(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドリル本体の先端側に前記ドリル本体の外周から回転軸近傍のチゼルエッジまで形成された複数の凸円弧状切れ刃と、前記凸円弧状切れ刃間に形成されたシンニングと、前記シンニングの回転軸方向後端から前記ドリル本体の後端側に向かって形成された溝と、前記溝の回転方向後方に前記ドリル本体の外周端に沿って形成された第一マージンと、前記溝の回転方向前方に前記外周端に沿って形成された第二マージンとを有するドリルであって、
前記凸円弧状切れ刃に沿って前記凸円弧状切れ刃の回転方向後方に形成された略帯状の二番面と、前記二番面の回転方向後方に連続して形成された三番面と、前記三番面の回転方向後方に連続して形成された四番面とを有し、
前記第一マージンは前記三番面の回転軸方向後端に連続しており、
前記第一マージンの回転軸方向先端から、前記第一マージンと前記三番面との境界の回転軸方向後端まで、前記第一マージンの幅が漸増していることを特徴とするドリル。
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のドリルにおいて、前記ドリル本体の先端側から見たとき、前記シンニングと前記溝との境界に内接する円の直径が、前記ドリルの直径の30〜50%であることを特徴とするドリル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3に記載の各ドリルはいずれも、送り速度を速くした際に切り屑詰まりが発生しやすく、切れ刃が被削材に接触する時間が長くなることに起因して切削抵抗が増大するため、改善の余地がある。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の目的は、穴あけ加工時の切り屑詰まり及びびびり振動が抑制されて安定して高品位な加工面を得られるドリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のドリルは、ドリル本体の先端側に前記ドリル本体の外周から回転軸近傍のチゼルエッジまで形成された複数の凸円弧状切れ刃と、前記凸円弧状切れ刃間に形成されたシンニングと、前記シンニングの回転軸方向後端から前記ドリル本体の後端側に向かって形成された溝と、前記溝の回転方向後方に前記ドリル本体の外周端に沿って形成された第一マージンと、前記溝の回転方向前方に前記外周端に沿って形成された第二マージンとを有するドリルであって、前記凸円弧状切れ刃に沿って前記凸円弧状切れ刃の回転方向後方に形成された略帯状の二番面と、前記二番面の回転方向後方に連続して形成された三番面と、前記三番面の回転方向後方に連続して形成された四番面とを有し、前記第一マージンは前記三番面の回転軸方向後端に連続しており、前記第一マージンの回転軸方向先端から、前記第一マージンと前記三番面との境界の回転軸方向後端まで、前記第一マージンの幅が漸増していることを特徴とする。
前記の特徴を有することで、従来に比べて切削加工時に刃先にかかる負荷を低減できるとともに、切り屑排出領域も広くなり、高品質な加工面品位を得られる。また、前記第一マージンが前記三番面の回転軸方向後端に連続しており、前記第一マージンの回転軸方向先端から、前記第一マージンと前記三番面との境界の回転軸方向後端まで、前記第一マージンの幅が漸増していることにより、切削加工時の負荷を低減することができる。
【0010】
本発明のドリルにおいて、前記略帯状の二番面の最大幅は0.02D〜0.1D(Dはドリルの直径)の範囲内であることが望ましい。この構成により、従来よりも切り屑排出領域が広くなり、切り屑排出性が顕著に向上する。
【0011】
本発明のドリルにおいて、二番角αが10〜30°であり、三番角βが25〜45°であり、四番角γが50〜70°であることが望ましい。この構成により、本発明のドリルの切削抵抗が低減され、高剛性になる。
【0012】
本発明のドリルを前記ドリル本体の先端側から見たとき、前記シンニングと前記三番面との境界が直線状に形成されていることが望ましい。この構成により、切れ刃から生成される切り屑を分断させる効果が高くなり、より高能率の穴あけ加工ができる。
【0013】
本発明のドリルをドリル本体の先端側から見たとき、前記シンニングと前記溝との境界に内接する円の直径が、前記ドリルの直径の30〜50%であることが望ましい。この構成により、ドリルの折損を防ぎ、安定した加工が可能となる。
【0014】
本発明のドリルにおいて、前記シンニングはその先端側において前記三番面の回転方向後方に連続し、前記シンニングはその後端側において前記四番面の回転方向後方に連続し、前記ドリル本体の先端側から見たとき、前記シンニングと前記三番面との境界と、当該シンニングと前記四番面との境界とのなす角度が35〜55°であることが望ましい。この構成により、切屑排出性及び第二マージンの剛性を確保できる。
【0015】
本発明のドリルにおいて、前記シンニングは前記四番面の回転方向後方に連続し、前記ドリル本体の先端側から見たとき、前記シンニングと前記四番面との境界上の径方向最外方に位置する点と前記回転軸との距離が0.2D〜0.45D(Dは当該ドリルの直径)であることが望ましい。この構成により、第二マージンの強度を向上させつつ、シンニングを広くすることができるので、切屑排出性を向上できる。
【0016】
本発明のドリルにおいて、前記第一マージンは前記二番面及び前記三番面の回転軸方向後端に連続しており、前記第一マージンと前記二番面との境界、及び前記第一マージンと前記三番面との境界が、回転方向前方に凸となる円弧であることが望ましい。この構成により、さらに切削加工時の付加を低減することができる。
【0017】
本発明のドリルにおいて、前記ドリル本体の先端から前記回転軸方向に0.03D〜0.35D(Dは当該ドリルの直径)の範囲において、前記凸円弧状切れ刃のすくい角が−5〜0.5°であることが望ましい。この構成により、刃先の剛性を保つことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のドリルは、凸円弧状切れ刃に沿って回転方向後方に形成された略帯状の二番面、及びこの二番面の回転方向後方に連続して形成された三番面、四番面を設けている。そのため、刃先の剛性を確保しつつ、凸円弧状切れ刃に沿って回転方向後方に形成された略帯状の二番面、及びこの二番面の回転方向後方に連続して形成された三番面と四番面とを設けていない従来のドリルに比べて、高い切屑排出性が得られる。その結果、高品位な加工面を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、2枚刃ドリルを例にとって本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)を、
図1〜
図6を参照して説明する。ここで、本明細書において、「回転軸」とはドリル又はドリル本体の回転軸を意味し、「先端側」は回転軸方向においてドリル本体の切れ刃が形成された側を意味し、「後端側」は回転軸方向において先端側と反対側を意味する。「回転方向」とはドリル又はドリル本体の回転方向を意味し、「径方向」は回転軸を通り回転軸に垂直な方向を意味する。「外周」とは径方向外方を意味する。
【0021】
本実施形態のドリル100は、ドリル本体1の先端部2にドリル本体1の外周から回転軸O近傍のチゼルエッジ14まで形成された複数の凸円弧状切れ刃4a、4bと、凸円弧状切れ刃4a、4b間に形成されたシンニング12a、12bと、シンニング12a、12bの回転軸O方向後端からドリル本体1の後端側に向かって形成された溝15a、15bと、溝15a、15bの回転方向R後方にドリル本体1の外周端Wに沿って形成された第一マージン8a、8bと、溝15a、15bの回転方向R前方に外周端Wに沿って形成された第二マージン9a、9bとを有するドリル100であって、凸円弧状切れ刃4a、4bに沿って凸円弧状切れ刃4a、4bの回転方向R後方に形成された略帯状の二番面5a、5bと、この二番面5a、5bの回転方向R後方に連続して形成された三番面6a、6bと、この三番面6a、6bの回転方向R後方に連続して形成された四番面7a、7bとを有する。
【0022】
本実施形態のドリル100の切れ刃は、より高い加工面品位を得るために、ドリル本体1の先端部2の外周から回転軸O近傍(ドリル本体1と回転軸Oとの先端側交点であるドリル本体1の先端50の近傍)のチゼルエッジ14まで凸円弧状に形成された凸円弧状切れ刃4a、4bである。切れ刃の枚数は2〜4枚が望ましい。切れ刃の枚数が2枚未満の場合は加工能率が低下し、切れ刃の枚数が4枚超の場合は切り屑排出領域が狭くなり、穴加工時に切り屑詰まりが発生しやすくなる虞がある。
【0023】
図1、
図2に示すように、本発明のドリル100は、ドリル本体1を備える。ドリル本体1は、ドリル100の回転軸Oに対し互いに180°回転対称な形状を有する。ドリル本体1の先端側(
図2の右側)に位置する先端部2には、回転軸Oに沿って2つの凸円弧状切れ刃4a、4bが形成されている。2つの切れ刃4a、4bは、凸円弧状に先端部2の外周からチゼルエッジ14まで、回転軸Oに平行な仮想平面上に延在している。ドリル本体1は、先端部2の後端側(
図2の左側)に形成された円柱状のシャンク部(図示省略)を有する。
【0024】
切れ刃4a、4bに対しドリル本体1の回転方向R前方には、すくい面13a、13bがそれぞれ形成されている。すくい面13a、13bは、切れ刃4a、4b(切れ刃4a、4bの稜線)と、切れ刃4a、4bの回転軸O方向後端とチゼルエッジ14の端部を結ぶ直線と、で囲まれた平面である。すくい面13a、13bは、
図6に示すように、所定のすくい角δを有する。
【0025】
切れ刃4a、4bの回転方向R後方にはそれぞれ二番面5a、5bが連続して形成されており、二番面5a、5bはチゼルエッジ14を介して互いに接続している。
図1において、二番面5a、5bは、ドリル本体1の先端部2の外周から回転軸Oの近傍(ドリル本体1の先端50の近傍)のチゼルエッジ14まで、凸円弧状切れ刃4a、4bに沿って略帯状に形成されている。
図3に示すように、二番面5a、5bは、所定の二番角α(回転軸O方向の逃げ角であり、回転軸Oに垂直な面と二番面5a、5bとがなす角)を有する。
【0026】
二番面5a、5bの回転方向R後方にはそれぞれ三番面6a、6bが連続して形成されている。
図2、3に示すように、三番面6a、6bは、二番面5a、5bの回転方向R後方端を画定する線(27a、27b)から回転方向R後方及び回転軸O方向後端側に延在している。三番面6a、6b上には、それぞれオイルホール10a、10bが開口している。オイルホール10a、10bは、ドリル本体1内部において回転軸O方向に延びる貫通孔である。
図3に示すように、三番面6a、6bは、所定の三番角β(回転軸O方向の逃げ角であり、回転軸Oに垂直な面と三番面6a、6bとがなす角)を有する。後述するように、三番角βは二番角αより大きい。
【0027】
三番面6a、6bの回転方向R後方にはそれぞれ四番面7a、7bが連続して形成されている。より詳細には、四番面7a、7bは、三番面6a、6bの回転方向R後方且つ回転軸O方向後端側に接続している。
図1、2、4に示すように、四番面7a、7bの回転方向R後方端を画定する線(21a、21b)は三番面6a、6bの回転方向R後方端を画定する線(20a、20b)と連続しており、三番面6a、6bと四番面7a、7bとにより略扇形状領域が形成されている。
図3に示すように、四番面7a、7bは、所定の四番角γ(回転軸O方向の逃げ角であり、回転軸Oに垂直な面と四番面7a、7bとがなす角)を有する。後述するように、四番角γは三番角βより大きい。
【0028】
このように、凸円弧状切れ刃4a、4bの回転方向R後方には、二番面5a、5b、三番面6a、6b、四番面7a、7bとがこの順に連続して形成されており、これらの面が凸円弧状切れ刃4a、4bの逃げ面として機能する。
【0029】
凸円弧状切れ刃4a、4bの回転方向R前方にはそれぞれシンニング12b、12aが設置されている。詳細には、シンニング12a、12bはすくい面13b、13aの回転方向R前方、且つ三番面6a、6b及び四番面7a、7bの回転方向R後方に連続して形成されている。
図1、4、5に示すように、シンニング12a、12bは、チゼルエッジ14近傍において二番面5a、5bと接続し、ドリル本体1の先端側から後端側に向かって回転方向Rにおける幅が大きくなっている。
【0030】
シンニング12a、12bの後端側に、シンニング12a、12bと連続する溝15a、15bが形成されている。溝15a、15bは所定のねじれ角でドリル本体1の後端側に向かって螺旋状に延設されている。
【0031】
溝15a、15bの回転方向R後方に外周端Wに沿って第一マージン8b、8aが形成されている。
図1に示すように、第一マージン8a、8bは、ドリル100の直径Dを有する仮想円筒面である外周端Wに沿って形成された凸曲面である。より詳細には、第一マージン8a、8bの回転方向R前方端は外周端W上に位置し、第一マージン8a、8bの回転方向R後方端は外周端Wから径方向内方に僅かに離れている。第一マージン8a、8bは、溝15b、15aに沿ってドリル本体1の後端側に向かって螺旋状に延びる。
図3に示すように、第一マージン8a、8bはその回転軸O方向先端側において、切れ刃4a、4b、二番面5a、5b、及び三番面6a、6bの後端と連続している。
【0032】
溝15a、15bの回転方向R前方に外周端Wに沿って第二マージン9a、9bが形成されている。より詳細には、
図1に示すように、第二マージン9a、9bの回転方向R後方端は外周端W上に位置し、第二マージン9a、9bの回転方向R前方端は外周端Wから径方向内方に僅かに離れている。第二マージン9a、9bは、溝15a、15bに沿ってドリル本体1の後端側に向かって螺旋状に延びる凸曲面である。
図2、4に示すように、第二マージン9a、9bはその回転軸O方向先端において、四番面7a、7bの後端と連続している。
【0033】
第一マージン8a、8bと第二マージン9a、9bとの間には、切削加工時の抵抗を減らすために二番取り面17a、17bが形成されている。より詳細には、二番取り面17a、17bは、第一マージン8a、8bの回転方向R後方かつ第二マージン9a、9bの回転方向R前方に連続して形成されている。二番取り面17a、17bは、第一マージン8a、8bと第二マージン9a、9bよりも径方向内方に位置し、第一マージン8a、8bと第二マージン9a、9bとに沿ってこれらの間をドリル本体1の後端側に向かって螺旋状に延びる凸曲面である。
【0034】
図2、5に示すように、第一マージン8a、8bと溝15b、15aとの間には、第一マージン8a、8bの強度を高めるために、径方向に対する角度が負角の面であるネガランド16a、16b(16aは
図2、5から見えない。)が、第一マージン8a、8b及び溝15b、15aに沿って形成されている。
図1に示すように、第二マージン9a、9bと溝15a、15bとの間には、ヒール11a、11bが、第二マージン9a、9b及び溝15b、15aに沿って形成されている。ヒール11a、11bは、その径方向内端が外端よりも回転方向R後方に位置するように径方向に対し傾斜した面である。
【0035】
このように、溝15aの回転方向R前方には、ヒール11a、第二マージン9a、二番取り面17a、第一マージン8a、及びネガランド16aがこの順に連続して設けられている。溝15bの回転方向R前方には、ヒール11b、第二マージン9b、二番取り面17b、第一マージン8b、及びネガランド16bが順に連続して設けられている。
【0036】
本実施形態の溝15a、15bのねじれ角は、被削材や加工条件に合わせて0°〜40°の範囲から適宜選択することができる(本実施形態のねじれ角は20°である。)。硬い材料に深穴加工を行う際には、剛性確保のために小さいねじれ角を有する溝15a、15bを形成し、軟らかい材料には切り屑排出性を向上させるために大きいねじれ角を有する溝15a、15bを形成することが望ましい。
【0037】
略帯状に形成されている二番面5a、5bの最大幅Gは0.02D〜0.1D(Dはドリル100の直径)の範囲内に形成されることが望ましく、0.03D〜0.07Dの範囲内に形成されることがより望ましい。最大幅Gを0.02D〜0.1Dの範囲内で形成することにより、
図3のように二番面5a、5bよりも大きい角度でドリル本体1の後端側に傾斜している三番面6a、6b及び四番面7a、7bの形成領域(即ち、二番面5a、5bとシンニング12a、12bとの間の領域)を従来のドリルよりも大きくすることができる。このため、従来よりも切り屑排出領域を広くすることができる。最大幅Gが、0.02D未満の場合は刃先の剛性が低下する虞があり、0.1D超では切り屑排出領域が狭くなり、切り屑詰まりが多発する虞がある。ここで「略帯状」とは切れ刃4a、4bと、二番面5a、5bと三番面6a、6bとの境界27a、27bとがほぼ平行(二番面5a、5bの最大幅と最小幅との差が0.08D以内)になるように二番面5a、5bが形成されていることを意味する。このとき二番面5a、5bと三番面6a、6bとの境界27a、27bは直線、曲線または直線と曲線との組合せの中から選択することができる。また、二番面5a、5bの幅とは、回転方向Rにおける二番面5a、5bの幅を意味する。
【0038】
図1、
図3に示すように、二番面5a、5bの回転方向R後方には、二番角αよりも大きい三番角βでドリル本体1の後端側に傾斜している三番面6a、6bが形成されている。三番面6a、6bの回転方向R後方には、三番角βよりも大きい四番角γでドリル本体1の後端側に傾斜している四番面7a、7bが形成されている。本実施形態のドリル100は、これらの二番面5a、5b、三番面6a、6b、及び四番面7a、7bを有することにより、ドリルの先端部2の切れ刃4a、4bの厚みを従来よりも増加させることができるので、切れ刃4a、4bの剛性を向上させつつ、傾斜角が大きい四番角γにより広い切り屑排出領域を確保することができる。
【0039】
ここで二番面5a、5b、三番面6a、6b、四番面7a、7bは平面、曲面または平面と曲面とが組み合わさった面を選択してもよいが、曲面を選択した際は径方向外方に凸である曲面を用いることが望ましい。凹曲面を使用した場合、ドリルの剛性が低下し、折損が発生する可能性が高まる。
【0040】
また、二番角αの角度は10〜30°、三番角βの角度は25〜45°、四番角γの角度は50〜70°(但し、α<β<γ)であることが望ましい。角度α、β、γが上記数値範囲の下限を下回った場合、切削時の抵抗が増大する傾向にあり、上記数値範囲の上限を上回った場合、ドリルの剛性が低下する場合がある。二番角αの角度は12〜20°、三番角βの角度は27〜40°、四番角γの角度は55〜65°(但し、α<β<γ)であることがより望ましい。
【0041】
本実施形態のドリルの先端部2に設けられている凹曲面状のシンニング12aについて、切り屑排出性を向上させるために、
図1に示すように、ドリル本体1の先端側から見たとき、シンニング12aと三番面6aとの境界20aと切れ刃4bとのなす角度θは、80〜110°であることが望ましく、85〜100°であることがより望ましい。シンニング12bと三番面6bとの境界20bと切れ刃4aとのなす角度θも同様である。角度θが85°未満の場合はシンニング12a、12bの領域が狭くなるので切り屑排出性が低下する場合がある。角度θが110°超の場合は二番面5a、5b、三番面6a、6bが小さくなって剛性が低下する虞があると共に、第一、第二マージン8a、8b、9a、9bを形成する領域も狭くなり、ガイド性の低下により穴壁にびびりを生じやすくなる虞がある。
【0042】
図1に示すように、ドリル本体1の先端側から見たとき、シンニング12aと三番面6aとの境界20aは直線状に形成されていることが望ましい。境界20aが直線状に形成されることにより、切り屑が境界20aで分断されやすくなり、切り屑排出性能がさらに向上する。境界20aが曲線状でも切り屑分断効果を発揮するが、直線状のものより切り屑排出性能が劣る傾向にある。同様にシンニング12bと三番面6bとの境界20bは直線状に形成されていることが望ましい。なお、境界20a、20bが曲線状の場合は、境界20a、20bと境界21a、21との交点と境界20a、20bと境界27a、27bとの交点とを結ぶ直線と、切れ刃4b、4aとのなす角度を境界20a、20bと切れ刃4b、4aとのなす角度θと見なす。
【0043】
図1に示すように、ドリル本体1の先端側から見たとき、シンニング12a、12bと溝15a、15bとの境界23a、23bに内接する円(心厚円)Uを描いたとき、内接円の直径(心厚)Dwは、ドリル100の直径Dの30〜50%であることが望ましく、35〜45%であることがより望ましい。本実施形態のドリル100の切れ刃4a、4bは凸円弧状であるため、先端形状が略三角形となる従来のドリルよりも切削加工時の抵抗が増大する傾向にある。そのため上記のように比較的大きい心厚を有することにより、ドリル100の折損を防ぎ、安定した加工が可能となる。内接円の直径Dwがドリル100の直径Dの30%未満の場合、切削加工時に折損する可能性が高まる。内接円の直径Dwがドリル100の直径Dの50%超の場合、切り屑排出性が低下する虞がある。
【0044】
図1に示すように、ドリル本体1の先端側から見たとき、シンニング12aと四番面7aとの境界21aとシンニング12aと三番面6aとの境界20aとがなす角度εは、35〜55°であることが望ましい。同様に、シンニング12bと四番面7bとの境界21bとシンニング12bと三番面6bとの境界20bとがなす角度εは35〜55°であることが望ましい。角度εが35°未満の場合、第二マージン9a、9bの回転軸O方向の厚みが薄くなり、第二マージン9a、9bの剛性が低下する虞がある。角度εが55°超の場合、シンニング12a、12bの領域が狭くなり、切り屑排出性が低下する虞がある。なお、境界20a、20bが曲線状の場合は、境界20a、20bと境界21a、21との交点と境界20a、20bと境界27a、27bとの交点とを結ぶ直線と、境界21a、21bとのなす角度を境界20a、20bと境界21a、21bとのなす角度εと見なす。
【0045】
図1に示すように、ドリル本体1の先端側から見たとき、シンニング12aと四番面7aとの境界点Pは回転軸Oからの距離が0.2D〜0.45Dの範囲内で形成されることが望ましい。境界点Pは、シンニング12aと四番面7aとの境界21a上の径方向最外方に位置する点であり、言い換えると、シンニング12aと溝15aとの境界23aと四番面7aとの交点である。境界点Pが上記の位置に現れるようにシンニング12aを形成することにより、第二マージン9aの強度を向上させつつ、シンニング12aを広くすることができる。境界点Pと回転軸Oとの距離が0.2D未満の場合、シンニング12aの領域が狭くなり、切り屑排出性能が低下する虞がある。境界点Pと回転軸Oとの距離が0.45D超の場合、シンニング12aの領域が過大となり、四番面7aが狭くなり、剛性が低下する傾向にある。同様に、シンニング12bと四番面7bとの境界点Pは回転軸Oからの距離が0.2D〜0.45Dの範囲内で形成されることが望ましい。境界点Pと回転軸Oとの距離は、0.30D〜0.40Dであることがより好ましい。
【0046】
図1に示すように、ドリル本体1の先端側から見たとき、シンニング12a、12bと切れ刃4b、4aとの境界点Qは回転軸Oからの距離が0.25D〜0.5Dの範囲内で形成されることが望ましい。境界点Qは、シンニング12a、12bと切れ刃4a、4bとの境界上の径方向最外方に位置する点であり、言い換えると、シンニング12a、12bと溝15a、15bとの境界23a、23bと切れ刃4a、4bとの交点である。境界点Qが上記の位置に現れるようにシンニング12a、12bを形成することで、シンニング12a、12bを広くすることができる。境界点Qと回転軸Oとの距離が0.25D未満の場合、シンニング12a、12bの領域が狭くなり、切り屑排出性能が低下する虞がある。境界点Qと回転軸Oとの距離は、0.30D〜0.40Dであることがより好ましい。
【0047】
本実施形態のドリル100の第二マージン9a、9bは、四番面7a、7bの回転軸O方向後端に連続して形成されていることが望ましい。この構成により、
図2に示すように、第二マージン9a、9bの始端(回転軸O方向先端)側にシンニング12a、12bが干渉しないので、第二マージン9a、9bの幅を広くすることができる。その結果、切削加工時の安定性が向上する。この第二マージン9a、9bが三番面6a、6bまで形成された場合、第二マージン9a、9bの幅が広くなりすぎ、切削抵抗が増大する虞がある。
【0048】
図5に示すように、本実施形態のドリル100のすくい面13bの回転軸O方向後端Tは、第一マージン8bの回転軸O方向先端Sよりもドリル本体1の後端側に位置していることが望ましい。上記の条件を満たすことで、TS間において切れ刃4bの回転方向R後方に第一マージン8bが、切れ刃4bの回転方向R前方にすくい面13bが配置される。言い換えると、切れ刃4bを境に、すくい面13bの終端が第一マージン8bの始端よりも回転方向R後方に位置する。このTS間に切れ刃4bが形成されたドリル100を用いて切削加工を行うと、被削面に第一マージン8bが擦れるように接触するので、バニシング作用により高品位な穴加工面を得ることが可能である。ここで、ドリル本体1の先端側から見たとき、第一マージン8bの回転軸O方向先端Sとすくい面13bの回転軸O方向後端Tとの距離は、0.03D〜0.3Dの範囲内で形成されることが望ましい。上記の距離が0.03D未満の場合、TS間の切れ刃4bが微小にしか形成できないため、より高品質な加工面品位を得ることができない。0.3D超の場合、二番面5bの形成領域が小さくなり、切削抵抗が増加する虞がある。当該距離は、より好ましくは0.05D〜0.15Dである。なお、すくい面13aと第一マージン8aについても同様である。
【0049】
図3において、第一マージン8aの回転軸O方向先端Sから三番面6aの回転軸O方向後端(第一マージン8aと三番面6aとの境界26の回転軸O方向後端)Xまで第一マージン8aの幅(回転方向Rの幅)が漸増していることが望ましい。このように第一マージン8aの幅を構成することにより、切削加工時の負荷を低減することができる。また、
図3に示すように、第一マージン8aと二番面5aとの境界25、及び第一マージン8aと三番面6aとの境界26は回転方向R前方に向かって凸円弧状とすることにより、さらに切削負荷を低減させることができる。なお、第一マージン8bの幅、及び第一マージン8bと二番面5b及び三番面6bとの境界についても同様である。
【0050】
図6はドリル100の先端50からドリル本体1の回転軸O方向後端方向に0.15D離れた位置における、回転軸Oに直交する断面図(
図3のI-I断面図)である。本実施形態のドリル100において、先端50から0.03D〜0.35Dの範囲内における径方向すくい角δは、刃先の剛性を保つために−5〜−0.5°であることが望ましい。径方向すくい角δを−0.5°よりも大きく設定した場合、刃先の剛性不足によりチッピングが発生する虞がある。径方向すくい角δを−5°よりも負角に設定した場合、切削抵抗が増加する傾向にある。径方向すくい角δは、-4〜-1°がより好ましい。
【0051】
以上、本発明の実施形態であるドリルについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。上記実施形態では2つの切れ刃を備えるドリルについて説明したが、これに限定されない。切れ刃の数が3または4の場合にも、上述の構成とすることにより、本発明の効果を奏することができる。なお、この場合は、ドリル本体の形状を回転軸に対し120°または90°の回転対称とすれば良い。