特許第6086860号(P6086860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086860
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ノズル、燃焼器、及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/20 20060101AFI20170220BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20170220BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20170220BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   F23R3/20
   F23R3/00 A
   F23R3/28 D
   F02C3/30 B
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-247076(P2013-247076)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105766(P2015-105766A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】田村 一生
(72)【発明者】
【氏名】赤松 真児
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 圭司郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 朋
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−156115(JP,A)
【文献】 特表2011−516809(JP,A)
【文献】 特開2004−138376(JP,A)
【文献】 特開2001−041454(JP,A)
【文献】 特表2013−530371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00、20、28
F02C 3/30
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端の中央に燃料を噴射する燃料噴射口が形成されるとともに、前記先端の前記燃料噴射口の周囲の周方向全域にわたって該周方向に間隔をあけて複数の水噴射口が形成され、
周方向の一部の領域で互いに隣り合う複数の前記水噴射口は、その開口径が、前記周方向の一部の領域以外の前記周方向の残部の領域の複数の前記水噴射口異なるよう形成されていることを特徴とするノズル。
【請求項2】
複数の前記水噴射口のうち一部は、前記ノズルの中心軸に対する前記ノズルの半径方向への傾斜角度が、複数の前記水噴射口の残部と異なるよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
複数の前記水噴射口のうち一部は、前記ノズルの中心軸に対する前記ノズルの周方向への傾斜角度が、複数の前記水噴射口の残部と異なるよう形成されていることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
複数の前記水噴射口のうち一部は、前記ノズルの径方向における位置が、複数の前記水噴射口の残部と異なるよう形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項5】
複数の前記水噴射口のうち一部は、前記ノズルの周方向における設置間隔が、複数の前記水噴射口の残部と異なるよう形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項6】
燃料を噴射するメインノズルと、
前記メインノズルから噴射される燃料に点火するための火炎を生成するパイロットノズルと、を備え、
前記パイロットノズルが請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のノズルであることを特徴とする燃焼器。
【請求項7】
前記パイロットノズルが中央部に配置され、
前記パイロットノズルの外周側に周方向に複数の前記メインノズルが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の燃焼器。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の燃焼器と、
前記燃焼器により生成された燃焼ガスにより駆動されるタービン本体と、を備えることを特徴とするガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル、燃焼器、及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの燃焼器として、パイロット燃料ノズルと、パイロット燃料ノズルの周囲に設けられた複数のメイン燃料ノズルと、を備えたものがある。この燃焼器は、パイロット燃料ノズルにて形成される拡散火炎にてメイン予混合火炎の安定化を図っている。
【0003】
特許文献1には、パイロット燃料ノズルの周方向の一部に、燃料の噴出孔を設けない領域を設け、パイロット燃料ノズルから噴出させる燃料を、周方向で不均一に分布させる構成が開示されている。また、特許文献1には、複数のメイン燃料ノズル間で、燃料の噴出量を異ならせることによって、複数のメイン燃料ノズルからパイロット燃料ノズルの外周側に噴出させる燃料を、周方向で不均一に分布させる構成が開示されている。
これらの構成により、燃料が燃焼することにより形成される火炎の長さを、周方向で異ならせ、発熱率を分散させることで燃焼振動を抑えている。
【0004】
特許文献2には、複数のメイン燃料ノズルのそれぞれにおいて、燃料噴出孔を軸方向に異なる複数の位置に設ける構成が開示されている。また、特許文献2には、複数のメイン燃料ノズルのそれぞれにおいて、燃料噴出孔を軸方向に異なる複数の位置に設け、さらに燃料噴出孔からの燃料の噴出角度を異ならせる構成が開示されている。これらの構成により、軸方向に互いに位置が異なる複数の燃料噴出孔間で、メイン燃料ノズルから噴出された燃料(予混合気)が火炎に到達する時間を異ならせることにより、燃焼振動を抑えるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−294770号公報
【特許文献2】特開2003−120934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、燃焼器における火炎温度を下げることによってNOx(窒素酸化物)の排出量を抑えるため、火炎に水を噴射する方式の燃焼器がある。
このような燃焼器においても、燃焼振動を有効に抑えることが要求されている。
そこでなされた本発明の目的は、火炎に水を噴射する燃焼器においても、燃焼振動を有効に抑えることのできるノズル、燃焼器、及びガスタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、ノズルは、先端の中央に燃料を噴射する燃料噴射口が形成されるとともに、前記先端の前記燃料噴射口の周囲の周方向全域にわたって該周方向に間隔をあけて複数の水噴射口が形成され、周方向の一部の領域で互いに隣り合う複数の前記水噴射口は、その開口径が、前記周方向の一部の領域以外の前記周方向の残部の領域の複数の前記水噴射口異なるよう形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、燃料噴射口から噴射される燃料により生成される火炎に対し、水噴射口から噴射される水は、周方向において不均等に噴射されることとなる。すると、火炎の軸方向位置が周方向において一様ではなくなる。すると、この火炎自体、あるいはこの火炎によって着火される燃料による火炎の軸方向位置を周方向で異ならせ発熱率を分散させることで、燃焼振動を抑えることができる。
また、周方向の一部の領域と、それ以外の残部の領域とで、水噴射口から噴射される水の噴射量が異なることとなる。これにより、周方向に不均等に水を噴射することができる。
【0008】
複数の前記水噴射口のうち一部は、前記ノズルの中心軸に対する該ノズルの半径方向への傾斜角度が、複数の前記水噴射口の残部と異なるよう形成されているようにしてもよい。
これにより、周方向の一部の領域と、それ以外の残部の領域とで、水噴射口から噴射される水の噴射角度が、ノズルの半径方向に異なることとなる。これにより、周方向に不均等に水を噴射することができる。
【0009】
複数の前記水噴射口のうち一部は、前記ノズルの中心軸に対する該ノズルの周方向への傾斜角度が、複数の前記水噴射口の残部と異なるよう形成されているようにしてもよい。
これにより、周方向の一部の領域と、それ以外の残部の領域とで、水噴射口から噴射される水の噴射角度が、ノズルの周方向、つまり水噴射口の位置における接線方向に異なることとなる。これにより、周方向に不均等に水を噴射することができる。
【0011】
複数の前記水噴射口のうち一部は、前記ノズルの径方向における位置が、複数の前記水噴射口の残部と異なるよう形成されているようにしてもよい。
これにより、周方向の一部の領域と、それ以外の残部の領域とで、水噴射口から噴射される水が、中央部の燃料噴出口から噴出される燃料によって生成される火炎に到達するまでの距離が異なることとなる。これにより、周方向に不均等に水を噴射することができる。
【0012】
複数の前記水噴射口のうち一部は、前記ノズルの周方向における設置間隔が、複数の前記水噴射口の残部と異なるよう形成されているようにしてもよい。
これにより、周方向の一部の領域と、それ以外の残部の領域とで、水噴射口から噴射される水の噴射量(噴射密度)が異なることとなる。これにより、周方向に不均等に水を噴射することができる。
【0013】
また、本発明は、燃料を噴射するメインノズルと、前記メインノズルから噴射される燃料に点火するための火炎を生成するパイロットノズルと、を備え、前記パイロットノズルが上記したノズルであるようにしてもよい。
これにより、パイロットノズルで生成する点火用の火炎を周方向に不均等とすることができる。すると、メインノズルから噴射される燃料による火炎も、周方向に不均等となる。
ここで、前記パイロットノズルが中央部に配置され、前記パイロットノズルの外周側に周方向に複数の前記メインノズルが設けられているようにしてもよい。
【0014】
また、本発明は、上記したような燃焼器と、前記燃焼器により生成された燃焼ガスにより駆動されるタービン本体と、を備えるガスタービンを提供する。
このようなガスタービンによれば、燃焼器における火炎による燃焼振動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、火炎に水を噴射する燃焼器においても、燃焼振動を有効に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係るガスタービンの全体構成を示す概略図である。
図2】燃焼器の概略構成を示す側断面図である。
図3】燃焼器の要部の構成を示す側断面図である。
図4】第一実施形態における燃焼器の先端面を示す正面図である。
図5】燃焼器の先端面に形成された燃料噴射口、水噴射口を示す側断面図である。
図6】水噴射口を周方向において不均等とした場合における、軸方向位置と発熱率との関係を示す図である。
図7】第二実施形態における燃焼器の先端面を示す正面図である。
図8】第三実施形態における燃焼器の先端面を示す正面図である。
図9】第四実施形態における燃焼器の先端面を示す正面図である。
図10】第五実施形態における燃焼器の先端面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第一実施形態)
以下、本発明に係る第一実施形態の燃焼器3について図を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のガスタービン1は、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機2と、この圧縮機2にて圧縮された圧縮空気Aに燃料を混合して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3から導入された燃焼ガスGの熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン本体4とを備えている。
【0018】
圧縮機2及びタービン本体4は、それぞれ一体回転するように連結されたロータ5と、ロータ5の外周側を囲うステータ6とを備えている。ロータ5は、回転軸7と、軸線方向に間隔を空けて固定されている複数の環状動翼群8と、を有している。各々の環状動翼群8は、回転軸7の外周に、周方向に互いの間隔を空けて固定されている複数の動翼を有して構成されている。
【0019】
ステータ6は、それぞれケーシング9と、ケーシング9内において軸線方向に間隔をあけて固定された複数の環状静翼群10とを備えている。環状静翼群10は、各々のケーシング9内面に、周方向に互いの間隔をあけて固定されている複数の静翼を有している。
環状静翼群10は、それぞれ、複数の環状動翼群8と、軸線方向に交互に配置されている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の燃焼器3は、円筒状の内筒31と、内筒31の中心軸方向一端側の外周側に同心円状に設けられた外筒32と、を備えている。
外筒32の一端側32aは閉塞され、他端側32bは内筒31の外周側で開口している。外筒32の他端側32bの内周面と内筒31の外周面との間から燃焼器3内に流入した圧縮空気Aは、外筒32の一端側32aで180°転回し、内筒31の内部に供給される。
【0021】
図2図3に示すように、内筒31の内部には、内筒31の中心部に設けられたパイロットバーナ33と、パイロットバーナ33の外周側に周方向に間隔をあけて複数設けられたメインバーナ34と、が設けられている。
【0022】
パイロットバーナ33は、パイロットノズル35と、パイロットコーン36と、を備えている。
パイロットノズル35は、外筒32の一端側32aから内筒31の中心軸Oに沿って設けられている。パイロットノズル35は、外筒32の一端側32aから不図示の燃料供給経路を介して供給される燃料を先端部35aから噴射し、この燃料に着火することで火炎を生成する。
パイロットコーン36は、筒状で、パイロットノズル35の先端部35aの外周側に設けられている。パイロットコーン36は、パイロットノズル35の先端部35a近傍から、火炎の生成方向に向けて、その内径が漸次拡大するテーパコーン部36cを有し、火炎の拡散範囲、方向を規制し、保炎性を高めている。
【0023】
メインバーナ34は、メインノズル37と、メインスワラ38と、を備えている。パイロットコーン36の外周側には、筒状の外周コーン39が設けられている。メインノズル37は、外周コーン39の外周面と内筒31の内周面との間の領域に、周方向に間隔をあけて複数本設けられている。各々のメインノズル37は、外筒32の一端側32aから内筒31の中心軸Oに平行に設けられている。
メインスワラ38は、各メインノズル37の先端部に設けられている。メインスワラ38の空気流上流側において、メインノズル37の外周面側に、不図示の燃料ノズルノズルから燃料(メイン燃料)が噴出される。そして、この燃料はメインスワラ38の働きにより、メインバーナ34において内筒31内の圧縮空気Aと混合し、予混合気を生成する。
【0024】
本実施形態のパイロットノズル35は、火炎の温度を下げてNoxを低減するため、火炎に向けて水を噴射する。以下、パイロットノズル35の構成について詳述する。
図4図5に示すように、パイロットノズル35は、先端面(先端)35sの中央に、燃料を噴射する燃料噴射口41を有している。燃料噴射口41には、不図示の燃料供給源からパイロットノズル35内に形成された燃料流路を通して燃料が供給される。
パイロットノズル35の先端面35sの燃料噴射口41の周囲には、周方向に間隔をあけて複数の水噴射口42が形成されている。水噴射口42には、不図示の水供給源からパイロットノズル35内に形成された水流路を通して水が供給される。各々の水噴射口42は、パイロットノズル35の中心軸Oに対し、パイロットノズル半径方向内周側及び周方向に向けて傾斜して形成されている。これにより、各々の水噴射口42から噴射された水は、これら複数の水噴射口42の内周側に位置する燃料噴射口41から噴出する燃料による火炎F1の外縁部に対し、包絡線が重なるように吹きつけられる。
【0025】
これら複数の水噴射口42は、周方向に不均等に形成されている。
本実施形態において、複数の水噴射口42のうち、周方向の一部の領域の水噴射口42Aは、パイロットノズル35の中心軸Oに対するパイロットノズル35の半径方向内周側への傾斜角度θ1が、残る他の領域にある水噴射口42Bの傾斜角度θ2と異なるよう形成されている。例えば、一部の水噴射口42Aの傾斜角度θ1が、残る他の水噴射口42B(水噴射口の残部)の傾斜角度θ2よりも、小さくなるよう形成されている。
【0026】
これにより、各水噴射口42からパイロットノズル35の内周側に向けて噴射される水は、周方向の一部の領域にある水噴射口42Aでは、それ以外の水噴射口42Bよりも、外周側に向けて噴射される。したがって、中央の燃料噴射口41から噴射される燃料により生成される火炎F1に対し、パイロットノズル35の複数の水噴射口42から噴射される水は、周方向に不均等に噴射される。水噴射口42の径方向内周側に向けての傾斜角度が小さいほど、水噴射口42から噴射される水は、水噴射口42からの水の噴射方向下流側の遠い位置で火炎F1の外縁部に到達する。これにより、火炎F1の軸方向位置が周方向において不均一となる。
すると、周方向において軸方向位置が異なる火炎F1により、メインバーナ34から噴出される燃料が着火する位置、つまりメイン火炎の生成位置が、周方向において、中心軸Oに沿った方向に異なることとなる。水の噴射角度の傾斜角度θ1が小さいほど、メインバーナ34から噴出される燃料によるメイン火炎の生成位置が、中心軸O方向に沿って火炎生成方向下流側に移行する。
【0027】
このようにして、燃焼器3において生成されるメイン火炎は、周方向において、中心軸O方向における位置が異なる。すると、図6に示すように、燃焼器3内における発熱率の分散の幅が中心軸O方向に沿って広がる。
したがって、火炎F1や、メイン火炎による一つの振動モードによる加振力を抑えることができる。その結果、燃焼振動を有効に抑えることが可能となる。
【0028】
なお、上記第一実施形態では、パイロットノズル35の半径方向における水噴射口42の傾斜角度を異ならせることによって、複数の水噴射口42は、周方向に不均等にしたが、これに限るものではない。以下、複数の水噴射口42を、周方向に不均等に形成する複数の実施形態を示す。なお、以下に示す各実施形態において、ガスタービン1や燃焼器3の全体構成は上記第一実施形態と共通する。したがって、以下の説明においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略し、パイロットノズル35における水噴射口42の構成を中心に説明を行う。
【0029】
(第二実施形態)
図7に示すように、本実施形態における燃焼器3において、パイロットノズル35は、燃料噴射口41の周囲に周方向に間隔をあけて形成された複数の水噴射口42のうち、周方向の一部の領域の水噴射口42Cは、パイロットノズル35の中心軸Oに対するパイロットノズル35の周方向(水噴射口42Cが設けられた位置における接線方向)への傾斜角度が、残る他の領域にある水噴射口42Dの傾斜角度と異なるよう形成されている。例えば、一部の水噴射口42Cの傾斜角度が、残る他の水噴射口42Dの傾斜角度よりも、大きくなるよう形成されている。
【0030】
これにより、水噴射口42から噴射される水は、周方向の一部の領域にある水噴射口42Cでは、それ以外の水噴射口42Dよりも、より火炎F1の生成方向上流側に向けて噴射される。
【0031】
したがって、図3に示したように、中央の燃料噴射口41から噴射される燃料により生成される火炎F1に対し、その外周側に向けて水噴射口42から噴射される水は、周方向において不均等に噴射されることとなる。すると、火炎F1の軸方向位置が周方向において一様ではなくなる。
これによって、メインバーナ34から噴出される燃料に火炎F1が伝搬し、燃料が着火する位置が、中心軸Oに沿った方向に異なることとなる。すると、図6に示すように、燃焼器3内において、メイン火炎による発熱率が、周方向において、中心軸O方向に沿って分散する。
その結果、火炎F1や、メイン火炎による一つの振動モードによる加振力を抑えることができる。その結果、燃焼振動を有効に抑えることが可能となる。
【0032】
(第三実施形態)
図8に示すように、本実施形態における燃焼器3において、パイロットノズル35は、燃料噴射口41の周囲に周方向に間隔をあけて形成された複数の水噴射口42のうち、周方向の一部の領域の水噴射口42Eは、その開口径D1が、残る他の領域にある水噴射口42Fの開口径D2と異なるよう形成されている。例えば、一部の水噴射口42Eの開口径D1が、残る他の水噴射口42Fの開口径D2よりも、大きくなるよう形成されている。
【0033】
これにより、水噴射口42から噴射される水は、周方向の一部の領域にある水噴射口42Eでは、それ以外の水噴射口42Fよりも、噴射量が多くなる。
【0034】
したがって、図3に示したように、中央の燃料噴射口41から噴射される燃料により生成される火炎F1に対し、その外周側に向けて水噴射口42から噴射される水は、周方向において不均等に噴射されることとなる。すると、火炎F1の軸方向位置が周方向において一様ではなくなる。
これによって、メインバーナ34から噴出される燃料に火炎F1が伝搬し、燃料が着火する位置が、中心軸Oに沿った方向に異なることとなる。すると、図6に示すように、燃焼器3内において、メイン火炎による発熱率が、周方向において、中心軸O方向に沿って分散する。
その結果、火炎F1や、メイン火炎による一つの振動モードによる加振力を抑えることができる。その結果、燃焼振動を有効に抑えることが可能となる。
【0035】
(第四実施形態)
図9に示すように、本実施形態における燃焼器3において、パイロットノズル35は、燃料噴射口41の周囲に周方向に間隔をあけて形成された複数の水噴射口42のうち、周方向の一部の領域の水噴射口42Gは、パイロットノズル35の径方向における位置が、残る他の領域にある水噴射口42Hの開口径D2と異なるよう形成されている。例えば、一部の水噴射口42Gの開口径D1が、残る他の水噴射口42Hの開口径D2よりも、パイロットノズル35の径方向外周側に配置されている。
【0036】
これにより、水噴射口42から噴射される水は、周方向の一部の領域にある水噴射口42Gでは、それ以外の水噴射口42Hよりも、火炎F1の生成方向下流側で火炎F1の外縁部に到達する。
【0037】
したがって、図3に示したように、中央の燃料噴射口41から噴射される燃料により生成される火炎F1に対し、その外周側に向けて水噴射口42から噴射される水は、周方向において不均等に噴射されることとなる。すると、火炎F1の軸方向位置が周方向において一様ではなくなる。
これによって、メインバーナ34から噴出される燃料に火炎F1が伝搬し、燃料が着火する位置が、中心軸Oに沿った方向に異なることとなる。すると、図6に示すように、燃焼器3内において、メイン火炎による発熱率が、周方向において、中心軸O方向に沿って分散する。
その結果、火炎F1や、メイン火炎による一つの振動モードによる加振力を抑えることができる。その結果、燃焼振動を有効に抑えることが可能となる。
【0038】
(第五実施形態)
図10に示すように、本実施形態における燃焼器3において、パイロットノズル35は、燃料噴射口41の周囲に周方向に間隔をあけて形成された複数の水噴射口42のうち、周方向の一部の領域の水噴射口42Jは、パイロットノズル35の周方向における設置間隔が、残る他の領域にある水噴射口42Kの設置間隔とは異なるよう形成されている。例えば、一部の領域の水噴射口42Jの周方向における設置間隔P1が、残る他の領域における水噴射口42Kの設置間隔P2よりも小さくなるよう形成されている。
【0039】
これにより、水噴射口42から噴射される水は、周方向の一部の領域にある水噴射口42Jでは、それ以外の水噴射口42Kよりも、その噴射量(噴射密度)が大きくなる。
【0040】
したがって、図3に示したように、中央の燃料噴射口41から噴射される燃料により生成される火炎F1に対し、その外周側に向けて水噴射口42から噴射される水は、周方向において不均等に噴射されることとなる。すると、火炎F1の軸方向位置が周方向において一様ではなくなる。
これによって、メインバーナ34から噴出される燃料に火炎F1が伝搬し、燃料が着火する位置が、中心軸Oに沿った方向に異なることとなる。すると、図6に示すように、燃焼器3内において、メイン火炎による発熱率が、周方向において、中心軸O方向に沿って分散する。
その結果、火炎F1や、メイン火炎による一つの振動モードによる加振力を抑えることができる。その結果、燃焼振動を有効に抑えることが可能となる。
【0041】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、複数の水噴射口42は、周方向に不均等に形成する例として、周方向の一部の領域の水噴射口42A,42C,42E,42G,42Jと、周方向の残る他の領域の水噴射口42B,42D,42F,42H,42Kとに分けたが、これに限るものではない。周方向において、より多くの区分に分けて、水噴射口42を不均等に形成してもよい。
さらに、複数の水噴射口42の傾斜角度、開口径、径方向の位置、設置間隔を、周方向の一部の領域と残る他の領域とで、2段階に形成したが、3段階以上に形成してもよい。
加えて、上記第一〜第五実施形態を適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、パイロットノズル35に燃料噴射口41とともに複数の水噴射口42を形成したが、パイロットノズル35とは別に、その外周側に水噴射口42を設けてもよい。
さらに、上記実施形態では、燃焼器3が、中央部にパイロットノズル35を有し、外周側に複数のメインノズル37を備える構成としたが、燃焼器3を構成するノズルの少なくとも一つに本発明の構成が適用されているのであれば、燃焼器3はいかなる構成であってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ガスタービン
3 燃焼器
4 タービン本体
31 内筒
32 外筒
33 パイロットバーナ
34 メインバーナ
35 パイロットノズル(ノズル)
35s 先端面(先端)
37 メインノズル
41 燃料噴射口
42 水噴射口
42A,42C,42E,42G,42J 水噴射口
42B,42D,42F,42H,42K 水噴射口
F1 火炎
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10