特許第6086870号(P6086870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086870
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】電機子および直流モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 23/36 20060101AFI20170220BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   H02K23/36
   H02K3/04 Z
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-545572(P2013-545572)
(86)(22)【出願日】2013年5月10日
(86)【国際出願番号】JP2013003004
(87)【国際公開番号】WO2013168435
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-109152(P2012-109152)
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩
(72)【発明者】
【氏名】村本 崇
(72)【発明者】
【氏名】荻野 久史
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−117702(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/036724(WO,A1)
【文献】 特開2011−055655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 23/00− 23/68
H02K 3/00− 3/52
H02K 13/00− 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に放射状に設けられた複数のティースを有するコアと、
2以上のティースを一組として組毎に巻き回された複数のコイルと、を備えた電機子であって、
前記コアの中心を貫通するシャフトと、
前記シャフトに固定され、前記電機子とともに回転する整流子と、を更に備え、
前記複数のコイルは、
ティースの回転軸側に配置されている複数の内側コイルと、
前記内側コイルの外側に配置されている複数の外側コイルと、を有し、
前記複数の内側コイルは、隣接する内側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されており、
前記複数の外側コイルは、隣接する外側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されており、
前記外側コイルは、前記内側コイルが巻き回されているティースの組合せとは異なる組合せのティースに巻き回されており、
前記整流子は、前記内側コイルまたは前記外側コイルと同数のセグメントに分割されていることを特徴とする電機子。
【請求項2】
前記セグメントは、少なくとも前記内側コイルの一端が係止される第1の係止部と、少なくとも前記外側コイルの一端が係止される第2の係止部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電機子。
【請求項3】
前記複数のコイルは、一筆書きとなるように結線されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電機子。
【請求項4】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングの内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子と、
前記固定子に対向配置された請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電機子と、
整流子の外周面を摺動するように設けられている一対または複数対のブラシと、
を備えた直流モータ。
【請求項5】
周方向に順に形成された第1〜第6スリットを有するコアと、
第1スリットおよび第3スリットの間に巻き回された第1内側コイルと、
第5スリットおよび第1スリットの間に巻き回された第2内側コイルと、
第3スリットおよび第5スリットの間に巻き回された第3内側コイルと、
第6スリットおよび第2スリットの間に巻き回された第1外側コイルと、
第2スリットおよび第4スリットの間に巻き回された第2外側コイルと、
第4スリットおよび第6スリットの間に巻き回された第3外側コイルと、
前記コアの中心を貫通するシャフトと、
前記シャフトに固定され、電機子とともに回転する整流子と、を有し、
前記第1内側コイル、前記第2内側コイルおよび第3内側コイルは、回転軸の軸線方向から見て三角形となるように各スリットの回転軸側に配置されており、
前記第1外側コイル、前記第2外側コイルおよび第3外側コイルは、前記第1内側コイル、前記第2内側コイルおよび第3内側コイルを囲むように、回転軸の軸線方向から見て三角形となるように配置されており、
前記整流子は、周方向に第1セグメント、第2セグメントおよび第3セグメントの3つに区分されており、
前記第1セグメントと前記第2セグメントとの間には、第2内側コイルと第2外側コイルが並列に接続されており、前記第2セグメントと前記第3セグメントとの間には、前記第1内側コイルと前記第3外側コイルが並列に接続されており、前記第3セグメントと前記第1セグメントとの間には、第3内側コイルと第1外側コイルが並列に接続されている、
ことを特徴とする電機子。
【請求項6】
前記第1内側コイル、前記第2内側コイル、前記第3内側コイル、前記第1外側コイル、前記第2外側コイルおよび前記第3外側コイルの順に一筆書きとなるように結線されていることを特徴とする請求項5に記載の電機子。
【請求項7】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングの内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子と、
前記固定子に対向配置された請求項5または6に記載の電機子と、
整流子の外周面を摺動するように設けられている一対のブラシと、を備え、
前記電機子は、
前記一対のブラシの一方が前記第1セグメントのみに接し、前記一対のブラシの他方が第2セグメントのみに接している場合、前記第1セグメントと前記第2セグメントとの間で、
前記第1内側コイルおよび前記第3外側コイルは互いに並列に接続され、
前記第2内側コイルおよび前記第2外側コイルは互いに並列に接続され、
前記第3内側コイルおよび前記第1外側コイルは互いに並列に接続され、
前記第1内側コイルおよび前記第3内側コイルは互いに直列に接続され、
前記第1外側コイルおよび前記第3外側コイルは互いに直列に接続され、
前記第1内側コイル、前記第3外側コイル、前記第2内側コイルおよび前記第2外側コイルは互いに並列に接続され、
前記一対のブラシの一方が前記第1セグメントのみに接し、前記一対のブラシの他方が第2セグメントおよび第3セグメントの両方に接している場合、前記第1セグメントと前記第2セグメントおよび前記第3セグメントとの間で、
前記第1外側コイル、前記第2内側コイル、前記第2外側コイルおよび前記第3内側コイルは、互いに並列に接続されている、
ことを特徴とする直流モータ。
【請求項8】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングの内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子と、
前記固定子に対向配置された請求項5または6に記載の電機子と、
整流子の外周面を摺動するように設けられている一対のブラシと、を備え、
前記電機子は、前記一対のブラシが整流子と接している状態で、前記第1内側コイル、前記第2内側コイル、前記第3内側コイル、前記第1外側コイル、前記第2外側コイルおよび前記第3外側コイルのうち少なくとも4つのコイルが互いに並列に接続される、
ことを特徴とする直流モータ。
【請求項9】
回転軸を中心に放射状に設けられたm個(mは偶数)のティースを有するコアと、
m/2個のセグメントと、
2以上のティースを一組として組毎に巻き回された複数のコイルと、を備え、
前記複数のコイルは、
軸方向から見て平行に配置された一対のコイルを有し、該一対のコイルのそれぞれの中心を通る直線に対し線対称となるように配置されており、かつ、
一対のセグメント間に2つのコイルが並列に接続されている、
ことを特徴とする電機子。
【請求項10】
一対のセグメント間に並列に接続された前記2つのコイルは、回転軸と直交する一つの直線を挟んで180°対向するように配置されている、
ことを特徴とする請求項に記載の電機子。
【請求項11】
前記ティースの数は6個であり、前記コイルの数は6個であることを特徴とする請求項または10に記載の電機子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子およびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や事務機器などの様々な用途においてモータが使用されている。モータには、複数のコイルが巻回された電機子が設けられており、モータを製造する際には、電機子のコアの溝に銅線を巻回する必要がある。
【0003】
銅線をコアに巻回する方法や装置は、種々考案されている。例えば、中心部に回転子軸を固着した貫通孔を有する回転子軸外周部と、該回転子軸外周部より径方向に向かって突出する突出部と、該突出部との先端から周方向に向かって延出する先端部とによって多数形成された略T字型の磁極部とよりなるアーマチュアコアの該磁極部間に形成されるスロットのうちの任意のスロットと、該任意のスロットに隣接するスロットを飛び越した他の任意のスロットとの間に、所定の巻数(N)のアーマチュアコイルを順次多数巻装するようにした直流モータ回転子が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−285854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のモータ回転子においては、後から巻いたアーマチュアコイルは、その内側に既に巻かれているアーマチュアコイルと干渉してしまうため、既に巻かれているアーマチュアコイルと同じ巻姿にならない。そのため、モータ全体において、複数のコイルの配置が片寄ることで、モータのトルク特性や振動などに影響を与える可能性がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータの特性の更なる改善を可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電機子は、回転軸を中心に放射状に設けられた複数のティースを有するコアと、2以上のティースを一組として組毎に巻き回された複数のコイルを備える。複数のコイルは、ティースの回転軸側に配置されている複数の内側コイルと、内側コイルの外側に配置されている複数の外側コイルと、を有する。複数の内側コイルは、隣接する内側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されており、複数の外側コイルは、隣接する外側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されており、外側コイルは、内側コイルが巻き回されているティースの組合せとは異なる組合せのティースに巻き回されている。
【0008】
本発明の別の態様もまた、電機子である。この電機子は、回転軸を中心に放射状に設けられたm個(mは6以上の整数)のティースを有するコアと、n個(nはm/nが3以上となる整数)のティースを一組として組毎に巻き回された複数のコイルを備える。複数のコイルは、ティースの回転軸側に配置されているm/n個の内側コイルと、内側コイルの外側に配置されているm/n個の外側コイルと、を有する。m/n個の内側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、m/n個の外側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、外側コイルは、回転軸を中心に、隣接する内側コイルに対して位相が(360°/m)変化した位置に配置されている。前述の外側コイルの外側に、更にコイルを配置してもよい。この時、内側コイルを第1層、この第1層に隣接する外側コイルを第2層、この第2層の外側に隣接する外側コイルを第3層、この第3層の外側に隣接する外側コイルを第4層とすると、層数はm/(m/n)で表すことができる。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、直流モータである。この直流モータは、筒状のハウジングと、ハウジングの内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子と、固定子に対向配置された電機子と、整流子の外周面を摺動するように設けられている一対又は複数対のブラシと、を備えている。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータの特性を更に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る直流モータの正面図である。
図2】直流モータの分解斜視図である。
図3図1のA−A矢視断面図である。
図4】本実施の形態に係る電機子に用いられるコアの正面図である。
図5】本実施の形態に係るコアにコイルを巻き回した電機子の状態を示す模式図である。
図6】比較例としての分布巻きと呼ばれるコイルの巻き方を説明する図である。
図7】比較例としてのダブル巻きと呼ばれるコイルの巻き方を説明する図である。
図8】本実施の形態に係るコイルの巻き方を説明するための図である。
図9図9(a)は、実施例1に係る電機子の構成を模式的に示した図、図9(b)は、実施例2に係る電機子の構成を模式的に示した図、図9(c)は、実施例3に係る電機子の構成を模式的に示した図である。
図10図10(a)は、実施例4に係る電機子の構成を模式的に示した図、図10(b)は、実施例5に係る電機子の構成を模式的に示した図、図10(c)は、実施例6に係る電機子の構成を模式的に示した図である。
図11図11(a)は、図7に示した電機子のコミテータにブラシが接触した状態を示す模式図、図11(b)は、図11(a)に示した電機子が30°回転した状態を示す模式図である。
図12図12(a)は、図11(a)に示した状態の電機子における回路構成を示す図、図12(b)は、図11(b)に示した状態の電機子における回路構成を示す図である。
図13図13(a)は、図8に示した電機子のコミテータにブラシが接触した状態を示す模式図、図13(b)は、図13(a)に示した電機子が30°回転した状態を示す模式図である。
図14図14(a)は、図13(a)に示した状態の電機子における回路構成を示す図、図14(b)は、図13(b)に示した状態の電機子における回路構成を示す図である。
図15】本実施の形態の変形例に係るコイルの巻き方を説明するための図である。
図16】本実施の形態の他の変形例に係るコイルの巻き方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る電機子は、回転軸を中心に放射状に設けられた複数のティースを有するコアと、2以上のティースを一組として組毎に巻き回された複数のコイルを備える。複数のコイルは、ティースの回転軸側に配置されている複数の内側コイルと、内側コイルの外側に配置されている複数の外側コイルと、を有する。複数の内側コイルは、隣接する内側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されており、複数の外側コイルは、隣接する外側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されており、外側コイルは、内側コイルが巻き回されているティースの組合せとは異なる組合せのティースに巻き回されている。
【0014】
この実施の形態によると、ティースの回転軸側に配置されている複数の内側コイルは、隣接する内側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されている。つまり、複数の内側コイルは、互いに余り干渉せずに所定のティースに巻き回されるため、コイル同士の干渉による配置の片寄りが少なく、対称性の高い(バランスのよい)コイルの配置が可能となる。同様に、複数の外側コイルは、隣接する外側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されている。つまり、複数の外側コイルは、互いに余り干渉せずに所定のティースに巻き回されるため、コイル同士の干渉による配置の片寄りが少なく、対称性の高い(バランスのよい)コイルの配置が可能となる。また、外側コイルは、内側コイルが巻き回されているティースの組合せとは異なる組合せのティースに巻き回されているため、トルク変動の滑らかな回転特性が得られる。
【0015】
ここで、ティースは、コイルを巻き回すことができる形状であればよく、例えば、回転軸に垂直な断面形状がコアの径方向に延びたアーム(I)状のものや、その先端が周方向両側に分岐したT字状のものであってもよい。また、外側コイルが巻き回される「異なる組合せのティース」とは、内側コイルが巻き回されているティースのすべてと異なっている場合だけではなく、一部のティースが異なっている場合も含む。また、「環状」とは、円形の場合だけでなく、例えば、三角形、四角形、五角形等の多角形状を含んでもよい。
【0016】
別の実施の形態もまた、電機子である。この電機子は、回転軸を中心に放射状に設けられたm個(mは6以上の整数)のティースを有するコアと、n個(nはm/nが3以上となる整数)のティースを一組として組毎に巻き回された複数のコイルを備える。複数のコイルは、ティースの回転軸側に配置されているm/n個の内側コイルと、内側コイルの外側に配置されているm/n個の外側コイルと、を有する。m/n個の内側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、m/n個の外側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、外側コイルは、回転軸を中心に、隣接する内側コイルに対して位相が(360°/m)変化した位置に配置されている。前述の外側コイルの外側に、更にコイルを配置してもよい。この時、内側コイルを第1層、この第1層に隣接する外側コイルを第2層、この第2層の外側に隣接する外側コイルを第3層、この第3層の外側に隣接する外側コイルを第4層とすると、層数はm/(m/n)で表すことができる。
【0017】
この実施の形態によると、m/n個の内側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、m/n個の外側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、内側コイルと外側コイルとは互いに似た多角形状に配置されている。また、外側コイルは、回転軸を中心に、隣接する内側コイルに対して位相が(360°/m)変化した位置に配置されている。そのため、各コイルは、回転軸を中心に均等な角度に配置されることから、トルク変動の滑らかな回転特性が得られる。
【0018】
隣り合ったティースの間に形成されたスリットのうち内側コイルが挿入されていない複数のスリットにおいて、外側コイルより回転軸側に形成された空間の形状が実質的に同一であってもよい。これにより、電機子が回転する際のバランスがよくなり、このような電機子をモータに使用した場合の振動が抑制される。
【0019】
空間がS個の場合、複数のコイルが回転軸を中心にS回点対称となるように設けられていてもよい。これにより、電機子が回転する際のバランスがよくなり、このような電機子をモータに使用した場合の振動が抑制される。
【0020】
コアの中心を貫通するシャフトと、シャフトに固定され、電機子とともに回転する整流子と、を更に備えてもよい。整流子は、ティースの数と同数のセグメントを有していてもよい。もしくは、整流子は、内側コイル又は外側コイルと同数以下のセグメントに分割されていてもよい。これにより、整流子のセグメントの数がコイルの総数の半分以下で済み、一つのセグメントのサイズを大きくできるため、整流子の製造が容易となり、また、組み立てる際の作業性も向上できる。
【0021】
セグメントは、少なくとも内側コイルの一端が係止される第1の係止部と、少なくとも外側コイルの一端が係止される第2の係止部と、を有してもよい。これにより、一つのセグメントに複数のコイルの一端を係止させる必要がある場合であっても、同じ係止部に係止させなくても済む。そのため、係止部の大きさを小さくできる。また、他のコイルの一端が係止されている状態で、次のコイルの一端を係止させる場合と比べて、製造が容易となる。
【0022】
複数のコイルは、一筆書きとなるように結線されていてもよい。これにより、ダブルフライヤと呼ばれる2つのコイルを同時に巻くことができる装置を用いずに、より安価な装置で電機子を製造できる。
【0023】
さらに別の実施の形態は、直流モータである。この直流モータは、筒状のハウジングと、ハウジングの内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子と、固定子に対向配置された電機子と、整流子の外周面を摺動するように設けられている一対又は複数対のブラシと、を備えている。これにより、従来より特性が改善された直流モータが実現できる。
【0024】
さらに別の実施の形態は、電機子である。この電機子は、回転軸を中心に放射状に設けられたm個(mは偶数)のティースを有するコアと、m/2個のセグメントと、2以上のティースを一組として組毎に巻き回された複数のコイルと、を備える。複数のコイルは、軸方向から見て平行に配置された一対のコイルを有し、該一対のコイルのそれぞれの中心を通る直線に対し線対称となるように配置されており、かつ、一対のセグメント間に2つのコイルが並列に接続されている。
【0025】
この実施の形態によると、複数のコイルが線対称となるように配置されており、回転中における安定性が増す。
【0026】
一対のセグメント間に並列に接続された2つのコイルは、回転軸と直交する一つの直線を挟んで180°対向するように配置されているとよい。また、ティースの数は、例えば、6個である。また、コイルの数は、例えば、6個である。
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0028】
(直流モータ)
はじめに、直流モータ(以下、適宜「モータ」という。)の概略構成を説明する。図1は、実施の形態に係る直流モータの正面図である。図2は、直流モータの分解斜視図である。図3は、図1のA−A矢視断面図である。なお、図1図3に示すモータの構成は、あくまでも例示であり、本実施の形態に係る電機子の構成がこれに限られるものではない。
【0029】
図1および図2に示すように、モータ10は、筒状のハウジング12の内部に回転子14が収容されて構成されている。ハウジング12は、有底筒状の金属ケース16と、筒状の樹脂製のブラシホルダ18とを組み付けて構成される。金属ケース16は、磁気回路を形成するヨークとしても機能し、その内周面には筒状の界磁マグネット(単に「マグネット」という)20が固定され、共に固定子を構成している。本実施の形態に係るマグネット20は2極であるが、極数や配置はこれに限られない。金属ケース16の底部中央にはボス部17が外方にやや突出するように形成され、後述する軸受を収容している。
【0030】
回転子14は、回転軸となるシャフト22の一端側半部に、電機子24、コミテータ26、検出用マグネット28等が設けられて構成される。ブラシホルダ18には、コミテータ26に対向配置される一対のカーボンブラシ30が配設されている。ブラシホルダ18には、図示しない電装品と電気的に接続するためのコネクタ32が着脱可能に取り付けられる。
【0031】
ブラシホルダ18は、コネクタ32を取り付けたブラシホルダ組立体の状態で金属ケース16に挿入されるようにして組み付けられる。金属ケース16の開口端近傍の側面には切り欠き部34,35が設けられており、ブラシホルダ組立体を組み付ける際にコネクタ32およびブラシホルダ18の所定箇所が切り欠き部34,35の各基端部にそれぞれ係止されることにより適切な位置決めがなされる。
【0032】
このようにブラシホルダ組立体を組み付けた後、金属ケース16の開口部をエンドプレート36により封止する。エンドプレート36は、金属ケース16の開口部とほぼ同形状の外形を有し、その開口部に挿通嵌合される。エンドプレート36は、金属ケース16内に挿入された後にエンドプレート36の開口端が内方に加締められることにより、金属ケース16に対して固定される。エンドプレート36の周縁部には互いに反対側に延出する一対のフランジ部38が設けられ、各フランジ部38が電装品への取り付け部を形成している。
【0033】
エンドプレート36の中央にはボス部39が外方にやや突出するように形成され、リング状であって潤滑用のオイルを含浸したいわゆるオイルレスメタルからなる滑り軸受37が圧入されている。ボス部39の底部にはその滑り軸受37と同軸状に挿通孔が設けられている。シャフト22の他端側半部は、この挿通孔を貫通して外部に露出し、図示しないギア等を介して駆動対象に接続される。なお、滑り軸受37をエンドプレート36ではなくブラシホルダ18に設けることもできるが、金属からなるエンドプレート36にて保持する本実施例の構成は、樹脂と比べて温度湿度変化に強く、モータ使用温度湿度環境の変化による体積の膨張収縮が小さいのでシャフト22の同軸度を向上させることができ、回転子14を高精度で安定した回転状態を保持することができる。
【0034】
図3に示すように、金属ケース16、ブラシホルダ18、およびコネクタ32に囲まれるようにしてハウジング12の内部空間が形成される。エンドプレート36のボス部39には上述した滑り軸受37が圧入され、シャフト22の挿通孔40近傍の部分を回転自在に軸支している。一方、金属ケース16のボス部17には、滑り軸受けであって外形形状が球形である球形滑り軸受け41が同軸状に内挿嵌合された有底筒状の軸受ホルダ42が配置されている。球形滑り軸受け41は、シャフト22の一端部に圧入されている。軸受ホルダ42の底部中央には断面三角形状の凸部43が設けられ、ボス部17の底部に設けられた同形状の凹部44に嵌合することで、その軸線周りの回動が阻止されている。つまり、これら凸部43および凹部44により軸受ホルダ42の回り止め構造が実現されている。また、球形滑り軸受け41が、その外周の曲面部において軸受ホルダ42に相対的に回動可能となっている。すなわち、シャフト22と同軸の球形滑り軸受け41の軸線が軸受ホルダ42の軸線と所定角度の傾きを許容する構成となっており、シャフト22の回転により自動調心がなされるようになっている。
【0035】
電機子24は、シャフト22に圧入されたコア46と、コア46に巻回された巻線48を含んで構成されており、コア46の外周面がマグネット20の内周面と所定のクリアランス(磁気ギャップ)をあけて対向配置されている。これらマグネット20およびコア46による磁極構成の詳細については後述する。
【0036】
シャフト22における電機子24と滑り軸受37との間には、電機子24側から順にコミテータ26、検出用マグネット28、ブッシュ50が並設されている。コミテータ26は、円筒状をなし、コネクタ32が金属ケース16に組み付けられた際にカーボンブラシ30に対向配置される位置にてシャフト22に圧入されている。ブラシホルダ18には筒状のカーボンホルダ31が固定されており、カーボンブラシ30は、このカーボンホルダ31に内挿されて支持されている。
【0037】
検出用マグネット28は、コミテータ26よりも外径がやや小さな円筒状をなし、コミテータ26に軸線方向に当接するようにシャフト22に挿通されている。コネクタ32の下面にはホール素子52が配設されており、コネクタ32が金属ケース16に組み付けられた際には、そのホール素子52が検出用マグネット28に対向配置される。検出用マグネット28がコミテータ26よりもやや小さく構成されることで、シャフト22が他端側からブラシホルダ18に挿通される際に検出用マグネット28がカーボンブラシ30に干渉するのが防止される。また、検出用マグネット28をコミテータ26よりも小さな範囲で大きくすることで、ホール素子52に近接配置できるようにされている。
【0038】
検出用マグネット28は、回転に伴ってその外周面にN極とS極とが交互に現れるように2極に着磁されており、ホール素子52がその検出用マグネット28の回転に伴う磁極の切り替わり(境界)を検出してパルス信号を出力する。所定期間におけるそのパルス信号の数を取得することにより、モータ10の回転数を検出することができる。なお、本実施例では検出用マグネット28を2極着磁としたが、例えば4極着磁等その他の偶数極数に設定してもよい。
【0039】
検出用マグネット28のブッシュ50との対向面には、断面四角形状の凹部54が設けられている。一方、ブッシュ50は、その凹部54と相補形状の外形を有する段付柱状をなしている。ブッシュ50は、その先端部を凹部54に嵌合させるようにシャフト22に圧入されており、その結果、検出用マグネット28のシャフト22に対する回転が防止されている。ブッシュ50は、鉄などの磁性材料からなり、検出用マグネット28の磁力を安定化させるバックヨークとしても機能する。
【0040】
(電機子)
次に、本実施の形態に係る電機子について詳述する。図4は、本実施の形態に係る電機子に用いられるコアの正面図である。本実施の形態に係るコア100は、所定の形状の電磁鋼板を複数積層して作成されている。
【0041】
図4に示すコア100は、回転軸Cを中心に放射状に設けられた6つのティースT1〜T6を有する。また、コア100の各ティースの間には、周方向に順に第1スリットS1〜第6スリットS6が形成されている。ティースT1〜T6は、コイルを巻き回すことができる形状であればよく、例えば、回転軸に垂直な断面形状がコアの径方向Lに延びたアーム(I)状のものや、その先端が周方向両側に分岐したT字状のものであってもよい。
【0042】
図5は、本実施の形態に係るコアにコイルを巻き回した電機子の状態を示す模式図である。電機子24は、第1スリットS1および第3スリットS3の間に巻き回された第1内側コイルC1と、第5スリットS5および第1スリットS1の間に巻き回された第2内側コイルC2と、第3スリットS3および第5スリットS5の間に巻き回された第3内側コイルC3と、第6スリットS6および第2スリットS2の間に巻き回された第1外側コイルC1’と、第2スリットS2および第4スリットS4の間に巻き回された第2外側コイルC2’と、第4スリットS4および第6スリットS6の間に巻き回された第3外側コイルC3’と、を有する。
【0043】
第1内側コイルC1、第2内側コイルC2および第3内側コイルC3は、回転軸Cの軸線方向から見て略正三角形となるように各スリットの回転軸側に配置されており、第1外側コイルC1’、第2外側コイルC2’および第3外側コイルC3’は、第1内側コイルC1、第2内側コイルC2および第3内側コイルC3を囲むように、回転軸Cの軸線方向から見て略正三角形となるように配置されている。
【0044】
このように構成されている電機子24は、3つの内側コイルC1,C2,C3は、互いに余り干渉せずに略正三角形に配置されているため、コイル同士の干渉による配置の片寄りが少なく、対称性の高い(バランスのよい)コイルの配置が可能となる。同様に、3つの外側コイルC1’,C2’,C3’は、互いに余り干渉せずに略正三角形に配置されているため、コイル同士の干渉による配置の片寄りが少なく、対称性の高い(バランスのよい)コイルの配置が可能となる。そのため、電機子24を備えたモータ10は、回転時の重量バランスがよく、モータの振動や異音が低減されるため、モータ特性が更に改善する。
【0045】
次に、本実施の形態に係る電機子におけるコイルの巻き方について説明する。本実施の形態に係るコイルの巻き方は、従来の方法では得られない多様な効果を有する。図6は、比較例としての分布巻きと呼ばれるコイルの巻き方を説明する図である。
【0046】
図6に示すように、はじめに、ティースT1とティースT2を囲むように第1スリットS1と第3スリットS3とに繰り返し銅線を通し、第1コイルC11を形成する。
【0047】
第1コイルC11を形成し終えると、次に、ティースT2とティースT3を囲むように第2スリットS2と第4スリットS4とに繰り返し銅線を通し、第2コイルC12を形成する。この際、ティースT2の基部には既に第1コイルC11が巻かれているため、第2スリットS2において、第2コイルC12は第1コイルC11と干渉する。その結果、ティースT2とティースT3とでは、第2コイルC12が巻き回されている位置がずれる。
【0048】
第2コイルC12を形成し終えると、次に、ティースT3とティースT4を囲むように第3スリットS3と第5スリットS5とに繰り返し銅線を通し、第3コイルC13を形成する。この際、ティースT3の基部には既に第2コイルC12が巻かれているため、第3スリットS3において、第3コイルC13は第2コイルC12と干渉する。その結果、ティースT3とティースT4とでは、第3コイルC13が巻き回されている位置がずれる。
【0049】
第3コイルC13を形成し終えると、次に、ティースT4とティースT5を囲むように第4スリットS4と第6スリットS6とに繰り返し銅線を通し、第4コイルC14を形成する。この際、ティースT4の基部には既に第3コイルC13が巻かれているため、第4スリットS4において、第4コイルC14は第3コイルC13と干渉する。その結果、ティースT4とティースT5とでは、第4コイルC14が巻き回されている位置がずれる。
【0050】
第4コイルC14を形成し終えると、次に、ティースT5とティースT6を囲むように第5スリットS5と第1スリットS1とに繰り返し銅線を通し、第5コイルC15を形成する。この際、ティースT5の基部には既に第4コイルC14が巻かれているため、第5スリットS5において、第5コイルC15は第4コイルC14と干渉する。その結果、ティースT5とティースT6とでは、第5コイルC15が巻き回されている位置がずれる。
【0051】
第5コイルC15を形成し終えると、次に、ティースT6とティースT1を囲むように第6スリットS6と第2スリットS2とに繰り返し銅線を通し、第6コイルC16を形成する。この際、ティースT6の基部には既に第5コイルC15が巻かれており、ティースT1の基部には既に第1コイルC11が巻かれているため、第6スリットS6において、第6コイルC16は第5コイルC15と干渉し、第2スリットS2において、第6コイルC16は第1コイルC11と干渉する。その結果、ティースT6とティースT1とでは、第6コイルC16が巻き回されている位置がずれる可能性がある。
【0052】
このような分布巻きで作製した電機子102において、第1コイルC11、第6コイルC16の2つのコイルを除いた他の4つのコイルC12〜C15は、コア100の径方向に対して垂直に設けられておらず、またその角度もばらばらである。また、各コイルの中心(重心)と回転軸Cとの距離もそれぞれ異なる。加えて、第2スリットS2〜第6スリットS6には、コイルが存在しない空間V12〜V16が形成されているが、この形状も同一ではない。そのため、分布巻きで作製した電機子102を用いたモータは、コイルの配置の片寄りに改善の余地があった。
【0053】
図7は、比較例としてのダブル巻きと呼ばれるコイルの巻き方を説明する図である。ダブル巻きは、ダブルフライヤ装置を用いて、一度に2つの銅線を巻きながらコイルを形成していく方法である。
【0054】
図7に示すように、はじめに、ティースT1とティースT2を囲むように第1スリットS1と第3スリットS3とに繰り返し銅線を通し、第1コイルC21を形成するとともに、ティースT4とティースT5を囲むように第4スリットS4と第6スリットS6とに繰り返し銅線を通し、もう一つの第1コイルC21’を同時に形成する。
【0055】
第1コイルC21,C21’を形成し終えると、次に、ティースT2とティースT3を囲むように第2スリットS2と第4スリットS4とに繰り返し銅線を通し、第2コイルC22を形成するとともに、ティースT5とティースT6を囲むように第5スリットS5と第1スリットS1とに繰り返し銅線を通し、もう一つの第2コイルC22’を同時に形成する。この際、ティースT2の基部には既に第1コイルC21が巻かれているため、第2スリットS2において、第2コイルC22は第1コイルC21と干渉する。その結果、ティースT2とティースT3とでは、第2コイルC22が巻き回されている位置がずれる。同様に、ティースT5の基部には既に第1コイルC21’が巻かれているため、第5スリットS5において、第2コイルC22’は第1コイルC21’と干渉する。その結果、ティースT5とティースT6とでは、第2コイルC22’が巻き回されている位置がずれる。
【0056】
第2コイルC22,C22’を形成し終えると、次に、ティースT3とティースT4を囲むように第3スリットS3と第5スリットS5とに繰り返し銅線を通し、第3コイルC23を形成するとともに、ティースT6とティースT1を囲むように第6スリットS6と第2スリットS2とに繰り返し銅線を通し、もう一つの第3コイルC23’を同時に形成する。この際、ティースT3の基部には既に第2コイルC22が巻かれており、ティースT4の基部には既に第1コイルC21’が巻かれているため、第3スリットS3、第5スリットS5において、第3コイルC23は第2コイルC22、第1コイルC21’と干渉する。その結果、ティースT3とティースT4とでは、第3コイルC23が巻き回されている位置がずれる可能性がある。同様に、ティースT6の基部には既に第2コイルC22’が巻かれており、ティースT1の基部には既に第1コイルC21が巻かれているため、第6スリットS6、第2スリットS2において、第3コイルC23’は第2コイルC22’、第1コイルC21と干渉する。その結果、ティースT6とティースT1とでは、第3コイルC23’が巻き回されている位置がずれる可能性がある。
【0057】
このようなダブル巻きで作製した電機子104において、第1コイルC21,C21’、第3コイルC23,C23’を除いた他の2つのコイルC22,C22’は、コア100の径方向に対して垂直に設けられておらず、またその角度もばらばらである。また、第1コイルC21(C21’)、第2コイルC22(C22’)、第3コイルC23(C23’)の中心(重心)と回転軸Cとの距離もそれぞれ異なる。加えて、第2スリットS2、第3スリットS3、第5スリットS5、第6スリットS6には、コイルが存在しない空間V22,V23,V25,V26が形成されているが、この形状も同一ではない。そのため、ダブル巻きで作製した電機子104を用いたモータは、分布巻きで作製した電機子102と比較して、コイルの配置の片寄りは改善はされているが、改善の余地がまだ残っている。また、ダブル巻きはダブルフライヤ装置を用いる必要があり、製造装置のコストが上昇するという問題もある。
【0058】
本発明者らは、これらの巻き方から得た知見に基づいて、コイルの配置の片寄りを更に改善できる巻き方を考案した。
【0059】
図8は、本実施の形態に係るコイルの巻き方を説明するための図である。図8に示すように、はじめに、ティースT1とティースT2を囲むように第1スリットS1と第3スリットS3とに繰り返し銅線を通し、第1内側コイルC1を形成する。
【0060】
第1内側コイルC1を形成し終えると、次に、ティースT5とティースT6を囲むように第5スリットS5と第1スリットS1とに繰り返し銅線を通し、第2内側コイルC2を形成する。この際、ティースT5およびティースT6の基部には他のコイルが巻かれていないため、第2内側コイルC2は、他のコイルと干渉せず、ティースT5およびティースT6の基部に巻かれることになる。
【0061】
第2内側コイルC2を形成し終えると、次に、ティースT3とティースT4を囲むように第3スリットS3と第5スリットS5とに繰り返し銅線を通し、第3内側コイルC3を形成する。この際、ティースT3およびティースT4の基部には他のコイルが巻かれていないため、第3内側コイルC3は、他のコイルと干渉せず、ティースT3およびティースT4の基部に巻かれることになる。
【0062】
第3内側コイルC3を形成し終えると、次に、ティースT6とティースT1を囲むように第6スリットS6と第2スリットS2とに繰り返し銅線を通し、第1外側コイルC1’を形成する。この際、ティースT6の基部には第2内側コイルC2が巻かれており、ティースT1の基部には第1内側コイルC1が巻かれているため、第1外側コイルC1’は、第6スリットS6において第2内側コイルC2と干渉し、第2スリットS2において第1内側コイルC1と干渉する。しかしながら、第1内側コイルC1および第2内側コイルC2の形状はほぼ同じであるため、ティースT6とティースT1とで、第1外側コイルC1’が巻き回される位置と回転軸Cとの距離が同じになる。
【0063】
第1外側コイルC1’を形成し終えると、次に、ティースT2とティースT3を囲むように第2スリットS2と第4スリットS4とに繰り返し銅線を通し、第2外側コイルC2’を形成する。この際、ティースT2の基部には第1内側コイルC1が巻かれており、ティースT3の基部には第3内側コイルC3が巻かれているため、第2外側コイルC2’は、第2スリットS2において第1内側コイルC1と干渉し、第4スリットS4において第3内側コイルC3と干渉する。しかしながら、第1内側コイルC1および第3内側コイルC3の形状はほぼ同じであるため、ティースT2とティースT3とで、第2外側コイルC2’が巻き回される位置と回転軸Cとの距離が同じになる。
【0064】
第2外側コイルC2’を形成し終えると、次に、ティースT4とティースT5を囲むように第4スリットS4と第6スリットS6とに繰り返し銅線を通し、第3外側コイルC3’を形成する。この際、ティースT4の基部には第3内側コイルC3が巻かれており、ティースT5の基部には第2内側コイルC2が巻かれているため、第3外側コイルC3’は、第4スリットS4において第3内側コイルC3と干渉し、第6スリットS6において第2内側コイルC2と干渉する。しかしながら、第2内側コイルC2および第3内側コイルC3の形状はほぼ同じであるため、ティースT4とティースT5とで、第3外側コイルC3’が巻き回される位置と回転軸Cとの距離が同じになる。
【0065】
このような方法で作製した電機子24において、すべてのコイルは、コア100の径方向に対してほぼ垂直になっている。なお、各コイルは、コア100の径方向に対して実質的に垂直になっていればよく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲でわずかに傾いて配置されている場合もありうる。また、第1内側コイルC1、第2内側コイルC2、第3内側コイルC3の中心(重心)と回転軸Cとの距離が一定である。同様に、第1外側コイルC1’、第2外側コイルC2’、第3外側コイルC3’の中心(重心)と回転軸Cとの距離が一定である。加えて、第2スリットS2、第4スリットS4、第6スリットS6には、コイルが存在しない空間V2,V4,V6が形成されているが、この形状は同じである。そのため、本実施の形態で作製した電機子24を用いたモータは、分布巻きやダブル巻きで作製した電機子102,104と比較して、コイルの配置の片寄りがより改善されている。
【0066】
また、本実施の形態に係る電機子の巻き線方法は、第1内側コイルC1、第2内側コイルC2、第3内側コイルC3、第1外側コイルC1’、第2外側コイルC2’および第3外側コイルC3’の順に一筆書きとなるように結線することが可能となり、安価なシングルフライヤ装置を用いることを可能としている。そのため、ダブルフライヤと呼ばれる2つのコイルを同時に形成することができる装置を用いずに、より安価な装置で電機子を製造できる。
【0067】
上述のように、本実施の形態に係る電機子24は、回転軸Cを中心に放射状に設けられた6つのティースを有するコア100と、2つのティースを一組として組毎に巻き回された6つのコイルを備える。6つのコイルは、ティースの回転軸側に配置されている3つの内側コイル(C1,C2,C3)と、内側コイルの外側に配置されている3つの外側コイル(C1’,C2’,C3’)と、を有する。
【0068】
第1内側コイルC1は、ティースT1,T2に巻き回されており、隣接する第2内側コイルC2は、ティースT5,T6に巻き回されており、同じく隣接する第3内側コイルC3は、ティースT3,T4に巻き回されている。つまり、3つの内側コイルは、隣接する内側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されている。
【0069】
第1外側コイルC1’は、ティースT6,T1に巻き回されており、隣接する第2外側コイルC2’は、ティースT2,T3に巻き回されており、同じく隣接する第3外側コイルC3’は、ティースT4,T5に巻き回されている。つまり、3つの外側コイルは、隣接する外側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されている。したがって、3つの外側コイルは、内側コイルが巻き回されているティースの組合せ(T1とT2、T3とT4、T5とT6)とは異なる組合せのティース(T2とT3、T4とT5、T6とT1)に巻き回されている。
【0070】
この実施の形態によると、ティースの回転軸側に配置されている複数の内側コイルは、隣接する内側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されている。つまり、複数の内側コイルは、互いに余り干渉せずに所定のティースに巻き回されるため、コイル同士の干渉による配置の片寄りが少なく、対称性の高い(バランスのよい)コイルの配置が可能となる。同様に、複数の外側コイルは、隣接する外側コイルが同じティースに巻き回されないように環状に配置されている。つまり、複数の外側コイルは、互いに余り干渉せずに所定のティースに巻き回されるため、コイル同士の干渉による配置の片寄りが少なく、対称性の高い(バランスのよい)コイルの配置が可能となる。また、外側コイルは、内側コイルが巻き回されているティースの組合せとは異なる組合せのティースに巻き回されているため、外側コイルと内側コイルとが巻き回されているティースの組合せが同じ場合と比較して、トルク変動の滑らかな回転特性が得られる。
【0071】
なお、外側コイルが巻き回される「異なる組合せのティース」とは、内側コイルが巻き回されているティースのすべてと異なっている場合だけではなく、電機子24に示すように、一部のティースが異なっている場合も含む。また、「環状」とは、円形の場合だけでなく、例えば、三角形、四角形、五角形等の多角形状を含んでもよい。
【0072】
次に、本実施の形態に係る他の実施例について説明する。表1には、図8に示した電機子と、実施例1から6に係る電機子における構成を列挙した。
【0073】
【表1】
【0074】
図9(a)は、実施例1に係る電機子の構成を模式的に示した図、図9(b)は、実施例2に係る電機子の構成を模式的に示した図、図9(c)は、実施例3に係る電機子の構成を模式的に示した図である。図10(a)は、実施例4に係る電機子の構成を模式的に示した図、図10(b)は、実施例5に係る電機子の構成を模式的に示した図、図10(c)は、実施例6に係る電機子の構成を模式的に示した図である。各図で実線はコアのティースを示し、点線はコイルを示す。
【0075】
図9(a)に示す電機子106は、コア溝(ティース)の数mが8、1コイルがまたぐティースの数nが2であり、複数のコイルが2層を構成している。内側の第1層L1には、4つのコイルが四角形を構成するように配置され、その外側の第2層L2には、4つのコイルが四角形を構成するように配置されている。各四角形は、相似形であり、他の四角形に対して回転軸Cを中心に45°回転した配置になっている。
【0076】
図9(b)に示す電機子108は、コア溝(ティース)の数mが9、1コイルがまたぐティースの数nが3であり、複数のコイルが3層を構成している。内側の第1層L1には、3つのコイルが三角形を構成するように配置され、その外側の第2層L2には、3つのコイルが三角形を構成するように配置され、更に外側の第3層L3には、3つのコイルが三角形を構成するように配置されている。各三角形は、相似形であり、他の三角形に対して回転軸Cを中心に40°回転した配置になっている。
【0077】
図9(c)に示す電機子110は、コア溝(ティース)の数mが10、1コイルがまたぐティースの数nが2であり、複数のコイルが2層を構成している。内側の第1層L1には、5つのコイルが五角形を構成するように配置され、その外側の第2層L2には、5つのコイルが五角形を構成するように配置されている。各五角形は、相似形であり、他の五角形に対して回転軸Cを中心に36°回転した配置になっている。
【0078】
図10(a)に示す電機子112は、コア溝(ティース)の数mが12、1コイルがまたぐティースの数nが2であり、複数のコイルが2層を構成している。内側の第1層L1には、6つのコイルが六角形を構成するように配置され、その外側の第2層L2には、6つのコイルが六角形を構成するように配置されている。各六角形は、相似形であり、他の六角形に対して回転軸Cを中心に30°回転した配置になっている。
【0079】
図10(b)に示す電機子114は、コア溝(ティース)の数mが12、1コイルがまたぐティースの数nが3であり、複数のコイルが3層を構成している。内側の第1層L1には、4つのコイルが四角形を構成するように配置され、その外側の第2層L2には、4つのコイルが四角形を構成するように配置され、更にその外側の第3層L3には、4つのコイルが四角形を構成するように配置されている。各四角形は、相似形であり、他の四角形に対して回転軸Cを中心に30°回転した配置になっている。
【0080】
図10(c)に示す電機子116は、コア溝(ティース)の数mが12、1コイルがまたぐティースの数nが4であり、複数のコイルが4層を構成している。内側の第1層L1には、3つのコイルが三角形を構成するように配置され、その外側の第2層L2には、3つのコイルが三角形を構成するように配置され、更にその外側の第3層L3には、3つのコイルが三角形を構成するように配置され、更にその外側の第4層L4には、3つのコイルが三角形を構成するように配置されている。各三角形は、相似形であり、他の三角形に対して回転軸Cを中心に30°回転した配置になっている。
【0081】
実施の形態や各実施例に係る電機子の特徴を換言すると、電機子は、回転軸を中心に放射状に設けられたm個(mは6以上の整数)のティースを有するコアと、n個(nはm/nが3以上となる整数)のティースを一組として組毎に巻き回された複数のコイルを備える。複数のコイルは、ティースの回転軸側に配置されているm/n個の内側コイルと、内側コイルの外側に配置されているm/n個の外側コイルと、を有する。m/n個の内側コイルは、回転軸Cの軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、m/n個の外側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、外側コイルは、回転軸を中心に、隣接する内側コイルに対して位相が(360°/m)変化した位置に配置されている。前述の外側コイルの外側に、更にコイルを配置してもよい。この時、内側コイルを第1層、この第1層に隣接する外側コイルを第2層、この第2層の外側に隣接する外側コイルを第3層、この第3層の外側に隣接する外側コイルを第4層とすると、層数はm/(m/n)で表すことができる。
【0082】
実施の形態や実施例に係る電機子において、m/n個の内側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、m/n個の外側コイルは、回転軸の軸線方向から見て(m/n)角形となるように配置されており、内側コイルと外側コイルとは互いに似た多角形状に配置されている。また、外側コイルは、回転軸Cを中心に、隣接する内側コイルに対して位相が(360°/m)変化した位置に配置されている。そのため、各コイルは、回転軸を中心に均等な角度に配置されることから、トルク変動の滑らかな回転特性が得られる。
【0083】
このように、各実施例に係る電機子も、前述の電機子24と同様の効果が得られる。
【0084】
また、実施の形態や実施例に係る電機子においては、隣り合ったティースの間に形成されたスリットのうち内側コイルが挿入されていない複数のスリットにおいて、外側コイルより回転軸側に形成された空間の形状が実質的に同一となる。例えば、図9(a)に示す電機子106においては、隣り合ったティースの間に形成されたスリット(S1〜S8)のうち内側コイル(C1〜C4)が挿入されていない4つのスリット(S2,S4,S6,S8)において、回転軸C側に形成された各空間の形状が実質的に同一となる(図8参照)。換言すると、空間が4個の場合、4つの内側コイル(又は外側コイル)が回転軸を中心に4回点対称(正方形)となるように設けられている。このように、各実施例に係る電機子においても、回転する際のバランスがよくなり、このような電機子をモータに使用した場合の振動が抑制される。
【0085】
次に、モータ回転時におけるブラシのコミテータとの接触位置と、その際の電機子の回路構成との関係について説明する。図11(a)は、図7に示した電機子のコミテータにブラシが接触した状態を示す模式図、図11(b)は、図11(a)に示した電機子が30°回転した状態を示す模式図である。図12(a)は、図11(a)に示した状態の電機子における回路構成を示す図、図12(b)は、図11(b)に示した状態の電機子における回路構成を示す図である。
【0086】
図11(a)に示す電機子104が備えるコミテータ118には、一対のカーボンブラシ120a,120bが接触している。コミテータ118は、6つのセグメント118a〜118fに分割されており、そのうちの一つのセグメント118aにはカーボンブラシ120aが接触し、もう一つのセグメント118dにはカーボンブラシ120bが接触している。
【0087】
この場合、図12(a)に示すように、第1コイルC21、第2コイルC22、第3コイルC23が直列接続された状態となり、これらのコイルとは並列に、第1コイルC21’、第2コイルC22’、第3コイルC23’が直列接続された状態となる。各コイルの抵抗がすべてRで一定の場合、電機子104全体の抵抗は(3/2)Rとなる。
【0088】
次に、図11(b)に示す電機子104において、カーボンブラシ120aは、コミテータ118の2つのセグメント118a,118bにまたがる状態で接触し、カーボンブラシ120bは、2つのセグメント118d,118eにまたがる状態で接触している。
【0089】
この場合、図12(b)に示すように、第2コイルC22、第3コイルC23が直列接続された状態となり、これらのコイルとは並列に、第2コイルC22’、第3コイルC23’が直列接続された状態となる。なお、第1コイルC21,C21’には電流が流れない。各コイルの抵抗がすべてRと仮定すると、電機子104全体の抵抗はRとなる。
【0090】
したがって、電機子104は、カーボンブラシ120a,120bがコミテータ118の2つのセグメントをまたがずに接触している場合に比べて、またいで接触している場合には電流が1.5倍となる。
【0091】
次に、本実施の形態に係る電機子24の場合について説明する。図13(a)は、図8に示した電機子のコミテータにブラシが接触した状態を示す模式図、図13(b)は、図13(a)に示した電機子が30°回転した状態を示す模式図である。図14(a)は、図13(a)に示した状態の電機子における回路構成を示す図、図14(b)は、図13(b)に示した状態の電機子における回路構成を示す図である。
【0092】
図13(a)に示す電機子24が備えるコミテータ122には、一対のカーボンブラシ124a,124bが接触している。コミテータ122は、周方向に3つのセグメント122a〜122cに分割されており、そのうちの一つのセグメント122aのみにカーボンブラシ124aが接触し、もう一つのセグメント122bのみにカーボンブラシ124bが接触している。
【0093】
次に、各セグメントと各コイルとの接続状態を説明する。セグメント122aとセグメント122bとの間には、第2内側コイルC2と第2外側コイルC2’が並列に接続されており、セグメント122bとセグメント122cとの間には、第1内側コイルC1と第3外側コイルC3’が並列に接続されており、セグメント122cとセグメント122aとの間には、第3内側コイルC3と第1外側コイルC1’が並列に接続されている。
【0094】
この場合、図14(a)に示すように、セグメント122aとセグメント122bとの間で、第1内側コイルC1および第3外側コイルC3’は互いに並列に接続され、第2内側コイルC2および第2外側コイルC2’は互いに並列に接続され、第3内側コイルC3および第1外側コイルC1’は互いに並列に接続され、第1内側コイルC1および第3内側コイルC3は互いに直列に接続され、第1外側コイルC1’および第3外側コイルC3’は互いに直列に接続され、第1内側コイルC1、第3外側コイルC3’、第2内側コイルC2および第2外側コイルC2’は互いに並列に接続された状態となる。各コイルの抵抗がすべてRで一定の場合、電機子24全体の抵抗は(1/3)Rとなる。
【0095】
次に、図13(b)に示す電機子24において、カーボンブラシ124aは、コミテータ122の一つのセグメント122aのみに接触し、カーボンブラシ124bは、2つのセグメント122b,122cにまたがる状態で接触している。
【0096】
この場合、図14(b)に示すように、第2内側コイルC2、第3内側コイルC3、第1外側コイルC1’、第2外側コイルC2’が互いに並列接続された状態となる。なお、第1内側コイルC1,第3外側コイルC3’には電流が流れない。各コイルの抵抗がすべてRと仮定すると、電機子24全体の抵抗は(1/4)Rとなる。
【0097】
したがって、電機子24は、カーボンブラシ124bがコミテータ122の2つのセグメントをまたがずに接触している場合に比べて、またいで接触している場合には電流が(4/3)倍となる。つまり、電機子24は、電機子104と比較して回転時の電流の変化が少ない。
【0098】
換言すると、電機子24は、カーボンブラシ124bがコミテータ122の2つのセグメントをまたいで接触している場合とまたがずに接触している場合との抵抗値の差(変化)が小さくなり、トルクリップルが小さくなる。そのため、電機子24は、回転中における安定性が増し、振動低減に効果がある。
【0099】
また、電機子24は、図13(a)、図13(b)に示すように、第1内側コイルC1と第3外側コイルC3’とが回転軸を中心に180°対向した位置で互いが平行となるように配置されており、第2内側コイルC2と第2外側コイルC2’とが回転軸を中心に180°対向した位置で互いが平行となるように配置されており、第3内側コイルC3と第1外側コイルC1’とが回転軸を中心に180°対向した位置で互いが平行となるように配置されている。
【0100】
このように、電機子24は、180°対向した位置で互いが平行となるように配置された3組のコイルを有している。そして、各組の一方のコイルに電流が流れ、他方のコイルに電流が流れないといった状態にはならない。つまり、180°対向した位置で互いが平行となるように配置された2つのコイルが同時に整流されるため、回転中における安定性が増す。
【0101】
また、電機子24は、一対のカーボンブラシ124a,124bがコミテータ122と接している状態で、第1内側コイルC1、第2内側コイルC2、第3内側コイルC3、第1外側コイルC1’、第2外側コイルC2’および第3外側コイルC3’のうち少なくとも4つのコイルが互いに並列に接続される。そのため、電機子24は、電機子104と同じ6つのコイルを備えるものの、コイル一つ当たりの抵抗が同じであっても、全体の抵抗は電機子104と比較してかなり小さくなる。
【0102】
したがって、例えば、図13(a)に示す状態で電機子24に流れる電流が、図11(a)に示す状態で電機子104に流れる電流と同じになるように、電機子24の各コイルの抵抗を設定する場合、各コイルの抵抗が4.5倍になるようにすればよい。仮に各コイルの長さを変えないとすると、断面積の小さい細い銅線を用いればよい。具体的には、断面積を(1/4.5)倍とした銅線を用いればよい。その結果、コアにコイルを巻く際の作業性が向上するとともに、材料費も低減できる。更に、モータ特性を同等にするためにコイルの長さを長くしてもよい。
【0103】
このように、電機子24は、コア100の中心を貫通するシャフトと、シャフトに固定され、電機子とともに回転する整流子としてのコミテータ122と、を備えている。コミテータ122は、内側コイル又は外側コイルと同数の3つのセグメントに分割されている。これにより、コミテータ122のセグメントの数(3個)がコイルの総数(6個)の半分で済み、一つのセグメントのサイズを大きくできるため、コミテータ122の製造が容易となり、また、組み立てる際の作業性も向上できる。
【0104】
なお、コミテータ122の各セグメントにおいて、コイルの一端を係止する部分は一つあればよいが、その場合、一つの係止部に4つのコイルの端部が係止されることとなる。そのため、係止部が大型化してしまうとともに、最初のコイルの一端が係止された状態で他のコイルの一端を係止する必要があり、作業性に改善の余地がある。
【0105】
そこで、コミテータ122の各セグメントは、少なくとも内側コイルの一端が係止される第1の係止部と、少なくとも外側コイルの一端が係止される第2の係止部と、を有してもよい。これにより、一つのセグメントに複数のコイルの一端を係止させる必要がある場合であっても、同じ係止部に係止させなくても済む。そのため、係止部の大きさを小さくできる。また、他のコイルの一端が係止されている状態で、次のコイルの一端を係止させる場合と比べて、製造が容易となる。
【0106】
本実施の形態に係るモータは、図2等に示すように、筒状のハウジング12と、ハウジング12の内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子としてのマグネット20と、固定子に対向配置された前述の電機子と、コミテータの外周面を摺動するように設けられている一対又は複数対のブラシと、を備えている。これにより、従来より特性が改善された直流モータが実現できる。
【0107】
図15は、本実施の形態の変形例に係るコイルの巻き方を説明するための図である。図15に示すように、はじめに、ティースT1とティースT2を囲むように第1スリットS1と第3スリットS3とに繰り返し銅線を通し、第1コイルC1を形成する。この際、ティースT1およびティースT2の基部には他のコイルが巻かれていないため、第1コイルC1は、他のコイルと干渉せず、ティースT1およびティースT2の基部に巻かれることになる。また、ティースT4とティースT5を囲むように第4スリットS4と第6スリットS6とに繰り返し銅線を通し、第2コイルC2を形成する。この際、ティースT4およびティースT5の基部には他のコイルが巻かれていないため、第2コイルC2は、他のコイルと干渉せず、ティースT4およびティースT5の基部に巻かれることになる。そのため、第1コイルC1および第2コイルC2は、回転軸Cの方向から見て平行に配置されることになる。
【0108】
第1コイルC1、第2コイルC2を形成し終えると、次に、ティースT2とティースT3を囲むように第2スリットS2と第4スリットS4とに繰り返し銅線を通し、第3コイルC3を形成する。また、ティースT6とティースT1を囲むように第2スリットS2と第6スリットS6とに繰り返し銅線を通し、第4コイルC4を形成する。また、第1コイルC1および第2コイルC2の、それぞれの中心を通る直線をL’とすると、第3コイルC3および第4コイルC4は、直線L’に対し線対称となるように配置されている。
【0109】
第3コイルC3、第4コイルC4を形成し終えると、次に、ティースT3とティースT4を囲むように第3スリットS3と第5スリットS5とに繰り返し銅線を通し、第5コイルC5を形成する。また、ティースT5とティースT6を囲むように第5スリットS5と第1スリットS1とに繰り返し銅線を通し、第6コイルC6を形成する。第5コイルC5および第6コイルC6は、前述の直線L’に対し線対称となるように配置されている。
【0110】
このような方法で作製した電機子56は、回転軸を中心に放射状に設けられた6個のティースを有するコアと、3個のセグメント(図5参照)と、2つのティースを一組として組毎に巻き回された6つのコイルと、を備える。複数のコイル(第1コイルC1〜第6コイルC6)は、軸方向から見て平行に配置された一対のコイル(第1コイルC1、第2コイルC2)を有し、その一対のコイルのそれぞれの中心を通る直線L’に対し複数のコイル(第3コイルC3〜第6コイルC6)が、線対称となるように配置されている。また、一対のセグメント間に2つのコイル(例えば、第1コイルC1と第2コイルC2、第3コイルC3と第6コイルC6、第4コイルC4と第5コイルC5)が並列に接続されている。このように、電機子56は、複数のコイルが全体として線対称となるように配置されており、回転中における安定性が増す。
【0111】
図16は、本実施の形態の他の変形例に係るコイルの巻き方を説明するための図である。図16に示すように、はじめに、ティースT5とティースT6を囲むように第5スリットS5と第1スリットS1とに繰り返し銅線を通し、第1コイルC1を形成する。この際、ティースT5およびティースT6の基部には、他のコイルが巻かれていないため、第1コイルC1は、他のコイルと干渉せず、ティースT5およびティースT6の基部に巻かれることになる。また、ティースT3とティースT4を囲むように第3スリットS3と第5スリットS5とに繰り返し銅線を通し、第2コイルC2を形成する。この際、ティースT3およびティースT4の基部には他のコイルが巻かれていないため、第2コイルC2は、他のコイルと干渉せず、ティースT3およびティースT4の基部に巻かれることになる。
【0112】
第1コイルC1、第2コイルC2を形成し終えると、次に、ティースT6とティースT1を囲むように第2スリットS2と第6スリットS6とに繰り返し銅線を通し、第3コイルC3を形成する。また、ティースT2とティースT3を囲むように第2スリットS2と第4スリットS4とに繰り返し銅線を通し、第4コイルC4を形成する。
【0113】
第3コイルC3、第4コイルC4を形成し終えると、次に、ティースT4とティースT5を囲むように第4スリットS4と第6スリットS6とに繰り返し銅線を通し、第5コイルC5を形成する。また、ティースT1とティースT2を囲むように第1スリットS1と第3スリットS3とに繰り返し銅線を通し、第6コイルC6を形成する。
【0114】
このような方法で作製した電機子58においては、第5コイルC5および第6コイルC6は、回転軸Cの方向から見て平行に配置されることになる。また、第1コイルC1および第2コイルC2は、直線L’に対し線対称となるように配置されている。第3コイルC3および第4コイルC4は、直線L’に対し線対称となるように配置されている。
【0115】
上述のように、電機子58は、回転軸を中心に放射状に設けられた6個のティースを有するコアと、3個のセグメント(図5参照)と、2つのティースを一組として組毎に巻き回された6つのコイルと、を備える。複数のコイル(第1コイルC1〜第6コイルC6)は、軸方向から見て平行に配置された一対のコイル(第5コイルC5、第6コイルC6)を有し、その一対のコイルのそれぞれの中心を通る直線L’に対し複数のコイル(第1コイルC1〜第4コイルC4)が、線対称となるように配置されている。また、一対のセグメント間に2つのコイル(例えば、第1コイルC1と第4コイルC4、第2コイルC2と第3コイルC3、第5コイルC5と第6コイルC6)が並列に接続されている。このように、電機子58は、複数のコイルが全体として線対称となるように配置されており、回転中における安定性が増す。
【0116】
また、電機子56や電機子58において、一対のセグメント間に並列に接続された2つのコイルは、回転軸Cと直交する一つの直線を挟んで反対側に配置されている。より好ましくは、図5図8に示す電機子24のように、一対のセグメント間に並列に接続された2つのコイル(第1内側コイルC1と第3外側コイルC3’、第2内側コイルC2と第2外側コイルC2’、第3内側コイルC3と第1外側コイルC1’)は、回転軸Cと直交する一つの直線を挟んで180°対向するように配置されているとよい。
【0117】
以上、本発明を実施の形態や各実施例をもとに説明した。これら実施の形態や実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0118】
C1 第1内側コイル、 C1’ 第1外側コイル、 L1 第1層、 S1 第1スリット、 T1 ティース、 C2 第2内側コイル、 C2’ 第2外側コイル、 L2 第2層、 S2 第2スリット、 T2 ティース、 C3 第3内側コイル、 C3’ 第3外側コイル、 L3 第3層、 S3 第3スリット、 T3 ティース、 L4 第4層、 S4 第4スリット、 T4 ティース、 S5 第5スリット、 T5 ティース、 S6 第6スリット、 T6 ティース、 10 モータ、 12 ハウジング、 14 回転子、 16 金属ケース、 20 マグネット、 22 シャフト、 24 電機子、 26 コミテータ、 30 カーボンブラシ、 48 巻線、 100 コア、 122 コミテータ、 122a,122b,122c セグメント、 124a,124b カーボンブラシ。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、電機子およびモータに利用できる。
図1
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