(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の積層構造の高周波伝送線路に対して放射アンテナを一体化したアンテナ構造体では、高周波伝送用の導体に加えて放射アンテナ用の導体を設けたシート状絶縁体を積層することで、高周波伝送線路と放射アンテナを一体化することが考えられる。従来の高周波伝送線路の積層技術を用いるのであれば、積層する前のシート状絶縁体に、放射アンテナ用の導体として導体パターンが設けられる。
【0007】
この場合、アンテナ構造体を放射アンテナ側から透視した場合に、シート状絶縁体の間の導体パターンの側面(厚さ面)が放射アンテナの主放射面となる。そのため、アンテナ構造体を放射アンテナ側から透視した場合の放射アンテナの面積(以下、「透視アンテナ面積」という。)がそれほど大きくならず、高周波の放射エネルギー量を増大させることが困難である。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、積層構造の高周波伝送線路に対して放射アンテナを一体化したアンテナ構造体において、高周波の放射エネルギー量を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、複数のシート状絶縁体を積層して一体化することにより構成され、内部に高周波伝送用の導体が埋設された柱状の高周波伝送線路と、前記高周波伝送線路において高周波が出射される出射端面を被覆するように積層された被覆絶縁体と、前記被覆絶縁体が露出する空間に、前記出射端面から入力された高周波が放射されるように、前記出射端面と前記被覆絶縁体との間、又は前記被覆絶縁体の内部に埋設された放射アンテナとを備えているアンテナ構造体である。
【0010】
第1の発明では、複数のシート状絶縁体が積層された積層構造の高周波伝送線路の出射端面と被覆絶縁体との間、又は被覆絶縁体の内部に放射アンテナが埋設されている。放射アンテナは、被覆絶縁体により被覆されている。第1の発明では、高周波伝送線路の積層方向とは異なる方向に被覆絶縁体を積層することで、高周波伝送線路を構成するシート状絶縁体の間とは異なる場所に放射アンテナを設けることが可能になるので、高周波伝送線路の出射端面と被覆絶縁体との間、又は被覆絶縁体の内部に放射アンテナを設けている。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記高周波伝送線路では、前記高周波伝送用の導体が前記出射端面から露出し、前記放射アンテナの入力側は、前記出射端面における前記高周波伝送用の導体に当接している。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記被覆絶縁体が、シート状に形成されている。
【0013】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明のアンテナ構造体と、筒状の導体により構成され、一端に前記放射アンテナが設けられると共に、該放射アンテナから他端側に延びる前記高周波伝送線路を収容するケーシングとを備えている高周波放射用プラグである。
【0014】
第5の発明は、第4の発明の高周波放射用プラグと、燃焼室が形成されて、前記燃焼室に高周波を放射可能に前記高周波放射用プラグが取り付けられた内燃機関本体とを備えている内燃機関である。
【0015】
第6の発明は、内部に高周波伝送用の導体が埋設された高周波伝送線路と、前記高周波伝送線路から供給された高周波を放射するための放射アンテナとが一体化されたアンテナ構造体の製造方法であって、セラミック粉末とバインダーとを含有するスラリー溶液から作成した複数のシート状成形体を積層して、前記高周波伝送用の導体が埋設された柱状の一次積層体を作成する第1積層ステップと、前記スラリー溶液から作成した被覆用成形体を前記一次積層体の端面に積層して、前記端面と前記被覆用成形体との間、又は前記被覆用成形体の内部に前記放射アンテナが埋設された二次積層体を作成する第2積層ステップと、前記二次積層体を焼成する焼成ステップとを備えている。
【0016】
第7の発明は、内部に高周波伝送用の導体が埋設された高周波伝送線路と、前記高周波伝送線路から供給された高周波を放射するための放射アンテナとが一体化されたアンテナ構造体の製造方法であって、セラミック粉末とバインダーとを含有するスラリー溶液から作成した複数のシート状成形体を積層して焼成することにより、前記高周波伝送用の導体が埋設された柱状の高周波伝送線路を作成する作成ステップと、前記放射アンテナが埋設されるように、前記作成ステップで作成した高周波伝送線路の端面をセラミック焼成体により被覆する被覆ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、高周波伝送線路の積層方向とは異なる方向に被覆絶縁体を積層することで、高周波伝送線路を構成するシート状絶縁体の間とは異なる場所に放射アンテナを設けることが可能になるので、高周波伝送線路の出射端面と被覆絶縁体との間、又は被覆絶縁体の内部に放射アンテナを設けている。このように放射アンテナを設ける場合は、高周波伝送線路を構成するシート状絶縁体の間に放射アンテナを設ける場合に比べて、アンテナ構造体を放射アンテナ側から透視した場合の放射アンテナの寸法が制約されにくい。従って、透視アンテナ面積を大きくすることができるので、高周波の放射エネルギー量を増大させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
本実施形態は、本発明に係る内燃機関10である。内燃機関10は、ピストン23が往復動するレシプロタイプの内燃機関である。内燃機関10は、内燃機関本体11と点火装置12と電磁波放射装置13と制御装置35とを備えている。内燃機関10では、点火装置12により混合気に点火して混合気を燃焼させる燃焼サイクルが繰り返し行われる。
−内燃機関本体−
【0021】
内燃機関本体11は、
図1に示すように、シリンダブロック21とシリンダヘッド22とピストン23とを備えている。シリンダブロック21には、横断面が円形のシリンダ24が複数形成されている。各シリンダ24内には、ピストン23が往復自在に設けられている。ピストン23は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフトに連結されている(図示省略)。クランクシャフトは、シリンダブロック21に回転自在に支持されている。各シリンダ24内においてシリンダ24の軸方向にピストン23が往復運動すると、コネクティングロッドがピストン23の往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する。
【0022】
シリンダヘッド22は、ガスケット18を挟んで、シリンダブロック21上に載置されている。シリンダヘッド22は、シリンダ24、ピストン23及びガスケット18と共に、円形断面の燃焼室20を区画する区画部材を構成している。燃焼室20の直径は、例えば、電磁波放射装置13が燃焼室20へ放射するマイクロ波の波長の半分程度である。
【0023】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、点火装置12の一部を構成する点火プラグ40が1つずつ設けられている。
図2に示すように、点火プラグ40では、燃焼室20に露出する先端部が、燃焼室20の天井面51(シリンダヘッド22における燃焼室20に露出する面)の中心部に位置している。点火プラグ40の先端部の外周は、その軸方向から見て円形である。点火プラグ40の先端部には、中心電極40a及び接地電極40bが設けられている。中心電極40aの先端と接地電極40bの先端部との間には、放電ギャップが形成されている。
【0024】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、吸気ポート25及び排気ポート26が形成されている。吸気ポート25には、吸気ポート25の吸気側開口25aを開閉する吸気バルブ27と、燃料を噴射するインジェクター29とが設けられている。一方、排気ポート26には、排気ポート26の排気側開口26aを開閉する排気バルブ28が設けられている。
−点火装置−
【0025】
点火装置12は、燃焼室20毎に設けられている。
図3に示すように、各点火装置12は、高電圧パルスを出力する点火コイル14と、点火コイル14から出力された高電圧パルスが供給される点火プラグ40とを備えている。
【0026】
点火コイル14は、直流電源(図示省略)に接続されている。点火コイル14は、制御装置35から点火信号を受けると、直流電源から印加された電圧を昇圧し、昇圧後の高電圧パルスを点火プラグ40の中心電極40aに出力する。点火プラグ40では、高電圧パルスが中心電極40aに印加されると、放電ギャップにおいて絶縁破壊が生じてスパーク放電が生じる。スパーク放電の放電経路には、放電プラズマが生成される。中心電極40aには、高電圧パルスとしてマイナスの電圧が印加される。
【0027】
なお、点火装置12は、放電プラズマに電気エネルギーを供給して放電プラズマを拡大させるプラズマ拡大部を備えていてもよい。プラズマ拡大部は、例えば、放電プラズマに高周波(例えばマイクロ波)のエネルギーを供給することによりスパーク放電を拡大させる。プラズマ拡大部によれば、希薄な混合気に対して着火の安定性を向上させることができる。プラズマ拡大部として、電磁波放射装置13を利用してもよい。
−電磁波放射装置−
【0028】
電磁波放射装置13は、
図3に示すように、電磁波発生装置31と電磁波切替器32と高周波放射用プラグ34とを備えている。電磁波放射装置13では、電磁波発生装置31と電磁波切替器32が1つずつ設けられ、燃焼室20毎に高周波放射用プラグ34が設けられている。
【0029】
電磁波発生装置31は、制御装置35から電磁波駆動信号(パルス信号)を受けると、その電磁波駆動信号のパルス幅の時間に亘ってマイクロ波を連続的に出力する。電磁波発生装置31では、半導体発振器がマイクロ波を生成する。なお、半導体発振器の代わりに、マグネトロン等の他の発振器を使用してもよい。
【0030】
電磁波切替器32は、1つの入力端子と、高周波放射用プラグ34毎に設けられた複数の出力端子とを備えている。入力端子は、電磁波発生装置31に電気的に接続されている。各出力端子は、対応する高周波放射用プラグ34の入力端子に電気的に接続されている。電磁波切替器32は、制御装置35により制御されて、複数の高周波放射用プラグ34の間で、電磁波発生装置31から出力されたマイクロ波の供給先を順番に切り替える。
【0031】
高周波放射用プラグ34は、略円柱状に形成されている。高周波放射用プラグ34は、
図4に示すように、セラミック63(電気絶縁体)に導体61,62が埋設されたセラミック構造体36と、そのセラミック構造体36を収容するケーシング37とを備えている。
【0032】
セラミック構造体36は、角柱状に形成されている。セラミック構造体36の断面形状は、その長さ方向に亘って一様である。セラミック構造体36の断面形状は、例えば正方形である。セラミック構造体36は、どの断面においても一辺の長さが等しく、1辺の長さが例えば1.5〜5mm(例えば3mm)である。セラミック構造体36は、高周波伝送線路60と放射アンテナ16と被覆絶縁体90とを備えたアンテナ構造体を構成している。
【0033】
高周波伝送線路60は、
図5に示すように、複数のシート状絶縁体66を積層して一体化することにより構成されている。高周波伝送線路60のセラミック63には、高周波伝送用の導体として、中心導体61及び外側導体62が埋設されている。中心導体61は、直線状の導体である。中心導体61は、高周波伝送線路60の全長に亘って、セラミック構造体36の軸心上に設けられている。一方、外側導体62は、一対の導体パターン62a,62bの間を、等間隔に筒状導体(バイアホール)で接続することにより構成されている(
図5において筒状導体の図示は省略している)。外側導体62は、その一端だけがセラミック構造体36の端面に露出している。高周波放射用プラグ34では、外側導体62が露出する高周波伝送線路60の一端面(入射端面)にマイクロ波の入力端子が設けられている。高周波伝送線路60では、入力端子から入力されたマイクロ波が外側導体62の外側へ漏れることなく放射アンテナ16へ伝送される。
【0034】
放射アンテナ16は、
図5に示すように、セラミック構造体36の内部を高周波伝送線路60の出射端面80に沿って延び、出射端面80から入力されたマイクロ波が放射される。放射アンテナ16は、高周波伝送線路60の出射端面80と矩形シート状の被覆絶縁体90とに挟まれている。放射アンテナ16は、棒状に形成されて、高周波伝送線路60の出射端面80に沿って曲がっている。具体的に、放射アンテナ16は、中心導体61の軸心を中心に矩形状に旋回する螺旋状に形成されている。放射アンテナ16は、高周波伝送線路60の出射端面80に積層して固定された被覆絶縁体90により被覆されている。放射アンテナ16は、高周波伝送線路60と被覆絶縁体90を一体化することで、セラミック構造体36に埋設されている。放射アンテナ16の全表面は、セラミック63により被覆されている。放射アンテナ16の中心部16aは、中心導体61の一端に当接している。
【0035】
セラミック構造体36では、
図4に示すように、一方の端面65と側面の一部が燃焼室20に露出する露出面となる。これらの露出面のうち、放射アンテナ16から放射されたマイクロ波の大部分が燃焼室20に放射されるセラミック構造体36の端面65が、主放射面65を構成している。主放射面65は、正面から透視した場合における放射アンテナ16の面積が露出面の中で最大となる面である。
【0036】
ケーシング37は、断面視において外周形状が円形で内周形状が矩形の筒状に形成されている。断面視において、ケーシング37の内周形状及び内周の辺長は、セラミック構造体36の外周形状及び外周の辺長と同じである。ケーシング37には、一端において主放射面65が露出して他端において高周波伝送線路60の入射端面が露出するように、セラミック構造体36が嵌め込まれている。ケーシング37の一端からは、セラミック構造体36の主放射面65側が突出している。
【0037】
ケーシング37の外径は、ケーシング37の軸方向において1箇所で変化している。ケーシング37の外周面には、1箇所だけ段差が形成されている。ケーシング37では、主放射面65が露出する先端側の外径が、前記入力端面がある基端側の外径よりも小さい。
【0038】
高周波放射用プラグ34は、主放射面65が燃焼室20に露出するように、シリンダヘッド22に取り付けられている。高周波放射用プラグ34は、シリンダヘッド22の取付孔に螺合されている。高周波放射用プラグ34は、高周波伝送線路60の入力端子が同軸ケーブル(図示省略)を介して電磁波切替器32の出力端子に接続されている。高周波放射用プラグ34では、高周波伝送線路60の入力端子からマイクロ波が入力されると、マイクロ波が高周波伝送線路60の外側導体62の内側を通過する。高周波伝送線路60を通過したマイクロ波は、放射アンテナ16から主放射面65を通って燃焼室20へ放射される。
【0039】
また、内燃機関本体11では、燃焼室20を区画する区画部材に、放射アンテナ16から燃焼室20へ放射されたマイクロ波に共振する複数の受信アンテナ52が設けられている。各受信アンテナ52は、円環状に形成されている。
図1に示すように、受信アンテナ52は、ピストン23の頂部に2つ設けられている。各受信アンテナ52は、ピストン23の頂面に形成された絶縁層56によりピストン23から電気的に絶縁され、電気的にフローティングの状態で設けられている。
−セラミック構造体の製造方法−
【0040】
図6及び
図7を用いてセラミック構造体36の製造方法を説明する。
【0041】
まず、第1ステップで、セラミック粉末とバインダーを混合してスラリーを作成する。そして、このスラリーをドクターブレード法等により成形して、シート状の成形体66,90(グリーンシート)を作成する。グリーンシート66,90は、高周波伝送線路60用に複数枚設け、放射アンテナ16用に1枚設けられる。
【0042】
次に、第2ステップで、高周波伝送線路60用の伝送用グリーンシート66に、高周波伝送用の導体として、導体層61,62a,62b及び筒状導体(バイヤホール)を設ける。また、放射アンテナ16用のアンテナ用グリーンシート90に、放射アンテナ16用の導体として、螺旋状の導体層16を設ける。導体層16,61,62a,62bは、メタライズインクを印刷塗布することにより形成する。
【0043】
次に、第3ステップで、複数の伝送用グリーンシート66を積層密着させた角柱状の一次積層体105を作成する。第3ステップは第1積層ステップを構成する。
【0044】
次に、第4ステップで、一次積層体105のうち高周波伝送線路60の出射端面80となる箇所に、アンテナ用グリーンシート90を積層密着させて二次積層体106を作成する。第4ステップは第2積層ステップを構成する。
【0045】
次に、第5ステップで、二次積層体106を所定の温度で焼成し、伝送用のグリーンシート66及びアンテナ用グリーンシート90を一体化する。これにより、セラミック構造体36が完成する。アンテナ用グリーンシート90は被覆絶縁体90となる。第5ステップは焼成ステップを構成している。
【0046】
なお、実施形態では、アンテナ用グリーンシート90に放射アンテナ16用の導体となる導体層16を形成したが、一次積層体105の端面に放射アンテナ16用の導体となる導体層16を印刷形成し、その上から、導体層がないアンテナ用グリーンシート90を積層密着させて二次積層体106を作成してもよい。
−制御装置の動作−
【0047】
制御装置35の動作について説明する。制御装置35は、各燃焼室20に対して、1回の燃焼サイクルに、点火装置12に混合気への点火を指示する第1動作と、混合気の着火後に電磁波放射装置13にマイクロ波の放射を指示する第2動作とを行う。
【0048】
具体的に、制御装置35は、ピストン23が圧縮上死点の手前に位置する点火タイミングに第1動作を行う。制御装置35は、第1動作として点火信号を出力する。
【0049】
点火装置12では、点火信号を受けると、上述したように、点火プラグ40の放電ギャップにおいてスパーク放電が生じる。混合気は、スパーク放電により着火する。混合気が着火すると、燃焼室20の中心部の着火位置からシリンダ24の壁面へ向かって火炎が広がる。
【0050】
制御装置35は、混合気が着火した後に、例えば火炎伝播の後半期間の開始タイミングに第2動作を行う。制御装置35は、第2動作として電磁波駆動信号を出力する。
【0051】
電磁波放射装置13は、電磁波駆動信号を受けると、上述したように、放射アンテナ16からマイクロ波の連続波(CW)を放射する。マイクロ波は、火炎伝播の後半期間に亘って放射される。なお、電磁波駆動信号の出力タイミング及びパルス幅は、2つの受信アンテナ52が設けられた領域を火炎が通過する期間に亘ってマイクロ波が放射されるように設定すればよい。
【0052】
各受信アンテナ52では、マイクロ波が共振する。2つの受信アンテナ52の近傍では、火炎伝播の後半期間の間ずっと、燃焼室20において相対的に電界強度が強い強電界領域が形成される。火炎の伝播速度は、その火炎が強電界領域を通過する際にマイクロ波のエネルギーを受けて増大する。
【0053】
なお、マイクロ波のエネルギーが大きい場合には、強電界領域においてマイクロ波プラズマが生成される。マイクロ波プラズマの生成領域では活性種(例えば、OHラジカル)が生成される。強電界領域を通過する火炎の伝播速度は、活性種により増大する。
−実施形態の効果−
【0054】
本実施形態では、高周波伝送線路60の積層方向とは異なる方向に被覆絶縁体90を積層することで、高周波伝送線路60を構成するシート状絶縁体66の間とは異なる場所に放射アンテナ16を設けることが可能になるので、高周波伝送線路60の出射端面80と被覆絶縁体90との間、又は被覆絶縁体90の内部に放射アンテナ16を設けている。このように放射アンテナ16を設ける場合は、高周波伝送線路を構成するシート状絶縁体の間に放射アンテナを設ける場合に比べて、アンテナ構造体を放射アンテナ16側から透視した場合の放射アンテナ16の寸法が制約されにくい。従って、透視アンテナ面積を大きくすることができるので、マイクロ波の放射エネルギー量を増大させることができる。そして、放射アンテナ16の大きさに対してマイクロ波のエネルギーが大きい場合における反射波のエネルギー量が低減される。
−実施形態の変形例−
【0055】
変形例では、セラミック構造体36の製造方法が実施形態とは異なる。なお、第1ステップ及び第2ステップは同じであるため説明は省略する。
【0056】
第3ステップでは、複数の伝送用グリーンシート66を積層密着して焼成することにより、高周波伝送用の導体として、導体層61,62a,62b及び筒状導体(バイヤホール)が埋設された角柱状の高周波伝送線路60を作成する。第3ステップは作成ステップを構成する。次に、第4ステップで、アンテナ用グリーンシート90を焼成して板状のセラミック焼成体を作成する。
【0057】
次に、第5ステップで、放射アンテナ16が埋設されるように、作成ステップで作成した高周波伝送線路60の端面を第4ステップのセラミック焼成体により被覆し、接着剤で固定する。第5ステップは被覆ステップを構成している。
《その他の実施形態》
【0058】
前記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0059】
前記実施形態において、一枚のグリーンシートに、高周波伝送用の導体及び放射アンテナ16用の導体を別々の領域に設け、これらの領域の境界でグリーンシートを折り曲げることにより、伝送用グリーンシート66と被覆用グリーンシート67を構成してもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、放射アンテナ16が矩形に旋回する螺旋状に形成されていたが、放射アンテナ16が円形に旋回する螺旋状に形成されていてもよい。また、放射アンテナ16は、主放射面65を正面から透視した場合に、複数回に亘って往復するように折れ曲がった棒状のアンテナであってもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、中心導体61が放射アンテナ16に当接しているが、中心導体61が放射アンテナ16に容量結合されていてもよい。
【0062】
また、前記実施形態において、高周波放射用プラグ34を内燃機関本体11に複数設けてもよい。
【0063】
また、前記実施形態において、高周波伝送線路60の外側導体62を省略してもよい。その場合、高周波伝送線路60では、中心導体61の外周面とケーシング37の内周面との間をマイクロ波が伝送される。
【0064】
また、前記実施形態において、高周波伝送線路60の中心導体61を省略して、高周波伝送線路60を導波管としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態において、被覆絶縁体90を複数枚のシート状絶縁体により構成してもよく、その場合にシート状絶縁体の間に放射アンテナ16を埋設してもよい。また、その場合に、被覆絶縁体90における放射アンテナ16よりも高周波伝送線路60側のシート状絶縁体に放射アンテナ16と中心導体61とを電気的に接続するための導体を埋設してもよい。
【0066】
また、前記実施形態において、内燃機関10が他のタイプ(ディーゼルエンジン、エタノールエンジン、ガスタービン等)のものであってもよい。また、内燃機関10が航空機のエンジンである場合にエンジンの失火時に、点火装置12および電磁波放射装置13を用いて、スパーク放電によるプラズマをマイクロ波により拡大したマイクロ波プラズマを生成して再着火を行ってもよい。