【文献】
小松崎和久 他,マグネシウム合金板材の塑性変形の向上とプレス成形特性に関する研究,茨城県工業技術センター 平成19年度研究報告,日本,茨城県工業技術センター,2007年,第36号,重点研究(6),http://www.kougise.pref.ibaraki.jp/periodical/reserch/36/vol36-06.htmlにて閲覧可能
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図を用いて説明する。なお、以下の実施形態及び実施例は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態及び実施例の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10の構成例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10は、圧延機11と、変形加工手段としての変形加工部13とを含む。また、変形加工部13は、支持ロール15と、調整ロール17と、誘導ロール19と、を含む。なお、変形加工手段は、変形加工部13としての、支持ロール15と調整ロール17と誘導ロール19とに限定されず、マグネシウム合金板の曲げ伸ばしをすることができるものであればよい。
【0023】
圧延機11は、マグネシウム合金板を圧延ロール12で往復圧延するものである。
【0024】
支持ロール15は、圧延機11の端に設置され、マグネシウム合金板を支持するものである。そして、支持ロール15とマグネシウム合金板を隔てた反対側には、調整ロール17が設置される。
【0025】
調整ロール17は、マグネシウム合金板を曲げるためのものである。調整ロール17が、マグネシウム合金板に接触し、力を加えることによって、マグネシウム合金板は、曲げられる。また、調整ロール17は、支持ロール15や誘導ロール19との距離を自在に調整することができるように設置される。そして、調整ロール17の位置を変化させることによって、曲げられるマグネシウム合金板の曲率などを変えることができる。
【0026】
調整ロール17とマグネシウム合金板を隔てた反対側には、誘導ロール19が設置される。誘導ロール19は、調整ロール17によって、曲げられたマグネシウム合金板を誘導するためのものである。
【0027】
以上、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10の構成例について、説明した。次に、変形加工手段によって、マグネシウム合金板に作用する力について、
図2を用いて、説明する。
【0028】
図2は、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10の変形加工手段によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。なお、
図2の分図(a)に示すように、
図2を用いた以下の説明では、説明の便宜のために、紙面上、最初にマグネシウム合金板の上側に位置するマグネシウム合金板の部分をA面と表記し、一方、紙面上、最初にマグネシウム合金板の下側に位置するマグネシウム合金板の部分をB面と表記することとする。そして、
図2を用いた以下の説明において、圧縮応力が作用している部分は、クロスハッチングすることによって表し、また、引張応力が作用している部分は、白抜きをすることによって表してある。
【0029】
図2の分図(b)に示すように、例えば、調整ロール17によって、マグネシウム合金板のA面に力を受けて、マグネシウム合金板が曲げられた場合、曲げられたマグネシウム合金板の曲面の内側、つまり、A面には、圧縮応力(クロスハッチング部分)が作用し、また、曲げられたマグネシウム合金板の曲面の外側、つまり、B面には、引張応力(白抜き部分)が作用する。
【0030】
ここで、マグネシウム合金板が、圧下されると、マグネシウム合金板の表面には、圧縮応力が作用する。一般的に、金属の結晶は、最密構造をとるものが多く、マグネシウム合金板が圧下され、製造されたマグネシウム合金板の集合組織は、圧延方向に平行に配向し、板の厚み方向に変形が起こりにくくなる。
【0031】
しかし、上述したように、マグネシウム合金板を曲げることによって、B面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0032】
そして、圧延方向を反対にして、曲げられたマグネシウム合金板を伸ばす場合、
図2の分図(c)に示すように、圧縮応力が作用していたA面には、引張応力が作用し、一方、引張応力が作用していたB面には、圧縮応力が作用する。したがって、上述したように、A面には、圧下するときと逆向きの力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0033】
したがって、上述したように、マグネシウム合金板の曲げ伸ばしをすることにより、圧縮応力及び引張応力とが作用して、圧下されるときと逆向きの力が働き、マグネシウムの結晶にせん断応力を付与することができる。そして、マグネシウム合金板において、マグネシウムの結晶にせん断応力、つまり、ずれ力を付与することによって、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制することができる。よって、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができる。
【0034】
つまり、変形加工手段によって、マグネシウム合金板の曲げ伸ばしをすることにより、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制し、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができる。
【0035】
以上、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10によって、マグネシウム合金板の曲げ伸ばしをするときに作用する力について説明した。次に、本発明に係る第一の実施例のマグネシウム合金製造装置20について説明する。なお、上述した実施形態と同一又は類似する構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0036】
[第一の実施例]
図3は、本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第一の実施例を示す図である。また、
図4は、第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。なお、
図3及び
図4を用いた以下の説明では、説明の便宜のために、
図3の紙面上、左側の変形加工手段を変形加工部13とし、
図3の紙面上、右側の変形加工手段を変形加工部23とする。なお、これは、左右を限定するものではなく、上下・左右・斜めなど、いずれの位置に設置してもよい。
【0037】
図3に示すように、第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置20は、圧延機11と、変形加工部13(23)としての支持ロール15(25)と調整ロール17(27)と誘導ロール19(29)と、を含む。
【0038】
そして、圧延機11の両端の左右それぞれに、変形加工部13・23としての支持ロール15・25と、調整ロール17・27と、誘導ロール19・29とが設置されている。
【0039】
ここで、
図4は、第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置20によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図であるが、
図4では、説明の便宜のために、例えば
図4中の分図(a)に示すように、紙面上、最初にマグネシウム合金板の上側に位置するマグネシウム合金板の部分をA面と表記し、一方、紙面上、最初にマグネシウム合金板の下側に位置するマグネシウム合金板の部分をB面と表記することとする。そして、圧縮応力が作用している部分は、クロスハッチングすることによって表し、また、引張応力が作用している部分は、白抜きをすることによって表してある。
【0040】
まず、圧延方向を左側方向にして、マグネシウム合金板を変形加工部13に通す場合について説明する。上述したように、マグネシウム合金板は、調整ロール17によって、曲げられ、
図4中の分図(b)に示すように、A面に圧縮応力が作用し、B面に引張応力が作用する。よって、B面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0041】
そして、次に、圧延方向を右側方向にして、マグネシウム合金板が変形加工部13を通り抜け、圧延ロール12、及び、変形加工部23を通る場合について説明する。すなわち、曲げられたマグネシウム合金板は、変形加工部13を通り抜け、圧延ロール12を通り、伸ばされる。上述したように、曲げられたマグネシウム合金板を伸ばす場合には、
図4中の分図(c)に示すように、圧縮応力が作用していたA面には、引張応力が作用し、一方、引張応力が作用していたB面には、圧縮応力が作用する。
【0042】
その後、伸ばされたマグネシウム合金板は、調整ロール27によって、曲げられることとなる。
図4中の分図(d)に示すように、曲げられたマグネシウム合金板の曲面の内側、つまり、B面には、圧縮応力が作用し、曲げられたマグネシウム合金板の曲面の外側、つまり、A面には、引張応力が作用する。よって、A面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0043】
さらに、圧延方向を反対である左側方向にして、マグネシウム合金板を伸ばす場合について説明する。
図4中の分図(e)に示すように、圧縮応力が作用していたB面には、引張応力が作用し、一方、引張応力が作用していたA面には、圧縮応力が作用する。
【0044】
したがって、A面及びB面に、圧下するときと逆向きの力が働き、せん断応力を付与することができ、マグネシウム合金板において、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制することができる。よって、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができる。
【0045】
なお、上述した工程を繰り返すと、
図4中の分図(b)→分図(c)→分図(d)→分図(e)の状態を繰り返すこととなる。
【0046】
以上、第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置20について説明した。次に、第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置30について説明する。なお、上述した実施形態と同一又は類似する構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0047】
[第二の実施例]
図5は、本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第二の実施例を示す図である。
【0048】
図5に示すように、第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置30は、圧延機11と、変形加工部13としての支持ロール15と調整ロール17と誘導ロール19と、反転手段31と、を含む。
【0049】
反転手段31は、マグネシウム合金板を反転するためのものである。
【0050】
図6は、第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置30によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。なお、
図6では、説明の便宜のために、例えば
図6中の分図(a)に示すように、紙面上、最初にマグネシウム合金板の上側に位置するマグネシウム合金板の部分をA面と表記し、一方、紙面上、最初にマグネシウム合金板の下側に位置するマグネシウム合金板の部分をB面と表記することとする。そして、圧縮応力が作用している部分は、クロスハッチングすることによって表し、また、引張応力が作用している部分は、白抜きをすることによって表してある。
【0051】
まず、圧延方向を、紙面上、左側方向にして、マグネシウム合金板を変形加工部13に通す場合について説明する。上述したように、マグネシウム合金板は、調整ロール17によって、曲げられ、
図6中の分図(b)に示すように、A面に圧縮応力が作用し、B面に引張応力が作用する。よって、B面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0052】
次に、圧延方向を、紙面上、右側方向にして、マグネシウム合金板を伸ばす場合について説明する。マグネシウム合金板は、変形加工部13を通り抜け、圧延ロール12を通り、伸ばされる。上述したように、曲げられたマグネシウム合金板を伸ばす場合には、
図6中の分図(c)に示すように、圧縮応力が作用していたA面には、引張応力が作用し、一方、引張応力が作用していたB面には、圧縮応力が作用する。よって、A面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0053】
そして、伸ばされたマグネシウム合金板は、マグネシウム合金板を反転させるための反転手段31によって裏返され、
図6中の分図(d)に示すように、紙面上、上側がB面となり、紙面上、下側がA面となる。
【0054】
その後、さらに圧延方向を、紙面上、左側方向にすると、マグネシウム合金板は、圧延ロール12によって圧下される。そして、圧下されたマグネシウム合金板は、調整ロール17によって曲げられ、
図6中の分図(e)に示すように、B面に圧縮応力が作用し、A面に引張応力が作用する。
【0055】
さらに、圧延方向を反対である、紙面上、右側方向にすると、曲げられたマグネシウム合金板は、変形加工部13を通り抜け、圧延ロール12を通り、伸ばされる。
図6中の分図(f)に示すように、圧縮応力が作用していたB面には、引張応力が作用し、引張応力が作用していたA面には、圧縮応力が作用する。
【0056】
そして、伸ばされたマグネシウム合金板は、さらに反転手段31によって裏返され、
図6中の分図(g)に示すように、紙面上、上側がA面となり、紙面上、下側がB面となる。つまり、紙面上、最初のマグネシウム合金板の上下の位置関係に戻ることとなる。
【0057】
このような構成によって、マグネシウム合金板のA面及びB面に対して、圧下するときと逆向きの力が働き、せん断応力を付与することができるので、マグネシウム合金板において、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制することができる。よって、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができる。
【0058】
なお、上述した工程を繰り返すと、
図6中の分図(b)→分図(c)→分図(d)→分図(e)→分図(f)→分図(g)の状態を繰り返すこととなる。
【0059】
以上、第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置30について説明した。次に、本発明に係る第三の実施例のマグネシウム合金製造装置40について、説明する。ここで、
図7は、本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第三の実施例を示す図である。また、
図8は、第三の実施例に係るマグネシウム合金製造装置が有するマグネシウム合金加熱部の具体例を示す図である。なお、上述した実施形態と同一又は類似する構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0060】
[第三の実施例]
第三の実施例に係るマグネシウム合金製造装置40は、圧延機11と、変形加工部13としての支持ロール15と調整ロール17と誘導ロール19と、マグネシウム合金加熱部41とを含む。
【0061】
マグネシウム合金加熱部41は、マグネシウム合金板を迅速に加熱するためのものであり、例えば、
図8で例示するような、誘導加熱コイル43を用いることが好ましい。
【0062】
マグネシウム合金加熱部41としての加熱コイル43は、マグネシウム合金板の一面側(例えば、上面側)の近傍に設置される。また、加熱コイル43は、圧延機11の近傍に設置される。そして、マグネシウム合金板は、マグネシウム合金加熱部41によって、圧延機11に入る直前に加熱される。
【0063】
マグネシウム合金板を加熱することにより、その昇温効果によって、変形加工部13により変形されるマグネシウム合金板の変形性能を向上させることができ、変形をより大きく加えることができる。したがって、マグネシウム合金板の内部組織を改善することができ、結晶粒を微細化することができる。
【0064】
以上、第三の実施例に係るマグネシウム合金製造装置40について説明した。
【0065】
なお、圧延製品の具体的な製造条件については、本発明を表した特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、適宜に選択・変更することができる。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0066】
例えば、第三の実施例に係るマグネシウム合金加熱部41については、マグネシウム合金板の一面側(上面側)のみを加熱するものであった。しかしながら、本発明に係るマグネシウム合金加熱部は、かかる形態に限定されるものではない。例えば、
図9に示すように、マグネシウム合金板を両面から加熱することができるように、マグネシウム合金板を挟んで略コの字型となるように設置された加熱コイル53を有するマグネシウム合金加熱部51として構成してもよい。
【0067】
また、圧延ロール12自体を加熱ロールとする、あるいは圧延ロール12の前後に加熱ロールを設置することで、マグネシウム合金板の上下面両面を加熱するように構成してもよい。なお、この加熱ロールについては、例えば、ロール自体が発熱装置を有することで、ロール表面が加熱され、このロール表面に接触する部材を昇温させようとするものである。したがって、加熱ロールがマグネシウム合金板を挟み込むことで、マグネシウム合金板を加熱することができるようになる。
【0068】
さらに、第三の実施例に係るマグネシウム合金加熱部41については、加熱炉を設ける構成としてもよい。この加熱炉の加熱方式としては、ガス炉や電気炉などを採用することができる。
【0069】
また、上述した第三の実施例に係るマグネシウム合金加熱部41については、圧延機11に対して変形加工部13設置側とは反対側に設置されていたが、本発明に適用されるマグネシウム合金加熱部の設置位置については、どの様な位置であってもよい。例えば、圧延機11を通り抜けてから変形加工部13によって曲げられるまでの間にマグネシウム合金加熱部を設置してもよいし、加熱ロールを採用することで圧延機11の位置にマグネシウム合金加熱部を設けてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態の圧延機11については、図示を簡略化して説明を行ったが、例えば、マグネシウム合金板を圧延機11に挿入するための送り込み装置などのその他の付帯設備を設けてもよい。
【0071】
さらに、上述した実施形態の圧延機11には、湾曲した状態のマグネシウム合金板が挿入されることになるので、マグネシウム合金板を好適に圧延機11に挿入するための装置、例えば、レベラー等の設備を設けることも可能である。