【文献】
International Journal of Cancer,2004年 3月 1日,Vol.108, No.6,p.797-804
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性剤が、化学療法剤、細胞毒性剤、5−フルオロウラシル、シスプラチン、マイトマイシンC、オキサリプラチン、タモキシフェン、及び苦痛救助剤から選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
前記腫瘍が、皮膚、肺、縦隔、心膜、前立腺、胸部、結腸と直腸、肝臓、膵臓、脳、頭蓋内構造、目、精巣、卵巣、子宮、子宮頚部、腎臓、甲状腺、膀胱、胃腸管、血液系組織、骨、関節または直腸の腫瘍である、請求項9に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の陳述)
本発明の第一の態様に照らすと、IgG、IgAまたはIgMアイソタイプのいずれかである、CRLR受容体の受容体活性制御タンパク(RAMP)との結合能を有する単離抗体を提供する。
【0010】
一つの実施態様としては、該発明の第一の態様における抗体がIgGアイソタイプよりなるものである。本抗体は、IgG1、IgG2,IgG3またはIgG4サブクラスのものであり得、好ましくはIgG1である抗体である。
別の実施態様としては、該発明の第一の態様における抗体がIgAアイソタイプよりなるものである。該抗体は、IgA1またはIgA2サブクラスのものであり得る。
さらに別の実施態様としては、該発明の第一の態様における抗体がIgMアイソタイプよりなるものである。
【0011】
本発明の第一の態様における抗体は単量体、二量体、三量体、四量体または五量体ペプチドでありうる。
該抗体はRAMP1,RAMP2またはRAMP3に結合能を有しうる。好ましくは、本発明の該抗体はRAMP3に結合能を有する。
本発明の該抗体はRAMP拮抗剤または作用剤または該受容体の天然または人工リガンド活性の相乗作用剤となりうる。
【0012】
本発明の該抗体はRAMP拮抗剤として機能しうる。本出願での開示内容は、該抗体がRAMPとCRLR間の相互作用を阻害するか、またはRAMP/CRLR複合体とアドレノモジュリンといったリガンド間の相互作用を阻害しうることを示している。一つの実施態様としては、該抗体はIgMアイソタイプの抗RAMP3抗体であり、かつRAMP拮抗剤である。さらに別の実施態様としては、該抗体はIgG1アイソタイプの抗RAMP3抗体であり、かつRAMP拮抗剤である。
一つの実施態様としては、本発明にかかる抗体はRAMP作用剤として機能している。本出願での開示データは、該抗体が可能であることを示している。一つの実施態様としては、該抗体はIgG1アイソタイプの抗RAMP3抗体であり、かつRAMP作用剤またはAM作用に対するRAMP活性の相乗作用剤でもある。
【0013】
本発明の第二の態様は、CRLR受容体の受容体活性制御タンパク(RAMP)への結合能を有する単離抗体を提供し、該抗体は以下に示す結合ドメイングループから選択される一つの結合ドメインを含んでいる:
i)
図1aに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
ii)
図1bに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
iii)
図1cに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
iv)
図1dに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
v)上記(i)、(ii)、(iii)または(iv)において定められた核酸配列にハイブリッド形成する核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)または(v)において定められた核酸配列に対し、遺伝暗号の結果として変性した核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン。
【0014】
第三の態様として、本発明はCRLR受容体の受容体活性制御タンパク(RAMP)への結合能を有する単離抗体を提供し、該抗体は以下に示す結合ドメイングループから選択される一つの結合ドメインを含んでいる:
i)
図2aに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
ii)
図2bに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
iii)
図2cに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
iv)
図2dに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
v)上記(i)、(ii)、(iii)または(iv)において定められた核酸配列にハイブリッド形成する核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;そして、
vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)または(v)において定められた核酸配列に対し、遺伝暗号の結果として変性した核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン。
【0015】
本発明の好ましい態様として、CRLR受容体の受容体活性制御タンパク(RAMP)への結合能を有する単離抗体が提供され、該抗体は、以下に示す結合ドメインの一方または両方を含んでいる:
i)
図1aに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;および/または、
ii)
図2aに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン。
【0016】
本発明のさらに好ましい態様として、CRLR受容体の受容体活性制御タンパクへの結合能を有する単離抗体が提供され、該抗体は、以下に示す結合ドメインの一方または両方を含んでいる:
i)
図1bに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;および/または、
ii)
図2bに示された配列に相当する核酸配列により構成される核酸分子によってコードされたアミノ酸配列よりなる結合ドメイン。
【0017】
核酸分子は、
図1aからdまたは
図2aからdに示される核酸配列、またはこれらの相補鎖配列につき、厳密なハイブリダイゼーション条件下にて、アニールすることができる。厳密なハイブリダイゼーション/洗浄条件は当業者にとって既知である。例えば、核酸ハイブリッドは60度、0.1×SSC、0.1%SDSにて洗浄後も安定である。もし核酸配列が分かっていれば、最適ハイブリダイゼーション条件を計算しうることは当業者にとって周知である。例えば、ハイブリダイゼーション処理する核酸のGC含量により、ハイブリダイゼーション条件を決定することができる。Sambrookら(1989)Molecular Cloning;A Laboratory Approachを参照されたい。特定の類似性を有する核酸分子間でのハイブリダイゼーションを実施するのに必要とされる厳密な条件を計算するための公式としては:
Tm=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.41[%G+C]−0.63(%ホルムアミド)
がよく知られている。
【0018】
本発明のさらなる態様は、CRLR受容体の受容体活性制御タンパク(RAMP)への結合能を有する単離抗体を提供し、該抗体は、以下に示す結合ドメイングループから選択される一つの結合ドメインを含んでいる:
i)
図1aに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
ii)
図1bに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
iii)
図1cに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;および
iv)
図1dに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン。
【0019】
更なる態様において、本発明はCRLR受容体の受容体活性制御タンパク(RAMP)への結合能を有する単離抗体を提供し、該抗体は、以下に示す結合ドメイングループから選択される一つの結合ドメインを含んでいる:
i)
図2aに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
ii)
図2bに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;
iii)
図2cに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;および
iv)
図2dに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン。
【0020】
本発明の好ましい態様において、CRLR受容体の受容体活性制御タンパクへの結合能を有する単離抗体が提供され、該抗体は、以下に示す結合ドメインの一方またはいずれもを含んでいる:
i)
図1aに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;および/または、
ii)
図2aに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン。
【0021】
本発明の好ましい態様において、CRLR受容体の受容体活性制御タンパクへの結合能を有する単離抗体を提供し、該抗体は、以下に示す結合ドメインの一方またはいずれもを含んでいる:
i)
図1bに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン;および/または、
ii)
図2bに示された配列に実質的に相当するアミノ酸配列よりなる結合ドメイン。
【0022】
一つの実施態様として、本発明にかかる抗体は、
図3に示されたアミノ酸配列より選択された一つのアミノ酸配列になるよう実質的に設計された一つのアミノ酸配列を含む結合ドメインを有している。
一つの実施態様として、本発明にかかる抗体は、
図4に示されたアミノ酸配列より選択された一つのアミノ酸配列になるよう実質的に設計された一つのアミノ酸配列を含む結合ドメインを有している。
【0023】
一つの実施態様として、本発明にかかる抗体は、
図5に示されたアミノ酸配列より選択された一つのアミノ酸配列になるよう実質的に設計された一つのアミノ酸配列を含む結合ドメインを有している。
一つの実施態様として、本発明にかかる抗体は、
図6に示されたアミノ酸配列より選択された一つのアミノ酸配列になるよう実質的に設計された一つのアミノ酸配列を含む結合ドメインを有している。
【0024】
一つの実施態様として、本発明にかかる抗体は、
図7に示されたアミノ酸配列より選択された一つのアミノ酸配列になるよう実質的に設計された一つのアミノ酸配列を含む結合ドメインを有している。
一つの実施態様として、本発明にかかる抗体は、
図8に示されたアミノ酸配列より選択された一つのアミノ酸配列になるよう実質的に設計された一つのアミノ酸配列を含む結合ドメインを有している。
【0025】
一つの実施態様として、本発明にかかる抗体は、
図9に示されたアミノ酸配列より選択された一つのアミノ酸配列になるよう実質的に設計された一つのアミノ酸配列を含む結合ドメインを有している。
一つの実施態様として、本発明にかかる抗体は、
図10に示されたアミノ酸配列より選択された一つのアミノ酸配列になるよう実質的に設計された一つのアミノ酸配列を含む結合ドメインを有している。
【0026】
同一のまたは異なる配列またはその組み合わせである結合ドメインを複数個含んでいる抗体は本発明に包含される。それ全体または各々のポリペプチドは、ヒト抗体フレームワーク領域に発現しうる。例えば、一つのまたは複数の結合領域はヒト抗体全体またはその可変領域のCDRと置換することができる。
【0027】
第四の態様として、本発明は、第二の態様における抗体と第三の態様における抗体が組み合わさって、または関連して構成される抗体を提供する。このような抗体は、Fv、(Fab‘)2またはscFV抗体断片の形をとって存在しうる。
本発明の抗体は、探知しうる、または機能を発揮しうるラベルにて標識しうる。
【0028】
更なる態様として、本発明は、本発明の第一、第二、第三または第四の態様にかかる抗体をコードしている配列よりなる単離核酸、および該抗体の発現を誘導する条件下での該核酸の発現方法および該抗体の回収方法よりなる本発明の抗体調製の方法を提供する。
本発明に依拠する抗体は、患者(好ましくはヒトの)に発症する癌に代表される増殖性疾患の治療方法といったヒトまたは動物の身体に対する治療、予防または診断方法に使用することができ、該方法は、本発明にかかる抗体の有効量を該患者に投与することよりなる。本発明は、また、本発明にかかる抗体の医薬への使用および癌などの増殖性疾患の診断または治療薬の製造における本発明にかかる抗体の使用を提供する。
【0029】
本発明による抗体は、また、炎症性疾患の患者(好ましくはヒトの)の治療または予防方法に使用することができ、該方法は、本発明にかかる抗体の有効量を該患者に投与することよりなる。本発明は、また、炎症性疾患の治療薬の製造における本発明にかかる抗体の使用を提供する。
【0030】
本出願で使用される“抗体”という用語は、イムノグロブリン分子またはイムノグロブリン分子の免疫的に活性のある部分、言い換えると、天然由来であろうと、部分的または完全に合成であろうと、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子、を意味する。該用語は、また、抗体結合ドメインそのもの、またはそれと相同な結合ドメインを有するいかなるポリペプチドまたは蛋白質をも含む。これらは天然由来の場合もありうるし、部分的または完全に合成されている場合もありうる。抗体の例としては、Fab、scFv,Fv,dAb,Fdを含むフラグメントや二重特異性抗体が挙げられる。
抗体はポリクローンまたはモノクローンでありうる。好ましくは、該抗体はモノクローン抗体であり、本出願では“mab”として表わされる。
【0031】
モノクローン抗体やその他の抗体を取得し、その他の抗体またはオリジナルの抗体の特異性を残したキメラ分子を製造する組み換えDNA工学の技術を利用することが可能である。このような技術は、抗体のイムノグロブリン可変領域や相補性決定領域(CDRs)をコードしているDNAを異なるイムノグロブリンの定常領域や定常領域及びフレームワーク領域に導入することを伴いうる。例として、EP−A−184187、GB2188638AまたはEP−A−239400を参照のこと。ハイブリドーマやその他の抗体産生細胞は遺伝的変異やその他の変化を受けやすく、それにより産生される抗体の結合特異性は変わる場合もあれば変わらない場合もある。
【0032】
抗体はいくつかの方法により変形することが出来るため、“抗体”という用語はいかなる抗体または所望の特異性を有する結合ドメインを含むものをも網羅するものと解釈すべきである。それゆえ、該用語は、抗体のフラグメント、その派生物、機能的に抗体に相当するもの、および抗体ホモログ、ヒト化抗体を含んでおり、天然由来であれ、全または部分合成であれ、イムノグロブリンの結合ドメインを有するいかなるポリペプチドをも含むものである。イムノグロブリン結合ドメインまたはこれに相当するものが別のポリペプチドと連結したタンパクからなるキメラ分子は、それゆえ、含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現はEP−A−0120694およびEP−A−0125023に記載されている。ヒト化抗体はマウスといった非ヒト抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を有する修飾抗体でもよい。ヒト化抗体の製造方法は、例えば、US Patent No.5225539に記載されており、抗体全体を構成するフラグメントが結合抗原の機能を果たしうることが示されている。結合フラグメントの例としては、(i)VL,VH、CLおよびCHIドメインより構成されるFabフラグメント;(ii)VHおよびCH1ドメインより構成されるFdフラグメント;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインより構成されるFvフラグメント;(iv)VHドメインより構成されるdAbフラグメント(Ward、E.S.ら、Nature341:544−546);(v)単離CDR領域;(vi)2つの連結したFabフラグメントよりなるF(ab‘)二価フラグメント(vii)2つのドメインを連結して抗原結合部位を形成するペプチドリンカーにより、VHドメインとVLドメインを連結してなる単鎖Fv分子(scFv)(Birdら、Science242:423−426(1988);Hustonら、PNAS USA85:5879−5883(1988));(viii)二重特異性単鎖Fv二量体(PCT/Us92/09965)および(ix)遺伝子融合により構築される多価または多重特異性を有する“二重特異性抗体”(W094/13804;Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448(1993))が挙げられる。
【0033】
二重特異性抗体はポリペプチドの多量体であり、各々のポリペプチドはイムノグロブリン軽鎖の結合ドメインよりなる第一ドメインとイムノグロブリン重鎖の結合ドメインよりなる第二ドメインより構成されている。これら2つのドメインは連結されているが(例えば、ペプチドリンカーにより)、抗原結合部位を形作るべく互いに連携をとることは出来ない:抗原結合部位は多量体の中の一つのポリペプチドの第一ドメインと該多量体の中の別のポリペプチドの第二ドメインとが連携と取ることで形成される(W094/13804)。
【0034】
本発明にかかる抗体は少なくとも2つの異なる抗原に対する特異性を有する多重特異的な抗体であってもよい。こうした分子は一般に2つの抗原に結合するが(例えば、二重特異性抗体)、本発明における「多重特異性抗体」という用語は、2つ以上(例えば3つ)の抗原に対する特異性を有する抗体を含む。該多重特異性抗体は完全長の抗体またはこのような抗体のフラグメント(例えば、F(ab‘)2二重特異性抗体)である場合もある。二重特異性抗体が利用される場合、これらは化学的に合成したり、ハイブリドーマ由来といった様々な方法(Hollinger & Winter,Current OpinionBiotechnol.4:446−449(1993))により製造可能な、従来からある二重特異性抗体であってもよいし、上記した、いかなる二重特異性抗体のフラグメントであってもよい。完全長の抗体よりもむしろscFv二量体や二重特異性抗体を使う方が望ましい場合もある。二重特異性抗体およびscFvはFc領域なしで、可変ドメインのみを用いて構築することができ、これにより潜在的には抗イディオタイプ反応の効果を軽減することができる。二重特異性抗体のその他の形態としては、Traunecherら、EMBO Journal10:3655−3659(1991)に記載されている単鎖”Janusins“が含まれる。該二重特異性抗体は、また、1つの抗体がアビジンと連結し、その他の抗体がビオチンまたはその類縁体と連結してなるヘテロ複合性抗体も含む(U.S.Pat.No.4,676,980,WO91/00360,WO92/200373,およびEP03089)。このようなヘテロ複合性抗体を作り出すのに利用される架橋剤は周知であり、そして例えばU.S.Pat.No.4,676,980に開示されている。
【0035】
二重特異性完全長抗体に対して、二重特異性抗体は、また、大腸菌によって容易に構築かつ発現出来るため、有用である場合がある。適当な結合特異性を有する二重特異性抗体(そして抗体フラグメントのような、その他多くのポリペプチド)は、ファージディスプレイ法(W094/13804)を用いてライブラリから容易に選択しうる。もし該二重特異性抗体の一方の腕が、例えば抗原Xに対する特異性を持つという点で制限をかけた場合、もう一方の腕が様々に変化するライブラリを構成し、適当な特異性を有する抗体を選択することが可能である。
【0036】
「抗原結合ドメイン」や「結合ドメイン」とは、抗原の一部またはすべてに特異的に結合し、かつ相補的である部位からなる抗体の部分である。抗原が巨大である場合、抗体は抗原の特定の部分にのみ結合してもよく、この部分をエピトープという。抗原結合ドメインは一つまたは複数の抗体可変ドメインにより提供される。抗原結合ドメインは抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)により構成される。
【0037】
「単離した」とは本発明にかかる抗体または該抗体をコードした抗体が、好ましくは本発明に示した通りの状態にあることをいう。抗体および核酸は、一般的には、調製がインビトロまたはインビボにおいて組み換えDNA工学によりなされる時、天然では結合している物質から遊離または実質的に遊離している。ここで物質とは、その他のポリペプチドや核酸といった、天然の環境またはそれらが調製された環境(例えば細胞培養)下では抗体および核酸とともに存在している物質のことである。抗体および核酸は希釈剤や免疫賦活剤とともに処方してもよく、実践上の目的のために単離してもよい−例えば、該抗体は、免疫測定でマイクロタイタープレートをコートするのに使用する場合は、通常はゼラチンやその他のキャリアと混合され、また、診断や治療に使用される場合は、製薬上利用可能なキャリアまたは希釈剤と混合する。抗体は天然に、または異種真核細胞の系によって糖鎖修飾されていてもよく、非糖鎖修飾されていてもよい(例えば、原核細胞の発現系で生産した場合)。
【0038】
「実質的に相当する」とは、結合ドメインのアミノ酸配列が
図1aからd、
図2aからd、または
図3から10に示されるアミノ酸配列と同一か、類似性が高いことを意味する。
【0039】
「類似性が高い」とは、そのアミノ酸配列が、
図1aからd、
図2aからd、または
図3から10に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%は同一であることを想定する。好ましくは、該アミノ酸配列が少なくとも80%同一であり、より好ましくは、80%同一であり、さらに好ましくは、少なくとも90%同一であり、それよりも好ましくは、少なくとも95%同一であり、例としては、
図1aからd、
図2aからd、または
図3から10に示されるアミノ酸配列と98%同一であることが挙げられる。
本明細書で用いられる「治療」とは、ヒトまたはヒトでない動物、好ましくは哺乳類に利益を与えるいかなる体制をも含む。イヌ、ネコおよびウマ、ウシ、ヒツジといった家畜を含む哺乳類、鳥類、そしてその他の動物は治療を受けることができる。該治療は現状に関するものでもよく、予防に関するものでもよい(予防治療)。
【0040】
本明細書で用いられる「腫瘍」とは、組織の異常な成長のことである。腫瘍は定まったところに局在するのでも(良性)、近傍組織に侵食するのでも(悪性)、離れた組織に侵食するのでも(転移性)よい。腫瘍は癌を引き起こす新生物的な成長を含み、咽頭、直腸結腸、胃、胸部および子宮内膜の腫瘍および癌組織や細胞株(白血病細胞を含み、それに制限されない)を含む。本明細書で用いられる「腫瘍」は、また、その適用範囲において子宮内膜症をも含む。本発明に基づき治療されうる腫瘍の例としては、皮膚、肺、縦隔、心膜、前立腺、胸部、結腸と直腸、肝臓、膵臓、脳、頭蓋内構造、目、精巣、卵巣、子宮、子宮頚部、腎臓、甲状腺、膀胱、胃腸管、血液系組織、骨、関節または直腸の腫瘍が挙げられる。
【0041】
本明細書で用いられる「炎症性疾患」とはアテローム性動脈硬化、リウマチ様関節炎、変形性関節症、痛風、紅斑性狼瘡、強皮症、シェーグレン症候群、多発筋症および皮膚筋症、血管炎、腱炎、滑膜炎、細菌性心内膜炎、骨髄炎、乾癬、肺炎、線維性歯槽骨炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、気腫、珪肺、塵肺、結核症、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性炎症性多発神経鞘腫、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、多発性硬化症、ギランバレー症候群および重症筋無力症、乳腺症、蹄葉炎、喉頭炎、慢性胆嚢炎、橋本甲状腺症、手根管症候群および炎症性乳腺疾患からなる疾患群より選択される疾患を含む。一つの実施態様において、該炎症性疾患は移植における組織または器官切除の結果であってもよい。特定の実施態様として、該炎症性疾患はアテローム性動脈硬化、リウマチ様関節炎、変形性関節症、敗血症、慢性関節炎からなる疾患群より選択される。
【0042】
本発明は、また、
図1a−dまたは2a−dに提示されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、
図1a−dまたは2a−dに提示された核酸配列を有するポリヌクレオチド、およびこれらと実質的に同一の配列、例えば、これらと70%。80%、85%、90%、95%または99%同一の配列、を有するもののある範囲を含む。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性率は一般的に最適比較目的で、配列を並べ合わせ(例えば、第1の配列を第2の配列と最もよく突き合わせるためにGAPを利用することが導入されている)、そしてアミノ酸残基またはヌクレオチドを対応する位置で比較することにより決定される。「最もよく突き合わせる」とは、2つの配列を最も高い同一性率になるように突き合わせることである。該同一性率は配列内における同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドの数を比較することにより決定される(すなわち、同一性%=同一位置数/全位置数×100である)。
【0043】
2つの配列間での同一性率の決定は、当業者にとって周知の数学的アルゴリズムを利用して行われる。2配列比較の数学的アルゴリズムの例としてはKarlin&Alschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:2264−2268、これを変更したものとしてKarlin&Alschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873−5877、のアルゴリズムが挙げられる。Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−410のNBLASTおよびXBLASTプログラムは該アルゴリズムを取り込んでいる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明にかかる核酸分子に相同性のあるヌクレオチド配列を得るために、スコア=100、語長=12という条件にてNBLASTプログラムとともに実行することができる。BLASTタンパク検索は、本発明にかかるタンパク分子に相同性のあるアミノ酸配列を得るために、スコア=50、語長=3という条件にてXBLASTプログラムとともに実行することができる。比較目的でギャップアライメントを得るために、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402の記載に従い、Gapped BLASTを利用することが出来る。あるいは、分子(Id.)間での離れた関係性を見出す累次積分検索を実施するためにPSI−Blastを利用することができる。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI−Blastプログラムを利用した場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーター(例えばXBLASTやNBLAST)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。配列比較に利用される数学的アルゴリズムの別の例としては、Myers&MillerのアルゴリズムであるCABIOSがある。GCG配列突き合わせソフトウエアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)は該アルゴリズムを取り込んでいる。
【0044】
当業者により知られている配列解析用のその他のアルゴリズムには、Torellis&Robotti(1994)Comput.Appl.Biosci.10:3−5;に記述されるADVANCEおよびADAMおよびPearson&Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444−8に記述されるFASTAが含まれる。FASTAの中で、ktup値は制御の選択肢であり、これにより探索の感度や速度を設定できる。
【0045】
本発明は、また、その適用範囲に、
図1aからdまたは2aからd、またはその変異形によって表わされるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む結合ドメインより構成される抗体を含み、ここで、該変異形の配列とは、該抗体の生物学的機能に実質的な影響を与えることなく少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、置換または欠損により変異されているものである。
【0046】
本明細書で使われるポリペプチドの「変異形」には、基準となるポリペプチドとアミノ酸配列において相違するポリペプチドが含まれる。一般的に、基準となるポリペプチドと変異形の配列が極めて類似しているか、多くの領域で同一であるべく相違は制限されている。変異ポリペプチドは、いかなる組み合わせもありうる1または複数の置換、付加、欠損、切り捨てによって、そのアミノ酸配列が相違している。好ましい変異形の中には、基準となるポリペプチドから保存的アミノ酸置換により変異しているものが含まれる。該置換は、所定のアミノ酸が類似の特徴を有する別のアミノ酸によって置き換わることである。以下のアミノ酸の非制限リストは保存的置換と考えられる:a)アラニン、セリンおよびスレオニン;b)グルタミン酸およびアスパラギン酸;c)アスパラギンおよびグルタミン;d)アルギニンおよびリジン;e)イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリン、そしてf)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン。
【0047】
本発明のひとつの実施態様は、
図1a−dおよび2a−dそれぞれに実質的に定められたVHおよびVL領域にあたるアミノ酸配列に基づく1対の結合ドメインより構成される抗体を提供する。これらの配列のいずれかに基づく単独の結合ドメインは本発明のさらなる態様を形成している。
図1a−dに実質的に定められたVH領域にあたるアミノ酸配列に基づく結合ドメインの場合、イムノグロブリンVHドメインは特異的に標的抗原に結合することが出来ることが知られているため、このような結合ドメインはターゲッティング因子として使用してもよい。
【0048】
いずれかの単鎖特異的結合ドメインの場合、これらのドメインは、生体内において、本出願にて開示されているモノクローン抗体と同然の特性を有する2つのドメインを有する抗体を形成することのできる相補的ドメインをスクリーニングするのに利用してもよい。
これはW092/01047にて開示されたいわゆる階層的二重組み合わせアプローチを用いたファージディスプレイスクリーニング法により実施してもよい。この方法においては、HまたはL鎖クローンを含んだ個々のコロニーを他方の鎖(LまたはH)をコードしているクローンの完全ライブラリーに感染させ、結果として2つの鎖を有する抗体を、該参考文献に記載の方法といったファージディスプレイ技術に従って選択する。該技術は、また、Marksら同書に開示されている。
【0049】
本発明にかかる抗体は、さらに抗体の定量領域またはその一部を含みうる。例としては、
図2a−dに示されたVL領域に基づく抗体が、そのC末端において、ヒトCKまたはC#鎖を含む抗体軽鎖定常ドメインに接続していてもよい。同様に、
図1a−eに示されるVH領域に基づく抗体が、そのC末端において、例えば、IgG、IgA,IgEおよびアイソタイプサブクラスのどれか、といったいかなる抗体アイソタイプ由来のイムノグロブリン重鎖の全部または一部に接続していてもよい。
本発明にかかる抗体は、それ自体に、癌細胞増殖を阻害する効果のあることが示されているが、これらはさらに、機能的標識によって標識されていてもよい。機能的標識は、癌の破壊を誘導すべく、癌部位を的にするようデザインされている物質を含む。該機能的標識はリシンといったトキシンや、細菌のカルボキシペプチダーゼまたはニトロリダクターゼといった酵素を含み、これらはプロドラッグを活性のある薬剤に変換することが出来る。これに加えて、抗体はカリケミシンといった化学治療または細胞毒性因子や90Yまたは11といった放射性標識と付加または結合していてもよい。
【0050】
一実施態様として、本発明にかかる抗体はヒト由来アドレノカルシノーマ(SW−13)細胞の増殖を少なくとも10%まで阻害することができ、該阻害はMTT細胞増殖アッセイを用いて測定される。好ましくは、該抗体はRAMP−3およびCRLPの相互作用に影響を及ぼす(例えば、阻害する)ことが出来る。
典型的には、該抗体は増殖を少なくとも12%まで阻害することができる。いくつかの実施態様において、該抗体は増殖を少なくとも20%まで阻害することが出来、随意的には、少なくとも25%まで阻害しうる。更なる実施態様において、該抗体は増殖を少なくとも30%まで阻害することが出来、さらに随意的には、少なくとも40%まで阻害しうる。
【0051】
一つの実施態様として、該抗体はヒトMG63骨肉腫細胞において、アドレノモジュリンにて刺激をする際のcAMPの生産を少なくとも約15%まで、例としては、少なくとも15%、16%、17%、18%および19%まで、減少または抑制することが出来る。いくつかの実施態様において、該抗体は、cAMP生産を、少なくとも約20%まで、例としては、21%、22%または25%まで、抑制することが出来る場合がある。一般的に、該抗体はRAMP−3toCRLPの相互作用を調節することができる。
【0052】
本発明にかかる抗体はその全体または一部を化学合成により作りだされうる。該抗体は定評のある標準的な液相、また好ましくは、固相ペプチド合成法に従い、たやすく調製することができ、この方法に関する一般的な記載は広く入手が可能である(例えば、J.M.Stewart&J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd edition,Pierce Chemical Company,Rockford,Ilinois(1984),M Bodanzsky&A.Bodanzsky,The Practice Peptide Synthesis, Springer Verlag,New York(1984);oyobi Applied Biosystems 430A Users Manual,ABI Inc., Foster City,Californiaを参照のこと)。または、これらの抗体は、液相法や固相、液相および溶液化学のいずれかの組み合わせにより、溶液下で調製することができる。例えば、最初にそれぞれのペプチド部分を完成させ、それが望ましい、または適当である場合に、存在する保護基を除いた後、各々のカルボン酸またはスルホン酸またはこれらの反応誘導体の反応により、X残基を導入することによって抗体を調製しうる。
本発明に記載された抗体を生産する他の便利な方法は、発現系において核酸を利用することにより、抗体をコードする核酸を発現することである。
【0053】
本発明は、さらに、本発明にかかる抗体をコードする単離核酸を提供する。核酸にはDNAおよびRNAが含まれる。好ましい態様として、本発明は上記に規定した発明にかかる抗体をコードする核酸を提供する。該核酸の例を
図1a−dおよび2a−dに示す。当業者であれば、該核酸を置換、欠損、および/または付加したもので、本発明にかかる抗体を維持するものを決定することができる。
【0054】
本発明は、また、上記に規定した少なくとも一つの核酸を含むプラスミド、ベクター、転写または発現カセットといった形のコンストラクトを提供する。本発明は、また、一つまたはそれ以上の上記のコンストラクトを含む組み換え宿主細胞を提供する。上に記したように、本発明にかかる抗体をコードする核酸は本発明の1つの態様を構成しており、コードした核酸からの発現を含む抗体の産生方法も、また、本発明の態様を構成している。発現は、該核酸を含んでいる組み換え宿主細胞を適当な条件下で培養することにより、簡便に行いうる。タンパク発現による生産後、抗体は単離し、および/または最適なものとして使われる、いずれかの適当な技術を用いて精製されうる。
【0055】
様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現の系はよく知られている。適当な宿主細胞には、バクテリア、哺乳類細胞、酵母およびバキュロウイルスの系が含まれる。異種ポリペプチドの発現技術を用いうる哺乳類細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎細胞、NSOマウス黒色腫細胞およびその他多くのものを含む。一般的な、好ましいバクテリア宿主は大腸菌である。大腸菌といった原核細胞での抗体および抗体フラグメントの発現は技術的に確立している。総説としては、例えば、Pluckthun,BiolTechnology 9:545−551(1991)を参照のこと。培養真核細胞での発現は、また、抗体産生の選択肢として当業者にとって利用しうる。最近の総説としては、例えば、Reff,Curr.Opinion Biothch.4:573−576(1993);Trillら、Curr.Opinion Biothch.6:553−560(1995)を参照のこと。
適当なベクターを選択または構築することが出来、該ベクターは、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル配列、延反サー配列、マーカー遺伝子およびその他の適切な配列といった適切な制御配列を含んでいる。
【0056】
ベクターとは、適切なプラスミドやファージまたはファージミドといったウイルスであってもよい。さらに詳細には、例えば、Sambrookra,Molecular Cloning:A Laboratory Manual:2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照のこと。核酸操作のための多くの既知の技術やプロトコル、例えば、核酸コンストラクトの調製、ミュータジェネシス、配列決定、DNAの細胞への導入および遺伝子発現といったものは、Ausubelら編、Short Protocols in Molecular Biology,2ndEdition,John Wiley&Sons(1992)に詳しく記載されている。
【0057】
このように、本発明の更なる態様は、ここで開示した核酸を含む宿主細胞を提供する。その上の更なる態様は、該核酸を宿主細胞に導入することからなる方法を提供する。該導入には、いかなる利用可能な技術を駆使してもよい。真核細胞において適当な技術としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポゾームを介したトランスフェクションおよび例としてワクチニアや昆虫細胞に対するバキュロウイルスといった、レトロウイルスまたはその他のウイルスを用いた形質導入が含まれうる。原核細胞において適当な技術としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを用いたトランスフェクションが含まれうる。該導入は、その後引き続いて、該核酸からの発現を誘導または容認する場合があり、例としては、遺伝子発現条件下で宿主細胞を培養することが挙げられる。
【0058】
一つの実施態様においては、本発明の核酸は宿主細胞のゲノム(例えば染色体)に組み込まれる。組み込みは標準的な技術に基づき、ゲノムの組み換えを促進する配列を含ませることにより促進させてもよい。
本発明は、また、上記の抗体またはポリペプチドを発現するために発現系に上述したコンストラクトを用いることからなる方法も提供する。
【0059】
診断方法
本発明の抗体はヒトまたは動物対象の腫瘍の診断方法に用いることができる。
RAMPをコードする遺伝子は特定の癌組織において発現上昇を示す。本発明にかかる抗体をウェスタンブロッティング、ELISA法または組織染色といった方法に用いることにより、組織中や細胞でのRAMPの発現を測定することができる。対象の組織由来のサンプル(生検サンプルや血液サンプル)を回収し、本発明にかかる抗体と特定の条件下で接触させることで、免疫複合体が形成される。RAMPのサンプル内での有無や含有量は該サンプルが抗体と結合するかを測定することで決定することができる。同様の方法で、癌の診断、癌の治療や進行のモニタリングおよび病気の予後予想を行うことができる。
【0060】
一つの実施態様において、本発明は生物サンプルにおける腫瘍または炎症性疾患の存在を検出するインビトロの方法を提供する。該方法は、該生物サンプルと本発明にかかる抗体とを接触させ、陰性対照や正常かつ健康な対象由来の生物サンプルに対しての該抗体の結合増加を測定するステップより構成される。
【0061】
本発明は、また、本発明にかかる抗体のインビボでの診断方法に使用することも提供する。一つの実施態様において、該発明は対象における腫瘍または炎症性疾患の存在を検出する方法を提供する。該方法は、該対象に本発明にかかる抗体を投与し、陰性対照や正常かつ健康な対象に対しての該抗体の結合増加を測定するステップより構成される。
【0062】
本抗体は、診断用イメージングやその他の測定を助けるために、その他の物質を標識したり結合してもよい。例えば、123−ヨウ素−放射標識抗体は、CTスキャンを伴う単光子放出断層撮影(SPECT/CT)を用いたシンチグラフィーによる測定のために、生産してもよい。該方法は、その他の診断およびイメージング技術と組み合わせてもよく、例えば、CTスキャンを伴う18F−フルオロデオキシグルコース(18FDG)陽電子放出断層撮影(PET/CT)を使用してもよい。該技術は当業者にとっては周知であり、これらはBirchlerら、Otolaryngology−Head&Neck Surgery,Volume136,Issue4,Pages543−548)に例示されている。
【0063】
別の実施態様においては、本発明は対象に対する治療上の処方計画における腫瘍または炎症性疾患の進行を検出する方法を提供する。該方法は、該対象より生物サンプルを単離し、該生物サンプルを本発明にかかる抗体と接触させ、陰性対照や正常かつ健康な対象に対しての該抗体の結合増加を測定するステップより構成される。別の実施態様においては、本発明は対象に対する治療上の処方計画における腫瘍または炎症性疾患の進行を検出する方法を提供する。該方法は、該対象に本発明にかかる抗体を投与し、陰性対照や正常かつ健康な対象に対しての該抗体の結合増加を測定するステップより構成される。
【0064】
評価される生物サンプルには、生検組織のような対象由来のいかなる組織も含まれる(例えば、本出願で記載された腫瘍由来の組織や体液(例えば、血液))。
診断に使用される場合、抗体は検出可能なラベルにて標識してもよい。例えば、ヨウ素や99Tcのような放射ラベルを抗体イメージング技術で知られている従来の化学的な方法にて本発明にかかる抗体に付加することがある。標識には、また、西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素ラベルが含まれる。標識は、さらにビオチンのような化学成分を含み、ビオチンは標識アビジンのような特異的な同族の検出成分との結合により検出することが可能である。
【0065】
生産物、医薬組成物および治療的使用
本発明にかかる抗体は単独で、または他の治療薬と組み合わせて、同時に、または逐次的に投与してもよく、これらは治療される者の条件に依存する。それゆえ、本発明は、さらに、該発明にかかる抗体と活性因子を含む産物を組み合わせて調製し、同時に、別途または逐次的に腫瘍治療に使用することも提供する。活性因子には、化学療法因子や細胞毒性因子が含まれてもよく、5−フルオロウラシル、シスプラチン、マイトマイシンC、オキサリプラチンおよびタモキシフェンが含まれ、これらは本発明にかかる抗体と相乗的に作用を発揮する。他の活性因子としては、非ステロイド抗炎症剤(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンまたはケトプロフェン)やモルヒネのようなオピエート、または抗嘔吐薬などの適当量の苦痛救助剤が含まれる。
【0066】
理論で制限されることは望まないが、本発明にかかる抗体が活性因子と相乗的に腫瘍殺傷機能を高めることができるのは、免疫エフェクターとしての機序によるのではなく、むしろ、細胞表面にあるRAMPに抗体が結合することによる直接的な結果によるものかもしれない。
【0067】
本発明の抗体は、通常は、抗体に加え、少なくとも1組成物より構成される医薬組成物の形状で投与されるであろう。該医薬組成物は、活性成分に加え、医薬的に容認しうる賦形剤、希釈剤、担体、緩衝液、安定剤または当業者によって周知のその他の物質を含んでもよい。このような物質は非毒性であるべきで、活性成分の効果を阻害するものであってはならない。担体やその他の物質の正確な特徴は経口か、または皮下などの注射か、といった投与経路に依存するであろう。
【0068】
通常の経路(静脈内、動脈内、腹腔内、筋内または皮下注射)による相乗的な注射が医薬組成物の治療のための投与における第一の経路だと予見されるが、局所注射による、またはカテーテルやその他の外科用チューブを介した局所への投与を、また、局所注射や内在する貯留型ミニポンプまたはその他の低速放出機器による注入として利用してもよい。局所投与は、病理組織の主要部またはターゲット組織を含む体腔に行ってもよい。該体腔の例としては、大脳脳室、滑膜性連結または胸腔が含まれる。粉末剤から再構成後に液剤として利用してもよい。
【0069】
静脈注射または痛みのある部位への注射のためには、活性成分は非経口で容認しうる溶液の形態であることが必要であり、この形態とは、パイロジェンフリーで、適当なpH、等張性および安定性を有するものである。当該技術分野において関連技術を有する者であれば、例えば、食塩水注射、リンゲル液注射、乳酸加リンゲル液などの等張溶媒を用いた適当な溶液を調製することができる。防腐剤、安定化剤、緩衝液、抗酸化剤および/またはその他の添加物は要望に応じて含まれていてもよい。
【0070】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液剤であってもよい。錠剤はゼラチンやアジュバンドといった固形担体を含んでいてもよい。液体の医薬組成物は、一般に、水、ペトローリアム、動物性または植物性油、ミネラル油または合成油といった液体担体より構成される。
生理的食塩水、ブドウ糖またはその他の糖溶液またはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールといったグリコール類を含んでよい。処方が液体である場合、例えば、pH6.8−7.6の非リン酸緩衝液または凍結乾燥した粉末を含む生理的食塩水であってもよい。
【0071】
組成物は、また、ミクロスフェア、リポソーム、その他の微少微粒子によるデリバリーシステム、または、血液などの特定の組織に設置された徐放性処方を介して投与されてもよい。徐放性担体の適当な例としては、座薬またはマイクロカプセルといった共通した物品形態での半透過性ポリマーマトリクスが含まれる。移植可能な、またはマイクロカプセル状の徐放性マトリクスには、ポリ乳酸(US Patent No3、773、919;EP−A−0058481),L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidmanら、Biopolymers 22(1):1985)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはエチレンビニルアセテート(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15:167−277(1981)およびLanger,Chem.Tech.12:98−105(1982))が含まれる。
【0072】
ポリペプチドを含むリポソームは周知の方法により調製される:DE3,218,121A;Epsteinら、PNAS USA、82:3688−3692(1985);Hwangら、PNAS USA,77:4030−4034(1980);EP−A−0052522;EP−A−0036676;EP−A−0088046;EP−A―0143949;EP−A−0142541;JP−A−83−11808;US Patent Nos4,485,045および4,544,545
通常、リポソームは小型(約200−800オングストローム)単層状タイプであり、脂質含量は約30モル%コレステロールよりも多く、ポリペプチド漏出の最適速度に合わせて比率選択は調節しうる。
医薬組成物は腫瘍部位またはその他の希望する部位に限定的に投与してもよく、該組成物は腫瘍またはその他の細胞を標的とするように供給されてもよい。
【0073】
医薬組成物は、好ましくは、「治療上の有効量」が患者に投与される。「治療上の有効量」とは、患者に効果を示すのに十分な量のことである。現実投与量および投与速度と投与後のタイムコースは、治療されるものの性状と重篤度に依存するであろう。治療の処方箋、例えば、用量の決定など、は一般開業医やその他の医師の責任の範囲内にあり、一般に、治療すべき疾患、患者個々の状況、疾患部位、投与方法およびその他医師が知りうる要素を考慮に入れて作成される。本発明の医薬組成物は、特に、すでに存在する腫瘍、特に癌、に対する治療および初期治療や手術後の再発予防にとって適切なものである。上述した技術やプロトコルの例は、Remington‘s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Oslo,A.(ed),1980にて確認できる。
【0074】
最適量はいくつかの要因に基づき、医師によって決定することができ、該要因としては、例えば、患者の年齢、性別、体重、状態の重篤度、投与される活性成分および投与経路などである。一般に、受容体を飽和する程度の抗体およびポリペプチドの血清濃度が望まれる。およそ0.1nM以上の濃度が通常は十分量である。例えば、抗体を100mg/mの分量投与することで、およそ8日間の間、約20nMほどの血清濃度が維持される。
【0075】
医薬組成物の用量は、抗体の性質に依存するであろう。性質とは、例えば、結合活性、インビボでの血漿半減期、その処方におけるポリペプチドの濃度、投与経路、投薬部位と速度、患者の臨床上での耐性、患者を悩ませる病理的状況およびそれに類するもの、などであり、これらは医師の手腕の範囲内にあるものである。本発明は、また、癌に対する防衛的免疫反応を高めるための免疫化スケジュールを最適化するという方向性も有している。
本発明に記載の抗体または医薬組成物は腫瘍などの増殖性疾患の治療、進行遅延および/または予防において、例えば、脈管形成や癌細胞増殖の阻害を介して、有効でありうる。
【0076】
本発明に記載されている治療すべき腫瘍の明確な例としては、肺、頭蓋内(脳を含む)および皮膚腫瘍がある。好ましくは、頭蓋内腫瘍であり、例としては脳腫瘍である。肺腫瘍もしくは肺癌は、小細胞癌腫、腺癌、大細胞癌腫、気管支肺胞上皮腫、扁平上皮乳頭腫およびカルチノイドに分類することができる。いかなる肺腫瘍も本発明に従って治療することが可能である。皮膚腫瘍もしくは皮膚癌は、黒色腫、口腔扁平上皮乳頭腫、奇形癌に分類することができる。頭蓋内および脳腫瘍は、神経膠腫、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、下垂体腺腫、ソマトトロピノーマ、プロラクチノーマ、髄膜腫、星状細胞腫および脈絡叢癌腫に分類することが出来る。副腎腫瘍は副腎皮質癌腫、黒色細胞腫、アルドステロノーマに分類することが出来る。該腫瘍は目の腫瘍でもよい。
【0077】
治療すべき腫瘍は骨肉腫、副腎癌腫、膠芽細胞腫、前立腺腫、乳腺腫および中皮腫より構成されるグループから選択することができる。該治療すべき腫瘍は、膠芽細胞腫のような脳腫瘍であってもよい。
治療すべき腫瘍は副腎皮質癌腫のような副腎腫瘍であってよい。
治療すべき腫瘍は中皮腫であってよい。
治療すべき腫瘍は骨肉腫のような骨腫瘍であってよい。
治療すべき腫瘍は前立腺腫瘍であってよい。
治療すべき腫瘍は乳腺の腫瘍であってよい。
治療すべき腫瘍は結腸の腫瘍であってよい。
【0078】
一つの実施態様において、腫瘍治療に有用な本発明にかかる抗体はRAMP(例えばRAMP3)拮抗剤である。
その他の治療すべき増殖性疾患には過角化症が含まれる。
本発明に記載の抗体または医薬組成物は本出願にて規定されているような炎症性疾患の治療、進行遅延および/または予防において効力を持ちうる。一つの実施態様として、炎症性疾患の治療に有用な本発明にかかる抗体はRAMP(例えばRAMP3)拮抗剤である。
【0079】
本発明に記載の抗体または医薬組成物は心血管状態の治療、進行遅延および/または予防において、例えば、脈管形成や血管発生の促進を介して、効力を持ちうる。心血管状態の明確な例としては、心不全、卒中(特に卒中後の血行再開)、冠状動脈性心臓病、血管疾患、心筋梗塞(特に心筋梗塞後の血行再開)および糖尿病性血管障害、特に網膜症、がある。一つの実施態様として、心血管状態の治療に有用な本発明にかかる抗体はRAMP(例えばRAMP3)作用剤である。
【0080】
本発明に記載の抗体または医薬組成物は、また、骨粗鬆症、肥満症、敗血症および創傷より選択される疾患の治療に効力を持ちうる。本出願にて使用されているように、“創傷”という用語は潰瘍および損傷、例えば切り傷や火傷といった皮膚の傷、およびそれに伴って関連する状態を含む。本発明にかかる抗体または医薬組成品は一般に創傷治癒のような増殖および組織成長を刺激するのに使用してもよい。これは治癒の促進因子が有用である可能性のある手術後の皮膚の治癒、糖尿病による場合およびよらない場合の潰瘍の治癒、床上安静にしている患者やその他の原因による床ずれ、骨折の癒合遅延または癒合しない場合のような遅れた組織再生の治癒、手術を伴うまたは伴わない場合の損傷後の軟骨組織および関節の回復、冷却による腱断裂およびウマの腱の負傷といった腱の損傷の治癒を含みうる。その他の適応としては、骨粗鬆症で生じるような組織欠損の治療が含まれる。一つの実施態様として、高血圧、肥満症、創傷および骨粗鬆症の治療に有効な本発明にかかる抗体として、RAMP(例えばRAMP3)作用剤がある。あるいは、RAMP(例えばRAMP3)拮抗剤も骨粗鬆症の治療に有効な抗体であるかもしれない。
【0081】
本明細書および本明細書の請求項を通じて、「含んでなる(comprise)」および「含む(contain)」という語およびこれらのバリエーション、例えば「comprising」や「comprises」は、「含んでいるが、それに限定されない」という意であり、その他の成分、付加、因子、整数またはステップを除外する意図はなく、かつ除外もしない。
本明細書および本明細書の請求項を通じて、もし文脈上、単数であることを必要としないのであれば、単数形は複数形を包含する。特に不定冠詞が使われている場合、該明細書は、もし文脈上、単数であることを必要としないのであれば、単数形のみならず複数形も予期しているものと介される。
本発明における特定の態様、実施態様または例と関連して記載された特徴、整数、特性、化合物、化学成分またはグループという語は、それと共にあると相容れない場合を除き、本出願にて記載された、その他のいかなる態様、実施態様または例にも応用可能であると介される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1-1】
図1a−dはモノクローン抗体である抗RAMP3抗体の重鎖可変領域の核酸およびアミノ酸配列を示す。
【
図1-2】
図1a−dはモノクローン抗体である抗RAMP3抗体の重鎖可変領域の核酸およびアミノ酸配列を示す。
【
図2-1】
図2a−dはモノクローン抗体である抗RAMP3抗体の軽鎖可変領域の核酸およびアミノ酸配列を示す。
【
図2-2】
図2a−dはモノクローン抗体である抗RAMP3抗体の軽鎖可変領域の核酸およびアミノ酸配列を示す。
【
図3】モノクローン抗体である抗RAMP3抗体の重鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図4】モノクローン抗体である抗RAMP3抗体の重鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図5】モノクローン抗体である抗RAMP3抗体の重鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図6】モノクローン抗体である抗RAMP3抗体の重鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図7】モノクローン抗体である抗RAMP3抗体の軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図8】モノクローン抗体である抗RAMP3抗体の軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図9】モノクローン抗体である抗RAMP3抗体の軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図10】モノクローン抗体である抗RAMP3抗体の軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図11】ポリクローン抗体である抗RAMP3抗体が、ヒトMG63骨肉腫細胞におけるアドレノモジュリンのcyclicAMP上昇への効果を制御しうるか、評価した。すべての抗体はアドレノモジュリンの効果を減弱させた。
【
図12】モノクローン抗体のSW−13細胞のインビトロでの増殖への影響を示している。モノクローン抗体である抗RAMP−3抗体がSW−13細胞(副腎癌腫細胞)の増殖抑制を誘導しうるか、評価した。1:50濃度とは、最終濃度が約5ng/ウェルと同等である。
【
図13】モノクローン抗体HB10のU87細胞のインビトロでの増殖への影響を示している。腫瘍細胞は96穴プレートに2000細胞ずつ播種し、2×10−7AMおよび用量範囲の抗体を添加した。対照として、非哺乳類のIgGを添加した。この処置内容は2日おきに実施された。4日目に細胞は調製され、MTTアッセイに供された。
【
図14】様々な濃度での抗体JF2存在下におけるU−87膠芽細胞腫細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
【
図15】様々な濃度での抗体JB3存在下におけるU−87膠芽細胞腫細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
【
図16】様々な濃度での抗体JB3存在下におけるMDA−MB−436−GFP乳癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
【
図17】様々な濃度での抗体JF2存在下におけるMDA−MB−436−GFP乳癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
【
図18】10μg抗体JB3存在下におけるPC−3前立腺癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
【
図19】10μg抗体JF2存在下におけるPC−3前立腺癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
【
図20】10μg抗体JB3存在下におけるSAOS骨肉腫細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
【
図21】10μg抗体JB3および抗体JF2存在下におけるHCT116結腸癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
【
図22】抗体JB3および抗体JF2存在下におけるU−87膠芽細胞腫細胞株のキャスパーゼ−3マーカーのレベルを評価するためのアポトーシスアッセイ結果を示している。
【
図23】抗体JB3および抗体JF2存在下におけるMDA−MB−436−GFP乳癌細胞株のキャスパーゼ−3マーカーのレベルを評価するためのアポトーシスアッセイ結果を示している。
【
図24】CD1ヌードマウスの右脇腹にMDA−MB−436−GFPを移植し、JF2抗体および対照を処理した後、6週間経過時までの当該腫瘍量を表わしている。
【
図25】CD1ヌードマウスの右脇腹にMDA−MB−436−GFPを移植し、JF2抗体および対照を処理した後、6週間経過時までの当該腫瘍重量を表わしている。
【
図26】ヌードマウスの右脇腹に移植したMDA−MB−436−GFP癌細胞株の蛍光画像を示している。
【
図27】処置後6週間経過後のヌードマウスから切除した腫瘍の組織学的断面図を示している。
【0083】
実施例−以下の実施例において、本発明をさらに記述するが、本発明は該例示に限定されるものではない:
材料と方法
RAMP細胞外ドメイン(ECD)蛋白の生成
RAMPのECD領域は、Novagen ToyoboのKODホットスタートDNAポリメラーゼキットを用いて高性能PCR反応により産生された。テンプレートDNAはヒト脳cDNA(Ambion)の購入サンプルより入手した。
該反応は2度実施され、最初の反応は、以下に示すプライマーを用いて、RAMP ECDの全域よりも広範な領域を単離するために行われた:
RAMP1
前側(Forward)
CGAGCGGACTCGACTCGGCAC
反対側(Reverse)
CTTCCTAGGGTGGCGGTGGCC
RAMP2
前側
GTC CGC CTC CTC CTT CT GCT
反対側
AAG TGG AGT AAC ATG GTT ATT GT
RAMP3
前側
AGC CAT GGA GAC TGG AGC GCT GC
反対側
GTG GCC CAG TAG CTG GAG ATT GGC
【0084】
2番目のPCR反応は、上記のプライマーを使用した反応より得られた産物を使用する。下記のプライマーを使用するに当たり、該プライマーはこれらに組み込まれるEcoR1およびBamH1反応部位を有している。
RAMP1
前側
GCGAATTCCTGCCAGACCACCAG
反対側
GTGGATCCTACCGGGCCCGGGACA
RAMP2
前側
GCG AAT TCA ATC CCC ACG AGG CCC TGG CTC AGC C
反対側
CAG GAT CCTACA AGA GTG ATG AGG AAG GGG ATG
RAMP3
前側
CAG AATT TCC AGA GCA GGC CGC TGC AAC CAG ACA G
反対側
GTG GAT CCC ACC ACC AGG CCA GCC ATG GCG ACA GT
【0085】
産物のゲノム配列決定は最終的な産物を評価することで実施される。前方ポイントからのECDタンパクは別に記載されている場合を除き「挿入」と記載される。
【0086】
タンパク精製
ECDペプチドを発現し、精製した。該タンパクはグルタチオンS−トランスフェラー是(GST)遺伝子融合システムを用いて精製された。
抗体産生
ECDペプチドに対する抗体は以下のプロトコルを用いて産生された。
【0087】
マウスおよびラット免疫化プロトコル
以下の免疫化プロトコルによりRAMP3の細胞外ドメインに対する抗体を誘導した:
未免疫血清は免疫前のマウスから採取した。4匹のマウスにRAMP3の細胞外ドメインに当たるペプチドを注射した:
10 20 30 40 50 60
GCPRAGGCNE TGMLERLPLC GKAFADMMGK VDVWKWCNLS EFIVYYESFT NCTEMEANVV
70 80 90 99
GCYWPNPLAQ GFITGIHRQF FSNCTVDRVH LEDPPDEVL
【0088】
免疫は、さらに4回の注射をおよそ隔月におこなうことにより追加免疫した。マウスからの採血を行い、ポリクローン抗体を含む血清を単離した。アジュバンドとしてフロインドアジュバンドを利用した(1回目の注射では、完全フロインドアジュバンドを用い、残りの過程では不完全フロインドアジュバンドを用いた)。ネズミに注射しうる総量は0.2mlであった(マウスには0.1mlを超えないことが望ましい)。このうちの半分が抗原であり、残り半分がアジュバンドであるので、該抗原は、投与しうる最高0.1mlから0.5mlの中に必要ミリグラム量を供給するべく、十分な濃度でなければならならい。
【0089】
ウエスタンブロットプロトコル
該抗体によるウエスタンブロットは、サイズマーカーと共にオリジナルECDペプチドを流した2レーンでのブロットを精査するのに用いられた。抗体1および2は、推定サイズ14KDaあたりのタンパクバンドに明瞭な結合を示す(データ非表示)。抗体3は極めて強い結合を同じサイズあたりに示したが、抗体4では本実験においては検出出来なかった(データ非表示)。
【0090】
抗体のブロッキング能力
本抗体のRAMPへの結合能を評価するため、該抗体のブロッキング能力を決定するアッセイを行った:
・ヒトMG63骨肉腫細胞を10pmolのAMで処理し、cAMP反応を定量した(上記の方法、例えば、cAMP蛍光偏光バイオトラック免疫測定法(Amersham Biosciences)を用いて)。(もしRAMP1に対する抗体が評価される場合は、本アッセイは、また、該抗体のブロッキング能力を評価するためのリガンドとしてCGRPを使用して行うことが出来る)
・細胞は1時間該抗体により前処理しておいた。
・AMのEC50に当たる用量(10pmol)を投与し、cAMP反応を定量した。
これらのポリクローン抗体は、ヒトMG63骨肉腫細胞におけるアドレノモジュリンのcAMP上昇に対する効果を制御しうる能力を有するか評価するために使用された。
【0091】
モノクローン抗体生産
モノクローン抗体は3rdマウスを利用して生産した。モノクローン抗体の生産に利用した方法はKohler&Milstein、Nature256、495−497(1975)およびCompendium of Immunology VII Schartz編、1981の中のDonillard&Hoffman,“Basic Facts about Hybridomas”によって開示されており、これらはリファレンスに組み込まれている。
クローンはペプチド上のGSTタグに結合しないことに基づき、スクリーニングされ、そして選択された。これらクローンのELISAデータが得られ、最適な5抗体が将来の研究用に選択された。
【0092】
抗体のアイソタイプ同定
モノクローン抗体のアイソタイプの特徴づけはアイソタイピングキットであるIsoStrip(Roche Diagonistics GmbH)を用いて決定された。
モノクローン抗体のアイソタイプは以下のとおりである:
CD12−IgG−IgG1サブタイプ
HB10−IgG−IgG1サブタイプ
JF2−IgG−IgG1サブタイプ
JB3−IgM
CC2−IgA
【0093】
増殖アッセイ
細胞培養
細胞培養は無菌条件下でNunclon処理済み組織培養プラスティック容器にて行った。本プロジェクトで使用されるU−87膠芽細胞腫細胞(ATCC HTB−14号)は標準EMEM(Earle最小必須培地)培地(Gibco)に10%ウシ胎児血清(Gibco)および5%ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質(Sigma)を添加したものを用いて培養した。凍結細胞を37℃2分間の条件で解凍し、すぐさま75mm2フラスコに培地10mlとともに播種した。該培養細胞は37℃−5%CO2の条件下で、コンフルエントに達するまで維持した。培地は3日ごとに交換し、細胞は80−90%コンフルエントに達した段階で継代した。トリプシンを阻害するため、血清を除くべく、細胞をPBS(Gibco)で洗浄し、3mlの10%トリプシン(Sigma)を添加して、細胞層をフラスコから遊離させた。このトリプシン処理は、その後の細胞分散を容易にするため、37℃で15分おこなった。フラスコを顕微鏡で検鏡し、細胞がフラスコから遊離していることを確認した後、6−8mlの培地をフラスコに加え、細胞を少しずつ吸引回収した。該細胞液を1000rpmで3分の条件で遠心分離し、上清を廃棄し、細胞沈査を培地1mlで再懸濁した後、適当数のフラスコに、1:6の比率で継代した(細胞培養用のマテリアルについては、付録1aを参照のこと)。
【0094】
プレートの調製
U87膠芽細胞腫細胞を標準となる条件(上記と同様)下で培養した。細胞の全数は血球計数板(Hawksley)を用いてカウントし、濃度は以下の式を用いて計算した:
1ml当たりの全細胞数=平均の細胞カウント数(5区画)/0.02
細胞濃度は50μlにつき2000細胞になるように調製した。
上記細胞調製液50μlを透明な96穴プレート(Coastar,ポリスチレン製、平底)に播種した。
【0095】
実験条件
各抗体につき2群の増殖検討を行った。1群は内在するアドレノモジュリン存在下での抗体による増殖への効果を検討するのに用い、残りの1群は外部からアドレノモジュリンを添加した条件下での抗体の効果を検討するのに用いた。抗体をPBSにて様々な濃度に調製し、最終的なウェル濃度として10μg、1μg、100ng、10ng、1ng、10pg、10pgおよび1pgとなるようにした。各抗体の各濃度につき6試行を実施した。本用量範囲は両群の検討で採用した。アドレノモジュリンは、加えるべき群の方には、最終的なウェル濃度として200nMとなるように添加した。5−フルオロウラシル(Fluka)は増殖を抑制するために、陽性対照(100mM)として使用した。培地交換および抗体および対照の再添加は2日ごとに実施した。また、本実験における抗体としての対照とするため、マウス抗GST抗体による各濃度での影響を同様に計算した。
【0096】
アッセイ方法
播種した細胞の状態が一定であるか確認するために、12−24時間の時点での評価を行った。更なる時点としては、2、4、6および8日目に実施した。増殖アッセイを実施するのに使用したキットはMTT Cell Proliferation Assay(ATCC)を用いた。それぞれの時点で、10μlのMTT試薬をすべてのウェルに添加し、2時間37℃の条件に維持した。2時間後、100μlのMTT界面活性剤をウェルに添加し、一晩暗所にて維持および震とうした後、softmax Pro5.2.X100035というソフトウエアを用いて、波長595nmでの吸光度の読み取りを行った(Spectramax M5e)。
SW−13細胞およびU87細胞(膠芽細胞腫細胞株)の増殖/生存状態をMTTアッセイ法を用いて評価した(本アッセイ法の詳細についてはwww.lgcpromochem−atcc.comを参照のこと)。
【0097】
アポトーシスアッセイ
アポトーシスアッセイはCapsapse−3 Assay kit(Sigma)を用いて実施した(必要とされるマテリアルについては、付録1cを参照のこと)。
細胞調製
U−87細胞を標準となる条件下で調製した。2mlの培地中に2x107細胞になるように細胞液を調製し、該細胞液をポリプロピレンチューブに分配した。
【0098】
実験条件
各処理に、2x107細胞を使用した。処理群は、抗体のみを処理した細胞(各抗体に対して)、抗Fas抗体、本発明にかかる抗体およびアドレノモジュリン処理した細胞、ブランクおよびアドレノモジュリン処理した細胞、よりなる。使用した陽性対照は抗Fasモノクローン抗体(MBL)であった。使用した抗体の最終濃度は10gとし、抗Fas抗体については500ngとした。該抗Fas抗体はIgM抗体であり、細胞溶解活性を有しているため、これにより細胞にアポトーシスを誘導する。
2ml培地中の懸濁処理細胞は、3時間37℃5%CO2条件下でインキュベートした。
【0099】
アッセイ方法
キットのプロトコル所定の標準使用説明に従い、所定の17Mオームの純水を用いてキット所定のアッセイ用緩衝液および溶解用緩衝液を調製した。3時間のインキュベーション後、細胞は600gにて5分間4℃の条件で遠心分離した。上清を取り除き、細胞を1mlPBSにて再懸濁した。該細胞は上記条件にて再度遠心分離し、上清を廃棄した。細胞沈査を200μlの1倍溶解用緩衝液で再懸濁し、氷上で20分間維持した。この溶解処理細胞を20,000gにて15分間4℃の条件で遠心分離した。この細胞溶解物を96穴平底プレートに、
図6に示すように割り付け、一晩静置する。softmax Pro5.2.36というソフトウエアを用いて、波長405nmでの吸光度の読み取りを行った(Spectramax M5e)。
【0100】
動物実験
異種移植用の細胞の培養
MDA−MB−436−GFP細胞を、ペニシリン(50U/ml),ストレプトマイシン(50μg/ml)、グルタミン(1mg/ml)を含み、10%ウシ胎児血清を補ったRPMI培地にて培養した。細胞は多湿、5%CO2/95%大気条件下で培養し、2日ごとにフレッシュな培地で培地交換を行い、いつもマイコプラズマ感染に対しては監視を行った。急激に増殖した細胞を、トリプトファンEDTA溶液を用いて回収した。すべての培養培地成分はInvitrogen Life Technologiesより購入した。
【0101】
動物の状態
動物に関する研究はSheffield大学の動物施設において実施された。オスの4−5週令のCD1ヌードマウス(nu/nu)を使用した。該マウスを新しい環境に馴らし、室温および12時間明期/12時間暗期に制御された室内の層流フード下の滅菌済みケージに4匹以下のグループごとに収容し、滅菌済みの餌および水を任意に与えた。
【0102】
処置および異種試食
CD1ヌードマウス(nu/nu)にMDA−MB−436−GFP乳癌細胞を移植した。細胞移植のために、MDA−MB−436−GFP細胞は、培養で育成し、PBSにて洗浄、0.05%トリプシン溶液により分散させ、再懸濁させた。遠心分離(1000rpm3分間、8℃)後、細胞沈査はPBSにて再懸濁し、最終濃度が3×107細胞/mlになるように調製し、その懸濁液を氷上静置した。移植部位をエタノール消毒後、0.1mlの懸濁液(0.5×106細胞)をヌードマウスの右脇腹皮下に注射した。腫瘍はデジタルノギス(Site)でサイズを計量し、腫瘍体積を、幅×長さ×0.52(楕円形状として)という式を用いて決定した。これらの測定は毎週2回ずつ行った。腫瘍は21日間、発育させた。動物は無作為に3群に群分けした。一つの群(n=8)にはJB3抗体(精製IgG200μg)を0.2mlのPBS懸濁液として腹腔内に毎週火曜および金曜に注射した。対照として、もう一つの群(n=8)には関連性のない抗体(JB3抗体と同じタイプのIgG、本抗体の不活性型)を注射し、残りの群(n=8)には匹敵する溶媒(PBS)のみを注射した。スケジュール1は表示された日に実施された。
【0103】
腫瘍のセクショニング
腫瘍は安楽死後、マウスより切り出し、10%フォルマリン塩溶液にて固定した。腫瘍の切断部分はパラフィン包埋した(スタンダードプロトコル)。切断部分は、腫瘍を通じて厚さ5μmで切り出した。各標本の切断部分はヘマトキシリン&エオジン(H&E)を用いて染色し、ガラス製カバーグラスにマウントした。
【0104】
結果
評価したすべてのポリクローン抗体はアドレノモジュリンのcAMP産生効果を減少させた。
図11に示した結果はRAMP3に対して誘導したポリクローン抗体がMG63細胞のcAMP産生を少なくとも15%まで阻害したことを示している。
産生された各モノクローン抗体はSW−13細胞の増殖阻害を12−45%の範囲で誘導した。
図12参照のこと(1:50濃度とは、1ウェル当たりの最終濃度でおよそ5ngに相当する)。
評価したモノクローン抗体の一つ,HB10,はU87細胞の増殖を上昇させた(
図13参照)。抗体用量が増加するにつれ、吸光度のレベルも上昇し、つまりは増殖のレベルも上昇していることから、本抗体の促進剤としての役割が示唆される。
【0105】
図14は、様々な濃度での抗体JF2存在下におけるU−87膠芽細胞腫細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
対照と比較して、JF2抗体の10μg用量は有意な増殖減少を生み出しており、これは40%の増殖減少に当たる。
図15は、様々な濃度での抗体JB3存在下におけるU−87膠芽細胞腫細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
対照と比較して、JB3抗体の全ての用量は有意な増殖減少を生み出しており、これはすべての用量において、およそ35%の増殖減少に当たる。このことよりEC50は1pgよりも低いことが示唆される。
【0106】
図16は、様々な濃度での抗体JB3存在下におけるMDA−MB−436−GFP乳癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。対照と比較して、JB3抗体の全ての用量は有意な増殖減少を生み出しているが、用量相関性は認められなかった。10ngが29%という最も大きな減少を生み出していたが、この反応はその他の処理群と有意には相違しない。
図17は、様々な濃度での抗体JF2存在下におけるMDA−MB−436−GFP乳癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。対照と比較して、JF2抗体の1μgおよび10μgの用量は有意な増殖減少を生み出していた。10μgが12%という最も大きな減少を生み出していた。
【0107】
図18は、10μg抗体JB3存在下におけるPC−3前立腺癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
対照と比較して、JB3抗体の10μgの用量は、外から添加したアドレノモジュリンの有無にかかわらず有意な増殖減少を生み出していた。10μgのJB3が57%という増殖減少を生み出した。
図19は、10μg抗体JF2存在下におけるPC−3前立腺癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
対照と比較して、JF2抗体の10μgの用量は、外から添加したアドレノモジュリンの有無にかかわらず有意な増殖減少を生み出していた。アドレノモジュリンの存在下で、10μgのJF2が37%という増殖減少を生み出し、外因性アドレノモジュリン非存在下で、22%の減少を生み出した。
【0108】
図20は、10μg抗体JB3存在下におけるSAOS骨肉腫細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。
対照と比較して、JB3抗体の10μgの用量は、外から添加したアドレノモジュリンの存在下では有意な増殖減少を生み出していたが、非存在下では有意な減少は認められなかった。アドレノモジュリン存在下で、10μgのJB3が34%の増殖減少を生み出した。
図21は、10μg抗体JB3および抗体JF2存在下におけるHCT116結腸癌細胞株の増殖速度を評価するためのMTTアッセイ結果(培養8日後)を示している。対照と比較して、JB3抗体の10μgの用量は有意な増殖減少を生み出していた;しかしながら、JF2抗体では統計的に有意な増殖の減少は生み出されなかった。アドレノモジュリン存在下で、10μgのJB3が27%の増殖減少を生み出した。
【0109】
図22は、アポトーシスのマーカーであるキャスパーゼ−3のレベルを定量することで、アポトーシスのレベルを示している。10μgの抗体JB3および抗体JF2の存在下において、U−87膠芽細胞腫細胞株はともに有意なキャスパーゼ−3レベル、すなわちアポトーシスレベルの増加を示した。抗体処理群は26%のキャスパーゼ−3レベルの増加を示している。
図23は、アポトーシスのマーカーであるキャスパーゼ−3のレベルを定量することで、アポトーシスのレベルを示している。10μgの抗体JB3および抗体JF2の存在下において、MDA−MB−436−GFP乳癌細胞株は、JB3抗体においてのみ有意なキャスパーゼ−3レベル、すなわちアポトーシスレベルの増加を示した。JB3抗体処理群は59%のキャスパーゼ−3の増加を示している。
【0110】
図24は、CD1ヌードマウスの右脇腹にMDA−MB−436−GFPを移植し、JF2抗体および対照を処理した後、6週間経過時までの当該腫瘍量を表わしている。両対照群では3週間以後での大幅な腫瘍量の増加が認められるが、抗体処理群の腫瘍成長速度は相当に低下している。対照群でのエラーバーは実験を通じて大きいが、抗体処理群の誤差は一貫して小さい。
図25は、CD1ヌードマウスの右脇腹にMDA−MB−436−GFPを移植し、JF2抗体および対照を処理した後、6週間経過時までの当該腫瘍重量を表わしている。腫瘍重量は死後に測定され、腫瘍量を利用して逆算されている。対照群では早期の時点から重量増加が認められるが、抗体処理群では4週間目まではゆっくりとした成長が認められ、重量は増加するものの、対照群を下回り続けている。
【0111】
図26は、ヌードマウスの右脇腹に移植したMDA−MB−436−GFP癌細胞株の蛍光画像を示している。
図27は、処置後6週間経過後のヌードマウスから切除した腫瘍の組織学的断面図を示している。断面図はH&Eにより染色し、腫瘍の代表的な画像を示す。対照群においては、より多くの血管が明らかであり(赤矢印)、壊死細胞のある領域はほとんど存在しなかった。抗体処理群においては、血管はほとんど存在せず、多くの黄円によって表示される壊死直前の細胞領域が数多く存在した。