、実施態様に応じて任意に決定すればよい。
【0030】
無菌充填システム10は、上述した構成要素以外にも、各グリッパ61の開閉動作がスムーズに行われるように、各グリッパ61の開閉支持部に無菌水等の潤滑用の流体を供給する流体供給手段(図示しない)を備えている。このグリッパ61に無菌水等の流体を供給する流体供給手段に、グリッパ61の容器Cの口部C1把持部に流体を供給して冷却するグリッパ冷却手段としての機能を兼ねさせてもよい。
グリッパ61の口部C1把持部は金属製で構成されている場合が多く、加熱殺菌部31での殺菌用温水や温薬剤の熱がグリッパ61の口部C1把持部に触れる場合や、口部C1自体が熱を帯びている場合等の転熱により、グリッパ61の口部C1把持部は蓄熱しやすくなる。このグリッパ61の口部C1把持部の蓄熱が、再び容器Cの口部C1に転熱されて、口部C1が熱を帯びてしまうことがある。このため、グリッパ61に供給される潤滑用の流体の温度や量を調整することで、潤滑用の流体によってグリッパ61を冷却してもよい。この場合、グリッパ61の口部C1把持部は20℃〜40℃の温度を保つように、潤滑用の流体の温度や量を調整することが好ましい。
なお、流体供給手段とは別に、グリッパ冷却手段を設けてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、第1、第2の冷却部32、33および流体供給手段(グリッパ冷却手段)が、無菌水等の流体を供給する共通の流体供給源に接続されている。しかしながら、第1、第2の冷却部32、33や流体供給手段(グリッパ冷却手段)に対する流体の供給方法は、上記に限定されず、例えば、個別の流体供給源に接続されていてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、充填ユニット40において外部から無菌エアが導入されるとともに、キャッピングユニット50の下流側の出口搬送ゾーン70、および、容器殺菌ユニット30の上流側(第1の冷却部32付近)において、前記無菌エアが回収(排出)されるように構成されている。これにより、加熱殺菌部31で噴出される殺菌用の温水や温薬剤液が、充填ユニット40側に侵入することを防止でき、また、容器殺菌ユニット30内や充填ユニット40内の湿気が、容器成形ユニット20等の他のエリアに侵入することを防止できる。
【0033】
さらに、第1の冷却部32の設置位置については、容器成形ユニット20に設置されたブローホイールの下流側から容器殺菌ユニット30の加熱殺菌部31の上流側であれば、いずれの位置に設置しても良い。
容器成形ユニット20内であり、容器C1をブロー成形するブロー金型等が複数設置されたブローホイールより下流側の容器搬送手段60(図示なし)のターレットの内周側及び外周側に設置する場合は、冷却流体を無菌水以外の無菌エア、液化ガス等のガス流体にしておくことが、成形ユニット20内が濡れることなく、湿度による容器C成形時の悪影響を防ぐことができるため好ましい。
また、本実施形態の図1に示すように、第1の冷却部32を容器殺菌ユニット30内の加熱殺菌部31の上流側にすると、冷却流体として無菌水も選択することができるため、冷却流体の選択幅が広がり、上述したグリッパ61の冷却手段と同様の流体供給源とすることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、容器殺菌ユニットの直後に充填ユニットが設置されているが、温薬剤液によって容器の殺菌を行う場合には、温薬剤液を洗い流すリンサユニットを、容器殺菌ユニットと充填ユニットとの間に設置してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 ・・・ 無菌充填システム
20 ・・・ 容器成形ユニット
30 ・・・ 容器殺菌ユニット
31 ・・・ 加熱殺菌部
31a ・・・ 殺菌用スプレーノズル
32 ・・・ 第1の冷却部
32a ・・・ 第1の冷却用スプレーノズル
33 ・・・ 第2の冷却部
33a ・・・ 第2の冷却用スプレーノズル
40 ・・・ 充填ユニット
50 ・・・ キャッピングユニット
60 ・・・ 容器搬送手段
61 ・・・ グリッパ
62−1〜10 ・・・ 第1〜10ターレット
70 ・・・ 出口搬送ゾーン
C ・・・ 容器
C1 ・・・ 容器口部
C2 ・・・ ネック
C3 ・・・ カブラ
【要約】
【課題】容器成形から容器への内容液の充填までを一貫して行う場合であっても、容器の変形を確実に抑制することが可能な無菌充填システム、容器殺菌ユニット、および無菌充填方法を提供すること。
【解決手段】殺菌された内容液を殺菌済みの容器Cに無菌充填する無菌充填システム10であって、容器Cのブロー成形を行う容器成形ユニット20と、容器成形ユニット20の下流側に配置された容器殺菌ユニット30と、容器殺菌ユニット30の下流側に配置され容器C内に内容液を充填する充填ユニット40と、充填ユニット40の下流側に配置されたキャッピングユニット50とを備え、容器殺菌ユニット30は、容器Cを加熱殺菌する加熱殺菌部31と、加熱殺菌部31の下流側において容器Cの口部C1に冷却処理を施す冷却部32とを有する無菌充填システム10。
【選択図】図1
図1
図2
図3