(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、トリガーを引いた際に、液だれ受け部が傾くことによって、液だれ受け部に溜まった液が漏出し、液だれが手指にかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、これらの事情に鑑みて成されたものであり、使用時に液だれが手指にかかることを抑制できるトリガー式噴出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトリガー式噴出器は、液体組成物を収容する容器と、前記容器内に収容された前記液体組成物を噴出する噴出装置と、を備え、前記噴出装置は、操作面を有するトリガー部と、前記トリガー部に接続され、前記トリガー部の操作に応じて前記容器内の前記液体組成物を移送するシリンダー部と、前記シリンダー部により移送された前記液体組成物を噴出する噴出部と、を備え、前記トリガー部には、前記噴出部の鉛直方向下側で、前記操作面よりも前記噴出部側に位置するようにして、前記液体組成物が噴出される噴出方向に突出する突出部が設けられ、前記突出部における前記噴出部と対向する側の面には、前記トリガー部の前記操作面とは逆側の面で形成される空間に開口する貫通孔が形成されている。
【0007】
この構成によれば、トリガー部には、噴出部の鉛直方向下側で、かつトリガー部の操作面より噴出部側に突出部が設けられ、突出部における噴出部と対向する側の面には、トリガー部の操作面とは逆側の面で形成される空間に開口する貫通孔が形成されている。そのため、噴出部から液体組成物の液だれが滴下しても、液だれは突出部によって受け止められ、液だれがトリガー部の操作面に滴下することを抑制できる。そして、突出部に滴下した液だれは、突出部の貫通孔を通して、トリガー部の裏面側(空間)へと流れる。これにより、トリガー部を操作することによって、突出部の姿勢が傾いた場合においても、トリガー部の操作面に液だれが漏出することを抑制できる。したがって、トリガー式噴出器の使用時において、トリガー部の操作面に当接させている手指に液だれが付着することを抑制できる。
【0008】
本発明のトリガー式噴出器は、液体組成物を収容する容器と、前記容器内に収容された前記液体組成物を噴出する噴出装置と、を備え、前記噴出装置は、操作面を有するトリガー部と、前記トリガー部に接続され、前記トリガー部の操作に応じて前記容器内の前記液体組成物を移送するシリンダー部と、前記シリンダー部により移送された前記液体組成物を噴出する噴出部と、を備え、前記トリガー部には、前記噴出部の鉛直方向下側で、前記操作面よりも前記噴出部側に位置するようにして、前記液体組成物が噴出される噴出方向に突出する突出部が設けられ、前記突出部における前記噴出部と対向する側の面には、毛細管現象により前記液体組成物を保持するスリットが形成されている。
【0009】
この構成によれば、トリガー部には、噴出部の鉛直方向下側で、かつトリガー部の操作面より噴出部側に突出部が設けられ、突出部における噴出部と対向する側の面には、毛細管現象によって液だれを保持可能なスリットが形成されている。そのため、噴出部から液体組成物の液だれが滴下しても、液だれは突出部によって受け止められ、突出部に形成されたスリット内に、毛細管現象によって保持される。これにより、トリガー部を操作することで、突出部の姿勢が傾いた場合においても、液だれがスリットから漏出することを抑制でき、トリガー部の操作面に液だれが付着することを抑制できる。したがって、トリガー式噴出器の使用時において、トリガー部の操作面に当接させている手指に液だれが付着することを抑制できる。
【0010】
前記スリットは、前記突出部の前記噴出方向側の面に開口していてもよい。
この構成によれば、スリットが、突出部の噴出方向側の面に開口しているため、液だれが、突出部の噴出方向側の面に付着したような場合であっても、液だれをスリット内に保持することができる。
【0011】
前記噴出装置は、前記容器を挟んで前記トリガー部と反対側で、かつ前記容器よりも鉛直方向上側に設けられた係止部を備え、前記シリンダー部には、前記シリンダー部の内部を摺動するピストンが設けられ、前記ピストンの摺動する方向と、前記突出部の下端と前記係止部の下端とを結んだ線の方向と、が略平行であってもよい。
この構成によれば、シリンダー部の内部においてピストンが摺動する方向は、突出部の下端と係止部の下端とを結んだ線の方向と略平行である。手の側面は係止部によって、操作面に当接させた手指は突出部によって、それぞれ鉛直方向上側の位置が規制されるため、トリガー式噴出器を把持した際の手指の姿勢は、長手方向がピストンの摺動方向と略平行な姿勢となる。その結果、トリガー部を操作する際に、手指によって操作面に力を加える方向が、ピストンの摺動方向と略平行となるため、トリガー部の操作が容易である。
【0012】
前記突出部は、前記噴出部よりも、前記噴出方向に突出していてもよい。
この構成によれば、突出部による、噴出部から滴下する液だれを受け止める精度を向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用時に噴出部から滴下する液だれが手指に付着することを抑制できるトリガー式噴出器が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るトリガー式噴出器について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
なお、説明においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。この際、鉛直方向をZ軸方向、液体組成物が噴出する噴出方向をY軸方向(+Y方向)、Y軸方向とZ軸方向の両方と直交する方向をX軸方向とする。
【0016】
なお、本明細書において、「噴出方向」とは、液体組成物が噴出される方向のうち主となる方向を意味し、本実施形態においては、水平方向と平行な方向である。
【0017】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態のトリガー式噴出器1の各部について説明する。
図1から
図3は、第1実施形態のトリガー式噴出器1を示した図である。
図1(a)は、トリガー式噴出器1の正面図、
図1(b)は、トリガー式噴出器1の側面図である。
図2は、トリガー式噴出器1を鉛直方向(Z軸方向)に平行で、かつ噴出方向(+Y方向)に平行な面(YZ面)で断面した部分拡大断面図である。
図3は、トリガー式噴出器1の部分拡大斜視図である。
【0018】
トリガー式噴出器1は、
図1,2に示すように、容器21と、この容器21の首部21aに取り付けられ、容器21に収容された液体組成物を噴出するためのトリガー式の噴出装置22と、を備えている。
容器21の形状は、液体組成物を収容できる範囲内において、特に限定されず、どのような形状であってもよい。
【0019】
噴出装置22は、
図2に示すように、一端が容器21内に配され、容器21内の液体組成物が吸引、送液される送液チューブ23と、送液チューブ23の他端が接続されたバルブ部24と、連通孔24cを介してバルブ部24と接続されたシリンダー(シリンダー部)29と、シリンダー29内を摺動するピストン30と、ピストン30に隣接して設けられたトリガー(トリガー部)31と、バルブ部24の鉛直方向上側(+Z方向側)に設けられ、内部に通液路25が形成された筒状の通液部38と、通液部38に接続された液体ガイド栓体27と、液体ガイド栓体27に接続され、液体組成物を外方に噴出するノズル部材(噴出部)26と、を備えている。
【0020】
バルブ部24は、ボール体24aと、弁体24bと、を備えている。
ボール体24aは、鉛直方向(Z軸方向)に上下動可能に設けられており、バルブ部24内の圧力の変化によって上下動する。ボール体24aは、未操作時(
図2に示す状態)においては、バルブ部24内の鉛直方向下側(−Z方向側)の端部に位置し、送液チューブ23と、バルブ部24と、を遮断している。トリガー31が操作されると、バルブ部24内の圧力変化によって、ボール体24aは、鉛直方向上側(+Z方向側)の送液チューブ23の開口端を開放する位置に移動し、送液チューブ23と、バルブ部24と、が連通される。詳細については、後述する。
【0021】
弁体24bは、バネ部24eと、突起部24fと、を備えている。突起部24fは、バネ部24eに接続され、鉛直方向下向き(−Z方向)に突出して形成されている。バネ部24eは、鉛直方向の中央に括れを有する管状に形成されている。バネ部24eは、突起部24fに、常時鉛直方向下向き(−Z方向)の付勢力を与えている。
【0022】
弁体24bは、未操作時(
図2に示す状態)においては、突起部24fがバネ部24eの付勢力によって鉛直方向下側(−Z方向側)に押し下げられ、バルブ部24と通液部38の通液路25とを遮断している。トリガー31が操作されると、バルブ部24内の圧力変化によって、突起部24fが鉛直方向上側(+Z方向側)に移動する。突起部24fにおける鉛直方向上側(+Z方向側)の端部の位置が、弁体24bに形成された連通孔24dの位置よりも上方(+Z方向)となることによって、バルブ部24と、通液部38の通液路25と、が連通孔24dを介して連通される。詳細については、後述する。
【0023】
液体ガイド栓体27は、筒状の取付部34と、柱状部37と、を備えている。
液体ガイド栓体27は、取付部34が通液部38の外周に嵌合されることによって、通液部38と接続されている。取付部34の底部35には、通液路25の通路断面よりも十分に小さい連通孔36が形成されている。この連通孔36により、流路断面が急激に縮小され、通液路25を介して供給される液体組成物の流速が増加されるようになっている。
柱状部37の周囲には、後述するノズル部材26の短筒部26aとで形成される、略円筒状の通路39が設けられている。通路39を通じて、液体ガイド栓体27から、後述するノズル部材26の噴出孔28へと、液体組成物が供給される。
【0024】
ノズル部材26は、液体ガイド栓体27の柱状部37に、ノズル部材26の短筒部26aが嵌合して、液体ガイド栓体27の前方(+Y方向)に設けられている。また、ノズル部材26には、略円形の噴出孔28と、この噴出孔28に連続して、噴出方向(+Y方向)に向けてすり鉢状に拡径する拡径部32とが形成されている。
【0025】
ノズル部材26は、液体ガイド栓体27に対して回動自在となっており、ノズル部材26と液体ガイド栓体27との位置関係を変化させることにより、液体ガイド栓体27の柱状部37の周囲に形成された通路39を遮断したり、通路39の断面積を変化させたりすることができる。これにより、ノズル部材26における噴出孔28への液体組成物の供給を遮断したり、噴出孔28へ供給される液体組成物に加わるスピン回転の状態を制御したりできるようになっている。
【0026】
シリンダー29は、内部に設けられたピストン30が摺動する方向が、液体組成物の噴出方向(+Y方向)と平行になるようにして設けられている。シリンダー29には、ピストン30で区切られたバルブ部24側の空間であり、連通孔24cによってバルブ部24と接続されているシリンダー室29aが設けられている。シリンダー室29aの最大容積(
図2の状態における容積)は、一度のトリガー31の操作でノズル部材26から噴出する液体組成物の量と等しく、たとえば、2mlとできる。
また、シリンダー29の軸線と中心軸線を一致させて、コイルスプリング30aが設けられている。コイルスプリング30aは、ピストン30に常時噴出方向(+Y方向)の付勢力を加えている。
【0027】
ピストン30は、トリガー31を握る、または緩めるといった操作をすることにより、摺動するようになっている。より具体的には、トリガー31を握って容器21に接近させる(
図2矢印方向に動かす)ことにより、ピストン30は噴出方向と逆の方向(−Y方向)に移動し、トリガー31を緩めることにより、コイルスプリング30aの付勢力によってピストン30は噴出方向(+Y方向)に移動する。ピストン30の噴出方向(+Y方向)先端には、断面円弧形状の凹面30bが設けられている。
【0028】
トリガー31の操作によって、シリンダー29内のピストン30をY軸方向に往復させることで、シリンダー室29aの容積を変化させ、容器21内の液体組成物をノズル部材26へと移送することができる。詳細については後述する。
【0029】
トリガー31は、回転軸Aを中心として揺動可能であり、
図1から
図3に示すように、操作されていない状態において、噴出方向(+Y方向)に向かうに従って、鉛直方向下側(−Z方向側)に向かう方向に延び、操作面31aが凹形状となるように湾曲して設けられている。トリガー31の裏面31b側には、
図2に示すように、裏面31bと、トリガー31の裏側面31cと、によって空間70が形成されている。空間70は、トリガー31の噴出方向と逆側(−Y方向側)の端部の全長に亘って大気に開放されている。
【0030】
トリガー31の操作面31aの回転軸A側(+Z方向側)には、突出部42が設けられている。
突出部42は、噴出方向(+Y方向)に突出して形成されている。突出部42の平面視(XY面視)形状は、特に限定されず、矩形状であっても、その他の形状(たとえば、円形状)であってもよい(図では矩形状)。突出部42には、周縁に設けられた上面42aと、上面42aに囲まれた凹部42dと、が形成されており、凹部42dの底面42eには、貫通孔42bが2つ形成されている。貫通孔42bは、それぞれ空間70に開口している(
図2参照)。
【0031】
貫通孔42bの平面視(XY面視)形状は、特に限定されず、矩形状であっても、その他の形状(たとえば円形状)であってもよい(図では矩形状)。また、貫通孔42bの開口面積も特に限定されない。
突出部42の鉛直方向下側(−Z方向側)の端部は、後述する手指規制部42cとして機能する。
【0032】
また、トリガー31には、突出部42よりも回転軸A側に位置し、−Y方向に突出する当接部31dが設けられている。当接部31dは、先端がピストン30の凹面30bに当接するものである。
【0033】
次に、トリガー式噴出器1が、トリガー31を操作することによって、液体組成物を噴出する仕組みについて説明する。
まず、トリガー31の操作面31aに手指を掛け、トリガー31を容器21に接近する方向(
図2に示す矢印方向)に力を加える。トリガー31に力が加えられると、トリガー31の当接部31dから、ピストン30に、凹面30bを介して、コイルスプリング30aの付勢力に抗する方向の力が加えられる。ピストン30に、コイルスプリング30aの付勢力以上の力が加えられることにより、ピストン30が噴出方向と逆方向(−Y方向)に変位し、シリンダー室29aの容積が減少する。これにより、シリンダー室29a内の空気等が、連通孔24cを通じてバルブ部24に押し出され、バルブ部24内が大気圧から正圧に転じる。
【0034】
バルブ部24内の正圧は、弁体24bの突起部24fを鉛直方向上側(+Z方向側)に変位させる方向に作用するため、バルブ部24内の圧力が、弁体24bのバネ部24eの付勢力を上回ると、突起部24fは鉛直方向上側(+Z方向側)に変位する。これにより、バルブ部24と、通液部38の通液路25と、が連通孔24dを介して連通される。バルブ部24と通液路25とが連通すると、バルブ部24内の圧力は、通液路25内の圧力(大気圧)と等しくなるため低下し、バネ部24eの付勢力がバルブ部24内の圧力を上回る。その結果、バネ部24eの付勢力により、弁体24bの突起部24fが鉛直方向下側(−Z方向側)に移動し、バルブ部24と通液路25との連通が再び遮断される。
【0035】
次に、トリガー31に加える力を緩めると、コイルスプリング30aの付勢力により、トリガー31とピストン30とが元の位置(
図2で示す位置)に戻され、シリンダー室29aの容積は増加する。その際、シリンダー室29a内には、バルブ部24内の空気が吸引される。これにより、バルブ部24内が送液チューブ23内の圧力、すなわち容器21内の圧力(大気圧)に対して負圧に転じるため、その圧力差によって、ボール体24aは浮き上がり、鉛直方向上側(+Z方向側)に移動する。その結果、バルブ部24と送液チューブ23とが連通する。なお、浮き上がった際のボール体24aの鉛直方向位置は、弁体24bの突起部24fの鉛直方向下側(−Z方向側)の端部によって制限される。
【0036】
バルブ部24と送液チューブ23とが連通することで、送液チューブ23内(容器21内)とバルブ部24内との圧力差よって、バルブ部24内に、送液チューブ23を介して、容器21内に収容された液体組成物が吸い上げられる。そして、この吸い上げられた液体組成物は、連通孔24cを介してシリンダー室29a内に流入し、収容される。
【0037】
次に、再度トリガー31に対して容器21に接近する方向に力を加えると、上述したのと同様にして、ピストン30が移動し、シリンダー室29aの容積が減少し、シリンダー室29a内に収容されていた液体組成物が、バルブ部24内に連通孔24cを介して押し出される。これにより、バルブ部24内の液圧が上昇する。このバルブ部24内の液圧がバネ部24eの付勢力を上回ることで、上述したのと同様にして、弁体24bの突起部24fが鉛直方向上側(+Z方向側)に変位してバルブ部24と通液路25とが連通孔24dを介して連通される。バルブ部24内の液体組成物は、その液圧により、連通孔24dを通じて通液路25へ押し出される。そして、この通液路25内に流出した液体組成物は、通液路25を通じて、連通孔36から液体ガイド栓体27内に流入する。液体ガイド栓体27内に流入した液体組成物は、通路39を介して、ノズル部材26の噴出孔28に供給され、前方(+Y方向)へと噴出される。
【0038】
上述したようにして、液体組成物を噴出させると、噴出した液体組成物の一部が液だれ40となって、ノズル部材26の下端を伝って滴下することがある。このような場合、従来のトリガー式噴出器では、滴下した液だれが操作者の手指に付着することがあった。
【0039】
これに対して、本実施形態のトリガー式噴出器1によれば、トリガー31は突出部42を備えており、突出部42は、ノズル部材26の鉛直方向下側で、かつトリガー31の操作面31aよりもノズル部材26側に設けられている。そして、突出部42における凹部42dの底面42eには、貫通孔42bが形成されている。そのため、
図2,3に示すように、ノズル部材26から滴下した液だれ40は、突出部42によって受け止められ、受け止められた液だれ40は貫通孔42bを介して、トリガー31の裏側(空間70の側)へと排出される。より詳細には、
図2に示すように、貫通孔42bを通過した液だれ40は、突出部42の内壁を伝ってトリガー31の裏面31bに流れる。したがって、トリガー31の操作によって突出部42の姿勢が変化し、突出部42が傾いた場合であっても、液だれ40が操作面31aに漏出することを抑制でき、操作者の手指に液だれ40が付着することを抑制できる。
【0040】
また、液だれ40が、貫通孔42bに直接滴下せず、底面42e上に滴下した場合であっても、凹部42dが設けられていることにより、液だれ40を一時的に保持しておくことが可能であり、液だれ40の漏出を抑制できる。一時的に保持された液だれ40は、順次貫通孔42bからトリガー31の裏面31bに排出される。
【0041】
また、本実施形態によれば、突出部42が設けられていることにより、突出部42の下端が手指規制部42cとして機能し、操作面31aにおける手指をかける位置が規制される。これにより、手の姿勢がトリガー31の操作方向(ピストン30の摺動方向)に対して略平行とできるため、トリガー31の操作が容易である。以下、図を用いて具体的に説明する。
【0042】
図4は、従来のトリガー式噴出器60の操作について説明する側面図である。
図5は、本実施形態のトリガー式噴出器1の操作について説明する側面図である。
図4,5のそれぞれにおいて、(a)は操作前を示しており、(b)は操作後を示している。
図4に示すトリガー式噴出器60は、本実施形態のトリガー式噴出器1に対して、突出部42が設けられていない点において異なる。
【0043】
図4(a)に示すように、突出部が設けられていないトリガー式噴出器60では、トリガー61の操作面において手指をかける位置が規制されないため、操作面の上側(ノズル部材26側)に手指をかける場合がある。このような場合では、手指(主として人差し指)が当接する箇所と、手の側面を係止する係止部62の下端と、の鉛直方向(Z軸方向)における位置が異なるため、手指の姿勢は、長手方向がシリンダー63内におけるピストン64の摺動する方向(Y軸方向)に対して傾いた姿勢となる。その結果、手指によってトリガー61に加えられる力の向きが、ピストン64の摺動方向に対して傾いた方向(図示矢印方向)となり、ピストン64を動かすために余分な力が必要となる。
【0044】
これに対して、本実施形態のトリガー式噴出器1では、
図5に示すように、操作面31aにかける手指の位置は、突出部42の下端の手指規制部42cによって規制される。本実施形態においては、突出部42は、下端である手指規制部42cの位置が、噴出装置22の係止部41の下端と、略同一の高さに設けられている。そのため、トリガー式噴出器1を把持した際に、手指の長手方向が略水平な姿勢となり、シリンダー29におけるピストン30の摺動方向(Y軸方向)と略平行となる。したがって、手指によってトリガー31に加えられる力は、
図5(a)に示すように、水平方向(図示矢印方向)となり、ピストン30の摺動方向と略平行となる。その結果、トリガー31を操作する際に余分な力がかかりにくく、従来のトリガー式噴出器に比べて操作負担を軽減でき、操作性を向上できる。
【0045】
上記の効果は、特に噴出量が多いトリガー式噴出器において大きい。一度に噴出する液体組成物の量を増大させるためには、液体組成物を移送するシリンダー室の容積を大きくする必要があり、そのためには、シリンダー室のピストンの摺動方向長さを長くするか、シリンダー自体の径を大きくする必要がある。しかし、前者の方法では、容器からトリガーまでの距離が長くなり、トリガーの操作をしにくくなってしまうため、好ましくない。そこで、シリンダー自体の径を大きくすることによって、噴出量が多い大容量のトリガー式噴出器とする方法が用いられている。
【0046】
しかし、そのような大容量のトリガー式噴出器では、シリンダー径が大きくなっているため、ピストンが摺動する際の抵抗が大きく、ピストンを動かすためのトリガー操作に要する力も大きくなる。これにより、長時間のトリガー操作によって手に大きな負担がかかる場合があった。これに対して、本実施形態のトリガー式噴出器1では、上述したように、余分な力がかかることを抑制できるため、噴出量が多い大容量のトリガー式噴出器(たとえば、シリンダー室の容積が2mlのトリガー式噴出器)の使用による負担を軽減できる。
【0047】
なお、本実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
【0048】
形成される貫通孔42bの数は、特に限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
また、凹部42dの底面の全面に亘って貫通孔が形成されていてもよい。
【0049】
突出部42は、ノズル部材26よりも、噴出方向(+Y方向)に突出していてもよい。この構成によれば、ノズル部材26から滴下する液だれ40を、突出部42によって受けやすくなる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、貫通孔の代わりに、突出部にスリットが設けられているトリガー式噴出器である、第2実施形態について説明する。
なお、上記実施形態と同様の構成要素については、適宜、上記実施形態と同様の符号を付してその説明を簡略化、あるいは省略する。
【0051】
図6,7は、第2実施形態のトリガー式噴出器2を示す図である。
図6は、正面図であり、
図7は、部分拡大斜視図である。
なお、側面図は、
図1(b)に示す第1実施形態の側面図と同様であるため省略する。
【0052】
トリガー式噴出器2は、
図6,7に示すように、噴出装置55におけるトリガー51に、第1実施形態と同様にして、突出部52が設けられている。突出部52には、スリット52cが設けられている。
スリット52cは、突出部52における、ノズル部材26に対向する側(+Z方向側)の上面52aと、噴出方向側(+Y方向側)の側面52bと、に開口し、トリガー31の幅方向(X軸方向)に沿って並んで3つ形成されている。
スリット52cの幅(X軸方向長さ)は、液だれ40に対して、毛細管現象が起こるような長さに設定されており、その範囲内において特に限定されない。
【0053】
本実施形態のトリガー式噴出器2によれば、ノズル部材26から滴下した液だれ40は、ノズル部材26の鉛直方向下側に設けられた突出部52上に付着する。突出部52には、毛細管現象を生じるスリット52cが形成されているため、
図7に示すようにして、スリット52cは毛細管現象によって液だれ40を内部に保持する。そのため、トリガー51の操作によって、突出部52が傾いた場合においても、液だれ40はスリット52c内に保持され、漏出することが抑制される。したがって、操作者の手指に液だれ40が付着することを抑制できる。
【0054】
また、スリット52cは、側面52bにも開口しているため、液だれ40が側面52bに付着するような場合であっても、液だれ40をスリット52c内に保持することができる。
また、スリット52cの形成が容易である。
【0055】
なお、本実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
【0056】
スリット52cの数は、特に限定されず、2つ以下であっても、4つ以上であってもよい。
また、スリット52cは、側面52bに開口していなくてもよい。
【0057】
また、スリット52cの底面には、第1実施形態と同様にして、貫通孔が形成されていてもよい。
【0058】
[実施例]
次に、実施例として、本実施形態のトリガー式噴出器における、トリガーの操作性検証実験について説明する。
検証実験に用いたトリガー式噴出器は、シリンダー室の容積が2mlの噴出量が多いタイプのものであり、実施例としては、第1実施形態に示すトリガー式噴出器1と同様のトリガー式噴出器を、比較例としては、
図4に示した、突出部が設けられていないトリガー式噴出器60と同様のトリガー式噴出器を用いた。
【0059】
被験者7名に、実施例と比較例のトリガー式噴出器を操作してもらい、トリガーの操作性についてそれぞれ官能検査を行った。トリガーの操作性については、下記の7段階で評価してもらい、点数付けを行った。
非常に操作しやすい・・7点
かなり操作しやすい・・6点
やや操作しやすい・・・5点
どちらともいえない・・4点
やや操作しにくい・・・3点
かなり操作しにくい・・2点
非常に操作しにくい・・1点
点数が高いほど操作がしやすく(操作性が高く)、点数が低いほど操作がしにくい(操作性が低い)ことを示している。
【0060】
その結果、比較例の評価の平均が3.5点であったのに対して、実施例の評価の平均は5.4点であった。これにより、突出部が設けられていない従来のトリガー式噴出器に比べて、突出部(手指規制部)が設けられた本実施形態のトリガー式噴出器は、トリガーの操作がしやすく、操作性を向上できることが確かめられた。
【0061】
また、本実施例における、官能検査によって得られた評価の平均点は、突出部が設けられていない、シリンダー室の容積が1mlの噴出量が少ないタイプのトリガー式噴出器における、操作性評価の平均点と同程度あった。これにより、シリンダー室の容積が2mlの噴出量が多いタイプのトリガー式噴出器に、突出部(手指規制部)を設けることにより、シリンダー室の容量が1mlタイプのトリガー式噴出器と同等の操作性が得られることが分かった。