(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺材料を受ける受け台と、保持部材に保持されて前記受け台上の長尺材料部分に上方から押し込んで前記長尺材料をその長手方向に対して直角に切り分けするカッターと、前記カッターを前記受け台上の長尺材料部分に対して下降して前記長尺材料をその長手方向に対して直角の方向に切り分け、その後前記カッターを上昇するカッター駆動手段とを備えた長尺材料切断装置において、前記カッター駆動手段は、前記カッターを下降して前記長尺材料を押し潰しながら前記長尺材料に食い込ませた後、前記カッターを前記長尺材料の切り分け部の前記横断面に沿って第1の水平方向に変位して前記長尺材料を滑り切りし、この滑り切り後前記カッターを上昇する間に、前記カッターを前記第1の水平方向と反対の第2の水平方向に変位して元の位置に戻るように前記カッターを水平駆動するカッター水平変位機構を含み、前記カッター水平変位機構は、前記カッター駆動手段のカッター下降運動によって前記カッターを保持する前記保持部材を前記第1の水平方向に変位し、前記カッター駆動手段のカッター上昇運動によって前記カッターを保持する前記保持部材を前記第2の水平方向に変位することによって前記カッターを前記第1及び第2の方向に変位することを特徴とする長尺材料切断装置。
請求項1に記載の長尺材料切断装置であって、前記カッター駆動手段は、前記保持部材をばね付勢に抗して押し下げるように駆動する回転駆動部材を備え、前記保持部材は、通常では、カッターを上昇位置にばね付勢されているが、前記回転駆動部材によってばねに抗して押し下げられると、カッターは、長尺部材に食い込むようになっており、且つ前記保持部材は、前記カッターの水平変位を許すように、固定フレームに前記カッターの変位方向に可動自在に支持されていることを特徴とする長尺材料切断装置。
請求項2に記載の長尺材料切断装置であって、前記カッター駆動手段のカッター水平変位機構は、前記回転駆動部材に設けられ前記保持部材に係脱自在に係止して前記保持部材を前記カッターの変位方向に駆動する係止部材を含んでいることを特徴とする長尺材料切断装置。
請求項3に記載の長尺材料切断装置であって、前記カッター駆動手段のカッター水平変位機構は、前記回転駆動部材に設けられ前記保持部材に係止された係止部材を前記保持部材から解除する係止解除部材を含んでいることを特徴とする長尺材料切断装置。
長尺材料を受ける受け台と、保持部材に保持され前記受け台上の長尺材料部分に押し込んで前記長尺材料を切り分けするカッターと、前記カッターを前記受け台上の長尺材料部分に対して昇降して前記長尺材料を切り分けるカッター駆動手段とを備え、前記カッター駆動手段は、前記カッターの前記受け台に対する最下降位置を調節することができる長尺材料切断装置において、前記カッター駆動手段は、前記カッターを下降した後、前記カッターを前記横断面に沿って第1の水平方向に変位して前記長尺材料を滑り切りし、その後前記カッターを上昇する間に、前記カッターを前記第1の水平方向と反対の第2の水平方向に変位して元の位置に戻るように前記カッターを水平駆動するカッター水平変位機構を含み、前記カッター駆動手段は、前記保持部材をばね付勢に抗して押し下げるように駆動する回転駆動部材を備え、前記保持部材は、固定フレームに前記カッターの変位方向に可動自在に支持され、前記回転駆動部材は、前記保持部材に係脱自在に係止して前記保持部材を前記カッターの変位方向に駆動する係止部材を含み、前記カッター水平変位機構は、前記係止部材から成り、且つ前記回転駆動部材は、前記固定フレームに可動自在に支持されて上下に位置調節することができる可動フレームに保持されていることを特徴とする長尺材料切断装置。
請求項2又5記載の長尺材料切断装置であって、前記保持部材は、固定フレームに水平方向に可動自在に支持された枢支アームから成っており、前記回転駆動部材は、前記枢支アームをばねに抗して下降するように係合する偏心カムであることを特徴とする長尺材料切断装置。
【背景技術】
【0002】
電線識別用のマーキング機は、長尺材料の供給源から送給されてマ―キングされるべき長尺材料が間欠的に送給を停止している間に、この長尺材料に所定の文字が印字されるように制御されるサーマルヘッドを備えているが、このマーキング機は、長尺材料にマーキングを施すマーキング部の下流側でマーキングされた材料部分を後続の長尺材料から切り分けるための切断装置も備えている。
【0003】
この種の切断装置は、特許文献1乃至4に示すように、切り分けされるべき長尺材料が載る受け台と長尺材料を横断するように食い込んで長尺材料を押し切るカッターとから成っている。
【0004】
カッターは、マーキング済の材料部分とマーキングが施されようとする後続の材料部分との間で、後続の材料部分にマーキングが施されている間の材料送給停止中に、長尺材料の上から自動的に下降することによって長尺材料を扁平に押し潰しながら切断部分に押し込んで切り分けを行う。
【0005】
このように、カッターを長尺材料に押し込んで行われる切断は、長尺材料に横断的に刃先を食い込ませて材料を切り分ける「押し切り」の形態であり、これは、比較的柔らかい通常の電線識別用チューブの如き長尺材料の切り分けには有効であるが、例えば、強い弾力性と厚みがあるか、広い幅(径)を有する特殊なチューブの如き長尺材料を有効に切り分けることができない欠点があった。
【0006】
このように、弾力性と厚みのある長尺材料は、この材料に上方から垂直にカッター刃を押し込んでも、材料が押し潰されるだけであってカッター刃が材料内に横断的に食い込まないため、カッターを上方に後退すると、材料は押し潰される前の元の状態に戻って切り分けすることができない。
【0007】
また、この種の長尺材料は、マーキングが施された前後部分の間で全横断面に亘って切り分ける場合のほかに、マーキングが施された前後の部分の間で横断面の一部を切り残してマーキングが施された前後の部分が完全には切り分けないが、切り残し部分で繋がっていて、現場等で各マーキング施し部分を切り分けて使用する場合に、手又は他の適宜の手段で切り分けることがある。
【0008】
特許文献1乃至4の切断装置は、カッターの食い込み深度を調節して行われるが、この食い込み深度は、カッターの昇降高さを調節するか(特許文献1)、切断時に長尺材料の一部が刃受け台の上面から逃げることができるように、刃受け台の一部に凹みを設けてカッターの刃がその一部に食い込むことがないようにしている(特許文献2乃至4参照)。
【0009】
しかし、既に述べたように、強い弾力性と厚みを有する長尺材料は、カッターを押し込んでも切断されないため、全切りも部分切りも行うことができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする第1の課題は、押し切りでは切り分けることができない難切断長尺材料を容易に切り分けることができる長尺材料切断装置を提供することにある。
【0012】
本発明が解決しようとする第2の課題は、押し切りでは切り分けることができない難切断長尺材料を容易に全切りと部分切りとに選択的に切り分けることができる長尺材料切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の課題解決手段は、保持部材に保持されて前記受け台上の長尺材料部分に上方から押し込んで前記長尺材料をその長手方向に対して直角に切り分けするカッターと、前記カッターを前記受け台上の長尺材料部分に対して
下降して前記長尺材料をその長手方向に対して直角の方向に切り分け
、その後前記カッターを上昇するカッター駆動手段とを備えた長尺材料切断装置において、前記カッター駆動手段は、前記カッターを下降し
て前記長尺材料を押し潰しながら前記長尺材料に食い込ませた後、前記カッターを前記長尺材料の切り分け部の前記横断面に沿って第1の水平方向に変位して前記長尺材料を滑り切りし、
この滑り切り後前記カッターを上昇する間に、前記カッターを前記第1の水平方向と反対の第2の水平方向に変位して元の位置に戻るように前記カッターを水平駆動するカッター水平変位機構を含み、前記カッター水平変位機構は、前記カッター駆動手段のカッター下降運動によって前記カッターを保持する前記保持部材を前記第1の水平方向に変位し、前記カッター駆動手段のカッター上昇運動によって前記カッターを保持する前記保持部材を前記第2の水平方向に変位することによって前記カッターを前記第1及び第2の方向に変位することを特徴とする長尺材料切断装置を提供することにある。
【0014】
本発明の第1の課題解決手段において、前記保持部材をばね付勢に抗して押し下げるように駆動する回転駆動部材を備え、前記保持部材は、通常では、カッターを上昇位置にばね付勢されているが、回転駆動部材によってばねに抗して押し下げられると、カッターは、長尺部材に食い込むようになっている。
【0015】
カッター駆動手段の保持部材は、カッターの水平変位を達成するために、固定フレームに前記カッターの変位方向に可動自在に支持されている。この場合、保持部材は、固定フレームに枢動自在に支持されていてもよいし、固定フレームに垂直方向に摺動自在に支持されていてもよい。
【0016】
本発明の第1の課題解決手段において、カッター駆動手段は、前記回転駆動部材に設けられ前記保持部材に係脱自在に係止して前記保持部材を前記カッターの変位方向に駆動する係止部を備えている形態とするのが好ましく、この係止部が水平方向に可動自在に支持されたカッターを水平駆動するカッター水平変位機構を構成している。この場合、前記回転駆動部材は、その最下降位置まで回転するのを許容するように固定フレームに対して相対的に上昇可能にして固定フレームに取り付けられている可動フレームに保持されているのが好ましい。
【0017】
本発明の第2の課題解決手段は、長尺材料を受ける受け台と、保持部材に保持され前記受け台上の長尺材料部分に押し込んで前記長尺材料を切り分けするカッターと、前記カッターを前記受け台上の長尺材料部分に対して
下降して前記長尺材料をその長手方向に対して直角の方向に切り分け
、その後前記カッターを上昇するカッター駆動手段とを備え、前記カッター駆動手段は、前記カッターの前記受け台に対する最下降位置を調節することができる長尺材料切断装置において、前記カッター駆動手段は、前記カッターを下降し
て前記長尺材料を押し潰しながら前記長尺材料に食い込ませた後、前記カッターを前記横断面に沿って第1の水平方向に変位して前記長尺材料を滑り切りし、
この滑り切り後前記カッターを上昇する間に、前記カッターを前記第1の水平方向と反対の第2の水平方向に変位して元の位置に戻るように前記カッターを水平駆動するカッター水平変位機構を含み、前記カッター駆動手段は、前記保持部材をばね付勢に抗して押し下げるように駆動する回転駆動部材を備え、前記保持部材は、固定フレームに前記カッターの変位方向に可動自在に支持され、前記回転駆動部材は、前記保持部材に係脱自在に係止して前記保持部材を前記カッターの変位方向に駆動する係止部材を含み、前記カッター水平変位機構は、前記係止部材から成り、且つ前記回転駆動部材は、前記固定フレームに可動自在に支持されて上下に位置調節することができる可動フレームに保持されていることを特徴とする長尺材料切断装置を提供することにある。
【0018】
本発明の第1又は第2の課題解決手段において、前記保持部材は、固定フレームに水平方向に可動自在に支持された枢支アームから成っており、前記回転駆動部材は、前記枢
支アームをばねに抗して下降するように係合する偏心カムの形態とすることができる。
【0019】
本発明の第1又は第2の課題解決手段において、前記回転駆動部材は、前記偏心カムの一部に前記係止部が設けられ、また前記長尺材料の切り分け後、前記保持部材から係止を解除する解除部材を含んでいる形態とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の長尺材料切断装置は、カッターを長尺材料に押し付けた後、水平方向に変位させて長尺材料を滑り切りするので、弾力性と厚みがあってカッターで押し切りすることができない難切断長尺材料を確実に切り分けすることができ、従って長尺材料にマーキング等の処理を施した後、マーキング部分等の処理部分毎に長尺材料を切り分けるマーキング機の如き長尺材料処理機に使用するのに好適である。
【0021】
また、本発明の長尺材料切断装置は、カッター駆動手段によるカッターの最下降位置を調節することができるので、上記の難切断長尺材料の切り分けに際して、完全な切り分けではなく、切り残し部分によって処理部分を相互に連結状態に維持したまま切り分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の長尺材料切断装置を設置するのに好適なマーキング機の概略系統図である。
【
図2】
図1のマーキング機に用いられる長尺材料送給系統の構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明の1つの実施の形態による長尺材料切断装置の側面図である。
【
図6】本発明に用いられるカッター駆動手段の回転駆動部材とその駆動系統の組立て状態の斜視図である。
【
図7】
図6において、回転駆動部材を固定フレームに対して可動するのを許す状態を示すために固定フレームと回転駆動部材とその駆動系統との関係を示す分解斜視図である。
【
図8】
図6の回転駆動部材とその駆動系統との分解斜視図である。
【
図9】
図3の長尺材料切断装置の種々の部分の水平断面を示し、同図(A)乃至(G)は、それぞれ、
図3の9A−9A線乃至9G−9G線で切断した断面図である。
【
図10】
図3の長尺材料切断装置の他の部分の水平断面を示し、同図(A)(B)は、それぞれ、
図3の10A−10A線及び10B−10B線で切断した断面図である。
【
図11】
図3の長尺材料切断装置の更に他の部分の水平断面を示し、同図(A)(B)は、それぞれ、
図3の11A−11A線及び11B−11B線で切断した断面図である。
【
図12】
図3の長尺材料切断装置の2つの動作状態を示し、同図(A)(B)は、それぞれ、カッターが最上位置にある状態とカッターが下降し始めた状態との側面図である。
【
図13】
図3の長尺材料切断装置の他の2つの動作状態を示し、同図(A)(B)は、それぞれ、カッターが最下降位置にある状態とカッターの最下降位置でカッターが第1の水平方向に変位し始めようとする状態との側面図である。
【
図14】
図3の長尺材料切断装置の更に他の2つの動作状態を示し、同図(A)(B)は、それぞれ、カッターが最下降位置にあって第1の方向に変位している途中の状態とカッターが最下降位置で第1の方向に変位し終えた状態との側面図である。
【
図15】
図3の長尺材料切断装置の最後の2つの動作状態を示し、同図(A)(B)は、それぞれ、カッターが最下降位置から上昇し始め、且つ第2の方向に変位して第1の方向への変位前の状態に戻った状態とカッターが最上昇位置(
図9(A)と同じ位置)に戻った状態との側面図である。
【
図16】
図3の長尺材料切断装置においてカッターの切断深度を調整する状態を示し、同図(A1)(B1)は、それぞれ、カッター切断深度を深くした状態にあるカッターの上昇位置と下降位置との側面図、同図(A2)(B2)は、それぞれ、カッター切断深度を浅くした状態にあるカッターの上昇位置と下降位置との側面図である。
【
図17】
図3の長尺材料切断装置においてカッターの切断圧力を調整する状態を示し、同図(A1)(B1)は、それぞれ、カッター切断圧力を低くした状態にあるカッターの上昇位置と下降位置との側面図、同図(A2)(B2)は、それぞれ、カッター切断圧力を高くした状態にあるカッターの上昇位置と下降位置との側面図である。
【
図18】本発明の長尺材料切断装置によって切断して切り分けされる長尺材料の1つの形態の長尺材料の切り口を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に述べると、
図1は、本発明に係る長尺材料切断装置10を用いることができるマーキング機Mの一例を示し、このマーキング機Mは、ローラプラテン2上を通過するチューブ状の長尺材料1に着色テープ等のマーキングテープ3を介して係合して長尺材料にマーキングするサーマルヘッド4を備えている。サーマルヘッド4は、図示しないコンピュータ又はマーキング機本体内で設定されたマーキング指令を受けてこの長尺材料1上にこのマーキング指令に相応するマーキング表示を施すので、長尺材料1に接触させたままとしてマーキングテープ3と共に長尺材料1を送給することによって長尺材料1の長手方向に複数の文字、記号等をマーキングして表示することができるが、長尺材料1上に施される1つのマーキング表示(一連の文字、数字、記号群)と隣のマーキング表示との間の間隔(非マーキング部分)ではマーキングテープ3の送給を停止するために非マーキング動作中はサーマルヘッド4を長尺材料1から上方に待避させ、マーキング動作時のみ長尺材料1に係合するようにしている。
【0024】
本発明の長尺材料切断装置10によって切り分け切断される長尺材料1は、例えば、
図18に示すように、内側の熱溶融性接着層1Aと外側の硬質の難燃性ポリオレフィン樹脂外層1Rとの内外二層構造であって弾力性と厚みを有するチューブ1Cであり、このチューブ1Cは、従来技術のように、カッター刃を横断面に沿って押し込んだだけでは切り分けすることができない特性を有する。
【0025】
この長尺材料1は、
図2に示す材料送給手段5によって順次マーキング機M、長尺材料切断装置10に
図1の矢印方向に送給される。
図1及び
図2に示すように、材料送給手段5は、ローラ状のプラテン2の下流側に配置された駆動ローラ5Dとこの駆動ローラ5Dによって駆動される従動ローラ5Fとから成り、プラテン2と駆動ローラ5Dとは、間欠駆動するパルスモータ5Mのプーリ5MPからタイミングベルト5Bを介して駆動されるプーリ2Pと5DPとを有し、駆動ローラ5Dと従動ローラ5Fとは、相互に噛み合うギア5DG、5FGを有する(
図2参照)。従って、プラテン2と駆動ローラ5Dと従動ローラ5Fとは、パルスモータ5Mによって間欠的に駆動される。なお、
図2から解るように、従動ローラ5Fは、プラテン2及び駆動ローラ5Dを保持している固定フレーム5DFに枢支ピン5FPによって枢支された可動フレーム5FFに保持されており、ばね5FSによって駆動ローラ5Dに押し付けられている。
【0026】
マーキングテープ3は、長尺材料1とともにサーマルヘッド4とローラプラテン2との間に挟まれつつ、材料送給手段5によって長尺材料1とともに送給されて、常に新しいマーキングテープ部分がマーキング領域(サーマルヘッド4を有する領域)に位置するようにテープ供給リール3Sからマーキング動作毎に間欠的に送給される。使用済のマーキングテープ3Aは、別途回転される巻取リール3Wに巻き取られる。
【0027】
本発明の長尺材料切断装置10は、
図3及び
図4に示すように、固定フレーム(メインフレーム)20と、この固定フレーム20に取り付けられ長尺材料1のマーキング済み部分1Aが載る受け台30と、この受け台30の上のマーキング済み部分1Aを長尺材料1の後続部分(まだマーキングされていない部分)1Bから切り離すように長尺材料部分に押し込んでこの長尺材料1を切り分けするカッター40と、このカッター40を受け台30上の長尺材料部分に対して昇降するように駆動するカッター駆動手段50とを備え、カッター駆動手段50は、カッター40が下降して長尺材料に1に押し付けられた状態で長尺材料1の横断面内を水平方向又はほぼ水平方向に変位するカッター水平変位機構51を含んでいる。
【0028】
カッター駆動手段50は、固定フレーム20に昇降自在に支持されてカッター40を保持する保持部材52と、この保持部材52をばね付勢に抗して押し下げるように駆動する回転駆動部材54とから成り、保持部材52は、通常では、後に述べるように、カッター40を上昇位置にばね付勢されているが、回転駆動部材54によってばねに抗して押し下げられると、カッター40は、長尺部材1を扁平に押し潰しながら長尺材料に食い込む。
【0029】
図示の例では、保持部材52は、固定フレーム20に枢支ピン52Pを介して枢支された枢支アーム52Aの形態を有し、カッター40は、枢支アーム52Aの自由端に取り付けられている。従って、カッター40は、この枢支アーム52Aの枢動によって円弧運動しながら昇降する。この枢支アーム52Aは、枢支ピン52Pに対してカッター40が保持された自由端とは反対側で、枢支アーム52Aの本体部分に対して直角方向に下方に延びるばね掛け片52ASと固定フレーム20の下端との間に掛け渡されたばね52Sによって、通常では、カッター40が上昇位置にあるように付勢されている。なお、
図3において、符号52UR、52LRは、枢支アーム52Aの最上限位置と最下限位置とを規制する上限ローラ及び下限ローラであり、カッター40は、枢支アーム52Aがこれらの上下のローラ52UR、52LRに係合する位置の間を円弧運動しながら昇降することができる。
【0030】
カッター駆動手段50は、カッター40の昇降のほかに、カッター40を受け台30上の長尺材料1に食い込むように下降した後、後に詳細に述べるカッター水平変位機構51によってカッター40をその横断面に沿って第1の水平方向に変位してこの長尺材料1を滑り切りし、その後カッター40を上昇する間に、カッター40を第1の水平方向と反対の第2の水平方向に変位して元の位置に戻すように機能するものである。なお、この第2の水平方向への変位は、ばね52Sによって行われる。
【0031】
カッター駆動手段50の保持部材52(枢支アーム52A)は、カッター40の変位方向(第1と第2の水平方向)に可動することができるように、固定フレーム20に可動自在に支持されており、図示の形態では、保持部材52である枢支アーム52Aは、枢支ピン52Pが貫通して支持される長孔52AHによって固定フレーム20に対して第1の水平方向(
図3の左方向)と第2の水平方向(
図3の右方向)に変位することができるようになっている。ばね52Sは、枢支アーム52Aをカッター40の上昇位置に付勢するとともに、カッター40を第1の水平方向の変位位置から第2の水平方向の元の位置に戻すように付勢している。
【0032】
カッター駆動手段50は、カッター40を昇降する回転駆動部材54に設けられて保持部材52に係脱自在に係止してカッター40を保持部材52である枢支アーム52Aに係合してカッター40を下降するとともに、枢支アーム52Aに保持されたカッター40を第1の水平方向に変位する係止部材56(
図14参照)と、同じく回転駆動部材54に設けられてカッター40が第1の水平方向の変位位置(
図14(B)の位置)に達した後係止部材56が保持部材52から持ち上げられて保持部材52との係止から外すように保持部材52に係合する係止解除部材58とを更に備えている。図示の形態では、保持部材52である枢支アーム52Aは、その上縁に設けられて係止部材56が係止する係止突起52E(
図3参照)を有するが、この係止突起52Eは、へこみ又は段部の如き任意の形態とすることができる。
【0033】
カッター駆動手段50は、固定フレーム20の下端に枢支ピン20MPによって枢動自在に支持された可動フレーム20Mを含み、回転駆動部材54は、
図6乃至
図8に示すように、図示の形態では、可動フレーム20Mに、後に述べる回転駆動軸50MSに支持された二輪式回転輪54Rの形態を有し、係止部材56は、この二輪式回転輪54R内でその周面近くに支持された駆動ピン56Dの形態を有し、また係止解除部材58は、二輪式回転輪54R上で駆動ピン56Dに対して二輪式回転輪52Rの回転方向の後方で駆動ピン56Dと同じ周面付近に駆動ピン56Dよりも大きな径を有する解除ローラ58Rから成っている。
【0034】
二輪式回転輪54Rは、
図4及び
図5に示すように、可動フレーム20Mに4本の取付けねじ50MTによって取り付けられたギアヘッド50MG付モータ50Mの回転駆動軸50MSに取り付けられている。可動フレーム20Mの上端と固定フレーム20の上端との間にはこれらのフレームを離反するように付勢するばね56Sが掛け渡されており、このばね56Sは、カッター40の下降位置で、駆動ピン56Dがカッター駆動手段50の保持部材52である枢支アーム52Aに係合するように付勢している。なお、
図3において、符号56Pは、駆動ピン56Dが枢支アーム52Aに係合する位置を越えて可動フレーム20Mが移動するのを規制するため固定フレーム20に設けられたストッパピン、また
図3、
図6及び
図7において、符号20Hは、回転駆動部材54が固定フレーム20内で回転するのを許す逃げ孔である。
【0035】
二輪式回転輪54Rの相対する2つの回転輪54RR、54RLは、保持部材52である枢支アーム52Aがその間に入り込むことができるような寸法間隔をあけており、駆動ピン56Dはこの間隔に位置しているので(
図4参照)、二輪式回転輪54Rは、その回転で駆動ピン56Dが枢支アーム52Aに係合したとき、枢支アーム52Aを下方に枢動し(
図12乃至
図14参照)、駆動ピン56Dが枢支アーム52Aから外れたとき、枢支アーム52Aをばね52Sによって上方に枢動するように機能する。従って、二輪式回転輪54Rは、駆動ピン56Dと協働して、偏心カムの機能を有する。
【0036】
また、
図3、
図12乃至
図15に示すように、二輪式回転輪54Rの係止部材56である駆動ピン56Dは、保持部材52である枢支アーム52Aが下降してカッター40が長尺材料1に押し付けられた状態で、二輪式回転輪54Rの回転方向の前方で係止部材56である駆動ピン56Dの前方で枢支アーム52Aの係止突起52Eに係止するので、枢支アーム52Aは、ばね52Sに抗して、
図3、
図12乃至
図15の左方に水平変位され、カッター40は、この水平変位によって、長尺材料1の横断面に沿って第1の水平方向に移動し(
図14参照)、従って、長尺材料1は、カッター40の下降運動と第1の水平方向への変位とによってカッター40によって滑り切りされる。カッター40が第1の水平方向に変位する量は、枢支アーム52Aの係止突起52Eに係止している駆動ピン56Dが可動フレーム20Mの枢動によって係止突起52Eから外れるまでの駆動ンピン56Dの水平直線ストロークに相応する。これは、
図13(B)に示すように駆動ピン56Dが係止突起52Eに係止して第1の水平方向への変位が開始してから、
図14(A)を経て駆動ピン56Dが係止突起52Eから外れる
図14(B)までのストロークである。
【0037】
カッター40が第1の水平方向にその限度まで変位すると、駆動ピン52Dより径の大きな係止解除部材58である解除ローラ58Rが保持部材52である枢支アーム52Aに係合するので、駆動ピン52Dは、枢支アーム52Aから離れて係止が解除されるように持ち上げられる。従って、枢支アーム52Aは、ばね52Sによって第2の水平方向に変位して元の位置に戻る。なお、この場合、解除ローラ58Rは、二輪式回転輪52R全体を持ち上げるので、二輪式回転輪52Rを回転駆動するモータ58等の駆動系統全体が支持されている可動フレーム20Mは、枢支ピン20MPを支点として
図14(B)に示すように枢動し、駆動ピン52Dの係止を解除するのを許す。
【0038】
上記の説明から解るように、カッター水平変位機構51は、保持部材52である枢支アーム52Aの係止突起52Eと回転駆動部材56の駆動ピン52Dとが相互に係止する係止部から構成され、図示の形態では、解除ローラ58Rもカッター水平変位機構51を構成しており、この機構は、枢支アーム52Aを可動自在に支持することと、これを第2の水平方向にばね52Sによって付勢することと協働している。
【0039】
本発明の長尺材料切断装置10は、カッター40が長尺材料に浅く切り込んで切り残し部分を介して切り分けられたマーキング部分を連結状態に維持することができるようにし、また切断圧力を調整する切断深度圧力調整手段60を含んでいる。
【0040】
この切断深度兼圧力調整手段60は、カッター40を保持する保持部材52である枢支アーム52Aの下降枢動時の下限位置(最下降位置)を調整することによって切断深度を調整し、またカッター40を保持する保持部材52と固定フレーム20との間のばね力を調整することによって切断圧力を調整することができる。
【0041】
図3及び
図9(B)に詳細に示すように、図示の形態では、この切断深度圧力調整手段60は、可動フレーム20Mの上端に設けられたねじ受け部材62と、このねじ受け部材62にねじ込まれる第1のねじ部64Aと圧力調整用ねじ環64Rが螺合する第2のねじ部64Bとを有するねじ杆64と、このねじ杆64の周りで固定フレーム20のばね受け片20SPとねじ環64Rとの間に設けられたばね66とから成っている。この切断深度兼圧力調整手段60の詳細な動作は、
図16及び
図17を参照して後に説明する。
【0042】
次に、本発明の長尺材料切断装置10の動作を
図12(A)(B)乃至
図15(A)(B)を参照して以下に詳細に説明する。長尺材料切断装置10は、非動作時(長尺材料1の送給時)には、保持部材52である枢支アーム52Aが上昇位置にあってカッター40が受け台30の上方に退避しており(
図12(A)参照)、マーキングが施された長尺材料部分(マーキング部分)1Aと長尺材料の後続部分1Bとの間の部分が受け台30に乗せられた状態で長尺材料の送給が停止する。
【0043】
このように、長尺材料の部分1A、1Bの間が受け台30上にあって送給が停止している間、長尺材料切断装置10のモータ50Mが回転するが、この回転の間でギヤヘッド50MGによって二輪式回転輪54Rが一回転するように設定されている。二輪式回転輪54Rが回転を開始すると、
図12(A)に示すように、係止部材56である駆動ピン56Dがカッター40の保持部材52である枢支アーム52Aに係合して回転輪54Rの回転につれて枢支アーム52A及びカッター40が下降し(
図12(B)参照」)、遂には、カッター40が受け台30上の長尺材料1を押し潰しつつこの材料内に食い込む(
図13(A)参照)。回転輪54Rが更に回転すると、係止部材
56である駆動ピン
56Dが枢支アーム52Aの係止突起52Eに係止する(
図13(B)参照)。
【0044】
回転輪54Rが更に回転すると、回転輪54R上の駆動ピン
56Dは、係止突起52Eを介して枢支アーム52Aを左方に水平方向に変位する(
図14参照)。この際、駆動ピン
56Dの円弧回転の最下点が枢支アーム52Aの上縁よりも幾何学的に下方となるので、回転輪54Rは、相対的に可動フレーム20Mを枢支ピン20MPを支点にして枢動し、回転輪54Rを持ち上げる。従って、回転輪54Rによる駆動ピン
56Dの回転及び水平方向の変位を許し、枢支アーム52A及びカッター40を第1の水平方向(図の左方向)
(図14(A)の矢印と図14(B)のカッター位置参照)へ変位するので、難切断の長尺部材1は、カッター40によって滑り切りされる。なお、
図12(A)以外には、長尺材料1は、図示されていないが、これは、カッター40の動きを明瞭にするために省略しており、実際には、カッター40と受け台30との間には、扁平の押し潰された長尺材料1がある。
【0045】
駆動ピン56Dがカッター40を第1の水平方向の限界位置まで変位すると、その後ろにある解除ローラ
58Rが枢支アーム52Aの上縁に係合するため、駆動ピン56Dは、枢支アーム52Aから係止が外されるため、ばね52Sによって、枢支アーム52A及びカッター40が上方に円弧運動しながら上昇する(
図15(A)(B)参照)。このようにして、カッター40は、
第1の水平方向とは反対の第2の水平方向に変位しながら上昇し(図15(A)の矢印参照)図12(A)と同じ
図15(B)の位置
(元の位置)に戻る。その後、材料送給手段5によって長尺材料1の次のマーキング済部分1A及びその後続部分1Bが受け台30及びローラプラテン2上にそれぞれ乗るまで長尺材料1を間欠送給して、上記と同様に次のマーキング操作と切り分け操作とをそれぞれ行う。
【0046】
長尺材料1を切残し部分で連結した状態で切り分ける動作を
図16を参照して述べると、通常のように、長尺材料1を完全に切り分ける場合には、カッター上昇位置で可動フレーム20Mが
図16(A1)に示すように垂直に起立しているので、カッター40は、
図16(B1)に示すように、最下降位置が最も低くなって長尺材料1は、横断面の全面で切断される。一方、切り残し連結状態で切り分ける場合には、
図16(A2)に示すように、ねじ受け部材62が第1のねじ部64Aに沿って
図14の左方に移動するように、ねじ受け部材62を回動する。このようにすると、カッター40は、
図16(B2)に示すように、カッター40の最下降位置が
図16(A2)の通常の切り分け操作の場合に比べて若干高くなり、長尺材料1は、手で切り離すことができる程度の切り残し部分が生ずる。
【0047】
最後に、カッター40の切断圧力を調整する動作を
図17を参照して述べると、通常の切断圧力で切断する場合には、
図17(A1)に示すように、ねじ環64Rをねじ杆64の第2のねじ部64Bに沿ってばね66を緩める方向(
図17の右方)に位置させる。カッター40の切断圧力を高めたい場合には、
図17(A2)に示すように、ねじ環64Rを第2のねじ部64Bに沿ってばね66を強める方向(
図17の左方)に移動する。このようにすると、ばね66が強められるので、カッター40は、長尺材料1に高い圧力で食い込むので、弾力性や硬度が高い長尺材料1を確実に切断することができる。
【0048】
図示の実施の態様では、保持部材52が枢支アーム52Aの形態であったが、1対の案内溝に沿って垂直に昇降する形態であってもよく、また、回転駆動部材54は、二輪式の回転輪54Rの間に駆動ピン56Dの形態である係止部材56と解除ローラ58Rの形態の係止解除部材58を有していたが、偏心カムの形態としてこの偏心カムに係止部材及び係止解除部材を設けてもよい。