特許第6086429号(P6086429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086429SRモータの駆動回路およびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086429
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】SRモータの駆動回路およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/08 20160101AFI20170220BHJP
【FI】
   H02P25/08
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-15842(P2013-15842)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-147270(P2014-147270A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年11月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)経済産業省、平成24年度 戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】595018260
【氏名又は名称】株式会社明和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】大山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】上原 一士
(72)【発明者】
【氏名】百武 康
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−135593(JP,A)
【文献】 特開2011−259571(JP,A)
【文献】 特開2000−175363(JP,A)
【文献】 特開2001−268961(JP,A)
【文献】 特開2002−034300(JP,A)
【文献】 特開平05−199793(JP,A)
【文献】 特開2002−315199(JP,A)
【文献】 米国特許第05075610(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/08−25/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の+ラインと−ライン間に、少なくともU相,V相,W相の3相の、前記+ラインに出力端子の−側端子が接続された+側スイッチング素子と、前記−ラインに出力端子の+側端子が接続された−側スイッチング素子を設け、各相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子と前記−ライン間にそれぞれ第1逆流阻止ダイオードを接続し、各相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子と対応する相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子間に、SRモータの固定子巻線の対応する相の巻線を接続したSRモータの駆動回路において、
前記各相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子と次相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子の間に、それぞれ第2逆流阻止ダイオード接続され、
力行モードでは各相の+側スイッチング素子と−側スイッチング素子が順次オンされ、
ソフトスイッチングモードでは各相の+側スイッチング素子がオフされた状態で−側スイッチング素子が順次オンされ、
次相励磁モードでは、励磁終了相の次の励磁開始相の+側スイッチング素子がオフされた状態で−側スイッチング素子がオンされることを特徴とするSRモータの駆動回路。
【請求項2】
前記各相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子前記+ラインの間に、さらに別の回生用+側スイッチング素子を直流電源に対して逆方向に接続したことを特徴とする請求項1記載のSRモータの駆動回路。
【請求項3】
前記直流電源の+ラインと−ライン間に、前記直流電源に対してキャパシタを直列接続または並列接続を切替制御する回生制御回路を設けたことを特徴とする請求項2記載のSRモータの駆動回路。
【請求項4】
直流電源の+ラインと−ライン間に、少なくともU相,V相,W相の3相の、前記+ラインに出力端子の−側端子が接続された+側スイッチング素子と、前記−ラインに出力端子の+側端子が接続された−側スイッチング素子を設け、各相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子と前記−ライン間にそれぞれ第1逆流阻止ダイオードを接続し、各相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子と対応する相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子間に、SRモータの固定子巻線の対応する相の巻線を接続したSRモータの駆動回路であり、前記各相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子と次相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子の間に、それぞれ第2逆流阻止ダイオードを接続したSRモータの駆動回路を用いたSRモータの制御方法であって、
力行モードでは各相の+側スイッチング素子と−側スイッチング素子を順次オンする制御を行い、
ソフトスイッチングモードでは各相の+側スイッチング素子はオフにした状態で−側スイッチング素子を順次オンする制御を行い、
次相励磁モードでは、励磁終了相の次の励磁開始相の+側スイッチング素子をオフとした状態で−側スイッチング素子をオンにする制御を行うこと
を特徴とするSRモータの制御方法。
【請求項5】
前記各相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子と前記+ラインの間に、さらに別の回生用+側スイッチング素子が直流電源に対して逆方向に接続されたSRモータの駆動回路のバッテリー充電モードでは、励磁終了相の回生用+側スイッチング素子をオンにして回生電力を直流電源として用いられるバッテリーの充電に使用することを特徴とする請求項4記載のSRモータの制御方法。
【請求項6】
前記直流電源の+ラインと−ライン間に、前記直流電源に対してキャパシタを直列接続または並列接続を切替制御する回生制御回路により、直流電源として用いられるバッテリーの充電モード、キャパシタの充電モード、バッテリーとキャパシタの並列接続での充電モード、バッテリーとキャパシタの直列接続での充電モードの各モードを切り替え制御することを特徴とする請求項5記載のSRモータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SRモータ(Switched Reluctance Motor)の駆動回路およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SRモータは、回転子コアが突極構造で回転子には永久磁石や巻線がなく、機械的に堅牢で高温での運転が安定している等の利点があるため、近年は電気自動車やハイブリッド自動車のモータとして注目されつつある。
【0003】
従来のSRモータ駆動システムにおける電力変換装置では、例えば、非特許文献1に記載されたような非対称ハーフブリッジ回路が適用されている。
図1に非対称ハーフブリッジ回路の構成を示す。この回路は、3相6極の固定子巻線に、トランジスタ対(T1,T2)、(T3,T4)、(T5,T6)を順次オンオフすることで固定子1の突極を順次励磁し、回転子2の突極を磁気吸引してモータを駆動する方式である。
【0004】
この従来の非対称ハーフブリッジ回路の問題点として、SRモータ駆動時に発生する回生電力を他相励磁に使用するのか、バッテリー3の充電に使用するのか、制御できない点が挙げられる。
【0005】
非特許文献2では、従来方式を用いて、コイル電流を連続して流すことによって最大出力を向上できることを解析レベルで明らかにしている。この電流連続制御は、逆トルクを発生するが、電流最大付近で逆トルクを打ち消して上回るだけの正トルクを発生できるので、最大出力を向上できると述べている。この方式によると、最大出力は向上できるが、電流連続制御でのモータ効率は若干下がっている。
【0006】
非特許文献3では、バッテリーにキャパシタを追加し、従来方式を前提として、回生・力行時の「キャパシタ+バッテリー」の直列接続と力行時のバッテリーのみの接続を選択できる回路を提案している。モータ効率に関する記述はないが、力行時におけるキャパシタによるブースト電圧の効果でコイル電流が減少しているので、モータ効率は改善すると予想される。
【0007】
この従来方式は、キャパシタとスイッチング素子3個の追加を必要とし、力行時のブースト電圧利用時は必ずスイッチング素子を電流が通過し、バッテリーのみの利用であってもダイオードを通過するため、それらのオン抵抗による電力損失が生じる。回生時はキャパシタを充電するときはダイオード、バッテリーを充電するときはスイッチング素子を電流が通過するため、それらのオン抵抗による電力損失が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】TJE Miller:「Electric Control of Switched Reluctance Machines」、Newnes、pp.82-pp.84、2001年
【非特許文献2】清田恭平、千葉明:「電流連続制御用によるスイッチトリラクタンスモータの最大出力の向上」、電気学会回転機研究会、RM-11-114、2011年
【非特許文献3】Yujiro Kido 他5名:「Novel Switched Reluctance Motor Drive Circuit with Voltage Boost Function without Additional Reactor」、EPE2011、CD-ROM、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
SRモータの動作原理上、力行運転時にも回生電力が発生する。モータ効率を改善するためには、力行時の回生電力はバッテリーの充電に使用しないで、他相励磁に使用することが望ましい。また回生時の回生電力はバッテリーやキャパシタの充電に使用することが望ましい。
【0010】
そこで本発明の第1の目的は、SRモータのモータ効率を向上できる駆動回路を提供することにあり、具体的には、SRモータ力行時の回生電力を励磁に使用できる駆動回路を提供することにある。
【0011】
本発明の第2の目的は、さらに、SRモータ回生時の回生電力をバッテリーに充電できる機能を追加した駆動回路を提供することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、さらに、回生時の回生電力をキャパシタにも充電し、力行時にブースト電圧として使用できる駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の第1の構成に係るSRモータの駆動回路は、
直流電源の+ラインと−ライン間に、少なくともU相,V相,W相の3相の、前記+ラインに出力端子の−側端子が接続された+側スイッチング素子と、前記−ラインに出力端子の+側端子が接続された−側スイッチング素子を設け、各相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子と前記−ライン間にそれぞれ第1逆流阻止ダイオードを接続し、各相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子と対応する相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子間に、SRモータの固定子巻線の対応する相の巻線を接続したSRモータの駆動回路において、
前記各相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子と次相の+側スイッチング素子の出力端子の+側端子の間に、それぞれ第2逆流阻止ダイオード接続され、
力行モードでは各相の+側スイッチング素子と−側スイッチング素子が順次オンされ、
ソフトスイッチングモードでは各相の+側スイッチング素子がオフされた状態で−側スイッチング素子が順次オンされ、
次相励磁モードでは、励磁終了相の次の励磁開始相の+側スイッチング素子がオフされた状態で−側スイッチング素子がオンされることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の構成は、前記各相の−側スイッチング素子の出力端子の−側端子前記+ラインの間に、さらに別の回生用+側スイッチング素子を直流電源に対して逆方向に接続したことを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の構成は、前記直流電源の+ラインと−ライン間に、前記直流電源に対してキャパシタを直列接続または並列接続を切替制御する回生制御回路を設けたことを特徴とする。
【0016】
前記第1の構成のSRモータの駆動回路では、回生電力を他相の励磁に直接使用することにより、従来方式である非対称ハーフブリッジ回路において発生する電源回生時の電力損失を無くすことで、モータ効率を改善できる。また励磁相を切り替えるときに、昇圧回路を形成し高電圧を発生できるので電流応答が早くなる効果により、更にモータ効率を改善できる。
【0017】
この第1の構成の駆動回路は、従来方式とスイッチング素子とダイオードの数量が変わらないためコスト的には良いが、バッテリーへの電力回生が行えないという問題点がある。そこで回生電力をバッテリーに還せる機能を有するのが、第2の構成の駆動回路である。この第2の構成は、従来方式において還流ダイオードが接続されていた箇所にスイッチング素子を配置し、バッテリーに回生するときに導通させる。この第2の構成の回路では、回生電力を他相励磁に使用するのか、またはバッテリー充電に使用するのかを選択できる。
【0018】
この第2の構成の回路において、回生電力でバッテリーを充電する際に、バッテリーの充電電流の制限があるため、制限を超えた回生電力は機械ブレーキで消費しなくてはならない。そこでキャパシタンスを併用する第3の構成の駆動回路を提案する。キャパシタンスはバッテリーと比較すると電流応答が早く、回生電力を素早く吸収できる。また第3の構成の駆動回路は、キャパシタンスに蓄えた電気エネルギーを力行時の供給電圧を上げるために使用したり、停車後のバッテリー充電に使用できたりする。
【0019】
本発明では、電気自動車用SRモータ駆動システムにおいて、SRモータ特有の力行運転時に発生する回生電力とブレーキングによる回生運転時の回生電力を分離でき、それぞれの回生電力を有効利用できる。要求される仕様に応じて、第1の構成〜第3の構成の駆動回路が選択でき、かけたコストに応じてモータ効率の改善が望める。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一般に電気自動車用ブラシレスDCモータと比較して低いと考えられているSRモータのモータ効率を改善し、元々持っているレアアースフリーで堅牢である特徴を活かして、電気自動車用SRモータ駆動システムの実用化と普及に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術である非対称ハーフブリッジ回路の構成を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路Iを示す回路図である。
図3】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIを示す回路図である。
図4】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIを示す回路図である。
図5】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IVを示す回路図である。
図6】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路Iにおける力行モードを示す回路図である。
図7】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路Iにおけるソフトスイッチングモードを示す回路図である。
図8】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路Iにおける次相励磁モードを示す回路図である。
図9】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIにおけるバッテリー充電モードを示す回路図である。
図10】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIにおけるバッテリー充電モードを示す回路図である。
図11】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIにおけるキャパシタ充電モードを示す回路図である。
図12】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIにおけるバッテリー・キャパシタ並列接続での充電モードを示す回路図である。
図13】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIにおけるバッテリー・キャパシタ直列接続での充電モードを示す回路図である。
図14】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIにおけるバッテリー・キャパシタ直列接続での力行モードを示す回路図である。
図15】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIにおけるバッテリー・キャパシタ並列接続での力行モードを示す回路図である。
図16】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIにおけるキャパシタからバッテリーへの充電モードを示す回路図である。
図17】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IVにおけるキャパシタ充電モードを示す回路図である。
図18】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路Iと従来回路のコイル電流を示す波形図である。
図19】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路Iと従来方式により駆動した時のシミュレーションによるモータ効率の比較を示すグラフである。
図20】本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路Iと従来方式により駆動した時のモータ効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
図2に本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路Iを示す。図中、1は固定子、2は回転子、3はバッテリーを示す。この主回路Iは従来方式(図1参照)のU相上ダイオードD1をV相スイッチング素子T3下(エミッタ)に接続し、V相上ダイオードD3をW相スイッチング素子T5下に接続し、W相上ダイオードD5をU相スイッチング素子T1下に接続している。これらの接続方法により回生電力を強制的に次相励磁に使用できる。ただし相順を入れ替えて次相励磁するときは回生電力を次相励磁に使用できない。回生電力を他相励磁に使用しないときは、スイッチング素子T2、T4、T6を使用してソフトスイッチングを行うことで効率的な回生電力の運用が可能である。主回路Iは従来方式と部品点数が変わらない。
【0023】
図3に本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIを示す。この回路は、主回路Iに対して、従来回路でダイオードD1、D3、D5が接続されている箇所にスイッチング素子T7〜T9を電源ラインに対して逆方向に配置し、スイッチング素子T7〜T9により回生電力をバッテリー3に還すことができる。回生電力を他相励磁に使用するのか、バッテリー3に還すのかは、スイッチング素子T7〜T9をオフにしたままにするか、順にオンにするかにより制御できる。主回路IIは、1つの励磁区間内で発生する回生電力ではなく、比較的長い期間に発生する回生電力を効率的に運用することを狙いとしている。この回路は従来方式に対して、スイッチング素子数が3つ増加する。
【0024】
図4に本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IIIを示す。この回路は主回路IIにキャパシタ4を追加し、バッテリー3との連携によって、回生電力を効率的に運用できるようにしている。キャパシタ4は素早く充電ができるが、充電できる容量が小さい。一方バッテリー3は充電電流に制限があるが、充電できる容量が大きい。主回路IIIは、このような相補的な性質を活かす効率的な運用が行える。
【0025】
またキャパシタ4とバッテリー3の接続を直列・並列に自由に変えられる。この回路は、従来方式に対して、スイッチング素子が7つ増加し、ダイオードが4つ増加する。
【0026】
図5に本発明の実施の形態に係る駆動回路の主回路IVを示す。主回路IIIに対してスイッチング素子T15を追加し、バッテリー3を、完全にキャパシタ4及びSRモータと切り離すことができるようにしている。主回路IIIでは回生電力でキャパシタ4充電時にバッテリー電圧以上の電圧が必要となるが、バッテリー3を切り離すことでバッテリー電圧以下でも回生電力でキャパシタ4を充電できる。この回路は、従来方式に対して、スイッチング素子が8つ増加し、ダイオードが5つ増加する。
【0027】
図6に主回路Iの力行モードを示す。この力行モードは、従来方式と全く同じであり、バッテリー3を直接励磁相に接続している。
【0028】
図7に主回路Iのソフトスイッチングモードを示す。このソフトスイッチングモードは、従来方式と全く同じであり、励磁相をバッテリーと切り離し、励磁コイルに貯まった励磁エネルギーを維持しているモードである。
【0029】
図8に主回路Iの次相励磁モードを示す。この次相励磁モードでは、励磁を終了する相の励磁コイルに貯まっている励磁エネルギーを、励磁を開始する相の励磁コイルに移動させる。励磁エネルギーがバッテリー3に還ることを防げるのでバッテリー充電に伴う損失を低減できる。また励磁相切り替え時に昇圧回路が形成されるので高電圧が発生し、この高電圧により励磁を開始する相の電流を早く立ち上げることができる。この高電圧の大きさは励磁終了相と励磁開始相の下アームトランジスタを制御することで調整できる。
【0030】
図9に主回路IIのバッテリー充電モードを示す。このバッテリー充電モードは従来方式にもある。従来方式との違いは、回生電力をバッテリー3の充電に使用するのか、次相励磁に使用するのか、選択できる点にある。
【0031】
図10に主回路IIIのバッテリー充電モードを示す。このバッテリー充電モードは、図8に示す主回路IIのバッテリー充電モードと同じである。ただしスイッチング素子2個が直列に接続されるのでオン電圧降下により損失が発生する点は不利になる。またキャパシタ電圧がバッテリー電圧よりも大きければ、キャパシタ4からも充電される。
【0032】
図11に主回路IIIのキャパシタ充電モードを示す。このキャパシタ充電モードでは、回生電力をキャパシタ4の充電にのみ使用する。このキャパシタ充電モードでは、バッテリー電圧がキャパシタ電圧よりも高ければ、バッテリー3からも充電される。
【0033】
図12に主回路IIIのバッテリー・キャパシタ並列接続での充電モードを示す。このバッテリー・キャパシタ並列接続充電モードでは、バッテリー3とキャパシタ4の内部インピーダンスの大きさに反比例する形で回生電流が分流する。キャパシタ電圧がバッテリー電圧を超えたら、図10のキャパシタ充電モードに移行することで、回生電力を全てキャパシタ充電に使用できる。
【0034】
図13にバッテリー・キャパシタ直列接続での充電モードを示す。このバッテリー・キャパシタ充電モードでは、キャパシタ4とバッテリー3を同じ電流が通過する。図10のキャパシタ充電モードと併用することで、バッテリー3の充電電流値に配慮しつつ回生電力によるバッテリー充電が行える。
【0035】
図14に主回路IIIのバッテリー・キャパシタ直列接続での力行モードを示す。スイッチング素子T12を導通することで、バッテリー3とキャパシタ4の直列回路を形成できる。図10〜13の充電モードで充電されるキャパシタ電圧をバッテリー電圧に上乗せして使用できる。コイル誘起電圧が高くなる高速回転時のコイルの電流立ち上げに有効である。
【0036】
図15に主回路IIIのバッテリー・キャパシタ並列接続時での力行モードを示す。このバッテリー・キャパシタ並列接続力行モードでは、バッテリー3とキャパシタ4の内部インピーダンスの大きさに反比例する形で電流を分担する。キャパシタ電圧がバッテリー電圧よりも小さくなるとキャパシタ4は回路から自然と切り離される。残ったキャパシタ電圧は、図14のバッテリー・キャパシタ直列接続に切り替えることで、ゼロ電圧まで使用できる。
【0037】
図16に主回路IIIのキャパシタ4からバッテリー3への充電モードを示す。キャパシタ電圧がバッテリー電圧よりも大きい場合で、力行モードに入らない場合にキャパシタ電圧がバッテリー電圧と等しくなるまで、キャパシタ電圧によりバッテリー3が充電できる。充電電流はスイッチング素子T10、T11を制御することで調整できる。
【0038】
図17に主回路IVのキャパシタ充電モードを示す。バッテリー3を切り離すことができるので、図11で示すようなバッテリー3からの充電を防ぐことができる。結果としてキャパシタ電圧0からでもキャパシタ4を充電できる。
【0039】
図18に主回路I(a)と従来方式(b)により駆動した時のU相、V相、W相のコイル電流を示す。主回路Iでは次相励磁が行われ、コイル電流が流れ続けていることが確認できる。
【0040】
図19に主回路Iと従来方式により駆動した時のシミュレーションによるモータ効率の比較を示す。主回路Iによりモータ効率が改善していることが分かる。
【0041】
図20に主回路Iと従来方式により駆動した時のモータ効率の比較を示す。主回路Iによりモータ効率が改善していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、電気自動車用SRモータ駆動システムにおける電力変換装置に適用でき、さらに、電気自動車に限らず、SRモータを利用する駆動システムに適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 固定子
2 回転子
3 バッテリー(直流電源)
4 キャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20