特許第6086716号(P6086716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086716
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】水晶デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20170220BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20170220BHJP
   H01L 41/18 20060101ALI20170220BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   H03H9/19 C
   H03H9/10
   H03H9/19 A
   H01L41/18 101A
   H01L41/08 C
   H01L41/08 L
   H01L41/08 K
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-278947(P2012-278947)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-123862(P2014-123862A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信孝
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−249099(JP,A)
【文献】 特開2011−061418(JP,A)
【文献】 特開2008−113420(JP,A)
【文献】 特開2002−111435(JP,A)
【文献】 特開平06−152311(JP,A)
【文献】 特開昭63−015509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/19
H01L 41/09
H01L 41/18
H03H 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた電極パッドと、
前記電極パッド上に電気的に接続された、矩形状の水晶素板と、前記水晶素板の中央矩形領域に設けられた励振用電極と、前記中央矩形領域の角に位置する前記励振用電極の一部から前記中央矩形領域を取り囲む周辺領域の一部にまで引き伸ばされた引き出し電極とを有する水晶素子と、を備え、
前記水晶素子は、前記電極パッドと前記引き出し電極とが導電性接着剤を介して接続されており、
前記励振用電極は、前記電極パッド側の前記角と隣接した角が、前記周辺領域の前記電極パッド側の一辺から前記一辺と隣接する一辺にかけて横断した直線状の面取りが形成され
前記水晶素板の上面に設けられた前記励振用電極に面取りされた箇所と、前記水晶素板の下面に設けられた前記励振用電極に面取りされた箇所とが平面視して重ならない位置に設けられていることを特徴とする水晶デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶デバイスであって、
前記面取りは、前記励振用電極の前記角と隣接した角にも形成されていることを特徴とする水晶デバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水晶デバイスであって、
前記面取りは、前記励振用電極の前記角と対角に位置する角にも形成されていることを特徴とする水晶デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器等に用いられる水晶デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶デバイスは、水晶素子の圧電効果を利用して、水晶素板の両面が互いにずれるように厚みすべり振動を起こし、特定の周波数を発生させるものである。基板上に設けられた電極パッドに導電性接着剤を介して実装された水晶素子を備えた水晶デバイスが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。水晶素子は、水晶素板の両主面に設けられた励振用電極と、励振用電極から水晶素板の一辺に向かって引き出された引き出し電極とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−111435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した水晶デバイスは、小型化が顕著であるが、基板に実装する水晶素子も小型化になっている。このように小型化になると、水晶素子の励振用電極と引き出し電極との間隔が狭くなり、水晶素子を基板に実装する際に、接続用電極に付着された導電性接着剤が濡れ拡がることで励振用電極に導電性接着剤が付着してしまう。よって、導電性接着剤が付着することで、水晶素子の励振用電極と引き出し電極とが短絡してしまう
虞があった。
【0005】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、水晶素子の励振用電極と引き出し電極との短絡を低減することができる水晶デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様による水晶デバイスは、基板と、基板上に設けられた電極パッドと、電極パッド上に電気的に接続された、矩形状の水晶素板と、水晶素板の中央矩形領域に設けられた励振用電極と、中央矩形領域の角に位置する励振用電極の一部から中央矩形領域を取り囲む周辺領域の一部にまで引き伸ばされた引き出し電極とを有する水晶素子と、を備え、水晶素子は、電極パッドと引き出し電極とが導電性接着剤を介して接続されており、励振用電極は、電極パッド側の前記角と隣接した角が、周辺領域の電極パッド側の一辺から一辺と隣接する一辺にかけて横断した直線状の面取りが形成され、水晶素板の上面に設けられた励振用電極に面取りされた箇所と、水晶素板の下面に設けられた励振用電極に面取りされた箇所とが平面視して重ならない位置に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様による水晶デバイスは、励振用電極の電極パッド側の角と隣接した角が、周辺領域の電極パッド側の一辺から一辺と隣接する一辺にかけて横断した直線状の面取りが形成され、水晶素板の上面に設けられた励振用電極に面取りされた箇所と、水晶素板の下面に設けられた励振用電極に面取りされた箇所とが平面視して重ならない位置に設けられている。このようにすることによって、水晶素子の引き出し電極に付着された導電性接着剤が濡れ拡がったとしても、励振用電極に導電性接着剤が付着することがない。よって、水晶デバイスは、励振用電極と引き出し電極が短絡することを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における水晶デバイスを示す分解斜視図である。
図2図1に示された水晶デバイスのA−Aにおける断面図である。
図3】本実施形態における水晶デバイスの蓋体を外した状態を示す平面図である。
図4】(a)本実施形態における水晶デバイスを構成する水晶素子の上面側を示す平面図であり、(b)本実施形態における水晶デバイスを構成する水晶素子の下面側を示す平面透視図である。
図5】本実施形態における水晶デバイスを構成する水晶素子の等価回路図である。
図6】本実施形態の第一変形例における水晶デバイスを示す分解斜視図である。
図7】(a)本実施形態の第一変形例における構成する水晶素子の上面側を示す平面図であり、(b)本実施形態の第一変形例における水晶デバイスを構成する水晶素子の下面側を示す平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態における水晶デバイスは、図1及び図2に示されているように、パッケージ110と、パッケージ110の基板110aに接合された水晶素子120とを含んでいる。パッケージ110は、基板110aの上面と枠体110bの内側面によって囲まれた収容空間Kが形成されている。
【0010】
基板110aは、矩形状であり、上面で実装された水晶素子120を支持するための支持部材として機能するものである。基板110aの上面には、水晶素子120を接合するための電極パッド111が設けられている。また、基板110aの下面の四隅には、外部接続用電極端子Gが設けられている。
【0011】
基板110aは、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなる。基板110aは、絶縁層を1層用いたものであっても、絶縁層を複数層積層したものであってもよい。基板110aの表面及び内部には、上面に設けられた電極パッド111と下面の外部接続用電極端子Gとを電気的に接続するための配線パターン及びビア導体が設けられている。
【0012】
枠体110bは、基板110a上に収容空間Kを形成するためのものである。枠体110bは、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料からなり、基板110aと一体的に形成されている。枠体110bの上面には、封止用導体パターン112が設けられている。
【0013】
封止用導体パターン112は、蓋体130と封止部材131を介して接合する際に、封止部材131の濡れ性をよくする役割を果たしている。また、封止用導体パターン112は、基板110aの内部に形成されたビア導体(図示せず)及び配線パターン(図示せず)により少なくとも1つの外部接続用電極端子Gに接続されている。少なくとも1つの外部接続用電極端子Gは、外部の実装基板上のグランドと接続されている実装パッドと接続されることにより、グランド端子の役割を果たす。そのため、封止用導体パターン112に接合される蓋体130がグランドに接続されることとなり、蓋体130による収容空間K内のシールド性が向上する。封止用導体パターン112は、例えばタングステン又はモリブデン等から成る導体パターンの表面にニッケルメッキ及び金メッキを順次、枠体110bの上面を環状に囲む形態で施すことによって、例えば10μm〜25μmの厚みに形成されている。
【0014】
電極パッド111は、一対で設けられており、基板110aの一辺に沿うように隣接して設けられている。電極パッド111は、基板110a内に設けられた配線パターン及びビア導体を介して、基板110aの下面に設けられた外部接続用電極端子Gと電気的に接続されている。
【0015】
ここで、パッケージ110の作製方法について説明する。基板110a及び枠体110bがアルミナセラミックスから成る場合、まず所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面或いはセラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿孔しておいた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷等によって所定の導体ペーストを塗布する。さらに、これらのグリーンシートを積層してプレス成形したものを、高温で焼成する。最後に、導体パターンの所定部位、具体的には、一対の電極パッド111又は外部接続用電極端子Gとなる部位にニッケルメッキ又は金メッキ等を施すことにより作製される。また、導体ペーストは、例えばタングステン、モリブデン、銅、銀又は銀パラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
【0016】
水晶素子120は、図2に示されているように、導電性接着剤140を介して電極パッド111上に接合されている。水晶素子120は、安定した機械振動と圧電効果により、電子装置等の基準信号を発振する役割を果たしている。水晶素子120は、水晶素板121の上面に励振用電極122a、引き出し電極123aを被着させ、水晶素板121の下面に励振用電極122b、引き出し電極123bを被着させた構造を有している。
【0017】
水晶素子120の等価回路は、図5に示されているように、励振用電極122のうち実際に振動している部分(一対の励振用電極122の対向している部分)で形成される等価直列容量C1と、等価インダクタンスL及び等価直列抵抗R1とが直列に接続されており、等価並列容量C0が等価直列抵抗R、等価直列容量C1及び等価インダクタンスLに並列に接続された構成となっている。また、その水晶素子120の等価回路に主に発振回路で構成される負荷容量CLが負荷された状態で水晶デバイスの等価回路が形成されることになる。
【0018】
水晶素板121は、図3及び図4に示されているように、中央矩形領域Xと、中央矩形領域Xの周囲に周辺領域Yを有している。水晶素板121は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
【0019】
励振用電極122は、水晶素板121の中央矩形領域Xの上面及び下面に第1の金属膜が形成され、第1の金属膜の上面に第2の金属膜が積層するように形成されている。第1の金属膜は、例えば、クロム又はチタンから構成され、第2の金属膜は、例えば、金により構成されている。また、第1の金属膜と第2の金属膜の接合力を上げるために例えばニッケルを第1の金属膜と第2の金属膜の間に形成してもよい。また、この励振用電極122をイオンガンから照射されたイオンビームにて削ることにより、励振用電極122の厚みを調整し、水晶素子120の発振周波数の調整を行っている。
【0020】
引き出し電極123は、中央矩形領域Xから周辺領域Yに延在されるようにして設けられている。引き出し電極123の一端は、励振用電極122と接続され、他端は、水晶素板121の長辺又は短辺の一つの辺に沿って、隣接するように一対で設けられている。引き出し電極123は、パッケージ110の電極パッド111と接続する役割を果たしている。
【0021】
面取り124は、水晶素板121の電極パッド111側の角と隣接した励振用電極122の角が、周辺領域Yの電極パッド111側の一辺から一辺と隣接する一辺にかけて横断するようにして直線状に設けられている。水晶素子120の下面に設けられた励振用電極122bに面取り124bが設けられていることによって、励振用電極122bと引き出し電極123bとの間で十分な距離が確保できているため、引き出し電極123bに付着された導電性接着剤140が濡れ拡がったとしても、励振用電極122bに導電性接着剤140が付着しにくい。励振用電極122bに導電性接着剤140が付着しにくくすることで、励振用電極122bと引き出し電極123bが短絡することを低減することができる。また、水晶素子120の上面に設けられた励振用電極122aに面取り124aが設けられていることによって、上面に設けられた励振用電極122aをイオンガンから照射されたイオンビームにて削ることで生じる電極屑が水晶素板121の励振用電極122aと引き出し電極123aとの間に再付着しても、十分な距離が確保できているため、励振用電極122aと引き出し電極123aが短絡することを低減することができる。
【0022】
また、仮に、従来の成膜マスクを用いてベベル加工された水晶素板に励振用電極を形成した場合には、水晶素板のベベル加工された箇所が急峻になっているため、ベベル加工された箇所に励振用電極の角部が均一な厚みで形成されない虞がある。その結果、励振用電極の角部がぼやけることになる。そこで、本実施形態では、励振用電極122に面取り124を設けることにより、励振用電極122の外周がぼやけることなく、励振用電極122が正常に作動し、さらに安定したクリスタルインピーダンス値を出力することができる。
【0023】
また、図4(a)及び図4(b)に示されているように、水晶素板121の上面に設けられた励振用電極122aに形成された面取り124aは、水晶素板121の下面に設けられた励振用電極122bに形成された面取り124bと平面視して重ならないようになっている。このようにすることで、水晶素子120の重ならない部分にある励振用電極122の面積を大きくすることができる。そして、仮に、面取り124aが重なる場合には、面取り124aが重ならない場合と比較して、励振用電極122の面積が小さくなるので、共振周波数が同じであれば、主面の面積が小さくなることにより発振周波数の変化量が大きくなる。水晶素子120の発振周波数の変化量が大きくなると、水晶素子120に流れる電流を変化させて、その際の周波数及び損失分を測定することにより行われるDLD(Drive Level Dependence)特性において、発振周波数の大幅な変化や損失分が急変することになる。そこで、本実施形態では、面取り124aが平面視して重さならないようにすることにより、DLD特性において、発振周波数の大幅な変化や損失分が急変することを低減することができる。また、水晶発振器を構成した際に、発振周波数が変動したりする可能性を低減することができる。
【0024】
また、水晶素子120の重ならない部分にある励振用電極122の面積を大きくすることで、等価直列容量C1を大きくすることができる。等価直列容量C1が大きければ、水晶素子110の周波数感度が大きく取れることになる。水晶素子110の周波数感度が大きい場合には、温度が変化しても発振周波数を調整することが可能な周波数範囲を広くとれることになる。つまり、周波数感度が大きい場合は、温度変化によって水晶デバイスの発振周波数の調整の余裕度が大きくとれることになる。
【0025】
面取り124は、図4(a)及び図4(b)に示されているように、水晶素子120の電極パッド側の励振用電極122の角と隣接したもう1つの角にも形成されている。このように励振用電極122の長辺を2等分する線に対して線対称とすることによって、面取り124が1つだけ設けられている場合と比べて、さらに振動バランスが取りやすくなる。よって、水晶素子120は、長期的に見て発振周波数をさらに安定して出力することができる。
【0026】
例えば38.4MHz用の水晶素板121を平面視したときの縦寸法が2.0〜2.2mmであり、平面視したときの横寸法が1.5〜1.7mmである場合を例にして説明すると、励振用電極122を平面視したときの縦寸法が1.45〜1.65mmであり、平面視したときの横寸法が1.35〜1.55mmである。面取り124の周辺領域Yの電極パッド111側の一辺からそれと隣接する一辺にかけて横断するようにして設けられた直線の寸法は、0.2〜0.4mmである。また、面取り124は、矩形状の励振用電極122の角を三角形状に除去したものであり、励振用電極122を平面視したときの縦寸法と平行となる寸法が0.1〜0.3mmであり、平面視したときの横寸法が0.1〜0.3mmである。また、面取り124が設けられた励振用電極122は矩形状の励振用電極に比べて、その面積が95〜99%となるように形成されている。
【0027】
例えば24.0MHz用の水晶素板121を平面視したときの縦寸法が2.1〜2.3mmであり、平面視したときの横寸法が1.57〜1.77mmである場合を例にして説明すると、励振用電極122を平面視したときの縦寸法が1.52〜1.73mmであり、平面視したときの横寸法が1.41〜1.61mmである。面取り124の周辺領域Yの電極パッド111側の一辺からそれと隣接する一辺にかけて横断するようにして設けられた直線の寸法は、0.2〜0.4mmである。また、面取り124は、矩形状の励振用電極122の角を三角形状に除去したものであり、励振用電極122を平面視したときの縦寸法と平行となる寸法が0.1〜0.3mmであり、平面視したときの横寸法が0.1〜0.3mmである。また、面取り124が設けられた励振用電極122は矩形状の励振用電極に比べて、その面積が95〜99%となるように形成されている。
【0028】
また、例えば19.2MHz用の水晶素板121を平面視したときの縦寸法が2.4〜2.6mmであり、平面視したときの横寸法が1.8〜2.0mmである場合を例にして説明すると、励振用電極122を平面視したときの縦寸法が1.74〜1.95mmであり、平面視したときの横寸法が1.62〜1.83mmである。面取り124の周辺領域Yの電極パッド111側の一辺からそれと隣接する一辺にかけて横断するようにして設けられた直線の寸法は、0.2〜0.3mmである。また、面取り124は、矩形状の励振用電極122の角を三角形状に除去したものであり、励振用電極122を平面視したときの縦寸法と平行となる寸法が0.1〜0.3mmであり、平面視したときの横寸法が0.1〜0.3mmである。また、面取り124が設けられた励振用電極122は矩形状の励振用電極に比べて、その面積が96〜99%となるように形成されている。
【0029】
本実施形態においては、電極パッド111と接続されている水晶素子120の一端を基板110aの上面と接続した固定端とし、他端を基板110aの上面と間を空けた自由端とした片保持構造にて水晶素子120が基板110a上に固定されている。
【0030】
ここで、水晶素子120の動作について説明する。水晶素子120は、外部からの交番電圧が引き出し電極123から励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、水晶素板121が所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
【0031】
ここで、水晶素子120の作製方法について説明する。まず、水晶素子120は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し、水晶素板121の外周の厚みを薄くし、水晶素板121の周辺領域Yと比べて水晶素板121の中央矩形領域Xが厚くなるように設けるベベル加工を行う。そして、水晶素子120は、水晶素板121の両主面にフォトリソグラフィー技術、蒸着技術又はスパッタリング技術によって、金属膜を被着させることにより、励振用電極122、引き出し電極123を形成することにより作製される。
【0032】
水晶素子120の基板110aへの接合方法について説明する。まず、導電性接着剤140は、例えばディスペンサによって、一対の電極パッド111の上面に塗布される。水晶素子120は、導電性接着剤140上に搬送され、導電性接着剤140上に載置される。そして水晶素子120は、導電性接着剤140を加熱硬化させることによって一対の電極パッド111に接合される。
【0033】
導電性接着剤140は、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又はニッケル鉄のうちのいずれか、或いはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。また、バインダーとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
【0034】
導電性接着剤140の粘度が、35〜45Pa・sのものを使用することによって、塗布した際に、導電性接着剤140は、電極パッド111から基板110a上面に流れ出にくくなることで、電極パッド111上に留まり、上下方向の厚みが維持される。導電性接着剤140の上下方向の厚みの長さは、10〜25μmである。このように導電性接着剤140の厚みを確保できることによって、落下等の試験により加わった衝撃が水晶素子120に対して導電性接着剤140を中心にして上下方向へ加わったとしても、その衝撃を導電性接着剤140で十分に吸収緩和することができる。
【0035】
蓋体130は、例えば、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなる。このような蓋体130は、真空状態にある収容空間K、あるいは窒素ガスなどが充填された収容空間Kを気密的に封止するためのものである。具体的には、蓋体130は、所定雰囲気で、パッケージ110の枠体110b上に載置される。そして、枠体110bの封止用導体パターン112と蓋体130の封止部材131とが溶接されるように、蓋体130に所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、蓋体130を枠体110bに接合する。
【0036】
封止部材131は、パッケージ110の枠体110b上面に設けられた封止用導体パターン112に相対する蓋体130の箇所に設けられている。封止部材131は、例えば、金錫又は銀ロウによって設けられている。金錫の場合は、その厚みは、10〜40μmである。例えば、成分比率が、金が78〜82%、錫が18〜22%のものが使用されている。銀ロウの場合は、その厚みは、10〜20μmである。例えば、成分比率は、銀が72〜85%、銅が15〜28%のものが使用されている。
【0037】
本実施形態における水晶デバイスは、水晶素子120の励振用電極122の電極パッド111側の角と隣接した角が、周辺領域Yの電極パッド111側の一辺からそれと隣接する一辺にかけて横断した直線状の面取り124が形成されている。このようにすることにより、水晶デバイスは、励振用電極122bと引き出し電極123bとの間で十分な距離が確保できているため、引き出し電極123bに付着された導電性接着剤140が濡れ拡がったとしても、励振用電極122bに導電性接着剤140が付着しにくくなる。よって、水晶デバイスは、励振用電極122bと引き出し電極123bが短絡することを低減することができる。
【0038】
(第一変形例)
以下、本実施形態の第一変形例における水晶デバイスについて説明する。なお、本実施形態の第一変形例における水晶デバイスのうち、上述した水晶デバイスと同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。本実施形態の第一変形例における水晶デバイスは、図5及び図6に示されているように、面取り224が励振用電極222の角と対角に位置する角にも形成されている点で本実施形態と異なる。
【0039】
面取り224は、水晶素板221の電極パッド111側の励振用電極222の角と隣接した角が、周辺領域Yの電極パッド111側の一辺からそれと隣接する一辺にかけて横断するようにして直線状に設けられている。面取り224は、励振用電極222の電極パッド111側の角と対角に位置する角にも形成されている。このように励振用電極222の長辺を二等分する線と短辺を二等分する線とが交わる中心点に対して点対称となるように励振用電極222に面取り224が設けられていることによって、励振用電極122の外周から中央に向かって徐々に変位が大きくなるようにして振動が発生する際に、面取り124が1つだけ設けられている場合と比べて、さらに振動バランスが取りやすくなる。よって、水晶素子120は、長期的に見て発振周波数をさらに安定して出力することができる。
【0040】
本実施形態の第一変形例における水晶デバイスは、面取り224が励振用電極222の電極パッド111側の角と対角に位置する角にも形成されていることによって、励振用電極222の外周から中央に向かって徐々に変位が大きくなるようにして振動が発生する際に、面取り224が1つだけ設けられている場合と比べて、さらに振動バランスが取りやすくなる。よって、水晶素子120は、長期的に見て発振周波数をさらに安定して出力することができる。
【0041】
尚、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。上記実施形態では、水晶素子は、水晶素板121の外周の厚みを薄くし、水晶素板121の周辺領域Yと比べて水晶素板121の中央矩形領域Xが厚くなるように設けるベベル加工を用いても構わない。また、水晶素子120のベベル加工方法について説明する。所定の粒度のメディアと砥粒とを備えた研磨材と、所定の大きさに形成された水晶素板121とを用意する。円筒体に用意した研磨材と水晶素板121とを入れ、円筒体の開口した端部をカバーで塞ぐ。研磨材と水晶素板121とを入れた円筒体を、円筒体の中心軸線を回転軸として回転させる水晶素板121が研磨材で研磨されてベベル加工が行われる。
【符号の説明】
【0042】
110・・・パッケージ
110a・・・基板
110b・・・枠体
111・・・電極パッド
112・・・封止用導体パターン
120、220・・・水晶素子
121、121・・・水晶素板
122、222・・・励振用電極
123、223・・・引き出し電極
124、224・・・面取り
130・・・蓋体
131・・・封止部材
140・・・導電性接着剤
K・・・収容空間
G・・・外部接続用端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7