【実施例1】
【0036】
実施例1では、ウェッジ案内手段1をなすコイルガイド壁部10の両側の側方部に、軸方向に貫通されるウェッジ案内溝11を有し、隣り合って配設されたウェッジ案内手段1の前記ウェッジ案内溝11に、ウェッジ40の側方のフランジ部41を案内させるウェッジ案内手段1と、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50とを移送させる移送手段90(
図10参照)を含んだ集中巻・直巻式のコイル巻線装置を、
図1から
図10を参照して説明する。
【0037】
図1はウェッジ案内手段1がなす作用を、斜視図により説明する説明図である。
図2はウェッジ案内手段1の拡大説明図である。
図3は平面図、断面図により、ウェッジ案内手段1の構成を説明する説明図である。
図4から
図9はコイル巻線及びウェッジ挿入工程を説明する説明図である。
図10は移送手段90の構成を説明する説明図である。
【0038】
理解を容易にするために、
図1では絶縁紙を装着させた一つのスロット51に、
図1において下方からウェッジ40を挿入させる状態を説明する見上げ斜視図を示している。
図1を参照して、本願発明の要旨を予め説明する。ステータコアの磁極ティース52の端面に接して一対のウェッジ案内手段1が配設される。ウェッジ案内手段1は磁極ティースの端面に接する基部20と、基部20から立設されたコイルガイド壁部10とからなっている(
図2参照)。
【0039】
図1においては、コイル線がなすコイル束60を細く表示し、挿入される直前のウェッジを着色し、隣り合う2つのウェッジを実線と破線で示している。コイル線がなすコイル束60は、一つの磁極ティース52の周囲に巻線される。コイル線がなすコイル束60のコイルエンド部61の高さよりも、コイルガイド壁部10の高さは高く、コイルガイド壁部10の幅は磁極ティースのフランジ部53の幅と同じ幅とされている。ウェッジ案内手段の基部20は、磁極ティース52の端面とコイルエンド部61の内面に接し、ステータコア50の外面に突出する長さとされている。
【0040】
コイルガイド壁部10の両側の側方部には、軸方向に貫通されるウェッジ案内溝11,11が形成されている。隣り合うウェッジ案内手段1,1(
図1においては一つのウェッジ案内手段のみを示している。)の向かい合うウェッジ案内溝11に、断面形状が略T字形状をなすウェッジの側方のフランジ部41が案内される。コイル線が巻線されてから、予めスロット内面に配設されている絶縁紙54とコイル線がなすコイル束60との間に、図に示す矢印の方向にウェッジのフランジ部41が挿入される(
図2(D)図参照)。なお、二つ折りにされたウェッジのウェブ部42は、一つのスロット51に巻線された隣り合う2つのコイル束60,60の境界面に沿って挿入される。
【0041】
ここで、
図2から
図3を参照して、ウェッジ案内手段1の構成と保持方法を詳細に説明する。
図2(A)図はウェッジ案内手段1の見上げ斜視図を示し、
図2(B)図は平面図を示し、
図2(C)図は
図2(B)図のA−A位置断面図を示し、
図2(D)図は
図2(B)図のB−B位置断面図によりウェッジ40の挿入方法を示す説明図である。
【0042】
コイルガイド壁部10には、磁極ティース52の内径側に接するように壁形状をなす垂設部12が形成されている(
図2(C)図参照)。垂設部は壁形状に限定されず、軸形状であってもよい。コイルガイド壁部10の両側の側方部には、ウェッジを案内させるウェッジ案内溝11が貫通されている(
図2(B)図参照)。ウェッジ案内溝の外径側のコイルガイド壁部13(
図2(B)図参照)は、ステータコア端面から突出される絶縁紙(ウェッジを含む)の部分43が干渉しないように欠損部14を有している(
図2(D)図黒塗り部)。コイルガイド壁部の外径側の面15は、外径側に傾斜するように形成されている(
図2(C)図参照)。
【0043】
ウェッジ案内溝11は、予めスロット内面に配設されている絶縁紙54の磁極ティースのフランジ部に沿う面の外径側に位置し、ウェッジ案内溝1に案内されたウェッジのフランジ部41は、コイル束60と前記絶縁紙54との間に挿入される(
図2(D)図参照)。ウェッジ案内手段1には、ステータコア50の外径位置に適合するように、貫通孔21が形成されている。この貫通孔21に、後述する位置決め突起85(
図3(B)参照)が挿通されて、ウェッジ案内手段の垂設部12と位置決め突起85とでステータコア50を挟むようにして位置固定させる。
【0044】
コイル線は、軸部に接する側から順に重ねられるようにして巻線され、コイルガイド壁部の傾斜された外径側の面15に支えられてコイル束60をなす。コイル線はコイルガイド壁部の外径側の面15に遮られて、ステータコアの中央部空間の中に漏れることがない。また、ウェッジ案内手段1を内径側に抜き取っても、コイルエンド部61の外方部が内径側に倒れることがない。
【0045】
ここで、
図3、
図4を参照して、ステータコアに複数の対からなるウェッジ案内手段1を固定させる固定手段の構成を説明する。
図3(A)図はステータコア50に9対のウェッジ案内手段1が固定された状態の平面図を示し、
図3(B)図は断面図を示している。
図3(A)図は
図3(B)図のB−B位置平面図を示し、
図3(B)図は
図3(A)図のA−A位置断面図を示している。
図4(A)図から
図4(C)図は、ステータコア組立手段の保持基盤70にステータコア50を保持させて、固定手段により9対のウェッジ案内手段とステータコア50とを組み立てる工程を示す図である。
【0046】
理解を容易にするために、
図1に示した9つのスロット51を有するステータコア50にウェッジ案内手段1を固定する例により説明するが、この例に限定されないことは勿論のことである。9つの磁極ティース52に対応した9対のウェッジ案内手段1は、磁極ティース52の端面に接して、ステータコア50を上下から挟むように保持する一対の保持手段に挟まれて固定される。
【0047】
上方保持手段81と下方保持手段82は、いずれも略円環形状をなし、内周には9つのウェッジ案内手段1を格納させる9つの内周陥没部83が形成され、外周には保持手段と共にステータコアを保持基盤で固定できるように、ステータコアの一部を外方に露出させる3か所の外周陥没部84が形成されている。下方保持手段82の各々の内周陥没部83には、ウェッジ案内手段の貫通孔21に挿通される位置に、位置決め突起85が形成されている。上方保持手段の各々の内周陥没部83にも、反転させて配置させる各々のウェッジ案内手段1の貫通孔21に挿通されるように、位置決め突起85が形成されている。また、上方保持手段81と下方保持手段82の周方向には、向かい合う位置に3か所の軸体係止孔86が形成されている(
図3参照)。
【0048】
まず、保持基盤70の内径側に突出されている支持片71に、下方保持手段82の外周陥没部84の位置をあわせ、下方保持手段82を載置させる。次に、下方保持手段82に形成されている位置決め突起85に、ウェッジ案内手段の貫通孔21を挿通させるようにして、下方保持手段82の各々の内周陥没部83に、下方の各々のウェッジ案内手段1を格納させる。そして、ウェッジ案内手段1の垂設部12の外径側の面に磁極ティースの内径側の面を当接させるようにして、ステータコア50を載置させる(
図4(A)図)。
【0049】
次に、下方保持手段の軸体係止孔86に通すようにして、上方から3本の係合軸体87を配設させる。上下の保持手段81,82が向かい合う状態として、下方に向いた位置決め突起85に、上下の各々のウェッジ案内手段が向かい合うように、上方の各々のウェッジ案内手段1の貫通孔21を嵌めて配設させる(
図4(B)図)。そして、上方保持手段81の軸体係止孔86に、係合軸体87の上端を通すようにして固定させ、ステータコア組立手段の保持基盤70において、コイル線を巻線させる前の状態に組み立てる(
図4(C)図)。
【0050】
次に、
図5を参照して、ステータコア組立手段からコイル巻線手段に移送させる工程を説明する。ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50の内方空間55に、当圧片の開閉機構を備えた移送部91の先方を差し込んで、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を内方から堅固に支持して移送する。ここで、理解を容易にするために、
図10を参照して、予め移送手段90を説明する。
【0051】
移送部91は内部に昇降軸92を含んだ軸体からなり、外部軸93の中間部にウェッジ案内手段の数と同数に分割された当圧片94が備えられている(
図10(B)図参照)。各々の当圧片94はステータコアの中心に対して放射状に配設され、一つの当圧片94が、隣り合うウェッジ案内手段の垂設部12に、当接可能に配設される。各々の当圧片94を組み合わせた、全体の形状は、外面の輪郭が円筒形状をなしている。また、内面には、上方が縮径された略円錐台形状の輪郭をなす空間が形成されるように、傾斜面95が備えられている。当圧片94には。外周部に水平方向に溝96が形成され、溝には弾性手段97が装着され、外方から締め付けて前記円筒形状を縮径させるように、各々の当圧片94が内方に向けて付勢されている。
【0052】
昇降軸92には、前記略円錐台形状の輪郭をなす空間に適合し、当圧片94に摺動されるように、上方が縮径される形状の略円錐台形状をなす当圧部材98が支持されている(
図10(A)図参照)。図示していない昇降手段により、昇降軸92を上方に駆動させれば、各々の当圧片94が軸心から離間する方向に移動し、当圧片94の外周部が垂設部12に当圧し、ウェッジ案内手段1とステータコア50とを堅固に一体化させる。そして、ステータコア組立手段の保持基盤70から、ステータコア50を離間させて移送することが可能となる。一方、昇降軸92を下方に駆動させれば、各々の当圧片94が弾性手段97により軸心方向に付勢され外周が縮径し、各々の当圧片94が垂設部12から離間し、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50は、移送部91から脱離されるようになる。
【0053】
ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を移送するには、まず、移送部の昇降軸92を下方に駆動させ、当圧片94がなす外径を垂設部12がなす内径よりも小さくさせ、各々の当圧片94が垂設部と当圧片との間に隙間があく状態とする(
図10参照)。そして、図示していない駆動手段により、移送部91の先方をウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50の内方空間55に差し込むようにする(
図5(D)図)。
【0054】
そこで、移送部の昇降軸92を上方に駆動させるようにする。そうすると、昇降軸の下方の略円錐台形状をなす当圧部材98の外面が、その周囲に配設されている各々の当圧片の傾斜面95に接して、当圧片94がなす外径を拡大させる。そして、隣り合う当圧片94の外面が一つのウェッジ案内手段をなす垂設部12に当圧されて、移送部91の先方でウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を堅固に保持させ、移送することが可能になる(
図5(E)図)。
【0055】
ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を、移送部91に堅固に保持させたまま、図示していない昇降手段により保持基盤70から離間させ、コイル巻線手段の基盤72に移送させる(
図5(F)図)。ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50を、コイル巻線手段の基盤72に固定させてから、移送部の昇降軸92は下方に移動され、当圧片94の外面が縮径され、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50から移送部91の先方は引き抜かれる。そして、移送部91をステータコアの内部空間から引き抜いてから、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50は、コイル巻線手段の基盤72に固定される(
図6(G)図)。
【0056】
コイル巻線手段の基盤72に固定されてから、下方からコイル巻線筒体110が上昇し、先端のコイル線送出し部111をスロット隙間に差し込んで、揺動させると共に上昇と下降を繰り返し、磁極ティース52の周りを循環させるようにしてコイル線を巻線する(
図6(G)図)。コイル線は、ウェッジ案内手段1の基部20に接する内方の位置から、順に外方に重ねられるようにして所定の巻線数が巻線される(
図6(H)図)。巻線が終了した段階で、コイルエンド部61は外方に傾斜したコイルガイド壁部の外径側の面15に沿って、先方が外方に反った状態に巻き上がる(
図6(I)図)。
【0057】
次に、
図7を参照してウェッジ40の挿入を説明する。略T字形状をなすように折り曲げられたウェッジ40は、側方にウェッジ案内溝11が形成されたウェッジ案内手段1を介して、図示していない公知の挿入手段によってスロット51内に挿入される(
図1参照)。ウェッジの略T字形状の折り重ねられた中央部のウェブ部42は、各々が湾曲線状をなすと共に背中合わせされているコイル束61の間に、滑るように挿入される。ウェッジの両側方に広がるフランジ部41は、ウェッジ案内溝11を通して、予めスロット内面に配設されている絶縁紙54の磁極ティースのフランジ部に沿う外径面と、コイル束60の内径側との間に挿入される(
図2参照、
図7(J)図参照)。コイル巻線手段においてコイル線を巻線し、ウェッジを挿入させた状態を
図7(K)図に示している。
【0058】
コイル線の巻線とウェッジの挿入が完了してから、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50は、前記と同様に、移送手段によりコイル巻線手段の基盤72から離間される(
図8(L)図参照)。ステータコア組立手段の保持基盤70に移送されてから(
図4(C)図参照)、ウェッジ案内手段と一体化させたステータコア50が、上方保持手段81と下方保持手段82から取外され、巻線されたステータコア50は、上下のウェッジ案内手段1がコイルエンド部の内方に嵌っている状態とされる(
図8(M)図参照)。
【0059】
そして、ステータコアの外面から突出されているウェッジ案内手段の基部20が外方から押圧されて、ステータコアの内方空間55に引き抜かれる(
図9(N)図参照)。全てのウェッジ案内手段1が引き抜かれた状態で、ステータコア50の端面からは絶縁紙54とウェッジ40の端部が突出されてコイル束60の周囲を囲んだ状態とされている(
図9(O)図参照)。
【実施例2】
【0060】
実施例2では、ウェッジ案内手段2を、
図11を参照して説明する。一対のウェッジ案内手段2は、一方のウェッジ案内手段が、コイルガイド壁部16の両側方に、軸方向に沿うウェッジ案内片17を有し、ウェッジの両側方のフランジ部41を、隣り合って配設されたウェッジ案内手段の向かい合う各々のウェッジ案内片17に案内させるようにしている。
【0061】
図11(A)図はウェッジ案内手段2の見上げ斜視図を示し、
図11(B)図は平面図を示し、
図11(C)図は
図11(B)図のA−A位置断面図を示し、
図11(D)図は
図11(B)図のB−B位置断面図によりウェッジの挿入方法を示す説明図である。
【0062】
コイルガイド壁部16には、磁極ティースの内径側の面に接するように垂設部12が形成されている(
図11(D)図参照)。コイルガイド壁部の両側の側方部には、ウェッジを案内させるウェッジ案内片17が形成されている(
図11(B)図参照)。ウェッジ案内片17の内径側には壁部を欠損させている。また、ステータコア端面から突出される絶縁紙(ウェッジを含む)が干渉しないように実施例1のウェッジ案内手段1と同様に欠損部14を有している(
図11(D)図黒塗り部)。コイルガイド壁部16の外径側の面は、外径側に傾斜するように形成されている(
図11(C)図)。
【0063】
ウェッジ案内片17は、予めスロット内面に配設されている絶縁紙54の前記フランジ部に沿う面の外径側に位置し、ウェッジ案内片17に案内されたウェッジのフランジ部41は、コイル束と絶縁紙54との間に挿入される。ウェッジ案内手段2の基部には、ステータコアの外径位置に適合するように、貫通孔21が形成されている。この貫通孔には実施例1と同様に位置決め突起が挿通されて、実施例1のウェッジ案内手段と同様にステータコアと一体化される。
【0064】
コイル線は、基部20に接する側から順に重ねられるようにして巻線され、コイルガイド壁部16の傾斜された外径側の面に支えられてコイル束60をなす。コイル線はコイルガイド壁部の外径側の面15に遮られて、絶縁紙の外に漏れることがない。また、ウェッジ案内手段2を内径側に抜き取っても、コイルエンド部61の外方部が内径側に倒れることがない。
【0065】
コイル線の巻線とウェッジの挿入を完了してから、ウェッジ案内手段2をステータコア50の内方側に引き抜く際に、ステータコアから突出される絶縁紙(ウェッジを含む)の部分43と干渉する壁部がないため、ウェッジ案内手段2をステータコア50の内部空間の中に、磁極ティース52の端面に基部20を滑らせるようにして引き抜くことが可能である。ウェッジ案内手段2も実施例1のウェッジ案内手段と同様に移送手段によりコイル巻線装置の中で移送可能とされる。
【0066】
(その他)
・実施例1では、ウェッジ案内手段1の基部を外方から押圧してステータコアの内方空間に引き抜いているが、勿論これに限定されない。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。