(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窒素ガスを前記溶融スラグ中に吹き出す際に、溶解時の電圧の触れ幅が設定電圧に対して20%以下になる範囲で窒素ガス吹き出し量を設定することを特徴とする請求項2に記載の高窒素含有鋼の製造方法。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスラグ再溶解法は、エレクトロスラグ再溶解電極を介してスラグに大電流を流し、このとき発生するジュール熱でスラグを溶融させ、その溶融スラグ中でエレクトロスラグ再溶解電極を連続的に溶解するプロセスである。上記エレクトロスラグ再溶解法では、使用するエレクトロスラグ再溶解電極の成分が、溶解後に得ようとする鋳塊成分の目標値と異なっている場合、合金元素の添加によって、成分調整を行う必要がある。
【0003】
エレクトロスラグ再溶解法において合金元素を添加する方法としては、引用文献1では、エレクトロスラグ再溶解電極に穴を開けその内部に目的とする元素を含有する合金鉄を詰める方法が提案されている。また、引用文献2では、合金鉄をパイプに詰めてこれをエレクトロスラグ再溶解電極に取り付ける方法が提案されている。さらに、引用文献3では、エレクトロスラグ再溶解電極表面に合金元素粉末を塗布する方法が提案されている。これらの方法は合金鉄や合金粉末に窒素を含有する原材料を用いることにより、製造する鋼塊中に窒素を添加する技術である。その他に、溶解雰囲気を加圧窒素雰囲気とすることで、雰囲気中の窒素ガスを窒素源として、鋼塊中に窒素分を添加する加圧式エレクトロスラグ再溶解法がある。
【0004】
また、エレクトロスラグ再溶解法と同じく消耗電極を二次溶解する方法としては、非特許文献1に示すアークスラグ再溶解法がある。該アークスラグ再溶解法における装置を
図6に示す。このアークスラグ再溶解法では、消耗電極20の中心に貫通穴21を開け、溶融スラグ30上に間隔を置くように消耗電極20を配置し、その貫通穴21から窒素ガスを溶融スラグ30上で溶融金属層31に吹き付けることによって溶鋼中に窒素分を添加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、引用文献1〜3で提案されている方法では、窒素を含有する合金鉄や合金粉末を用いるため、それらの合金中には、クロム、マンガン、シリコンといった窒素以外の元素が多量に含まれている。そのため合金鉄や合金粉末を用いた方法により窒素分を添加しようとしても、溶解後の鋼塊においてクロムなど窒素以外の成分も増加するといった問題があり、窒素のみを増加させたい場合に対応することができない。
【0008】
また、加圧式エレクトロスラグ再溶解法は、溶解雰囲気を加圧した窒素ガス雰囲気とすることで、鋼塊中の飽和窒素溶解度を高め、高窒素含有鋼を溶製するプロセスである。しかし、溶融スラグの窒素溶解度は小さく、溶解雰囲気の窒素ガスから鋼塊中へ添加できる窒素量は僅かとなる問題がある。また、溶解雰囲気をあまりに高圧にすると、設備費が嵩むという問題がある。したがって、上記の合金鉄や合金粉末を用いた方法と同様に、Si
3N
4といった窒素化合物などを溶融金属プール中に添加しており、鋼塊においてSiが増加するといった問題がある。
【0009】
加圧式を含めてエレクトロスラグ再溶解法は、溶融スラグ層内にエレクトロスラグ再溶解電極を浸漬して通電することにより、溶融スラグ層内に発生するジュール熱でエレクトロスラグ再溶解電極を連続的に溶解するプロセスである。エレクトロスラグ再溶解電極から落下した溶融金属滴が溶融スラグ層を通過する際に、金属滴中の非金属介在物や硫黄を除去することで、高清浄度の鋼塊を得ることができる。
それに対し、非特許文献1に示す高窒素含有鋼製造を意図したアークスラグ再溶解法では、消耗電極−溶融メタル間でアークを飛ばしながら消耗電極を溶解する。その際消耗電極の中心孔から窒素ガスを吹き出すことで、鋼塊中に窒素を添加できる。そのため、窒素以外の元素が混入することはない。しかし、消耗電極直下に溶融スラグ層がないことで、溶融金属滴中の非金属介在物や硫黄を除去することはできない。よって、アークスラグ再溶解法では、エレクトロスラグ再溶解法に比べて鋼塊の清浄度が劣るといった問題がある。
【0010】
この発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、非金属介在物や硫黄が少ない高清浄度の鋼塊を得ることができ、エレクトロスラグ再溶解に用いることができるエレクトロスラグ再溶解用電極および高窒素含有鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第
1の本発明のエレクトロスラグ再溶解用電極は、
高窒素含有鋼の含有成分を有するエレクトロスラグ再溶解電極本体と、
前記エレクトロスラグ再溶解電極本体外面に前記エレクトロスラグ再溶解電極本体の軸方向に伸長して取り付けられ前記エレクトロスラグ再溶解電極本体の先端に達
し、エレクトロスラグ再溶解電極本体の再溶解とともに溶解する複数の窒素吹き出し筒と、
前記窒素吹き出し筒内に窒素を導入して前記エレクトロスラグ再溶解電極本体先端からの
所定量のガス吹き出し量に調整した窒素吹き出しを行う窒素導入部と、を有することを特徴とする。
【0013】
第
2の本発明の高窒素含有鋼の製造方法は、高窒素含有鋼の含有成分を有す
るエレクトロスラグ再溶解電極本体外面に前記エレクトロスラグ再溶解電極本体の軸方向に伸長して取り付けられ前記エレクトロスラグ再溶解電極本体の先端に達する窒素吹き出し筒を設けておき、
前記エレクトロスラグ再溶解電極本体の先端側を溶融スラグ中に浸積し、
前記窒素吹き出し筒内に窒素を導入して溶融スラグ中で前記エレクトロスラグ再溶解電極本体先端から
所定量のガス吹き出し量に調整した窒素を吹き出しつつ前記エレクトロスラグ再溶解電極本体の再溶融
および前記窒素吹き出し筒の溶解を行って高窒素含有鋼を製造することを特徴とする。
【0014】
第
3の本発明の高窒素含有鋼の製造方法は、前記第
2の本発明において、前記窒素ガスを前記溶融スラグ中に吹き出す際に、溶解時の電圧の触れ幅が設定電圧に対して20%以下になる範囲で窒素ガス吹き出し量を設定することを特徴とする。
【0015】
本発明では、エレクトロスラグ再溶解用電極に開けた窒素吹き出し穴または窒素吹き出し筒は、エレクトロスラグ再溶解用電極の先端に達するものであり、エレクトロスラグ再溶解用電極の溶解に伴って常に電極の先端側に位置する。窒素吹き出し穴は電極本体の軸方向に形成され、窒素吹き出し筒は電極本体の軸方向に伸長するものであるが、それぞれ軸方向に沿った形状とされることが必要とされるものではない。例えば電極本体に対し、らせん状に配置して設けられているものであってもよい。また、窒素吹き出し穴または窒素吹き出し筒は、少なくとも吹き出し位置において吹き出し部分を1または2以上を設けたものとすることができ、吹き出し部分における断面形状も特に限定されるものではない。
【0016】
なお、上記本発明では、窒素吹き出し穴または窒素吹き出し筒から吹き出される窒素ガス吹き出し量を適量に設定するのが望ましい。窒素ガス量が過剰になると、電極と溶融スラグ層との間にアーキングが発生し溶解が不安定になる。なお、適量のガス吹き出し量は、電極の面積、鋳型面積などによって異なるため、溶解電圧の振れ幅が、自動溶解開始時の設定電圧に対し20%以下になるようにガス吹き出し量を設定するのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、安価な方法で鋼塊に窒素を添加することができ、本高窒素含有鋼を用いて、高硬度で耐食性が必要とされる機能材を容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
以下に、本発明の一実施形態の高窒素含有鋼の製造方法に用いられるエレクトロスラグ再溶解用電極10およびエレクトロスラグ再溶解装置1を
図1を用いて説明する。
エレクトロスラグ再溶解装置1は、筒状の鋳型2を有し、鋳型2とエレクトロスラグ再溶解用電極10との間で、溶解電圧を付与する電源3を備えている。なお、この実施形態では電源3は交流電源からなるものであるが、本発明としては、これに限定されるものではなく、直流電源で構成されるものであってもよい。
【0020】
エレクトロスラグ再溶解用電極10は、エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aが円柱状に形成され、エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aの中心軸に沿って窒素吹き出し穴11が形成され、エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aの先端に開口されている。窒素吹き出し穴11は、エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aの他端側に連結された小径円柱状の支持柱部10B内に至り、向きを変えて径方向側に伸長して支持柱部10Bの側面に開口している。支持柱部10Bに開口した窒素吹き出し穴11には、窒素導入部12が接続されている。上記によってエレクトロスラグ再溶解用電極10が構成されている。
【0021】
エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aは、製造しようとする高窒素含有鋼の成分に対応した組成で作成されており、窒素の含有や所望により他成分を添加することを想定した組成とされている。したがって、エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aの組成が製造しようとする高窒素含有鋼の組成そのものであることは必ずしも必要とされない。
【0022】
上記エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aは、鋳型2内の中心軸に沿って上下移動可能に設置されており、支持柱部10Bを介して電源3の出力端の一方に電気的に接続されている。また電源3の出力端の他方は鋳型2に電気的に接続されており、電源3によってエレクトロスラグ再溶解用電極10と鋳型2との間に電圧印加が可能になっている。
【0023】
次に、本実施形態の動作について説明する。
エレクトロスラグ再溶解の開始に伴って、鋳型2内にスラグ材料が初期投入され、通電によって溶融スラグ15が形成され、溶融スラグ15中にエレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aの先端側が浸漬された状態になる。
エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aは、溶融スラグ15のジュール熱により溶解し、溶滴13は溶融スラグ15内を下降しつつ鋳型2の底に至り、溶融金属プール16を形成する。これとともに、窒素導入部12には外部から所定流量の窒素ガスが供給され、窒素ガスは窒素吹き出し穴11を通して溶融スラグ15中に窒素ガスを吹き出す。窒素ガスは溶融スラグ15中で撹拌され、窒素ガスの一部は溶滴13に取り込まれ、また、溶融スラグ15を通して溶融金属プール16に溶け込む。
【0024】
鋳型2は、図示しない冷却手段により冷却され、溶融金属プール16の下方に次第に高窒素含有の鋳塊17が得られる。その後は、鋳塊17上に溶融金属プール16が次第に堆積して凝固し、高窒素含有の鋳塊17が次第に高くなる。
エレクトロスラグ再溶解用電極10は、その消耗度合いと溶融金属プール16の液面高さに応じて下方に移動させて溶融スラグ15への挿入状態を維持しつつ、エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aの溶解が連続して行われる。その際に、窒素吹き出し穴11から溶融スラグ15中への所定流量の窒素ガスの吹き出しを継続する。この際に、窒素ガスの吹き出し量としては、初期の設定電圧に対し電圧の振れ幅が20%以下となる範囲で設定するのが望ましい。
上記本実施形態によれば、窒素を鋳塊中に高濃度で安価に含有させることができ、窒素以外の不要な成分を鋳塊中に含有させる必要性も生じない。
【0025】
(実施形態2)
次に、本発明の他の実施形態として、加圧式エレクトロスラグ再溶解装置1Aに適用したものを
図2に基づいて説明する。本発明が適用されるエレクトロスラグ再溶解装置は、加圧の有無を問わないものである。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
【0026】
加圧式エレクトロスラグ再溶解装置1Aは、筒状の鋳型2A上に上面が覆われた筒状の加圧容器2Bを被せて雰囲気の調整が行われており、溶解雰囲気を加圧窒素雰囲気にしている。本実施形態においては、加圧窒素雰囲気の圧力が特に限定されるものではないが、例えば0.1MPa(大気圧)〜2MPaの圧力下とすることができる。圧力の上限を抑えることで設備費を抑えた上で鋳塊への高窒素含有を可能にする。
【0027】
この実施形態では、エレクトロスラグ再溶解の開始に伴って、溶解雰囲気を所定の加圧窒素雰囲気に調整し、前記実施形態と同様に溶融スラグ15中にエレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aの先端側が浸漬された状態にする。なお、溶解雰囲気は、エレクトロスラグ再溶解中に状態を変化させるようにしてもよい。
エレクトロスラグ再溶解用電極本体10Aは、溶融スラグ15のジュール熱により溶解し、溶滴13は溶融スラグ15内を下降しつつ鋳型2の底に至り、溶融金属プール16を形成する。窒素導入部12には所定流量の窒素ガスが供給され、窒素吹き出し穴11を通して溶融スラグ15中に窒素ガスが吹き出される。窒素ガスは溶融スラグ15中で撹拌され、吹き出された窒素ガスおよび加圧によって溶融スラグ15に溶け込んだ窒素ガスの一部は、溶滴13に取り込まれ、また、溶融スラグ15を通して溶融金属プール16に溶け込む。
【0028】
鋳型2では、前記実施形態と同様に高窒素の鋳塊17が次第に高さを増すように形成される。その際に、窒素吹き出し穴11から溶融スラグ15中への所定流量の窒素ガスの吹き出しを継続し、窒素ガスの吹き出し量としては、初期の設定電圧に対し電圧の振れ幅が20%以下となる範囲で設定するのが望ましい。
なお、加圧式では、請求項1の加圧式でないものに比べて窒素ガスの吹き出し量を少なくすることができる。
上記本実施形態によっても、窒素を鋳塊中に高濃度で安価に含有させることができる。
【0029】
(実施形態3)
さらに、本発明の他の実施形態を
図3に基づいて説明する。この例では、エレクトロスラグ再溶解用電極本体に窒素吹き出し筒を設けたものである。なお、前記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
【0030】
この実施形態の加圧式エレクトロスラグ再溶解装置1Bのエレクトロスラグ再溶解用電極100は、円柱状に形成したエレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aを有し、その外周面に軸方向に沿って4本の窒素吹き出し筒110が等間隔で取り付けられており、窒素吹き出し筒先端はエレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aの先端に達している。なお、窒素吹き出し筒110の先端はエレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aの先端に達していればよく、さらにその先に伸長しているものであってもよい。
エレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aの基端側には支持柱部100Bが連結されれており、窒素吹き出し筒110の基端側は、支持柱部100Bの外周側に円筒状に配置した環部120Aに連結されている。環部120Aには、外部に伸長する導入配管120Bが接続されており、環部120Aと導入配管120Bとによって本発明の窒素導入部120が構成されている。この構成により、導入配管120Bに供給される窒素ガスは、環部120Aを介して窒素吹き出し筒110に供給され、先端側に移送される。
【0031】
なお、この実施形態では複数の窒素吹き出し筒110を有するものとして説明しているが、その数は特に限定されるものではなく、一つの窒素吹き出し筒110のみを有するものであってもよい。
また、窒素吹き出し筒110は、エレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aの溶解とともに溶融スラグ15のジュール熱によって溶解する材料を用いる。このため窒素吹き出し筒110は、鋳塊17への溶け込みによって特性に影響を与える材料は使用せず、例えばエレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aと同材料または主要な成分を同じにして構成することができる。
【0032】
この実施形態では、エレクトロスラグ再溶解の開始に伴って、溶融スラグ15中にエレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aの先端側が浸漬された状態になる。
エレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aは、溶融スラグ15のジュール熱により溶解し、溶滴13は溶融スラグ15内を下降しつつ鋳型2の底に至り、溶融金属プール16を形成する。窒素導入部120には所定流量の窒素ガスが供給され、窒素吹き出し筒110を通して溶融スラグ15中に窒素ガスが吹き出される。この際に、窒素吹き出し筒110の先端側もエレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aとともにジュール熱によって溶解する。窒素ガスは溶融スラグ15中で撹拌され、窒素ガスの一部は溶滴13に取り込まれ、また、溶融スラグ15を通して溶融金属プール16に溶け込む。
【0033】
鋳型2は、図示しない冷却手段により冷却され、溶融金属プール16の下方に次第に高窒素含有の鋳塊17が得られ、高窒素の鋳塊17が次第に高さを増して形成される。
エレクトロスラグ再溶解用電極10は、その消耗度合いと溶融金属プール16の液面高さに応じて下方に移動させて溶融スラグ15への挿入状態を維持しつつ、エレクトロスラグ再溶解用電極本体100Aの溶解が連続して行われる。窒素ガス吹き出し筒110から溶融スラグ15中への所定流量の窒素ガスの吹き出しを継続する。この際に、窒素ガスの吹き出し量としては、初期の設定電圧に対し電圧の振れ幅が20%以下となる範囲で設定するのが望ましい。
なお、上記窒素吹き出し筒は、実施形態2の窒素吹き出し穴に代えて加圧式エレクトロスラグ再溶解装置に使用することも当然可能である。
【実施例1】
【0034】
以下に、本実施例を説明する。以下の実施例では、
図1に示すエレクトロスラグ再溶解装置1または、
図2に示す加圧式エレクトロスラグ再溶解装置1Aを用いて試験を行った。また、比較装置として、窒素吹き出しを行わない装置を用意した。
【0035】
各試験では、エレクトロスラグ再溶解用電極本体として外径100mmのSUS304の軸中心に10mm径の窒素吹き出し筒を開けたものを用いた。
溶解条件は鋳型径:145mm、スラグ組成:CaF
2−CaO−Al
2O
3系、設定電流:2000Aまたは2500A、設定電圧:18Vまたは20V、溶解雰囲気ガス種:窒素、溶解雰囲気圧力:0.1MPa(大気圧)、または1.0MPa、窒素吹き出し穴からの窒素ガス吹き出し流量:0〜5.0NL/minとした。
【0036】
上記条件による試験結果を表1、及び
図4、5に示す。
雰囲気圧力0.1MPa(エレクトロスラグ再溶解法)、1.0MPa(加圧式エレクトロスラグ再溶解法)ともに、窒素ガスの吹き出し量の増加に伴い鋼塊中の窒素ピックアップ量(=鋼塊窒素量(溶解後)−エレクトロスラグ再溶解電極窒素量(溶解前))は増加し、その値は比較例として示した吹き出しなしの場合より大きかった。
【0037】
図5に示したように吹き出し量が5.0NL/min(本発明の実施例(5))では、設定電圧に対し溶解電圧の振れ幅が20%を超えて大きくなり、溶解の継続が困難であった。これは多量の窒素ガスを吹き込んだ場合には、エレクトロスラグ再溶解電極と溶融スラグ層との間にアーキングが発生し溶解が不安定になるためである。この結果、鋳塊の表面肌が悪化して、顕著な場合には製品として使用することができなくなる。一方、吹き出し量を0.1NL/min、0.4NL/min、1.0NL/min、2.0NL/minに設定した実施例では、設定電圧に対する溶解電圧の振れ幅が20%以下であり、電解が安定して鋳塊の表面肌も良好であった。この結果、ガス吹き出し量は、溶解電圧の振れ幅が自動溶解開始時の設定電圧に対して20%以下になるように設定すると溶解が安定することがわかった。
上記の実施例では、エレクトロスラグ再溶解電極の中心部より窒素ガスを吹き出しているが、電極表面にパイプを取り付けそこから吹き出すなどの方法によっても上記と同様の効果を得ることができる。
【0038】
【表1】
【0039】
以上、本発明について上記実施形態および実施例に基づいて説明したが、本発明は上記説明の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。