特許第6086585号(P6086585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086585
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】グラウト組成物及びグラウト材
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20170220BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20170220BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20170220BHJP
   C04B 24/18 20060101ALI20170220BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20170220BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20170220BHJP
   C04B 111/70 20060101ALN20170220BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B24/38 D
   C04B24/22 C
   C04B24/18 B
   C04B22/06 Z
   C04B20/00 B
   C04B111:70
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-289158(P2012-289158)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129209(P2014-129209A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】羽根井 誉久
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−149457(JP,A)
【文献】 特開2000−044308(JP,A)
【文献】 木虎智子,68.骨材粒径がグラウト材の間隙充填性および分離抵抗性に及ぼす影響について,セメント・コンクリート論文集,1997年12月25日,No.51,P.400-405
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00−32/02,
C04B40/00−40/06,
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含有する粉末25〜45質量%と、75〜55質量%の骨材からなり、該骨材が2.5 mmを超える粒子が1質量%以下、1.2mmを超え2.5mm以下の粒子が30〜40質量%、0.6mmを 超え1.2mm以下の粒子が23〜40質量%、0.3mmを超え0.6mm以下の粒子が15〜20質量%、 0.15mmを超え0.3mm以下の粒子が5〜15質量%であり、上記のセメントを含有する粉末が、セメントと膨張材とを含有する無機質結合材と、該無機質結合材100質量部に対し、0.001〜0.005質量部の粉末増粘剤、0.5〜1.5質量部の粉末減水剤、0.0005〜0.01質量部の発泡剤及び0.01〜0.05質量部の粉末消泡剤を含有し、上記無機質結合材中に無機質結合材100質量部に対し、97〜88質量部のセメント及び3〜12質量部の膨張材を含有するグラウト組成物。
【請求項2】
機質結合材100質量部に対し、質量部の膨張材を含有する請求項1に記載のグラウト組成物。
【請求項3】
グラウト組成物100質量部に対し12〜20質量部の水を混練して用いる請求項1又は請求項2に記載のグラウト組成物。
【請求項4】
水結合材比32〜45%となる量の水を混練して用いる請求項1〜請求項3何れかに記載のグラウト組成物からなる耐震補強用グラウト組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れかのグラウト組成物と、グラウト組成物100質量部に対し12〜20質量部の水とを含有するグラウト材。
【請求項6】
請求項4に記載の耐震補強用グラウト組成物と、水結合材比32〜45%となる量の水とを含有する耐震補強用グラウト材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震補強用グラウト組成物及びグラウト材に関する。詳しくは、細骨材の含有率が高いにも拘らず、流動性に優れ、材料分離が起こり難いグラウト組成物及びグラウト材に関し、特に耐震補強用グラウト組成物及び耐震補強用グラウト材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物を対象とした耐震補強工法としては、ブレース工法、増設壁工法、巻き立て工法など様々な耐震補強工法がある。これらの耐震補強工法に、グラウトモルタル(例えば、特許文献1〜3参照)が使用されている。グラウトモルタルを充填する部分には、既存の柱や梁等の鉄筋コンクリート製部材と、鉄骨製ブレースや鉄筋コンクリート製増設壁(耐力壁)とを一体化させるために、アンカー筋やスパイラル筋等の鉄筋が多数設置されているとともに、充填するグラウトモルタルの容積が比較的大きい。このため、耐震補強工法に用いるグラウトモルタルは、優れた流動性と低い発熱性が必要である。低い発熱性を得るためには、グラウトモルタル組成物中の細骨材の含有率(グラウトモルタル中の水を除いたものうちの含有率)を60質量%以上に高める、即ち結合材の含有率を40質量%以下にする必要がある。なお、本発明における結合材とは、水硬性セメントや高炉スラグ粉末等の水硬性物質、並びに活性シリカ等のポゾランをいう。
【0003】
また、耐震補強工法において、グラウトモルタルをグラウトポンプで圧送した上で型枠内に充填することが多く行われている。細骨材の含有率が高いグラウトモルタルをグラウトポンプで圧送すると、グラウトモルタルの流動性がポンプ圧送の前後で大きく変化し、これにより材料分離が起こることや型枠脱枠時の表面状態が悪いことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−086320号公報
【特許文献2】特開2000−044308号公報
【特許文献3】特開2008−230890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題の解決、即ち、本発明は、細骨材の含有率が高いにも拘らず、ポンプ圧送したときにポンプ圧送前後流動性の変化が小さく流動性に優れ、材料分離が起こり難いグラウト組成物、特に耐震補強用グラウト組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、細骨材の含有率が高いにも拘らず、ポンプ圧送したときにポンプ圧送前後流動性の変化が小さく流動性に優れ、材料分離が起こり難いグラウト材、特に耐震補強用グラウト材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、セメントと、特定粒度の細骨材を特定の割合で含有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)で表すグラウト組成物、(4)で表す耐震補強用グラウト組成物、(5)で表すグラウト材及び(6)で表す耐震補強用グラウト材である。
(1)セメントを含有する粉末25〜45質量%と、75〜55質量%の骨材からなり、該骨材が2.5 mmを超える粒子が1質量%以下、1.2mmを超え2.5mm以下の粒子が30〜40質量%、0.6mmを 超え1.2mm以下の粒子が23〜40質量%、0.3mmを超え0.6mm以下の粒子が15〜20質量%、 0.15mmを超え0.3mm以下の粒子が5〜15質量%であり、上記のセメントを含有する粉末が、セメントと膨張材とを含有する無機質結合材と、該無機質結合材100質量部に対し、0.001〜0.005質量部の粉末増粘剤、0.5〜1.5質量部の粉末減水剤、0.0005〜0.01質量部の発泡剤及び0.01〜0.05質量部の粉末消泡剤を含有し、上記無機質結合材中に無機質結合材100質量部に対し、97〜88質量部のセメント及び3〜12質量部の膨張材を含有するグラウト組成物。
(2)機質結合材100質量部に対し、質量部の膨張材を含有する上記(1)のグラウト組成物。
(3)グラウト組成物100質量部に対し12〜20質量部の水を混練して用いる上記(1)又は(2)のグラウト組成物。
(4)水結合材比32〜45%となる量の水を混練して用いる上記(1)〜(3)何れかのグラウト組成物からなる耐震補強用グラウト組成物。
(5)上記(1)〜(3)何れかのグラウト組成物と、グラウト組成物100質量部に対し12〜20質量部の水とを含有するグラウト材。
(6)上記(4)の耐震補強用グラウト組成物と、水結合材比32〜45%となる量の水とを含有する耐震補強用グラウト材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、細骨材の含有率が高いにも拘らず、ポンプ圧送したときにポンプ圧送前後流動性の変化が小さく流動性に優れ、材料分離が起こり難く且つ型枠の脱枠時の表面状態の優れるグラウト組成物、特に耐震補強用グラウト組成物が得られる。また、本発明によれば、細骨材の含有率が高いにも拘らず、ポンプ圧送したときにポンプ圧送前後流動性の変化が小さく流動性に優れ、材料分離が起こり難いグラウト材、特に耐震補強用グラウト材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のグラウト組成物に用いる粉末は無機質結合材を含有し、また、該無機質結合材はセメントを含有する。本発明におけるセメントは、水硬性セメントであればよく、例えば普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱の各種ポルトランドセメント、エコセメント、並びにこれらのポルトランドセメント又はエコセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ粉末、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメント、太平洋セメント社製「スーパージェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。ワービリティを損ない難く可使時間が長く確保し易いことから、各種ポルトランドセメント、エコセメント及び各種混合セメントから選ばれる一種又は二種以上を使用することが好ましい。また、本発明において無機質結合材は、セメント以外には、フライアッシュやシリカフューム等のポゾラン、高炉スラグ粉末を代表とする潜在水硬性物質及び膨張材があるが、ポゾラン及び潜在水硬性物質は別に添加される場合であっても混合セメントの一部と考える。無機質結合材100質量部に対し、セメントを88〜97質量部含有させることが好ましい。
【0009】
また、本発明に用いる粉末には、粉末状混和材料を用いることが好ましく、上記無機質結合材100質量部に対し、0.001〜0.005質量部の粉末増粘剤、0.5〜1.5質量部の粉末減水剤、3〜12質量部の膨張材、0.0005〜0.01質量部の発泡剤、0.01〜0.05質量部の消泡剤から選ばれる1種又は2種以上を含有することが更に好ましい。上記無機質結合材100質量部に対し、0.001〜0.005質量部の粉末増粘剤又は/及び0.5〜1.5質量部の粉末減水剤を含有させることで、グラウトモルタルとしたときに、モルタルポンプで圧送することができるとともに圧送後の材料分離を抑制することができる。更に好ましくは、上記無機質結合材100質量部に対し、0.001〜0.003質量部の粉末増粘剤又は/及び0.5〜1.5質量部の粉末減水剤含有させる。特に好ましくは、粉末増粘剤及び粉末減水剤を併用する。
【0010】
本発明に用いる粉末増粘剤としては、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のヒドロキシアルキルセルロース、或いは、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルエチルセルロース(HEEC)等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等の水溶性セルロース;アルギン酸、β−1,3グルカン、プルラン、ウェランガム等の多糖類;アクリル樹脂やポリビニルアルコール等のポリビニル化合物;メチルスターチ,エチルスターチ,プロピルスターチ又はメチルプロピルスターチ等のアルキルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ又はヒドロキシプロピルスターチ等のヒドロキシアルキルスターチ、或いは、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等のヒドロキシアルキルアルキルスターチ等スターチエーテル等が挙げられ、これらの一種又は二種以上の使用が可能である。
【0011】
また、本発明に用いる粉末減水剤としては、特に限定されず、例えば、ポリカルボン酸塩系粉末減水剤、ナフタレンスルホン酸塩系粉末減水剤、メラミンスルホン酸塩系粉末減水剤及びリグニンスルホン酸塩系粉末減水剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。用いる粉末減水剤としては、粉末状高性能減水剤又は粉末状高性能AE減水剤を用いると、グラウトモルタルの材齢28日における圧縮強度を45N/mm以上とし易いことから好ましい。
【0012】
また、上記無機質結合材100質量部に対し、3〜12質量部の膨張材、0.0005〜0.01質量部の発泡剤又は/及び0.01〜0.05質量部の粉末消泡剤を含有させることで、耐震補強用のグラウトモルタルとしたときに、既設の壁や柱等の部材と新規に設置する部材がより一体化することができる。より好ましくは、上記無機質結合材100質量部に対し、5〜9質量部の膨張材、0.001〜0.004質量部の発泡剤又は/及び0.01〜0.03質量部の消泡剤を含有させる。
【0013】
本発明に用いる膨張材としては、水和により例えば水酸化カルシウムやエトリンガイト等の水和物の結晶が成長し、嵩体積が大きくなる物質を主要成分とするものであれば何れのものでも良く、具体的には、生石灰、カルシウムサルホアルミネート、無水石膏、マグネシア、石灰系膨張材、エトリンガイト系膨張材等が好適な例として挙げられ、これら又はこれらに類する物質の一種又は二種以上を使用することが可能である。用いる膨張材としては、JIS A 6202「コンクリート用膨張材 」に適合する膨張材が、混和量に対する膨張率が安定しているので特に好ましい。膨張材の混和量は、無機質結合材100質量部に対し、3〜12質量部とすることが好ましい。3質量部未満では膨張材の効果が得られ難く、12質量部を超えると拘束されていない部分の強度が不足する虞がある。より好ましい膨張材の混和量は、無機質結合材100質量部に対し、5〜9質量部とする。
【0014】
本発明に用いる発泡剤としては、粉末発泡剤であれば特に限定されず、具体的には水と混練後に気体を発生する粉末であればよい。この発泡作用によりグラウトモルタルの沈下現象を防止し、既設の壁や柱等の部材並びに新規に設置する部材とより一体化することができる。との一体化を図る。その具体例として、例えば、アルミニウムや亜鉛等の両性金属の粉末や粉末状過酸化物質等が挙げられる。なかでも、効果的に発泡することができるので、アルミニウム粉末が好ましい。発泡剤の混和量は、無機質結合材100質量部に対し、0.0005〜0.01質量部とすることが好ましい。0.0005質量部未満では発泡剤の効果が得られ難く、0.01質量部を超えると強度が不足する虞がある。より好ましい発泡剤の混和量は、無機質結合材100質量部に対し、0.001〜0.004質量部とする。
【0015】
本発明に用いる粉末消泡剤としては、市販のセメント用粉末消泡剤、市販のセメントモルタル用粉末消泡剤又は市販のコンクリート用粉末消泡剤の他、鉱物油系,エーテル系,シリコーン系等の液体消泡剤、トリブチルフォスフェート、ポリジメチルシロキサン又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル系非イオン界面活性剤を無機質粉末に担持させ粉末状にしたもの、或いは他用途の粉末消泡剤でもよい。粉末消泡剤の混和量は、無機質結合材100質量部に対し、0.01〜0.05質量部とすることが好ましい。0.01質量部未満では粉末消泡剤の効果が得られ難く、0.05質量部を超えると強度が不足する虞がある。より好ましい粉末消泡剤の混和量は、無機質結合材100質量部に対し、0.01〜0.03質量部とする。
【0016】
また、本発明に用いる骨材としては、2.5mmを超える粒子が1質量%以下、1.2mmを超え2.5mm以下の粒子が30〜40質量%、0.6mmを超え1.2mm以下の粒子が23〜40質量%、0.3mmを超え0.6mm以下の粒子が15〜20質量%、0.15mmを超え0.3mm以下の粒子が5〜15質量%である細骨材であればよい。本発明で用いる骨材の材質としては、特に限定されず、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、人工骨材、スラグ骨材などを用いることができる。本発明において2.5mmを超える粒子とは、公称呼び寸法(以下、「目開き」と云う。)2.5mmの篩に留まる粒子を云う。また、1.2mmを超え2.5mm以下の粒子とは、目開き1.2mmの篩に留まり且つ目開き2.5mmの篩を通過する粒子を云う。同様に、0.6mmを超え1.2mm以下の粒子とは、目開き0.6mmの篩に留まり且つ目開き1.2mmの篩を通過する粒子を云い、0.3mmを超え0.6mm以下の粒子とは、目開き0.3mmの篩に留まり且つ目開き0.6mmの篩を通過する粒子を云い、0.15mmを超え0.3mm以下の粒子とは、目開き0.15mmの篩に留まり且つ目開き0.3mmの篩を通過する粒子を云い、0.15mm以下の粒子とは、目開き0.15mmの篩を通過する粒子を云う。骨材の粒度が上記範囲から外れると、材料分離が起こし易い、グラウトモルタルをグラウトポンプで圧送するとグラウトモルタルの流動性がポンプ圧送の前後で大きく変化する、又は型枠脱枠時の表面状態が悪いという問題が生じる。
【0017】
本発明のグラウト組成物には、上記無機質結合材、粉末増粘剤、粉末減水剤、膨張材、発泡剤、粉末増粘剤、骨材及び粉末消泡剤以外に、他の混和材料から選ばれる一種又は二種以上を本発明の効果を実質損なわない範囲で併用することができる。この混和材料としては、例えばセメント用ポリマー、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、空気連行剤、表面硬化剤等が挙げられる。また、本発明で使用される混和材料は、粉末状でも水溶液状でも使用可能であるが、施工現場で複雑な計量操作等を必要とせずに、所定量の水を計量し混練するだけですぐに使用できるように、本発明のグラウト組成物の配合成分のすべてが予め混合され粉末状である所謂「プレミックス製品」であるほうが施工現場での作業性が良い為、使用する混和材料自体も全て粉末状又は顆粒状であることが好ましい。
【0018】
本発明のグラウト組成物において、セメントを含有する粉末の含有率は25〜45質量%且つ骨材の含有率は75〜55質量%とする。粉末の含有率が25質量%未満、骨材の含有率が75質量%を超えると材料分離を抑えながらグラウト材としての流動性を確保し難い。また、粉末の含有率が45質量%を超える、骨材の含有率が55質量%未満では、水和熱によるグラウトモルタル硬化体の温度上昇量が大きいため、耐震補強用グラウト材に用い難い。
【0019】
本発明のグラウト組成物は、V型混合機や可傾式コンクリートミキサ等の重力式ミキサ、ヘンシェル式ミキサ、リボンミキサ等のミキサにより、所定量の上記各材料を予め混合する方が、添加後のグラウト組成物において材料の偏在が抑えられることから好ましい。このとき用いるミキサは、連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良い。各材料のミキサ内への投入順序は特に限定されない。一種ずつ添加してもよく、一部又は全部を同時に添加してもよい。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に各材料を計り取り投入する方法により、本発明のグラウト組成物を製造することもできる。
【0020】
本発明のグラウト組成物は、グラウト組成物100質量部に対し12〜20質量部の水と混練して用いる。このときの水量は、水性の液状混和材料(例えば液体減水剤やゴムラテックス。)を添加する場合は、グラウト組成物に添加する水性の液状混和材料に含まれる水の量も考慮する。12質量部未満では流動性が得られ難く、20質量部を超えると材料分離を起こす虞がある。より流動性が高く且つ材料分離し難いことから、13〜18質量部が好ましい。本発明のグラウト組成物を耐震補強用として用いるときは、水結合材比32〜45%となる量の水を混練して用いることが好ましい。
【0021】
また、本発明のグラウト材は、上記のグラウト組成物と、グラウト組成物100質量部に対し12〜20質量部の水とを混練したものである。本発明のグラウト材に、本発明の効果を実質損なわない範囲で、上記の混和材料から選ばれる一種又は二種以上を混和し含有させることができる。このとき、水性の液状混和材料を混和するときは、この水性の液状混和材料に含まれる水量も考慮した上で、グラウト組成物100質量部に対し12〜20質量部となるようにする必要がある。本発明のグラウト材を耐震補強用として用いるときは、水結合材比32〜45%となる量の水を混練して用いることが好ましい。混練する方法は特に限定されず、例えば水に上記のグラウト組成物を全量加え混練する方法、水に上記のグラウト組成物を混練しながら加え更に混練する方法、上記のグラウト組成物に水を全量加え混練する方法、上記のグラウト組成物に水を混練しながら加え更に混練する方法、水及び上記のグラウト組成物のそれぞれ一部ずつを2以上に分けて混練したものを合わせて更に混練する方法、水と水性の混和材料を合わせたものに上記のグラウト組成物を全量加え混練する方法、水と水性の混和材料を合わせたものに上記のグラウト組成物を混練しながら加え更に混練する方法、上記のグラウト組成物に水と水性の混和材料を合わせたものを全量加え混練する方法、上記のグラウト組成物に水と水性の混和材料を合わせたものを混練しながら加え更に混練する方法、水と水性の混和材料を合わせたものに及び上記のグラウト組成物のそれぞれ一部ずつを2以上に分けて混練したものを合わせて更に混練する方法等がある。上記のグラウト組成物と水以外に混和材料を混和させる場合は、上記のグラウト組成物に添加しても、水に添加しても、両方に添加してもよく、上記のグラウト組成物と水を混練したものに添加してもよい。また、混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、ミキサを用いることが量を多く混練できるので好ましい。用いることのできるミキサとしては連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えばパン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、左官ミキサ等が挙げられる。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
表1に示す配合割合の各材料をヘンシェルミキサ内に投入した後に、5分間混合することでグラウト組成物を作製した。このときの使用材料を以下に示す。作製したグラウト組成物と表1に示す水量の水を全量グラウトミキサ内に投入した後、90秒間混練することによりグラウト材を作製した。グラウト材の作製は、何れも20±3℃、湿度80%以上の恒温室内で行った。
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
発泡剤:アルミニウム粉末(東洋アルミニウウム社製)
細骨材:珪砂
粉末減水剤:ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤(花王社製)
粉末減水剤2:リグニンスルホン酸塩系高性能減水剤(日本製紙ケミカル社製)
粉末増粘剤:水溶性セルロース系増粘剤(信越化学工業社製)
膨張材:JIS A 6202「コンクリート用膨張材 」に適合する石灰系膨張材(太平洋マテリアル株式会社製)
消泡剤:サンノプコ社製消泡剤(商品名「SNディフォーマー55P」、粉末状)

水:佐倉市上水
【0023】
【表1】
【0024】
作製したグラウト材を20分間静置した後、ホース長20mの注入ホース(内径2インチ)内をポンプ圧送し、ホース先端から排出されたグラウト材について、品質試験として以下に示す通り、流動性試験、ブリーディング試験、骨材の沈降有無確認試験、圧縮強度試験、並びに温度上昇量測定を行った。練り混ぜ直後の骨材沈降の有無、即ち材料分離の有無を手触りにより確認した。これらの結果を表2に示した。尚、圧縮強度試験以外の品質試験は、何れも20±3℃、湿度80%以上の恒温室内で行った。
<品質試験方法>
・流動性試験
土木学会基準 JSCE−F 541「充てんモルタルの流動性試験方法」に従って、J14漏斗による流下時間を測定した。流下時間が6秒〜10秒の範囲内を○(良好)、範囲外の値を×(不適)と評価した。
・ブリーディング試験
ブリーディングは、土木学会基準 JSCE−F 522「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率および膨張率試験方法」に従って測定した。ホース先端から排出されたグラウト材をポリエチレン製袋に入れ、2時間後にブリーディングを測定した。ブリーディングが見られなかったものを○(良好)、ブリーディングが見られたものを×(不良)と評価した。
・骨材沈降の有無確認試験(不分離性の確認)
ブリーディング試験と同様にグラウト材をポリエチレン製袋に入れ、20分後にポリ袋の底部分に細骨材が溜まっているか否かを手触りにより確認することで不分離性を判断した。ポリ袋の底部分に細骨材が沈降し溜まっているものを×(不良)、骨材が溜まっていないものを○(良好)と評価した。
・圧縮強度試験
土木学会基準JSCE−G 505「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法」に準じ、材齢28日の圧縮強度を測定した。このとき供試体は、材齢1日で脱型し、その後20℃の水中で試験直前まで養生した。材齢28日において圧縮強度が45N/mm以上のものを○(良好)、45N/mm未満のものを×(不良)と評価した。
・温度上昇量測定
グラウト材により1辺が30cmの立方体となる供試体を作製し、その供試体の中心温度を測定し、最高温度と、混練開始から最高温度到達までの時間を求めた。
【0025】
【表2】
【0026】
本発明の実施例に当たるグラウト材(No.1〜4)は、何れも混練直後、ポンプ圧送後ともにJ14漏斗を用いた流下時間が8±2秒の範囲であり、流動性に優れポンプ圧送前後の流動性の変化が小さかった。それに比べて、比較例に当たる配合No.5のグラウト材は、混練直後8±2秒の範囲内であった流下時間が、8±2秒の範囲から外れていた。
【0027】
また、本発明の実施例に当たるグラウト材(No.1〜4)は、何れもブリーディングが見られず、細骨材の沈降も見られず材料分離が見られなかったが、比較例に当たるグラウト材(No.5〜6)はポンプ圧送後に少なくとも細骨材の沈降が見られ、材料分離を起こしていた。
【0028】
また、本発明の実施例に当たるグラウト材(No.1〜4)は、何れも材齢28日の圧縮強度が45N/mm以上と、強度が高く優れていた。また、本発明の実施例に当たるグラウト材(No.1〜4)は、何れも最高温度が50℃以下、即ち温度上昇量が30℃以下と低発熱であった。これらのことより、本発明の実施例に当たるグラウト材(No.1〜4)は、何れも耐震補強用のグラウト材として充分な性能を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、ポンプ圧送後においても流動性、圧縮強度、材料不分離性及び低発熱性が優れており、耐震補強用のグラウト材として用いることができる。また、耐震補強工事以外にも、低発熱性、高流動性及び高い強度が求められるグラウト材充填工事に用いることができる。