特許第6086233号(P6086233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086233ラックガイド装置及びこれを含むステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086233
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ラックガイド装置及びこれを含むステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   B62D3/12 501B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-111202(P2013-111202)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-227160(P2014-227160A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和宏
(72)【発明者】
【氏名】妙中 真
(72)【発明者】
【氏名】高木 康登
(72)【発明者】
【氏名】宮野 哲次
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−067982(JP,A)
【文献】 特開2012−166752(JP,A)
【文献】 特開平09−039805(JP,A)
【文献】 特開平11−043055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオン軸に噛み合うラック軸を挿通させるハウジングに形成された収容部内に、ラック軸側に向かって進退可能に収容され、且つラック軸を当該ラック軸の軸方向に摺動可能に支持するラックガイドと、
前記収容部においてラック軸側とは反対側に設けられた外部開口端に固定された封止部材と、
前記封止部材と前記ラックガイドとの間に介在し前記ラックガイドをラック軸側へ付勢する少なくとも1枚の皿ばねと、
前記皿ばねを保持し、前記ラックガイドおよび前記封止部材の何れか一方に設けられた凹部の内周に摩擦係合した保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記凹部の内周に摩擦係合する第1部分と前記皿ばねの内径部を案内する第2部分とを有する外周を設けた案内筒を含み、
前記案内筒には、弾性的な縮径を可能とするように軸方向または軸方向に対して傾斜する方向に延びるスリットが形成されているラックガイド装置。
【請求項2】
請求項1において、前記保持部材は、前記案内筒の軸方向の一端から径方向に延びて前記皿ばねの荷重を受ける環状の座板を含み、
前記座板には、前記案内筒のスリットとしての第1スリットに連続する第2スリットが形成されているラックガイド装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記皿ばねと前記保持部材とを含み、一体に取り扱うことのできる保持部材ユニットが構成され、
前記保持部材ユニットにおいて、前記第1部分の外径が、前記第2部分の外径よりも大きく且つ前記皿ばねの内径よりも大きくされているラックガイド装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のラックガイド装置を含むステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックガイド装置及びこれを含むステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラックピニオン式のステアリング装置には、ラックとピニオンとの間のバックラッシを抑制するためのラックガイド装置が設けられている。そのラックガイド装置においては、ラック軸を摺動可能に支持するラックガイドが摩耗した場合に、ラックガイドとプラグとの間に介在する圧縮コイルばねが、ラックガイドをラック軸側へ押し出すことにより、ラックガイドとプラグとの間の間隙を補償するようにしている。
【0003】
特許文献1では、ラックガイドとプラグとの間に、圧縮コイルばねに対して直列に皿ばねを介在させている。皿ばねは、多大な衝撃荷重が入力されたときのみに撓んで衝撃を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−43055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の図4では、プラグに設けられた筒状部内に、皿ばねと、圧縮コイルばねと皿ばねとの間に介在する介在部材(特許文献1では、第2ラックサポートと称されている)とを収容し、保持している。具体的には、皿ばねの外径を案内する筒状部の内周と、介在部材の外周とのそれぞれの周溝に係合させた止め輪を用いて、介在部材を保持し、その介在部材と筒状部の底との間に皿ばねを保持している。
【0006】
特許文献1では、プラグに、皿ばねおよび介在部材を保持するにあたって、止め輪をプラグおよび介在部材の双方の周溝に嵌め入れる煩雑な作業が必要である。このため、プラグを含むユニットをサブ組立する作業を含めた全体の組立工数が増えて、組立性が悪いという問題がある。
本発明の目的は、全体としての組立性の良いラックガイド装置およびこれを含むステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、ピニオン軸(7)に噛み合うラック軸(8)を挿通させるハウジング(17)に形成された収容部(16)内に、ラック軸側に向かって進退可能に収容され、且つラック軸を当該ラック軸の軸方向(Z1)に摺動可能に支持するラックガイド(18;18P)と、前記収容部においてラック軸側とは反対側に設けられた外部開口端(19)に固定された封止部材(20)と、前記封止部材と前記ラックガイドとの間に介在し前記ラックガイドをラック軸側へ付勢する少なくとも1枚の皿ばね(22)と、前記皿ばねを保持し、前記ラックガイドおよび前記封止部材の何れか一方に設けられた凹部(35;29)の内周に摩擦係合した保持部材(24;24P)と、を備え、前記保持部材は、前記凹部の内周(352;292P)に摩擦係合する第1部分(391;391P)と前記皿ばねの内径部(22a)を案内する第2部分(392;392P)とを有する外周(39;39P)を設けた案内筒(37;37P)を含み、前記案内筒には、弾性的な縮径を可能とするように軸方向(X1)または軸方向に対して傾斜する方向に延びるスリット(41;41P)が形成されているラックガイド装置(15;15P)を提供する。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
また、請求項2のように、前記保持部材は、前記案内筒の軸方向の一端(371;371P)から径方向(Y1)に延びて前記皿ばねの荷重を受ける環状の座板(38;38P)を含み、前記座板には、前記案内筒のスリットとしての第1スリット(41;41P)に連続する第2スリット(42;42P)が形成されていてもよい。
【0009】
また、請求項3のように、前記皿ばねと前記保持部材とを含み、一体に取り扱うことのできる保持部材ユニット(SA1;SA1P)が構成され、前記保持部材ユニットにおいて、前記第1部分の外径(D1)が、前記第2部分の外径(D2)よりも大きく且つ前記皿ばねの内径(D3)よりも大きくされていてもよい。
また、請求項4の発明は、前記ラックガイド装置を含むステアリング装置(1)を提供する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、スリット幅の増減によって保持部材の案内筒の弾性縮径量を容易に調節して、案内筒を凹部に摩擦係合させる簡単な作業で、皿ばねおよび保持部材を、ラックガイドおよび封止部材の何れか一方に容易に一体化させ、一体に取り扱うことのできるユニット(サブアセンブリ)を構成することができる。したがって、全体としての組立性を向上することができる。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、保持部材が、皿ばねの内径部を案内する案内筒の一端に設けられた座板によって、皿ばねの荷重を受けるので、皿ばねによるラックガイド等の摩耗の発生を抑制することができる。
また、請求項3の発明によれば、皿ばねと保持部材とを含む保持部材ユニットを構成するので、全体としての組立性が一層、向上する。
【0012】
また、請求項4の発明によれば、組立性に優れたステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態のラックピニオン式のステアリング装置の概略構成の模式図である。
図2】第1実施形態のラックガイド装置を含むステアリング装置の要部の断面図である。
図3】第1実施形態のラックガイド装置の要部の拡大断面図である。
図4】第1実施形態の保持部材の斜視図である。
図5】第1実施形態において、皿ばねと保持部材とを含む保持部材ユニット(第1サブアセンブリ)の断面図である。
図6】第1実施形態において、皿ばねと保持部材と封止部材とを含む封止部材ユニット(第2サブアセンブリ)の断面図である。
図7】本発明の第2実施形態のラックガイド装置の要部の拡大断面図であり、図3の第1実施形態の変更例を示している。
図8】第2実施形態において、皿ばねと保持部材とを含む保持部材ユニット(第1サブアセンブリ)の断面図である。
図9】第2実施形態において、皿ばねと保持部材とラックガイド等とを含むラックガイドユニット(第2サブアセンブリSA2)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸8とを有している。ピニオン軸7およびラック軸8により舵取り機構としてのラックアンドピニオン機構Aが構成されている。
【0015】
ラック軸8は、車体に固定されるラックハウジング9内に、図示しない複数の軸受を介して、軸方向Z1に沿って直線往復動可能に支持されている。ラック軸8の両端部はラックハウジング9の両側へ突出し、各端部にはそれぞれタイロッド10が結合されている。各タイロッド10は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪11に連結されている。
【0016】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック8aによって、ラック軸8の軸方向Z1の直線運動に変換される。これにより、転舵輪11の転舵が達成される。
ステアリング装置1の要部の断面図である図2を参照して、ピニオン軸7は、例えば玉軸受からなる第1軸受12と、例えば円筒ころ軸受からなる第2軸受13とによって、ピニオンハウジング14内に回転可能に支持されている。ピニオン軸7のピニオン7aとラック軸8のラック8aとは、ピニオンハウジング14内で相互に噛み合わされている。
【0017】
ステアリング装置1には、ラックガイド装置15が装備されている。ラックガイド装置15は、円孔からなる収容部16を形成しラック軸8が挿通するハウジング17と、収容部16内にラック軸8側に向かって進退可能に収容され且つラック軸8のラック8aの背面8bを摺動可能に支持するラックガイド18とを備えている。
また、ラックガイド装置15は、収容部16においてラック軸8側とは反対側に設けられた外部開口端19に固定されたプラグ(栓)からなる封止部材20と、ラックガイド18と封止部材20との間に介在する圧縮コイルばね21および1ないし複数(本実施形態では複数の場合に則して説明する。)の皿ばね22とを備えている。また、ラックガイド装置15は、皿ばね22を保持し、封止部材20に摩擦係合されて保持された保持部材24を備えている。
【0018】
ラックガイド装置15のハウジング17は、ピニオンハウジング14と単一の材料で一体に形成され、ラック軸8を隔ててピニオン軸7とは反対側に配置されている。ピニオンハウジング14およびハウジング17は例えばダイキャストにより製作される。
ラックガイド18は、ラック軸8に対向する第1面181と、第1面181の反対側に設けられた第2面182と、円筒面からなる外周183とを有している。ラックガイド18の第1面181には、ラック軸8の背面8bの形状に概ね一致する形状の凹面25が形成されている。凹面25に沿うように湾曲状の摺接板26が取り付けられており、摺接板26が、ラック軸8の背面8bに摺接する。摺接板26としては、低摩擦係数を有する板を用いることが好ましく、例えば金属板や、フッ素樹脂を被覆した金属板を用いることができる。
【0019】
ラックガイド18の外周183に設けられた複数の環状の収容溝27のそれぞれに、例えばOリング等の環状の弾性部材28が収容され、保持されている。ラックガイドの18の外径は、収容部16の内径よりも僅かに小さくされており、弾性部材28が収容部16の内周16aを摺動することで、ラックガイド18が収容部16内をラック軸8に対して進退する方向に移動するようになっている。弾性部材28は、収容部16内でのラックガイド18の倒れを抑制する機能を果たす。
【0020】
図2の一部を拡大した図3を参照して、ラックガイド18の第2面182には、圧縮コイルばね21の一部を収容する例えば円孔からなる凹部29が設けられている。圧縮コイルばね21の第1端部211は、凹部29の底291によって受けられている。凹部29の内周292は、圧縮コイルばね21の外径部を案内する機能を果たしている。
図2および図3を参照して、封止部材20は、ラックガイド18(の第2面182)と対向する第1面201と、第1面201の反対側の第2面202とを有するプラグからなる。すなわち、封止部材20の外周203には、雄ねじ30が形成されている。一方、収容部16の外部開口端19から所定長の範囲に、雌ねじ31が形成され、この雌ねじ31に、封止部材20の雄ねじ30がねじ込まれて、封止部材20がハウジング17に固定されている。
【0021】
封止部材20の第2面202には、封止部材20をねじ込む工具が係合する例えば多角形断面の工具係合孔32が設けられている。また、封止部材20の外周203(後述する筒状部36の外周363に相当)に設けられた1ないし複数の環状の収容溝33に、例えばOリング等の環状の弾性部材からなるシール部材34が収容され、保持されている。シール部材34は、封止部材20の外周203と収容部16の内周16aとの間を封止する機能を果たす。
【0022】
封止部材20の第1面201には、第2端部202側に向けて窪み、圧縮コイルばね21の一部および保持部材24の一部を収容する凹部35が設けられている。これにより、封止部材20は、凹部35の周囲を取り囲む有底の筒状部36を設けている。圧縮コイルばね21の第2端部212は、凹部35の底351によって受けられている。すなわち、圧縮コイルばね21は、封止部材20の凹部35の底351と、ラックガイド18の凹部29の底291との間に圧縮された状態で介在し、ラックガイド18をラック軸8側へ弾性的に付勢している。封止部材20の筒状部36の端面361(封止部材20の第1面201に相当)は、凹部35の周囲を取り囲む環状をなして、皿ばね22を受ける座部として機能する。
【0023】
図3および図4を参照して、保持部材24は、皿ばね22の径方向端部としての内径部22aを案内する案内筒37と、案内筒37の軸方向X1の第1端部371(ラックガイド18側の端部に相当)から径方向Y1の外方に延びて皿ばね22を受ける座板38とを備えている。
案内筒37の外周39は、凹部35の内周352に摩擦係合する第1部分391と、皿ばね22の内径部22aを案内する第2部分392とを有している。第2部分392は、第1部分391と座板38との間に配置されている。案内筒37には、弾性的な縮径を可能とするように軸方向X1または軸方向X1に対して傾斜する方向に延びる第1スリット41が形成されている。また、座板38には、案内筒37の第1スリット41に連続する第2スリット42が形成されている。
【0024】
図3に示すように、封止部材20の筒状部36の端面361(座部)とラックガイド18の第2面182との間に、皿ばね22と座板38とが介在している。座板38は、ラックガイド18の第2面182に沿った状態で、皿ばね22とラックガイド18の第2面182との間に介在している。すなわち、座板38は、ラックガイド18の第2面182に沿う第1面381と、皿ばね22の荷重を受ける座面である第2面382とを備えている。筒状部36の端面361(座部)と座板38の第2面382との間隔は、複数の皿ばね22の密着長よりも大きくされている。
【0025】
座板38は、例えばラックガイド18がアルミニウム製である場合に、ラックガイド18の第2面182と皿ばね22との接触を回避することで、ラックガイド18の第2面182に摩耗が発生することを抑制する機能を果たす。そのため、座板38を含む保持部材24は、例えば鋼製や樹脂製である。
案内筒37の大部分は、封止部材20の凹部35内に挿入され収容されている。圧縮コイルばね21は、案内筒37内を挿通している。案内筒37の内周43と圧縮コイルばね21の外径との間には、所定量の隙間が設けられている。
【0026】
案内筒37は、座板38が延設されている第1端部371とは反対側の端部である第2端部372を有している。ラックガイド18の進退方向(収容部16としての円孔の深さ方向に相当)に関する、案内筒37の第2端部372と封止部材20の凹部35の底351との間には、例えばラックガイド18の進退量と同等または同等以上の隙間が設けられている。
【0027】
図5に示すように、皿ばね22と保持部材24とは、一体に取り扱うことのできる保持部材ユニットとしての第1サブアンセブリSA1を構成している。第1サブアンセブリSA1の状態で、第1部分391の外径D1が、皿ばね22の内径部22aの内径D3よりも大きくされている(D1>D3)。これにより、案内筒37の軸方向X1に関して第1部分391と座板38との間に配置された皿ばね22は、案内筒37からの抜脱を規制されている。その結果、皿ばね22と保持部材24とによって、一体に取り扱うことのできる第1サブアンセブリSA1(保持部材ユニット)を構成することが可能となる。
【0028】
皿ばね22を内径部22aを案内し保持する第2部分392の外径D2は、第1部分391の外径D1よりも小さくされている(D2<D1)。また、第2部分392の外径D2は、皿ばね22の内径D3よりも小さくされている(D2<D3)。
第1部分391は、案内筒37の外周39の全周に延びていてもよいし、外周39の周方向に離隔して複数設けられた凸リブ(図示せず)により構成されていてもよい。第1部分391を複数の凸リブによって構成する場合、第1部分391の外径D1は、複数の凸リブの外接する外接円筒の直径に相当することになる。
【0029】
図6に示すように、保持部材24の外周39の第1部分391が封止部材20の凹部35の内周352に摩擦係合することにより、皿ばね22と保持部材24と封止部材20とシール部材34とが、一体に取り扱うことのできる封止部材ユニットとしての第2サブアンセブリSA2を構成している。
第2サブアセンブリSA2(封止部材ユニット)は、第1サブアセンブリSA1(保持部材ユニット)よりも大きい単位のサブアセンブリである。組立時には、まず、第1サブアセンブリSA1を組み立てた後、第1サブアセンブリSA1を、封止部材20と組み合わせて、第2サブアセンブリSA2を組み立てることになる。
【0030】
図5の第1サブアセンブリSA1(保持部材ユニット)の状態での案内筒37の外周39の第1部分391の外径D1は、図6に示す封止部材20の凹部35の内径D4よりも大きくされている(D1>D4)。したがって、第1サブアセンブリSA1の保持部材24の案内筒37を、封止部材20の凹部35に嵌合させるときに、案内筒37を弾性的に縮径させて(すなわち第1スリット41の幅を縮めて)嵌合させる。弾性的に縮径されて凹部35に嵌合した案内筒37は、凹部35の内周352に摩擦係合する。これにより、第1サブアセンブリSA1(保持部材ユニット)が封止部材20に保持されて、第2サブアセンブリSA2(封止部材ユニット)が構成される。
【0031】
図5の例では、サブアセンブリSA1の状態で、第2部分392の外径D2が、皿ばね22の内径D3よりも小さくされている(D2<D3)。図示していないが、仮に、第1サブアセンブリSA1の状態で、第2部分392の外径D2が、皿ばね22の内径D3と同等とされる(D2=D3)場合、第2サブアセンブリSA2の状態では、第2部分の392の外径が、皿ばね22の内径D3よりも小さいことが好ましい(D2<D3)。第2部分392が、皿ばね22の弾性変形を阻害することを抑制できるからである。
【0032】
本実施形態によれば、第1スリット41の幅の増減によって保持部材24の案内筒37の弾性縮径量を容易に調節して、案内筒37を封止部材20の凹部35に摩擦係合させる簡単な作業で、皿ばね22および保持部材24を封止部材20に容易に一体化させ、一体に取り扱うことのできるユニット(封止部材ユニットとしての第2サブアセンブリSA2)を構成することができる。したがって、ラックガイド装置15全体としての組立性を向上することができる。ひいては、組立性に優れたステアリング装置1を提供することができる。
【0033】
特に、第1スリット41の幅の増減によって、組み合わされる各部品(案内筒37を有する保持部材24、凹部35を有する封止部材20等)の寸法誤差を吸収して、保持部材24の案内筒37を凹部35の内周352に確実に摩擦係合させることができる。
また、保持部材24が、皿ばね22の内径部22aを案内する案内筒37の一端に設けられた座板38によって、皿ばね22の荷重を受けるので、皿ばね22によるラックガイド18の摩耗の発生を抑制することができる。
【0034】
また、保持部材24の案内筒37の外周39の第1部分391によって、案内筒37からの皿ばね22の抜脱を抑制することができる。したがって、皿ばね22と保持部材24とを含んで一体に取り扱うことのできるユニット(保持部材ユニットとしての第1サブアセンブリSA1)を構成することができるので、全体としての組立性を向上することができる。
【0035】
また、皿ばね22が複数である場合に、ばらけ易い複数の皿ばね22を一括して保持するので、作動時においても複数の皿ばね22が芯ずれを起こすことを抑制することができて、好ましい。
また、ラック軸8側からのラックガイド18に荷重が入力されて、ラックガイド18とともに保持部材24が変位するときに、保持部材24の案内筒37の(外周39の第1部分391)が、封止部材20の凹部35の内周352に対して摩擦摺動して摩擦抵抗荷重を発生する。また、皿ばね22が複数である場合には、弾性部材23による摩擦抵抗荷重の発生に加えて、複数の皿ばね22間の接触面どうしが、皿ばね22の圧縮変位に伴って摩擦摺動して摩擦抵抗荷重を発生する。保持部材24および皿ばね22による摩擦抵抗荷重が、ラック軸8側からの荷重入力に抗する対抗荷重として寄与するので、圧縮コイルばね21および皿ばね22による対抗荷重と摩擦抵抗荷重による対抗荷重を含めて、全体としての対抗荷重を増大させることができる。
【0036】
また、ラック軸8側からラックガイド18に大荷重が入力されたときに、ラックガイド18が保持部材24とともに封止部材20側へ移動する。このとき、圧縮された皿ばね22が発生する荷重に、封止部材20に対する保持部材24の(案内筒37の)摩擦係合の摩擦荷重を付加することができる。したがって、大荷重に対向する対抗荷重を増加できる。しかも、ラックガイド18がラック軸8側へ戻るときは、スムーズに戻れる。
【0037】
また、封止部材22とラックガイド18との間に介在してラックガイド18をラック軸8側に付勢する圧縮コイルばね21を皿ばね22と併用するので、荷重設定の自由度を向上することができる。
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態のラックガイド装置15Pの要部の拡大断面図である。図7の第2実施形態のラックガイド装置15Pが、図3の第1実施形態のラックガイド装置15と主に異なるのは、下記である。すなわち、図3の第1実施形態のラックガイド装置15では、皿ばね22を保持した保持部材24の案内筒37が、封止部材20の凹部35の内周352に摩擦係合している。
【0038】
これに対して、図7の第3実施形態のラックガイド装置15Pでは、皿ばね22を保持した保持部材24Pの案内筒37Pが、ラックガイド18の凹部29Pの内周292Pに摩擦係合している。案内筒37Pは、軸方向X1に関して、第1端部371P(封止部材20側の端部に相当)と、第2端部372P(ラックガイド18P側の端部に相当)とを備えている。座板38Pは、第1端部371Pから径方向Y1の外方に延びている。
【0039】
圧縮コイルばね21は、封止部材20の凹部35の底351と、ラックガイド18Pの凹部29Pの底291Pとの間に圧縮された状態で介在している。
案内筒37Pの外周39Pは、凹部29Pの内周292Pに摩擦係合する第1部分391Pと、皿ばね22の内径部22aを案内する第2部分392Pとを有している。案内筒37Pには、弾性的な縮径を可能とするように軸方向X1または軸方向X1に対して傾斜する方向に延びる第1スリット41Pが形成されている。また、座板38Pには、案内筒37Pの第1スリット41Pに連続する第2スリット42Pが形成されている。
【0040】
座板38Pは、封止部材20の封止部材20の端面201(筒状部36の端面に相当)に沿う第1面381Pと、皿ばね22Pの荷重を受ける座面である第2面382Pとを備えている。
図7の第2実施形態の構成要素において、図3の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、図3の第1実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。
【0041】
第2実施形態によれば、第1スリット41Pの幅の増減によって保持部材24の案内筒37Pの弾性縮径量を容易に調節して、案内筒37Pをラックガイド18Pの凹部29Pに摩擦係合させる簡単な作業で、皿ばね22および保持部材24をラックガイド18Pに容易に一体化させ、一体に取り扱うことのできるユニット(図9に示すように、皿ばね22と保持部材24Pとラックガイド18Pと弾性部材28と摺接板26とを含むラックガイドユニットとしての第2サブアセンブリSA2P)を構成することができる。したがって、ラックガイド装置15P全体としての組立性を向上することができる。ひいては、組立性に優れたステアリング装置1を提供することができる。
【0042】
特に、第1スリット41Pの幅の増減によって、組み合わされる各部品(案内筒37Pを有する保持部材24P、凹部29Pを有するラックガイド18P等)の寸法誤差を吸収して、保持部材24Pの案内筒37Pを凹部29Pの内周292Pに確実に摩擦係合させることができる。
また、保持部材24Pが、皿ばね22の内径部22aを案内する案内筒37Pの一端に設けられた座板38Pによって、皿ばね22の荷重を受けるので、皿ばね22による封止部材20の摩耗の発生を抑制することができる。
【0043】
また、保持部材24Pの案内筒37Pの外周39Pの第1部分391Pによって、案内筒37Pからの皿ばね22の抜脱を抑制することができる。したがって、皿ばね22と保持部材24Pとを含んで一体に取り扱うことのできるユニット(図8に示す保持部材ユニットとしての第1サブアセンブリSA1P)を構成することができるので、全体としての組立性を向上することができる。
【0044】
また、皿ばね22が複数である場合に、ばらけ易い複数の皿ばね22を一括して保持するので、作動時においても複数の皿ばね22が芯ずれを起こすことを抑制することができて、好ましい。
また、ラック軸8側からのラックガイド18Pに荷重が入力されて、ラックガイド18Pが保持部材24Pに対して変位するときに、保持部材24Pの案内筒37P(の外周39Pの第1部分391P)が、ラックガイド18Pの凹部29Pの内周292Pに対して摩擦摺動して摩擦抵抗荷重を発生する。また、皿ばね22が複数である場合には、弾性部材23による摩擦抵抗荷重の発生に加えて、複数の皿ばね22間の接触面どうしが、皿ばね22の圧縮変位に伴って摩擦摺動して摩擦抵抗荷重を発生する。保持部材24Pおよび皿ばね22による摩擦抵抗荷重が、ラック軸8側からの荷重入力に抗する対抗荷重として寄与するので、圧縮コイルばね21および皿ばね22による対抗荷重と摩擦抵抗荷重による対抗荷重を含めて、全体としての対抗荷重を増大させることができる。
【0045】
また、ラック軸8側からラックガイド18Pに大荷重が入力されたときに、ラックガイド18Pが保持部材24Pに対して移動する。このとき、圧縮された皿ばね22が発生する荷重に、ラックガイド18Pに対する保持部材24Pの(案内筒37Pの)摩擦係合の摩擦荷重を付加することができる。したがって、大荷重に対向する対抗荷重を増加できる。しかも、ラックガイド18Pがラック軸8側へ戻るときは、スムーズに戻れる。
【0046】
また、封止部材20とラックガイド18Pとの間に介在してラックガイド18Pをラック軸8側に付勢する圧縮コイルばね21を皿ばね22と併用するので、荷重設定の自由度を向上することができる。
本発明は、各前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図7の第2実施形態において、ラックガイド18Pの端面と皿ばねとの間に、例えば鉄製や樹脂製の介在板を介在させて、皿ばね22によるラックガイド18Pの摩耗発生を抑制してもよい。その他、本発明は請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0047】
1…ステアリング装置、2…操舵部材、3…ステアリングシャフト、5…中間軸、7…ピニオン軸、8…ラック軸、9…ラックハウジング、15;15P…ラックガイド装置、16…収容部、17…ハウジング、18;18P…ラックガイド、19…外部開口端、20…封止部材、22…皿ばね、22a…内径部、24;24P…保持部材、29;29P…凹部、291;291P…底、292;292P…内周、35…凹部、351…底、352…内周、37;37P…案内筒、371;371P…第1端部(一端)、372;372P…第2端部、38;38P…座板、39;39P…外周、391;391P…第1部分、392;392P…第2部分、41;41P…第1スリット、42;42P…第2スリット、D1…(第1部分の)外径、D2…(第2部分の)外径、D3…(皿ばねの)内径、SA1;SA1P…第1サブアセンブリ(保持部材ユニット)、SA2…第2サブアセンブリ(封止部材ユニット)、SA2P…第2サブアセンブリ(ラックガイドユニット)、X1…(案内筒の)軸方向、Y1…(案内筒の)径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9