(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも気化洗浄槽と、加熱装置と、洗浄剤回収容器と、冷却器と、液化装置と、減圧装置とを含み、これらを収納手段に配置した、変圧器を現場で洗浄する洗浄システムであって、
ポリ塩化ビフェニルで汚染された変圧器を、該気化洗浄槽の内側に配置し、該気化洗浄槽内側に洗浄剤を供給し、該気化洗浄槽の内部を大気圧より低い圧力とし、該気化洗浄槽を加熱して該洗浄剤を気化させ、該気化させた洗浄剤により該変圧器を洗浄した後、該気化させた洗浄剤を該冷却器ならびに該液化装置により液化し、該気化洗浄槽に還流することを特徴とする、閉鎖系または準閉鎖系にて変圧器を洗浄する前記システム。
少なくとも気化洗浄槽と、加熱装置と、洗浄剤回収容器と、冷却器と、液化装置と、減圧装置とを含み、これらを収納手段に配置した、変圧器を現場で洗浄する洗浄システムを用いてポリ塩化ビフェニルで汚染された変圧器を閉鎖系または準閉鎖系にて洗浄する方法であって、以下の工程:
該気化洗浄槽の内側に該変圧器を配置し、
該気化洗浄槽の内側に洗浄剤を供給し、
該気化洗浄槽の内部を大気圧より低い圧力とし、
該気化洗浄槽を加熱して該気化洗浄槽の内側を該洗浄剤の沸点以上にまで昇温して、該洗浄剤を該気化洗浄槽の内側で気化させ、
該気化させた洗浄剤により該変圧器を洗浄し、
該気化させた洗浄剤を該冷却器ならびに該液化装置により液化し、該気化洗浄槽に還流する
ことを含む、前記変圧器を洗浄する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の一般的な洗浄作業では、変圧器を、洗浄槽または洗浄容器内に搬入する必要があった。従来の洗浄作業では、洗浄溶剤を充たした洗浄槽に変圧器を浸漬する必要があるため、大量の洗浄溶剤が必要となり、処理しなければならない廃液量も多くなるという問題があった。また、変圧器のように容器状になったものは、容器内を充分に洗浄できなかった。多量の積層物がその内部に配置されている変圧器は、内部構造の複雑さ故、解体作業が困難で、洗浄した後に洗浄むらが見られたりするという問題があった。一方、小型変圧器は、洗浄することなく焼却処分をするという方法も考えられるが、変圧器の焼却にはコストがかかり、処理の効率も低い。
【0006】
本発明は、複数の変圧器内のポリ塩化ビフェニル含有油(以下、「汚染油」と称する。)を、極力廃液や排気を出さない方法で、可能な限り少量の洗浄剤で同時に除去して、変圧器を廃棄可能な状態とする洗浄システムならびにこれを用いた洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の形態は、少なくとも気化洗浄槽と、加熱装置と、洗浄剤回収容器と、冷却器と、液化装置と、減圧装置とを含み、これらを収納手段に配置した、変圧器を現場で洗浄する洗浄システムであって、ポリ塩化ビフェニルで汚染された変圧器を、該気化洗浄槽の内側に配置し、該気化洗浄槽内側に洗浄剤を供給し、該気化洗浄槽の内部を大気圧より低い圧力とし、該気化洗浄槽を加熱して該洗浄剤を気化させることを特徴とする、システムである。
【0008】
さらに本発明の別の形態は、少なくとも気化洗浄槽と、加熱装置と、洗浄剤回収容器と、冷却器と、液化装置と、減圧装置とを含み、これらを収納手段に配置した、変圧器を現場で洗浄する洗浄システムを用いてポリ塩化ビフェニルで汚染された変圧器を洗浄する方法である。本実施形態は、以下の工程:気化洗浄槽の内側に変圧器を配置し、気化洗浄槽の内側に洗浄剤を供給し、気化洗浄槽の内部を大気圧より低い圧力とし、気化洗浄槽を加熱して気化洗浄槽の内側を洗浄剤の沸点以上にまで昇温して、洗浄剤を気化洗浄槽の内側で気化させることを含むことを特徴とする、変圧器の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態の洗浄システムは、可搬型とすることができ、これにより汚染された変圧器が保存されている現場に容易に移動することができる。本実施形態のシステムを用いて、大量に存在するポリ塩化ビフェニルで汚染された変圧器を、複数同時に洗浄することができる。本実施形態のシステムを用いた汚染変圧器の洗浄方法は、ドレン弁等を取り付けることができない小型変圧器の内部を直接的に洗浄することを可能とするほか、洗浄操作のための広大な場所が不要で、かつ洗浄剤使用量の少ない、ほぼ閉鎖系の、効率的な洗浄をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態にかかるシステムを用いて洗浄する対象物である変圧器とは、交流電力の電圧を変換する電力機器のことであり、磁気的に結合した複数のコイルを主な構成部品とする。変圧器は、絶縁物の種類により油入変圧器、モールド変圧器、ガス変圧器があるが、本明細書では、特に、油を絶縁物として用いた油入変圧器のことを指す。油入変圧器は、油の容量が数万〜数十万kLの大型機器、数百から数千kLの中型機器、数百リットル以下の小型機器がある。油入変圧器の絶縁油中にはかつてポリ塩化ビフェニルが使用されており、ポリ塩化ビフェニルが内部に残留している変圧器が処理されることなく大量に存在している。このように廃棄処理が困難なために残存している変圧器を本形態の洗浄対象とする。実施形態にかかるシステムは、特にドレン弁等を直接取り付けることができない、小型変圧器の洗浄に特に有利に用いられる。
【0012】
本実施形態のシステムを用いて除去する対象となるポリ塩化ビフェニル(以下、「PCB」と称する。)とは、分子内に存在する塩素の数および位置が異なる209種類の異性体の総称のことであり、特定の一種類の化合物を指すものではない。
【0013】
本実施形態のシステムは、少なくとも気化洗浄槽と、加熱装置と、洗浄剤回収容器と、冷却器と、液化装置と、減圧装置とを含む。気化洗浄槽は、システムを利用して洗浄する変圧器を内部に置くための容器である。気化洗浄槽は、複数の変圧器を収納可能な容器部と、変圧器を置くための仕切り部とから主に構成される。容器部は気化洗浄槽の容体部であり、仕切り部は変圧器を配置するための板状部材である。容器部は減圧操作に耐えうる金属、またはプラスチック材料等により形成されている。仕切り部は、格子形状のものが好ましく、木材、金網、グレーチング等を用いることができる。容器部は、容量数百リットルの小型変圧器を少なくとも複数個(たとえば5個以上)、あるいは、容量数百から数千リットルの中型変圧器を配置することが可能な容積を有する。このようなサイズを有する気化洗浄槽を用いることで、複数の小型変圧器の洗浄を同時に行うことが可能となる。仕切り部は、先に説明したとおり、格子形状を有する木材や金網、グレーチング等の板状の部材であり、気化洗浄槽内部を、変圧器収納部と洗浄剤導入部とに分割することができる。一方、気化洗浄槽は、洗浄剤に対する耐久性を有する材料で作られている必要がある。気化洗浄槽は金属またはプラスチック材料により形成されていることが好ましい。気化洗浄槽内部に、洗浄剤を入れておくための液溜め容器を設け、ここに洗浄剤を入れておくこともできる。ここで洗浄剤としては、変圧器内に残存する汚染油を溶解または少なくとも分散させることができかつ当該汚染油よりも沸点が低いものが好ましい。このような洗浄剤として、炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤等を用いることができる。たとえば、炭素数が8〜15のアルカン、アルケン、シクロアルカン又はアルケン系溶剤(特に、炭素数が11〜13のアルカンやアルケン系溶剤)や、炭素数が1〜12のハロゲン系溶剤を用いることができる。具体的には、変圧器1の内側に残留しているPCB含有油(汚染油)を溶解または分散しやすい炭化水素系溶剤である、アクアソルベントG71(アクア化学株式会社)、HC−370(東ソー株式会社)、MD−250(武蔵テクノケミカル株式会社)、Linpar12(Sasol Limited)、MACSOL−P(NSI株式会社)等のドデカンを主成分とする市販の溶剤を用いることができる。この他、場合により水、水系溶剤、アルコール等を用いることも可能である。
【0014】
加熱装置は、気化洗浄槽の少なくとも一部を加熱することが可能な加熱器具であれば如何なるものを用いても良い。たとえばリボンヒータ、スチームヒータ、オイルバス、電気ヒータ、電磁加熱器等のように、直接的あるいは間接的に気化洗浄槽の容器部内部を加熱する手段を挙げることができる。加熱装置は、気化洗浄槽の内側に設けることができ、気化洗浄槽の外側に設置してもよい。
【0015】
洗浄剤回収容器は、本実施形態のシステムを利用して汚染された変圧器を洗浄した後に生じた汚染洗浄剤を回収するための容器である。先に説明したとおり、洗浄剤として炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤等を用いることができるため、洗浄剤回収容器も、これらの溶剤を貯蔵可能な耐久性を有するものである。
【0016】
冷却器は、気化洗浄槽に接続される。冷却器は気化洗浄槽の内部で気化させた洗浄剤を冷却し凝結させて、再び液体として気化洗浄槽内に還流させるためのものである。冷却器は、気化洗浄剤を冷却し凝結させることができるものであれば如何なるものを用いても良いが、たとえば還流コンデンサを用いることができる。冷却器には、チラーを設けて気化洗浄槽内部に還流する液体温度を調整しても良い。
【0017】
液化装置は、先に説明した冷却器で還流しきれなかった気化洗浄剤をとらえて分離するためのものである。有機洗浄剤の外部への排出を可能な限り低減した閉鎖系または準閉鎖系にて本システムを稼働させるために、液化装置を設けておくことが非常に好ましい。液化装置は、気化洗浄剤を捕捉して分離することができるものであれば如何なるものを用いても良いが、たとえばデミスタ、あるいは熱交換機を用いることができる。なお、液化装置でとらえきれなかった洗浄剤等を最終的に完全に捕捉するために、活性炭塔をさらに設けることもできる。液化装置にチラーを設けて温度を調整しても良い。
【0018】
減圧装置は、系全体を減圧するためのものである。減圧装置で系全体を減圧することにより洗浄剤を気化させる温度を低下させることができる。減圧装置は、系全体を減圧することができるものであれば如何なるものを用いても良いが、たとえば真空ポンプを用いることができる。
【0019】
実施形態のシステムはこれらの装置と、これら装置を接続する配管および適切な数の開閉弁とを含むものであり、これらを収納手段に配置して成る。収納手段として、収納ラックまたは収納コンテナ等の、各装置を所定の位置に配置することができる容器を用いることができる。このように各装置を収納手段内にコンパクトに配置することで、システム全体を可搬型とすることができる。これらの装置から構成されるシステムを1台の車両等の移動手段に積載すれば、汚染変圧器の保管されている場所が遠方であってもシステム全体をその現場まで移動させることができる。各装置を収納した収納手段は分解可能なものを用いても良い。これによりシステム全体を適宜分解して多様な形状で移動手段に積載し、汚染変圧器が保管されている場所において適切にシステムを組み立てることができる。
【0020】
続いて、本実施形態の洗浄システムを利用して、PCB汚染油で汚染された変圧器を洗浄する方法を説明する。本実施形態の洗浄方法は、少なくとも気化洗浄槽と、加熱装置と、洗浄剤回収容器と、冷却器と、液化装置と、減圧装置とを含み、これらを収納手段に配置した、変圧器を現場で洗浄する洗浄システムを用いてポリ塩化ビフェニルで汚染された変圧器を洗浄する方法である。本実施形態にかかる洗浄方法は、以下の工程:気化洗浄槽の内側に変圧器を配置し、気化洗浄槽の内側に洗浄剤を供給し、気化洗浄槽の内部を大気圧より低い圧力とし、気化洗浄槽を加熱して気化洗浄槽の内側を洗浄剤の沸点以上にまで昇温して、洗浄剤を該気化洗浄槽の内側で気化させることを含む。本実施形態の洗浄方法は、変圧器内の汚染油を洗浄剤で洗い流すことを基本とする。多数の鉄板が積層された構造を有する鉄心がその内部に配置されている変圧器は、積層された鉄板と鉄板との間にも汚染油が残留しており、この残留汚染油を完全に洗浄することが非常に難しいことが知られている。まず、気化洗浄槽の内側に洗浄剤を供給し、気化洗浄槽を加熱して内側に供給された洗浄剤を気化させることにより、気化洗浄槽内に並べられた変圧器の内側に存在する汚染油を洗浄剤に溶解または分散させる。ここで気化とは、一般的には液体が気体に変化する現象をいい、液体表面からの蒸発と、液体内部からの沸騰を含む概念である。液体である洗浄剤を変圧器の内側に供給し、次いで加熱すると、まず洗浄剤表面から蒸発が起こる。変圧器の内側の温度が上昇してやがて洗浄剤の沸点に達すると、洗浄剤内部から沸騰が起こり、洗浄剤は完全に気化した状態となる。気化した洗浄剤は気化洗浄槽内部の空間に拡散して、並べられた変圧器の内側にまで到達し、配置されている構成部品に接触する。
【0021】
ここで気化洗浄剤が変圧器の内側に残留している汚染油を洗浄していく仕組みを説明する。変圧器内部に配置された巻線のように、多数の板状のものが積層された構造を有する物体をそのままの形で洗浄することは非常に難しい。しかしながら松本らによるQuasi two-dimensional boiling under reduced pressure (Proceedings of the First Pacific Thermal Engineering Conference, PRTEC, March 13-17, 2016)によれば、減圧下、気化状態の溶剤が積層物の間隙部に入り込み、ここで凝縮と突沸とを繰り返しながら間隙部の溶剤が入れ替わる現象が見られる。密閉状態の容器内部の圧力を調整しつつ、気化状態の溶剤を積層物に接触させれば、積層物の間隙部分に気化状態の洗浄剤が入り込んでその部分に存在する汚染油を溶解または分散させ、凝縮と突沸とを繰り返しながら新しい洗浄剤と入れ替わっていくと推察される。本実施形態は、この見地に着目し、汚染油で汚染された変圧器内部に気化洗浄剤を接触させて、積層物の間隙部分までも洗浄する方法である。ここで本実施形態では、洗浄剤を気化させるための特別な装置を必要とせず、加熱装置を利用して気化洗浄槽内部の洗浄剤を直接気化させる。したがって本実施形態の実施には広大なスペースを必要としない。
【0022】
続いて
図1を用いて本実施形態のシステムを説明する。
図1は本実施形態のシステムを模式的に説明する図である。
図1中、1は気化洗浄槽、32は洗浄剤回収容器、4は加熱装置、51および52は冷却器、61および62はチラー、7はデミスタ、81は真空ポンプ、82はドレンセパレータ、9は活性炭塔であり、201、202、203および204は、洗浄剤流路および減圧用流路に設けられる該流路を開閉するための開閉弁である。これらの開閉弁を開閉することにより、系の圧力を調節したり、洗浄剤の導入ならびに排出を行ったりすることができる。なお洗浄対象物である変圧器はここには図示していない。本実施形態のシステムは、図示された各システム部材を収納容器20に収納してある。収納容器20は、これらのシステム部材を安全に保護し、適切に収納しておくことができるものであれば如何なるものを用いても良く、たとえば収納ラックや収納コンテナを利用することができる。各システム部材は、直ちに変圧器を設置できる状態(
図1に示されるような状態)で収納容器20の内部に設置しておくことができる。すなわち
図1のように、各システム部材をある程度組み立てた状態で収納容器20の内部に設置しておき、現地において適宜配管を追加的に接続して
図3のように組み立てることができる。あるいは、
図2のように、各システム部材をそれぞればらばらに収納容器20に収納しておき、現地で適宜配管を追加接続して、
図3のように組み立てることも可能である。
図1、
図2に記載されている実施形態のシステムは、たとえば、トラック荷台と同等の大きさのものであることができる。実施形態のシステムはトラック等を移動手段として系ごと搬送することができる。
【0023】
続いて
図3を用いて本実施形態の洗浄方法を説明する。
図3は本実施形態の洗浄方法を模式的に説明する図である。
図3中1は気化洗浄槽、32は洗浄剤回収容器、4は加熱装置、そして10は気化洗浄槽である。変圧器10は、いわゆる油入変圧器と呼ばれるタイプのものであり、絶縁物として油を使用する変圧器である。変圧器10は、主に鉄心11、巻線12、絶縁材料13(すなわち油)、タップ切替装置14、および絶縁油室15とから構成されており、紙、木材、陶磁器等で作られたその他の変圧器構成部品については図示していない。本図では、変圧器10は、油の容量が数百リットル以下の小型機器である。
【0024】
PCB汚染油で汚染された変圧器10を、気化洗浄槽1の内側に設置された仕切り板102の上に置く。気化洗浄槽1の容器部101の容積にもよるが、汚染された変圧器10は、たとえば5個以上等、複数個配置することができる。気化洗浄槽1の下部(仕切り板102の下側の部分)に設けられた液溜め容器31に洗浄剤を供給する。洗浄剤として、変圧器10内に残存する汚染油を溶解または少なくとも分散させることができかつ当該汚染油よりも沸点が低い液体が好ましい。このような洗浄剤として、炭化水素系溶剤あるいはハロゲン系溶剤等を用いることができる。たとえば、炭素数が8〜15のアルカン、アルケン、シクロアルカン又はアルケン系溶剤(特に、炭素数が11〜13のアルカンやアルケン系溶剤)や、炭素数が1〜12のハロゲン系溶剤を用いることができる。具体的には、変圧器1の内側に残留しているPCB含有油を溶解または分散しやすい炭化水素系溶剤である、アクアソルベントG71(アクア化学株式会社)、HC−370(東ソー株式会社)、MD−250(武蔵テクノケミカル株式会社)、Linpar12(Sasol Limited)、MACSOL−P(NSI株式会社)等のドデカンを主成分とする市販の溶剤を用いることができる。この他、場合により水、水系溶剤、アルコール等を用いることも可能である。
【0025】
洗浄剤を導入し減圧装置(真空ポンプ81)を作動させて、気化洗浄槽1内部を大気圧より低い圧力に減圧する。減圧装置を作動させたままの状態で気化洗浄槽1の底部および/または周囲部分に取り付けられた加熱装置4により気化洗浄槽1を加熱する。加熱装置4は、気化洗浄槽1の少なくとも一部を加熱することが可能な加熱器具であれば如何なるものを用いても良い。加熱装置として、たとえばリボンヒータ、スチームヒータ、オイルバス、電気ヒータ、電磁加熱器等のように、直接的あるいは間接的に気化洗浄槽1を加熱する手段を挙げることができる。
図3では、気化洗浄槽1の内側下部および周囲部に加熱装置4を設けている。加熱装置4を用いて気化洗浄槽1を加熱すると、容器部101の内側の温度が上昇し、液溜め容器31内の内側にある洗浄剤の気化が開始する。気化した洗浄剤は気化洗浄槽1の内側全体に拡散し、配置された変圧器10の内部にも拡散する。加熱装置4による加熱は、洗浄剤が気化(蒸発)する温度にまで行えばよい。しかし好ましくは洗浄剤が沸騰する温度、すなわち洗浄剤の沸点以上となるように気化洗浄槽1の内側を加熱する。気化洗浄槽1全体に拡散した気化洗浄剤が、変圧器10の内壁や変圧器10の構成部品の表面にも接触して凝縮し、洗浄剤と親和性の高い変圧器10の内側に残留している汚染油が洗浄剤に溶解または分散する。先に説明したように、変圧器10の内側には、鉄心11、巻線12、タップ切替装置14等の各種構成部品が配置されていて、構造が非常に複雑であるが、気化洗浄剤はこれらの構成部品同士の隙間にまで均一に拡散する。気化洗浄剤が変圧器10の内側および構成部品に触れると、気化洗浄剤が凝縮し、当該部分の汚染油を溶解または分散させる。気化洗浄剤による汚染油の溶解または分散が生じた部分は凝縮熱によって加熱される。これにより、変圧器10内において気化洗浄剤と接触した部分とそうでない部分とで温度分布が生じる。すると、未だ洗浄が行われていないかあるいは洗浄が不十分である温度の低い部分では、供給された気化洗浄剤が凝縮し易くなる。このように変圧器10の内部を均一に洗浄することができる。こうして変圧器10の内側に供給された洗浄剤は、変圧器10内部に残留していた汚染油を溶解または分散させていく。配置された変圧器10の底部に開口部(図示せず)を設けておくと、変圧器10内部に残留していた汚染油が溶解または分散した洗浄剤が開口部を通じて変圧器10の外部に排出され、格子状の仕切り部102を通って液溜め容器31に溜まる。
【0026】
ここで気化洗浄槽の内側に供給する洗浄剤の量は、洗浄対象である変圧器の容量の合計量により変わりうる。たとえば、気化洗浄槽の容量の合計量の20%以下、特に10%以下の洗浄剤を供給すれば、気化洗浄槽ならびに変圧器の内側にくまなく気化洗浄剤を拡散させることができるので、変圧器内部に存在する汚染油を漏れなく溶解または分散させることができる。場合によっては気化洗浄槽の容量の合計量の5%以下の洗浄剤を供給するだけで、変圧器の内側の汚染油をすべて洗浄することも可能である。たとえば、気化洗浄槽の容量が10,000Lであれば、500L、場合によっては400L未満の洗浄剤を気化洗浄槽内に供給すればよい。また加熱装置による加熱は、気化洗浄槽内が、供給した洗浄剤が気化する温度に達する程度に行えばよく、好ましくは洗浄剤の沸点に達する程度に行えばよい。気化洗浄槽内の圧力にもよるが、気化洗浄槽内の圧力を大気圧より低い圧力に維持して洗浄を行う場合は、一般的には気化洗浄槽内が50℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃の範囲の温度になるように加熱すると良い。
【0027】
このように減圧装置を設ければ、洗浄剤を比較的低温で気化させることができる。系内を外部より低圧にするので洗浄剤が外部に漏洩することがなく、洗浄剤への引火を防止することができる。減圧装置としては、気化洗浄槽1内を減圧できるものであればどのようなものでも良いが、例えば、気化洗浄槽1、または洗浄剤流路のいずれかに減圧用流路を介して接続される真空ポンプを用いれば良い。
図1〜
図3では、真空ポンプ81を設けた態様を示している。たとえば、洗浄剤としてドデカンを用いた場合、減圧装置を用いて系の圧力を約0〜70kPaとすることで、変圧器内の温度を200℃程度とすれば洗浄剤を気化させることができる。また、洗浄剤流路および減圧用流路には当該流路を開閉するための開閉弁(図中201、202、203、204)が設けられており、開閉弁を開閉することにより、気化洗浄槽1内の圧力を調節したり、洗浄剤の導入ならびに排出を行ったりすることができる。
【0028】
図示しないが、気化洗浄槽1内の圧力を検出する圧力検出手段を設けても良い。これにより、変圧器1の内部が減圧されているか否かを予め確認することができる。また、圧力検出手段が検出した情報に基づいて開閉弁を制御し、気化洗浄槽1内の圧力を調節するようにしても良い。また、図示しないが、窒素や希ガス等の不活性ガスを供給できる不活性ガス供給用タンクと当該ガス供給用タンクと気化洗浄槽1とを接続する不活性ガス供給流路と、不活性ガス供給流路を開閉するための不活性ガス用開閉弁とを設けても良い。これにより、圧力検出手段が異常な圧力を検知した際に、加熱装置4による加熱を停止し、気化洗浄槽1内に不活性ガスを供給することができる。すなわち緊急時には気化洗浄槽1内に不活性ガスを供給することで、加熱状態の系を安全な状態に移行させることができる。
【0029】
気化させた洗浄剤を還流させることによる気化洗浄槽1の洗浄は、閉鎖系もしくは準閉鎖系にて所定の時間行うことができる。洗浄操作の終了後、加熱手段4による加熱を停止し、気化洗浄槽1を冷却する。
図1には気化洗浄槽1の冷却手段を図示していないが、気化洗浄槽1に冷却手段を設ければ、加熱した気化洗浄槽1を速やかに冷却することができる。変圧器1内部の温度が低下すると、気化洗浄剤が液化して変圧器1底部に溜まる。気化洗浄槽1底部に溜まった洗浄剤を洗浄剤回収容器32に排出させてこれを回収する。こうしてPCBで汚染された油を気化洗浄槽1から外へ排出することができる。回収された汚染洗浄剤は、国の無害化処理認定を受けた処理施設において、たとえば焼却する等して廃棄することができる。
【0030】
上述の変圧器10の洗浄操作の後、気化洗浄槽1を開けて各変圧器を取り出し、これら変圧器をそれぞれ解体して構成部品ごとに分けることができる。たとえば変圧器10を構成部品ごとに分けると、おおまかには鉄心11、巻線12、タップ切替装置14ならびにタンク15に分けることができる。鉄心11は、複数のケイ素鋼帯が積層された巻鉄心や、複数のケイ素鋼帯が接合された積鉄心があり、それぞれのケイ素鋼帯に解体することが好ましい。また巻線12は、銅線、ホルマール平角銅線、紙巻平角銅線、電着塗装平角銅線、転位導体、および銅条等が使用されており、たとえば紙巻平角銅線が巻線12として使用されている場合は平角銅線部と巻紙部とにさらに解体することが好ましく、転位導体が使用されている場合は平角銅線と外装絶縁体とにさらに解体することが好ましい。同様にタップ切替装置14はタップ板、およびタップ切換器等の構成部品の最小単位になるように解体する。このように変圧器を解体して構成部品ごとに分けるとは、構成部品を形成する最小単位の部品または可能な限り最小単位の部品となるまで解体することを意味する。本明細書において構成部品という語は、変圧器の構成部品をさらに解体して得た最小単位の部品の意味をも包含するものとする。
【0031】
このように洗浄済み変圧器の解体で得られた構成部品の少なくとも一部について、PCBの残量を測定する検査を遂行することができる。検査は、洗浄済み変圧器の解体で得られた構成部品のうち少なくとも一部について行えばいいが、特に構成部品のうちPCBが残存しやすく、かつ洗浄剤と接触しにくい鉄心や巻線について検査を行うことが好ましい。構成部品におけるPCBの残量は、たとえば「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に定められた方法で測定することができる。構成部品にPCBの残存が検出されなかった場合は、解体で得られた構成部品をそのまま廃棄することができる。
【0032】
逆に、検査により構成部品の一部にPCBが検出された場合は、構成部品に洗浄剤を噴射して、構成部品を再洗浄することが好ましい。構成部品の一部にPCBが検出された場合、検出された構成部品のみに洗浄剤を噴射することができ、解体で得られた構成部品のすべてに洗浄剤を噴射して再洗浄を行うこともできる。再洗浄工程で噴射する洗浄剤は、洗浄で使用することができる炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤等である。たとえば、炭素数が8〜15のアルカン、アルケン、シクロアルカン又はアルケン系溶剤(特に、炭素数が11〜13のアルカンやアルケン系溶剤)や、炭素数が1〜12のハロゲン系溶剤を用いることができる。具体的には、炭化水素系溶剤であるアクアソルベントG71(アクア化学株式会社)、HC−370(東ソー株式会社)、MD−250(武蔵テクノケミカル株式会社)、Linpar12(Sasol Limited)、MACSOL−P(NSI株式会社)等のドデカンを主成分とする市販の溶剤を用いることができる。この他、場合により水、水系溶剤、アルコール等を用いることも可能である。洗浄工程で使用した洗浄剤と同じ洗浄剤を再洗浄工程においても使用することが特に好ましい。再洗浄工程の後、再洗浄した構成部品についてPCBが検出されるかどうか再度検査することができる。このように検査工程と再洗浄工程とを必要に応じて数回繰り返し、PCBを完全に洗い流した構成部品を得ることができる。PCBを完全に洗い流した各構成部品は、廃棄物として処理することができる。
【0033】
次に
図3を用いて、実施形態の洗浄方法の具体的な実施態様を説明する。PCB汚染油で内部が汚染された変圧器10に
図3に示すように冷却器(51、52)およびチラー(61、62)、デミスタ7、真空ポンプ81、ドレンセパレータ82、洗浄剤容器2、洗浄剤回収容器32、活性炭塔9をそれぞれ接続する。気化洗浄槽1内側下部に配置された液溜め容器31に洗浄剤を導入する。気化洗浄槽1を閉じて、開閉弁201、および204を開け、開閉弁202および203を閉じて真空ポンプ81を作動させて気化洗浄槽1内部を減圧する。開閉弁201および203が開いた状態、202および204が閉じた状態で加熱装置4を作動させる。このとき真空ポンプ81も作動させている。気化洗浄槽1に導入された洗浄剤が蒸発し始め、やがて気化洗浄槽1の内側の温度が洗浄剤の沸点以上に達すると、気化洗浄剤が気化洗浄槽1内部に拡散する。気化洗浄槽1には冷却器51が接続されていて、気化洗浄槽1の外部に排出された気化洗浄剤は冷却器51で液体に戻り、気化洗浄槽1内部に還流する。このまま加熱と減圧を続けることで気化洗浄剤が気化洗浄槽1の内部に配置された変圧器10の構成部品間にまで行き渡り、凝縮および突沸を繰り返しながら入れ替わり、PCB汚染油を溶解または分散させていく。こうして所定時間気化洗浄剤を還流させながら変圧器10の内部を洗浄した後、加熱装置4と真空ポンプ81との作動を停止し、気化洗浄槽1を冷却する。気化洗浄剤が液化して気化洗浄槽1の底部に落下して溜まる。気化洗浄槽1の内部の温度が低下し気化洗浄剤が完全に液化したところで開閉弁202を開けて気化洗浄槽1の下部の液溜め容器31に溜まった汚染洗浄剤を気化洗浄槽1の外部に排出し洗浄剤回収容器32に回収する。このとき図示していない不活性ガス供給タンクから不活性ガスを気化洗浄槽1の内部にフラッシュして、洗浄剤を押し出すこともできる。こうした洗浄操作を必要に応じて複数回繰り返して気化洗浄槽1の内部のPCB汚染油を完全に洗浄剤回収容器32に移行する。
【解決手段】少なくとも気化洗浄槽と、加熱装置と、洗浄剤回収容器と、冷却器と、液化装置と、減圧装置とを含み、これらを収納手段に配置した、変圧器を現場で洗浄する洗浄システムを提供する。洗浄システムを利用して、ポリ塩化ビフェニルで汚染された変圧器を、該気化洗浄槽の内側に配置し、該気化洗浄槽内側に洗浄剤を供給し、該気化洗浄槽の内部を大気圧より低い圧力とし、該気化洗浄槽を加熱して該洗浄剤を気化させることにより、変圧器を洗浄することができる。