特許第6086592号(P6086592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6086592-多缶設置ボイラ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086592
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】多缶設置ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   F22B35/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-89201(P2013-89201)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-211296(P2014-211296A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】森本 守
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−182902(JP,A)
【文献】 特開2011−069558(JP,A)
【文献】 特開2003−302003(JP,A)
【文献】 特開2011−247538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B35/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
優先して燃焼する第1の燃料と、第1の燃料では不足する分を補う第2の燃料を切り替えて供給することができるようにしているボイラを複数台設置しておき、ボイラの運転を集中管理する台数制御装置によって前記各ボイラの運転を制御するようにしている多缶設置ボイラであって、各ボイラには稼働優先順位を設定し、稼働優先順位の高いものから必要台数分のボイラを燃焼させるようにすることでボイラ全体での燃焼量を制御するようにしており、稼働優先順位は定期的に変更をすることで各ボイラでの稼働状態に偏りが生じることを防ぐようにしている多缶設置ボイラにおいて、
前記第1の燃料は稼働優先順位の高いボイラに供給するようにしておき、稼働優先順位の変更を行う場合は、まず稼働優先順位未変更ボイラの中で最上位に繰り上げるボイラの順位を繰り上げる工程、次に稼働優先順位変更に伴って供給する燃料を第1の燃料から第2の燃料に切り替えるボイラがある場合には、そのボイラに対する供給燃料の切り替えを行う工程、その次に稼働優先順位変更に伴って供給する燃料を第2の燃料から第1の燃料に切り替えるボイラがある場合には、そのボイラに対する供給燃料の切り替えを行う工程、最後に先の稼働優先順位変更により順位が重複しているボイラで、まだ順位の変更を行っていないボイラでの順位変更を行う工程を順に行うものであり、稼働優先順位を変更するボイラ全てで順位の変更を終了するまで前記の工程を繰り返すことを特徴とする多缶設置ボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の多缶設置ボイラにおいて、稼働優先順位変更の前記各工程を実施する場合、少なくとも燃焼を停止したボイラが燃焼を再開することのできる時間を開けて工程を進めていくようにしていることを特徴とする多缶設置ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優先して使用すべきである第1の燃料と、前記第1の燃料で不足する分を補うための第2の燃料を切り替えて燃焼することができるようにしているボイラを複数台設置している多缶設置ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2011−274538号公報に記載があるように、バイオガス製造設備で製造したバイオガスをボイラで燃焼させることが行われている。生物由来の廃棄物から製造することのできるバイオガスを使用することで、化石燃料の消費を抑えることができ、地球温暖化を防止する効果が得られるため、近年はバイオガスの使用が増加している。製造したバイオガスを他の場所へ運ぶのではコスト的に不利であるため、バイオガスは、製造と消費を同じ事業所内で行うことがよく行われている。その場合、バイオガスの製造量は廃棄物の量などによって左右されるために製造量が安定せず、日によって製造量が大きく異なるということがある。
【0003】
バイオガスをボイラの燃料として使用している場合において、ボイラでのバイオガス使用量よりもバイオガス製造量の方が多くなってしまうと、ボイラで消費しきれなかったバイオガスが余ることになる。その場合、装置保護のためにバイオガスを外気に放散することになると、環境に影響を与えることになる。逆に、ボイラでのバイオガス使用量よりもバイオガス製造量の方が少ないことでボイラの運転が行えなくなってしまうと、蒸気の供給が不足することによって工場の操業などに影響を与えることになる。
【0004】
そのため、特開2011−274538号公報に記載があるように、バイオガスを使用して燃焼するボイラと、バイオガスでは不足する分を補うために化石燃料を使用して燃焼するボイラを設置するということを行っている。特開2011−274538号公報に記載の発明では、複数台のボイラを並列に設置しておき、ガス燃料の供給に制限がない第1ボイラ、つまり化石燃料を使用するボイラと、制限を受ける第2ボイラ、つまりバイオガスを使用するボイラを備えている。そして、第2ボイラでの不足分を第1ボイラで賄うことができるようにしておき、第2ボイラでの運転量は第2ボイラに供給される燃料の量又は圧力に対応した量とするようにしている。この場合、第2ボイラは供給されるバイオガスの量が極度に低下しない限り、その運転を継続するので、バイオガスを優先的に使用することになる。一方、第1ボイラは媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて運転制御を行う。このようにすると、第2ボイラでは不足する分を第1ボイラが補うものであるため、必要量の蒸気を供給することができる。
【0005】
しかしこの場合、バイオガスを供給できるのは第2ボイラだけであり、バイオガスの供給量が第2ボイラでの燃料消費量を上回ると、バイオガスを外気へ放出しなければならないという問題は解決されていない。
【0006】
また、各ボイラに稼働優先順位を設定しておき、稼働優先順位の高いボイラから順に必要台数分だけ運転させるようにしている多缶設置ボイラでは、稼働優先順位をローテーションさせることが行われている。これは、稼働優先順位を固定していると、稼働優先順位が上位のボイラは燃焼を行う機会が多くなり、稼働優先順位が下位のボイラでは燃焼を行う機会が少なくなることで、個々のボイラでは運転状態に偏りが発生するためである。あるボイラは常に全力での燃焼を行い、別のあるボイラでは燃焼の発停を頻繁に繰り返し、さらに別のボイラではまれにしか燃焼を行わないという状態が長期間固定されると、それぞれのボイラで劣化が早まるという問題が発生する。
【0007】
この問題に対しては、稼働優先順位をローテーションによって変更し、運転状態が固定されないようにすることで防止できる。稼働優先順位を1日ごとなどでローテーションさせると、ある日にはほぼ1日中燃焼し続けたボイラが、別の日には1日の半分ほど燃焼することになり、さらに別の日は蒸気使用量が多い時間帯にのみ燃焼するというようになる。このようにすることで、各ボイラでの運転状態が長期的には均一化されることになり、ボイラの寿命を長くすることができる。しかし特開2011−274538号公報に記載のように第1ボイラと第2ボイラで固定化した場合、各ボイラでは運転状態の偏りが発生するためにボイラの寿命に影響を与えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−247538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、優先して燃焼すべきである第1の燃料による燃焼と、第1の燃料を補うための第2の燃料による燃焼を併用している多缶設置ボイラにおいて、第1の燃料を優先的に使用するものであり、かつ各ボイラでの運転状態が均一化されるようにすることのできるものであって、稼働順位の変更時に蒸気供給が不足することも防止できる多設置ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、優先して燃焼する第1の燃料と、第1の燃料では不足する分を補う第2の燃料を切り替えて供給することができるようにしているボイラを複数台設置しておき、ボイラの運転を集中管理する台数制御装置によって前記各ボイラの運転を制御するようにしている多缶設置ボイラであって、各ボイラには稼働優先順位を設定し、稼働優先順位の高いものから必要台数分のボイラを燃焼させるようにすることでボイラ全体での燃焼量を制御するようにしており、稼働優先順位は定期的に変更をすることで各ボイラでの稼働状態に偏りが生じることを防ぐようにしている多缶設置ボイラにおいて、
前記第1の燃料は稼働優先順位の高いボイラに供給するようにしておき、稼働優先順位の変更を行う場合は、まず稼働優先順位未変更ボイラの中で最上位に繰り上げるボイラの順位を繰り上げる工程、次に稼働優先順位変更に伴って供給する燃料を第1の燃料から第2の燃料に切り替えるボイラがある場合には、そのボイラに対する供給燃料の切り替えを行う工程、その次に稼働優先順位変更に伴って供給する燃料を第2の燃料から第1の燃料に切り替えるボイラがある場合には、そのボイラに対する供給燃料の切り替えを行う工程、最後に先の稼働優先順位変更により順位が重複しているボイラで、まだ順位の変更を行っていないボイラでの順位変更を行う工程を順に行うものであり、稼働優先順位を変更するボイラ全てで順位の変更を終了するまで前記の工程を繰り返すことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記の多缶設置ボイラにおいて、稼働優先順位変更の前記各工程を実施する場合、少なくとも燃焼を停止したボイラが燃焼を再開することのできる時間を開けて工程を進めていくようにしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
バイオガスを優先的に使用するようにしながら、稼働優先順位のローテーションを行うものであるために各ボイラでの寿命を長く保つことができる。また、ボイラの運転途中で稼働優先順位の変更を行う際に、ボイラの燃焼量が減少することがないようにしているため、稼働優先順位の変更時に蒸気供給量が不足するということも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を実施するボイラの設置状況を示したフローシート
図2】一実施例における各ボイラの運転状態等を示した状態説明図
図3】一実施例における稼働優先順位変更時のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施するボイラの設置状況を示したフローシート、図2は一実施例における各ボイラの運転状態等を示した状態説明図、図3は一実施例における稼働優先順位変更時のフローチャートである。本実施例では、4台のボイラ1を並列に設置しており、各ボイラは順に1号缶・2号缶・3号缶・4号缶と名付けておく。各ボイラからの蒸気配管を蒸気ヘッダ4に接続しておき、各ボイラ1で発生した蒸気は蒸気ヘッダ4に集合させる。蒸気ヘッダ4には蒸気圧力検出装置3を設けている。各ボイラ1に対する運転指令は、各ボイラと接続している台数制御装置2から出力するようにしており、台数制御装置2は蒸気圧力検出装置3とも接続しておく。
【0015】
各ボイラは、バイオガスを供給するバイオガス供給配管6と、LPGを供給するLPG供給配管7を接続している。各ボイラには、バイオガスとLPGのそれぞれを切り替えて供給することができるようにしており、どちらの燃料でも燃焼を行うことができるようにしている。バイオガスは優先的に使用することにしたい燃料であり、本発明でいうところの第1の燃料にあたる。そしてLPGはバイオガスの不足を補うものであって、本発明でいうところの第2の燃料にあたる。
【0016】
各ボイラ1には、それぞれボイラ運転制御装置5を設け、ボイラ運転制御装置5は台数制御装置2と信号線で接続している。ボイラの運転は台数制御装置2がボイラ運転制御装置5へ出力する指令に基づいて行っており、各ボイラではボイラ運転制御装置5がボイラ1の各機器の作動を制御してボイラの運転を行う。各ボイラでは、定格の燃焼量である高燃焼、高燃焼の約半分の燃焼量である低燃焼、さらに燃焼停止の3位置で燃焼量を制御するようにしている。台数制御装置2は、蒸気圧力検出装置3で検出した蒸気圧力値に基づいて必要蒸気量を求め、必要台数分のボイラに対して燃焼指令を出力する。各ボイラには稼働優先順位を定めておき、蒸気圧力値が低下して必要蒸気量が増加すると、稼働優先順位の高いボイラから順に燃焼指令の出力を行うことで燃焼台数を増加し、また燃焼量を低燃焼から高燃焼に変更することで蒸気供給量を増加する。逆に蒸気圧力値が上昇して必要蒸気量が減少すると、稼働優先順位の低いボイラから順に燃焼量を高燃焼から低燃焼に変更し、さらに燃焼停止指令を出力して燃焼台数を減少することで、蒸気の供給量を減少する。蒸気ヘッダ4における蒸気圧力値に応じて各ボイラでの燃焼量を調節することで、蒸気ヘッダ4での蒸気圧力値を所定の範囲内に維持する台数制御を行う。
【0017】
例えば、蒸気圧力値から定まるボイラの燃焼量が、高燃焼2台、低燃焼1台、燃焼停止1台であれば、稼働優先順位が第1位と第2位のボイラには高燃焼の燃焼指令、第3位のボイラには低燃焼の燃焼指令を出力し、第4位のボイラは燃焼停止とする。この状態で蒸気圧力値が低下し、必要な燃焼量が高燃焼2台、低燃焼2台となれば、燃焼を停止してた第4位ボイラで燃焼を開始し、第4位ボイラで低燃焼を行う。逆に先の状態から蒸気圧力値が上昇し、必要な燃焼量が高燃焼1台、低燃焼2台、燃焼停止1台となれば、高燃焼を行っていた第2位ボイラの燃焼量を低燃焼とし、燃焼量を減少することで蒸気供給量を減少する。
【0018】
ボイラ運転制御装置5では、台数制御装置2から燃焼指令を受けると、その燃焼状態になるようにボイラの運転を行う。燃焼を停止していた状態から燃焼を開始する場合は、まず燃焼室内へ空気のみを送り込んで燃焼室内を換気するプレパージを行い、続いて着火の工程を行って燃焼を開始し、ボイラ内の缶水を加熱して蒸気の発生を行う。同様に、高燃焼から低燃焼への変更、低燃焼から高燃焼への変更、燃焼から燃焼停止への変更も、ボイラ運転制御装置5からの指令に基づき行う。燃焼を停止していた状態から燃焼を開始する場合は、燃焼準備の工程が必要であって時間がかかるが、既に燃焼を行っている状態から燃焼量を変更する場合は、燃焼準備の工程がないために短時間で行うことができる。
【0019】
稼働優先順位は24時間を経過するごとに変更するとしておく。台数制御装置2では、ボイラごとに燃焼時間の積算値を算出しておき、燃焼時間が少ないものほど次回の稼働優先順位を高くするように稼働優先順位の変更を行う。
【0020】
台数制御装置2は、稼働優先順位が上位のボイラにはバイオガスを供給し、下位のボイラにはLPGを供給することにしておく。どの順位までバイオガスを供給するかは、バイオガスの供給状況に基づいて定める。バイオガス供給量がボイラ1台分であれば、第1位のボイラにのみバイオガスを供給して第2位以下のボイラにはLPGを供給する。バイオガス供給量がボイラ2台分であれば、第1位と第2位のボイラにはバイオガスを供給して第3位以下のボイラにはLPGを供給する。このように台数制御装置2では、稼働優先順位の高いものに対してバイオガスを供給するように設定する。
【0021】
稼働優先順位変更時の制御を図3に基づいて説明する。稼働優先順位の変更時、最初のステップであるステップST1にて、稼働優先順位を変更していないボイラの中で変更後の順位が最も高くなるボイラで順位を繰り上げる変更を行う。最初は次の稼働優先順位が第1位となるボイラで順位の繰り上げを行う。この時、稼働優先順位の繰り上げのみを行っており、繰り上げた先の順位であったボイラでは順位の変更を行っていない。そのため、繰り上げた先の順位には複数のボイラを設定していることになる。
【0022】
ステップST1で順位の繰り上げを行うことで、燃焼量が変わる場合は、燃焼量の変更を行う。燃焼を停止していたボイラが燃焼を開始する場合は、燃焼開始前の準備工程が必要であり、さらに燃焼を開始してもすぐには蒸気を供給することができない。そのため、稼働優先順位を繰り上げたボイラで蒸気供給を行えるようになるまでは、次のステップに移らないよう、ステップST2にて時間の調節を行う。
【0023】
順位の繰り上げを行ったボイラで蒸気供給が行えるようになる時間を経過すると、次のステップであるST3にて、供給燃料種の変更がある場合とない場合で分岐する。ボイラへの燃料供給は稼働優先順位が上位のボイラにのみ行っているものであり、ステップST1にて稼働優先順位の繰り上げを行ったボイラは、順位変更前はLPGを供給する順位であって、順位変更後はバイオガスを供給する順位となるという場合は、変更がある場合のST4へ移る。また、ステップST1にて順位の繰り上げを行った先の順位であったボイラであって、この後で順位を変更するものであり、次の順位へ変更後は供給燃料種が現在のものとは変更になるという場合もステップST4に移る。供給燃料の変更がない場合は、燃料種変更の操作を飛ばしてステップST8に移る。
【0024】
燃料種の変更がある場合、ステップST4でバイオガスからLPGに変更するボイラに対し、供給燃料種の変更を行う。燃料種の変更は、バイオガスからLPGへの変更を先に行う。例えばバイオガスを供給することのできるボイラの台数が1台の場合に、LPGからバイオガスへの変更を先行して行うと、一時的にバイオガスを供給しなければならないボイラが2台となる。すると、燃料不足によって正常な燃焼を維持することができなくなることがある。LPGへの変更を先行した場合は、LPGはバイオガスのような供給制限はないために燃料不足になることはなく、正常な燃焼を行うことができる。
【0025】
燃料種を変更する場合、ボイラは一旦燃焼を停止する必要がある。そして、燃焼を再開する場合には燃焼準備の工程から行う必要があり、その間は蒸気を供給することができない。また、LPGからバイオガスへの変更と、バイオガスからLPGへの変更を同時に行うと、2台のボイラが同時に停止することになり、蒸気供給量の減少幅が大きくなる。
【0026】
供給燃料種を変更する際に蒸気供給が足りなくなることを防止するため、バイオガスからLPGへの変更とLPGからバイオガスへの変更は時間差を設けて行う。先にステップST4でバイオガスからLPGへの変更を行っておき、その後ステップST5にて、バイオガスからLPGへの変更を行ったボイラで蒸気供給ができるまでの時間が経過するのを待つ。燃料種を変更したボイラで蒸気供給が行えるようになるまでの時間が経過した後、次のステップST6でボイラへ供給する燃料種をLPGからバイオガスへ変更する。この場合も、ステップST7で燃料種を変更したボイラで蒸気供給ができる時間が経過するのを待って次のステップへ移る。
【0027】
次のステップであるST8では、ステップST1で順位の繰り上げを行った際に、それまでその繰り上げ先の順位であったボイラについて順位の変更を行う。ステップST1以来重複していた順位は、ステップST8で繰り下げ側での順位変更を行うことで解消される。ここまで行うことで、一組分の順位変更が行われたことになる。以上のプログラムは、稼働優先順位を変更しなければならないボイラがなくなるまで繰り替えすようにしており、ステップST9で順位変更を行うボイラが残っている場合にはステップST1に戻る。順位変更を行うボイラが残っていない場合には、稼働優先順位変更の工程を終了する。
【0028】
図2は、本発明の一実施例における稼働優先順位変更時期において、各ボイラでの稼働優先順位と燃焼状態の移り変わり状況、さらに燃料の供給状況を示したタイムチャートである。図2での稼働優先順位は、1号缶は第1位から第4位へ、2号缶は第2位から第3位へ、3号缶は第3位から第2位へ、4号缶は第4位から第1位へ変更することになっている。燃料の供給は、稼働優先順位が第1位であるボイラにはバイオガスを供給し、それ以外の稼働優先順位であるボイラに対してはLPGを供給するものとしている。
【0029】
稼働優先順位変更時の制御を、図2のタイムチャートに基づいて説明する。図2のタイムチャート開始時点では、稼働優先順位が第1位である1号缶と第2位である2号缶は高燃焼、第3位の3号缶は低燃焼、第4位の4号缶は燃焼停止となっている。そして、第1位である1号缶にはバイオガスを供給し、2号缶から4号缶はLPGを供給するようにしている。
【0030】
稼働優先順位の変更は、変更後の順位がより上位となるものから順に行う。時刻Aで台数制御装置2は、稼働優先順位をまだ変更していないボイラの中で最も上位に変更することになるボイラ、つまり最初は変更後の稼働優先順位が第1位となるボイラの稼働優先順位を変更する。ここでは4号缶が次期の第1位であるため、4号缶の稼働優先順位を第4位から第1位に変更している。するとこの時点では、第1位は1号缶と4号缶、第2位は2号缶、第3位は3号缶、第4位は該当なしとなる。台数制御装置2は、第1位ボイラに対してバイオガスを供給するとしており、この時点での第1位は1号缶と4号缶の2台になるが、2台のボイラに対してバイオガスを供給すると燃料の不足によって正常な燃焼を行うことができなくなるおそれがある。そのため、時刻Aの時点では4号缶へのバイオガス供給は行わず、4号缶はLPGの供給を継続している。そして稼働優先順位が第1位のボイラは、高燃焼を行うことになっているため、4号缶はLPGで燃焼を開始して高燃焼を行う。
【0031】
次に台数制御装置2は、1号缶へ供給している燃料をバイオガスからLPGへ変更する。次に稼働優先順位を変更するのは、順位の繰り上げを行うことで第1位となった4号缶と同じ順位であってもう一つの第1位である1号缶であり、1号缶は第1位から第4位に変更することになっている。第1位のボイラへはバイオガスを供給していたが、第4位のボイラへはLPGを供給するため、1号缶では供給燃料をバイオガスからLPGへ変更することになっている。そのため、1号間へ供給している燃料種の変更を行う。
【0032】
そして供給燃料を変更する場合、一時的に燃焼を停止する必要があり、この時に蒸気供給量が不足しないようにしておかなければならない。そのため、供給燃料の変更は、時刻Aで4号缶の燃焼開始の操作を行った後、4号缶でも蒸気供給ができるようになるまでの時間を待って行う。そうすることにより、1号缶の燃焼停止によって1号缶からの蒸気供給が途絶えても、その分は4号缶からの蒸気供給によって補うことで、蒸気供給量が不足することを防止できる。
【0033】
1号缶は供給燃料切り替えのために時刻Bで燃焼を一旦停止するが、1号缶の稼働優先順位は第1位であって高燃焼を行う順位であるため、燃料切り替え後すぐにLPGで燃焼を再開する。1号缶において、供給燃料をバイオガスからLPGへ変更したことで、バイオガスは他のボイラへ供給することができるようになる。
【0034】
次に時刻Cで4号缶の供給燃料を変更する。4号缶は稼働優先順位が第1位であるため、供給する燃料はバイオガスとなる。この場合も供給燃料を変更する際には燃焼を一旦停止する必要があるため、4号缶でも時刻Cで燃焼を停止している。そして、4号缶で燃焼を停止している間に蒸気の供給が不足することを防止するため、ここでも時刻Bで燃焼停止後に燃焼を再開した1号缶において蒸気供給が開始できるまでの時間を開けておく。1号缶での蒸気供給再開後である時刻Cで4号缶の燃焼を停止し、供給燃料をLPGからバイオガスに変更する。供給燃料変更後は、4号缶でもすぐに燃焼を再開し、バイオガスで高燃焼を行っている。
【0035】
4号缶の次に稼働優先順位を変更するのは、先の稼働優先順位変更によって順位が重複することになっているボイラである。現時点では稼働優先順位が第1位のボイラが2台となっているため、第1位であって稼働優先順位の変更を行っていない1号缶が対象となる。
【0036】
台数制御装置2では時刻Dで、1号缶の稼働優先順位を第4位に変更する。この場合も、時刻Cで4号缶による燃焼を停止した後、4号缶で燃焼を再開して蒸気の供給が行えるようになるまでの時間をあけた後としておく。このことにより、時刻Dで1号缶が燃焼を停止しても、4号缶による蒸気の供給を行っているために蒸気の供給が不足することにはならない。
【0037】
次に稼働優先順位を変更するのは、稼働優先順位をまだ変更していないボイラの中で最も上位に変更することになるボイラ、つまり変更後の稼働優先順位が次に第2位となるボイラの稼働優先順位を変更する。ここでは3号缶が次期の第2位であるため、3号缶の稼働優先順位を変更することになる。時刻Eで、3号缶の稼働優先順位を第3位から第2位に変更すると、この時点では、第1位は4号缶、第2位は2号缶と3号缶、第3位は該当なしであって、第4位は1号缶となる。そして第3位の燃焼量は低燃焼であったが、第2位の燃焼量は高燃焼であるため、3号缶では燃焼量を低燃焼から高燃焼に変更する。そのため、この時点では高燃焼3台と燃焼停止が1台になる。
【0038】
台数制御装置2は、第1位ボイラに対してのみバイオガスを供給するとしており、第2位以下の各ボイラは全てLPGを供給するようにしているため、第2位以下の範囲内で稼働優先順位を変更する場合には供給燃料の変更は行わない。そのため、ここでは供給燃料変更動作は行わなわず、すぐに次の稼働優先順位変更を行う。
【0039】
次に稼働優先順位を変更するのは、この時点で稼働優先順位が重複している第2位のボイラであって、まだ稼働優先順位を変更していない2号缶となり、2号缶の順位を変更する。ここでの順位変更も、時刻Eで順位の変更を行った3号缶で変更後の燃焼量で安定した燃焼が行えるのに十分な時間を開けた時刻Fで行う。時刻Fで2号缶の稼働優先順位を第3位に変更すると、第3位の燃焼量は低燃焼であるため、2号缶では燃焼量を低燃焼とする。
【0040】
2号缶の稼働優先順位を第3位にすると、稼働優先順位の第1位は4号缶、第2位は3号缶、第3位は2号缶、第4位は1号缶となり、全てのボイラで稼働優先順位の変更を終了したことになる。また、燃料の供給も第1位の4号缶にバイオガスを供給し、第2位から第4位の各ボイラにはLPGを供給していることになっているため、稼働優先順位変更の工程を終了する。
【0041】
上記のようにすることで、バイオガスは稼働優先順位の高いボイラに供給することになる。稼働優先順位の高いボイラは最も燃焼時間が長くなり、またより大きな燃焼量で燃焼を行うものであるため、燃料の使用量は大きくなる。そのボイラへバイオガスを供給することにより、バイオガスを優先的に使用することになり、バイオガスの使用量は多くなる。
【0042】
そして各ボイラは、バイオガスとLPGを切り替えて供給することができるようにしているため、バイオガスの発生量に合わせてバイオガスを供給するボイラの台数を変更することができ、バイオガスを過不足なく使用することができる。また、稼働優先順位を変更することで、各ボイラでの運転状態を均等化することができ、ボイラ全体での寿命を長くすることができる。
【0043】
なお、稼働優先順位を変更するようにした場合、稼働優先順位の変更によって運転中のボイラを停止しなければならなくなることがある。ボイラでは燃焼開始時には準備工程が必要であるため、一旦燃焼を停止するとすぐには燃焼を再開できず、その間は蒸気供給が止まるために蒸気供給量が不足するおそれがあるという問題があった。そのため、バイオガスを供給するボイラを変更する場合に必要となる燃焼停止時や、稼働優先順位の変更によって燃焼を行うボイラの入れ替えをする場合において、蒸気供給が足りなくなることを防止する必要がある。この問題に対しては、燃焼を停止する前に別ボイラでの稼働優先順位を高め、ボイラ全体での燃焼量を大きくしおき、その状態で燃焼を停止するようにしているため、ボイラの燃焼を停止しても蒸気供給量が不足することを防止できる。
【0044】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0045】
1 ボイラ
2 台数制御装置
3 蒸気圧力検出装置
4 蒸気ヘッダ
5 ボイラ運転制御装置
6 バイオガス供給配管
7 LPG供給配管
図1
図2
図3