(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
選択混合部に於いて、複数のスイッチの操作により複数の電磁弁に連なる複数バイアルの揮発性成分を同時に通過複合させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の揮発性成分の計測方法。
バイアルに連通する開閉弁の操作をトリガー信号として外部出力する際に、同時にデータ化した他計測信号を同期させ、出力することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の揮発性成分の計測方法。
試料から揮発性成分を発生させるバイアルと、排出管、選択混合部、配管、分岐管の所望部を加熱することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の揮発性成分の計測方法。
キャリアガス流路と選択混合部を連通しブランクガスを流す際に両者を直接連通し、キャリアガスを選択混合部に流すことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の揮発性成分の計測方法。
キャリアガス流路に開閉弁を介してバイアルを多数並列設置し、各バイアルに連通させた排出管を選択混合部の各対応ポートに連結させると共に、該ポートを排出ポートに連通させる一方、各ポートに連通した配管にメイクアップガスポートより分岐した分岐管を接続したことを特徴とする揮発性成分の計測装置。
選択混合部は一枚のプレート上にポート、排出ポート及びメイクアップガスポートを設置すると共に各ポート間の配管及び分岐管を形成させたことを特徴とする請求項8に記載の揮発性成分の計測装置。
選択混合部は二つのマニホールドを設置し、一方のマニホールドにはバイアルからの排出管を連結するポートより排出ポートに至る流路を、他方のマニホールドにはメイクアップガス流路の分岐管を夫々排出ポートに連結することを特徴とする請求項8又は9に記載の揮発性成分の計測装置。
バイアルに連通する開閉弁の操作をトリガー信号として外部出力する際に、同時にデータ化した他計測信号を同期させ、出力することを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の揮発性成分の計測装置。
並列設置したバイアル、排出管、選択混合部、配管、分岐管の所望部を、各部加熱する加熱部を設けたことを特徴とする請求項8乃至11の何れか1項に記載の揮発性成分の計測装置。
キャリアガス流路と選択混合部を連通する際に両者を直接連通し、キャリアガスを選択混合部に流す流路を設けることを特徴とする請求項8乃至12の何れか1項に記載の揮発性成分の計測装置。
【背景技術】
【0002】
食品、果実などに含まれる香気成分はGCMSや分析技術の進歩により、ほぼ解析されつくした感がある。“High impact Odourants”つまり、そのモノ中の最も効果的な臭気物質については、ワインの3メルカプトヘキサノールなどを代表として各種発見されてきているが、延々と新規成分の発見が続くわけもなく、研究開発のねらいは、複数の香気成分または臭気成分を組合わせた場合にどんな効果が発生するか、という点に移りつつある。
【0003】
もとの香気成分に別の香気成分を組み合わせ、単体ではその香りでなくても相互作用を有するものを添加することにより、食品の風味がアップしたりする効果、つまりエンハンス効果や、逆に悪臭を強い香りで抑制する、つまりマスキング効果が注目されてきている。
【0004】
エンハンス効果は、食品の世界ではパック麦茶に微量のインスタントコーヒーを入れ焙煎の香りを再現することなどが知られており、またフレーバーの世界では、たとえばある種のラクトン類である5−(3Z−ヘキセニル)−3−メチル4.5−ジヒドロ−2(3H)−フラノンのシス体をフルーティフローラル系調合香料に添加・使用することにより、強く拡散性のあるトップノートが賦与され、クリーンなフレッシュ感をエンハンスすることなどが知られている。一方、マスキング効果についてはスポーツ飲料の塩類、アミノ酸類の苦味についてパイナップルなどのエステル系香料の鋭い香りで、低級アルコールの刺激臭についてローズ、ジャスミン、ラベンダー等の花びらからの花精油を採取した残渣の水抽出物で、好ましくない臭気を感じなくすることが知られている。
【0005】
これらの香気成分は、本来は自然界にある、既存の動植物由来の物質であり動植物から抽出することにより得られていたが、近年ではコストの点からも化学合成で同じものを製造される。また非常に似た構造を持つ物質でより強い香気を発する成分も化学合成で得られている。(エチルバニリンなど)その場合、その物質自体の構造を決定、把握しなければならず、試料成分全体から分取し、単離し構造解析することが重要な技術となっている。
【0006】
本出願人は試料の構成成分の分取技術について一の提案を行なっている(特許文献1)。
この発明は、例えば食品や香料等の試料の分取に適し、クロマトグラフで分離された試料のコンタミネーションを防止し、目的の試料を確実に分取し、分取された試料の液化時期を目視で確認し、分取のタイミングを正確に確認できる方法装置である。
【0007】
該方法装置に於いては、分取装置3には高温オーブン12と中低温オーブン11が設置され、高温オーブン12には複数の流路を分岐可能にする二つのマニホールド22,23が設けられている。試料成分は分離カラムで成分毎に分離され、キャリアガスを解して検出器に導かれ、該検出器から検出信号によって記録計にクロマトグラムが表示される。
【0008】
試料成分はGCから成分毎に分離された状態でトランスファーライン2を移動し、分取装置のマニホールド22,23に導入される。ここで先づ分取目的成分の保持時間の短い成分が前記クロマトグラムで確認されると、低沸点成分の分取経路を経て、捕集管に導入される。以下順次分離成分毎に夫々の捕集管に導入される。
【0009】
該技術は極めて正確な成分分取を行なえる技術ではあるが、これらの各成分の複合については全く考えていない。
また香りを評価する方法としては、GC−Oを用いた手法として、AEDA法やCharm Analysis法などがある。そのような手法については、例として、GROSCH H Trends in food Sciences&Technology 1993,68−73に紹介されている。
【0010】
AEDA法はニオイのキー成分を特定するための手法である。対象物の香気成分を捕集し、有機溶媒で抽出して抽出液を順に薄めたものをそれぞれGC−Oで嗅いでいき、希釈度が増しても匂いを感知できた成分がその香気のキー成分として判断する手法である。
それらの手法は香気成分中の中でその成分が全体に最も寄与したかを測る手法であり、複合臭、エンハンス効果に対しては測ることができない。
【0011】
これらのエンハンス効果、マスキング効果を確認するためには、いかに効率良く確実に香りを複合するか、また、いかに効率良く複合された香りを別の香りの残りなく切り替えるかの手法が重要となる。
これら公知技術に於いて、上記の正確な効率の良い香りの複合、複合された香りと別の香りを残香なく切り替える手法は提示されていない。
【0012】
GC−Oの鼻を通じた匂い成分の特性の調べでは、各成分毎の特定には時間がかかり過ぎることから、その試料の連続的供給評価が提案されている。
しかしながら、その試料の成分の特性は極めて微妙であり、サンプルとサンプルが連続していてはその成分差のかぎ分けは極めて困難、ましてマスキングやエンハンスの如き特定成分同志が相互作用を行なう試料評価では変化の見分け様は至難の業である。
【0013】
マスキングやエンハンスの如き特定成分同志が相互作用を行う状態の特性の調べでは、サンプルとサンプルの間の隔絶状態が絶対的な必要条件である。
そのためには、サンプルとサンプルとの隔絶を行なう方法、装置が必要とされる故以である。
特に、試料成分の導入、選択、混合、送出、更にはその切換の際にはサンプル及びその匂い等の混合、残留は厳しく排除されることが肝要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明は、複数の香気又は臭気成分を組合わせることにより、如何なる香気、臭気が得られる或いはそれらを加減できるか、それによってどの様な効果が発生するかの見極めを極めて容易に且確実に実施するための方法及びそのための簡便な装置を如何に構成するかを解決せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上のような課題を解決するための本発明は、複数のバイアルにキャリアガスを供給する工程と、該バイアルに連通する開閉弁の操作により該バイアルを選択し、発生した揮発性成分を送り出す工程と、送り出された揮発性成分を選択混合部に受け渡す工程と、選択混合部に於いて流入部下流側に常時メイクアップガスを流す洗浄工程と、選択混合部に於いて単独または複数の受け渡された揮発性成分を選択又は混合する工程と、キャリアガスとメイクアップガスとにより、該揮発性成分を計測部に送り出す工程とより成ることを特徴とする揮発性成分の計測方法である。
【0017】
又、バイアルの開閉をスイッチと連繋した電磁弁にて行なうことを特徴とする揮発性成分の計測方法である。
【0018】
又、選択混合部に於いて、一スイッチに連繋した一電磁弁の操作により一バイアルの揮発性成分を選択することを特徴とする揮発性成分の計測方法である。
【0019】
又、選択混合部に於いて、複数のスイッチの操作により複数の電磁弁に連なる複数バイアルの揮発性成分を同時に通過複合させることを特徴とする揮発性成分の計測方法である。
【0020】
又、バイアルに連通する開閉弁の操作をトリガー信号として外部出力する際に、同時にデータ化した他計測信号を同期させ、出力することを特徴とする揮発性成分の計測方法である。
【0021】
又、試料から揮発性成分を発生させるバイアルと、排出管、選択混合部、配管、分岐管の所望部を加熱することを特徴とする揮発性成分の計測方法である。
【0022】
又、キャリアガス流路と選択混合部を連通しブランクガスを流す際に両者を直接連通し、キャリアガスを選択混合部に流すことを特徴とする揮発性成分の計測方法である。
【0023】
又、キャリアガス流路に開閉弁を介してバイアルを多数並列設置し、各バイアルに連通させた排出管を選択混合部の各対応ポートに連結させると共に、該ポートを排出ポートに連通させる一方、各ポートに連通した配管にメイクアップガスポートより分岐した分岐管を接続したことを特徴とする揮発性成分の計測装置である。
【0024】
又、選択混合部は一枚のプレート上にポート、排出ポート及びメイクアップガスポートを設置すると共に各ポート間の配管及び分岐管を形成させたことを特徴とする揮発性成分の計測装置である。
【0025】
又、選択混合部は二つのマニホールドを設置し、一方のマニホールドにはバイアルからの排出管を連結するポートより排出ポートに至る流路を、他方のマニホールドにはメイクアップガス流路の分岐管を夫々排出ポートに連結することを特徴とする揮発性成分の計測装置である。
【0026】
又、バイアルに連通する開閉弁の操作をトリガー信号として外部出力する際に、同時にデータ化した他計測信号を同期させ、出力することを特徴とする揮発性成分の計測装置である。
【0027】
又、並列設置したバイアル、排出管、選択混合部、配管、分岐管の所望部を、各部加熱する加熱部を設けたことを特徴とする揮発性成分の計測装置である。
【0028】
又、キャリアガス流路と選択混合部を連通する際に両者を直接連通し、キャリアガスを選択混合部に流す流路を設けることを特徴とする揮発性成分の計測装置である。
【発明の効果】
【0029】
請求項の発明によれば、呈示される複数の揮発性成分から所望の成分を選択し、或いはそれらの所望の複数を選択し、その組み合わせを試行することが極めて容易に行なうことが出来る。従って、複数の香気成分や臭気成分の組み合わせ複合が簡単且容易に実施でき、エンハンス効果やマスキング効果の達成のための成分組み合わせの試行が極めて容易に可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明はそれらを達成するための装置及び方法である。
図に於いて、1はキャリアガスのガスボンベ等のガス供給源2に連通させたガス供給路で、調圧器3、圧力計4を備えてある。5はバイアルで、ガス供給路1に連通し、開閉弁としての電磁弁6を介して流通路7に連結してある。該開閉弁としては比例制御バルブを用いることも出来る。該バイアル5は所望数、図に於いて5a〜5gの7個を並列してバイアルトレイ8に収納設置してある。当然、各バイアル5a〜5gに対応して電磁弁6a〜6g、流通路7a〜7gも対応している。尚、並列したバイアルトレイを必要により複数設けることもでき、その場合は電磁弁6、流通路7も対応させて設置する。
【0032】
各流通路7には、電磁弁6とバイアル5間に流量計9とスピードコントローラー10及び逆止弁付継手11を設けてある。
又、各バイアル5には、排出管12が設けられ、該排出管12には所望により継手13を設置しておく。
【0033】
該バイアルトレイ8は温度調節が可能なる如くカートリッジヒータなどの加熱機構が設置してある(図略)。この加熱機構によりバイアル5内のサンプルの発生、ガス化を促進するようにしてある。
前記各バイアル5からの各排出管12はオーブン14に収納させた選択混合部15の各ポート16に接続してある。
各ポート16a〜16gは夫々の配管17a〜17gを以って排出ポート18に連通させてある。該排出ポート18には、トランスファーライン19を設けてある。該トランスファーライン19の先には嗅覚試験部(においかぎ部)、検出器その他計測部25を設置しておく。また、18の出口を分岐し、トランスファーラインと、トランスファーラインと同じ抵抗をもつ配管を並列に配管し、その先端にその他の検出を接続することも可能である。
【0034】
20はメイクアップガス供給路で、一端はガス供給源2に連結し、他端は選択混合部15のメイクアップガスポート21に連結してある。該メイクアップガス供給路20には、調圧器22、圧力計23を備えてある。
該メイクアップガスポート21に連通した分岐管24a〜24gを各ポート16a〜16gから排出ポート18への配管17a〜17gに連結してある。この連結は
各ポート16に近い部分への連結が好ましい。
【0035】
バイアル5に取り付けられた排出管12には、不活性な材質のフィルターを取り付けることは推奨される。それにより、固形、粒子形状のサンプルが配管内に入り汚染することを防ぐことが可能となる。
【0036】
バイアル5の前後の配管、即ち流通路7と排出管12に継手11と13を設けることにより、サンプル交換及び配管のメンテナンスを容易にできる。
【0037】
設定部よりバイアルトレイ8の温度が設定されると、制御機構によりバイアルトレイ8は一定の温度に加熱される。この加熱機構により、サンプルからの揮発性成分発生の促進をしている。本実施例では100℃までの加熱を可能にしている。
【0038】
サンプルに接するバイアル5の排出管12、継手13などは不活性処理されたものを設置するのがよい。それにより金属錯体など活性のあるサンプルの対応が可能となる。
【0039】
バイアル5が、加熱部を有するバイアルトレイ8に収められ、バイアルの気相部に不活性ガス注入管が開口し、ガス供給路1には逆止弁付継手11が、また排出管12には不活性処理を施し、外部加熱部を備えることにより、成分の残留・成分ロスの防止とメンテナンス性の向上を図ることが出来る。
トランスファーライン19に不活性キャピラリー管を用い、オーブン14を含めて高温例えば280℃に加熱されることで、選択混合部15から計測部25まで、揮発性成分が短時間で成分ロス無く到達できこれにより、混合〜提示までの時間の短縮、及び成分の残留・成分ロスの防止が出来る。
【0040】
不活性化処理としては、ステンレス管に無機ポリシラザン、有機ポリシラザンを流し、試薬に適した温度300℃以上で5−15時間程度加熱し、ガラス化処理を行なうなどの既存の方法で対応が可能である。処理後、ガラス化したステンレス管を反応管に入れジシラザン、又はアルコキシランを加えて反応管を不活性化ガスで満たし、300℃以上で5−15時間程度加熱し、不活性化処理の仕上げを行なう。
【0041】
バイアル5から排出されたサンプルは、高温オーブン14内の選択混合部15に導かれる。サンプルが通過する排出管12を高温に保つことにより、コールドスポットができることによるサンプルの凝集を防ぐことが可能となる。
【0042】
この場合、バイアル5からオーブン14内の選択混合部15までの排出管12は、熱伝導のよいステンレス管などを使用する。排出管12は、アルミヒートブロックにカートリッジヒーターと温度センサーを取り付けた加熱機構26内を通過し、加熱される。さらに、カンタル線ヒーターを管に直接巻き付け、ヒーターの周りは断熱材で保温し加熱を確実なものとする。例えば高沸点成分のバニリン(沸点:285℃)には非常に効果が顕著で、従来計測されなかった応答が確認された。尚、加熱機構26は所望数のバイアル5だけを加熱する如く構成することができることは言うまでもない。
【0043】
流量計9とスピードコントローラー10を流量コントローラーに変更することで、流量を任意に設定することが可能となる。具体的にはセンサーの上流又は下流に比例制御バルブを配置し、センサーの値を制御回路で読み取り、センサーの値に応じて制御信号を該バルブに送り、センサーの値が設定値と一致するように制御を行なう電子流量調節システムを使用する。
【0044】
そのシステムを使用すると、たとえば時間により流量を変化させるプログラムを作成し、それに伴う成分量の変化が、嗅覚試験、その他の測定結果にどのように影響を与えるかを検証することが可能となる。また、流量コントローラーは圧力コントローラーに変更することも可能である。
なお、キャリアガス圧力、メイクアップガス圧力が一定の場合には流量設定値に制限が生じてしまう場合があり、調圧器3、22と圧力計4、23を圧力コントローラーに変更することにより、さらに任意の流量を設定することが可能となる。
【0045】
前記圧力コントローラー33、流量コントローラー36、電磁弁6及び各加熱部は、PC(パーソナルコンピューター)38から専用のインターフェースにより任意に流量、圧力のコントロールその他の設定が可能であり、その条件はPC上にファイルとして保存が可能である。一例としては、供給・計測開始時にはバイアルのヘッドスペース部に気化した成分がたまっていて成分濃度が高いため、バイアルへ供給するキャリアガス圧力、流量を低くおさえ、数秒後自動で高くするコントロールを行い、におい成分濃度を一定にすることが考えられる。
尚、ひとが実際に触って感覚と連動させることができるフィジカルコントローラなどの動作で流量をコントロールする事も出来る。
【0046】
選択混合部15の形成に於いて、プレート15A上にポート16、メイクアップガスポート21を設け、各配管17、各分岐管24を連結ユニット、継手等の連結部を以って連結構成する。
【0047】
選択混合部15は、実際には切換弁たる電磁弁6の選択によりバイアル5を選択し、そのサンプルが排出管12を通して流れ、ポート16の一に入り流れる。或いは幾つかのバイアル5の選択によりそれらを同時に流すことにより排出ポート18で混合し、トランスファーライン19を流される。選択は電磁弁6で行なうため、正確には混合作動部と云うのが良いが、実際にサンプルが流れ、選択され、混合されるので、選択混合部とした。
【0048】
29はスイッチで、オーブン14を収納した本体27にケーブル28で接続されている。前述の電磁弁6の切替操作を行うことでサンプル収納バイアル5の流路切替を行なう。該切替スイッチ29を押圧操作することにより、対応する電磁弁6を開弁し、該当する流通路7にキャリアガスを流すことを可能にしている。
電磁弁6のマニホールド61には、圧力排出用の電磁弁62が取りつけてある。電源を切った際に圧力排出用の電磁弁62が
図6に黒色で示すように開弁され、システム全体の圧力を大気圧まで下げることが可能である。尚、電源が入り、供給・計測を行なっている状態の電磁弁の開閉状態は
図7に示すようになっている。この図では5dのバイアルを選択している。
【0049】
前記スイッチ29の押圧時間(時期)は、スイッチごとの切換の時に外部にトリガー信号を出力し、他の装置との連動をしている。又、本願計測システムの計測結果とサンプルと発生ガスのスイッチ切替信号を対応させることにより、サンプルガスのにおいをかいだ状態の確認を容易に行なえるようにする。スイッチ29を試験者から見えないように設置することにより、先入観による嗅覚試験の誤差を排除することも出来る。
【0050】
本体27には、ケーブル28を介してスイッチ29を接続しているのと同様にコンピュータ(図示せず)を接続し、これらデータを収録記録させておくことは推奨される。
又、同時にヒトの生理信号、他の温度、湿度、ニオイセンサー値等の各種センサー値等の測定値をも収録記録させておく。このことにより、バイアル切換
操作等の操作全ての外部出力のトリガー信号もデータ化され、データロガーに送信・保存され全ての信号が同期できる。
従って、バイアル選択による香りの混合或いは除去とのタイミング関係も詳しくモニターでき、解析できる。
【0051】
次いで、その作動について説明する。
サンプルは、サンプルバイアルに収納可能であれば基本的にはどのような物質でも適用可能である。液体香料成分であれば、必要量をシリンジなどで測りバイアルに入れ、キャップをする。固体材料(たとえば香木、建材)の場合は重量などを計測し、バイアルに入れる。GCから分離・捕集された分取成分をバイアルに導入することも可能であり、定量性にすぐれたサンプル設置か可能となる。
【0052】
キャリアガスを圧力計4で圧力を確認しながら、調圧器3を回して所定の圧力に調圧する。調圧されたキャリアガスは電磁弁6のマニホールド61に送られる。電磁弁6のマニホールド61には、7個の電磁弁6a〜6gが取り付けられている。発生させたいサンプルの入ったバイアル5に対応した電磁弁6に所定の電圧が与えられると、電磁弁6が開きガスが流れる。
【0053】
流通路7ごとに、電磁弁6の下流側に流量計9と、スピードコントローラー10が取り付けられている。このため、電磁弁6から排出されたキャリアガスは、流量計9を確認しながらスピードコントローラー10で流量を調節する。調節されたキャリアガスがバイアル5に送られる。
電磁弁6をサンプルの上流に配置することにより、電磁弁6からの汚染、コンタミネーション、サンプルの吸着を防ぐことを可能にした。
バイアル5の内の1つは、サンプルの入っていないブランクガスとする。ブランクガスは嗅覚試験中のリセット機能となることが可能である。バイアル5からのサンプルガスを流していない場合に、ブランクガスを流すことによって排出管12内をクリーンに保つことが可能となる。尚、ブランクガスの場合にはバイアル5を設置せずに、キャリアガスが直接選択混合部15に連通する方式も可能である。
【0054】
サンプルガスを一種類選択する場合には、スイッチ29により一のボタンを押すことにより、所望の電磁弁6を介して所望のバイアル5にキャリアガスを送り、発生する或いは在中のサンプルガスを排出管12を介して選択混合部15に送る。
サンプルガスは一ポート16より配管17に入らんとする。この際、配管17は連結した分岐管24からのメイクアップガスが常時送られている。このサンプルガスとメイクアップガスの設定された圧力差にキャリアガスがメイクアップガスと共に配管17を経て、排出ポート18よりトランスファーライン19に送られる。
【0055】
サンプルガスを二種類以上選択して混合させる場合は、同時に所望数のスイッチ29を押すことにより、数種のサンプルガスが選択混合部15に送られ、同様に排出ポート18近辺にて混合され、トランスファーライン19に送られる。
【実施例1】
【0056】
選択混合部15の形成に於いて、下記の構成とする実施例を説明する。
図2乃至4に示す如く数枚のプレート、例えば5枚のプレート上に配管17、分岐管24に相当する溝を形成させ、これらプレート15Aを拡散接合により、一枚のプレートとして構成することが出来る。
これら選択混合部15をプレート15A上に構成することにより、選択混合部15をコンパクトに形成でき、ヒーター容量も少なくすることが出来る。
【実施例2】
【0057】
又、選択混合部15の形成に於いて、他の実施形について
図5により説明する。
バイアル5から送られたサンプルを加熱するオーブン14には、選択混合部15を構成する複数の流路を混合可能な二つのマニホールド30,31が設けられている。一つは15方マニホールド31に構成され、もう一つは7方マニホールド30に構成されている。
7方マニホールド30は、メイクアップガスポート21が一つと、メイクアップガスが6方に分岐する分岐管24を張出させる出口6個から構成されている。
【0058】
メイクアップガス供給路20には、調圧器22と圧力計23が設置されている。圧力計23で圧力を確認しながら、調圧器22で圧力を調整する。調整されたメイクアップガスは、3方ユニオン32に接続される。3方ユニオン32の一つは7方マニホールド30のメイクアップガスポート21に接続され、もう一方は15方マニホールド31のメイクアップガスポート21に接続される。
【0059】
排出管12を経て15方マニホールド31に導入されたサンプルガスは、1種類の場合には1種類のガスとしてマニホールド31の排出ポート18からトランスファーライン19に導入される。スイッチ29により電磁弁6,6を介し、数種のバイアル5から数種類のサンプルガスが導入された場合は、マニホールド31内で数種のサンプルガスが合流して混合される。混合された複合成分ガスが、マニホールド31の排出ポート18からトランスファーライン19に導入される。
【0060】
前記マニホールド31は、トランスファーライン19に連通する排出ポート18と、前記マニホールド30より張出した分岐管24を、排出管12にポート16を介して連通形成した配管17に連結させてある。
【0061】
メイクアップガス用圧力計23と調圧器22の設置により、圧力計23で確認しながら調圧器22で圧力を調整する。圧力を調整されたガスは、3方ユニオン32に接続される。
【0062】
15方マニホールド31には、バイアル5から接続された7本の排出管12が取り付けられている。サンプルガスが単一の場合は、1種類のサンプルガスのみがマニホールド31を通過する。複数のサンプルガスがマニホールド31に導入されると、マニホールド31内で導入されたサンプルガスが混合され、混合ガスがマニホールド31から排出される。
【0063】
メイクアップガス分岐管24は、15方マニホールド31のガスのポート16と排出ポート18間の配管17に配置される。このため、ポート16下流の配管17はメイクアップガスから常に加圧されていることにより、サンプルガスを流さない排出管12は、メイクアップガスでサンプルガスがふたをされた状態になる。そのとき、メイクアップガス合流より下流のサンプルガスは、メイクアップガスにより常に洗浄される。サンプルガスを流す場合、サンプルガスとメイクアップガスの合流点で合流し、排出ポート18地点に導かれる。
【0064】
メイクアップガスを常に設置することにより、サンプルガスの漏込、残留を防ぎ、キレの良いサンプルガス流路の切替を行なうことを可能とした。
【0065】
15方マニホールド31から排出されたガスは、トランスファーライン19に導入される。トランスファーライン19は加熱機構を備えており、サンプルを凝集させることなく嗅覚試験部等の計測部25に導くことを可能にした。
【実施例3】
【0066】
本発明に於ける計測部としての嗅覚試験部を用いた、サンプルに対する迅速正確応答性確認実験を下記に示す。
より詳細には流路における開閉弁のON/OFFと生理指標との同期の確認および温調効果の確認を行なう。
図10〜
図21の説明:矩形波形の実線が流路のON/OFFで、破線がニオイを感じた時に押した手元スイッチ(自作)のON/OFFである。開閉弁がONになり開くと、矩形波形の実線が立ち上がり、ONの間は立ち上がりを維持し、OFFされると元の0位置に戻る。手元スイッチも同様でニオイを感じた時に、ON状態で立ち上がり、感じなくなるとOFFするため元位置に戻る。すなわち、実線の立ち上がりと破線の立ち上がりが近いほど、流路が開いてすぐにニオイを感じたことがわかる。
図10、
図13、
図16、
図19:バイアル5・排出管12・オーブン14・トランスファーライン19の温調なし(室温)
図11、
図14、
図17、
図20:バイアル5のみ60℃に加熱、排出管12・オーブン14・トランスファーライン19の温調なし(室温)
図12、
図15、
図18、
図21:バイアル5・オーブン14・トランスファーライン19全て加熱それぞれ、60℃・280℃・280℃
試料 ダイダイ精油
キャリアガス 100ml/min N2
試料部の湿調 アルミブロック60℃ 加熱ライン180℃
オーブン・トランスファーライン 280℃
図中の波状実線は同時に指尖血流量をレーザー血流計ALF21Dを用いて記録した末梢血流図である。
図9乃至14にそのデータを図示する。
【0067】
ダイダイ供給に対し、手許スイッチの作動応答が早まり、温度制御により、嗅覚応答の終了が早まり、香りの切れが良くなっている状況が同期して、信号として取り出し確認できたことが示されている。
図10〜
図12が同一人による結果、
図13〜15が別の同一人による結果である。
ダイダイ精油は、低沸点から高沸点までの混合揮発成分ガスを発生する試料、一部に加熱や金属接触による損失が懸念される物質を含むことが想定される試料である。
・バイアルトレイ8+ライン(バイアル5より下流側のオーブン14・トランスファーライン19)ともに加熱しないと、切れが悪く、流路を閉じてもニオイをずっと感じる。これは、混合成分中で、沸点が高く・ニオイの閾値が低く(微量でも匂う)成分による。
・また各ラインの高温加熱時にも匂いの変質は認められなかった。不活性ガス・流路の不活性処理・キャピラリー流路の採用(高温下での滞留時間が極めて短いこと)の効果と考えられる。
ダイダイ精油:試料部OFF/その他ラインOFFに対し、試料部に温調を入れることで、嗅覚応答が約1秒早まった。さらにその他ラインを温調することで、試料部への通気遮断後のにおいの切れ(嗅覚応答の終了)が早まった。
【実施例4】
【0068】
実施例3と同様にバニリンの10%エタノール溶液についての実験を行なった。
結果
図16〜
図18が同一人による結果、
図19〜21が別の同一人による結果である。
バニリンは高沸点(285℃)成分であるため、コールドスポットによる流路内での吸着損失による影響が顕著な試料である。
・バイアルトレイ8+ライン(バイアル5より下流側の排出管12・オーブン14・トランスファーライン19)ともに加熱して、ようやくニオイを感じる。
バニリンの場合、バイアル5及びその後のラインともに加熱で指尖血流量が低下しているのは、少し匂ってきたので一生懸命嗅ごうとして交感神経優位になったためかもしれない。生理指標(指尖血流量)は、同期して測定ができることを実証した実施例として考えられる。
バニリン10%inEtOH:試料部及びその他のライン全てに温調を掛けることで、高沸点成分であるバニリンの嗅覚応答を得ることが出来、におい残りも無いことが分かった。