特許第6086483号(P6086483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086483マグネシウム合金製造装置及びその装置に用いられるマグネシウム合金製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086483
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】マグネシウム合金製造装置及びその装置に用いられるマグネシウム合金製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/38 20060101AFI20170220BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20170220BHJP
   C22F 1/06 20060101ALI20170220BHJP
   B21B 45/00 20060101ALN20170220BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20170220BHJP
【FI】
   B21B1/38 Z
   B21B3/00 L
   C22F1/06
   !B21B45/00 N
   !C22F1/00 604
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-95919(P2013-95919)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-213379(P2014-213379A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】596092470
【氏名又は名称】権田金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】権田 善夫
(72)【発明者】
【氏名】権田 源太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一也
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】野田 雅史
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−088206(JP,A)
【文献】 特開2005−298885(JP,A)
【文献】 特開2004−351486(JP,A)
【文献】 小松崎和久 他,マグネシウム合金板材の塑性変形の向上とプレス成形特性に関する研究,茨城県工業技術センター 平成19年度研究報告,日本,茨城県工業技術センター,2007年,第36号,重点研究(6),http://www.kougise.pref.ibaraki.jp/periodical/reserch/36/vol36-06.htmlにて閲覧可能
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00−11/00
C22C 23/00−23/06
C22F 1/00−1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム合金板を圧延ロールで往復圧延する圧延機と、
前記マグネシウム合金板に対して圧延1パス毎に変形加工を行う変形加工部と、
前記マグネシウム合金板が前記圧延機に入る前に当該マグネシウム合金板を加熱するマグネシウム合金板加熱部と、
を備えるマグネシウム合金製造装置であって、
前記変形加工部は、
前記圧延機の端に設置されて前記マグネシウム合金板を支持する支持ロールと、
前記支持ロールと前記マグネシウム合金板を隔てた反対側に、前記支持ロールよりも前記圧延機から離れて斜め方向に設置される調整ロールと、
前記調整ロールと前記マグネシウム合金板を隔てた反対側に、前記調整ロールよりも前記圧延機から離れて斜め方向に設置される誘導ロールと、
を備え、
前記圧延機によって圧延される前記マグネシウム合金板が、前記変形加工部を通るときに変形加工を受け、
前記圧延機の両側に一対の前記変形加工部が当該圧延機を挟んで互いに対向して設置されることにより、前記圧延機の両側で前記マグネシウム合金板の曲げられる方向が相違することを特徴とするマグネシウム合金製造装置。
【請求項2】
マグネシウム合金板を圧延ロールで往復圧延する圧延機と、
前記マグネシウム合金板に対して圧延1パス毎に変形加工を行う変形加工部と、
前記マグネシウム合金板が前記圧延機に入る前に当該マグネシウム合金板を加熱するマグネシウム合金板加熱部と、
を備えるマグネシウム合金製造装置であって、
前記変形加工部は、
前記圧延機の端に設置されて前記マグネシウム合金板を支持する支持ロールと、
前記支持ロールと前記マグネシウム合金板を隔てた反対側に、前記支持ロールよりも前記圧延機から離れて斜め方向に設置される調整ロールと、
前記調整ロールと前記マグネシウム合金板を隔てた反対側に、前記調整ロールよりも前記圧延機から離れて斜め方向に設置される誘導ロールと、
を備え、
前記圧延機によって圧延される前記マグネシウム合金板が、前記変形加工部を通るときに変形加工を受け、
前記圧延機の一端側に、前記変形加工部を備えるとともに、当該圧延機の他端側に、マグネシウム合金板の表裏反転を行う反転手段を備えることを特徴とするマグネシウム合金製造装置。
【請求項3】
マグネシウム合金板を圧延ロールで往復圧延する圧延機が用いられるマグネシウム合金製造方法において、
前記マグネシウム合金板に対して圧延1パス毎に変形加工を行う変形加工手段が、圧延機出側のライン上に配置され、
前記変形加工手段によって前記マグネシウム合金板が曲げられ、当該マグネシウム合金板の曲面の内側には圧縮応力が作用し、当該マグネシウム合金板の曲面の外側には引張応力が作用するとともに、
圧延方向を反対にすることにより、曲げられた前記マグネシウム合金板が前記圧延機に引き込まれて伸ばされ、前記マグネシウム合金板の曲面の外側だった面には圧縮応力が作用し、当該マグネシウム合金板の曲面の内側だった面には引張応力が作用することを特徴とするマグネシウム合金製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金製造装置及びその装置に用いられるマグネシウム合金製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金は、軽量であるので、マグネシウム合金を加工用の素材として用いることにより、加工の際に鉄系材料に比べて省エネルギー化を実現することができる。また、マグネシウムは、海水中など、自然界に存在しており、資源量が豊富である。さらに、マグネシウム合金は、プラスチックと比較して、リサイクルしやすいことが知られている。
【0003】
また、マグネシウム合金は、常温下で、延性が低いことが知られている。これは、六方最密構造を有するマグネシウムの結晶構造による。そのため、鋳造や加熱を行う圧延などにより、所望の形状のマグネシウム合金が製造される。例えば、下記特許文献1には、鋳造による金属材料製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−237208号公報
【特許文献2】特開2010−116618号公報
【特許文献3】特開2011−121118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧延によって、マグネシウム合金を製造する場合、マグネシウム合金に圧延工程を繰り返すと、マグネシウムの結晶は、圧延方向と平行方向に配向し、強い底面集合組織が形成される。このマグネシウムの結晶の強い底面集合組織は、マグネシウム合金の変形を難しくさせている要因となっている。したがって、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制し、加工性や塑性加工性を向上させるという課題があった。
【0006】
ところで、肉厚品のマグネシウム合金については、上述した課題に対して、多軸鍛造処理が行われている(例えば、特許文献2及び特許文献3等参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載の多軸鍛造処理は、板状のマグネシウム合金の製造には、適していない。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであり、その目的は、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制し、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができるマグネシウム合金製造措置及びその装置に用いられるマグネシウム合金製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマグネシウム合金製造装置は、マグネシウム合金板を圧延ロールで往復圧延する圧延機と、前記マグネシウム合金板に対して圧延1パス毎に変形加工を行う変形加工部と、前記マグネシウム合金板が前記圧延機に入る前に当該マグネシウム合金板を加熱するマグネシウム合金板加熱部と、を備えるマグネシウム合金製造装置であって、前記変形加工部は、前記圧延機の端に設置されて前記マグネシウム合金板を支持する支持ロールと、前記支持ロールと前記マグネシウム合金板を隔てた反対側に、前記支持ロールよりも前記圧延機から離れて斜め方向に設置される調整ロールと、前記調整ロールと前記マグネシウム合金板を隔てた反対側に、前記調整ロールよりも前記圧延機から離れて斜め方向に設置される誘導ロールと、を備え、前記圧延機によって圧延される前記マグネシウム合金板が、前記変形加工部を通るときに変形加工を受け、前記圧延機の両側に一対の前記変形加工部が当該圧延機を挟んで互いに対向して設置されることにより、前記圧延機の両側で前記マグネシウム合金板の曲げられる方向が相違することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明に係るマグネシウム合金製造装置は、マグネシウム合金板を圧延ロールで往復圧延する圧延機と、前記マグネシウム合金板に対して圧延1パス毎に変形加工を行う変形加工部と、前記マグネシウム合金板が前記圧延機に入る前に当該マグネシウム合金板を加熱するマグネシウム合金板加熱部と、を備えるマグネシウム合金製造装置であって、前記変形加工部は、前記圧延機の端に設置されて前記マグネシウム合金板を支持する支持ロールと、前記支持ロールと前記マグネシウム合金板を隔てた反対側に、前記支持ロールよりも前記圧延機から離れて斜め方向に設置される調整ロールと、前記調整ロールと前記マグネシウム合金板を隔てた反対側に、前記調整ロールよりも前記圧延機から離れて斜め方向に設置される誘導ロールと、を備え、前記圧延機によって圧延される前記マグネシウム合金板が、前記変形加工部を通るときに変形加工を受け、前記圧延機の一端側に、前記変形加工部を備えるとともに、当該圧延機の他端側に、マグネシウム合金板の表裏反転を行う反転手段を備えることができる。
【0014】
本発明に係るマグネシウム合金製造方法は、マグネシウム合金板を圧延ロールで往復圧延する圧延機が用いられるマグネシウム合金製造方法において、前記マグネシウム合金板に対して圧延1パス毎に変形加工を行う変形加工手段が、圧延機出側のライン上に配置され、前記変形加工手段によって前記マグネシウム合金板が曲げられ、当該マグネシウム合金板の曲面の内側には圧縮応力が作用し、当該マグネシウム合金板の曲面の外側には引張応力が作用するとともに、圧延方向を反対にすることにより、曲げられた前記マグネシウム合金板が前記圧延機に引き込まれて伸ばされ、前記マグネシウム合金板の曲面の外側だった面には圧縮応力が作用し、当該マグネシウム合金板の曲面の内側だった面には引張応力が作用することを特徴とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制し、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができるマグネシウム合金製造装置及びその装置に用いられるマグネシウム合金製造方法を提供することができるようになる。
【0018】
また、本発明によれば、変形をより大きく加えることができ、マグネシウム合金板の内部組織を改善し、結晶粒を微細化することができるマグネシウム合金製造装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置の構成例を示す図である。
図2】本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置の変形加工手段によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。
図3】本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第一の実施例を示す図である。
図4】第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。
図5】本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第二の実施例を示す図である。
図6】第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。
図7】本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第三の実施例を示す図である。
図8】第三の実施例に係るマグネシウム合金製造装置が有するマグネシウム合金加熱部の具体例を示す図である。
図9】本発明に適用可能なマグネシウム合金加熱部の別の形態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図を用いて説明する。なお、以下の実施形態及び実施例は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態及び実施例の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10の構成例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10は、圧延機11と、変形加工手段としての変形加工部13とを含む。また、変形加工部13は、支持ロール15と、調整ロール17と、誘導ロール19と、を含む。なお、変形加工手段は、変形加工部13としての、支持ロール15と調整ロール17と誘導ロール19とに限定されず、マグネシウム合金板の曲げ伸ばしをすることができるものであればよい。
【0023】
圧延機11は、マグネシウム合金板を圧延ロール12で往復圧延するものである。
【0024】
支持ロール15は、圧延機11の端に設置され、マグネシウム合金板を支持するものである。そして、支持ロール15とマグネシウム合金板を隔てた反対側には、調整ロール17が設置される。
【0025】
調整ロール17は、マグネシウム合金板を曲げるためのものである。調整ロール17が、マグネシウム合金板に接触し、力を加えることによって、マグネシウム合金板は、曲げられる。また、調整ロール17は、支持ロール15や誘導ロール19との距離を自在に調整することができるように設置される。そして、調整ロール17の位置を変化させることによって、曲げられるマグネシウム合金板の曲率などを変えることができる。
【0026】
調整ロール17とマグネシウム合金板を隔てた反対側には、誘導ロール19が設置される。誘導ロール19は、調整ロール17によって、曲げられたマグネシウム合金板を誘導するためのものである。
【0027】
以上、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10の構成例について、説明した。次に、変形加工手段によって、マグネシウム合金板に作用する力について、図2を用いて、説明する。
【0028】
図2は、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10の変形加工手段によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。なお、図2の分図(a)に示すように、図2を用いた以下の説明では、説明の便宜のために、紙面上、最初にマグネシウム合金板の上側に位置するマグネシウム合金板の部分をA面と表記し、一方、紙面上、最初にマグネシウム合金板の下側に位置するマグネシウム合金板の部分をB面と表記することとする。そして、図2を用いた以下の説明において、圧縮応力が作用している部分は、クロスハッチングすることによって表し、また、引張応力が作用している部分は、白抜きをすることによって表してある。
【0029】
図2の分図(b)に示すように、例えば、調整ロール17によって、マグネシウム合金板のA面に力を受けて、マグネシウム合金板が曲げられた場合、曲げられたマグネシウム合金板の曲面の内側、つまり、A面には、圧縮応力(クロスハッチング部分)が作用し、また、曲げられたマグネシウム合金板の曲面の外側、つまり、B面には、引張応力(白抜き部分)が作用する。
【0030】
ここで、マグネシウム合金板が、圧下されると、マグネシウム合金板の表面には、圧縮応力が作用する。一般的に、金属の結晶は、最密構造をとるものが多く、マグネシウム合金板が圧下され、製造されたマグネシウム合金板の集合組織は、圧延方向に平行に配向し、板の厚み方向に変形が起こりにくくなる。
【0031】
しかし、上述したように、マグネシウム合金板を曲げることによって、B面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0032】
そして、圧延方向を反対にして、曲げられたマグネシウム合金板を伸ばす場合、図2の分図(c)に示すように、圧縮応力が作用していたA面には、引張応力が作用し、一方、引張応力が作用していたB面には、圧縮応力が作用する。したがって、上述したように、A面には、圧下するときと逆向きの力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0033】
したがって、上述したように、マグネシウム合金板の曲げ伸ばしをすることにより、圧縮応力及び引張応力とが作用して、圧下されるときと逆向きの力が働き、マグネシウムの結晶にせん断応力を付与することができる。そして、マグネシウム合金板において、マグネシウムの結晶にせん断応力、つまり、ずれ力を付与することによって、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制することができる。よって、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができる。
【0034】
つまり、変形加工手段によって、マグネシウム合金板の曲げ伸ばしをすることにより、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制し、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができる。
【0035】
以上、本実施形態に係るマグネシウム合金製造装置10によって、マグネシウム合金板の曲げ伸ばしをするときに作用する力について説明した。次に、本発明に係る第一の実施例のマグネシウム合金製造装置20について説明する。なお、上述した実施形態と同一又は類似する構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0036】
[第一の実施例]
図3は、本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第一の実施例を示す図である。また、図4は、第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。なお、図3及び図4を用いた以下の説明では、説明の便宜のために、図3の紙面上、左側の変形加工手段を変形加工部13とし、図3の紙面上、右側の変形加工手段を変形加工部23とする。なお、これは、左右を限定するものではなく、上下・左右・斜めなど、いずれの位置に設置してもよい。
【0037】
図3に示すように、第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置20は、圧延機11と、変形加工部13(23)としての支持ロール15(25)と調整ロール17(27)と誘導ロール19(29)と、を含む。
【0038】
そして、圧延機11の両端の左右それぞれに、変形加工部13・23としての支持ロール15・25と、調整ロール17・27と、誘導ロール19・29とが設置されている。
【0039】
ここで、図4は、第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置20によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図であるが、図4では、説明の便宜のために、例えば図4中の分図(a)に示すように、紙面上、最初にマグネシウム合金板の上側に位置するマグネシウム合金板の部分をA面と表記し、一方、紙面上、最初にマグネシウム合金板の下側に位置するマグネシウム合金板の部分をB面と表記することとする。そして、圧縮応力が作用している部分は、クロスハッチングすることによって表し、また、引張応力が作用している部分は、白抜きをすることによって表してある。
【0040】
まず、圧延方向を左側方向にして、マグネシウム合金板を変形加工部13に通す場合について説明する。上述したように、マグネシウム合金板は、調整ロール17によって、曲げられ、図4中の分図(b)に示すように、A面に圧縮応力が作用し、B面に引張応力が作用する。よって、B面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0041】
そして、次に、圧延方向を右側方向にして、マグネシウム合金板が変形加工部13を通り抜け、圧延ロール12、及び、変形加工部23を通る場合について説明する。すなわち、曲げられたマグネシウム合金板は、変形加工部13を通り抜け、圧延ロール12を通り、伸ばされる。上述したように、曲げられたマグネシウム合金板を伸ばす場合には、図4中の分図(c)に示すように、圧縮応力が作用していたA面には、引張応力が作用し、一方、引張応力が作用していたB面には、圧縮応力が作用する。
【0042】
その後、伸ばされたマグネシウム合金板は、調整ロール27によって、曲げられることとなる。図4中の分図(d)に示すように、曲げられたマグネシウム合金板の曲面の内側、つまり、B面には、圧縮応力が作用し、曲げられたマグネシウム合金板の曲面の外側、つまり、A面には、引張応力が作用する。よって、A面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0043】
さらに、圧延方向を反対である左側方向にして、マグネシウム合金板を伸ばす場合について説明する。図4中の分図(e)に示すように、圧縮応力が作用していたB面には、引張応力が作用し、一方、引張応力が作用していたA面には、圧縮応力が作用する。
【0044】
したがって、A面及びB面に、圧下するときと逆向きの力が働き、せん断応力を付与することができ、マグネシウム合金板において、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制することができる。よって、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができる。
【0045】
なお、上述した工程を繰り返すと、図4中の分図(b)→分図(c)→分図(d)→分図(e)の状態を繰り返すこととなる。
【0046】
以上、第一の実施例に係るマグネシウム合金製造装置20について説明した。次に、第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置30について説明する。なお、上述した実施形態と同一又は類似する構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0047】
[第二の実施例]
図5は、本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第二の実施例を示す図である。
【0048】
図5に示すように、第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置30は、圧延機11と、変形加工部13としての支持ロール15と調整ロール17と誘導ロール19と、反転手段31と、を含む。
【0049】
反転手段31は、マグネシウム合金板を反転するためのものである。
【0050】
図6は、第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置30によって、マグネシウム合金板を曲げ伸ばしたときに作用する力を示す図である。なお、図6では、説明の便宜のために、例えば図6中の分図(a)に示すように、紙面上、最初にマグネシウム合金板の上側に位置するマグネシウム合金板の部分をA面と表記し、一方、紙面上、最初にマグネシウム合金板の下側に位置するマグネシウム合金板の部分をB面と表記することとする。そして、圧縮応力が作用している部分は、クロスハッチングすることによって表し、また、引張応力が作用している部分は、白抜きをすることによって表してある。
【0051】
まず、圧延方向を、紙面上、左側方向にして、マグネシウム合金板を変形加工部13に通す場合について説明する。上述したように、マグネシウム合金板は、調整ロール17によって、曲げられ、図6中の分図(b)に示すように、A面に圧縮応力が作用し、B面に引張応力が作用する。よって、B面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0052】
次に、圧延方向を、紙面上、右側方向にして、マグネシウム合金板を伸ばす場合について説明する。マグネシウム合金板は、変形加工部13を通り抜け、圧延ロール12を通り、伸ばされる。上述したように、曲げられたマグネシウム合金板を伸ばす場合には、図6中の分図(c)に示すように、圧縮応力が作用していたA面には、引張応力が作用し、一方、引張応力が作用していたB面には、圧縮応力が作用する。よって、A面には、圧下するときと逆の向きに力が働き、せん断応力を付与することができる。
【0053】
そして、伸ばされたマグネシウム合金板は、マグネシウム合金板を反転させるための反転手段31によって裏返され、図6中の分図(d)に示すように、紙面上、上側がB面となり、紙面上、下側がA面となる。
【0054】
その後、さらに圧延方向を、紙面上、左側方向にすると、マグネシウム合金板は、圧延ロール12によって圧下される。そして、圧下されたマグネシウム合金板は、調整ロール17によって曲げられ、図6中の分図(e)に示すように、B面に圧縮応力が作用し、A面に引張応力が作用する。
【0055】
さらに、圧延方向を反対である、紙面上、右側方向にすると、曲げられたマグネシウム合金板は、変形加工部13を通り抜け、圧延ロール12を通り、伸ばされる。図6中の分図(f)に示すように、圧縮応力が作用していたB面には、引張応力が作用し、引張応力が作用していたA面には、圧縮応力が作用する。
【0056】
そして、伸ばされたマグネシウム合金板は、さらに反転手段31によって裏返され、図6中の分図(g)に示すように、紙面上、上側がA面となり、紙面上、下側がB面となる。つまり、紙面上、最初のマグネシウム合金板の上下の位置関係に戻ることとなる。
【0057】
このような構成によって、マグネシウム合金板のA面及びB面に対して、圧下するときと逆向きの力が働き、せん断応力を付与することができるので、マグネシウム合金板において、マグネシウムの結晶の底面集合組織の形成を抑制することができる。よって、塑性加工性を改善し、機械的性質を向上させることができる。
【0058】
なお、上述した工程を繰り返すと、図6中の分図(b)→分図(c)→分図(d)→分図(e)→分図(f)→分図(g)の状態を繰り返すこととなる。
【0059】
以上、第二の実施例に係るマグネシウム合金製造装置30について説明した。次に、本発明に係る第三の実施例のマグネシウム合金製造装置40について、説明する。ここで、図7は、本発明に係るマグネシウム合金製造装置の第三の実施例を示す図である。また、図8は、第三の実施例に係るマグネシウム合金製造装置が有するマグネシウム合金加熱部の具体例を示す図である。なお、上述した実施形態と同一又は類似する構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0060】
[第三の実施例]
第三の実施例に係るマグネシウム合金製造装置40は、圧延機11と、変形加工部13としての支持ロール15と調整ロール17と誘導ロール19と、マグネシウム合金加熱部41とを含む。
【0061】
マグネシウム合金加熱部41は、マグネシウム合金板を迅速に加熱するためのものであり、例えば、図8で例示するような、誘導加熱コイル43を用いることが好ましい。
【0062】
マグネシウム合金加熱部41としての加熱コイル43は、マグネシウム合金板の一面側(例えば、上面側)の近傍に設置される。また、加熱コイル43は、圧延機11の近傍に設置される。そして、マグネシウム合金板は、マグネシウム合金加熱部41によって、圧延機11に入る直前に加熱される。
【0063】
マグネシウム合金板を加熱することにより、その昇温効果によって、変形加工部13により変形されるマグネシウム合金板の変形性能を向上させることができ、変形をより大きく加えることができる。したがって、マグネシウム合金板の内部組織を改善することができ、結晶粒を微細化することができる。
【0064】
以上、第三の実施例に係るマグネシウム合金製造装置40について説明した。
【0065】
なお、圧延製品の具体的な製造条件については、本発明を表した特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、適宜に選択・変更することができる。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0066】
例えば、第三の実施例に係るマグネシウム合金加熱部41については、マグネシウム合金板の一面側(上面側)のみを加熱するものであった。しかしながら、本発明に係るマグネシウム合金加熱部は、かかる形態に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、マグネシウム合金板を両面から加熱することができるように、マグネシウム合金板を挟んで略コの字型となるように設置された加熱コイル53を有するマグネシウム合金加熱部51として構成してもよい。
【0067】
また、圧延ロール12自体を加熱ロールとする、あるいは圧延ロール12の前後に加熱ロールを設置することで、マグネシウム合金板の上下面両面を加熱するように構成してもよい。なお、この加熱ロールについては、例えば、ロール自体が発熱装置を有することで、ロール表面が加熱され、このロール表面に接触する部材を昇温させようとするものである。したがって、加熱ロールがマグネシウム合金板を挟み込むことで、マグネシウム合金板を加熱することができるようになる。
【0068】
さらに、第三の実施例に係るマグネシウム合金加熱部41については、加熱炉を設ける構成としてもよい。この加熱炉の加熱方式としては、ガス炉や電気炉などを採用することができる。
【0069】
また、上述した第三の実施例に係るマグネシウム合金加熱部41については、圧延機11に対して変形加工部13設置側とは反対側に設置されていたが、本発明に適用されるマグネシウム合金加熱部の設置位置については、どの様な位置であってもよい。例えば、圧延機11を通り抜けてから変形加工部13によって曲げられるまでの間にマグネシウム合金加熱部を設置してもよいし、加熱ロールを採用することで圧延機11の位置にマグネシウム合金加熱部を設けてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態の圧延機11については、図示を簡略化して説明を行ったが、例えば、マグネシウム合金板を圧延機11に挿入するための送り込み装置などのその他の付帯設備を設けてもよい。
【0071】
さらに、上述した実施形態の圧延機11には、湾曲した状態のマグネシウム合金板が挿入されることになるので、マグネシウム合金板を好適に圧延機11に挿入するための装置、例えば、レベラー等の設備を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
10,20,30,40 マグネシウム合金製造装置、11 圧延機、12 圧延ロール、13,23 変形加工部、15,25 支持ロール、17,27 調整ロール、19,29 誘導ロール、31 反転手段、41,51 マグネシウム合金加熱部、43,53 加熱コイル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9