(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄タンク内における前記最低水位と前記検知水位との間の貯留水量は、前記水洗式大便器の溜水量以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明における好ましい実施の形態を説明する。
洗浄タンク内における最低水位と検知水位との間の貯留水量は、水洗式大便器の溜水量以上に設定されているようにすると良い。
【0011】
このような構成によれば、二度目の洗浄において大便器の溜水分を新たな洗浄水と置換させることができる。したがって、一度目の洗浄において流し残しが生じていたとしても、二度目の洗浄では流し残しを確実に解消することができる。
【0016】
<実施例1>
図1及び
図2は本発明の実施例1を示している。実施例1における水洗式大便器は便器本体1を有している。便器本体1の便鉢2の下部には水封部3が形成されている。水封部3の上方には排水路4の一端側が便鉢2の底面に向けて下向きに開口している。排水路4は便鉢2内の開口端から斜め上方へ立ち上がった後、鉛直に垂下するように形成されている。排水路4の他端側は図示しない排水管に接続されている。
【0017】
便器本体1に供給すべき洗浄水を貯留しておくための洗浄タンク5は便器本体1に隣接して設けられている。洗浄タンク5と便器本体1とは配管6によって接続されている。配管6の一端側は洗浄タンク5の底部に開口し、他端側は便器本体1内の上部に接続されている。配管の途中にはポンプ7が取付けられ、便器使用者によって操作される洗浄スイッチ8によって洗浄タンク5内の洗浄水を便器本体1へ圧送して供給することができるようになっている。ポンプ7は制御装置9によって制御されるようになっており、後述するように、制御装置9には一度の洗浄におけるポンプ7の動作時間が設定されている。なお、ポンプ7、配管6及び制御装置9によって本発明の洗浄水供給部Sが構成される。
【0018】
一方、洗浄タンク5内の上部にはタンク給水部Tの一端側が配置されている。タンク給水部Tは水道管に接続される配管10を有し、配管10の一端は洗浄タンク5の上方に開口している。配管10には給水弁11が取り付けられている。この給水弁11は電磁式開閉弁であり、制御装置9によって洗浄タンク5への給水及び停止の動作が制御されるようになっている。
【0019】
洗浄タンク5の内部には設定された水位を検出するための水位センサ12が設置されている。水位センサ12は、洗浄タンク5の底面に立設された支柱13とこの支柱13の上端部に取り付けられた検知部14とからなっている。支柱13内には検知部14に接続されたリード線(図示しない)が収容されている。リード線は洗浄タンク5の底面から外部に引き出され、制御装置9に接続されている。
【0020】
水位センサ12によって検出される水位(
図2(C)にH3で示される水位:以下、検知水位という)は、最低水位(
図2(A)中のH1で示される水位であって、配管6の開口より上位)と最高水位(同図中のH2で示される水位)との間の水位であって、最低水位H1から検知水位H3に至るまでの間に洗浄タンク5内に貯留される水量が、便鉢2内に貯留される溜水量(便鉢2内において溢流水位H4まで溜められたときの水量:Q)と同じかやや多めとなる水位を言う。
【0021】
なお、洗浄タンク5には図示はしないが、最高水位H2を検出するための水位検知手段(例えば光学式センサ)が設けられている。水位検知手段が最高水位H2を検出したことに基づいて制御装置9は給水弁11に対して閉止指令が出力されるようになっている。
【0022】
ところで、制御装置9は、水位センサ12からの検知信号が入力されない状況では、洗浄スイッチ8の操作によってもポンプ7の駆動を許容しないが、水位センサ12からの検知信号が入力されるとポンプ7の駆動を許容するような設定がなされている。また、本実施例の場合、制御装置9にはポンプ7の動作時間として2種類が設定されている。
【0023】
すなわち、制御装置9においては図示しない水位検知手段によって最高水位H2が検知されているときに洗浄スイッチ8が操作された場合には、動作時間としてT1時間が選択される。T1時間はポンプ7によって洗浄タンク5内の水位が最高水位H2から最低水位H1まで低下するまでの間の水量を吐出する時間であり、この間の水量は便器本体1の溜水量より十分に多い水量である。一方、検知水位H3は検知されているが最高水位H2が検知されていないときに、洗浄スイッチ8が操作された場合には、制御装置9はポンプ7の動作時間としてT2時間(T1>T2)が選択される。T2時間は便鉢2内の溜水量Qとほぼ等しいかそれよりもやや多めの水量Q´を吐出する時間である。
【0024】
上記のように構成された実施例1の作用効果を説明する。洗浄タンク5内が最高水位H2にある状態で、用便後に図示しない洗浄スイッチ8が操作されると、制御装置9はポンプ7の動作時間としてT1時間を選択してポンプ7を駆動させる。ポンプ7の駆動により洗浄タンク5内の洗浄水は配管6を通って便器本体1内へ一気に吐出される。洗浄水は浮遊汚物と共に便鉢2の水封部3から排水路4へとサイホンの作用によって勢いよく流れ出て外部の排水管から排水される。そして、設定された動作時間T1が経過すれば、制御装置9はポンプ7を停止させるため、便器本体1への洗浄水の流入が停止される。
【0025】
この一度目の洗浄の結果、洗浄タンク5内の水位は最低水位H1になる(
図2(A)状態)。したがって、この間に便器本体1内へ吐出された水量は、便鉢2の溜水量より十分に多い水量である。ポンプ7の駆動が停止されると、制御装置9から給水弁11に対して開弁信号が出力されるため、配管10を通して洗浄タンク5へ洗浄水が供給される。
【0026】
既述したように、一度目の洗浄がなされた後においても便鉢2内に流し残しが生じることがある。そのような場合には、使用者は一度目の洗浄後、僅かな時間のうちに二度目の洗浄を試みようとすることが予想される。しかし、
図2(B)に示すように、洗浄タンク5内は未だ洗浄水の補給途上にあって、水位が検知水位H3まで復帰していない場合には、水位センサ12は検知信号を制御装置9へ出力していない。この場合、制御装置9においてはポンプ7を駆動する条件が整わないため、洗浄スイッチ8が操作されてもポンプ7は駆動しない。したがって、洗浄タンク5内の水位が十分に復帰しないうちに二度目の洗浄が開始されてしまうことはない。
【0027】
洗浄タンク5内の水位が
図2(C)に示すように、検知水位H3に達すると、これ以後、制御装置9は水位センサ12からの検知信号の入力によりポンプ7の駆動が許容された状態となる。したがって、検知水位の検知後において洗浄スイッチ8が操作されると、制御装置9はポンプ7の動作時間としてT2時間を選択してポンプ7を駆動させ、2度目の洗浄が開始される。そして、T2時間が経過すると、ポンプ7の動作は停止するが、この間に便器本体1内に吐出される水量は便鉢2の溜水量Qとほぼ等しいかそれよりもやや多めである。一方、洗浄タンク5内において検知水位H3から最低水位H1に至るまでの間の水量は、溜水量Qとほぼ等しいかそれよりもやや多めに設定されているため、2度目の洗浄終了後においても洗浄タンク5内の水位が最低水位を下回ってしまうことはない。このように、2度目の洗浄の際に便器本体1へ吐出される水量は、便鉢2の溜水量Qと同じかこれをやや上回る量である。したがって、2度目の洗浄において便鉢2内の溜水分のほぼ全量を新たな洗浄水と置換させることができる。したがって、一度目の洗浄において流し残しが生じていたとしても、二度目の洗浄によって流し残しを確実に解消することができる。
【0028】
<実施例2>
図3は本発明の実施例2を示している。本実施例が実施例1と相違する点は、洗浄水供給部Sに便器本体1内に連通する復水供給路15を設けた点である。復水供給路15の一端側は給水弁11の下流部において洗浄タンク5へ向けて延びる配管から分岐するようにして接続されている。復水供給路15の他端側は便器本体1内の上部に開口している。この実施例においては、復水供給路15の途中に絞り弁16が介在されていて、便器本体1内においてサイホンの作用を生じさせない程度の流量となるようにしてある。
【0029】
上記のように構成された実施形態2によれば、実施例1と同様にして一度目の洗浄が完了すると、制御装置9により給水弁11が開弁されて洗浄タンク5内への洗浄水の補給がなされると同時に、復水供給路15からは流量を絞られた状態で便器本体1内へ洗浄水が流入する。
【0030】
ところで、ポンプ7を通じて便器本体1内へ洗浄水が勢いよく吐出されている間は排水路4においてサイホン作用が生じている。したがって、ポンプ7の動作時間T1中に吐出される水量が便鉢2内の溜水量Qを上回る設定であっても、復水供給路15からの洗浄水の供給がなければ、便鉢2内の水位は溢流水位H4を下回り、溜水量が確保されない状況が生じてしまう。
【0031】
しかし、本実施例ではポンプ7が停止した後に、復水供給路15から便器本体1内へサイホンの作用を生じさせない程度の流量で洗浄水の供給がなされるようにしたため、便鉢2内には溜水量Qが確保される。
他の構成は実施例1と同様であり、同様の作用効果を発揮することができる。
【0032】
<実施例3>
図4は本発明の実施例3を示している。本実施例では洗浄タンク5の検知水位H5が他の実施例と相違している。実施例1では検知水位H3と最低水位H1との間の水量が便器本体の溜水量(Q)とほぼ同程度がそれよりやや多めの水量(Q´)に設定されていたが、本実施例ではこれに復水分(Q1)を加算した水量(Q´+Q1)となるように検知水位が嵩上げされて設定されている。
【0033】
また、本実施例では便器本体1へ洗浄水を吐出する間、ポンプ7の運転モードが能力大の運転モードから能力小のモードへと切り替えられるようになっている。
能力大の運転モードで供給される洗浄水は便器本体1の排水路4においてサイホンの作用を生じさせるが、能力小の運転モードではサイホンの作用を生じさせない。
【0034】
制御装置9においては図示しない水位検知手段によって最高水位H2が検知されているときに洗浄スイッチ8が操作された場合には、能力大の運転モードの継続時間としてT3時間が選択される。T3時間はポンプ7によって洗浄タンク5内の水位が最高水位H2から低下し、最低水位H1より復水分だけ嵩上げした水位に至るまでの間の水量を吐出する時間である。また、制御装置9はT3時間が経過すると、能力小の運転モードに切り替えてT4時間が継続するように設定されている。
【0035】
一方、検知水位H5は検知されているが最高水位H2が検知されていないときに洗浄スイッチ8が操作された場合には、制御装置9はポンプ7の動作時間としてT2時間(T3>T2)が選択される。T2時間は便鉢2内の溜水量Qとほぼ等しいかそれよりもやや多めの水量Q´を、ポンプ7が能力大の運転モードで吐出する時間である。また、制御装置9はT2時間が経過すると、運転モードを能力小に切り替えてT4時間が継続するように設定されている。
【0036】
上記のように構成された実施例3によれば、洗浄タンク5内が最高水位H2にあるときに洗浄スイッチ8が操作されると、ポンプ7はまず能力大の運転モードでT3時間、駆動する。この間、ポンプ7は比較的大流量で洗浄水を吐出するため、サイホン作用によって水封部3内の汚物は排水路へ吸引されつつ排出される。T3時間が経過した時点における洗浄タンク5内の水位は、最低水位から復水分に相当する水量Q1分だけ嵩上げした水位となっている。
【0037】
T3時間の経過後に、制御装置9はポンプ7の運転モードを能力小に切り替える。以後、ポンプ7は比較的小流量で洗浄水を吐出する。そして、T4時間経過後には復水相当分の水量Q1が便器本体1内に吐出されるが、この間はサイホン作用を生じないため、便鉢2内の水位は溢流水位に達する。
【0038】
一方、2度目の洗浄にあたり、水位センサ12が検知水位H5を検知しているが最高水位H2は検知されていない状態で洗浄スイッチ8が操作されると、制御装置9はポンプ7の駆動時間としてT2時間(T3>T2)を選択する。この間に、ポンプ7は比較的大流量でかつほぼ溜水流量に等しいかそれよりやや多めの水量Q´を吐出する。この間はサイホンの作用を生じているが、T2時間が経過した後はポンプ7は能力小に切り替えられることで、サイホン作用は一旦途切れる。したがって、T2時間の間に便鉢2内に復水分に相当する水量Q1が吐出されれば、便鉢2内の水位は溢流水位に達する。かくして、2度目の洗浄を行った後も、便鉢2内に所定の溜水量Qを確保することができる。
他の構成は他の実施例と同様であり、同様の作用効果を発揮することができる。
【0039】
<実施例4>
図5は本発明の実施例4を示している。本実施例では洗浄タンク17を便器本体1より上位に設定し、洗浄水供給部Sの構成要素からポンプを除外したものである。
【0040】
具体的には、洗浄タンク17の底面には通水孔18が開口し、図示しない配管を介して便器本体1内へ通じている。この通水孔18は洗浄弁19によって開閉可能であり、洗浄弁19は回動可能な洗浄ハンドル20とボールチェーン21を介して接続されている。洗浄ハンドル20にはモータ22が接続され、かつモータ22は洗浄スイッチ8の操作に基づき制御装置9から出力される駆動指令により駆動する。
なお、23はオーバーフロー管である。
【0041】
本発明は、実施例4のように洗浄タンク17内の洗浄水を重力の作用によって便器本体1へ供給する形式の大便器にも適用可能である。また、実施例4は実施例2のような復水供給路15の構成を付加したり、あるいは実施例3のような洗浄タンク5の検知水位を復水分を加算する構成と組み合わせることもできる。
【0042】
他の構成は実施例1乃至実施例3の構成と同じであり、これらと同様の作用効果を発揮することができる。
【0043】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)各実施例ではポンプ7の動作を時間によって制御するようにしたが、ポンプ7の回転数によって制御するようにしてもよい。
(2)実施例2では復水供給路15に絞り弁16を設けたが、絞り弁16に代えて復水供給路15の管径を細くしてもよい。
(3)実施例3では洗浄タンク17から便器本体1へ洗浄水を供給する間に、ポンプ7を能力小の運転モードに切り替えることで、サイホン作用を停止させ、以後は能力小の運転モードによって復水を行うようにしたが、これに代えて次のようにしてもよい。すなわち、ポンプ7を一旦完全に停止してサイホン作用を停止し、能力大の運転モードのままポンプ7の駆動を再開して復水を行うようにしてもよい。