(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2記載の眼鏡用調光レンズ製造装置において、前記制御装置は、さらに、フォトクロミック膜の膜厚が予め定めた許容範囲に入らない場合に前記フォトクロミック液塗布部と前記フォトクロミック液硬化部とを停止させる機能を有していることを特徴とする眼鏡用調光レンズ製造装置。
請求項2または請求項3記載の眼鏡用調光レンズ製造装置において、さらに、前記眼鏡レンズ基材が投入される投入部と、眼鏡レンズ基材が搬出される搬出部と、眼鏡レンズ用基材を前記投入部から前記フォトクロミック液塗布部と、前記フォトクロミック液硬化部と、レンズ形状測定部と、前記プローブを有する膜厚測定部とを経由して前記搬出部に送る搬送部とを備えていることを特徴とする眼鏡用調光レンズ製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る眼鏡用調光レンズ製造装置の一実施の形態を
図1〜
図15によって詳細に説明する。
図1に示す眼鏡用調光レンズ製造装置1は、眼鏡レンズ基材2(
図4参照)に予め定めた膜厚でフォトクロミック膜を形成するためのものである。この眼鏡用調光レンズ製造装置1は、詳細は後述するが、作業者(図示せず)によってローダー部3に投入された眼鏡レンズ基材2を各種の処理部に送り、成膜済みの眼鏡レンズ基材2を最終的にアンローダー部4によって装置の外に搬出する構成が採られている。
【0018】
前記各種の処理部は、第1のレンズ形状測定部5、プライマー塗布部6、プライマー乾燥部7、フォトクロミック液塗布部8、フォトクロミック液硬化部9、第2のレンズ形状測定部10、膜厚測定部11などである。また、この眼鏡用調光レンズ製造装置1は、眼鏡レンズ基材2をローダー部3とアンローダー部4との間で送るためのレンズ基材搬送部12と、各部の動作を制御する制御部13とを備えている。
【0019】
この眼鏡レンズ用調光レンズ製造装置1に投入される眼鏡レンズ基材2は、いわゆるセミフィニッシュレンズやフィニッシュレンズである。この調光レンズ製造装置1は、単焦点レンズ、累進レンズ、バイフォーカルレンズなど多くの種類の眼鏡レンズ基材2にフォトクロミック膜を形成することができるものである。
【0020】
前記ローダー部3は、作業者によって投入された成膜前の眼鏡レンズ基材2を後述するレンズ基材搬送部12によって搬送可能な位置に移すためのものである。
前記第1レンズ形状測定部5においては、眼鏡レンズ基材2のレンズ面を含む外形の形状が測定され、形状データが生成される。ここでいうレンズ面とは、フォトクロミック膜が形成されるレンズ面である。
【0021】
前記プライマー塗布部6においては、眼鏡レンズ基材2のレンズ面にプライマーが塗布される。
前記プライマー乾燥部7においては、眼鏡レンズ基材2に塗布されたプライマー液が乾燥させられる。
前記フォトクロミック液塗布部8においては、眼鏡レンズ基材2にフォトクロミック液が塗布される。フォトクロミック液は、紫外線硬化型のものが用いられる。
【0022】
前記フォトクロミック液硬化部9においては、眼鏡レンズ基材2に塗布されたフォトクロミック液が硬化させられる。
前記膜厚測定部11においては、成膜後のフォトクロミック膜の膜厚が測定される。
前記アンローダー部4においては、前記膜厚測定部11で膜厚測定が終了した眼鏡レンズ基材2が装置の外に搬出される。
前記レンズ基材搬送部12は、眼鏡レンズ基材2を前記ローダー部3から工程順に各処理部に送り、最終的にアンローダー部4に移す機能とを有している。
【0023】
前記制御部13は、上述したローダー部3と、第1レンズ形状測定部5と、プライマー塗布部6と、プライマー乾燥部7と、フォトクロミック液塗布部8と、フォトクロミック液硬化部9と、第2のレンズ形状測定部10と、膜厚測定部11と、レンズ基材搬送部12およびアンローダー部4の動作を制御する。また、制御部13は、工場サーバ14(
図11参照)との間でデータ通信を行い、眼鏡レンズ基材2にフォトクロミック膜を形成するうえで必要なデータを工場サーバ14から取得する。
【0024】
上述した各処理部は、
図2に示すように、基台21の上に工程順に並べて構成されている。この眼鏡用調光レンズ製造装置1において実施される各工程は、
図2においては左から右へ向かって進む。以下においては、
図2に示す基台21の左側を工程の上流側といい、右側を工程の下流側という。また、
図2に示す基台21の上側を装置の前側といい、下側を装置の後側という。さらに、以下の説明で用いる図面においては、
図2の左右方向と同一の方向を矢印Xによって示し、
図2の上下方向と同一の方向を矢印Yによって示す。
【0025】
前記ローダー部3と第1の形状データ測定部5とは、基台21の上流側端部に、前後方向に並ぶように設けられている。ローダー部3は、基台21の前側に位置し、第1の形状データ測定部5は、基台21の後側に位置している。
プライマー塗布部6は、前記ローダー部3より基台21の下流側に隣り合う位置と、前記第1の形状データ測定部5より基台21の下流側に隣り合う位置とにそれぞれ設けられている。プライマー乾燥部7は、前記プライマー塗布部6より基台21の下流側であって、基台21の前後方向の中央部に設けられている。
【0026】
フォトクロミック液塗布部8は、前記プライマー乾燥部7より基台21の下流側であって、基台21の前側にのみ設けられている。
フォトクロミック液硬化部9は、前記フォトクロミック液塗布部8より基台21の下流側であって、基台21の前側と、基台21の後側とにそれぞれ設けられている。
第2の形状データ測定部10と膜厚測定部11は、前記フォトクロミック液硬化部9より基台21の下流側であって、アンローダー部4と前後方向に隣り合う位置に設けられている。
アンローダー部4は、基台21の下流側端部であって前後方向の中央部に設けられている。
【0027】
レンズ基材搬送部12は、前記プライマー乾燥部7より基台21の上流側に位置する第1の搬送部12aと、プライマー乾燥部7より基台21の下流側に位置する第2の搬送部12bと、前記フォトクロミック液硬化部9より基台21の下流側に位置する第3の搬送部12cとによって構成されている。
前記プライマー塗布部6とフォトクロミック液硬化部9とがそれぞれ2つずつ設けられている理由は、これらの処理部の処理時間は第1の形状データ測定部4やフォトクロミック液塗布部8の処理時間と較べて長いからである。すなわち、プライマー塗布部6とフォトクロミック液硬化部9とを2つずつ備えることによって、各処理部の処理能力を均一にすることが可能になる。このため、前記各処理部を
図2に示すレイアウトで配置することによって、眼鏡レンズ基材2の成膜処理がプライマー塗布部6やフォトクロミック液硬化部9で滞ることを防ぐことができる。
【0028】
次に、
図2に示した眼鏡用調光レンズ製造装置1の具体的な実施の形態を
図3〜
図15によって詳細に説明する。
図3に示す眼鏡用調光レンズ製造装置1は、3つの処理室22〜24の中に形成されている。これらの処理室22〜24は、それぞれ立方体状に形成されている。各処理室22〜24の内部は、眼鏡レンズ基材2を通すことができるように互いに連通されている。また、処理室内の雰囲気は、予め定めた温度および湿度となるように調整されている。
【0029】
3つの処理室22〜24のうち、
図3において最も左側に位置する第1の処理室22には、第1の基台21aと、ローダー部3と、第1のレンズ形状測定部5と、プライマー塗布部6と、第1の搬送部12aとが設けられている。3つの処理室22〜24のうち、中央に位置する第2の処理室23には、第2の基台21bと、プライマー乾燥部7とが設けられている。3つの処理室22〜24のうち、最も右側に位置する第3の処理室24には、第3の基台21cと、フォトクロミック液塗布部8と、フォトクロミック液硬化部9と、第2のレンズ形状測定部10と、膜厚測定部11と、アンローダー部4と、第2,3の搬送部12b,12cとが設けられている。
【0030】
<ローダー部>
前記ローダー部3は、
図4に示すように、第1のベルトコンベア25と第2のベルトコンベア26とによって構成されている。これらの第1、第2のベルトコンベア25,26は、それぞれ2本の無端ベルト25a,26aを間欠的に回転させるものである。第1のベルトコンベア25の2本の無端ベルト25aには、例えば右眼用の眼鏡レンズ基材2が作業者によって載せられる。
【0031】
第2のベルトコンベア26の2本の無端ベルト26aには、例えば左眼用の眼鏡レンズ基材2が作業者によって載せられる。この実施の形態による第1、第2のベルトコンベア25,26の長さは、それぞれ6枚の眼鏡レンズ基材2を載せることができる長さに形成されている。第1、第2のベルトコンベア25,26の上流側の端部は、第1の処理室22の前端部に位置し、下流側の端部は、
図3に示すように、第1の処理室22の前後方向の中央部に位置している。第1の処理室22の前端部には、
図3に示すように、作業者が眼鏡レンズ基材2を第1、第2のベルトコンベア25,26に載せることができるように、レンズ投入口27が形成されている。この実施の形態においては、このレンズ投入口27によって、請求項4記載の発明でいう「投入部」が構成されている。
【0032】
第1、第2のベルトコンベア25,26の下流側端部は、上方から見て第1の搬送部12aの搬送経路A(
図3参照)と重なる位置に形成されている。すなわち、ローダー部3は、眼鏡レンズ基材2を第1、第2のベルトコンベア25,26によって前記レンズ投入口27から第1の搬送部12aまで送る。これらの第1、第2のベルトコンベア25,26の動作は、後述する制御部13(
図12参照)のローダー部用制御装置28によって制御される。このローダー部用制御装置28は、第1、第2のベルトコンベア25,26の下流側端部から後述する第1の搬送部12aによって眼鏡レンズ基材2が搬出された後に、次の眼鏡レンズ基材2が下流側端部に移動するように第1、第2のベルトコンベア25,26を動作させる。
【0033】
前記搬送経路Aは、
図3に示すように、上方から見て第1の基台21aの上流側から下流側へ(
図3においては左側から右側へ)向けて長くなる長円状に形成されている。第1の搬送部12aは、この搬送経路A上の任意の位置において、眼鏡レンズ基材2の受け渡しができるように構成されている。
【0034】
<第1の搬送部>
第1の搬送部12aは、
図5に示すように、第1の基台21aの上に2本のガイドレール31によって移動自在に支持されたスライダ32と、このスライダ32から上方に延びる支柱33と、この支柱33の上端部から水平方向に延びる一対の第1、第2のアーム34,35とを備えている。前記ガイドレール31は、第1の基台21aに固定されており、
図3に示すように、第1の基台21aの上流側から下流側へ延びている。スライダ32は、電動式の移動装置36(
図11参照)によってガイドレール31に沿って移動させられる。移動装置36の動作は、制御部13の第1の搬送部用制御装置37によって制御される。
【0035】
前記支柱33は、前記スライダ32に上下方向の軸線Zを中心として回転自在に支持されている。また、支柱33の下端部には、スライダ32内に設けられた電動式の回転駆動装置38が接続されている。回転駆動装置38は、前記軸線Zを中心として支柱33を回転させるものである。回転駆動装置38の動作は、前記第1の搬送部用制御装置37によって制御される。
前記第1、第2のアーム34,35の先端部には、上下方向に延びる昇降機構41がそれぞれ設けられている。この昇降機構41は、例えばエアシリンダ(図示せず)を動力源として構成することができる。昇降機構41の下端部には、支持板42を介して第1、第2のクランプ機構43,44が取付けられている。これらのクランプ機構43,44は、それぞれ眼鏡レンズ基材2を挟んで保持するためのものである。
【0036】
前記昇降機構41は、第1、第2のクランプ機構43,44を
図5において実線で示す下方の受け渡し位置と、
図5において二点鎖線で示す上方の搬送位置との間で昇降させる。前記受け渡し位置の高さは、前記ローダー部3や、後述する第1のレンズ形状測定部5、プライマー塗布部6およびプライマー乾燥部7において、眼鏡レンズ基材2の受け渡しを行うことが可能な高さに設定されている。また、前記搬送位置は、第1、第2のクランプ機構43,44に把持された眼鏡レンズ基材2を上述した各処理部に干渉されることなく移動させることが可能な高さに設定されている。
【0037】
前記支持板42は、
図3に示すように、上方から見て前記アーム34,35の長手方向とは直交する方向に長い長方形状に形成されている。
前記支持板42と第1、第2のクランプ機構43,44は、それぞれハンド組立体45として形成されて前記昇降機構41に着脱可能に取付けられている。このハンド組立体45は、第1の処理室22の一側部に設けられたハンド交換ステーション46(
図3参照)に予め用意されている他のハンド組立体45と交換することができる。
【0038】
ハンド交換ステーション46は、ハンド組立体45を着脱可能に保持可能な回転式の交換台47を有している。交換台47には、2つの取付座が設けられている。取付座は、交換台47が回転することにより搬送経路Aに位置付けられる。2つの取付座のうち、一方の取付座には、交換用ハンド組立体45が予め装填されている。他方の取付座は、第1の搬送部12aに組み付けられているハンド組立体45を移すことができるように、空の状態である。
【0039】
前記第1、第2のクランプ機構43,44は、
図6に示すように、前記支持板42の長手方向の両端部に設けられている。これらのクランプ機構43,44は、それぞれ上下方向に延びる4本のクランプピン48を用いて眼鏡レンズ基材2を2側方から挟んで保持する。4本のクランプピン48は、2本ずつ一対のスライダ49,49に取付けられており、支持板42に対して支持板42の長手方向と直交する方向に移動する。スライダ49に取付けられた2本のクランプピン48は、前記支持板42の長手方向に並べられている。
【0040】
一対のスライダ49,49は、支持板42に設けられたガイドレール50に移動自在に支持されており、図示していないエアシリンダによる駆動によってガイドレール50に沿って互いに逆方向に移動させられる。すなわち、一方のスライダ49に設けられた2本のクランプピン48と、他のスライダ49に設けられた2本のクランプピン48との間隔が変化し、各クランプ部が開閉するようになる。前記ガイドレール50は、前記支持板42の長手方向とは直交する方向に延びるように形成されている。
【0041】
第1のクランプ機構43と第2のクランプ機構44との間隔は、前記ローダー部3の第1のベルトコンベア25と第2のベルトコンベア26との間隔と一致している。また、各クランプ機構43,44は、前記スライダ32が水平移動しかつ前記アーム34,35が前記支柱33とともに回転することによって、上方から見て前記搬送経路Aと重なるように位置付けられている。
【0042】
この第1の搬送部12aが眼鏡レンズ基材2を保持するときは、先ず、眼鏡レンズ基材2の上方に4本のクランプピン48が位置付けられる。4本のクランプピン48の位置は、スライダ32の位置と、支柱33の回転角度とによって決まる。4本のクランプピン48が眼鏡レンズ基材2の上方に移動した後、各クランプ機構43,44が開いた状態で下降する。クランプ機構43,44が開いた状態とは、一方のスライダ49のクランプピン48と、他方のスライダ49のクランプピン48との間隔が拡がった状態をいう。次に、第1、第2のクランプ機構43,44に眼鏡レンズ基材2が挿入された状態で、第1、第2のクランプ機構43,44が閉じ、これらのクランプ機構43,44によって眼鏡レンズ基材2が挟まれて把持される。
【0043】
この眼鏡レンズ基材2を他の処理部に送るときは、第1、第2のクランプ機構43,44が眼鏡レンズ基材2を把持した状態で上昇し、スライダ32が移動したり支柱33が回転したりして眼鏡レンズ基材2の位置が変えられる。例えば、ローダー部3から後述する第1のレンズ形状測定部5に眼鏡レンズ基材2が送られる場合は、第1、第2のクランプ機構43,44が上昇した後に支柱33が180°回転し、その後、第1、第2のクランプ機構43,44が下降して眼鏡レンズ基材2が第1のレンズ形状測定部に移される。
【0044】
<第1のレンズ形状測定部>
第1のレンズ形状測定部5は、詳細は後述するが、眼鏡レンズ基材2の下面を吸着して支持する構成が採られている。眼鏡レンズ基材2が第1のレンズ形状測定部5に支持された後、第1、第2のクランプ機構43,44が開いてから上昇する。第1の搬送部12aは、2つのアーム34,35を備えているから、一方のアーム34に設けられた第1、第2のクランプ機構43,44が眼鏡レンズ基材2の受け渡しを行っている間に他方のアーム35の第1、第2のクランプ機構43,44で他の眼鏡レンズ基材2の受け渡しを行うことができる。
【0045】
前記第1のレンズ形状測定部3は、
図7に示すように、眼鏡レンズ基材2のレンズ形状を測定するために投受光型の形状測定器51と、眼鏡レンズ基材2を支持するためのレンズ支持装置52とを備えている。この実施の形態で使用する形状測定器51は、Keyences社製のLS-7070Mと呼ばれているもので、前記第1の基台21aの前後方向に並ぶ投光部53と受光部54とを有している。
【0046】
投光部53と受光部54との間には、上下方向に所定の幅を有する帯状の光路55が形成されている。この形状測定器51は、前記光路55が眼鏡レンズ基材2によって遮られたときの受光範囲に基づいて眼鏡レンズ基材2のレンズ形状を測定する。眼鏡レンズ基材2は、レンズ支持装置52によって支持された状態で前記光路55を横切る方向に移動させられる。
【0047】
前記レンズ支持装置52は、第1の基台21aの上にガイドレール56によって移動自在に支持されたスライダ57と、このスライダ57から上方に突出する一対の吸着式支持部材58とを備えている。
前記ガイドレール56は、第1の基台21aの上流側から下流側に向けて延びている。前記吸着式支持部材58は、スライダ57の内部に設けられた回転駆動装置57aに支持されており、眼鏡レンズ基材2の下面を吸着して保持するとともに、眼鏡レンズ基材2を上下方向の軸線回りに回転させる。
【0048】
一対の吸着式支持部材58,58どうしの間隔は、前記ローダーの第1、第2のベルトコンベア25,26どうしの間隔と一致している。
前記スライダ57は、電動式の移動装置59による駆動によってガイドレール56に沿って移動させられる。この移動装置59と、前記形状測定器51、回転駆動装置57aおよび吸着式支持部材58の動作は、制御部13の第1のレンズ形状測定部用制御装置60によって制御される。
【0049】
この第1のレンズ形状測定部5が眼鏡レンズ基材2のレンズ面の形状を測定するときは、吸着式支持部材58に眼鏡レンズ基材2が支持された状態でスライダ57が移動する。このスライダ57は、眼鏡レンズ基材2が前記光路55の一側方から光路55を越えて他側方に移動するように動作した後、眼鏡レンズ基材2が逆方向に移動するように動作して初期の位置に戻る。すなわち、眼鏡レンズ基材2は、前記光路55を2回横切る。
【0050】
形状測定器51は、眼鏡レンズ基材2が光路55を最初に横切るときに眼鏡レンズ基材2の外径を測定し、眼鏡レンズ基材2が光路55を再び横切るときに眼鏡レンズ基材2の高さを測定する。高さ測定は、眼鏡レンズ基材2をスライダ57とともに移動させるとともに、前記回転駆動装置57aによって回転させながら行う。例えば、形状測定器51は、眼鏡レンズ基材2の周方向の24°毎の平均高さを求め、それを1.5°ずつシフトさせる。すなわち、形状測定器51は、先ず、1点目のデータが0°〜24°の平均値、2点目が1.5°〜25.5°の平均値、3点目が3°〜27°の平均値、というように24°毎の平均高さを求める。そして、その1.5°毎の高さデータを形状測定機51が出力し、スライダ57が5mm移動した時点での前記高さデータ(レンズ移動速度5mm/sec、レンズ回転数300rpm)1205ポイントのうちの最大値をレンズ高さとする。
形状測定器51によって測定されたレンズ形状データは、前記第1のレンズ形状測定部用制御装置60に送られる。
【0051】
<プライマー塗布部>
前記プライマー塗布部6は、
図3に示すように、2つの塗布チャンバー61を備えている。これらの塗布チャンバー61は、
図8に示すように、下部スライダ62の上端部に設けられている。この実施の形態による塗布チャンバー61は、上方に向けて開口する円筒状に形成されている。それぞれの塗布チャンバー61の中には、眼鏡レンズ基材2を吸着して支持する吸着式支持部材63が回転自在に設けられている。吸着式支持部材63は、回転駆動装置64に接続されており、プライマー液の塗布時に回転駆動装置64による駆動によって所定の回転速度で回転させられる。プライマー塗布部6に設けられている2つの吸着式支持部材63どうしの間隔は、前記ローダーの第1、第2のベルトコンベア25,26どうしの間隔と一致している。
【0052】
前記吸着式支持部材63と回転駆動装置64との動作は、制御部13のプライマー塗布部用制御装置65によって制御される。
前記下部スライダ62は、2本のガイドレール66を介して第1の基台21aに移動自在に支持されている。前記ガイドレール66は、第1の基台21aの前後方向に延びている。また、下部スライダ62は、電動式の移動装置67(
図11参照)に接続されており、この移動装置67による駆動によってガイドレール66に沿って移動させられる。
移動装置67の動作は、前記プライマー塗布部用制御装置65によって制御される。移動装置67は、下部スライダ62を
図3中に実線で示す受け渡し位置と、同図中に二点鎖線で示す作業位置との間で移動させる。
【0053】
下部スライダ62が前記受け渡し位置に移動した状態においては、
図3に示すように、上方から見て吸着式支持部材63が前記搬送経路Aと重なるように位置付けられる。一方、下部スライダ62が前記作業位置に移動した状態においては、上方から見て後述吸着式支持部材63が後述する塗布装置68(
図8参照)と重なるように位置付けられる。
このプライマー塗布部6に対する眼鏡レンズ基材2の受け渡しは、下部スライダ62が前記受け渡し位置に移動した状態で行われる。
【0054】
プライマー塗布部6に眼鏡レンズ基材2が搬入されるときは、上述した第1の搬送部12aに保持された眼鏡レンズ基材2が塗布チャンバー61内に上方から挿入され、吸着式支持部材63に吸着されて支持される。眼鏡レンズ基材2が搬出されるときは、第1の搬送部12aによって眼鏡レンズ基材2が把持された状態で吸着式支持部材63の吸着が解除され、眼鏡レンズ基材2が塗布チャンバー61内から上方へ引き出される。
【0055】
塗布装置68は、塗布液を下端部の一対の塗布ノズル71から下方へ噴出させるものである。プライマー塗布部6の塗布ノズル71は、塗布液供給装置72(
図11参照)に接続されており、塗布時に塗布液供給装置72からプライマー液が所定の塗布量となるように供給される。前記一対の塗布ノズル71は、第1、第2の昇降装置73,74を介して昇降部材75に支持されている。塗布ノズル71の位置は、前記作業位置に移動した吸着式支持部材63と上方から見て重なるように位置付けられている。
【0056】
前記第1、第2の昇降装置73,74は、塗布時に塗布ノズル71と眼鏡レンズ基材2との間隔が予め定めた間隔となるように塗布ノズル71を下降させる。これらの第1、第2の昇降装置73,74の動作は、制御部13のプライマー塗布部用制御装置65によって制御される。塗布液塗布時の塗布ノズル71と眼鏡レンズ基材2との間隔は、前記第1のレンズ形状測定部によって測定された形状データに基づいて設定される。
【0057】
すなわち、制御部13は、先ず、前記吸着式支持部材63上に位置する眼鏡レンズ基材2のレンズ面の高さを前記形状データに基づいて求める。そして、制御部13は、このレンズ面から予め定めた距離だけ上方に離間した塗布高さを求め、塗布ノズル71の高さが塗布高さとなるように第1、第2の昇降装置73,74を動作させる。
前記昇降部材75は、第3の昇降装置76を介して上部スライダ77に支持されている。第3の昇降装置76は、図示していない駆動用モータを動力源として前記昇降部材75を昇降させるものである。この第3の昇降装置76は、塗布ノズル71が前記塗布チャンバー61の中に挿入される下降位置と、塗布ノズル71が塗布チャンバー61の上方に退避する上昇位置との間で昇降部材75を昇降させる。この第3の昇降装置76の動作は、前記プライマー塗布部用制御装置65によって制御される
【0058】
前記上部スライダ77は、ガイドロッド78に水平方向に移動自在に支持されており、ボールねじ式の駆動装置79に接続されている。前記ガイドロッド78は、前記第1の基台21aの前後方向に延びる状態で前記第1の処理室22の天井部に支持されている。
前記駆動装置79は、プライマー液の塗布時に上部スライダ77をガイドロッド78に沿って移動させるものである。この駆動装置79の動作は前記プライマー塗布部用制御装置65によって制御される。
【0059】
前記上部スライダ77は、第3の昇降装置76と昇降部材75および第1、第2の昇降装置73,74を支持している。このため、上部スライダ77が移動することによって、塗布ノズル71が上部スライダ77と一体に移動する。前記プライマー塗布部用制御装置65は、プライマー液の塗布時に吸着式支持部材63を回転させるとともに、塗布ノズル71が吸着式支持部材63の上方から第1の基台21aの前側または後側に移動するように、駆動装置79を動作させる。このため、塗布ノズル71は、塗布時に眼鏡レンズ基材2の中央部の上方から外周部の上方に向けて径方向に移動する。また、この塗布時には、塗布ノズル71と眼鏡レンズ基材2の上面との間隔が所定の間隔となるように、プライマー塗布部用制御装置65が前記第1、第2の昇降装置73,74を動作させる。
【0060】
この塗布装置68が眼鏡レンズ基材2にプライマーを塗布するときは、先ず、第3の昇降装置76による駆動によって塗布ノズル71が塗布チャンバー61内に上方から挿入される。そして、眼鏡レンズ基材2が回転している状態で、前記塗布高さに位置している塗布ノズル71からプライマー液が噴出する。塗布ノズル71は、眼鏡レンズ基材2との間隔が略一定となるように上下方向に移動しながら、眼鏡レンズ基材2の中心部から径方向の外側に向けて移動する。塗布が終了した後は、塗布ノズル71が塗布チャンバー61から上方に上昇し、眼鏡レンズ基材2が下部スライダ62とともに受け渡し位置に戻る。
【0061】
<プライマー乾燥部>
前記プライマー乾燥部7は、眼鏡レンズ基材2に塗布されたプライマー液を自然乾燥によって乾燥させるものである。この実施の形態によるプライマー乾燥部7は、
図3に示すように、第3、第4のベルトコンベア81,82によって構成されている。これらの第3、第4のベルトコンベア81,82は、前記ローダー部2の第1、第2のベルトコンベア25,26と同等の構造のものである。第3のベルトコンベア81と第4のベルトコンベア82との間隔は、前記第1、第2のベルトコンベア25,26どうしの間隔と一致している。
【0062】
第3のベルトコンベア81は、例えば右眼用の眼鏡レンズ基材2が載せられる。第4のベルトコンベア82は、例えば左眼用の眼鏡レンズ基材2が載せられる。
第3、第4のベルトコンベア81,82は、第2の処理室23の上流側端部(
図3においては左側の端部)から下流側端部に向けて眼鏡レンズ基材2を送る。これらの第3、第4のベルトコンベア81,82は、それぞれ複数の眼鏡レンズ基材2を載せることができる長さに形成されている。
【0063】
これらの第3、第4のベルトコンベア81,82の動作は、制御部13のプライマー乾燥部用制御装置83によって制御される。第3、第4のベルトコンベア81,82は、プライマー乾燥部用制御装置83による制御によって、眼鏡レンズ基材2が上流側端部から下流側端部まで移動する間に予め定めた時間だけ経過するように動作する。この予め定めた時間は、プライマー液が乾燥するために必要な時間である。
プライマー乾燥部7の下流側端部まで送られた眼鏡レンズ基材2のレンズ面には、プライマー液が乾燥してなるプライマー膜が形成される。
【0064】
<第2の搬送部>
前記第2の搬送部12bは、上述した第1の搬送部12aと同等の構造のものである。このため、第2の搬送部12bにおいて、第1の搬送部12aと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。第2の搬送部12bの搬送経路Bは、
図3に示すように、上方から見て第3の基台21cの上流側から下流側へ(
図3においては左側から右側へ)向けて長くなる長円状に形成されている。第2の搬送部12bは、この搬送経路B上の任意の位置において、眼鏡レンズ基材2の受け渡しが可能なものである。第2の搬送部12bの動作は、制御部13の第2の搬送部用制御装置84によって制御される。
【0065】
<フォトクロミック液塗布部>
前記フォトクロミック液塗布部8は、
図3に示すように、第3の処理室24の上流部であって前端部に設けられている。前記プライマー乾燥部7でプライマー膜が形成された眼鏡レンズ基材2は、プライマー乾燥部7の下流側端部から第2の搬送部12bによってフォトクロミック液塗布部8に移載される。
この実施の形態によるフォトクロミック液塗布部8は、前記プライマー液塗布部6と同等に構成されている。すなわち、フォトクロミック液塗布部8は、
図3および
図8に示すように、塗布チャンバー61および吸着式支持部材63を有する下部スライダ62と、塗布装置68と、上部スライダ77および駆動装置79などを備えている。
【0066】
フォトクロミック液塗布部8を構成する各装置の動作は、制御部13のフォトクロミック液塗布部用制御装置85によって制御される。フォトクロミック液を塗布するときの塗布ノズル71と眼鏡レンズ基材2との間隔は、前記第1のレンズ形状測定部によって測定された形状データを用いて設定される。
フォトクロミック液塗布部8が眼鏡レンズ基材2にフォトクロミック液を塗布するときは、眼鏡レンズ基材2が回転している状態で、塗布高さに位置している塗布ノズル71からフォトクロミック液が噴出する。塗布ノズル71は、眼鏡レンズ基材2との間隔が略一定となるように上下方向に移動しながら、眼鏡レンズの中心部から径方向の外側に向けて移動する。
【0067】
<フォトクロミック液硬化部>
前記フォトクロミック液硬化部9は、
図3に示すように、眼鏡レンズ基材2を支持する基材支持部91と、眼鏡レンズ基材2に塗布されたフォトクロミック液に紫外線を照射するための照射部92とを備えている。
基材支持部91は、
図9に示すように、第3の基台21cにガイドレール93を介して移動自在に支持されたスライダ94と、このスライダ94に昇降装置95を介して支持されたUVチャンバー96とを備えている。前記ガイドレール93は、第3の基台21cの前後方向に延びている。前記スライダ94は、駆動装置97(
図11参照)に接続されており、この駆動装置97による駆動によってガイドレール93に沿って移動する。
【0068】
前記昇降装置95は、例えばエアシリンダ(図示せず)を動力源として形成することができる。この昇降装置95と前記駆動装置97の動作は、それぞれ制御部13のフォトクロミック液硬化部用制御装置98によって制御される。
前記UVチャンバー96は、箱状に形成されており、上方に向けて開口する一対の凹陥部99を有している。これらの凹陥部99は、第3の基台21cの搬送方向(
図3においては左右方向)に所定の間隔で並ぶように形成されている。
【0069】
UVチャンバー96の上端面は平坦に形成されている。この上端面にはシール部材(図示せず)が設けられている。このシール部材は、後述する照射部92のハウジング101に接触してこのハウジング101とUVチャンバー96との間を気密にシールするためのものである。
前記一対の凹陥部99は、眼鏡レンズ基材2を挿入可能な広さに形成されている。また、凹陥部99の底は、眼鏡レンズ基材2をレンズ面(フォトクロミック液塗布面)が上方を指向する状態で載置できるように形成されている。
【0070】
前記凹陥部99には、N
2 ガス供給装置102(
図11参照)が接続されている。N
2 ガス供給装置102は、後述する硬化時にN
2 ガスを凹陥部99内に供給し、凹陥部99内の空気をN
2 ガスに置換する。
前記スライダ94は、上方から見て前記凹陥部99が第2の搬送部12bの搬送経路Bと重なる受け渡し位置と、後述する照射部92の下方にUVチャンバー96が位置する硬化位置との間で移動する。
【0071】
前記照射部92は、
図9に示すように、密閉構造のハウジング101と、このハウジング101の中に収容された紫外線ランプ103とを備えている。ハウジング101は、箱状に形成されており、図示していない支持用ブラケットを介して第3の処理室24の天井部に移動することがないように支持されている。
前記ハウジング101の下端部には、窓101aが形成されている。この窓101aは、透明な材料からなる板によって閉塞されている。ハウジング101の上下方向の位置は、前記UVチャンバー96が昇降装置95による駆動によって上昇した状態でUVチャンバー96の上部のシール部材がハウジング101の下面に押し付けられるように位置付けられている。
【0072】
紫外線ランプ103は、細長い管状に形成されており、ハウジング101に水平状態で支持されている。この紫外線ランプ103の点灯、消灯の切り換えは、前記フォトクロミック液硬化部用制御装置98によって実施される。
このフォトクロミック液硬化部9に第2の搬送部12bによって送られた眼鏡レンズ基材2は、前記UVチャンバー96の凹陥部99内に上方から挿入され、この凹陥部99の底に載置される。このように眼鏡レンズ基材2がUVチャンバー96に装填された後、スライダ94が硬化位置に移動し、UVチャンバー96が昇降装置95による駆動によって上昇する。
【0073】
UVチャンバー96は、上昇することによって照射部92のハウジング101に下方から押し付けられる。しかる後、前記凹陥部99内がN
2 ガスによって置換され、紫外線ランプ103が点灯する。紫外線ランプ103が点灯することによってフォトクロミック膜が硬化し、眼鏡レンズ基材2の上にフォトクロミック膜が形成される。
UVチャンバー96は、フォトクロミック膜の硬化処理が終了した後に下降し、スライダ94が初期の受け渡し位置に戻されることによって搬送経路Bの下方に位置付けられる。
フォトクロミック膜硬化部9でフォトクロミック膜が形成された眼鏡レンズ基材2は、第2の搬送部12bによってUVチャンバー96から取り出され、後述するアンローダー部4に送られる。
【0074】
<アンローダー部>
アンローダー部4は、
図10に示すように、トレイ104を搬送方向の上流側端部と下流側端部との間で往復させる、いわゆる単軸ロボット105によって構成されている。この単軸ロボット105の動作は、制御部13のアンローダー部用制御装置106(
図11参照)装置によって制御される。
前記トレイ104は、2枚の眼鏡レンズ基材2をレンズ面が上方を指向する状態で載置させることができるものである。
【0075】
前記単軸ロボット105の上流側端部は、上方から見て搬送経路Bと重なる位置に配置されている。この単軸ロボット105は、搬送経路Bの下方から第3の基台21cの下流側端部に位置するレンズ搬出口107(
図3参照)まで延びるように形成されている。この実施の形態においては、このレンズ搬出口107によって、請求項4記載の発明でいう「搬出部」が構成されている。
【0076】
単軸ロボット105は、トレイ104を上流側端部に位置する基材搬入位置P1と、搬送方向の途中に位置する受け渡し位置P2と、下流側端部に位置する基材搬出位置P3とにおいてそれぞれ停止させる。
前記基材搬入位置P1に位置しているトレイ104には、第2の搬送部12bによって2枚の眼鏡レンズ基材2が載置される。この眼鏡レンズ基材2は、フォトクロミック液硬化部9で硬化処理が終了してフォトクロミック膜が形成されたものである。眼鏡レンズ基材2が移載されたトレイ104は、単軸ロボット105によって前記受け渡し位置P2に送られる。
【0077】
受け渡し位置P2に移動したトレイ104内の眼鏡レンズ基材2は、後述する第3の搬送部12cによって第2のレンズ形状測定部10に移され、この第2のレンズ形状測定部10による形状測定と、後述する膜厚測定部11による膜厚測定とが終了した後に前記トレイ104に戻される。
このように眼鏡レンズ基材2が戻されたトレイ104は、単軸ロボット105によって前記基材搬出位置P3に送られる。単軸ロボット105は、トレイ104内の眼鏡レンズ基材2が作業者によって持ち出されるまで待機し、その後、トレイ104を基材搬入位置P1に戻す。
【0078】
<第3の搬送部>
第3の搬送部12cは、フォトクロミック膜が形成された眼鏡レンズ基材2をアンローダー部4から後述する第2のレンズ形状測定部10と膜厚測定部11とに送り、形状測定と膜厚測定とが終了した眼鏡レンズ基材2をアンローダー部4に戻す機能を有している。この実施の形態による第3の搬送部12cは、
図10に示すように、第3のクランプ機構111と第4のクランプ機構112とを有する支持部材113と、この支持部材113を昇降させる昇降装置114と、この昇降装置114を水平方向に移動させる移動装置115とを備えている。
【0079】
前記第3、第4のクランプ機構111,112は、第1、第2の搬送部12a,12bの第1、第2のクランプ機構43,44と同一のものである。このため、第3の搬送部12cのクランプ機構において、第1、第2の搬送部12a,12bの第1、第2のクランプ機構43,44と同一の部材については、同一符号を付し、ここにおいて詳細な説明は省略する。
第3の搬送部12cの2つのクランプ機構111,112は、第3の基台21cの前後方向に並べられている。また、これら2つのクランプ機構111,112どうしの間隔は、前記ローダー部3の第1、第2のベルトコンベア25,26どうしの間隔と一致している。
【0080】
前記昇降装置114は、詳細には図示していないが、エアシリンダやモータを動力源として支持部材113を上下方向に移動させる。
前記移動装置115は、第3の基台21cに支柱116によって支持されたガイドレール117と、このガイドレール117に移動自在に支持されたスライダ118と、このスライダ118を駆動するモータ(図示せず)とによって構成されている。前記ガイドレール117は、アンローダー部4の前記受け渡し位置P2の上方から後述する第2のレンズ形状測定部10の上方に向けて第3の基台21cの前後方向に延びている。
【0081】
前記スライダ118は、前記昇降装置114を支持している。この第3の搬送部12cの前記第3、第4のクランプ機構111,112と、昇降装置114と、移動装置115の動作は、制御部13の第3の搬送部用制御装置119(
図11参照)によって制御される。すなわち、第3の搬送部12cは、2枚の眼鏡レンズ基材2を2つのクランプ機構111,112で把持し、アンローダー部4のトレイ104と、後述する第2のレンズ形状測定部10との間で移動させる。
【0082】
<第2のレンズ形状測定部>
第2のレンズ形状測定部10は、フォトクロミック膜が形成された眼鏡レンズ基材2の形状を測定するためのものである。この実施の形態においては、この第2のレンズ形状測定部10によって、請求項2記載の発明でいう「レンズ形状測定部」が構成されている。
この第2のレンズ形状測定部10は、上述した第1のレンズ形状測定部5と同一のものが用いられている。このため、第2のレンズ形状測定部10において、第1のレンズ測定部5と同一の部材については、同一符号を付し、ここにおいて詳細な説明は省略する。この第2のレンズ形状測定部10の各装置の動作は制御部13の第2のレンズ形状測定部用制御装置120によって制御される。
【0083】
第2のレンズ形状測定部10は、
図10に示すように、形状測定器51の投光部53と受光部54とが第3の基台21cの搬送方向(
図3においては左右方向)に並ぶ状態で第3の基台21cに取付けられている。この第2のレンズ形状測定部10のレンズ支持装置52は、スライダ57を前記単軸ロボット105の受け渡し位置P2と隣接する前側位置P4と、形状測定器51を挟んで反対側に位置する膜厚測定位置P5との間で移動させる。すなわち、この実施の形態による第2のレンズ形状測定部10のスライダ57は、上述した第3の搬送部12cの機能の一部、すなわち眼鏡レンズ基材2を第2のレンズ形状測定部10と後述する膜厚測定部11との間で移動させる機能を有するものである。
【0084】
前記受け渡し位置P2に位置するトレイ104に収容されている2枚の眼鏡レンズ基材2は、上述した第3の搬送部12cによってスライダ57の吸着式支持部材58に移される。この実施の形態においては、この吸着式支持部材58によって、請求項1記載の発明でいう「基材支持部材」が構成されている。
吸着式支持部材58に移された眼鏡レンズ基材2は、スライダ57とともに形状測定器51の投光部53と受光部54との間を横切り、外径測定と高さ測定とが終了した後に膜厚測定部11に送られる。第2のレンズ形状測定部10によって得られた眼鏡レンズ基材2の形状データは、制御部13の第2のレンズ形状測定部用測定装置120に送られる。
【0085】
外径と高さの測定が終了した眼鏡レンズ基材2は、スライダ57が膜厚測定位置P5に移動することによって膜厚測定部11に送られる。この眼鏡レンズ基材2は、膜厚測定部11による膜厚測定が終了した後にスライダ57とともに前記前側位置P4に戻され、第3の搬送部12cによって前記トレイ104に移される。
【0086】
<膜厚測定部>
膜厚測定部11は、
図10に示すように、眼鏡レンズ基材2と対向するプローブ121と、このプローブ121を移動させるアクチュエータとしての多軸ロボット122と、前記プローブ121および前記多軸ロボット122の動作を制御する膜厚測定部用制御装置123(
図12参照)とによって構成されている。この実施の形態においては、前記膜厚測定部用制御装置123によって、本発明でいう「制御装置」が構成されている。
【0087】
前記プローブ121は、光を照射する機能と、反射光を受光する機能と、受光した前記反射光を電気信号に変換して膜厚測定部用制御装置123に送る機能とを有している。このプローブ121としては、例えばシステムロード社製の非接触式膜厚計測器FF8に使用されているものを用いることができる。
前記多軸ロボット122は、前記プローブ121と前記眼鏡レンズ基材2との距離と、プローブ121の傾斜角などを変えることができるもので、前記膜厚測定位置P5と隣接する位置に設けられている。
【0088】
この実施の形態による多軸ロボット122は、支柱124と、第1〜第4のアーム125〜128とを備えている。支柱124は、第3の基台21cに対して上下方向の第1の軸線C1を中心にして回動可能である。第1のアーム125は、前記支柱124に対して水平な第2の軸線C2を中心にして回動可能である。第2のアーム126は、第1のアーム125の回動端部に対して水平な第3の軸線C3を中心にして回動可能である。第3のアーム127は、第2のアーム125に対して第3の軸線C3とは直交する第4の軸線C4を中心にして回動可能である。
第4のアーム128は、第3のアーム127に対して第4の軸線C4とは直交する第5の軸線C5を中心にして回動可能である。第4のアーム128の先端部には、プローブ121を前記第5の軸線C5とは直交する第6の軸線C6を中心にして回動させるハンド129が設けられている。
【0089】
前記膜厚測定部用
制御装置123は、
図12に示すように、形状データ取得部131と、光照射位置設定部132と、プローブ制御部133と、ロボット制御部134と、膜厚演算部135とを備えている。
前記形状データ取得部131は、前記第2のレンズ形状測定部用制御装置120から成膜後の眼鏡レンズ基材2の形状データ(外径および高さ)を取得する。
【0090】
前記光照射位置設定部132は、
図13に示すように、膜厚測定を行うときの光照射位置Sを前記形状データに基づいて求める。この光照射位置Sは、前記膜厚測定位置P5に送られた眼鏡レンズ基材2にプローブ121から光を照射するときのプローブ121の位置である。詳述すると、光照射位置Sは、
図13および
図14に示すように、眼鏡レンズ基材2の予め定めた測定位置Tを通る法線L1に沿って前記測定位置Tから予め定めた距離D1だけ離間した位置である。
【0091】
前記測定位置Tは、
図15(A)に示すように、一つの眼鏡レンズ基材2について少なくとも中心部と外周部の4箇所とに設定されている。前記光照射位置Sは、全ての測定位置Tについてそれぞれ求められる。眼鏡レンズ基材2が
図15(B)に示すようなバイフォーカルレンズ2aである場合は、前記測定位置Tは小玉レンズ136にも設定される。小玉レンズ136の測定位置は、前記形状データから小玉レンズ136のセグメントトップ136aを検出し、このセグメントトップ136aの位置に基づいて求めることができる。
【0092】
前記プローブ制御部133は、プローブ121による光の照射の開始と停止とを切り換える。
前記ロボット制御部134は、前記光照射位置Sから前記測定位置Tに光が照射されるように前記プローブ121を移動させる。すなわち、ロボット制御部134は、
図13および
図14に示すように、プローブ121の先端が光照射位置Sに位置し、かつプローブ121の軸線L2が前記法線L1と一致するように多軸ロボット122を動作させる。このようにプローブ121が移動させられた後、プローブ121が光を眼鏡レンズ基材2に向けて照射する。プローブ121から照射した光は、フォトクロミック膜の表面や眼鏡レンズ基材2の表面などによって反射して反射光としてプローブ121に入射する。
【0093】
プローブ121の軸線L2は、
図14に示すように、前記法線L1と直交する方向から見て法線L1に対して角度αの範囲内とすることが望ましい。角度αは、法線L1の傾斜角±5度である。また、プローブ121の先端と測定位置Tとの距離D2は、光照射位置Sと測定位置Tとの距離D1を5cmとする場合、5±1cm程度の範囲内とすることが望ましい。
【0094】
前記膜厚演算部135は、前記プローブ121から照射されてフォトクロミック膜で反射して前記プローブ121に入射した反射光を解析し、前記フォトクロミック膜の膜厚を求める。また、膜厚演算部135は、工場サーバ14(
図12参照)に通信回線(図示せず)を介して接続し、膜厚測定の対象となっている眼鏡レンズ基材2について、フォトクロミック膜の膜厚データを取得する。この膜厚データは、目標とする膜厚を示すものである。膜厚演算部135は、膜厚測定により得られた実際の膜厚が前記膜厚データに含まれる目標膜厚に対して予め定めた許容範囲に入っていない場合は、アラーム装置137(
図11参照)を動作させるとともに、前記フォトクロミック液塗布部8と前記フォトクロミック液硬化部9とを停止させる。
【0095】
このように構成された眼鏡用調光レンズ製造装置1においては、ローダー部3に投入された眼鏡レンズ基材2が第1のレンズ形状測定部5からプライマー塗布部6と、プライマー乾燥部7と、フォトクロミック液塗布部8と、フォトクロミック液硬化部9とに送られ、眼鏡レンズ基材2にフォトクロミック膜が形成される。そして、この眼鏡レンズ基材2は、第2のレンズ形状測定部10で再びレンズ形状が測定された後、膜厚測定部11に送られる。
【0096】
膜厚測定部11においては、前記プローブ121と眼鏡レンズ基材2のフォトクロミック膜との間隔と、測定位置に対する前記プローブ121の光の照射方向とが多軸ロボット122と膜厚測定部用制御装置123とによって眼鏡レンズ基材2のレンズ形状と対応するように設定される。
このため、この実施の形態によれば、フォトクロミック膜に垂直に光を照射して行う膜厚測定が自動化されるから、作業者の負担が軽減されるとともに、作業者の取り扱いミスによる不良品の発生を防止できる。
【0097】
また、この実施の形態によれば、前記間隔と前記光の照射方向とを機械的に設定できるから、膜厚測定に要する時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。また、生産性を低下させることなく1枚の眼鏡レンズ基材2について複数の測定位置Tを設定することができるようになり、測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0098】
この実施の形態による眼鏡用調光レンズ製造装置1は、フォトクロミック液塗布部8と、フォトクロミック液硬化部9と、第2のレンズ形状測定部10とを備えている。前記フォトクロミック液塗布部8は、フォトクロミック液を前記眼鏡レンズ基材2のレンズ面に塗布するものである。
前記フォトクロミック液硬化部9は、前記フォトクロミック液塗布部8で眼鏡レンズ基材2に塗布されたフォトクロミック液を硬化させるものである。
第2のレンズ形状測定部10は、前記フォトクロミック液硬化部9においてフォトクロミック膜が形成された眼鏡レンズ基材2のレンズ形状を測定するものである。
【0099】
この実施の形態による膜厚測定部用制御装置123は、前記第2のレンズ形状測定部10によって得られた形状データに基づいて前記光照射位置Sを求めるものである。
このため、この実施の形態によれば、成膜後の眼鏡レンズ基材2の形状データに基づいてプローブ121の位置を設定できるから、フォトクロミック膜の膜厚をさらに正確に測定することができる。
【0100】
眼鏡レンズ基材2には、レンズ面の一部に小玉レンズ136が形成されたバイフォーカルレンズ2aがある。この実施の形態による眼鏡用調光レンズ製造装置1は、第2のレンズ形状測定部10でレンズ形状を測定し、この形状データに基づいて前記小玉レンズ136の位置を特定できるから、小玉レンズ136に形成されたフォトクロミック膜の膜厚をも正確に測定することができる。
【0101】
この実施の形態による眼鏡用調光レンズ製造装置1は、測定した膜厚が予め定めた不良膜厚の範囲内にある場合に前記フォトクロミック液塗布部8と前記フォトクロミック液硬化部9とを停止させる機能を有している。このため、膜厚不良が検出されたときに進行中のフォトクロミック液の塗布と硬化とが停止するから、不良品が無駄に繰り返し形成されることを確実に防ぐことができる。
【0102】
この実施の形態による眼鏡用調光レンズ製造装置1は、眼鏡レンズ基材2が投入されるレンズ投入口27(投入部)と、眼鏡レンズ基材2が搬出されるレンズ搬出口107(搬出部)と、眼鏡レンズ基材2を前記レンズ投入口27から前記フォトクロミック液塗布部8と、前記フォトクロミック液硬化部9と、第2のレンズ形状測定部10と、前記プローブ121を有する膜厚測定部11とを経由して前記レンズ搬出口107に送る搬送部12とを備えている。
このため、この眼鏡用調光レンズ製造装置1においては、フォトクロミック液の塗布から膜厚測定に至る全ての工程が自動化される。したがって、この実施の形態によれば、より一層生産性が高い眼鏡用調光レンズ製造装置を提供することができる。
【0103】
<具体的な実施例>
この実施の形態においては、プライマー層とフォトクロミック膜とを以下のように形成した。
(1)プライマー層の形成:
眼鏡レンズ基材2として、メニスカス形状のジエチレングリコールビスアリルカーボネート(HOYA(株)製 商品名CR−39、中心肉厚2.0mm厚、直径75mm、凸面の表面カーブ(平均値)約+0.8)を使用し、レンズ基材の凸面上に、プライマー液としてポリウレタン骨格にアクリル基を導入したポリウレタンの水分散液(ポリカーボネートポリオール系ポリウレタンエマルジョン、粘度100mPa・s、固形分濃度38質量%)をスピンコート法により塗布した後、温度25℃湿度50%RHの雰囲気下で15分風乾処理し、厚さ約7μmのプライマー層を形成した。
【0104】
(2)フォトクロミックコーティング液の調製:
プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性組成物を調製した。このラジカル重合性組成物100質量部に対し、フォトクロミック色素として下記クロメン1を3質量部、ヒンダートアミン系酸化防止剤(BASF社Chimassorb2020)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI−1870(BASF社製)0.6質量部を添加して十分に攪拌混合を行った組成物に、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM503)を攪拌しながら6質量部滴下した。自転公転方式攪拌脱泡装置にて5分間脱泡することで、フォトクロミック性を有する硬化性組成物を得た。
【0105】
(3)フォトクロミック層の形成:
上記(1)で形成したプライマー層上に、(2)で調製した硬化性組成物をスピンコート法でコーティングした。その後、このレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、UVランプ103(Dバルブ)で波長405nmの紫外線を積算光量で1800mJ/cm2(100mW/cm2、3分)照射し、さらに、100℃、60分間硬化処理を行い、厚さ40μmのフォトクロミック層を形成した。
【0106】
上述した実施の形態による眼鏡用調光レンズ製造装置1を用いて実際にフォトクロミック膜の膜厚を測定したところ、下記のような良好な結果が得られた。
膜厚測定は、単焦点レンズや累進レンズについては
図15(A)に示す5箇所について行った。バイフォーカスレンズの膜厚測定は、上記5箇所に小玉レンズ136上の測定位置Tを加えて6箇所について行った。眼鏡レンズ基材2の外周部の4箇所の測定位置は、外周縁より約10mm内側に設定した。レンズ外形寸法については、工場内データを流用した。
【0107】
膜厚を測定する眼鏡レンズ基材2の投入枚数は1000枚以上である。不良が検出されるまでの間に生産される枚数(不良の発生数)は、以下の表1に示す結果となった。表1においては、従来の手動による膜厚測定を行う場合と比較して示してある。
【0109】
表1から判るように、不良が発生した後、自動計測(本実施例)の場合はアラームが出て投入が停止するために不良の発生数は少ないが、手動計測では、検出までに時間がかかるために膜厚不良が多く発生する。
また、キズ不良の発生率は、以下の表2に示す結果が得られた。このデータを得るにあたって、投入枚数は1000枚以上である。
【0111】
表2から判るように、自動計測(本実施例)の場合は、手動計測の場合と較べてキズ不良の発生率が約0.5%低減した。この理由は、手動計測時の扱いによるキズが減少したからであると考えられる。
また、作業者による手動計測は、1箇所の測定点に約10秒必要であった。このため、測定点が5箇所あると、手動計測では50秒必要であった。しかし、自動計測(本実施例)の場合は、1箇所の測定点の測定に要する時間が約4秒程度で、5箇所の測定を約20秒で終了させることができるから、測定時間を短縮できた。
以上の結果より、本発明の有効性が確認された。
【0112】
上述した実施の形態においては、プローブ121の光が測定位置に垂直に照射されるようにプローブ121を眼鏡レンズ基材2に対して移動させる例を
示した。しかし、測定位置Tに光が垂直に照射されるようにするためには、眼鏡レンズ基材2をプローブ121に対して移動させて行うことができるし、眼鏡レンズ基材2とプローブ121との両方を移動させて行うことができる。