(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
振動発電機は、バネ定数と可動部質量によって決まる共振周波数で共振させることで、発電効率を高めることができる(詳細は、実施の形態1の中で説明する)。これに対して、特許文献1では、軸受部分に磁気浮揚を利用し、摩擦によるロスをなくすことで、発電効率の低下を抑制することには言及している。
【0006】
しかしながら、共振周波数には何ら着目しておらず、自在に共振周波数の調整をすることができず、用途に応じた所望の共振周波数に調整する(合わせ込む)ことが困難であった。また、共振周波数の変動を考慮すると、所望の発電効率を得ることができる周波数範囲を、より広帯域化することが望まれる。
【0007】
さらに、振動発電機を種々の用途に適用する場合には、サイズをいかにしてコンパクト化するかも重要である。
【0008】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、所望の発電効率を得ることができる周波数範囲を、従来よりも広帯域化し、かつサイズのコンパクト化を実現する振動発電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る振動発電機は、円柱あるいは円筒形で構成され、フレーム内を軸方向に振動可能な永久磁石と、フレーム内における、永久磁石の外周と対向する位置に、外周と間隔を有して固定配置されるコイルと、永久磁石の軸方向の両端部にガイド棒を介して設けられた2つのバネ機構と、永久磁石の軸方向の両端部におけるガイド棒のそれぞれの外周に設けられた第1の磁石と、フレーム内における、第1の磁石と対向する位置に、第1の磁石と同極性が対向するように固定配置される第2の磁石とで構成された磁気軸受とを備え、永久磁石が軸方向に振動することによる、永久磁石とコイルとの相対運動によって発電する振動発電機であって、永久磁石、ガイド棒、および磁気軸受で構成される可動部を軸方向に複数有し、それぞれの可動部を、伸縮可能なバネ機構により軸方向に沿って連結する連結バネ部をさらに備え、複数の可動部のそれぞれは、連結バネ部、および2つのバネ機構の各バネ定数の選定により、共振周波数が個別設定されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摩擦ロスのない磁気軸受、あるいは摩擦抵抗の低い摺動機構により保持された磁石を振動させるとともに、可動部を、バネ機構により連結された複数の可動部として構成し、連結された可動部の振動方向の両端部にもバネ機構を備え、複数の可動部の共振周波数をバネ定数の変更により個別に変更可能とすることにより、所望の発電効率を得ることができる周波数範囲を、従来よりも広帯域化し、かつサイズのコンパクト化を実現する振動発電機を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、可動部が、バネ機構により連結された複数の可動部として構成され(第1の特徴)、連結された可動部の振動方向の両端部にもバネ機構部を設け(第2の特徴)、かつ、可動部の軸受けに磁気軸受あるいは摺動機構を採用したこと(第3の特徴)を技術的特徴としている。このような構成を備えることにより、複数の可動部の共振周波数をバネ定数の変更により個別に設定変更することで、所望の発電効率を得ることができる周波数範囲を、従来よりも広帯域化することができ、かつ、サイズのコンパクト化を実現でき、振動発電機の応用範囲を拡大できるという、優れた効果を得ることができる。
【0013】
そこで、このような技術的特徴を備えた本発明の振動発電機の好適な実施の形態につき、以下に、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
まず始めに、第2の特徴である「可動部の振動方向の両端部にバネ機構部を設けたこと」、および第3の特徴である「サイズのコンパクト化」について、可動部が1つであり、バネ機構として磁気バネ部を採用し、軸受として磁気軸受を採用した場合を例に、説明する。
【0015】
図1は、第2および第3の特徴を備えた振動発電機の構造を説明するための概略断面図である。
図1に示した振動発電機は、永久磁石1a、1b、コイル2、磁気軸受3a、3b、ガイド棒4、磁気バネ部5a、5b、フレーム10、および底板12を備えて構成されている。
【0016】
図1においては、円柱あるいは円筒形をした永久磁石(以下磁石)1a、1bが、同極を対向して配置されている。さらに、磁石1a、1bの周りを、コイル2が囲む構成となっている。ここで、コイル2は、フレーム10に固定されており、コイル2の中に配置された磁石1a、1bが振動することで、電気エネルギーが発生することとなる。
【0017】
さらに、磁石1aは、ガイド棒4を介して磁気バネ部5aと接続されている。同様に、磁石1bは、ガイド棒4を介して磁気バネ部5bと接続されている。
【0018】
ここで、本願の技術的特徴の1つである磁気バネ部5a、5b、について、説明する。磁気バネ部5a、5bは、磁石1a、1bの振動方向(
図1の紙面上の上下方向)の両端に設けられている。より具体的には、磁気バネ部5a、5bのそれぞれは、同極が対向して配置された一対の磁石で構成されている。
【0019】
磁気バネ部5aを構成する一対の磁石のうち、一方は、ガイド棒4の一端部に接続され、他方は、天板11に固定されている。同様に、磁気バネ部5bを構成する一対の磁石のうち、一方は、ガイド棒4の他端部に接続され、他方は、底板12に固定されている。
【0020】
そして、天板11および底板12の少なくとも一方の厚みを厚くすることで、磁気バネ部5a、5bのギャップ長をともに狭める方向に調整でき、逆に、天板11および底板12の少なくとも一方の厚みを薄くすることで、磁気バネ5a、5bのギャップ長をともに広げる方向に調整できる。すなわち、天板11および底板12の少なくとも一方の厚み調整により、磁気バネ部5a、5bのギャップ長(磁石間距離)を狭める方向、あるいは広げる方向に調整することができる。
【0021】
次に、磁石間距離の調整による効果について説明する。天板11および底板12の少なくとも一方の厚み調整により、磁気バネ部5a、5bの磁石間距離を調整した際に、磁石間距離が狭くなった場合には、バネ定数が大きくなり、周波数が高くなる。一方、磁石間距離が広くなった場合には、バネ定数が小さくなり、周波数が低くなる。従って、磁気バネ部5a、5bの磁極間距離を調整することで、振動発電機の共振周波数を調整することが可能となる。
【0022】
図2は、
図1に示した振動発電機における磁気バネ部5a,5bの磁石間距離の調整により周波数を変更した場合の、出力電圧の周波数特性を示す図である。
図2に示すように、本発明の振動発電機の出力電圧は、共振周波数において最大となるような山形の周波数特性を有している。すなわち、振動発電機では、バネ定数と可動部質量によって決まる共振周波数で共振させることで、発電効率を高めることができる。
【0023】
そこで、磁気バネ部5a,5bの磁石間距離を調整して、振動発電機が使用される環境の振動源の固有振動に合うように、振動発電機の共振周波数を容易に変更することで、環境に応じて、より大きな電圧値を出力できる振動発電機を得ることが可能となる。
【0024】
さらに、磁気バネ部5a,5bの磁石間距離の調整により、非接触により周波数調整を行うことができる。この結果、共振周波数を調整することによる機構上の損失のおそれがなく、耐久性が高く、長寿命の振動発電機が実現できる。
【0025】
さらに、天板11および底板12の少なくとも一方の厚み調整による磁石間距離の調整は、軸方向両端のバネ定数を同時に、同じ状態で変更することが可能である。この結果、磁気バネ部5a、5bのバネ定数がアンバランスとなることで、可動部の磁石、板バネが偏ることを避けることができる。
【0026】
さらに、磁気バネ部5a、5bは、磁石間距離が小さくなるに従って反発力が大きくなる。この結果、可動部の両端に磁気バネ部5a、5bを設けた構成を採用することで、大きな加速度が加わった際にも、可動部が振れ過ぎてバネが破損するといったことを防止でき、かつ、大きな加速度が加わった際の振れ止めの効果を実現できる。
【0027】
さらに、磁気軸受3a、3bは、可動部側の磁石外側と、筺体(フレーム10)側の磁石内側の極性がN極またはS極同士の同極とすることにより、反発力で浮遊した状態となる。このような磁気軸受3a、3bを採用して、磁石1a、1bを振動させる構成とすることで、振動方向と直交する方向に相当する振動発電機の幅(
図1中のWに相当)を、スリムにすることができる。
【0028】
ただし、
図1に示した構成は、振動する可動部が、磁石1a、1bによる1つで構成されている。従って、共振周波数を調整することで、発電効率を高めることはできるが、振動発電機を設置するごとに、共振周波数の調整が必要となり、設置コストが増大するという問題がある。さらに、振動発電機が使用される環境の振動源の固有振動が変化した場合には、周波数が、共振周波数からずれてしまい、先の
図2に示したように、出力電圧が極端に低下してしまうという問題もある。
【0029】
これらの問題に対して、本発明では、上述したように、「可動部が、バネ機構により連結された複数の可動部として構成されている」という第1の特徴を備えることで、解決を図っている。そこで、「複数の可動部」に関する具体的な構成および効果について、以下に、詳細に説明する。
【0030】
図3は、本発明の実施の形態1における振動発電機の構造を説明するための概略断面図であり、第1〜第3の特徴を全て備えた構成を示している。
図3に示した本実施の形態1における振動発電機は、永久磁石1a(1)、1b(1)、1a(2)、1b(2)、コイル2(1)、2(2)、磁気軸受3a(1)、3b(1)、3a(2)、3b(2)、ガイド棒4(1)、4(2)、磁気バネ部5a、5b、連結磁気バネ部5c、フレーム10、天板11、および底板12を備えて構成されている。
【0031】
先の
図1では、可動部が1段として構成されていたが、
図4では、可動部が2段として構成されており、1段目の構成には添字「(1)」を付しており、2段目の構成には添字「(2)」を付して、区別している。すなわち、
図3の構成においては、永久磁石1a、1b、ガイド棒4、磁気軸受3a、3bからなる可動部、およびコイル2が、2段構成となっている点が、先の
図1の構成とは異なっている。
【0032】
基本的な動作は、先の
図1の構成による動作と同じであるが、可動部を2段としたことにより、2段の可動部を連結するための連結磁気バネ部5cを設けている点が異なっており、この連結磁気バネ部5cの動作を中心に、以下に説明する。
【0033】
図3においては、可動部を2段としたことで、それぞれの可動部を連結磁気バネ部5cにより接続している。ここで、連結磁気バネ部5cとしては、磁気バネ部5a、5bと同様に、一対の磁石により構成することができる。このようにして、本実施の形態1では、複数の可動部が固定で連結されているのではなく、伸縮可能な磁気バネを介して連結されている。
【0034】
そこで、バネを介して複数の可動部を連絡した場合に得られる優れた効果について、複数の可動部を固定で連結した場合と対比しながら、図面を用いて、詳細に説明する。なお、以下の説明では、説明を簡略化するために、複数の可動部が2つである場合を具体例として挙げている。
【0035】
図4は、2つの可動部を固定で連結した場合の模式図である。
図4における各符号は、以下の内容を示している。
K1:1段目の可動部のバネ定数
C1:1段目の可動部の減衰係数
M1:1段目の可動部の質量
K2:2段目の可動部のバネ定数
C2:2段目の可動部の減衰係数
M2:2段目の可動部の質量
【0036】
図4に示すように、複数の可動部が固定で連結されている場合には、1つに連結された可動部と見なすことができ、共振周波数は、K1+K2、C1+C2、M1+M2により決定される1つの周波数となる。従って、出力電圧の周波数特性は、先の
図2に示したようになり、広帯域化を実現することはできない。
【0037】
一方、
図5は、本発明の実施の形態1における振動発電機において、2つの可動部をバネで連結した場合の模式図である。
図5における各符号は、以下の内容を示している。
K1:1段目の可動部のバネ定数
C1:1段目の可動部の減衰係数
M1:1段目の可動部の質量
K2:2段目の可動部のバネ定数
C2:2段目の可動部の減衰係数
M2:2段目の可動部の質量
K3:連結磁気バネ部5cの働きによるバネ定数
C3:連結磁気バネ部5cの働きによる減衰係数
【0038】
図5に示すように、複数の可動部が連結磁気バネ部5cを介して連結されている場合には、全体としては、1段目の可動部と2段目の可動部の個々の固有振動数の特性を合成したような応答特性となる。すなわち、複数の可動部は、連結磁気バネ部5cで結合されているので、それぞれの可動部は、他の可動部の共振周波数でも加振され、発電することができる形となる。
【0039】
図6は、本発明の実施の形態1において、2つの可動部を連結磁気バネ部5cを介して連結した際の、出力電圧の周波数特性を示す図である。
図6の結果から明らかなように、複数の可動部が連結磁気バネ部5cを介して連結されている
図3の構成を採用することにより、所望の発電効率を得ることができる周波数範囲を、従来よりも広帯域化できることがわかる。すなわち、それぞれが異なる共振周波数に設定された複数の可動部を組み合わせることで、広帯域化が実現できる。
【0040】
この結果、色々な周波数の振動源に対応可能な振動発電機が実現できる。さらに、振動源に複数の周波数の振動が混在した場合にも、所望の出力電圧を発電することが可能な振動発電機が実現できる。
【0041】
なお、
図3においては、可動部の軸受機構として、磁気軸受3a(1)、3b(1)、および3a(2)、3b(2)を用いる場合について説明した。しかしながら、可動部の軸受機構は、このような構成に限定されるものではない。
図7は、本発明の実施の形態1における振動発電機の第2の構造を説明するための概略断面図である。可動部の軸受機構として、磁気軸受3a(1)、3b(1)、および3a(2)、3b(2)を用いる代わりに、
図7に示すように、摺動機構3c(1)、3d(1)、および3c(2)、3d(2)を用いることも可能であり、同様に、広帯域化の効果を得ることができる。
【0042】
ここで、
図7に示した摺動機構の具体例としては、リニアベアリング、または金属との摩擦抵抗が所定値よりも低い樹脂(フッ素樹脂、あるいは高分子ポリエチレンなどの低摩擦係数の樹脂)などで構成することが考えられる。
【0043】
また、
図3においては、バネ機構として、磁気バネ部5a、5b、および連結磁気バネ部5cを用いる場合について説明した。しかしながら、バネ機構は、このような構成に限定されるものではない。
図8は、本発明の実施の形態1における振動発電機の第3の構造を説明するための概略断面図である。バネ機構として、磁気バネ部5a、5b、および連結磁気バネ部5cを用いる代わりに、巻バネ部5d、5e、および連結巻バネ部5fを用いることも可能であり、同様に、広帯域化の効果を得ることができる。
【0044】
以上のように、実施の形態1によれば、振動方向の両端部にバネ機構を備えるとともに、複数の可動部をバネ機構で連結する構成を実現している。この結果、それぞれのバネ機構のバネ定数を適切に選定することにより、所望の発電効率を得ることができる周波数範囲を広帯域化することができる。従って、振動源の固有振動が変動するような環境においても、出力電圧が極端に低下してしまうことを抑制でき、振動発電機の適用範囲を広げることが可能となる。
【0045】
また、磁気軸受、あるいは摺動機構を採用して可動部の軸受けを行うことで、振動方向と直交する方向に相当する振動発電機の幅を、スリムにすることができ、サイズのコンパクト化を実現できる。
【0046】
さらに、特に、振動方向を重力方向と一致させるような方向として、
図3、
図7、あるいは
図8に示した構造を備える振動発電機を設置する場合には、1段目の可動部と2段目の可動部を同じ重量として、同一仕様の可動部による直列構造としても、1段目と2段目では、かかる重力の違いから、共振周波数が変わることとなる。従って、同一構成の可動部を多段構成とすることによっても、広帯域化を実現できる。
【0047】
なお、本発明の振動発電機の具体的な構成について、
図3、
図7、あるいは
図8を用いて説明したが、本発明は、この構成に限定されるものではない。上述した第1〜第3の特徴を兼ね備えた構成が実現できれば、同様の優れた効果を得ることができる。