【文献】
豆類協会,「豆料理選手権 2006年デザート部門準グランプリ作品 白インゲンと大納言のカネロニドルチェパッションフルーツの泡ソース」,[online],インターネット,2006年,[検索日:平成27年12月22日],URL,http://www.mame.or.jp/cooking/pro_20060202.html
【文献】
ステファン・ヴューシェフ SOSA SUMMER DEMONSTRATION 2010│洋菓子材料の通信販売サイト TFOODS.COM,「グローバルダイニング ステファン・ヴューシェフ」,[online],インターネット,2010年,検索日:平成27年12月28日,URL,http://www.tfoods.com/community/event-report/100421/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の気泡含有ソースの製造方法は、概略、水、ゼラチンおよび寒天を含む原料液をゲル化させてゲル状物を得、該ゲル状物を撹拌して気泡を含有させることによって気泡含有ソースを得る方法である。
気泡含有ソースは原料液と気泡の混合物であり、原料液の質量基準の組成(単位:質量%)と、気泡含有ソースの質量基準の組成(単位:質量%)とは同じである。
また原料液のpHと気泡含有ソースのpHとは、測定温度が同じであれば同じである。
【0013】
<気泡含有ソース>
本発明の気泡含有ソースは室温下で流動性を有し、30℃における粘度が150mPa・s以上である。該30℃における気泡含有ソースの粘度は、高温に曝されて気泡含有ソース中のゼラチンゲルが融解した状態での粘度を意味する。
気泡含有ソースの30℃における粘度が150mPa・s以上であると、室温下に放置されるなどして気泡含有ソース中のゼラチンゲルが融解しても気泡含有ソースの流動性が大きくなりすぎず、ソースとしての良好な性状が保たれる。該粘度は300mPa・s以上が好ましく、500mPa・s以上がより好ましい。該粘度の上限は特に限定されないが食感の点からは5000mPa・s以下が好ましく、2500mPa・s以下がより好ましい。
本発明における気泡含有ソースの粘度の値は、B型粘度計にて、粘度100〜500mPa・sではNo.12ローター、500〜2000mPa・sではNo.13ローター、2000mPa・sを超えるとNo.14ローターを使用し、回転数60rpmで測定した値である。
【0014】
本発明において、「気泡含有」ソースとは、オーバーラン値が5%以上となるように気泡を含有させたソースであることを意味する。すなわち気泡含有ソースのオーバーラン値が5%以上であることを意味する。
本明細書におけるオーバーランの値は、撹拌前の体積に対する、撹拌前後における体積増加分の割合を意味し、下記式(I)より求められる値である。
オーバーラン(%)=(撹拌後の体積−撹拌前の体積)/撹拌前の体積×100 ・・・(I)
【0015】
<ゼラチン>
ゼラチンは、動物の皮や骨に多く含まれる不溶性タンパク質を、酸処理またはアルカリ処理して可溶化したものである。本発明におけるゼラチンは特に限定されず、市販品から適宜選択して用いることができる。ゼラチンは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
ゼラチンのゲル化温度およびゼラチンゲルの融点は特に限定されない。通常、ゼラチンのゲル化温度は15〜20℃程度、融点は25〜30℃程度である。
ゼラチンのゼリー強度は特に限定されず、得ようとするゲル状物の硬さに応じて適宜選択することができる。
本明細書におけるゼラチンのゼリー強度は、JIS K6503「にかわおよび工業用ゼラチン」に規定されている測定方法で測定されるゼリー強度である。すなわち、濃度6.67質量%のゼラチン水溶液を調製し、規定の容器に入れ10℃の恒温槽で16〜18時間冷却して試料を得る。得られた試料の表面を、直径1/2インチ(12.7mm)のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重のグラム数をゼリー強度(単位:ブルーム)とする。
ゼラチンのゼリー強度は、100〜300ブルーム程度が好ましい。
ゼラチンを2種以上を用いる場合は、各ゼラチンのゼリー強度がそれぞれ上記の好ましい範囲内となるように選択して用いることが好ましい。
【0016】
原料液におけるゼラチンの含有量は、気泡含有ソースを口に入れたときにすばやく溶ける食感が感じられやすく、口溶けの良さが充分に得られやすい点では、原料液におけるゼラチンの含有量が0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましい。一方、原料液を1回目にゲル化させたときのゲル状物が硬くなりすぎず、該ゲル状物を撹拌したときに気泡が十分に含まれやすい点で3.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。
【0017】
<寒天>
本発明において、寒天のゼリー強度は日寒水式によるゼリー強度で表す。日寒水式によるゼリー強度とは、日本寒天製造水産組合が採用した日寒水式ゼリー強度測定器を用いて測定される値である。具体的には、濃度1.5質量%の寒天水溶液を調製し、20℃で15時間放置して凝固させたゲルについて、その表面1cm
2当たり20秒間耐えうる最大荷重(g)を測定してゼリー強度(単位:g/cm
2)とする。
本発明では、日寒式によるゼリー強度(以下、単にゼリー強度ということもある。)が300g/cm
2以下である寒天を用いる。市販品を用いることができる。
【0018】
寒天としては、日寒水式によるゼリー強度が10〜1,500g/cm
2程度のものが知られており、このうち500〜800g/cm
2のものが、通常のゲル化剤として用いられる。
本発明では、ゼリー強度が300g/cm
2以下である寒天を用いることにより、気泡含有ソースの口溶けの良さの低下を抑えつつ、気泡保持安定性を向上させることができる。したがって、気泡含有ソースが室温に曝された場合にも気泡の抜けを良好に防止することができる。また、ゼリー強度が300g/cm
2以下である寒天を用いると、室温で良好な流動性が得られるため、より目的にかなうソースを製造することができる。
本発明における寒天のゼリー強度は100g/cm
2以下がより好ましい。該ゼリー強度の下限値は特に限定されない。寒天の入手容易性の点からは10g/cm
2以上が好ましい。
寒天は1種でもよく2種以上を併用してもよい。2種以上を用いる場合は、各寒天のゼリー強度がそれぞれ上記の範囲内となるように選択して用いる。
本発明で用いる寒天の凝固点および寒天ゲルの融点は特に限定されない。通常、寒天の凝固点は40〜50℃程度、融点は80〜90℃程度である。
【0019】
原料液における寒天の含有量は0.5質量%以下である。寒天の含有量が0.5質量%以下であると、気泡含有ソースの口溶けの良さが良好に感じられ、気泡保持安定性を良好に向上させることができる。該寒天の含有量の下限値は特に限定されないが、寒天を添加することによる気泡保持安定性の向上効果が十分に得られやすい点で、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。
【0020】
<増粘剤類>
本明細書において、寒天およびゼラチン以外の、ゲル化剤、増粘剤、または安定剤を総称して増粘剤類という。
増粘剤類を添加することにより、気泡含有ソースが高温に曝されて、気泡含有ソース中のゼラチンゲルが融解した状態での粘度を増大させることができる。したがって、気泡含有ソースの30℃における粘度が上記の範囲を満たすように、必要に応じて原料液に増粘剤類を含有させることが好ましい。
原料液に含有させる増粘剤類の例としてはローカストビーンガム、グアーガム、カラギナン、キサンタンガム、タマリンド種子多糖類、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、未加工でんぷん、加工でんぷん、ペクチン、タラガム、大豆多糖類等が挙げられる。
【0021】
また得ようとする気泡含有ソースが酸性または弱酸性である場合には、ゼラチンと酸性多糖類とを共存させると、これらが結合して凝集が生じやすいため、酸性多糖類以外の増粘剤類を用いることが好ましい。かかる凝集の問題は、原料液のpHが6以下であるときに生じやすく、該pHが5以下であるとより生じやすく、該pHが4.5以下であるとさらに生じやすく、特にpHが4以下で生じやすい。
上記の例示の中で酸性多糖類に該当するのは、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、キサンタンガム、カラギナン、ペクチン、大豆多糖類である。
原料液のpHが6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、特に好ましくは4以下である場合には、増粘剤類として、ローカストビーンガム、未加工でんぷん、加工でんぷん、グアーガム、タマリンド種子多糖類、タラガムからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
原料液のpHの下限値は特に限定されないが、一般的には2以上であり、3以上が好ましい。
原料液に増粘剤類を含有させる場合の含有量は、気泡含有ソースの粘度(30℃)が上記範囲内の粘度となる量とすることが好ましい。原料液における増粘剤類の含有量の上限値は、気泡含有ソースの良好な口溶けが得られる範囲であることが好ましい。
【0022】
<起泡剤>
本発明において原料液に起泡剤を含有させてもよい。起泡剤を含有させることにより、原料液をゲル化させたゲル状物を撹拌して気泡を含有させる際に、気泡が発生しやすくなり、また発生した気泡の安定性が向上する。
起泡剤の例としては、例えばサポニン、シュガーエステル等の乳化剤や卵白等が挙げられる。
原料液に起泡剤を含有させる場合の含有量は特に限定されないが、多すぎると風味に悪影響が出るため、かかる不都合が生じない範囲内であることが好ましい。
【0023】
<その他の成分>
本発明の気泡含有ソースに、上記の成分(ゼラチン、寒天、増粘剤類、起泡剤)以外のその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
その他の成分の例としては、例えば乳成分、卵成分、果実由来成分、糖類、植物油脂、チョコパウダー、ココアパウダー、抹茶等の呈味成分が挙げられる。
また必要に応じて、酸味料、pH調整剤、香料、色素、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜含有させることができる。
【0024】
乳成分としては、例えば生乳、牛乳、脱脂乳、部分脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清(ホエー)、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、乳清蛋白質分離物(WPI)、全乳蛋白質濃縮物(TMP)、クリーム、生クリーム、バター、クリームパウダー、バターミルクパウダー等が挙げられる。
果実由来成分としては、例えばフルーツピューレ、果汁、果実が挙げられる。
糖類としては、例えばショ糖、果糖、ブドウ糖、マルトオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、パノース、トレハロース、スクラロース、デキストリン、水あめ等が挙げられる。
酸味料としては、例えばクエン酸、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−リンゴ酸等が挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0025】
<気泡含有ソースの製造方法>
[原料液調製工程]
まず、水、ゼラチンおよび寒天を含有し、該ゼラチンおよび寒天が溶解している原料液を調製する。原料液には、気泡含有ソースの製造に用いる全原料(気泡以外の気泡含有ソースの構成成分の全部)を含有させる。
具体的には、まず水(溶解水)に全原料を投入して撹拌して混合する。撹拌混合しただけでは全成分を溶解できない場合は、加熱処理して全成分を溶解すればよい。水(溶解水)の温度は特に限定されない。例えば常温(20〜30℃、以下同様。)の溶解水に全原料を投入して混合液とした後、該混合液を、殺菌処理を兼ねて加熱処理して原料を溶解させ、原料液とすることが好ましい。
加熱処理温度は85℃以上が好ましい。該加熱処理温度の上限は原料液中の成分が熱変性を生じない範囲であればよい。例えば150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
加熱時間は、原料液中の原料を溶解させることができ、殺菌効果が得られ、かつ原料液中の成分が熱変性を生じない時間に設定することが好ましい。
例えば、90℃に3分間保持する条件、125℃に15秒間保持する条件、130℃に2秒間保持する条件、またはこれらと同等の殺菌効果が得られる加熱条件が好ましい。
【0026】
[ゲル化工程]
原料液調製工程で得られた原料液を、ゼラチンのゲル化温度以下に冷却してゲル状物を得る。本工程では原料液を流動させずに冷却して、充分にゲル化させることが好ましい。冷却温度は10℃以下が好ましい。冷却温度の下限値は凍結防止の点から1℃以上が好ましい。冷却時間は、充分にゲル化したゲル状物が得られればよく、例えば10時間以上、好ましくは20時間以上、さらに好ましくは24時間以上である。
【0027】
[気泡混合工程]
ゲル化工程で得られたゲル状物を撹拌して破砕するとともに気泡を含有させて気泡含有ソースを得る。
ゲル状物を撹拌する手段は、ゲルの破砕物中に気泡を含有させることができるものであればよく、特に限定されない。例えばホイップマシン、ミキサー等を適宜用いることができる。ゲル状物を撹拌する際のゲル状物の温度は、ゼラチンの融点よりも低い温度であればよく、特に限定されない。該ゲル状物の温度の下限値は凍結防止の点からは、1℃以上が好ましい。
【0028】
本工程で得られる気泡含有ソースのオーバーランの値は特に限定されず、所望の食感が得られるように適宜設定することができる。例えば、該オーバーランの値は、気泡を含有させたことによる、ふんわりした軽い食感が十分に得られやすい点で5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。また上限は食感の点で100%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。
【0029】
<気泡含有ソースを用いた食品の製造方法>
気泡混合工程を終えたら、得られた気泡含有ソースを速やかに容器に充填することが好ましい。
気泡混合工程で得られた気泡含有ソースを単独で容器に充填することにより、容器入り気泡含有ソース(食品)が得られる。容器に充填した後、ゼラチンのゲル化温度よりも低い温度に冷却して、気泡含有ソースの物性を安定化させることが好ましい。
または、予め容器内にゼリー、ヨーグルト、プリン、ババロア、アイスクリーム等の食品が収容された容器入り食品を用意し、気泡混合工程で得られた気泡含有ソースを該容器内に充填することにより、容器内の食品の上に気泡含有ソースが積層された積層食品が得られる。容器内の食品上に気泡含有ソースを充填した後、ゼラチンのゲル化温度よりも低い温度に冷却して、気泡含有ソースの物性を安定化させることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、含有量の単位としての「%」は特に断りのない限り「質量%」である。
下記の表に記載した原料は以下の通りである。
[ゼラチン]
・ゼラチン(a):ユニテックフーズ社製、製品名:ROUSSELOT GELATIN 250 LP、JIS K6503によるゼリー強度250ブルーム、ゲル化点20℃、ゲルの融点25℃。
[寒天]
・寒天(10):伊那食品工業社製、日寒式によるゼリー強度10g/cm
2、凝固点45℃、ゲルの融点85℃。
・寒天(100):伊那食品工業社製、日寒式によるゼリー強度100g/cm
2、凝固点45℃、ゲルの融点85℃。
・寒天(300):伊那食品工業社製、日寒式によるゼリー強度300g/cm
2、凝固点45℃、ゲルの融点85℃。
【0031】
[増粘剤類]
・ローカストビーンガム:三栄源FFI社製。
・ネイティブ型ジェランガム:三栄源FFI社製。
・脱アシル型ジェランガム:三栄源FFI社製。
[起泡剤]
・起泡剤(1):キラヤ抽出物、丸善製薬社製、製品名:キラヤニン。
[その他の成分]
・蔗糖:北海道糖業社製。
・クエン酸:扶桑化学工業社製。
・クエン酸三ナトリウム:扶桑化学工業社製。
【0032】
≪試験例1≫
本試験例(例A−1〜A−6および例B−1〜B−6)では、ゼラチンと組み合わせる成分(寒天および増粘剤)の含有量を変えて気泡含有ソースを製造した。例B−1〜B−6は寒天の含有量がゼロの比較例である。
<例A−1〜A−6>
寒天の含有量を変化させて気泡含有ソースを製造した。すなわち、表1に示す配合で気泡含有ソースを製造した。
まず、ミキサー(プライミクス社製、製品名T.K. HOMOMIXER MARK II)で全成分を撹拌混合した。得られた混合液を湯煎により、90℃、5分間の条件で加熱殺菌処理して原料液を得た。
次いで、得られた原料液を冷蔵庫内で10℃(中心温度)まで冷却し、さらに10℃の冷蔵庫内に20時間静置して充分にゲル化させ、ゲル状物を得た。
次いで、得られたゲル状物を卓上型ホイップマシン(デロンギ社製、製品名:キッチンマシン シェフクラッシック K4005)で気泡を含有させながら撹拌した。撹拌はオーバーランが20〜30%の範囲内となるまで行った。ゲル状物を撹拌する際のゲル状物の温度は、10℃であった。これによりゲル状物は細かく破砕され、流動性を有する気泡含有ソースが得られた。
得られた気泡含有ソースを、30gずつ試験管に入れたものを、気泡保持安定性評価用の試料とした。
また得られた気泡含有ソースを、90gずつカップに充填し、10℃の冷蔵庫内に20時間静置したものを官能評価用の試料とした。
表1に原料液の30℃におけるpHの値を配合の表に合わせて示す(以下、同様。)。
【0033】
<例B−1〜B−6(比較例)>
寒天を用いず、増粘剤(ローカストビーンガム)の含有量を変化させて気泡含有ソースを製造した。すなわち、表1に示す配合で気泡含有ソースを製造した。製造は例A−1と同じ手順で行い、気泡含有ソースを得た。
得られた気泡含有ソースを、30gずつ試験管に入れたものを、気泡保持安定性評価用の試料とした。
また得られた気泡含有ソースを、90gずつカップに充填し、10℃の冷蔵庫内に20時間静置したものを官能評価用の試料とした。
【0034】
<評価>
下記の方法で、気泡保持安定性の評価および口溶けの良さの官能評価を行った。結果を表2に示す。また各例で得られた気泡含有ソースの30℃における粘度の値を表2に示す。
[気泡保持安定性]
例A−1〜A−6および例B−1〜B−6の各例で得られた、気泡保持安定性評価用の試料を、30℃の恒温槽内に静置し、30分後、1時間後、2時間後および3時間後に、それぞれ目視で気泡の状態を観察し、気泡の分離の有無および気泡の浮上の程度を観察し、下記の基準で評価した。
図1は1時間後の各例の試料の写真である。
気泡の浮上の程度については、試料全体の高さ(液層と気泡層の合計)X(cm)と、液層の下層部分の気泡が存在しない部分の高さY(cm)を計測し、Y/X×100の計算式により気泡抜けが生じた割合Z(単位:%)を求めた。該気泡抜けが生じた割合Zの値を表2に併記する。この値が小さいほど気泡抜けが少なく、気泡保持安定性が良いことを表す。
◎:試料全体に気泡が均一に含まれており、気泡の浮上または分離が見られない。
○:気泡の浮上があるが、液層と気泡層とが完全に分離していない。気泡抜けが生じた割合の値Zが50%未満である。
△:気泡の浮上があるが、液層と気泡層とが完全に分離していない。気泡抜けが生じた割合の値Zが50%以上である。
×:気泡が完全に浮上し、液層と気泡層とが完全に分離している。
【0035】
[官能評価]
例A−1〜A−6および例B−1〜B−6の各例で得られた試料を、よく訓練されたパネラー9名が試食し、口溶けの良さを官能評価した。
官能評価において、試料を口に入れたときに素早く溶け、かつ溶けた試料の粘度が低くて、さらりとした食感が得られるときに、口溶けが良いと感じられる。試料を口に入れたときに素早く溶けない、または溶けた試料の粘度が高くて、さらりとした食感が得られないときに、口溶けが悪いと感じられる。
例B−1〜B−6は、原料液中のローカストビーンガム含有量が減少するにしたがって、漸次口溶けが良くなる。下記のように、例B−1〜B−5の各試料を喫食したときの口溶けの良さを基準とした。この基準に基づいて、例A−1〜A−6の試料の口溶けの良さを5段階で評価した。9名のパネラーの平均点を評価結果とした。この平均点が高いほど口溶けの良さに優れることを表す。該平均点に基づいて下記の基準で判定した。気泡含有ソースに期待される口溶けの良さという観点から2点を超えると合格とする。
5点:例B−1の試料と同程度の口溶け。
4点:例B−2の試料と同程度の口溶け。
3点:例B−3の試料と同程度の口溶け。
2点:例B−4の試料と同程度の口溶け。
1点:例B−5の試料と同程度の口溶け。
(判定)
◎口溶けが優れる。:平均点が3点を超える。
○口溶けが良い。:平均点が2点を超え3点以下。
△口溶けがあまり良くない。:平均点が1点を超え2点以下。
×口溶けが悪い。:平均点が1点以下。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表2の例B−1〜B−6の結果に示されるように、寒天を用いなくても、気泡含有ソース中の増粘剤(ローカストビーンガム)の含有量を多くすれば、30℃の環境下に静置されたときの気泡抜けを抑えることは可能であるが、ローカストビーンガムの含有量が多くなるにしたがって、口溶けが悪くなる。例えば例B−6は、ローカストビーンガムを0.8質量%含有させたことにより、30℃の環境下に3時間静置されても気泡の浮上が見られない程度に気泡抜けを防止することができるが、口溶けが悪い。
一方、ローカストビーンガムを0.2質量%含有させた例B−1は、口溶けは良好であるが、30℃の環境下に1時間静置されると気泡が完全に浮上してしまう。
【0039】
これに対して、ゼリー強度が低い寒天(10)を含有させた例A−1〜A−6では、口溶けの良さと良好な気泡保持安定性を両立できる。
すなわち、寒天(10)の含有量が多いほど気泡保持安定性が向上する。また寒天の含有量が増加することによる口溶けの良さの低下は、ローカストビーンガムに比べて格段に小さい。したがって寒天(10)を用いることにより、気泡を含有することによる良好な食感を損なわずに気泡保持安定性を向上させることができる。
【0040】
≪試験例2≫
本試験例(例C−1〜C−3、例D−1〜D−3)では、寒天のゼリー強度を変えて気泡含有ソースを製造した。
<例C−1〜C−3、例D−1〜D−3>
本例は、例A−1〜A−3において、寒天をゼリー強度が異なるものに変えた例である。すなわち、表3に示す配合で気泡含有ソースを製造した。本例では気泡含有ソースにクエン酸およびクエン酸三ナトリウムを添加せず、気泡含有ソースのpHを5.7とした。それ以外は例A−1と同様にして気泡含有ソースを製造した。
例A−1と同様にして気泡保持安定性を評価した。ただし、気泡の状態の観察は30℃の恒温槽内に静置して30分後と1時間後のみ行った。
図2は1時間後の各例の試料の写真である。評価結果を表4に示す。また各例で得られた気泡含有ソースの30℃における粘度の値を表4に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
表4の結果に示されるように、気泡含有ソースに、ゼリー強度が300g/cm
2以下の寒天を含有させることにより、口溶けの良さが低下するのを抑えつつ、気泡抜けを良好に抑制できる。
【0044】
≪試験例3≫
本試験例(例E−1、例E−2)では、酸性の気泡含有ソースを製造する際に、ゼラチンと組み合わせる増粘剤として、酸性多糖類(例E−2)または酸性多糖類以外の増粘剤(例E−1)を用いた。
<例E−1、例E−2>
本例では増粘剤類の種類を変えて酸性(pH3.6)の気泡含有ソースを製造した。例E−1は寒天を用いるとともに、増粘剤類としてローカストビーンガムを用いた例であり、例E−2は寒天を用いず、増粘剤類としてジェランガム(ネイティブ型ジェランガムおよび脱アシル型ジェランガム)を用いた例である。
すなわち、表5に示す配合で、例A−1と同様にして気泡含有ソースを製造し、例A−1と同様にして気泡保持安定性を評価した。ただし、気泡の状態の観察は30℃の恒温槽内に静置して30分後と1時間後のみ行った。
図3は30分間後の各例の試料の写真であり、
図4は1時間後の各例の試料の写真である。各例で得られた気泡含有ソースの30℃における粘度の値を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
例E−1の気泡保持安定性は30分間後(
図3)および1時間後(
図4)において、「試料全体に気泡が均一に含まれており、気泡の浮上または分離が見られない(◎)」であった。
例E−2は、得られた気泡含有ソース中に沈殿が生じているのが認められた。また例E−2の気泡保持安定性は、30分間後(
図3)では、「気泡の浮上があるが、液層と気泡層とが完全に分離しておらず、気泡抜けが生じた割合の値Zが50%未満(○)」であったが、1時間後(
図4)において気泡が完全に抜けてしまった(×)。
【0047】
<実施例1>
容器入りヨーグルトの上に気泡含有ソースが積層された積層食品を製造した。
[ヨーグルトの製造]
表6に示す配合で容器入りヨーグルトを製造した。まずミキサーを用いて脱脂濃縮乳(蛋白質含有量12.4質量%、無脂乳固形分34.6質量%)、生クリーム(乳脂肪含有量45質量%)、蔗糖、および溶解水(常温)を混合し、70℃に加温して溶解した。次いでホモジナイザーにより15MPaの圧力で均質化した後、90℃で10分間加熱殺菌し、40℃に冷却した。これに乳酸菌スターター(クリスチャン・ハンセン社製、ストレプトコッカス・サーモフィラス(S.thermophilus)とラクトバシラス・ブルガリクス(L.bulgaricus)の混合培養物)を接種し、38〜40℃でpH4.5になるまで発酵させてカードを形成した。この後、撹拌しながら10℃まで冷却した後、さらに撹拌してカードを破砕し、撹拌型ヨーグルト(ソフトヨーグルト)を得た。得られた撹拌型ヨーグルトを紙製容器に、10℃で70gずつ充填して容器入りヨーグルトを得た。得られた容器入りヨーグルトを10℃に冷蔵庫に保管した。
【0048】
[気泡含有ソースの製造]
表7に示す配合で気泡含有マンゴーソースを製造した。まずミキサーを用いて、マンゴーピューレ、蔗糖、ゼラチン(a)、寒天(10)、ローカストビーンガム、クエン酸、起泡剤(a)および溶解水(常温)を混合した。得られた混合液を90℃、3分間の条件で加熱殺菌処理して原料液を得た。原料液の30℃におけるpHは3.7であった。
次いで、得られた原料液を冷蔵庫内で10℃(中心温度)まで冷却し、さらに10℃の冷蔵庫内に20時間静置して充分にゲル化させ、ゲル状物を得た。
次いで、得られたゲル状物を、前記卓上型ホイップマシンで気泡を含有させながら撹拌した。撹拌はオーバーランが20〜30%の範囲内となるまで行った。ゲル状物を撹拌する際のゲル状物の温度は、10℃であった。これによりゲル状物は細かく破砕され、気泡を含有するマンゴーソースが得られた。
得られたマンゴーソースの30℃における粘度は814mPa・sであった。
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
[ソースの充填]
得られたマンゴーソースを、速やかに、冷蔵庫に保管していた容器入りヨーグルトの上に30g充填した後、蓋材で密封し、10℃の冷蔵庫内に20時間静置して性状を安定させ、目的の積層食品を得た。
【0052】
容器入りヨーグルトの上に充填する直前の気泡含有マンゴーソースを、10℃の冷蔵庫内に20時間静置して試食したところ、口溶けがよいものであった。また30℃の室温下に1時間放置した後、再び10℃の冷蔵庫内で20時間冷却した気泡含有マンゴーソースと、かかる30℃の熱履歴を経ていない気泡含有マンゴーソースとを比べると同等の食感が得られた。