特許第6086418号(P6086418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086418エアウェイアダプタおよび生体情報取得システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086418
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】エアウェイアダプタおよび生体情報取得システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/097 20060101AFI20170220BHJP
   A61B 5/083 20060101ALI20170220BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A61B5/08 400
   A61B5/08 100
   A61B5/14 322
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-48223(P2012-48223)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-180182(P2013-180182A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年9月26日
【審判番号】不服2016-9123(P2016-9123/J1)
【審判請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 正行
(72)【発明者】
【氏名】斧 嘉伸
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 藤田 年彦
【審判官】 信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−518480(JP,A)
【文献】 特開2011−115543(JP,A)
【文献】 特開2009−172347(JP,A)
【文献】 特開昭63−171061(JP,A)
【文献】 特開2005−95602(JP,A)
【文献】 特開平4−315985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の顔面に装着されるエアウェイアダプタであって、
通気路を備え、当該通気路に流入する前記被検者の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素センサの一部である第1発光素子と第1受光素子が装着可能とされたエアウェイケースと、
顔面装着時に前記被検者の鼻孔に挿入されて、鼻孔からの呼気を前記通気路に導く一対の挿入部を有するネーザルカニューラと、
顔面装着時に前記被検者の口の前方に配置されて、口からの呼気を前記通気路に導くマウスガイドと、
前記一対の挿入部の一方に支持された第2発光素子と、
前記一対の挿入部の他方に支持された第2受光素子とを備え、
前記一対の挿入部が前記被検者の鼻孔に挿入されることにより、前記第2発光素子と前記第2受光素子が前記被検者の鼻中隔を挟んで対向配置され、前記被検者の動脈血酸素飽和度を検出する動脈血酸素飽和度センサの一部として動作し、
前記第2受光素子は、前記被検者の呼吸状態と体温の少なくとも一方を検出するための温度センサの一部としても動作する、エアウェイアダプタ。
【請求項2】
少なくとも前記一対の挿入部の鼻中隔に対向する一部は、可塑変形可能部とされている、請求項1に記載のエアウェイアダプタ。
【請求項3】
前記ネーザルカニューラは、鼻孔からの呼気により発生する圧力を圧力センサに導く分岐通気路をさらに備える、請求項1または2に記載のエアウェイアダプタ。
【請求項4】
被検者の顔面に装着され、通気路を備えるエアウェイケースと、
前記通気路に流入する前記被検者の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を検出するために前記エアウェイケースに装着された第1発光素子および第1受光素子と、
前記エアウェイケースの顔面装着時に前記被検者の鼻孔にそれぞれ挿入されて、鼻孔からの呼気を前記通気路に導く一対の挿入部を有するネーザルカニューラと、
前記エアウェイケースの顔面装着時に前記被検者の口の前方に配置されて、口からの呼気を前記通気路に導くマウスガイドと、
前記一対の挿入部の一方に支持された第2発光素子と、
前記一対の挿入部の他方に支持された第2受光素子とを備え、
前記一対の挿入部が前記被検者の鼻孔に挿入されることにより、前記第2発光素子と前記第2受光素子が前記被検者の鼻中隔を挟んで対向配置され、前記被者の動脈血酸素飽和度を検出する動脈血酸素飽和度センサの一部として動作し、
前記第2受光素子は、前記被検者の呼吸状態と体温の少なくとも一方を検出するための温度センサの一部としても動作する、生体情報取得システム。
【請求項5】
少なくとも前記一対の挿入部の鼻中隔に対向する一部は、可塑変形可能部とされている、請求項4に記載の生体情報取得システム。
【請求項6】
圧力センサをさらに備え、
前記ネーザルカニューラには、鼻孔からの呼気により発生する圧力を前記圧力センサに導く分岐通気路が設けられている、請求項4または5に記載の生体情報取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の顔面に装着されて呼気を収集するエアウェイアダプタ、および当該エアウェイアダプタを用いて各種の生体情報を取得するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報の一例として被検者の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を取得するシステムが知られている。特許文献1に記載の生体情報取得システムは、二酸化炭素センサの一部として動作する発光素子と受光素子がエアウェイアダプタに装着される。エアウェイアダプタが備える通気路は発光素子と受光素子の間を横切るように延びており、被検者の呼気が直接流入する構成とされる。
【0003】
発光素子からは二酸化炭素による吸収を受ける光(例えば赤外光)が出射される。被検者の呼気に含まれる二酸化炭素の濃度に応じて受光素子に到達する光の強度が異なるため、当該強度に対応する受光素子からの出力信号をモニタすることによって、当該二酸化炭素の濃度を取得することができる。
【0004】
生体情報の別の例として被検者の動脈血酸素飽和度(SpO2)を取得するシステムが知られている。動脈血酸素飽和度は、血中にどのくらいの酸素が供給されているのかを示す指標である。特許文献2に記載の生体情報取得システムは、動脈血酸素飽和度センサの一部として動作する発光素子と受光素子が被検者の指先を挟んで対向配置される。
【0005】
発光素子からは赤色光と赤外光が出射される。血中の酸素と結合したヘモグロビンの比率に応じて受光素子に到達する各光の強度が異なるため、当該強度に対応する受光素子からの出力信号をモニタすることによって、当該動脈血酸素飽和度を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−233806号公報
【特許文献2】特開2007−54594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
取得される生体情報の例としては、他にも被検者の呼吸量がある。呼吸量を取得するためには、圧力センサに接続されたチューブを被検者の鼻孔や口に装着し、呼吸により生ずるチューブ内の圧力変動を当該圧力センサで検出する方法が知られている。
【0008】
このように各種の生体情報を取得するためには、それぞれの生体情報に対応するセンサ素子やチューブ等の機器を被検者の身体各所に装着する必要がある。このため装着作業に手間がかかるとともに、多くの機器が装着される被検者は煩わしさを強く感じる。
【0009】
よって本発明は、複数の生体情報を取得する場合において、被検者への機器装着作業を効率的に行なうことができ、かつ被検者が感じる煩わしさを抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第1の態様は、被検者の顔面に装着されるエアウェイアダプタであって、
通気路を備え、当該通気路に流入する被検者の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素センサの一部が装着可能とされたエアウェイケースと、
顔面装着時に被検者の鼻孔に挿入されて、鼻孔からの呼気を前記通気路に導く一対の挿入部を有するネーザルカニューラと、
顔面装着時に被検者の口の前方に配置されて、口からの呼気を前記通気路に導くマウスガイドと、
前記一対の挿入部の一方に支持された発光素子と、
前記一対の挿入部の他方に支持された受光素子とを備え、
前記一対の挿入部が被検者の鼻孔に挿入されることにより、前記発光素子と前記受光素子が被検者の鼻中隔を挟んで対向配置される。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第2の態様は、生体情報取得システムであって、
被検者の顔面に装着され、通気路を備えるエアウェイケースと、
前記エアウェイケースに装着され、前記通気路に流入する被検者の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素センサと、
被検者の動脈血酸素飽和度を検出する動脈血酸素飽和度センサと、
前記エアウェイケースの顔面装着時に被検者の鼻孔にそれぞれ挿入されて、鼻孔からの呼気を前記通気路に導く一対の挿入部を有するネーザルカニューラと、
前記エアウェイケースの顔面装着時に被検者の口の前方に配置されて、口からの呼気を前記通気路に導くマウスガイドと、
前記一対の挿入部の一方に支持された発光素子と、
前記一対の挿入部の他方に支持された受光素子とを備え、
前記一対の挿入部が被検者の鼻孔に挿入されることにより、前記発光素子と前記受光素子が被検者の鼻中隔を挟んで対向配置され、前記動脈血酸素飽和度センサの一部として動作する。
【0012】
第1の態様および第2の態様の構成によれば、エアウェイアダプタを被検者の顔面に装着するのみで、二酸化炭素センサと、動脈血酸素飽和度センサの一部として動作する発光素子および受光素子の配置が完了する。したがって二酸化炭素センサと動脈血酸素飽和度センサを、それぞれ被検者の身体の離れた場所に装着する必要がない。このため装着作業の手間を省くことが可能であるとともに、被検者が感じる煩わしさを抑制することができる。
【0013】
少なくとも前記一対の挿入部における鼻中隔に対向する一部は、可塑変形可能部とされている構成としてもよい。この場合、発光素子と受光素子が鼻中膜を挟んで対向配置された状態でネーザルカニューラの挿入部に力を加えて鼻中隔表面の形状に沿うように可塑変形させることができる。力を解除した後も挿入部は変形後の形状を保持するため、発光素子と受光素子が鼻中隔から離間することを防止できる。これにより動脈血酸素飽和度の測定精度を高めることが可能である。
【0014】
圧力センサをさらに備え、鼻孔からの呼気により発生する圧力を前記圧力センサに導く分岐通気路を前記ネーザルカニューラが備える構成としてもよい。この場合、追加のセンサを装着する手間と煩わしさを伴うことなく、被検者の呼吸状態や呼吸量を生体情報として取得することができる。
【0015】
前記受光素子は、温度センサの一部としても動作する構成としてもよい。この場合、追加のセンサを装着する手間と煩わしさを伴うことなく、被検者の呼吸状態や体温を生体情報として取得することができる。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第3の態様は、生体情報取得システムであって、
圧力センサと、
被検者の動脈血酸素飽和度を検出する動脈血酸素飽和度センサと、
被検者の鼻孔に挿入される一対の挿入部と、鼻孔からの呼気により発生する圧力を前記圧力センサに導く通気路とを有するネーザルカニューラと、
前記一対の挿入部の一方の内部に支持された発光素子と、
前記一対の挿入部の他方の内部に支持された受光素子とを備え、
前記一対の挿入部が被検者の鼻孔に挿入されることにより、前記発光素子と前記受光素子が被検者の鼻中隔を挟んで対向配置されて前記動脈血酸素飽和度センサの一部として動作し、
少なくとも前記一対の挿入部の鼻中隔に対向する一部は、可塑変形可能部とされている。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第4の態様は、生体情報取得システムであって、被検者の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度センサと、
被検者の動脈血酸素飽和度を検出する動脈血酸素飽和度センサと、
被検者の鼻孔に挿入される一対の挿入部と、鼻孔からの呼気により発生する圧力を前記二酸化炭素センサに導く通気路とを有するネーザルカニューラと、
前記一対の挿入部の一方の内部に支持された発光素子と、
前記一対の挿入部の他方の内部に支持された受光素子とを備え、
前記一対の挿入部が被検者の鼻孔に挿入されることにより、前記発光素子と前記受光素子が被検者の鼻中隔を挟んで対向配置されて前記動脈血酸素飽和度センサの一部として動作し、
少なくとも前記一対の挿入部の鼻中隔に対向する一部は、可塑変形可能部とされている、生体情報取得システム。
【0018】
第3の態様の構成によれば、エアウェイアダプタを被検者の顔面に装着するのみで、呼吸量を取得するためのネーザルカニューラと、動脈血酸素飽和度センサの一部として動作する発光素子および受光素子の配置が完了する。したがってネーザルカニューラと動脈血酸素飽和度センサを、それぞれ被検者の身体の離れた場所に装着する必要がない。このため装着作業の手間を省くことが可能であるとともに、被検者が感じる煩わしさを抑制することができる。
【0019】
第4の態様の構成によれば、エアウェイアダプタを被検者の顔面に装着するのみで、二酸化炭素濃度を取得するためのネーザルカニューラと、動脈血酸素飽和度センサの一部として動作する発光素子および受光素子の配置が完了する。したがってネーザルカニューラと動脈血酸素飽和度センサを、それぞれ被検者の身体の離れた場所に装着する必要がない。このため装着作業の手間を省くことが可能であるとともに、被検者が感じる煩わしさを抑制することができる。
【0020】
また第3の態様および第4の態様の構成によれば、発光素子と受光素子が鼻中膜を挟んで対向配置された状態でネーザルカニューラの挿入部に力を加えて鼻中隔表面の形状に沿うように可塑変形させることができる。力を解除した後も挿入部は変形後の形状を保持するため、発光素子と受光素子が鼻中隔から離間することを防止できる。これにより動脈血酸素飽和度の測定精度を高めることが可能である。
【0021】
第3の態様および第4の態様において、前記受光素子が温度センサの一部として動作する構成としてもよい。この場合、追加のセンサを装着する手間と煩わしさを伴うことなく、被検者の呼吸状態や体温を生体情報として取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係るエアウェイアダプタが被検者の顔面に装着された状態を示す斜視図である。
図2図1のエアウェイアダプタの内部構成を示す縦断面図である。
図3図1のエアウェイアダプタにおけるネーザルチューブの内部構成を拡大して示す縦断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る生体情報取得システムの構成を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るエアウェイアダプタが被検者の顔面に装着された状態を示す斜視図である。
図6図5のエアウェイアダプタの内部構成を示す縦断面図である。
図7図5のエアウェイアダプタにおけるネーザルチューブの内部構成を拡大して示す縦断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る生体情報取得システムの構成を示す機能ブロック図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るエアウェイアダプタが被検者の顔面に装着された状態を示す斜視図である。
図10図9のエアウェイアダプタにおけるネーザルチューブの内部構成を拡大して示す縦断面図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る生体情報取得システムの構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る生体情報取得システム1におけるエアウェイアダプタ10が被検者2の顔面3に装着されている状態を示している。エアウェイアダプタ10は、エアウェイケース20、ネーザルカニューラ30、およびマウスガイド40を備えている。
【0025】
図2に示すように、エアウェイケース20には、第1発光素子51と第1受光素子52が取外し可能に装着される。本実施形態において第1発光素子51は発光ダイオードであり、第1受光素子52はフォトダイオードである。
【0026】
エアウェイケース20の内部には、第1発光素子51と第1受光素子52の間を横切るように延びる通気路21が形成されている。通気路21の一部は、一対の防曇膜22により区画形成されている。第1発光素子51の発光面と第1受光素子52の受光面は、エアウェイケース10への装着時においてそれぞれ防曇膜22に対向する。
【0027】
ネーザルカニューラ30は、シリコンゴムやエラストマ等の柔軟性を有する素材からなり、一対の挿入部31、32を有している。挿入部31、32の内部はそれぞれ中空の通気路33、34とされており、基端部35において合流部36を形成している。基端部35は、エアウェイケース20の上面20aに固定されており、合流部36はエアウェイケース20の上面20aに形成された開口を通じて通気路21に連通している。
【0028】
一対の挿入部31、32は、エアウェイアダプタ10が被検者2の顔面3に装着される際に、被検者2の鼻孔4に挿入される。鼻孔4からの呼気は、通気路33、34および合流部36を経由してエアウェイケース20の通気路21に導かれる。
【0029】
マウスガイド40は、エアウェイケース20の下部20bにおいて支軸41を介して回動可能に支持されている。ドーム状の本体部42により区画形成される内部空間43は、エアウェイケース20の下部20bに形成された開口を通じて通気路21に連通している。
【0030】
マウスガイド40の本体部42は、エアウェイアダプタ10が被検者2の顔面3に装着される際に、被検者2の口5の前方に配置される。口5からの呼気は、内部空間43を経由して通気路21に導かれる。本体部42を支軸41周りに前後方向に回動させることにより、被検者2の口5に対する本体部42の周縁部44の位置を調節することができる。適正な量の呼気を通気路21に導くことができるように、周縁部44と口5の間の距離が適宜調節される。
【0031】
図4は、本実施形態に係る生体情報取得システム1の構成を示す機能ブロック図である。第1発光素子51および第1受光素子52は、リード線53および54を介してそれぞれ処理装置100の二酸化炭素濃度取得部101と通信可能に接続されている。二酸化炭素濃度取得部101は、制御部102と通信可能に接続されている。
【0032】
制御部102からの指示に応じて、二酸化炭素濃度取得部101は発光信号を出力する。発光信号はリード線53を介して第1発光素子51に入力され、第1発光素子51より所定の波長を有する光(赤外光)が出射される。
【0033】
第1発光素子51より出射された光は、通気路21を横断して第1受光素子52により受光される。第1受光素子52は受光強度に応じた出力信号をリード線54に出力するように構成されている。
【0034】
被検者2の鼻孔4と口5の少なくとも一方からの呼気がエアウェイケース20の通気路21に導かれることにより、通気路21内の二酸化炭素濃度が増加すると、第1受光素子52の受光強度が低下し、出力信号の状態も変化する。二酸化炭素濃度取得部101は、リード線54を介して当該出力信号の状態をモニタすることにより、被検者2の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を生体情報として取得することができる。
【0035】
すなわち第1発光素子51、第1受光素子52、リード線53、54、および二酸化炭素濃度取得部101は、本発明における二酸化炭素センサとして機能する。
【0036】
図2に示すように、本実施形態に係るエアウェイアダプタ10は、さらに第2発光素子61と第2受光素子62を備えている。第2発光素子61は発光ダイオードであり、第2受光素子62はフォトダイオードである。ネーザルカニューラ30の挿入部31、32が被検者2の鼻孔4に挿入されると、第2発光素子61と第2受光素子62は、被検者2の鼻中隔4aを挟んで対向配置される。
【0037】
第2発光素子61は、ネーザルカニューラ30の一方の挿入部31の通気路33内に配置されている。第2受光素子62は、ネーザルカニューラ30の他方の挿入部32の通気路34内に配置されている。図3に拡大して示すように、第2発光素子61と第2発光素子62は、それぞれ支持部材63を介して挿入部31、32に支持されている。
【0038】
支持部材63は、挿入部31、32の鼻中隔4aに対向する部分31a、32aの内壁に沿って延びる針金であり、両端部において第2発光素子61と第2受光素子62が支持されている。
【0039】
支持部材63は、可塑変形可能な素材により形成されているため、力を加えることにより変形し、加えた力を解除することにより変形後の形状を保持する。すなわち支持部材63は、一対の挿入部31、32の鼻中隔4aに対向する部分31a、32aを可塑変形可能部としている。
【0040】
図4に示すように、第2発光素子61および第2受光素子62は、それぞれリード線64および65を介して、処理装置100の動脈血酸素飽和度取得部103と通信可能に接続されている。動脈血酸素飽和度取得部103は、制御部102と通信可能に接続されている。
【0041】
図3に示すように、リード線64、65はネーザルカニューラ30の通気路33、34に沿って延びており、基端部35に形成された引出し口37より外部に引き出される。引き出し口37は、ネーザルカニューラ30の換気口としても機能する。
【0042】
制御部102からの指示に応じて、動脈血酸素飽和度取得部103は発光信号を出力する。発光信号はリード線64を介して第2発光素子61に入力され、第2発光素子61より所定の波長を有する光(赤色光および赤外光)が出射される。
【0043】
第2発光素子61より出射された光は、鼻中隔4aを通過して第2受光素子62により受光される。第2受光素子62は、各波長光の受光強度に応じた出力信号をリード線65に出力するように構成されている。
【0044】
鼻中隔4a内の血管を流れる血液中の酸素と結合したヘモグロビンの比率に応じて第2受光素子62に到達する各波長光の強度が異なるため、出力信号の状態も変化する。動脈血酸素飽和度取得部103は、リード線65を介して当該出力信号の状態をモニタすることにより、周知の演算処理を通じて動脈血酸素飽和度を生体情報として取得することができる。
【0045】
すなわち第2発光素子61、第2受光素子62、リード線64、65、および動脈血酸素飽和度取得部103は、本発明における動脈血酸素飽和度センサとして機能する。
【0046】
図4に示すように、第2受光素子62は、リード線65を介して処理装置100の呼吸検出・体温取得部104とも通信可能に接続されている。第2受光素子62は、周辺温度が上昇すると暗電流が増加するという特性を有しており、鼻孔4からの呼気がネーザルカニューラ30の通気路34を通過する毎に温度上昇に伴って暗電流が増加する。呼吸検出・体温取得部104は、リード線65を介して当該暗電流の値をモニタすることにより、被検者2の呼吸状態と体温の少なくとも一方を生体情報として取得することができる。
【0047】
すなわち第2受光素子62、リード線65、および呼吸検出・体温取得部104は、本発明における温度センサとして機能する。
【0048】
呼吸検出・体温取得部104は制御部102と通信可能に接続されている。二酸化炭素濃度取得部101、動脈血酸素飽和度取得部103、および呼吸検出・体温取得部104により取得された各種生体情報は、制御部102により必要に応じて記憶装置(不図示)への記憶や表示装置(不図示)への表示に供される。
【0049】
本実施形態の構成によれば、エアウェイアダプタ10を被検者2の顔面3に装着するのみで、二酸化炭素センサの一部として動作する第1発光素子51および第1受光素子52、ならびに動脈血酸素飽和度センサの一部として動作する第2発光素子61および第2受光素子62の配置が完了する。すなわち第1発光素子51と第1受光素子52が鼻孔4と口5の間に配置されるとともに、第2発光素子61と第2受光素子62が鼻中隔4aを挟んで対向配置される。
【0050】
したがって二酸化炭素センサと動脈血酸素飽和度センサを、それぞれ被検者2の身体の離れた場所に装着する必要がない。このため装着作業の手間を省くことが可能であるとともに、被検者2が感じる煩わしさを抑制することができる。
【0051】
また第2受光素子62を温度センサの一部としても動作させることができるため、追加のセンサを装着する手間と煩わしさを伴うことなく、被検者2の呼吸状態や体温を生体情報として取得することができる。
【0052】
さらに本実施形態においては、支持部材63によって一対の挿入部31、32の鼻中隔4aに対向する部分31a、32aが可塑変形可能部とされている。このため第2発光素子61と第2受光素子62とが鼻中膜4aを挟んで対向配置された状態でネーザルカニューラ30の挿入部31、32に力を加え、支持部材63を鼻中隔4a表面の形状に沿うように可塑変形させることができる。力を解除した後も支持部材63は変形後の形状を保持するため、第2発光素子61と第2受光素子62が鼻中隔4aから離間することを防止できる。これにより動脈血酸素飽和度の測定精度を高めることが可能である。
【0053】
次に図5から図8を参照しつつ、本発明の第2の実施形態に係る生体情報取得システム1Aにおけるエアウェイアダプタ10Aについて説明する。第1の実施形態に係る生体情報取得システム1におけるエアウェイアダプタ10と同一・同様・同等の要素については同一の参照番号を付与し、重複する説明は割愛する。
【0054】
図8の機能ブロック図に示すように、本実施形態に係る生体情報取得システム1Aは、エアウェイアダプタ10Aのネーザルカニューラ30Aの一部が分岐通気路38を介して圧力センサ80に接続され、処理装置100Aが呼吸量取得部105と体温取得部106を備えている点において第1の実施形態に係る生体情報取得システム1と相違する。
【0055】
図5に示すように、本実施形態のエアウェイアダプタ10Aにおけるネーザルカニューラ30Aは、一対の挿入部31、32の基端部35の前面に左右方向に延びる分岐通気路38を有している点において第1の実施形態に係るエアウェイアダプタ10と相違する。図6に示すように、各分岐通気路38は、挿入部31、32のそれぞれの内部に形成された通気路33、34と合流部36において連通している。
【0056】
各分岐路38の先端には、ビニル製のチューブ70が取り外し可能に装着される。図8に示すように、チューブ70は圧力センサ80に接続されている。被検者2の鼻孔4からの呼気の一部は分岐通気路38を経由し、チューブ70を通じて圧力センサ80に導かれる。圧力センサ80は、呼気の通過によるチューブ70内の圧力変動を検出し、圧力の値に応じた信号を出力するように構成されている。
【0057】
図8に示すように、圧力センサ80は、処理装置100Aの呼吸量取得部105と通信可能に接続されている。呼吸量取得部105は、圧力センサ80の出力信号をモニタして周知の処理を行なうことにより、被検者2の呼吸状態および呼吸量を生体情報として取得することができる。
【0058】
圧力センサ80および呼吸量取得部105により呼吸状態に係る情報を取得できるため、温度センサの一部として動作する第2受光素子62の出力信号は、体温取得部106により被検者2の体温を生体情報として取得するために用いられる。
【0059】
呼吸量取得部105および体温取得部106は、制御部102と通信可能に接続されている。二酸化炭素濃度取得部101、動脈血酸素飽和度取得部103、呼吸量取得部105および体温取得部106により取得された各種生体情報は、制御部102により必要に応じて記憶装置(不図示)への記憶や表示装置(不図示)への表示に供される。
【0060】
本実施形態の構成によれば、エアウェイアダプタ10Aを被検者2の顔面3に装着するのみで、さらに被検者2の呼吸量をも生体情報として取得することができる。呼吸量を取得するための被検者2の呼気は、ネーザルカニューラ30Aの一部として形成された分岐通気路38を通じて圧力センサに導かれるため、追加のセンサを装着する手間と煩わしさを伴うこともない。
【0061】
次に図9から図11を参照しつつ、本発明の第3の実施形態に係る生体情報取得システム1Bにおけるエアウェイアダプタ10Bについて説明する。第2の実施形態に係る生体情報取得システム1Aにおけるエアウェイアダプタ10Aと同一・同様・同等の要素については同一の参照番号を付与し、重複する説明は割愛する。
【0062】
図11の機能ブロック図に示すように、本実施形態に係る生体情報取得システム1Bは、二酸化炭素濃度を取得するための構成を備えていない点において第2の実施形態に係る生体情報取得システム1Aと相違する。
【0063】
図9に示すように、本実施形態のエアウェイアダプタ10Bは、一対の挿入部31、32の基端部35の前面に左右方向に延びる通気路39を有するネーザルカニューラ30Bのみから構成されている点において第2の実施形態におけるエアウェイアダプタ10Aと相違する。図10に示すように、各通気路39は、挿入部31、32のそれぞれの内部に形成された通気路33、34と合流部36において連通している。
【0064】
各分岐路39の先端には、ビニル製のチューブ70が取り外し可能に装着される。図11に示すように、チューブ70は圧力センサ80に接続されている。被検者2の鼻孔4からの呼気の一部は分岐通気路39を経由し、チューブ70を通じて圧力センサ80に導かれる。圧力センサ80、および処理装置100Bが備える呼吸量取得部105による生体情報としての呼吸量の取得の仕方については、第2の実施形態と同様であるため説明を割愛する。
【0065】
動脈血酸素飽和度取得部103、呼吸量取得部105および体温取得部106により取得された各種生体情報は、制御部102により必要に応じて記憶装置(不図示)への記憶や表示装置(不図示)への表示に供される。
【0066】
本実施形態の構成によれば、エアウェイアダプタ10Bを被検者2の顔面3に装着するのみで、動脈血酸素飽和度センサの一部として動作する第2発光素子61および第2受光素子62の配置が完了する。すなわち第2発光素子61と第2受光素子62が鼻中隔4aを挟んで対向配置される。第2発光素子61と第2受光素子62は、被検者2の呼気を圧力センサ80に導くためのネーザルカニューラ30Bにより支持されているため、動脈血酸素飽和度、呼吸量、体温を生体情報として取得可能でありながら、追加のセンサを装着する手間を煩わしさを伴うことがない。
【0067】
また支持部材63によって一対の挿入部31、32の鼻中隔4aに対向する部分31a、32aが可塑変形可能部とされているため、支持部材63を鼻中隔4a表面の形状に沿うように変形させることにより、第2発光素子61と第2受光素子62が鼻中隔4aから離間することを防止できる。これにより動脈血酸素飽和度の測定精度を高めることが可能である。
【0068】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0069】
第2発光素子61と第2受光素子62は、必ずしも一対の挿入部31、32の通気路33、34の内部に配置することを要しない。挿入部31、32が被検者2の鼻孔4に挿入された際に鼻中隔4aを挟んで対向する位置に設けられている限りにおいて、挿入部31、32の外周面に配置してもよい。但し鼻中隔4aの損傷、および発光面と受光面の汚れを避けるために適宜の保護部材を設けることが望ましい。
【0070】
支持部材63は、必ずしも挿入部31、32の鼻中隔4aに対向する部分31a、32aの内壁に沿って設けることを要しない。少なくとも当該部分31a、32aが可塑変形可能とされる限りにおいて、挿入部31、32の外周面に沿って設けてもよい。また挿入部31、32を形成する周壁に埋設される構成としてもよい。
【0071】
支持部材63は、必ずしも針金部材であることを要しない。挿入部31、32の鼻中隔4aに対向する部分31a、32aを可塑変形可能とできる限りにおいて、適宜の素材と形状を選択することができる。また第2発光素子61と第2受光素子62の位置を維持可能であれば、必ずしも支持部材63が第2発光素子61と第2受光素子62を直接に支持することを要しない。
【0072】
本発明に係る生体情報取得システムは、動脈血酸素飽和度に加えて少なくとも1つの生体情報を取得できればよい。例えば、第2受光素子62を温度センサの一部として動作させる構成は省略することができる。
【0073】
圧力センサ80は、必ずしも処理装置100(100A、100B)の外部に別体として設けることを要せず、処理装置100(100A、100B)の一部として内蔵される構成としてもよい。
【0074】
また第3の実施形態における処理装置100Bにおいて、呼吸量取得部105に加えてあるいは代えて二酸化炭素濃度センサを設け、チューブ70を通じて被検者2の呼気が流入する構成としてもよい。この場合、被検者2の二酸化炭素濃度を生体情報として取得することができる。
【符号の説明】
【0075】
1:生体情報取得システム、2:被検者、3:顔面、4:鼻孔、4a:鼻中隔、5:口、10:エアウェイアダプタ、20:エアウェイケース、21:通気路、30:ネーザルカニューラ、31:挿入部、31a:可塑変形可能部、32:挿入部、32a:可塑変形可能部、38:分岐通気路、39:通気路、40:マウスガイド、51:第1発光素子、52:第1受光素子、61:第2発光素子、62:第2受光素子、80:圧力センサ、101:二酸化炭素濃度取得部、103:血中酸素飽和度取得部、105:呼吸量取得部、106:体温取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11