(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(課題の詳細)
図1Aおよび
図1Bは、有機ELディスプレイ10の構成の一例を示す図である。但し、
図1Aおよび
図1Bでは、筐体あるいはTCON等を除いた所謂表示モジュールの構成を示している。
【0012】
図1Aに示す有機ELディスプレイ10Aは、ガラス基板11と、有機ELパネル12と、複数のゲートドライバIC20Aと、複数のソースドライバ30と、PCB(Printed Circuit Board、プリント回路基板)41および42を備えている。
【0013】
有機ELパネル12は、マトリクス状に配置された複数の画素回路で構成されている。画素回路は、ガラス基板上に形成されている。また、画素回路は、発光素子であるEL素子と複数のトランジスタとを含む。複数のトランジスタには、例えば、EL素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、EL素子の選択および非選択を切り替える選択トランジスタとが含まれる。
【0014】
ゲートドライバIC20Aは、ここでは、上述した複数のトランジスタのゲート端子に接続された複数のゲート信号線を駆動する集積回路を備えたCOFである。言い換えると、ゲートドライバIC20Aは、ゲート信号線のそれぞれに、ゲート信号線に接続されたトランジスタをON状態またはOFF状態にする電圧を与える集積回路を備えて構成される。ゲートドライバIC20Aは、ガラス基板11上に形成された複数のゲート信号線に接続されている。また、ここでのゲートドライバIC20Aは、有機ELパネルの両側に設けられ、両側から同時に信号線を駆動するように構成されている。
【0015】
ソースドライバ30は、画素回路に接続されたソース信号線に、画素値に応じた電圧を与える集積回路を備えて構成される。ソースドライバ30は、ガラス基板11上に形成された複数のソース信号線に接続されている。PCB41は、TCON(図示せず)からの信号をゲートドライバIC20Aに与える回路を備える。PCB41は、ゲートドライバIC20Aに接続されている。PCB42は、TCON(図示せず)からの信号をソースドライバ30に与える回路を備える。PCB42は、ソースドライバ30に接続されている。また、
図1Aでは、2つのPCB42を備えている。
【0016】
なお、ゲートドライバIC20およびPCB40の数は、有機ELディスプレイの大きさに応じて設定される。
【0017】
図1Bに示す有機ELディスプレイ10Bは、ガラス基板11と、有機ELパネル12と、複数のゲートドライバIC20Bと、複数のソースドライバ30と、PCB42を備えている。なお、
図1Aに示す有機ELディスプレイ10Aとは、PCB41を備えない点で異なっている。
【0018】
ここで、ゲートドライバIC20を接続する方法、例えば、クロック信号を供給するクロック信号線の配線方法には、例えば、(1)カスケード接続と、(2)マルチドロップ接続とがある。ゲートドライバICには、カスケード接続に対応したゲートドライバICと(例えば、特許文献1参照)、マルチドロップ接続に対応したゲートドライバICの2種類がある。
【0019】
(1)カスケード接続では、各COFが後段のCOFにクロック信号を受け渡すように構成される。このため、カスケード接続では、クロス配線の数、つまり、配線の交差数を抑えるあるいは無くすことができる。その為、一層での配線が可能である。
【0020】
カスケード接続は、例えば、
図1Bに示す有機ELディスプレイ10Bのように、PCBを備えない有機ELディスプレイで用いられる。PCBを備えない場合、有機ELディスプレイの薄型化に有利である。より詳細には、PCBを備えない場合、COFに入力するクロック信号を伝達するためのクロック配線は、有機ELパネルを構成するガラス基板上に形成する必要がある。ガラス基板上では、クロス配線は行えないため、COFをカスケード接続にする必要がある。
【0021】
図2Aは、カスケード接続に対応したゲートドライバICの一例を示す図である。
図2Aでは、説明のため、クロック端子CLK1AおよびCLK1Bと、クロック信号の方向を指示する信号を入力する1対の信号方向制御端子DIRとを図示しており、その他の端子については省略している。
【0022】
図2Aに示すゲートドライバIC20Cas(
図2Aでは「ゲートドライバ」と記載)は、双方向バッファBZ1およびBZ2と、内部回路21とを備えている。
【0023】
双方向バッファBZ1は、信号方向制御回路の一例であり、2つの3ステートバッファ(制御入力付きバッファ)を組み合わせて構成されている。より詳細には、双方向バッファBZ1は、2つの3ステートバッファを、入出力方向が逆向きになるように並列に接続して構成されている。なお、2つの3ステートバッファの一方は、入力信号がHレベルの場合に入力信号と同じ論理状態の信号を出力し、Lレベルの場合に出力がHi−Zとなる。2つの3ステートバッファの他方は、入力信号がLレベルの場合に入力信号と同じ論理状態の信号を出力し、Hレベルの場合に出力がHi−Zとなる。また、3ステートバッファは、ここでは、クロックバッファである。クロックバッファは、クロック信号に対して利用可能なバッファである。クロックバッファは、例えば、高速動作に対応している、遅延が少ない等の特性を有するバッファであっても構わない。また、双方向バッファBZ1は、クロック端子CLK1Aと内部回路21との間に設けられている。双方向バッファBZ1は、切り替え端子C1およびC2が1対の信号方向制御端子DIRに、端子IO1がクロック端子CLK1Aに、端子IO2が双方向バッファBZ2の端子IO1および内部回路21にそれぞれ接続されている。
【0024】
双方向バッファBZ2は、双方向バッファBZ1と同様に、2つの3ステートバッファを組み合わせて構成されている。より詳細には、双方向バッファBZ2は、2つの3ステートバッファを、入出力方向が逆向きになるように並列に接続して構成されている。また、双方向バッファBZ2は、クロック端子CLK1Bと内部回路21との間に設けられている。双方向バッファBZ2は、切り替え端子C1およびC2が1対の信号方向制御端子DIRに、端子IO1が双方向バッファBZ1の端子IO2および内部回路21に、端子IO2がクロック端子CLK1Bにそれぞれ接続されている。
【0025】
内部回路21は、シフトレジスタおよび出力回路等を備えて構成されている。
【0026】
図2Aに示すゲートドライバIC20Casでは、1対の信号方向制御端子DIRに入力される信号方向制御信号が、Lレベルの場合、クロック信号の入出力方向は、クロック端子CLK1Aからクロック端子CLK1Bに向かう方向(第一方向)となる。また、信号方向制御信号がHレベルの場合、クロック信号の入出力方向は、クロック端子CLK1Bからクロック端子CLK1Aに向かう方向(第二方向)となる。
【0027】
(2)マルチドロップ接続では、全COFにクロック信号を供給するクロック配線がPCB上に形成され、各COFは当該クロック配線から直接クロック信号を受信する。マルチドロップ接続は、クロック信号の遅延が無いため、有機ELディスプレイの高精細化に有利である。マルチドロップ接続は、
図1Aに示す有機ELディスプレイ10Aおよび
図1Bに示す有機ELディスプレイ10Bの何れにも用いることができる。
【0028】
図2Bは、マルチドロップ接続に対応したゲートドライバICの一例を示す図である。
図2Bでは、説明のため、クロック端子CLK1AおよびバッファB1を図示しており、その他の端子については省略している。
【0029】
図2Bに示すゲートドライバIC20Mul(
図2Bでは「ゲートドライバ」と記載)は、クロック端子CLK1Aから入力された信号を、バッファB1を介して内部回路21に入力している。マルチドロップ接続では、後段への信号の受け渡しおよび信号の方向の制御が必要ないため、クロック端子CLK1B、クロックの信号方向を制御する機能としての1対の信号方向制御端子DIRを備える必要は無い。
【0030】
有機ELディスプレイでは、1つの画素回路あたりのゲート信号線数が4本以上と多い。そのため、ゲートドライバICの構成は、複雑になる傾向がある。このため、特に、有機ELディスプレイでは、カスケード接続に専用に対応したICおよびマルチドロップ接続に専用に対応したICの何れかを、搭載される有機ELディスプレイの大きさあるいは用途等に応じて、使い分けていた。
【0031】
しかしながら、上述したように、製造コストの観点から、カスケード接続およびマルチドロップ接続の何れにも対応可能な、つまり、汎用性を向上させたゲート駆動用集積回路の汎用性の向上が望まれている。
【0032】
(実施の形態)
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0033】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0034】
なお、各図は、必ずしも各寸法あるいは各寸法比等を厳密に図示したものではない。
【0035】
また、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。本開示は、請求の範囲によって特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、本開示の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0036】
実施の形態のゲートドライバICおよび当該ゲートドライバICを用いた有機ELディスプレイについて、
図3〜
図11を基に説明する。
【0037】
比較例におけるゲートドライバICは、カスケード接続およびマルチドロップ接続の何れか一方にのみ対応していたが、本実施の形態のゲートドライバICは、カスケード接続およびマルチドロップ接続の両方に対応している。このため、本実施の形態のゲートドライバICは、カスケード接続およびマルチドロップ接続を切り替えるための接続モード制御端子CLKSELを備えている。なお、本実施の形態では、接続モード制御端子CLKSELとして、2つの端子が対になるように設けられているが、1つの端子でも構わない。
【0038】
図11は、実施の形態のゲートドライバICを用いた有機ELディスプレイの外観の一例を示す外観図である。なお、有機ELディスプレイは、画像表示装置の一例である。
【0039】
[1.ゲートドライバICの構成]
図3および
図4は、ゲートドライバIC20の構成の一例を示す回路図である。なお、
図3では、ゲートドライバIC20の全体的なブロック構成を示している。
【0040】
図3では、ゲートドライバIC20が4種類のクロック信号を受け付ける場合を例示している。
図3に示すゲートドライバIC20には、4種類のクロック信号のそれぞれに対応して、シフトレジスタSRj(
図3ではj=1〜4)、および、出力回路OCjが設けられている。なお、
図3では、ゲートドライバIC20が4つのシフトレジスタSRjおよび出力回路OCjを備える場合を示しているが、これに限るものではない。ゲートドライバIC20は、クロック信号の種類数、言い換えると、画素回路を構成するトランジスタの数に応じた数のシフトレジスタおよび出力回路を備えていればよい。
【0041】
シフトレジスタSRjは、双方向レジスタであり、接続モード制御信号S_CLKSELが伝達されるノード、信号方向制御信号S_DIRが伝達されるノード、クロック端子CLKjAおよびCLKjB、端子STVjAおよびSTVjB、端子LSHIFTjAおよびLSHIFTjB、端子OUTCTLj、端子DLINEjおよび出力回路OCjに接続されている。接続モード制御信号S_CLKSELが伝達されるノードは、接続モード制御端子CLKSELが接続されるノードである(
図4参照)。信号方向制御信号S_DIRが伝達されるノードには、1対の信号方向制御端子DIRが接続されるノードである(
図4参照)。
【0042】
出力回路OCjは、端子SELj、端子VONk、端子VOFF1k、端子VOFF2、端子VOUTk1〜180、および、端子HZに接続されている。なお、j=1のときk=A、j=2のときK=B、j=3のときK=C、j=4のときK=Dである。
【0043】
図4では、比較例との差異を説明するため、ゲートドライバIC20の構成のうち、クロック端子CLK1AまたはCLK1Bに入力される1種類のクロック信号に関する部分について示している。なお、他のクロック信号(クロック端子CLK2AまたはCLK2B〜CLKnAまたはCLKnBに入力されるクロック信号)についても、クロック端子CLK1AまたはCLK1Bに入力されるクロック信号に対応する回路と同じ回路が構成されている。
【0044】
また、
図5は、ゲートドライバIC20の端子の配置例を示す図である。
【0045】
ゲートドライバIC20は、
図4に示すように、1対の信号端子と、双方向バッファと、接続モード制御端子と、1対の信号方向制御端子と、制御モード切り替え回路とを備える。なお、本実施の形態では、カスケード接続に対応するため、電源を入力する電源端子を除き、各信号に対し、入力側を構成する端子と出力側を構成する端子の2つが、1対の端子として設けられている。また、各端子は、入力側および出力側の両方に対応するため、双方向IOバッファで構成されている。
【0046】
1対の信号端子は、所定の信号が入力または出力される端子である。本実施の形態では、クロック信号が入力または出力されるクロック端子CLK1AおよびCLK1Bを例に説明する。
【0047】
双方向バッファは、クロック端子CLK1AおよびCLK1Bの間に配置され、クロック端子CLK1AおよびCLK1Bの入出力方向を切り替える切り替え端子を備えている。本実施の形態では、2つの双方向バッファBZ1およびBZ2が設けられている。
【0048】
双方向バッファBZ1は、クロック端子CLK1Aと内部回路21との間に設けられている。双方向バッファBZ1は、切り替え端子C1およびC2が後述するセレクタSELECT1の出力端子Oに、端子IO1がクロック端子CLK1Aに、端子IO2が双方向バッファBZ2の端子IO1および内部回路21にそれぞれ接続されている。
【0049】
双方向バッファBZ2は、クロック端子CLK1Bと内部回路21との間に設けられている。双方向バッファBZ2は、切り替え端子C1およびC2が後述するセレクタSELECT2の出力端子Oに、端子IO1が双方向バッファBZ1の端子IO2および内部回路21に、端子IO2がクロック端子CLK1Bにそれぞれ接続されている。
【0050】
接続モード制御端子CLKSELは、接続モード制御信号S_CLKSELが入力または出力される端子である。
【0051】
接続モード制御信号S_CLKSELの論理状態に応じて、クロック信号の入出力方向を一方に固定する(マルチドロップ接続を選択する)か、可変にする(カスケード接続を選択する)かが切り替えられる。
【0052】
1対の信号方向制御端子DIRは、カスケード接続が選択されている場合に、信号方向制御信号S_DIRが入力または出力される端子である。
【0053】
制御モード切り替え回路は、接続モード制御信号の論理状態が第一論理状態の場合に、双方向バッファの切り替え端子に対し、クロック信号の入出力方向を一方に固定する信号を与え、接続モード制御信号の論理状態が第二論理状態の場合に、双方向バッファの切り替え端子に対し、信号方向制御信号の論理状態に応じた信号を与える。
【0054】
制御モード切り替え回路は、本実施の形態では、セレクタSELECT1およびSELECT2を用いて構成されている。
【0055】
セレクタSELECT1は、端子Sに接続モード制御端子CLKSELが、端子Bに1対の信号方向制御端子DIRがそれぞれ接続され、端子Aに、Lレベルの信号が入力されている。また、セレクタSELECT1の出力端子Oは、双方向バッファBZ1の切り替え端子C1およびC2に接続されている。
【0056】
セレクタSELECT2は、端子Sに接続モード制御端子CLKSELが、端子Bに1対の信号方向制御端子DIRがそれぞれ接続され、端子Aに、Lレベルの信号が入力されている。また、セレクタSELECT2の出力端子Oは、双方向バッファBZ2の切り替え端子C1およびC2に接続されている。
【0057】
図5は、ゲートドライバIC20の端子の配置例を示す図である。
【0058】
クロック端子CLKnAおよびCLKnB(n=クロックの種類数)の間に、1対の信号方向制御端子DIRが配置され、1対の信号方向制御端子DIRの間に、接続モード制御端子CLKSELが配置されている。また、端子名に添え字“A”が付く端子が、図面上側に、端子名に添え字“B”が付く端子が、図面下側に配置されている。
【0059】
なお、
図5では、クロック信号の種類数nが4である場合を示しているが、nは画素回路の構成に応じた数、より詳細には、画素回路のトランジスタ数に応じて設定される。
【0060】
[2.ゲートドライバICの仕様および動作]
図6および
図7は、本実施の形態におけるゲートドライバIC20の仕様の一例を示す表である。
【0061】
図6では、接続モード制御信号S_CLKSEL、つまり、接続モード制御端子CLKSELに入力される信号の論理状態と、クロック信号の入出力方向との関係を示している。
【0062】
図7では、信号方向制御信号S_DIR、つまり、1対の信号方向制御端子DIRに入力される信号方向制御信号S_DIRの論理状態と、各信号の入出力方向との関係を示している。但し、
図6に示した通り、クロック信号の入出力方向は、CLKSELがLレベルの場合は、信号方向制御端子DIRに依存せず(
図7の表には従わず)、クロック端子CLK1Aを入力、クロック端子CLK1Bを出力とする第一方向に固定される。言い換えると、端子STV、端子LSHIFTについては、接続モード制御信号S_CLKSELに依存せず、信号方向制御信号S_DIRに応じて信号の入出力方向が設定される。
【0063】
接続モード制御信号S_CLKSELがLレベル(第一論理状態に相当、例えば、接地電圧)の場合、
図6に示すように、マルチドロップ接続モードとなる。このとき、クロック信号の入出力方向は、クロック端子CLK1Aからクロック端子CLK1Bに向かう第一方向に固定される。
【0064】
また、接続モード制御信号S_CLKSELがHレベル(第二論理状態に相当、例えば、電源電圧)の場合、
図6に示すように、カスケード接続モードとなる。このとき、クロック信号の入出力方向は、信号方向制御信号S_DIRの論理状態に応じて設定される。具体的には、信号方向制御信号S_DIRがLレベル(第三論理状態に相当)の場合、信号の入出力方向は、第一方向に設定される。信号方向制御信号S_DIRがHレベル(第四論理状態に相当)の場合、信号の入出力方向は、第二方向に設定される。
【0065】
なお、第一方向および第二方向は、逆であっても構わない。また、接続モード制御信号S_CLKSELがHレベルのときにマルチドロップ接続モード、Lレベルのときにカスケード接続モードとなるように構成しても構わない。また、信号方向制御信号S_DIRがHレベルのときに信号方向を第一方向に、Lレベルのときに信号方向を第二方向に設定しても構わない。
【0066】
[3.ゲートドライバICの接続例(有機ELディスプレイの構成)]
ゲートドライバICの接続例について、
図8〜10を用いて説明する。ここでは、カスケード接続(PCBなし)の場合、カスケード接続(PCBあり)の場合、マルチドロップ接続(PCBあり)の場合について説明する。
【0067】
[3−1.接続例1:カスケード接続(PCBなし)]
図8は、PCB41を備えない有機ELディスプレイ10B(
図1B参照)において、カスケード接続を行う場合の接続例を示す回路図である。
【0068】
なお、有機ELディスプレイ10Bの構成は、ゲートドライバIC、および、ゲートドライバICとTCONとを接続する配線を除き、比較例と同じである。
【0069】
図8に示すように、本接続例では、ガラス基板11の左端にゲートドライバIC201〜20nが1列に接続され、ガラス基板11の右端にゲートドライバIC20n+1〜20m(m=2n)が1列に接続されている。
【0070】
ガラス基板11の左側では、
図8に示すように、ゲートドライバIC20h(h=1〜n−1)のクロック端子CLK1BとゲートドライバIC20h+1のクロック端子CLK1Aとが接続されている。
【0071】
また、ガラス基板11の右側では、
図8に示すように、ゲートドライバIC20n+1〜20m(m=2n)が、ゲートドライバIC201〜20nとは上下および左右が逆になるように配置されている。ガラス基板11の右側では、
図8に示すように、ゲートドライバIC20i(i=n+1〜m−1)のクロック端子CLK1AとゲートドライバIC20i+1のクロック端子CLK1Bとが接続されている。
【0072】
ゲートドライバIC20同士を接続する配線は、ガラス基板11上に形成されている。
【0073】
なお、図示しないが、接続モード制御端子CLKSEL、1対の信号方向制御端子DIRについても、クロック端子と同様の方法でカスケード接続する。
【0074】
実際の製品では、接続モード制御端子CLKSELに入力される接続モード制御信号S_CLKSELは、一方に固定されている。本接続例では、カスケード接続が選択されているため、接続モード制御端子CLKSELは電源配線に接続されている。
【0075】
TCON50は、信号の入出力方向を第一方向に設定する場合は、1対の信号方向制御端子DIRにLレベルの信号を出力し、ゲートドライバIC201および20mのクロック端子CLK1Aにクロック信号CLK1を出力する。TCON50は、信号の入出力方向を第二方向に設定する場合は、1対の信号方向制御端子DIRにHレベルの信号を出力し、ゲートドライバIC20nおよび20n+1のクロック端子CLK1Bにクロック信号CLK2を出力する。
【0076】
[3−2.接続例2:カスケード接続(PCBあり)]
図9は、PCB41を備えた有機ELディスプレイ10A(
図1A参照)において、カスケード接続を行う場合の接続例を示す回路図である。
【0077】
なお、有機ELディスプレイ10Aの構成は、ゲートドライバIC、および、ゲートドライバICとTCONとを接続する配線を除き、比較例と同じである。
【0078】
本接続例では、
図9に示すように、ガラス基板11の左端にゲートドライバIC201〜20nが1列に接続されている。ゲートドライバIC201〜20nの図面左側で、PCB41とゲートドライバIC201〜20nとが接続されている。また、ガラス基板11の右端にゲートドライバIC20n+1〜20m(m=2n)が1列に接続されている。ゲートドライバIC20n+1〜20mの図面右側で、PCB41とゲートドライバIC20n+1〜20mとが接続されている。
【0079】
ガラス基板11の左側では、接続例1と同様に、ゲートドライバIC20h(h=1〜n−1)のクロック端子CLK1BとゲートドライバIC20h+1のクロック端子CLK1Aとが接続されている。
【0080】
また、ガラス基板11の右側では、接続例1と同様に、ゲートドライバIC20n+1〜20m(m=2n)が、ゲートドライバIC201〜20nとは上下および左右が逆になるように配置されている。ガラス基板11の右側では、接続例1と同様に、ゲートドライバIC20i(i=n+1〜m−1)のクロック端子CLK1AとゲートドライバIC20i+1のクロック端子CLK1Bとが接続されている。
【0081】
ゲートドライバIC20同士を接続する配線は、本接続例では、PCB41上に形成されている。
【0082】
なお、図示しないが、接続モード制御端子CLKSEL、1対の信号方向制御端子DIRについても、クロック端子と同様の方法でカスケード接続する。
【0083】
実際の製品では、接続モード制御端子CLKSELに入力される接続モード制御信号S_CLKSELは、一方に固定されている。本接続例では、カスケード接続が選択されているため、接続モード制御端子CLKSELは電源配線に接続されている。
【0084】
TCON50は、接続例1と同様に、信号の入出力方向を第一方向に設定する場合は、1対の信号方向制御端子DIRにLレベルの信号を出力し、ゲートドライバIC201および20mのクロック端子CLK1Aにクロック信号CLK1を出力する。さらに、TCON50は、接続例1と同様に、信号の入出力方向を第二方向に設定する場合は、1対の信号方向制御端子DIRにHレベルの信号を出力し、ゲートドライバIC20nおよび20n+1のクロック端子CLK1Bにクロック信号CLK2を出力する。
【0085】
[3−3.接続例3:マルチドロップ接続(PCBあり)]
図10は、PCB41を備えた有機ELディスプレイ10A(
図1A参照)において、マルチドロップ接続を行う場合の接続例を示す回路図である。
【0086】
なお、有機ELディスプレイ10Aの構成は、ゲートドライバIC、および、ゲートドライバICとTCONとを接続する配線を除き、比較例と同じである。
【0087】
本接続例では、接続例2と同様に、ガラス基板11の左端にゲートドライバIC201〜20nが1列に接続されている。ゲートドライバIC201〜20nの図面左側で、PCB41とゲートドライバIC201〜20nとが接続されている。また、ガラス基板11の右端にゲートドライバIC20n+1〜20m(m=2n)が1列に接続されている。ゲートドライバIC20n+1〜20mの図面右側で、PCB41とゲートドライバIC20n+1〜20mとが接続されている。
【0088】
ゲートドライバIC201〜20mのクロック端子CLK1Aは、PCB41上に形成されたクロック配線L1Aに、クロック端子CLK1Bは、PCB41上に形成されたクロック配線L1Bにそれぞれ接続されている。
【0089】
なお、図示しないが、接続モード制御端子CLKSEL、1対の信号方向制御端子DIRについても、クロック端子と同様の方法でマルチドロップ接続する。
【0090】
実際の製品では、接続モード制御端子CLKSELに入力される接続モード制御信号S_CLKSELは、一方に固定されている。本接続例では、カスケード接続が選択されているため、接続モード制御端子CLKSELは接地配線に接続されている。
【0091】
本接続例では、1対の信号方向制御端子DIRの電圧に拘わらず、信号の入出力方向は第一方向に固定される。従って、TCON50は、1対の信号方向制御端子DIRの電圧を切り替える必要がない。
【0092】
[4.クロック信号以外の信号について]
なお、本実施の形態では、クロック信号について説明したが、画素回路に含まれる複数のトランジスタのゲート端子に供給されるゲート信号についても、カスケード接続およびマルチドロップ接続の両方に対応することが望ましい。
【0093】
また、ゲート信号等の信号については、1対の信号端子の間に設けられるバッファは、双方向クロックバッファでなくても構わない。1対の信号端子の間に設けられるバッファは、信号の用途等に応じた適切な駆動能力を有するバッファであればよい。
【0094】
なお、3−2または3−3に示すPCB41を用いた接続例において、例えば、クロック信号等、同期を図ることが求められる信号についてはマルチドロップ接続し、他の信号についてはカスケード接続するように構成してもよい。
【0095】
[5.作用効果等]
本実施の形態のゲートドライバICは、カスケード接続およびマルチドロップ接続の両方に対応しているので、汎用性が向上している。ゲートドライバICの汎用性が高まることで、2種類のゲートドライバICを別個に作成する場合に比べ、製造コストの低減を図ることが可能になると考えられる。さらに、当該ゲートドライバICを用いた画像表示装置、例えば、有機ELディスプレイについても、製造コストの低減を図ることが可能になる。
【0096】
なお、カスケード接続の場合は、1対の信号方向制御端子DIRに入力する信号方向制御信号により、信号の入出力方向を制御できる。
【0097】
さらに、本実施の形態のゲートドライバICは、クロック信号およびゲート信号等の所定の信号を受け付ける1対の信号端子の間に、1対の信号方向制御端子を設け、1対の信号方向制御端子の間に、接続モード制御端子を設けている。これにより、カスケード接続モードを選択する場合における配線が容易になる。
【0098】
また、本実施の形態のゲートドライバICでは、接続モード制御信号S_CLKSELを受け付ける接続モード制御端子を設けるという簡単且つ小さな構成の変更で、カスケード接続とマルチドロップ接続とを切り替えることができる。これにより、TCONとゲートドライバICとの間の配線が、複雑化するのを抑えることができる。特に、有機ELディスプレイでは、液晶ディスプレイ等の他の画像表示装置と比較して、画素回路に含まれるトランジスタの数が多く、配線等が複雑化する傾向にある(
図3参照)。このため、ゲートドライバICの構成の変更を簡単且つ小さくすることは、有機ELディスプレイにおいて特に有用である。
【0099】
さらに、クロック信号は、有機ELディスプレイ10の動作に与える影響が大きいことから、クロック信号についてカスケード接続およびマルチドロップ接続を選択できるようにすることで、より汎用性を向上させることができる。
【0100】
(他の実施の形態等)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0101】
(1)例えば、上記実施の形態では、信号の入出力方向を設定する信号方向制御回路として、双方向バッファを用いたが、これに限るものではない。3ステートバッファを直接用いてもよいし、他の論理回路を組み合わせて作成したバッファ回路を用いても良い。
【0102】
(2)また、上記実施の形態では、接続モードを切り替えるための構成として、セレクタを用いたが、これに限るものではない。
【0103】
(3)また、上記実施の形態では、2つの接続モード制御端子CLKSELを備える場合について例示したが、これに限るものではない。接続モード制御端子は、特に、電源配線に接続する場合には、1つの端子であっても構わない。
【0104】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0105】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0106】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。