(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関では、内燃機関の運転状況や混合気の着火後の火炎の伝播状況によって、燃焼室の共振周波数が変化する。このため、従来の内燃機関では、火炎の伝播中に燃焼室へ電磁波を放射しても、火炎の伝播速度を適切に向上させることができないおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電磁波を利用して燃焼室における混合気の燃焼を促進させる内燃機関において、燃焼室において電磁波のエネルギーを有効に利用して火炎の伝播速度を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、燃焼室が形成された内燃機関本体と、前記燃焼室において混合気に点火する点火装置とを備え、前記点火装置により混合気に点火して該混合気を燃焼させる燃焼サイクルが繰り返し行われる内燃機関であって、混合気が着火された後の火炎の伝播中に前記燃焼室へ電磁波を放射する電磁波放射装置と、前記内燃機関本体の運転状況
である負荷及び回転数が入力されると、低負荷・低回転領域から高負荷・高回転領域に近づくに従って、発振周波数の目標値が大きな値となるように設定された制御マップに応じて、前記電磁波放射装置が前記燃焼室へ放射する電磁波の周波数を制御する制御手段とを備えている。
【0008】
第1の発明では、内燃機関本体の運転状況に応じて燃焼室の共振周波数を考慮して、燃焼室へ放射される電磁波の周波数が制御される。このため、火炎の伝播中に燃焼室へ放射された電磁波が適切に共振する。
【0009】
第2の発明は、燃焼室が形成された内燃機関本体と、前記燃焼室において混合気に点火する点火装置とを備え、前記点火装置により混合気に点火して該混合気を燃焼させる燃焼サイクルが繰り返し行われる内燃機関であって、混合気が着火された後の火炎の伝播中に前記燃焼室へ電磁波を放射する電磁波放射装置と、
前記点火装置による混合気の点火タイミングと前記電磁波放射装置によりマイクロ波の放射開始タイミングとの時間差から火炎の伝播状況を推測し、その推測結果に基づいて、発振周波数の目標値を決定し、前記電磁波放射装置が前記燃焼室へ放射する電磁波の周波数を制御する制御手段とを備えている。
【0010】
第2の発明では、火炎の伝播状況に応じて燃焼室の共振周波数を考慮して、燃焼室へ放射される電磁波の周波数が制御される。このため、火炎の伝播中に燃焼室へ放射された電磁波が適切に共振する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、燃焼室の共振周波数を考慮して、燃焼室へ放射される電磁波の周波数を制御することで、火炎の伝播中に燃焼室において電磁波が適切に共振するようにしている。従って、燃焼室において電磁波のエネルギーを有効に利用して火炎の伝播速度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0014】
本実施形態は、本発明に係る内燃機関10である。内燃機関10は、ピストン23が往復動するレシプロタイプの内燃機関である。内燃機関10は、内燃機関本体11と点火装置12と電磁波放射装置13と制御装置35とを備えている。内燃機関10では、点火装置12により混合気に点火して混合気を燃焼させる燃焼サイクルが繰り返し行われる。
−内燃機関本体−
【0015】
内燃機関本体11は、
図1に示すように、シリンダブロック21とシリンダヘッド22とピストン23とを備えている。シリンダブロック21には、横断面が円形のシリンダ24が複数形成されている。各シリンダ24内には、ピストン23が往復自在に設けられている。ピストン23は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフトに連結されている(図示省略)。クランクシャフトは、シリンダブロック21に回転自在に支持されている。各シリンダ24内においてシリンダ24の軸方向にピストン23が往復運動すると、コネクティングロッドがピストン23の往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する。
【0016】
シリンダヘッド22は、ガスケット18を挟んで、シリンダブロック21上に載置されている。シリンダヘッド22は、シリンダ24、ピストン23及びガスケット18と共に、円形断面の燃焼室20を区画する区画部材を構成している。燃焼室20の直径は、例えば、電磁波放射装置13が燃焼室20へ放射するマイクロ波の波長の半分程度である。
【0017】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、点火装置12の一部を構成する点火プラグ40が1つずつ設けられている。
図2に示すように、点火プラグ40では、燃焼室20に露出する先端部が、燃焼室20の天井面51(シリンダヘッド22における燃焼室20に露出する面)の中心部に位置している。点火プラグ40の先端部の外周は、その軸方向から見て円形である。点火プラグ40の先端部には、中心電極40a及び接地電極40bが設けられている。中心電極40aの先端と接地電極40bの先端部との間には、放電ギャップが形成されている。
【0018】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、吸気ポート25及び排気ポート26が形成されている。吸気ポート25には、吸気ポート25の吸気側開口25aを開閉する吸気バルブ27と、燃料を噴射するインジェクター29とが設けられている。一方、排気ポート26には、排気ポート26の排気側開口26aを開閉する排気バルブ28が設けられている。なお、内燃機関10は、燃焼室20において強いタンブル流が形成されるように吸気ポート25が設計されている。
−点火装置−
【0019】
点火装置12は、燃焼室20毎に設けられている。
図3に示すように、各点火装置12は、高電圧パルスを出力する点火コイル14と、点火コイル14から出力された高電圧パルスが供給される点火プラグ40とを備えている。
【0020】
点火コイル14は、直流電源(図示省略)に接続されている。点火コイル14は、制御装置35から点火信号を受けると、直流電源から印加された電圧を昇圧し、昇圧後の高電圧パルスを点火プラグ40の中心電極40aに出力する。点火プラグ40では、高電圧パルスが中心電極40aに印加されると、放電ギャップにおいて絶縁破壊が生じてスパーク放電が生じる。スパーク放電の放電経路には、放電プラズマが生成される。中心電極40aには、高電圧パルスとしてマイナスの電圧が印加される。
【0021】
なお、点火装置12は、放電プラズマに電気エネルギーを供給して放電プラズマを拡大させるプラズマ拡大部を備えていてもよい。プラズマ拡大部は、例えば、放電プラズマに高周波(例えばマイクロ波)のエネルギーを供給することによりスパーク放電を拡大させる。プラズマ拡大部によれば、希薄な混合気に対して着火の安定性を向上させることができる。プラズマ拡大部として、電磁波放射装置13を利用してもよい。
−電磁波放射装置−
【0022】
電磁波放射装置13は、
図3に示すように、電磁波発生装置31と電磁波切替器32と放射アンテナ16とを備えている。電磁波放射装置13では、電磁波発生装置31と電磁波切替器32が1つずつ設けられ、燃焼室20毎に放射アンテナ16が設けられている。
【0023】
電磁波発生装置31は、制御装置35から電磁波駆動信号を受けると、所定のデューティー比でマイクロ波パルスを繰り返し出力する。電磁波駆動信号はパルス信号である。電磁波発生装置31は、電磁波駆動信号のパルス幅の時間に亘って、マイクロ波パルスを繰り返し出力する。電磁波発生装置31では、半導体発振器がマイクロ波パルスを生成する。なお、半導体発振器の代わりに、マグネトロン等の他の発振器を使用してもよい。
【0024】
電磁波切替器32は、1つの入力端子と、放射アンテナ16毎に設けられた複数の出力端子とを備えている。入力端子は、電磁波発生装置31に接続されている。各出力端子は、対応する放射アンテナ16に接続されている。電磁波切替器32は、制御装置35により制御されて、複数の放射アンテナ16の間で、電磁波発生装置31から出力されたマイクロ波の供給先を順番に切り替える。
【0025】
放射アンテナ16は、燃焼室20の天井面51に設けられている。放射アンテナ16は、2つの吸気側開口25aの間の領域に設けられている。放射アンテナ16は、
図1に示すように、燃焼室20の天井面51から突出している。放射アンテナ16は、
図4に示すように、螺旋状に形成され、絶縁体65内に埋設されている。放射アンテナ16の長さは、その放射アンテナ16におけるマイクロ波の波長の4分の1である。放射アンテナ16は、シリンダヘッド22に埋設されたマイクロ波の伝送線路33を介して、電磁波切替器32の出力端子に電気的に接続されている。
【0026】
本実施形態では、電磁波放射装置13が、放射アンテナ16から燃焼室20へ放射するマイクロ波の周波数を調節可能に構成されている。具体的に、電磁波発生装置31は、マイクロ波の発振周波数を調節可能に構成されている。電磁波発生装置31は、例えば、2.45GHzを発振周波数の中心値fとして、低周波側の第1設定値f1(f1=f−X)から高周波側の第2設定値f2(f2=f+X)の間で、発振周波数を連続的に調節可能に構成されている。X(Hz)は、数〜数十(Hz)の値であり、例えば10(Hz)である。
【0027】
なお、電磁波放射装置13が、発振周波数が互いに異なる複数の電磁波発生装置31を備え、使用する電磁波発生装置31を切り替えることにより、燃焼室20へ放射するマイクロ波の周波数を調節してもよい。
−制御装置の動作−
【0028】
制御装置35の動作について説明する。制御装置35は、各燃焼室20に対して、1回の燃焼サイクルに、点火装置12に混合気への点火を指示する第1動作と、混合気の着火後に電磁波放射装置13にマイクロ波の放射を指示する第2動作とを行う。
【0029】
具体的に、制御装置35は、ピストン23が圧縮上死点の手前に位置する点火タイミングに第1動作を行う。制御装置35は、第1動作として点火信号を出力する。
【0030】
点火装置12は、点火信号を受けると、上述したように、点火プラグ40の放電ギャップにおいてスパーク放電が生じる。混合気は、スパーク放電により着火する。混合気が着火すると、燃焼室20の中心部の混合気の着火位置からシリンダ24の壁面へ向かって火炎が広がる。
【0031】
制御装置35は、混合気が着火した後に、例えば火炎伝播の後半期間の開始タイミングに第2動作を行う。制御装置35は、第2動作として電磁波駆動信号を出力する。
【0032】
電磁波放射装置13は、電磁波駆動信号を受けると、上述したように、放射アンテナ16からマイクロ波パルスを繰り返し放射する。マイクロ波パルスは、火炎伝播の後半期間に亘って繰り返し放射される。
【0033】
本実施形態では、制御装置35が、内燃機関本体11の運転状況に応じて燃焼室20の共振周波数を考慮して、電磁波放射装置13が燃焼室20へ放射するマイクロ波の周波数を制御する制御手段を構成している。制御装置35は、電磁波放射装置13が燃焼室20へ放射するマイクロ波の周波数を制御するために、電磁波発生装置31の発振周波数を制御する。
【0034】
制御装置35には、内燃機関本体11の負荷及び回転数をそれぞれ入力値として入力すると、第1設定値f1と第2設定値f2の間で予め設定された発振周波数の目標値(出力値)が得られる制御マップが設けられている。制御マップは、内燃機関本体11の運転状況に応じた燃焼室20の共振周波数を考慮して作成されている。例えば、制御マップでは、低負荷・低回転領域から高負荷・高回転領域に近づくに従って、発振周波数の目標値が大きな値に設定されている。制御装置35は、内燃機関本体11の負荷及び回転数が入力されると、制御マップから発振周波数の目標値を読み取り、電磁波発生装置31の発振周波数をその目標値に設定する。燃焼室20には、燃焼室20の共振周波数を考慮した周波数のマイクロ波が放射される。そのため、火炎の伝播中に燃焼室20においてマイクロ波が適切に共振するので、火炎の伝播速度が効果的に向上する。
【0035】
なお、マイクロ波のエネルギーが大きい場合には、燃焼室20の強電界領域においてマイクロ波プラズマが生成される。マイクロ波プラズマの生成領域では活性種(例えば、OHラジカル)が生成される。強電界領域を通過する火炎の伝播速度は、活性種により増大する。
−実施形態の効果−
【0036】
本実施形態では、燃焼室20の共振周波数を考慮して、燃焼室20へ放射されるマイクロ波の周波数を制御することで、火炎の伝播中に燃焼室20においてマイクロ波が適切に共振するようにしている。従って、燃焼室20においてマイクロ波のエネルギーを有効に利用して火炎の伝播速度を向上させることができる。
−実施形態の変形例1−
【0037】
本実施形態の変形例1では、制御装置35が、火炎の伝播状況に応じて燃焼室20の共振周波数を考慮して、電磁波放射装置13が燃焼室20へ放射するマイクロ波の周波数を制御する制御手段を構成している。制御装置35は、電磁波放射装置13が燃焼室20へ放射するマイクロ波の周波数を制御するために、電磁波発生装置31の発振周波数を制御する。
【0038】
制御装置35は、第1動作の実行タイミング(点火装置12による混合気の点火タイミング)と、第2動作の開始タイミング(電磁波放射装置13によりマイクロ波の放射開始タイミング)との時間差から、マイクロ波の放射を開始する時点で火炎がどの程度広がっているのかを推測し、その推測結果に基づいて、発振周波数の目標値を決定する。例えば、制御装置35は、第1動作の実行タイミングと第2動作の開始タイミングとの時間差が大きいほど、マイクロ波の放射を開始する時点で火炎が広範囲に広がっていると推測し、発振周波数の目標値を大きな値に設定する。
【0039】
制御装置35は、発振周波数の目標値を設定すると、電磁波発生装置31の発振周波数をその目標値に設定する。燃焼室20には、燃焼室20の共振周波数を考慮した周波数のマイクロ波が放射される。そのため、火炎の伝播中に燃焼室20においてマイクロ波が適切に共振するので、火炎の伝播速度が効果的に向上する。
−実施形態の変形例2−
【0040】
本実施形態の変形例2では、燃焼室20を区画する区画部材に、放射アンテナ16から燃焼室20へ放射されたマイクロ波に共振するリング状の受信アンテナ52が設けられている。変形例2では、2つの受信アンテナ52a,52bが、前記区画部材のうち、燃焼室20の外周寄りの領域を区画する部分に設けられている。各受信アンテナ52a,52bは、
図5に示すように、ピストン23の頂部の外周寄りの領域に設けられている。各受信アンテナ52a,52bは、ピストン23頂面に積層された絶縁層56に設けられている。