(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086795
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】マイクロ波イオン源の監視装置、プラズマ室モニタ及び監視方法
(51)【国際特許分類】
H01J 27/16 20060101AFI20170220BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20170220BHJP
H01J 49/10 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
H01J27/16
H01J37/08
H01J49/10
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-88845(P2013-88845)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-212081(P2014-212081A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕彦
【審査官】
波多江 進
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−276538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/00 − 27/26
H01J 37/08
H01J 49/10
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン引出開口を有するプラズマ室を備えるマイクロ波イオン源と、
前記イオン引出開口を通じて前記プラズマ室の中の内壁部材を監視するよう前記プラズマ室の外に配設されるプラズマ室モニタと、を備えることを特徴とするマイクロ波イオン源の監視装置。
【請求項2】
前記プラズマ室は、マイクロ波導入窓を備え、前記内壁部材は、前記マイクロ波導入窓を保護するために設けられており、
前記プラズマ室モニタは、前記内壁部材の表面の変位量を非接触に測定する非接触変位センサを備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波イオン源の監視装置。
【請求項3】
前記プラズマ室モニタは、前記プラズマ室にプラズマが生成されていないときに前記プラズマ室の中の内壁部材を監視するよう構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ波イオン源の監視装置。
【請求項4】
前記マイクロ波イオン源の下流に設置されている質量分析装置をさらに備え、前記質量分析装置は、前記質量分析装置の外から前記イオン引出開口を視認可能であるように設けられているビューポートを備え、
前記プラズマ室モニタは、前記ビューポート及び前記イオン引出開口を通じて前記プラズマ室の中の内壁部材を監視するよう前記質量分析装置の外に配設されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロ波イオン源の監視装置。
【請求項5】
マイクロ波イオン源のプラズマ室の中の内壁部材を前記プラズマ室のイオン引出開口を通じて監視するように、前記プラズマ室の外に配設されることを特徴とするプラズマ室モニタ。
【請求項6】
マイクロ波イオン源のプラズマ室の外にプラズマ室モニタを設けることと、
前記プラズマ室モニタを使用して、前記プラズマ室の中の内壁部材を前記プラズマ室のイオン引出開口を通じて監視することと、を備えるマイクロ波イオン源の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波イオン源の監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波をプラズマ生成に用いるイオン源が知られている。真空のプラズマ室にマイクロ波が導入される。プラズマ室に供給された原料ガスがマイクロ波によって励起され、プラズマが生成される。プラズマからイオンが引き出される。こうしてイオン源から引き出されたイオンは例えばイオン注入処理のために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−276538号公報
【特許文献2】特開平5−275047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロ波イオン源のプラズマ室の中にある部材は運転時間とともに損耗されうる。その原因の1つは、プラズマ室の外から逆流する高エネルギーの電子による衝撃である。損耗の進展により部材が劣化し、最終的にはその部材を新品に交換しなければならないかもしれない。一般に部材の損耗度合いの判断は目視検査による。しかし、そうした検査には、プラズマ室の真空を解除して対象の部材をプラズマ室の外に取り出すといった作業を要するので、手間がかかる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、マイクロ波イオン源のプラズマ室の中にある部材の損耗度合いを簡便に知るための監視装置及び監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、イオン引出開口を有するプラズマ室を備えるマイクロ波イオン源と、前記イオン引出開口を通じて前記プラズマ室の中を監視するよう前記プラズマ室の外に配設されるプラズマ室モニタと、を備えることを特徴とするマイクロ波イオン源の監視装置が提供される。
【0007】
このようにすれば、マイクロ波イオン源のプラズマ室の中をプラズマ室の外から監視することができる。したがって、プラズマ室の中にある部材をプラズマ室から取り出すことなく、その部材を検査することができる。
【0008】
前記プラズマ室は、マイクロ波導入窓と、前記マイクロ波導入窓を保護するための内壁部材と、を備えてもよい。前記プラズマ室モニタは、前記内壁部材における測定位置の変位量を非接触に測定する非接触変位センサを備えてもよい。
【0009】
このようにすれば、マイクロ波導入窓を保護するための内壁部材をプラズマ室の外から非接触に検査することができる。内壁部材における測定位置の変位量を測定することにより、その測定位置での内壁部材の損耗量を特定することができる。
【0010】
前記プラズマ室モニタは、前記プラズマ室にプラズマが生成されていないときに前記プラズマ室の中を監視するよう構成されていてもよい。
【0011】
このようにすれば、プラズマの発光の影響を受けずにプラズマ室を監視することができる。
【0012】
マイクロ波イオン源の監視装置は、前記マイクロ波イオン源の下流に設置されている質量分析装置をさらに備え、前記質量分析装置は、前記質量分析装置の外から前記イオン引出開口を視認可能であるように設けられているビューポートを備えてもよい。前記プラズマ室モニタは、前記ビューポート及び前記イオン引出開口を通じて前記プラズマ室の中を監視するよう前記質量分析装置の外に配設されてもよい。
【0013】
このようにすれば、既存の装置にプラズマ室モニタを実装することが容易である。
【0014】
本発明のある態様によると、マイクロ波イオン源のプラズマ室の中を前記プラズマ室のイオン引出開口を通じて監視するように、前記プラズマ室の外に配設されることを特徴とするプラズマ室モニタが提供される。
【0015】
本発明のある態様によると、マイクロ波イオン源のプラズマ室の外にプラズマ室モニタを設けることと、前記プラズマ室モニタを使用して、前記プラズマ室の中を前記プラズマ室のイオン引出開口を通じて監視することと、を備えるマイクロ波イオン源の監視方法が提供される。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マイクロ波イオン源のプラズマ室の中にある部材の損耗度合いを簡便に知るための監視装置及び監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のある実施形態に係るマイクロ波イオン源の監視装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明のある実施形態に係るマイクロ波イオン源10の監視装置を概略的に示す図である。マイクロ波イオン源10は、マイクロ波によって原料ガスのプラズマをプラズマ室11に生成し、そのプラズマからプラズマ室11の外部へイオンを引き出すように構成されている。マイクロ波イオン源10は、例えばイオン注入装置又は粒子線治療装置のためのイオン源に使用される。プラズマ室11は、プラズマが生成される空間であるプラズマ生成空間12を囲む容器である。
【0020】
プラズマ室11は、両端をもち直線的に延在する筒状の形状を有する。プラズマ室11の一端から他端に向かう方向を以下では便宜上、軸方向と呼ぶことがある。
図1においては中心線Aによりプラズマ室11の軸方向を示す。また、軸方向に直交する方向を径方向と呼ぶことがある。しかしこれらは、プラズマ室11が回転対称性を有する形状であることを必ずしも意味しない。図示の例ではプラズマ室11は円筒形状を有するが、プラズマ室11は、プラズマを適切に収容し得る限り、いかなる形状であってもよい。また、プラズマ室11の軸方向長さは、プラズマ室11の端部の径方向長さより長くてもよいし短くてもよい。
【0021】
プラズマ室11は、入口端13、出口端14、及び側壁15を備える。側壁15はプラズマ生成空間12を囲み、入口端13と出口端14とを接続する。入口端13にはマイクロ波導波管30が接続されている。入口端13とマイクロ波導波管30との間には、マイクロ波導波管30からプラズマ生成空間12を仕切るようにマイクロ波導入窓16が設けられている。一方、出口端14にはイオン引出開口17が形成されている。出口端14においてプラズマ室11は、イオン引出開口17を除き、塞がれている。入口端13、出口端14、及び側壁15は、例えばステンレス鋼またはアルミニウムのような非磁性金属材料で形成されている。
【0022】
マイクロ波導波管30は、マイクロ波源(図示せず)から発信されるマイクロ波をプラズマ生成空間12に伝達するようマイクロ波源をプラズマ室11につなぐ。マイクロ波の伝搬方向を
図1に矢印Pで示す。
【0023】
マイクロ波導入窓16は、マイクロ波導波管30からプラズマ生成空間12にマイクロ波を受け入れるための真空窓である。マイクロ波を透過させるために、マイクロ波導入窓16は誘電体で形成されている。図示されるように、マイクロ波の伝搬方向Pはプラズマ室11の軸方向に一致し、マイクロ波導入窓16に垂直である。マイクロ波導入窓16はその上流側の表面がマイクロ波導波管30に向けられ、下流側の表面がプラズマ生成空間12に露出されている。このように、プラズマ室11において軸方向に関してマイクロ波導波管30に近い側を上流側と呼び、イオン引出開口17に近い側を下流側と呼ぶことがある。
【0024】
マイクロ波導入窓16は、窓本体18と窓保護材19とを備える二層構造を有してもよい。窓保護材19はプラズマ生成空間12に面するマイクロ波導入窓16の内層であり、窓本体18は窓保護材19に導波管側で隣接するマイクロ波導入窓16の外層である。窓保護材19はプラズマ室11の外からイオン引出開口17を通じてプラズマ室11に逆流する電子から窓本体18を保護するために窓本体18を被覆する。窓本体18は例えばアルミナのプレートであり、窓保護材19は例えば窒化ホウ素のプレートである。
【0025】
プラズマ室11の入口端13は、図示されるように、プラズマ室11をマイクロ波導波管30に取り付けるための取付フランジ22を備える。取付フランジ22は側壁15の上流端部から径方向外側に突き出して形成されている。マイクロ波導波管30の末端にはこの取付フランジ22に対応する相手フランジ31が設けられており、これら2つのフランジはボルトなどの適切な締結手段によって取り付けられるよう構成されている。図示されるようにそれぞれのフランジの合わせ面には窓本体18の外周部に適合する凹部が形成されており、プラズマ室11の入口端13とマイクロ波導波管30とに窓本体18が挟持される。
【0026】
この実施形態においては、マイクロ波導入窓16はプラズマ生成空間12の(軸方向に垂直な)断面の全体を占めている。しかし、マイクロ波導入窓16はプラズマ生成空間12の断面の一部(例えば中心部)に形成されていてもよい。
【0027】
この実施形態においては、側壁15の内面はプラズマ生成空間12に露出されている。側壁15の材料がプラズマに放出されてもよい場合や、側壁15から材料がプラズマへと放出されにくいように側壁15が形成されている場合には、このように側壁15を露出してもよい。
【0028】
逆に、ある実施形態においては、プラズマの汚染を軽減または防止するために、側壁15を保護するための内壁部材、いわゆるライナが設けられていてもよい。ライナは、例えば窒化ホウ素で形成されている。ライナは、側壁15に沿ってマイクロ波導入窓16と出口端14との間に延在する。ライナの外周面は、プラズマ生成空間12の側壁15に内接してそれを被覆する。側壁15によってライナの外周面が支持される。ライナの内面がプラズマ生成空間12に露出されている。ライナの上流端部には窓保護材19の外周部が接触し、窓保護材19は窓本体18とライナとに挟まれる。
【0029】
窓保護材19(及び、存在する場合には、ライナ)は、プラズマ室11の内壁部材を構成する。内壁部材は、外部からの逆流電子から又はプラズマからプラズマ室11を保護するために設けられている。内壁部材は、プラズマ室11から取り外し可能にプラズマ室11に装着される。内壁部材をプラズマ室11に装着するとき、内壁部材の外周面をプラズマ室11の側壁15の内面に接触させるようにして、プラズマ室11の一端(例えば下流側)からプラズマ室11の中へと内壁部材が挿入される。この場合、出口端14は予め側壁15から取り外されていてもよい。内壁部材をプラズマ室11から取り外すときは、装着と逆の手順で行うことができる。
【0030】
窓保護材19とライナとは、互いに固定されていてもよいし、プラズマ室11への装脱着時に分離される別体の部材であってもよい。同様に、窓本体18と窓保護材19とは図示されるように別体の部材であってもよいし、あるいは一体に固定されていてもよい。
【0031】
プラズマ室11の軸方向に垂直な断面の形状は、マイクロ波導波管30の断面形状に連続的である。例えば、プラズマ室11とマイクロ波導波管30とは断面の内形寸法が等しい。このようにすれば、マイクロ波導波管30からプラズマ室11のイオン引出開口17に向けて断面の急激な形状変化を防ぐことができる。すなわち、プラズマ室11とマイクロ波導波管30とで金属表面の連続性が保たれる。これは、反射電力を抑制するうえで好ましい。
【0032】
プラズマ室11の側壁15には、冷却ジャケット(図示せず)が設けられていてもよい。冷却ジャケットは、プラズマ室11の軸方向長さにわたって設けられていてもよい。冷却ジャケットは、側壁15の内部に形成されていてもよいし、側壁15の外側に隣接して設けられていてもよい。
【0033】
マイクロ波イオン源10は、プラズマの原料ガスをプラズマ生成空間12に供給するためのガス供給系(図示せず)を備える。このガス供給系によって、例えばジボラン、アルシン、ホスフィンなどの原料ガスがプラズマ生成空間12に供給される。
【0034】
また、プラズマ生成空間12の中心軸に沿う磁場を発生させるための例えばコイルなどの磁場発生器(図示せず)がプラズマ室11の外側に設けられていてもよい。マイクロ波を原料ガスに効率的に吸収させるために、電子サイクロトロン共鳴条件の磁場又はそれよりも強い軸方向の磁場がプラズマ生成空間12に印加される。こうしてプラズマ生成空間12に高密度プラズマが生成されてもよい。
【0035】
イオン引出開口17の外側には、イオンをプラズマ室11の外に引き出すための引出電極系(図示せず)が設けられている。引出電極系はイオンを被照射物に運ぶためのいわゆるビームラインの最上流部にあたる。このビームラインもプラズマ生成空間12と同様に真空排気系(図示せず)によって真空に保持される。
【0036】
マイクロ波イオン源10の下流には質量分析装置40が設置されている。質量分析装置40は、イオン引出開口17を通じてプラズマ室11から引き出されたイオンから所望のイオンを選別しイオンビームBを形成するための分析電磁石42を備える。
【0037】
また、質量分析装置40は、質量分析装置40の外からイオン引出開口17を視認可能であるように設けられているビューポート44を備える。ビューポート44は、質量分析装置40においてイオンビームBの経路を囲む真空チャンバ(図示せず)に取り付けられている真空窓である。ビューポート44は、プラズマ室11の軸方向である中心線A上に配置されている。すなわち、ビューポート44は、イオン引出開口17から出射するイオンが分析電磁石42による磁場の作用を受けずに直線的に飛行したときの経路である、いわゆるストレートポートに取り付けられている。
【0038】
本実施形態においては、プラズマ室モニタ50が設けられている。プラズマ室モニタ50は、ビューポート44及びイオン引出開口17を通じてプラズマ室11の中を監視するようプラズマ室11及び質量分析装置40の外に配設されている。プラズマ室モニタ50は大気環境に配置されている。
【0039】
プラズマ室モニタ50は、例えばレーザー変位計である非接触変位センサ52を備える。非接触変位センサ52は、マイクロ波導入窓16上の測定位置21の変位量を非接触に測定する。非接触変位センサ52は、分析電磁石42のストレートポート部にマイクロ波イオン源10に相対するように配置されている。非接触変位センサ52は、イオン引出開口17を通じてプラズマ室11内を望み、かつ窓保護材19の中心軸付近を監視するよう配置されている。
【0040】
図示される実施形態においては、非接触変位センサ52はビューポート44と同様に中心線A上に配置されており、従って測定位置21はプラズマ生成空間12に露出された窓保護材19の表面と中心線Aとの交点に相当する。
【0041】
非接触変位センサ52から出射された測定光は中心線Aに沿ってビューポート44及びイオン引出開口17を通過して測定位置21に到達する。その逆の経路で測定位置21からの反射光が非接触変位センサ52の検出部で受光される。非接触変位センサ52は測定光と反射光とに基づいて非接触変位センサ52から測定位置21までの距離を表す信号を出力するよう構成されている。
【0042】
非接触変位センサ52は定期的にまたは不定期に測定位置21を測定する。したがって、非接触変位センサ52が出力する信号の経時的な変化に基づいて測定位置21の変位量を求めることができる。損耗により測定位置21と非接触変位センサ52との距離は(僅かに)大きくなる。よって、測定位置21の変位量から窓保護材19の損耗度合いを得ることができる。
【0043】
また、プラズマ室モニタ50は、非接触変位センサ52に接続されているモニタ制御部54を備える。モニタ制御部54は、非接触変位センサ52により得られた測定結果を収集し記憶する。モニタ制御部54は、収集されたデータを必要に応じて処理し(例えば、非接触変位センサ52の出力信号から測定位置21の変位量を演算し)、付随するディスプレイやプリンタ等の出力手段により出力する。モニタ制御部54は、例えば公知のパソコンであり、非接触変位センサ52とモニタ制御部54とは公知の適切な方法で接続される。モニタ制御部54は、図示されるように非接触変位センサ52と別体に設けられていてもよいし、あるいは非接触変位センサ52に一体に搭載されていてもよい。
【0044】
プラズマ室モニタ50は、設定された運転時間ごとに非接触変位センサ52の測定を実行するよう構成されていてもよい。例えば、モニタ制御部54は、そうした設定時間が経過するたびに非接触変位センサ52を作動させてもよい。このようにすれば、測定位置21の変位量を定期的に監視することができる。
【0045】
プラズマ生成空間12にプラズマが生成されているときは、プラズマの発光が非接触変位センサ52による測定に影響を与えるかもしれない。よって、プラズマ室モニタ50は、プラズマ室11にプラズマが生成されていないときに非接触変位センサ52の測定を実行するよう構成されていてもよい。例えば、モニタ制御部54は、プラズマの着火前または消火後に非接触変位センサ52を作動させてもよい。
【0046】
本実施形態によると、マイクロ波導入窓16の窓保護材19の損耗度合いをプラズマ室11の外から簡便に知ることができる。したがって、窓保護材19が劣化したことを検知することができる。また、劣化した窓保護材19を、電子衝撃によるマイクロ波導入窓16の破壊といった最悪の事態が起こる前に適切なタイミングで交換することができる。
【0047】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0048】
上述の実施形態においては、非接触変位センサ52による測定位置21は中心軸A上またはその近傍にある。しかし、非接触変位センサ52は、内壁部材(窓保護材19またはライナなど)の表面の任意の場所をイオン引出開口17を通じて測定するように配置されていてもよい。
【0049】
非接触変位センサ52は、分析電磁石42のストレートポート部から外れた場所に配置されていてもよい。この場合、プラズマ室モニタ50は、イオンビームBの経路上に出し入れ可能である光路折り曲げミラーその他の光学素子を備えてもよい。非接触変位センサ52は、こうした光学素子を通じて測定光をイオン引出開口17に向けて送出し、測定位置からの反射光を逆の経路で受け取るよう配置されていてもよい。
【0050】
非接触変位センサ52は、複数の測定位置を測定するよう構成されていてもよい。この場合、非接触変位センサ52は、プラズマ室11の中にある第1測定位置(例えば上述の測定位置21)と、測定の基準となる第2測定位置と、を測定する。第2測定位置は、例えば出口端14の表面(例えば、イオン引出開口17の外側)にある。プラズマ室モニタ50は、第1測定位置の測定結果と第2測定位置の測定結果との差に基づいてプラズマ室11内の部材の損耗度合いを監視してもよい。非接触変位センサ52は、ビューポート44またはセンサ取付位置に取り外し可能に取り付けられていてもよく、例えば、検査前に取り付けられ検査後に取り外されてもよい。
【0051】
プラズマ室モニタ50は、イオン引出開口17を通じてプラズマ室11の中を撮像し、撮像された画像を用いてマイクロ波イオン源10を監視するよう構成されていてもよい。プラズマ室モニタ50は、イオン引出開口17を通じて窓保護材19の表面を撮像してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 マイクロ波イオン源、 11 プラズマ室、 16 マイクロ波導入窓、 17 イオン引出開口、 19 窓保護材、 21 測定位置、 40 質量分析装置、 44 ビューポート、 50 プラズマ室モニタ、 52 非接触変位センサ。