特許第6086225号(P6086225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086225
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】超伝導回転機
(51)【国際特許分類】
   H02K 55/02 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   H02K55/02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-53872(P2013-53872)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-180178(P2014-180178A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(74)【代理人】
【識別番号】100148183
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊也
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢朗
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−067006(JP,A)
【文献】 実開昭58−097969(JP,U)
【文献】 特開昭53−075404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコイルを支持するステータと、
超伝導材料を有し、前記ステータに対して回転可能に設けられるロータと、
前記ステータと前記ロータとを収容すると共に、前記ステータコイル及び前記超伝導材料を冷却する冷媒を収容する収容室を形成するインナーケースと、
前記インナーケースを内包するように設けられ、前記インナーケースを真空断熱するアウターケースと、
前記ロータの径方向中央部を軸方向に貫通し前記ロータと一体回転する非磁性体からなる第1ロータ軸と、
前記第1ロータ軸の軸方向両側のうち少なくとも一方の側に前記第1ロータ軸と同軸心上に設けられ、前記第1ロータ軸と一体回転する強磁性体材料を有する第2ロータ軸と、
前記第2ロータ軸を前記アウターケースに対して相対回転可能に支持する軸受部と、
前記第2ロータ軸の外周面と前記軸受部を支持する前記アウターケースの軸受支持部の内周面とで形成される環状空間において、前記第2ロータ軸の軸方向に離間して磁気的に互いに引き合うように配設された環状の一対の永久磁石と、
前記一対の永久磁石の内周面と前記第2ロータ軸の外周面との間に注入された磁性流体と、を備え
前記第2ロータ軸は円柱状に形成され、前記第1ロータ軸を軸方向に延長するように設けられてある超伝導回転機。
【請求項2】
前記第2ロータ軸は、前記永久磁石の夫々が対向する前記第2ロータ軸の外周面に隣接する前記一対の永久磁石の間隔方向外側の領域に小径部が設けられてある請求項に記載の超伝導回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導材料を有する超伝導回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高効率化及び小型化の観点から超伝導材料を有する超伝導回転機が用いられてきた。超伝導回転機にあっては、運転中、超伝導材料を超伝導状態にするために冷却しておく必要がある。このような超伝導材料の冷却を行う方法の一つとして、冷媒(例えば液体窒素)を用いる方法がある。ここで、冷媒を用いて超伝導材料を効率良く冷却するためには、冷媒が外気から断熱されるように構成しておくと好適である。このような技術として下記に出展を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の超電導回転電機(以下「超伝導回転機」とする)は、基体に保持された固定子と、固定子に対して回転可能に設けられ超電導材料(以下「超伝導材料」とする)を有する回転子と、回転子を保持する回転軸と、固定子を冷却させる冷却部と、固定子及び回転子を収容すると共に冷熱媒体を収容する収容室を形成する低温容器と、収容室の外側に配置され収容室を真空断熱させる真空断熱室と、基体のうち収容室以外で且つ大気を含む雰囲気に対面する部位に設けられ回転軸を回転可能に支持する軸受とを備えて構成される。これにより、冷媒を外部に逃がすことなく少ない熱侵入量で回転体から動力を取り出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−67006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、超伝導回転機は低温状態とされるため、回転軸を構成する材料として低温脆性の無いオーステナイト系ステンレスが利用される。一方、冷媒が回転軸に沿って漏れないように、回転軸の外周面のシール性を高めることが必要である。このような回転軸の外周面のシール性を高める方法の一つとして、磁性流体を利用した磁気シールが考えられる。しかしながら、回転軸に用いられるオーステナイト系ステンレスは強磁性体ではないので、これを磁気シールの一部として利用することは容易ではない。このため、磁気シール装置を別途取り付ける必要がある。
【0006】
このような磁気シール装置を回転軸に取り付ける場合には、取り付け部からの冷媒の漏れを防止するシールを用いて、且つ、当該シールが回転軸と一体回転するようにキー手段等を形成する必要がある。このため、構造が複雑となり、大型化する可能性がある。また、キー手段を用いずに締め付けによりシール装置を取り付けることも可能であるが、一般的に超伝導回転機は高トルクで使用されることが多く、そのトルクは締め付けトルクを上回るので、滑りが発生する可能性がある。このため、シール性が損なわれ、更には回転軸が腐食し、故障の原因となる。そこで、エラストマー型のシールを取り付けることが考えられるが、係る場合、摺動部に油脂が必要となり、冷媒が汚染される可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、冷媒の漏れを適切に防止することが可能な超伝導回転機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る超伝導回転機の特徴構成は、ステータコイルを支持するステータと、超伝導材料を有し、前記ステータに対して回転可能に設けられるロータと、前記ステータと前記ロータとを収容すると共に、前記ステータコイル及び前記超伝導材料を冷却する冷媒を収容する収容室を形成するインナーケースと、前記インナーケースを内包するように設けられ、前記インナーケースを真空断熱するアウターケースと、前記ロータの径方向中央部を軸方向に貫通し前記ロータと一体回転する非磁性体からなる第1ロータ軸と、前記第1ロータ軸の軸方向両側のうち少なくとも一方の側に前記第1ロータ軸と同軸心上に設けられ、前記第1ロータ軸と一体回転する強磁性体材料を有する第2ロータ軸と、前記第2ロータ軸を前記アウターケースに対して相対回転可能に支持する軸受部と、前記第2ロータ軸の外周面と前記軸受部を支持する前記アウターケースの軸受支持部の内周面とで形成される環状空間において、前記第2ロータ軸の軸方向に離間して磁気的に互いに引き合うように配設された環状の一対の永久磁石と、前記一対の永久磁石の内周面と前記第2ロータ軸の外周面との間に注入された磁性流体と、を備え、前記第2ロータ軸は円柱状に形成され、前記第1ロータ軸を軸方向に延長するように設けられてある点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、永久磁石の径方向内側に強磁性体材料を有する第2ロータ軸が設けられるので、一対の永久磁石の一方からの磁束が第2ロータ軸を介して他方の永久磁石に達するように構成することができる。このため、一対の永久磁石の内周面と第2ロータ軸の外周面との間に形成された環状空間に一対の永久磁石に応じた磁束を生じさせることができるので、当該環状空間に磁性流体を滞留させておくことが可能となる
【0010】
したがって、磁性流体をシール部材として機能させることができるので、ロータ軸に沿った冷媒の漏れを防止することが可能となる。
【0011】
また、このような構成とすれば、第2ロータ軸を第1ロータ軸の軸方向端部に接続するように構成するだけで良いので、第2ロータ軸の位置決め等を容易に行うことができる。
【0012】
また、前記第2ロータ軸は、前記永久磁石の夫々が対向する前記第2ロータ軸の外周面に隣接する前記一対の永久磁石の間隔方向外側の領域に小径部が設けられてあると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、一対の永久磁石の内周面が対向する第2ロータ軸の外周面に隣接する領域の磁気抵抗を大きくできる。このため、一対の永久磁石が対向する第2ロータの外周面の磁束密度を高められるので、磁性流体を所期の位置に滞留させ易くなる。したがって、シール効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】超伝導回転機の断面図である。
図2】第2ロータ軸の近傍を拡大した図である。
図3】永久磁石により生じる磁束を模式的に示した図である。
図4】その他の実施形態に係る第2ロータ軸の近傍を拡大した図である。
図5】その他の実施形態に係る第2ロータ軸の近傍を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る超伝導回転機は、ロータ軸に沿って冷媒が漏れることを防止する機能を備えて構成される。以下、本実施形態の超伝導回転機100について詳細に説明する。図1には、超伝導回転機100の断面図が示される。超伝導回転機100は、ステータ10、ロータ20、インナーケース30、アウターケース40、第1ロータ軸21、第2ロータ軸22、軸受部50、永久磁石60、磁性流体80を備えて構成される。
【0016】
ステータ10は、ステータコイル11を支持する。ステータコイル11は、超伝導材料からなる線材をステータ10の歯部(図示せず)に巻き回して形成され、外部に設けられる通電装置により通電されることで磁界を発生する。超伝導材料は臨界温度以下に冷却されると電気抵抗が大幅に低減する超伝導状態となる材料である。本実施形態では、超伝導材料として所謂「高温超伝導」が用いられ、臨界温度は液体窒素により実現される。このようなステータコイル11を支持するステータ10は、インナーケース30の内壁面に固定される。
【0017】
ロータ20は、超伝導材料を有し、ステータ10に対して回転可能に設けられる。ロータ20は円板状の鋼板を軸方向に積層して円筒状に構成される。このように円筒状にした積層鋼板を軸方向にロッド25が貫通され、軸方向両側からロータ支持板23を介してナット26により締結固定される。このような円筒状のロータ20の径方向中央部には、当該ロータ20を軸方向に貫通する第1ロータ軸21が設けられる。第1ロータ軸21はロータ20と一体回転するよう同軸心上に固定される。
【0018】
このようなロータ20における第1ロータ軸21よりも径方向外側の部分には、ロータ20を軸方向に貫通し、ロータ20の周方向に沿って所定の間隔を有して棒状の超伝導材料(超伝導磁石)27が配置される。もちろん、ロータ20自体を超伝導材料で形成することも可能である。このようなロータ20は、ステータ10の径方向内側であって、ステータ10に対して所定のギャップを有して回転可能に設けられる。
【0019】
インナーケース30は、ステータ10とロータ20とを収容すると共に、ステータコイル11及び超伝導材料を冷却する冷媒を収容する収容室31を形成する。インナーケース30は内側に空間を有する。この空間が収容室31に相当する。ステータ10とロータ20とは当該収容室31内に配置される。この収容室31の中央部には第1ロータ軸21が貫通するように設けられる。ここで、上述のように第1ロータ軸21は回転する回転系となるが、インナーケース30は回転しない静止系となる。このため、インナーケース30において第1ロータ軸21が貫通する部位にあっては、インナーケース30と第1ロータ軸21との間には所定の隙間を有するように構成される。もちろん、第1ロータ軸21がインナーケース30に対して回転可能なようにシール部材等を用いて構成することも可能である。
【0020】
このような収容室31の内部には、ステータ10が支持するステータコイル11及びロータ20に設けられる超伝導材料を冷却する冷媒が導入される。本実施形態では、冷媒は上述の液体窒素が用いられる。これにより、ステータコイル11及びロータ20に設けられる超伝導材料を臨界温度以下に冷却しつつ、液体窒素を収容室31内に滞留させ易くすることができる。なお、インナーケース30には、外部から液体窒素を導入しつつ、気化した窒素を外部に排出する冷媒供給装置に接続される配管(図示せず)が設けられる。
【0021】
アウターケース40は、インナーケース30を内包するように設けられ、インナーケース30を真空断熱する。「インナーケース30を内包するように」とは、収容室31にステータ10及びロータ20を収容した状態のインナーケース30を、外側から覆うことを意味する。また、アウターケース40の内壁の天井部41及び底部42には、インナーケース30を鉛直方向に支持する、断熱性の優れた材料からなる支持部43,44が設けられる。これにより、インナーケース30をアウターケース40に対して位置決めすることが可能となる。
【0022】
ここで、図1に示されるように第1ロータ軸21は、インナーケース30から第1ロータ軸21の軸方向両側が突出するように設けられる。このようにインナーケース30から突出して設けられる第1ロータ軸21の軸方向一方の側に(図1における左側部)には、アウターケース40から突出するように第2ロータ軸22が連結固定される。また、この第2ロータ軸22の軸方向他方の側には、更に第1ロータ軸21が連結固定される。これにより、ロータ20の回転に基づく回転力を外部に出力することが可能となる。このような第1ロータ軸21は非磁性体により構成され、第2ロータ軸22は強磁性体により構成される。
【0023】
インナーケース30から突出している第1ロータ軸21の径方向外側には、第1ロータ軸21が回転可能に第1ロータ軸21の外周面に対して所定の隙間を有して円環状の円環状部70,71が設けられる。このような円環状部70,71によりインナーケース30及びアウターケース40が第1ロータ軸21の軸方向に沿って連結される。インナーケース30、アウターケース40、支持部43,44、及び円環状部70,71により密閉された空間49が形成され、当該空間49は真空状態とされる。これにより、インナーケース30内の収容室31をアウターケース40の外側(外気)に対して断熱することが可能となる。したがって、収容室31に導入された液体窒素を気化し難くすることができるので、ステータ10のステータコイル11及びロータ20の超伝導材料の冷却効果を高めることが可能となる。
【0024】
また、本実施形態では、ステータコイル11に通電するためのリード線91がアウターケース40から一旦空間49に導入され、当該空間49からインナーケース30を挿通してステータコイル11に接続される。このため、リード線91がアウターケース40を挿通する孔部45はシール部材47により液蜜的に封止され、リード線91がインナーケース30を挿通する孔部33はシール部材39により液蜜的に封止される。これにより、空間49の真空状態を維持することが可能となる。
【0025】
第2ロータ軸22は、第1ロータ軸21の軸方向両側のうち少なくとも一方の側に第1ロータ軸21と同軸心上に設けられ、第1ロータ軸21と一体回転する強磁性体材料を有して構成される。本実施形態では、図1における左側部において第2ロータ軸22が設けられる。本実施形態における第2ロータ軸22は円柱状に形成され、第1ロータ軸21を軸方向に延長するように設けられる。第2ロータ軸22は円柱状に形成されるとは、軸心から外周面まで強磁性体材料で形成されていることを意味する。このような第1ロータ軸21と第2ロータ軸22とは、一体回転可能に連結固定される。
【0026】
軸受部50は、第2ロータ軸22をアウターケース40に対して相対回転可能に支持する。上述のようにインナーケース30から第1ロータ軸21が突出して設けられ、当該第1ロータ軸21を同軸心上に延長するように第2ロータ軸22が設けられる。また、第1ロータ軸21はロータ20と一体回転する。このため、第2ロータ軸22はロータ20と一体回転する。一方、アウターケース40は静止系であるインナーケース30に固定される。このため、第2ロータ軸22が静止系となるアウターケース40に対して相対回転できるように、アウターケース40と第2ロータ軸22の外周面との間に軸受部50が設けられる。本実施形態では、図1におけるロータ20の右側に設けられる軸受部には符号「51」を付し、図1におけるロータ20の左側に設けられる軸受部には符号「52」を付している。
【0027】
第2ロータ軸22の近傍を拡大した図が図2に示される。軸受部52は、当該軸受部52を支持するアウターケース40の軸受支持部46に接して設けられる。アウターケース40の軸受支持部46とは、軸受部52を支持するアウターケース40の部位であり、具体的には軸受部52のアウターレースが対向する部位である。これにより、第2ロータ軸22の外周面と軸受支持部46の内周面とで環状空間75が形成される。環状空間75は、第2ロータ軸22の軸方向に延在する形状の環状の空間である。
【0028】
永久磁石60は、環状空間75において、第2ロータ軸22の軸方向に離間して磁気的に互いに引き合うように配設される。本実施形態では、環状の永久磁石60が一対で配設される。磁気的に互いに引き合うとは、第2ロータ軸22の軸方向に沿って互いに対向する面(軸方向端面)が、互いに異なる磁極になるように配置されることをいう。また、一対の永久磁石60は、夫々環状に形成され、外周面が軸受支持部46の内周面に対してOリングにより液蜜的にシールされる。一方、内周面は、第2ロータ軸22の外周面に対して所定の隙間90を有するように構成される。このような一対の永久磁石60が、環状のスペーサ65を第2ロータ軸22の軸方向に沿って挟持するように形成される。これにより、一対の永久磁石60を軸方向に離間させることが可能となる。このスペーサ65は、例えば樹脂等で構成すると好適である。
【0029】
一対の永久磁石60の内周面と第2ロータ軸22の外周面との間には、磁性流体80が注入される。永久磁石60の内周面と第2ロータ軸22の外周面との間とは、上述の隙間90が相当する。また、上述のように一対の永久磁石60の間には、一対の永久磁石60が軸方向に沿ってスペーサ65を挟持するように設けられる。また、一対の永久磁石60及びスペーサ65の内周面に対向する第2ロータ軸22の外周面には、複数の環状溝24が軸方向に沿って形成される。このような永久磁石60及びスペーサ65の内周面と、第2ロータ軸22の外周面との間に、磁性を帯び磁石に吸着される特性を有する流体である磁性流体80が注入される。
【0030】
ここで、一対の永久磁石60は、互いに引力が作用するように配設される。したがって、一対の永久磁石60の間には、図3において破線で示されるように、一方の永久磁石60から他方の永久磁石60に向かうように磁束が生じる。この磁束は、一対の永久磁石60が互いに対向する領域においては、一方の永久磁石60から生じた磁束は、スペーサ65を介して他方の永久磁石60に達する。一方、一対の永久磁石60が互いに対向しない領域においては、一方の永久磁石60から生じた磁束は、強磁性体材料からなる第2ロータ軸22を介して他方の永久磁石60に達する。このため、一対の永久磁石60、スペーサ65、第2ロータ軸22により囲まれた、隙間90及び複数の環状溝24に磁性流体80を滞留させることができる。したがって、軸受部50の外側と(アウターケース40の外側)と内側(インナーケース30の内側)とを仕切ることができるので、冷媒の漏れを防止することができると共に、インナーケース30の断熱性を高めることが可能となる。
【0031】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、第2ロータ軸22が第1ロータ軸21の軸方向一方の側に設けられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第2ロータ軸22が第1ロータ軸21の軸方向両側に設けられるように構成することも当然に可能である。係る場合、上記実施形態と同様に、磁性流体80を第1ロータ軸21の軸方向両側に配置するように構成することができる。したがって、断熱効果を更に高めることが可能となる。
【0032】
上記実施形態では、第2ロータ軸22が円柱状に形成され、第1ロータ軸21を軸方向に延長するように設けられているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図4に示されるように第2ロータ軸22を円筒状に構成し、当該第2ロータ軸22の径方向内側を第1ロータ軸21が貫通するように構成することも当然に可能である。係る場合、第2ロータ軸22が第1ロータ軸21に対して相対回転しないように、且つ、軸方向の位置がずれないように例えばろう付け等により、第2ロータ軸22を第1ロータ軸21に対して固定しておくと好適である。このような構成であっても、上述したように磁性流体80を所定の位置に滞留させることができる。したがって、断熱効果を高めることが可能である。
【0033】
上記実施形態では、第2ロータ軸22が円柱状に形成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、第2ロータ軸22に、永久磁石60の夫々が対向する第2ロータ軸22の外周面に隣接する一対の永久磁石60の間隔方向外側の領域に小径部29を設けることも可能である。このような第2ロータ軸22に設けられた小径部29が図5に示される。小径部29は、第2ロータ軸22に設けられた複数の環状溝24のうち、最も軸方向外側に設けられた環状溝24の更に軸方向外側に設けられる。このような小径部29は、第2ロータ軸22の軸方向中央部の外径よりも、小さい外径で構成される。これにより、一対の永久磁石60から離間した位置における磁気抵抗を大きくすることができるので、一対の永久磁石60及びスペーサ65が対向する第2ロータ軸22を通過する磁束の密度を高めることが可能となる。したがって、磁性流体80を所期の位置に滞留させ易くなる。
【0034】
上記実施形態では、第2ロータ軸22の外周面に環状溝24が形成されてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。すなわち、第2ロータ軸22の外周面に環状溝24を形成しないように構成することも当然に可能である。
【0035】
本発明は、超伝導材料を有する超伝導回転機に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10:ステータ
11:ステータコイル
20:ロータ
21:第1ロータ軸
22:第2ロータ軸
29:小径部
30:インナーケース
31:収容室
40:アウターケース
46:軸受支持部
50:軸受部
60:永久磁石
75:環状空間
80:磁性流体
100:超伝導回転機
図1
図2
図3
図4
図5