特許第6086464号(P6086464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6086464
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ウェッジ案内手段及び巻線装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/10 20060101AFI20170220BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   H02K15/10
   H02K15/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-559375(P2016-559375)
(86)(22)【出願日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】JP2016066346
【審査請求日】2016年9月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510054049
【氏名又は名称】E−Tec株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】細野聖二
(72)【発明者】
【氏名】稲葉洋二
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−042959(JP,A)
【文献】 特開2010−279218(JP,A)
【文献】 特開2007−325331(JP,A)
【文献】 特開平04−008148(JP,A)
【文献】 特開2004−328894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/10
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアのスロットに集中巻・直巻方式によりコイル線を巻線させてから、略T字形状をなすウェッジを案内させるウェッジ案内手段において、
前記コイル線を前記スロットに巻線させる段階から、前記ウェッジを挿入させる段階まで、各々の磁極ティースの両端面と各々のコイルエンド部の内方湾曲部とに接するように配設される一対のウェッジ案内手段であって、
前記磁極ティースの端面と前記コイルエンド部の内面に接する基部と、前記基部から立設されたコイルガイド壁部とを含み、
前記基部は、前記磁極ティースのウェブ部の端面に沿って内方から外方に亘るように延び、
前記コイルガイド壁部は、前記磁極ティースのフランジ部の端面に沿って形成されると共に、その高さは前記コイルエンド部がなす高さよりも高く、その幅は前記フランジ部の幅と同じ幅とされ、
少なくとも一方の前記コイルガイド壁部の外径側の面が巻線されたコイル線の内径側に接して支承し、前記コイルガイド壁部の内径側の面と、予めスロット内面に配設されている絶縁紙の前記フランジ部に沿う外径側の面との間に隙間が形成され、前記隙間に前記ウェッジのフランジ部が挿通可能とされ、
前記コイルガイド壁部の外径側には、前記磁極ティースの端面から突出される前記絶縁紙及び前記ウェッジの突出部の寸法よりも大きな欠損部を有し、
前記突出部に前記コイルガイド壁部が干渉されないで、前記ウェッジ案内手段が前記ステータコアの内部空間の中に引き抜き可能とされている、
ことを特徴とするウェッジ案内手段。
【請求項2】
前記一対のウェッジ案内手段のうち、少なくとも一方のウェッジ案内手段が、前記コイルガイド壁部の両側の側方部に、軸方向に貫通されるウェッジ案内溝を有し、
前記ウェッジの両側方のフランジ部が、隣り合って配設されたウェッジ案内手段の向かい合う各々の前記ウェッジ案内溝に案内されて、前記隙間に挿通される、
ことを特徴とする請求項1に記載のウェッジ案内手段。
【請求項3】
前記一対のウェッジ案内手段のうち、少なくとも一方のウェッジ案内手段が、前記コイルガイド壁部の両側方に、軸方向に沿うウェッジ案内片を有し、
前記ウェッジの両側方のフランジ部が、隣り合って配設されたウェッジ案内手段の向かい合う各々の前記ウェッジ案内片に案内されて、前記隙間に挿通される、
ことを特徴とする請求項1に記載のウェッジ案内手段。
【請求項4】
前記コイルガイド壁部の周方向の天辺の外縁が緩やかな曲線とされている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のウェッジ案内手段。
【請求項5】
前記コイルガイド壁部の外径側の先方が、外径側に傾くように形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のウェッジ案内手段。
【請求項6】
前記基部の外方部が、ステータコアの外面部よりも外方に突出されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のウェッジ案内手段。
【請求項7】
前記コイルガイド壁部の内径側に、前記磁極ティースの内径側の面に沿う垂設部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のウェッジ案内手段。
【請求項8】
集中巻・直巻式のコイル巻線装置において、
請求項7に記載のウェッジ案内手段とステータコアとを移送させる移送手段を含み、
前記移送手段は、前記垂設部を内径側から押圧して、前記ウェッジ案内手段を磁極ティースの内径側の面に密着させて一体にした状態で、
前記ウェッジ案内手段が、前記ステータコアに着脱される位置と前記ステータコアに前記コイル線を巻線させる位置との間で移送可能とされている、
ことを特徴とするコイル巻線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機用ステータコアにコイル線を巻線させると共にウェッジを挿入させる際に使用されるウェッジ案内手段及びこれを備えた巻線装置に関する。より詳細には、電動機用ステータコアの各々の磁極ティースに集中巻・直巻方式によりコイル線を巻線させる際に、電動機用ステータコアを移動しないでも、コイル線を巻線させると共にウェッジを挿入させることを可能とし、スロット端面から突出される巻線エンド部をなすコイル線がスロット隙間から絶縁紙の外に漏れることがないようにする、ウェッジ案内手段及びこれが着脱可能とされた巻線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機用ステータコアのスロットにコイル線を巻線させる方法として、コイル挿入方式と、直巻方式が知られている。コイル挿入方式によれば、予め巻枠の周りにコイル線を巻線してコイル束を形成させておき、隣り合う磁極ティースに挟まれたスロット隙間からコイル束を圧入させるようにしている。直巻方式によれば、コイル線送出し部にコイル単線を送出させて、磁極ティースの周りにコイル線を循環させて巻線している。また、直巻方式は、複数の磁極ティースを跨いでコイル線を巻き回す分布巻及び各々の磁極ティースの周りにコイル線を巻き回す集中巻のいずれにも適用されている。本発明は、集中巻・直巻方式に適用されるウェッジ案内手段に関する。
【0003】
特許文献1には、分布巻・直巻方式に適用されるステータコアの端面に当接される巻線ガイド部材、すなわち巻線用フォーマの技術を含むウェッジ挿入装置の技術が開示されている。特許文献1に示されたウェッジ挿入装置は、直巻方式により巻線させたステータコアを、その両端面に一対の巻線ガイド部材を装着させた状態のまま、基台の所定の位置に移動させる。そして、コイルエンド部に爪部を引っ掛けて、スロット溝近傍のコイルエンド部を外径方向に引き寄せ、コイルエンド部と磁極ティース内面との間に隙間をあけて、ウェッジを挿入させている。
【0004】
特許文献1の技術によれば、ステータコアにコイル線を巻線させてから、ウェッジ挿入機の基台の別の位置に配置替えさせて、爪部でコイルエンド部を引き寄せるとしており、配置替えの際にコイル線の端部を絡ませる可能性があった。また、爪部でコイルエンド部を引っ掛けて外方に移動させる際に、コイル線の並び状態を変える可能性があると共に、コイル線の絶縁被覆を傷つける可能性があるという課題もあった。
【0005】
特許文献2には、集中巻・直巻方式を採用する場合に、コイルエンド部の内面に接する巻線ガイド部材すなわち内面スペーサを設けておき、巻線後に内面スペーサをステータコアの外径方向に引き抜く技術が開示されている。特許文献3の技術によれば、コイル線を巻線させる際に、コイル線の内面を内面スペーサが支持するため、磁極ティースの内面と、コイル線とを絶縁させる略コ字断面形状の絶縁紙の突出部が内側に倒れたり、折れ曲がることがないとされている。これにより、特別な形状の樹脂成形の絶縁物、すなわちインシュレータを配設させる必要がないとされている。
【0006】
しかし、特許文献2の技術によっても、巻線がスロットの外方から内方に移動した段階の巻線終了間際に、コイル線の一部がスロット隙間から絶縁紙の外に漏れることがあり、巻線不良となることがあった。更に、コイル線の密度が高くなると、コイルエンド部の端部が内径側に傾きやすくなり、ステータコアの内径側に配置され、ステータコアとコイル線との間を絶縁させるウェッジの挿入が困難になるという課題があった。
【0007】
特許文献3には、従来、ステータコアの端面とコイルとの間に取り付けていたインシュレータを使用しなくても済むコイル線の巻線技術が開示されている。特許文献3の技術は、特許文献2と同様に、コイルエンド部の内面に接するスペーサを設ける技術であり、集中巻・直巻方式を採用する場合に適用される。特許文献3に記載の技術によれば、巻線の際に、ステータコアの端面とコイル線との間にスペーサを配置しておき、巻線後に前記スペーサを外径側に抜き取るとされている。
【0008】
前記スペーサは、内径側にコイル線が滑り出さないようにする起立部を設けたスペーサであり、巻線後に起立部の天部をステータコア端面に近づけることが可能とされている。そして、起立部をコイルエンド部の下に潜らせて、磁極ティースの端面に沿う長手方向に沿って、スペーサを外径側に引き抜くようにしている。
【0009】
しかし、コイルエンド部とステータコア端面との内法距離が短く、内法距離に制約されるため起立部の高さは高くできない。そのため、コイル線の巻線数が多くなり、コイルエンド部の高さが高くなると、コイルエンド部の外面に近いコイル線が起立部を乗り越えて、絶縁紙の外に漏れることがあるという課題があった。
【0010】
また特許文献3に記載の技術によれば、コイル線の巻線の後に、ステータコアすなわち固定子を支持台に固定して、コイル線と磁極とを絶縁する絶縁紙すなわちウェッジを手作業又は自動作業によって挿入させればよいとされている。しかし、特許文献2と同様に、コイル線の密度が高くなると、コイル線が内径側に寄り易く、ウェッジの挿入抵抗が大きくなり、コイル線を巻線してからウェッジを挿入することが困難になるという課題があった。また、配置替の際にコイル線の端部を絡ませたり、変形させる可能性があるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
特許文献1:特開平5−22906号公報
特許文献2:特開2000−166158号公報
特許文献3:特開2004−328894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本願の発明者は、集中巻・直巻方式によりコイル線を巻線させる際に、コイル線の巻線からウェッジの挿入の段階まで巻線装置に電動機用ステータコアを保持させた状態のままとして、コイル線がスロット溝から絶縁紙の外に漏れることがないように巻線可能であると共に、断面が略T字形状のウェッジをスロット内に確実に挿入させることを可能であるウェッジ案内手段及びこれが着脱可能とされているコイル巻線装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の発明は、ステータコアのスロットに集中巻・直巻方式によりコイル線を巻線させてから、略T字形状をなすウェッジを案内させるウェッジ案内手段において、前記コイル線を前記スロットに巻線させる段階から、前記ウェッジを挿入させる段階まで、各々の磁極ティースの両端面と各々のコイルエンド部の内方湾曲部とに接するように配設される一対のウェッジ案内手段であって、前記磁極ティースの端面と前記コイルエンド部の内面に接する基部と、前記基部から立設されたコイルガイド壁部とを含み、前記基部は、前記磁極ティースのウェブ部の端面に沿って内方から外方に亘るように延び、前記コイルガイド壁部は、前記磁極ティースのフランジ部の端面に沿って形成されると共に、その高さは前記コイルエンド部がなす高さよりも高く、その幅は前記フランジ部の幅と同じ幅とされ、少なくとも一方の前記コイルガイド壁部の外径側の面が巻線されたコイル線の内径側に接して支承し、前記コイルガイド壁部の内径側の面と、予めスロット内面に配設されている絶縁紙の前記フランジ部に沿う外径側の面との間に隙間が形成され、前記隙間に前記ウェッジのフランジ部が挿通可能とされ、前記コイルガイド壁部の外径側には、前記磁極ティースの端面から突出される前記絶縁紙及び前記ウェッジの突出部の寸法よりも大きな欠損部を有し、前記突出部に前記コイルガイド壁部が干渉されないで、前記ウェッジ案内手段が前記ステータコアの内部空間の中に引き抜き可能とされていることを特徴としている。
【0014】
ウェッジ案内手段は、ステータコアの磁極ティースの両端面に接するように対をなして、磁極ティースの数と同数が配置されるが、各々が同一形状をなしている必要はない。各々のウェッジ案内手段には、基部とコイルガイド壁部が含まれている。しかし予めスロット内に配設されている絶縁紙と巻線されたコイル線との間に隙間をなすウェッジ案内手段は、ウェッジをスロット内に挿入させる挿入口側に配設されればよい。なお、各々のウェッジ案内手段を同一形状としてもよいことは勿論のことである。
【0015】
磁極ティースの端面に沿って配設されたウェッジ案内手段は、コイル線の巻線の段階からウェッジを挿入させるまでの間、磁極ティースの端面とコイルエンド部の内方湾曲部とに接して配設され、この工程の間にステータコアが移動されない。これによりコイル線の端部が絡み又は損傷されることがない。
【0016】
コイルガイド壁部の高さは、巻線されるコイル線がなすコイルエンド部の高さより高くされているため、コイル線がスロットの隙間から絶縁紙の外に漏れることがない。コイルガイド壁部の高さがコイルエンド部の高さより高いウェッジ案内手段は、ウェッジ挿入後にステータコアの内方に向けて引き抜かれるようにして、ステータコアから脱離されればよい。
【0017】
また、少なくとも一方のウェッジ案内手段が、予めスロット内に配設されている絶縁紙と巻線されたコイル線との間に隙間をなしている。この絶縁紙は、ステータコアがコイル巻線装置に装着される前に予め装嵌されるのが好適であるが、コイル巻線装置において、コイル巻線に先立って装嵌させるようにしてもよい。
【0018】
コイル線が巻線されてから、前記隙間にウェッジが挿入される。ウェッジは一枚の樹脂性の絶縁紙が略T字形状の断面をなすように折り曲げられて形成される。二重に折り曲げられたウェッジのウェブ部は、一つのスロット内に隣り合うように巻線された2つのコイル束の境界面に、一方のコイルエンド部から挿入される。また、前記ウェブ部の端部から両側方に広がった、ウェッジのフランジ部は、予め装嵌されている樹脂性の絶縁紙とスロット内を貫通して延びているコイル線とに沿って、スロット内に挿入される。挿入されるウェッジのいずれの面も、樹脂性の絶縁紙又はコイル線に沿って、滑りながら挿入され、ウェッジは座屈されないで確実に所定の位置まで挿入される。
【0019】
前記隙間は、コイルガイド壁部の側方部に、軸方向に貫通するようにスリットが形成されている場合には、スリットをなす外側のコイルガイド壁部の内径側の面と、予めスロット内に配設されている絶縁紙の外径側の面がなす隙間であればよい。また、コイルガイド壁部の側方部に、軸方向に貫通するようにスリットが形成されていない場合には、前記隙間は、コイルガイド壁部の内径側の面と、予めスロット内に配設されている絶縁紙の外径側の面がなす隙間であればよい。
【0020】
コイルガイド壁部が、コイル線が内径側に漏れることを防止し、予めスロット内に配設されている絶縁紙と巻線されたコイル線との間にウェッジが滑るように挿入される。コイル線が巻線されウェッジが挿入されてから、ステータコアがコイル巻線装置から取り外される。これにより、絶縁紙の外に漏れないようにコイル線を巻線させると共に、座屈・変形させないようにウェッジを挿入することが可能となるという有利な効果を奏する。
【0021】
また、ウェッジ案内手段は、前記コイルガイド壁部の外径側には、前記磁極ティースの端面から突出される前記絶縁紙及び前記ウェッジの突出部の寸法よりも大きな欠損部を有し、前記突出部に前記コイルガイド壁部が干渉されないで、前記ウェッジ案内手段が前記ステータコアの内部空間の中に引き抜き可能とされていることを特徴としている。
【0022】
コイルガイド壁部の外径側は、挿入されたウェッジの突出部の寸法、すなわち幅及び高さよりも、大きな欠損部を有している。これにより、絶縁性を高くするため、ウェッジをステータコア端面よりも突出するように挿入させた状態としても、ウェッジ案内手段を絶縁紙の外に引き抜くようにして取り外すことが可能となる。
【0023】
本発明の第2の発明のウェッジ案内手段は、第1の発明において、前記一対のウェッジ案内手段のうち、少なくとも一方のウェッジ案内手段が、前記コイルガイド壁部の両側の側方部に、軸方向に貫通されるウェッジ案内溝を有し、前記ウェッジの両側方のフランジ部が、隣り合って配設されたウェッジ案内手段の向かい合う各々の前記ウェッジ案内溝に案内されて、前記隙間に挿通されることを特徴としている。
【0024】
一対のウェッジ案内手段のうち、ウェッジをステータコアに挿入させる挿入口側のウェッジ案内手段に、ウェッジ案内溝が形成されていればよい。略T字形状のウェッジのフランジ部は、剛性が低い樹脂性の薄板なので座屈し易いが、コイルエンド部に妨げられないようにウェッジ案内溝に案内されて、予めスロット内に配設されている絶縁紙と巻線されたコイル線との間に挿入されるため、座屈しにくくなる。これにより、ウェッジが挿入困難であった集中巻・直巻方式の巻線装置においても、ウェッジを座屈・変形させず、引っ掛からないように、確実に挿入させることができる。
【0025】
本発明の第3の発明のウェッジ案内手段は、第1の発明において、前記一対のウェッジ案内手段のうち、少なくとも一方のウェッジ案内手段が、前記コイルガイド壁部の両側方に、軸方向に沿うウェッジ案内片を有し、前記ウェッジの両側方のフランジ部が、隣り合って配設されたウェッジ案内手段の向かい合う各々の前記ウェッジ案内片に案内されて、前記隙間に挿通されることを特徴としている。第3の発明によっても、ウェッジが挿入困難であった集中巻・直巻方式の巻線装置においても、ウェッジを座屈・変形させず、引っ掛からないように、確実に挿入させることができる。
【0026】
本発明の第4の発明のウェッジ案内手段は、第1から第3の発明において、前記コイルガイド壁部の周方向の天辺の外縁が緩やかな曲線とされていることを特徴としている。コイルガイド壁部の周方向の天辺の外縁が緩やかな曲線とされていることにより、コイル線送出し部を天辺の外縁がなす緩やかな曲線に沿って、滑らかに駆動させることが可能になる。これにより、コイル線に偏った張力を発生させにくく、コイル線を変形・傷つけにくくなる。
【0027】
本発明の第5の発明のウェッジ案内手段は、第1から第4の発明において、前記コイルガイド壁部の外径側の先方が、外径側に傾くように形成されていることを特徴としている。第5の発明によれば、巻線が終了した段階で、コイルエンド部は外方に傾斜したコイルガイド壁部の外径側の面に沿って、先方が外方に反った状態に巻き上がる。そして、ウェッジ案内手段を引き抜いた後でも、コイルエンド部の形状を外方に傾いた形状のまま維持しやすい。
【0028】
本発明の第6の発明のウェッジ案内手段は、第1から第5の発明において、前記基部の外方部が、ステータコアの外面部よりも外方に突出されていることを特徴としている。ウェッジ案内手段の基部の外方部が、ステータコアの外面よりも突出されているため、外方部を内径側に押圧して、コイルガイド壁部をステータコアの内面から離間させることが容易になる。第6の発明によれば、ステータコアの内面からコイルガイド壁部が離間させて隙間があけ易くなることにより、ウェッジ案内手段を引き抜くことが容易となる。
【0029】
本発明の第7の発明のウェッジ案内手段は、第1から第6の発明において、前記コイルガイド壁部の内径側に、前記磁極ティースの内径側の面に沿う垂設部が形成されていることを特徴としている。第8の発明によれば、垂設部の外径側の面が磁極ティースの内径側の面に当接されることにより、ウェッジ案内手段の位置決めが容易とされ、ウェッジ案内手段とステータコアを一体とすることが容易である。
【0030】
本発明の第8の発明は、集中巻・直巻式コイル巻線装置において、第7の発明のウェッジ案内手段とステータコアとを移送させる移送手段を含み、前記移送手段は、前記垂設部を内径側から磁極ティースの内径側の面に押圧して、前記ウェッジ案内手段と前記ステータコアとを一体化させた状態で、前記ウェッジ案内手段が前記ステータコアに着脱される位置と、前記ステータコアに前記コイル線を巻線させウェッジを挿入させる位置との間で移送可能とされていることを特徴としている。第8の発明によれば、一つのコイル巻線装置において、コイル線を巻線させウェッジを挿入させる位置以外の別の位置を、ウェッジ案内手段とステータコアを一体化及び分離させる位置とできる。これにより、一つのコイル巻線装置により、集中巻・直巻式方式でコイル線を漏れないように巻線させると共に、絶縁不良がないように確実にウェッジを挿入することが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
・本発明の第1の発明によれば、絶縁紙の外に漏れないようにコイル線を巻線させると共に、座屈・変形させないようにウェッジを挿入することが可能となるという有利な効果を奏する。また、コイル線の巻線からウェッジの挿入までの工程の間にステータコアが移動されず、コイル線の端部が絡み又は損傷されることがない。
・また、絶縁性を高くするため、ウェッジをステータコア端面よりも突出するように挿入させた状態としても、ウェッジ案内手段を絶縁紙の外に引き抜くようにして取り出すことが可能となる。
【0032】
・本発明の第2又は第3の発明によれば、ウェッジが挿入困難であった集中巻・直巻方式の巻線装置においても、ウェッジを座屈・変形させず、引っ掛からないように、確実に挿入させることができる。
・本発明の第4の発明によれば、コイル線に偏った張力を発生させにくく、コイル線を変形・傷つけにくくなる。
【0033】
・本発明の第5の発明によれば、巻線されたコイル線が内径側に近づくことがなく、ウェッジ案内手段を引き抜いた後でも、コイルエンド部の形状を外方に傾いた形状のまま維持しやすい。
・本発明の第6の発明によれば、ステータコアの内面からコイルガイド壁部が離間させ易くなることにより、ウェッジ案内手段を引き抜くことが容易となる。
・本発明の第7の発明によれば、垂設部の外径側の面が磁極ティースの内径側の面に当接されることにより、ウェッジ案内手段の位置決めが容易とされ、ウェッジ案内手段とステータコアを一体とすることが容易である。
・本発明の第8の発明によれば、一つのコイル巻線装置により、集中巻・直巻式方式でコイル線を漏れないように巻線させると共に、絶縁不良がないように確実にウェッジを挿入することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】斜視図によるウェッジ案内手段の説明図(実施例1)。
図2】ウェッジ案内手段の拡大説明図(実施例1)。
図3】平面図、断面図によるウェッジ案内手段の説明図(実施例1)。
図4】コイル巻線工程を説明する説明図(実施例1)。
図5】コイル巻線工程を説明する説明図(実施例1)。
図6】コイル巻線工程を説明する説明図(実施例1)。
図7】コイル巻線工程を説明する説明図(実施例1)。
図8】コイル巻線工程を説明する説明図(実施例1)。
図9】コイル巻線工程を説明する説明図(実施例1)。
図10】移送手段の説明図(実施例1)。
図11】ウェッジ案内手段の拡大説明図(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
コイル線が絶縁紙の外に漏れないようにガイドするコイルガイド壁部10を設け、コイルガイド壁部の内径側と、予めスロット内面に配設されている絶縁紙の磁極ティースのフランジ部に沿う外径側の面との間に隙間30をあけるようにし(図2(D)図,図11(D)図参照)、ウェッジ40のフランジ部41を挿通させるようにし、ステータコア50を移動しないでも、ステータコアの磁極ティースに集中巻・直巻方式によりコイル線を巻線させてから、略T字形状をなすウェッジ40を座屈させないで確実にスロット51に挿入させることを可能にした。
【実施例1】
【0036】
実施例1では、ウェッジ案内手段1をなすコイルガイド壁部10の両側の側方部に、軸方向に貫通されるウェッジ案内溝11を有し、隣り合って配設されたウェッジ案内手段1の前記ウェッジ案内溝11に、ウェッジ40の側方のフランジ部41を案内させるウェッジ案内手段1と、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50とを移送させる移送手段90(図10参照)を含んだ集中巻・直巻式のコイル巻線装置を、図1から図10を参照して説明する。
【0037】
図1はウェッジ案内手段1がなす作用を、斜視図により説明する説明図である。図2はウェッジ案内手段1の拡大説明図である。図3は平面図、断面図により、ウェッジ案内手段1の構成を説明する説明図である。図4から図9はコイル巻線及びウェッジ挿入工程を説明する説明図である。図10は移送手段90の構成を説明する説明図である。
【0038】
理解を容易にするために、図1では絶縁紙を装着させた一つのスロット51に、図1において下方からウェッジ40を挿入させる状態を説明する見上げ斜視図を示している。図1を参照して、本願発明の要旨を予め説明する。ステータコアの磁極ティース52の端面に接して一対のウェッジ案内手段1が配設される。ウェッジ案内手段1は磁極ティースの端面に接する基部20と、基部20から立設されたコイルガイド壁部10とからなっている(図2参照)。
【0039】
図1においては、コイル線がなすコイル束60を細く表示し、挿入される直前のウェッジを着色し、隣り合う2つのウェッジを実線と破線で示している。コイル線がなすコイル束60は、一つの磁極ティース52の周囲に巻線される。コイル線がなすコイル束60のコイルエンド部61の高さよりも、コイルガイド壁部10の高さは高く、コイルガイド壁部10の幅は磁極ティースのフランジ部53の幅と同じ幅とされている。ウェッジ案内手段の基部20は、磁極ティース52の端面とコイルエンド部61の内面に接し、ステータコア50の外面に突出する長さとされている。
【0040】
コイルガイド壁部10の両側の側方部には、軸方向に貫通されるウェッジ案内溝11,11が形成されている。隣り合うウェッジ案内手段1,1(図1においては一つのウェッジ案内手段のみを示している。)の向かい合うウェッジ案内溝11に、断面形状が略T字形状をなすウェッジの側方のフランジ部41が案内される。コイル線が巻線されてから、予めスロット内面に配設されている絶縁紙54とコイル線がなすコイル束60との間に、図に示す矢印の方向にウェッジのフランジ部41が挿入される(図2(D)図参照)。なお、二つ折りにされたウェッジのウェブ部42は、一つのスロット51に巻線された隣り合う2つのコイル束60,60の境界面に沿って挿入される。
【0041】
ここで、図2から図3を参照して、ウェッジ案内手段1の構成と保持方法を詳細に説明する。図2(A)図はウェッジ案内手段1の見上げ斜視図を示し、図2(B)図は平面図を示し、図2(C)図は図2(B)図のA−A位置断面図を示し、図2(D)図は図2(B)図のB−B位置断面図によりウェッジ40の挿入方法を示す説明図である。
【0042】
コイルガイド壁部10には、磁極ティース52の内径側に接するように壁形状をなす垂設部12が形成されている(図2(C)図参照)。垂設部は壁形状に限定されず、軸形状であってもよい。コイルガイド壁部10の両側の側方部には、ウェッジを案内させるウェッジ案内溝11が貫通されている(図2(B)図参照)。ウェッジ案内溝の外径側のコイルガイド壁部13(図2(B)図参照)は、ステータコア端面から突出される絶縁紙(ウェッジを含む)の部分43が干渉しないように欠損部14を有している(図2(D)図黒塗り部)。コイルガイド壁部の外径側の面15は、外径側に傾斜するように形成されている(図2(C)図参照)。
【0043】
ウェッジ案内溝11は、予めスロット内面に配設されている絶縁紙54の磁極ティースのフランジ部に沿う面の外径側に位置し、ウェッジ案内溝1に案内されたウェッジのフランジ部41は、コイル束60と前記絶縁紙54との間に挿入される(図2(D)図参照)。ウェッジ案内手段1には、ステータコア50の外径位置に適合するように、貫通孔21が形成されている。この貫通孔21に、後述する位置決め突起85(図3(B)参照)が挿通されて、ウェッジ案内手段の垂設部12と位置決め突起85とでステータコア50を挟むようにして位置固定させる。
【0044】
コイル線は、軸部に接する側から順に重ねられるようにして巻線され、コイルガイド壁部の傾斜された外径側の面15に支えられてコイル束60をなす。コイル線はコイルガイド壁部の外径側の面15に遮られて、ステータコアの中央部空間の中に漏れることがない。また、ウェッジ案内手段1を内径側に抜き取っても、コイルエンド部61の外方部が内径側に倒れることがない。
【0045】
ここで、図3図4を参照して、ステータコアに複数の対からなるウェッジ案内手段1を固定させる固定手段の構成を説明する。図3(A)図はステータコア50に9対のウェッジ案内手段1が固定された状態の平面図を示し、図3(B)図は断面図を示している。図3(A)図は図3(B)図のB−B位置平面図を示し、図3(B)図は図3(A)図のA−A位置断面図を示している。図4(A)図から図4(C)図は、ステータコア組立手段の保持基盤70にステータコア50を保持させて、固定手段により9対のウェッジ案内手段とステータコア50とを組み立てる工程を示す図である。
【0046】
理解を容易にするために、図1に示した9つのスロット51を有するステータコア50にウェッジ案内手段1を固定する例により説明するが、この例に限定されないことは勿論のことである。9つの磁極ティース52に対応した9対のウェッジ案内手段1は、磁極ティース52の端面に接して、ステータコア50を上下から挟むように保持する一対の保持手段に挟まれて固定される。
【0047】
上方保持手段81と下方保持手段82は、いずれも略円環形状をなし、内周には9つのウェッジ案内手段1を格納させる9つの内周陥没部83が形成され、外周には保持手段と共にステータコアを保持基盤で固定できるように、ステータコアの一部を外方に露出させる3か所の外周陥没部84が形成されている。下方保持手段82の各々の内周陥没部83には、ウェッジ案内手段の貫通孔21に挿通される位置に、位置決め突起85が形成されている。上方保持手段の各々の内周陥没部83にも、反転させて配置させる各々のウェッジ案内手段1の貫通孔21に挿通されるように、位置決め突起85が形成されている。また、上方保持手段81と下方保持手段82の周方向には、向かい合う位置に3か所の軸体係止孔86が形成されている(図3参照)。
【0048】
まず、保持基盤70の内径側に突出されている支持片71に、下方保持手段82の外周陥没部84の位置をあわせ、下方保持手段82を載置させる。次に、下方保持手段82に形成されている位置決め突起85に、ウェッジ案内手段の貫通孔21を挿通させるようにして、下方保持手段82の各々の内周陥没部83に、下方の各々のウェッジ案内手段1を格納させる。そして、ウェッジ案内手段1の垂設部12の外径側の面に磁極ティースの内径側の面を当接させるようにして、ステータコア50を載置させる(図4(A)図)。
【0049】
次に、下方保持手段の軸体係止孔86に通すようにして、上方から3本の係合軸体87を配設させる。上下の保持手段81,82が向かい合う状態として、下方に向いた位置決め突起85に、上下の各々のウェッジ案内手段が向かい合うように、上方の各々のウェッジ案内手段1の貫通孔21を嵌めて配設させる(図4(B)図)。そして、上方保持手段81の軸体係止孔86に、係合軸体87の上端を通すようにして固定させ、ステータコア組立手段の保持基盤70において、コイル線を巻線させる前の状態に組み立てる(図4(C)図)。
【0050】
次に、図5を参照して、ステータコア組立手段からコイル巻線手段に移送させる工程を説明する。ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50の内方空間55に、当圧片の開閉機構を備えた移送部91の先方を差し込んで、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を内方から堅固に支持して移送する。ここで、理解を容易にするために、図10を参照して、予め移送手段90を説明する。
【0051】
移送部91は内部に昇降軸92を含んだ軸体からなり、外部軸93の中間部にウェッジ案内手段の数と同数に分割された当圧片94が備えられている(図10(B)図参照)。各々の当圧片94はステータコアの中心に対して放射状に配設され、一つの当圧片94が、隣り合うウェッジ案内手段の垂設部12に、当接可能に配設される。各々の当圧片94を組み合わせた、全体の形状は、外面の輪郭が円筒形状をなしている。また、内面には、上方が縮径された略円錐台形状の輪郭をなす空間が形成されるように、傾斜面95が備えられている。当圧片94には。外周部に水平方向に溝96が形成され、溝には弾性手段97が装着され、外方から締め付けて前記円筒形状を縮径させるように、各々の当圧片94が内方に向けて付勢されている。
【0052】
昇降軸92には、前記略円錐台形状の輪郭をなす空間に適合し、当圧片94に摺動されるように、上方が縮径される形状の略円錐台形状をなす当圧部材98が支持されている(図10(A)図参照)。図示していない昇降手段により、昇降軸92を上方に駆動させれば、各々の当圧片94が軸心から離間する方向に移動し、当圧片94の外周部が垂設部12に当圧し、ウェッジ案内手段1とステータコア50とを堅固に一体化させる。そして、ステータコア組立手段の保持基盤70から、ステータコア50を離間させて移送することが可能となる。一方、昇降軸92を下方に駆動させれば、各々の当圧片94が弾性手段97により軸心方向に付勢され外周が縮径し、各々の当圧片94が垂設部12から離間し、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50は、移送部91から脱離されるようになる。
【0053】
ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を移送するには、まず、移送部の昇降軸92を下方に駆動させ、当圧片94がなす外径を垂設部12がなす内径よりも小さくさせ、各々の当圧片94が垂設部と当圧片との間に隙間があく状態とする(図10参照)。そして、図示していない駆動手段により、移送部91の先方をウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50の内方空間55に差し込むようにする(図5(D)図)。
【0054】
そこで、移送部の昇降軸92を上方に駆動させるようにする。そうすると、昇降軸の下方の略円錐台形状をなす当圧部材98の外面が、その周囲に配設されている各々の当圧片の傾斜面95に接して、当圧片94がなす外径を拡大させる。そして、隣り合う当圧片94の外面が一つのウェッジ案内手段をなす垂設部12に当圧されて、移送部91の先方でウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を堅固に保持させ、移送することが可能になる(図5(E)図)。
【0055】
ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を、移送部91に堅固に保持させたまま、図示していない昇降手段により保持基盤70から離間させ、コイル巻線手段の基盤72に移送させる(図5(F)図)。ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を、コイル巻線手段の基盤72に固定させてから、移送部の昇降軸92は下方に移動され、当圧片94の外面が縮径され、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50から移送部91の先方は引き抜かれる。そして、移送部91をステータコアの内部空間から引き抜いてから、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50は、コイル巻線手段の基盤72に固定される(図6(G)図)。
【0056】
コイル巻線手段の基盤72に固定されてから、下方からコイル巻線筒体110が上昇し、先端のコイル線送出し部111をスロット隙間に差し込んで、揺動させると共に上昇と下降を繰り返し、磁極ティース52の周りを循環させるようにしてコイル線を巻線する(図6(G)図)。コイル線は、ウェッジ案内手段1の基部20に接する内方の位置から、順に外方に重ねられるようにして所定の巻線数が巻線される(図6(H)図)。巻線が終了した段階で、コイルエンド部61は外方に傾斜したコイルガイド壁部の外径側の面15に沿って、先方が外方に反った状態に巻き上がる(図6(I)図)。
【0057】
次に、図7を参照してウェッジ40の挿入を説明する。略T字形状をなすように折り曲げられたウェッジ40は、側方にウェッジ案内溝11が形成されたウェッジ案内手段1を介して、図示していない公知の挿入手段によってスロット51内に挿入される(図1参照)。ウェッジの略T字形状の折り重ねられた中央部のウェブ部42は、各々が湾曲線状をなすと共に背中合わせされているコイル束61の間に、滑るように挿入される。ウェッジの両側方に広がるフランジ部41は、ウェッジ案内溝11を通して、予めスロット内面に配設されている絶縁紙54の磁極ティースのフランジ部に沿う外径面と、コイル束60の内径側との間に挿入される(図2参照、図7(J)図参照)。コイル巻線手段においてコイル線を巻線し、ウェッジを挿入させた状態を図7(K)図に示している。
【0058】
コイル線の巻線とウェッジの挿入が完了してから、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50は、前記と同様に、移送手段によりコイル巻線手段の基盤72から離間される(図8(L)図参照)。ステータコア組立手段の保持基盤70に移送されてから(図4(C)図参照)、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50が、上方保持手段81と下方保持手段82から取外され、巻線されたステータコア50は、上下のウェッジ案内手段1がコイルエンド部の内方に嵌っている状態とされる(図8(M)図参照)。
【0059】
そして、ステータコアの外面から突出されているウェッジ案内手段の基部20が外方から押圧されて、ステータコアの内方空間55に引き抜かれる(図9(N)図参照)。全てのウェッジ案内手段1が引き抜かれた状態で、ステータコア50の端面からは絶縁紙54とウェッジ40の端部が突出されてコイル束60の周囲を囲んだ状態とされている(図9(O)図参照)。
【実施例2】
【0060】
実施例2では、ウェッジ案内手段2を、図11を参照して説明する。一対のウェッジ案内手段2は、一方のウェッジ案内手段が、コイルガイド壁部16の両側方に、軸方向に沿うウェッジ案内片17を有し、ウェッジの両側方のフランジ部41を、隣り合って配設されたウェッジ案内手段の向かい合う各々のウェッジ案内片17に案内させるようにしている。
【0061】
図11(A)図はウェッジ案内手段2の見上げ斜視図を示し、図11(B)図は平面図を示し、図11(C)図は図11(B)図のA−A位置断面図を示し、図11(D)図は図11(B)図のB−B位置断面図によりウェッジの挿入方法を示す説明図である。
【0062】
コイルガイド壁部16には、磁極ティースの内径側の面に接するように垂設部12が形成されている(図11(D)図参照)。コイルガイド壁部の両側の側方部には、ウェッジを案内させるウェッジ案内片17が形成されている(図11(B)図参照)。ウェッジ案内片17の内径側には壁部を欠損させている。また、ステータコア端面から突出される絶縁紙(ウェッジを含む)が干渉しないように実施例1のウェッジ案内手段1と同様に欠損部14を有している(図11(D)図黒塗り部)。コイルガイド壁部16の外径側の面は、外径側に傾斜するように形成されている(図11(C)図)。
【0063】
ウェッジ案内片17は、予めスロット内面に配設されている絶縁紙54の前記フランジ部に沿う面の外径側に位置し、ウェッジ案内片17に案内されたウェッジのフランジ部41は、コイル束と絶縁紙54との間に挿入される。ウェッジ案内手段2の基部には、ステータコアの外径位置に適合するように、貫通孔21が形成されている。この貫通孔には実施例1と同様に位置決め突起が挿通されて、実施例1のウェッジ案内手段と同様にステータコアと一体化される。
【0064】
コイル線は、基部20に接する側から順に重ねられるようにして巻線され、コイルガイド壁部16の傾斜された外径側の面に支えられてコイル束60をなす。コイル線はコイルガイド壁部の外径側の面15に遮られて、絶縁紙の外に漏れることがない。また、ウェッジ案内手段2を内径側に抜き取っても、コイルエンド部61の外方部が内径側に倒れることがない。
【0065】
コイル線の巻線とウェッジの挿入を完了してから、ウェッジ案内手段2をステータコア50の内方側に引き抜く際に、ステータコアから突出される絶縁紙(ウェッジを含む)の部分43と干渉する壁部がないため、ウェッジ案内手段2をステータコア50の内部空間の中に、磁極ティース52の端面に基部20を滑らせるようにして引き抜くことが可能である。ウェッジ案内手段2も実施例1のウェッジ案内手段と同様に移送手段によりコイル巻線装置の中で移送可能とされる。
【0066】
(その他)
・実施例1では、ウェッジ案内手段1の基部を外方から押圧してステータコアの内方空間に引き抜いているが、勿論これに限定されない。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1,2…ウェッジ案内手段、
10…コイルガイド壁部、11…ウェッジ案内溝、12…垂設部、
13…外径側のコイルガイド壁部、14…欠損部、
15…コイルガイド壁部の外径側の面、16…コイルガイド壁部、
17…ウェッジ案内片、
20…基部、21…貫通孔、
30…隙間、
40…ウェッジ、41…フランジ部、42…ウェブ部、
43…突出される絶縁紙(ウェッジを含む)の部分、
50…ステータコア、51…スロット、52…磁極ティース、
53…磁極ティースのフランジ部、54…絶縁紙、55…内方空間、
60…コイル束、61…コイルエンド部、
70…保持基盤、72…支持片、72…基盤、
81…上方保持手段,82…下方保持手段、83…内周陥没部、
84…外周陥没部、85…位置決め突起、86…軸体係止孔、87…係合軸体、
90…移送手段、91…移送部、92…昇降軸、93…外部軸、
94…当圧片、95…傾斜面、96…溝、97…弾性手段、98…当圧部材、
110…コイル巻線筒体、111…コイル線送出し部
【要約】
【課題】集中巻・直巻方式によりコイル線を巻線させる際に、コイル線の巻線からウェッジの挿入の段階まで巻線装置に電動機用ステータコアを保持させた状態のままで、巻線可能であると共に、ウェッジをスロット内に確実に挿入させる。
【解決手段】
ステータコアの端面に接する基部と、基部から立設されたコイルガイド壁部とを含んだウェッジ案内手段には、基部は端面に沿って内方から外方に亘り、コイルガイド壁部は、磁極ティースのフランジ部の端面に沿って形成させ、その高さはコイルエンド部がなす高さよりも高く、その幅は前記フランジ部の幅と同じ幅とし、コイルガイド壁部の外径側の面が巻線されたコイル束の内径側に接し、コイルガイド壁部の内径側と、予めスロット内面に配設されている絶縁紙との間にあけた隙間にウェッジのフランジ部が挿通可能とされている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11