特許第6086937号(P6086937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086937栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086937
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/77 20170101AFI20170220BHJP
   E02B 3/14 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A01K61/00 313
   E02B3/14
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-79309(P2015-79309)
(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公開番号】特開2016-198017(P2016-198017A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2015年4月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511124862
【氏名又は名称】株式会社総合開発
(73)【特許権者】
【識別番号】000226356
【氏名又は名称】日建工学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】小田島 勉
(72)【発明者】
【氏名】山田 登志夫
(72)【発明者】
【氏名】葛西 博文
(72)【発明者】
【氏名】行本 卓生
(72)【発明者】
【氏名】中西 敬
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−137117(JP,A)
【文献】 特開2012−191892(JP,A)
【文献】 特開2002−054147(JP,A)
【文献】 特開2001−347511(JP,A)
【文献】 特開昭48−085381(JP,A)
【文献】 特開2006−081501(JP,A)
【文献】 特開2002−210863(JP,A)
【文献】 実開昭63−178447(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00
A01G 33/00−33/02
E02B 3/04−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアミノ酸と核酸の何れかを含む水溶性の栄養素を含有し、
かつ普通コンクリートからなる本体部(2)の表面に多孔質なポーラスコンクリートからなるポーラス層(3)を設けてなるコンクリートブロックであって、前記本体部(2)の表層部とポーラス層(3)の両方に栄養素を含有してなるコンクリートブロックの製造方法であって、
普通コンクリート(9)を型枠(4)に注入して所定の形状に成形して本体部(2)を製作する第1の成形工程と、この第1の成形工程で成形された前記本体部(2)の表面に多孔質なポーラスコンクリートからなるポーラス層(3)を成形する第2の成形工程とで前記コンクリートブロックを製造すると共に、
前記第1の成形工程で普通コンクリート(9)からなる前記本体部(2)を成形した後、普通コンクリート(9)の未硬化状態において、前記第2の成形工程で前記本体部(2)の表面に接して前記ポーラス層(3)となる栄養素(10)を添加してなるポーラスコンクリート原料(8)を供給し、前記ポーラスコンクリート原料(8)の一部を未硬化状態にある普通コンクリート(9)の表面から内部に侵入させて、ポーラスコンクリートからなる前記ポーラス層(3)を成形すると共に、前記ポーラスコンクリートの表面に、成形プレート(7)を押し付けて、前記型枠(4)を上下反転して、成形プレート(7)の上にポーラスコンクリートのポーラス層(3)と普通コンクリートの本体部(2)とを載せて、硬化していない普通コンクリートをポーラスコンクリートの隙間に侵入させて、ポーラスコンクリートと普通コンクリートを結合してポーラス層(3)と本体部(2)とを一体構造とし、前記ポーラスコンクリート原料(8)に含有する栄養素(10)を前記普通コンクリート(9)の表層部に添加して、前記ポーラス層(3)と前記普通コンクリート(9)の表層部に栄養素を添加することを特徴とする栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載される栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法であって、
前記型枠(4)に、成形室の開口部に沿って、ポーラスコンクリートを成形する周壁(5)を設けなる型枠(4)を使用し、
前記第2の成形工程において、ポーラスコンクリート原料(8)を前記周壁(5)の内側に供給した後、前記ポーラスコンクリートの表面に、表面を凹凸模様とする成形プレート(7)を押し付けて、前記型枠(4)を上下反転して、成形プレート(7)の上にポーラスコンクリートのポーラス層(3)と普通コンクリートの本体部(2)とを載せて、硬化していない普通コンクリートをポーラスコンクリートの隙間に侵入させて、ポーラスコンクリートに普通コンクリートを結合してポーラス層(3)と本体部(2)とを一体構造とすることを特徴とする栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載される栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法であって、
前記第2の成形工程において、前記ポーラス層(3)を成形するポーラスコンクリート原料(8)の栄養素添加量を、ポーラスコンクリート原料(8)に添加する水に溶解される栄養素(10)の最大溶解量よりも多くして、前記第2の成形工程で成形される前記ポーラス層(3)に非溶解状態の栄養素を添加することを特徴とする栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法であって、
前記第2の成形工程で成形するポーラスコンクリートからなる前記ポーラス層(3)の粗骨材量を、前記第1の成形工程で成形する普通コンクリート(9)からなる前記本体部(2)の粗骨材量よりも多くし、
かつ、前記第2の成形工程で成形する前記ポーラス層(3)であるポーラスコンクリートの細骨材量を、前記第1の成形工程で成形する前記本体部(2)である普通コンクリート(9)の細骨材量よりも少なくし、
さらに、前記第2の成形工程で成形する前記ポーラス層(3)のポーラスコンクリートの粗骨材/細骨材の骨材比率を、前記第1の成形工程で成形する前記本体部(2)の普通コンクリート(9)の粗骨材/細骨材の骨材比率よりも多くすることを特徴とする栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載される栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法であって、
前記第2の成形工程で成形する前記ポーラス層(3)のポーラスコンクリートが、骨材全体量に対する細骨材量を25重量%以下とし、前記第1の成形工程で成形する前記本体部(2)の普通コンクリート(9)が、骨材全体量に対する細骨材量を35重量%よりも多く80重量%以下とすることを特徴とする栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載される栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法であって、
前記第2の成形工程において、ポーラスコンクリート原料(8)に添加する栄養素量が、1立方メートルのコンクリートブロックに対して、200g以上であって20kg以下とすることを特徴とする栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、護岸、河川、海中、あるいは法面等に使用されて、自然環境、生育環境に優れた河川用ブロック又は海用ブロックであって、たとえば、護岸ブロック、根固めブロック、魚礁ブロック、藻礁ブロック等として使用される、藻類やコケ類等の植物および動物の栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水圏の環境改善に関心が高まっており、水生動植物の生態的バランスを良好に保つための方法や技術が開発されてきた。漁礁を沈めた海域や消波ブロックを設置した水域を、海藻や水生植物が繁茂する自然環境の場とし、魚類や水生動物が住み着きやすい生育環境の場所にする方法が施工されるようになってきている。良好な自然環境、生育環境を作るため、積ブロックに鉄イオンや鉄イオンのキレート化合物を担持したゼオライトなどの鉄吸着担体を混入してなる積ブロックは開発されている。(特許文献1参照)
【0003】
また、藻類に対して付着・育成効果を発揮する藻類着生誘発物質を添加しているコンクリートブロックも開発されている。(特許文献2参照)このコンクリートブロックは、アミノ酸や核酸を藻類着生誘発物質として添加するので、藻類を繁茂させて藻場を広範囲に再生できる特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−89126号公報
【特許文献2】特開2012−191892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゼオライトなどの鉄吸着担体を混入している積ブロックや藻類着生誘発物質を添加しているコンクリートブロックは、添加するゼオライトやアミノ酸などで、コンクリート製のコンクリートブロックに比較して効果的に藻類を繁茂できる特徴がある。しかしながら、これ等のコンクリートブロックは、鉄イオンやアミノ酸を速やかに表面に移行できず、設置して藻類が繁殖するのに時間がかかる欠点がある。
【0006】
本発明は、従来のコンクリートブロックの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、設置して速やかに藻類やコケ類等の植物を繁茂しながら、長期間にわたって藻類やコケ類等の植物の繁茂を継続して、水生小動物や水生昆虫等の優れた生育環境を実現できる栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法は、少なくともアミノ酸と核酸の何れかを含む水溶性の栄養素を含有し、かつ普通コンクリートからなる本体部2の表面に多孔質なポーラスコンクリートからなるポーラス層3を設けてなるコンクリートブロックにおいて、本体部2とポーラス層3の両方に栄養素を含有させてなるするコンクリートブロックの製造方法であって、普通コンクリート9を型枠4に注入して所定の形状に成形して本体部2を製作する第1の成形工程と、この第1の成形工程で成形された本体部2の表面に多孔質なポーラスコンクリートからなるポーラス層3を成形する第2の成形工程とでコンクリートブロックを製造する。さらに、コンクリートブロックの製造方法は、第1の成形工程で普通コンクリート9からなる本体部2を成形した後、普通コンクリート9の未硬化状態において、第2の成形工程で本体部2の表面に接してポーラス層3となる栄養素10を添加してなるポーラスコンクリート原料8を供給してポーラスコンクリート原料8の一部を未硬化状態にある普通コンクリート9の表面から内部に侵入させてポーラスコンクリートからなるポーラス層3を成形すると共に、ポーラスコンクリートの表面に、成形プレート7を押し付けて、型枠4を上下反転して、成形プレート7の上にポーラスコンクリートのポーラス層3と普通コンクリートの本体部2とを載せて、硬化していない普通コンクリートをポーラスコンクリートの隙間に侵入させて、ポーラスコンクリートに普通コンクリートを結合してポーラス層3と本体部2とを一体構造とし、ポーラス層(3)と本体部(2)の両方に栄養素を含有させる。
【0008】
以上の方法で製造される栄養素を徐放出するコンクリートブロックは、設置して速やかに藻類、コケ類、水生植物などの植物を繁茂しながら、長期間にわたって植物の繁茂を継続して、プランクトンなどの水生小動物、水生昆虫、魚等の優れた生育環境を長期間にわたって実現できる特徴がある。それは、以上の製造方法が、第1の成形工程で普通コンクリートの本体部を成形した後、普通コンクリートの未硬化状態において、第2の成形工程で本体部の表面に栄養素を添加してなるポーラスコンクリート原料を供給してポーラスコンクリートからなるポーラス層を成形するからである。未硬化状態にある普通コンクリートの表面にポーラスコンクリート原料が供給されると、図1の一部拡大断面図に示すように、ポーラスコンクリート原料8は未硬化状態にある普通コンクリート9に表面から内部に埋め込まれた状態となる。普通コンクリート9に埋め込まれたポーラスコンクリート原料8は栄養素10を含有しているので、普通コンクリート9の表層部に栄養素10が添加される。とくに、ポーラスコンクリート原料8に含まれるセメントモルタルや水分が、未硬化状態にある普通コンクリート9に表面から内部に浸透し、ポーラスコンクリート原料8の骨材11が普通コンクリート9に侵入して、普通コンクリート9の表層部に栄養素10を添加する。この状態で硬化したコンクリートブロックは、本体部の表層部に栄養素が添加される。すなわち、このコンクリートブロックは、ポーラス層のみでなく、本体部の表層部にも栄養素が含有される。
【0009】
また、このコンクリートブロックは、設置されて表層部が水に接触すると、ポーラスコンクリートの骨材の隙間に水が侵入する。隙間に侵入する水は、ポーラスコンクリートに含有される栄養素を溶解して、ポーラスコンクリートの表面に栄養素を徐放出する。ポーラスコンクリートは、骨材の間に連続する隙間があってここに侵入する水に栄養素を溶解するので、速やかに栄養素を徐放出する。したがって、ポーラス層に含まれる栄養素は、コンクリートブロックが水に浸漬されると、骨材の空隙に侵入する水に溶解されて、空隙からポーラスコンクリートの表面、すなわちコンクリートブロックの表面に徐放出される。ポーラスコンクリートは、図1の一部拡大断面図に示すように、骨材11の接点をセメント12で結合した状態にあって、セメント12に栄養素10を含有しているので、セメント12の栄養素10は、隙間13に侵入する水に溶解されて、ポーラス層3の表面に速やかに徐放出される。
【0010】
本体部の表層部に含有される栄養素は、ポーラス層に比較して表面移行が緩やかで、長期間にわたって、経時的に遅れてコンクリートブロックの表面から徐放出される。普通コンクリートはポーラスコンクリートに比較して、骨材の間の隙間が少なく、セメントや骨材を密に結合して硬化しているからである。密に結合する普通コンクリートの本体部は、栄養素の表面移行がポーラスコンクリートよりも緩やかで、含有する栄養素を長期間にわたって徐放出する。したがって、以上のコンクリートブロックは、設置した直後にはポーラス層から効果的に栄養素を徐放出し、その後は、普通コンクリートから長期間にわたって栄養素を徐放出する。また、以上の製造方法で製造されるコンクリートブロックは、ポーラス層の空隙率を調整して、水溶性の栄養素を排出できるタイミングを設置場所に最適な状態にコントロールできる特徴も実現する。それは、ポーラス層の空隙率を大きくして、セメントモルタル内の栄養素を速やかに排出でき、反対に空隙率を小さくして、栄養素を排出できるタイミングを遅くすることもできるからである。
【0011】
ちなみに、本発明の実施例の配合比のポーラス層を成形してるポーラスコンクリートは、水に浸漬して1日後に、添加する栄養素の15%が表面に移行するのに対して、普通コンクリートは水に浸漬して1日後にわずか5%しか表面に移行せず、ポーラスコンクリートは普通コンクリートの3倍の栄養素を表面に移行させる。さらに、4日後においては、ポーラスコンクリートは添加した栄養素の約25%が表面に移行するのに対し、普通コンクリートはわずか8%程度しか表面に移行しない。さらにまた、10日後にあっては、ポーラスコンクリートは栄養素の28%が表面に移行するのに対し、普通コンクリートは約10%しか表面に移行しない。このことからも、ポーラスコンクリートは水に浸漬すると速やかに栄養素を表面に移行し、普通コンクリートはゆっくりと長期間にわたって栄養素を表面に移行することがわかる。
【0012】
栄養素が速やかに表面に移行するコンクリートブロックは、設置して水に浸漬した後、速やかに藻類やコケ類などの植物を繁茂できる。また、普通コンクリートの表層部に栄養素を添加することで長期間にわたって栄養素を徐放出して、コンクリートブロックは表面の植物を長期間にわたって繁茂させる状態に継続できる特徴も実現する。すなわち、以上の方法で製造されるコンクリートブロックは、速やかに藻類やコケ類などの植物を繁殖しながら、長期間にわたって繁茂できるという相反する特徴を実現する。
【0013】
【0014】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、型枠4に、成形室の開口部に沿って、ポーラスコンクリートを成形する周壁5を設けなる型枠4を使用し、第2の成形工程において、ポーラスコンクリート原料8を周壁5の内側に供給した後、ポーラスコンクリートの表面に、表面を凹凸模様とする成形プレート7を押し付けて、型枠4を上下反転し、成形プレート7の上にポーラスコンクリートのポーラス層3と普通コンクリートの本体部2とを載せて、硬化していない普通コンクリートをポーラスコンクリートの隙間に侵入させて、ポーラスコンクリートに普通コンクリートを結合してポーラス層3と本体部2とを一体構造とすることができる。
以上の製造方法で製造されるコンクリートブロックも、栄養素を含有するポーラスコンクリートをより深く普通コンクリートの内部に埋め込むことができるので、栄養素をより長期間にわたって徐放出できる。
【0015】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、第2の成形工程において、ポーラス層3を成形するポーラスコンクリート原料8の栄養素添加量を、ポーラスコンクリート原料8に添加する水に溶解される栄養素10の最大溶解量よりも多くして、第2の成形工程で成形されるポーラスコンクリートに非溶解状態の栄養素10を添加することができる。
【0016】
以上の方法で製造されるコンクリートブロックは、ポーラスコンクリート原料に過飽和となって水に溶解されない状態の栄養素を添加できる。ポーラスコンクリート原料の水に溶解された状態で添加される栄養素も、その添加量が多いと、硬化する工程で水分の一部が消失して、過飽和な状態となって非溶解状態でポーラス層に含有される。過飽和な状態となった栄養素は硬化したポーラス層内に非溶解状態で分散して含有される。このコンクリートブロックは、ポーラス層に含まれる栄養素が、含有水に溶解される状態と、過飽和となって水に溶解されない状態とで含有される。水に溶解される栄養素は、浸透圧によって骨材の空隙に侵入する水に速やかに移行する。すなわち、骨材間の空隙に侵入する水に向かって速やかに表面に移行する。さらに、骨材を結合しているセメント内に非溶解状態で含有される栄養素は、セメント内に浸透する水に溶解された後、表面に移行して隙間に流出する。ポーラス層は、粗骨材の間に無数の空隙があって、ここに水が侵入するので、水に浸漬する状態で、骨材間のセメントに含有される栄養素が速やかに空隙に流出し、空隙からポーラスコンクリートの表面、すなわちコンクリートブロックの表面に移行する。ポーラスコンクリート原料に含まれる栄養素は、水に溶解される状態と、非溶解状態の両方の状態で普通コンクリートの表面層に埋め込まれて移行される。したがって、普通コンクリートの表面層にも、栄養素が含有水に溶解される状態と、非溶解状態の両方で含有される。普通コンクリートの含有水に溶解された栄養素は、非溶解状態で含有される栄養素よりも速やかに表面に移行する。しかしながら、普通コンクリートの表面層に非溶解状態で含有される栄養素は、表面移行がさらに緩やかになる。したがって、以上の方法で製造されるコンクリートブロックは、より長期間にわたって栄養素を徐放出できる特徴がある。
【0017】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、第2の成形工程で成形するポーラスコンクリートからなるポーラス層3の粗骨材量を、第1の成形工程で成形する普通コンクリートからなる本体部2の粗骨材量よりも多くし、かつ、第2の成形工程で成形するポーラス層3であるポーラスコンクリートの細骨材量を、第1の成形工程で成形する本体部2である普通コンクリート9の細骨材量よりも少なくし、さらに、第2の成形工程で成形するポーラス層3のポーラスコンクリートの粗骨材/細骨材の骨材比率を、第1の成形工程で成形する本体部2の普通コンクリート9の粗骨材/細骨材の骨材比率よりも多くすることができる。
なお、本明細書において、粗骨材とは、平均粒径を2.5mm以上とする骨材とし、細骨材とは、平均粒径を2.5mm未満とする骨材とする。
【0018】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、第2の成形工程で成形するポーラス層3のポーラスコンクリートが、骨材全体量に対する細骨材量を25重量%以下とし、第1の成形工程で成形する本体部2の普通コンクリート9が、骨材全体量に対する細骨材量を35重量%よりも多く80重量%以下とすることができる。
【0019】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、第2の成形工程において、ポーラスコンクリート原料8に添加する栄養素量を、1立方メートルのコンクリートブロックに対して、200g以上であって20kg以下とすることができる。
【0020】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、第1の成形工程で成形される本体部2のコンクリート原料にも栄養素を添加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例にかかるコンクリートブロックの製造方法で製造されるコンクリートブロックの一例を示す一部拡大断面図である。
図2】本発明の実施例にかかるコンクリートブロックの製造方法の製造工程を示す概略端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法を例示するものであって、本発明は栄養素を徐放出するコンクリートブロックの製造方法を以下のものに特定しない。
【0023】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0024】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、河川用ブロック又は海用ブロックであって、たとえば、護岸ブロック、根固めブロック、魚礁ブロック、藻礁ブロックに使用されるコンクリートブロックを製造する。護岸ブロックは、護岸、川岸、海岸等に使用され、あるいは積ブロックとして法面等に使用される。根固めブロックは、河川や海、湖沼等の底に敷設される。魚礁ブロックや藻礁ブロックは、川底や海底に設置され、あるいは水中に浮く状態で設置される。これ等のコンクリートブロックは、設置後、速やかに藻類やコケ類等の植物を表面に繁殖し、また、水生小動物や水生昆虫等の優れた生育環境を実現して自然環境に優しいブロックとして使用される。
【0025】
護岸ブロック、根固めブロック、魚礁ブロック、藻礁ブロック等に使用されるコンクリートブロックは、本体部を普通コンクリートとして、この普通コンクリートの本体部表面にポーラスコンクリートのポーラス層を固定している。護岸ブロックや根固めブロックは、好ましくは本体部の露出面にのみポーラスコンクリートのポーラス層を積層し、魚礁ブロックや藻礁ブロックは、本体部の全面又は底面を除く表面にポーラスコンクリートのポーラス層を積層して藻類やコケ類等の植物を繁殖させる。
【0026】
図1は、本発明の製造方法で製造されるコンクリートブロック1として、積ブロックとして使用される護岸ブロックの一例を示している。このコンクリートブロック1は、図2に示す製造工程で製造される。図1のコンクリートブロック1は、普通コンクリートを成形している本体部2の前面に、ポーラスコンクリートのポーラス層3を積層している。このコンクリートブロック1は、第1の成形工程で普通コンクリートの本体部2を成形し、第2の成形工程で普通コンクリートの本体部2の表面にポーラスコンクリートのポーラス層3を成形して製造される。
【0027】
図2(1)〜(4)に示すように、第1の成形工程は普通コンクリートで本体部2を成形する。図2(1)及び(2)に示すように、本体部2を成形する普通コンクリートは、型枠4の成形室にコンクリート原料を注入して成形する状態であって、セメントが硬化しない状態で脱型して型くずれしない即時脱型普通コンクリートである。即時脱型普通コンクリートは、上方を開口している型枠4の成形室に、振動をかけながら投入する。型枠4は、成形室の開口部に沿って、ポーラスコンクリートを成形する周壁5を設けている。
【0028】
その後、図2(3)に示すように、成形室の周壁5の内側にプレス板6を挿入して、上面を平面状に成形する。このとき、プレス板6に振動をかけながら、またはプレス板6と型枠4の両方に振動をかけながらプレスして、即時脱型普通コンクリートの上面を平面状に成形する。ただ、この工程において、普通コンクリートの上面は、必ずしも完全な平面状に成形する必要はない。その後、図2(4)に示すようにプレス板6を成形室の開口部から除去して、ポーラスコンクリートを成形する領域を即時脱型普通コンクリートの上面に設ける。
【0029】
さらに、図2(5)〜(8)に示すように、第2の成形工程において、栄養素を添加してなるポーラスコンクリートでポーラス層3を成形する。第2の成形工程では、第1の成形工程で成形された本体部2の普通コンクリートが未硬化状態で、本体部2の表面に接してポーラス層3となるポーラスコンクリート原料を供給してポーラス層3を成形する。ポーラス層3を成形するポーラスコンクリートは、即時脱型普通コンクリートと同じように、成形室にコンクリート原料を投入して成形する状態であって、セメントが硬化しない状態で脱型して型くずれしないコンクリートである。図2(5)に示すように、ポーラスコンクリートは、成形された本体部2の上の成形室であって周壁5の内側において、未硬化状態の普通コンクリートの表面に供給される。このとき、ポーラスコンクリート原料は、振動を与えながら供給し、あるいは、プレス板6でプレスしながら供給し、あるいはまた、プレス板6でプレスする状態で、プレス板6や型枠4に振動をかけながら供給する。普通コンクリートの表面に供給されるポーラスコンクリート原料は、未硬化状態にある普通コンクリートの表面から内部に侵入する状態となり、ポーラスコンクリート原料に含有される栄養素が普通コンクリートの表層部に添加される。
【0030】
その後、図2(6)に示すように、ポーラスコンクリートの表面に、表面を凹凸模様とする成形プレート7を押し付けて、ポーラスコンクリートの表面を凹凸模様に成形する。その後、図2(7)に示すように、型枠4を上下反転して、成形プレート7の上にポーラスコンクリートのポーラス層3と普通コンクリートの本体部2とを載せる状態とする。この状態で、振動締固めして、硬化していない普通コンクリートをポーラスコンクリートの隙間に侵入させて、ポーラスコンクリートに普通コンクリートを結合してポーラス層3と本体部2とを一体構造とする。締固めをした直後に、図2(8)に示すように、成形プレート7を降下させて本体部2とポーラス層3を下げ、あるいは型枠4を持ち上げて、本体部2とポーラス層3とを一体構造とするコンクリートブロック1を脱型する。本体部2の普通コンクリートと、ポーラス層3のポーラスコンクリートが硬化した後、図2(9)に示すように、成形プレート7を外して完成されたコンクリートブロック1とする。
【0031】
以上の工程で製造されるコンクリートブロック1は、第2の成形工程でポーラス層を成形するポーラスコンクリート原料に、藻類やコケ類などを含む水溶性の栄養素を添加すると共に、未硬化状態にある普通コンクリートの表面にポーラスコンクリート原料を供給することで、図1の一部拡大断面図に示すように、ポーラスコンクリート原料8に含有される栄養素10が普通コンクリート9の表層部に添加される。とくに、ポーラスコンクリート原料8に含まれるセメントモルタルや水分が、未硬化状態にある普通コンクリート9の表面から内部に浸透し、また、ポーラスコンクリート原料8の骨材11が普通コンクリート9に侵入することにより、普通コンクリート9の表面から内部にポーラスコンクリート原料8が埋め込まれた状態となり、普通コンクリート9の表層部に栄養素10が添加される。
【0032】
ポーラスコンクリートは、図1の一部拡大断面図に示すように、骨材11の接点をセメント12で結合して、骨材11の間に隙間13を設けている。ポーラスコンクリートは、普通コンクリートよりも骨材間の隙間が多く、普通コンクリートよりも多孔質で通水性に優れている。ポーラスコンクリートは、粗骨材量を普通コンクリートよりも多くして、骨材の間に隙間を設けて多孔質な状態としている。また、ポーラスコンクリートは、粗骨材を普通コンクリートよりも多くして粗骨材間の隙間を多くするが、粗骨材の隙間に充填される細骨材量を、普通コンクリートよりも少なくして、細骨材が粗骨材の隙間を閉塞するのを少なくしている。したがって、ポーラスコンクリートは、粗骨材/細骨材の骨材比率を、普通コンクリートの粗骨材/細骨材の骨材比率よりも多くして粗骨材間の隙間を多くしている。ここで、粗骨材とは、平均粒径が2.5mm以上の骨材とし、細骨材とは、平均粒径2.5mm未満の骨材として区別している。
【0033】
ポーラスコンクリートは、骨材全体量に対する細骨材量を25重量%以下とし、普通コンクリートの骨材全体量に対する細骨材量を35重量%以上80重量%以下として、ポーラスコンクリートは細骨材量を少なく、普通コンクリートは細骨材量を多くして、ポーラスコンクリートは普通コンクリートよりも多孔質な状態とする。
【0034】
ポーラス層のポーラスコンクリートは、ポーラスコンクリート原料に藻類やコケ類等の植物および動物の栄養素を添加している。栄養素は、アミノ酸と核酸の少なくともひとつを含んでいる。栄養素のアミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等である。核酸はイノシン、グアニン、アデノシン、ウリジン、チミジン等である。
【0035】
ポーラスコンクリートは、ポーラスコンクリート原料の栄養素添加量を、コンクリート原料に添加する水に溶解される最大溶解量よりも多くすることができる。すなわち、ポーラスコンクリート原料には、これに添加する水に溶解される最大溶解量よりも多量の栄養素を添加することができる。このポーラスコンクリートは、ポーラスコンクリート原料に対して、水に溶解される栄養素と水に溶解されない粉末状の栄養素が添加される。このポーラスコンクリートは、硬化した状態では、多量の栄養素が非溶解状態となって全体に均一に分散されて、ポーラスコンクリートから多量の栄養素を長い期間にわたって放出する。ただ、本発明のコンクリートブロックは、ポーラスコンクリートに加えて、普通コンクリートの表面層からも栄養素を放出し、ポーラスコンクリートが栄養素を放出した後には普通コンクリートの表面層から栄養素を表面に移行して放出するので、必ずしもポーラスコンクリートの原料に、栄養素を過飽和な状態で添加する必要はない。とくに、セメントが硬化して水分が減少するので、この状態で栄養素の一部を析出して非溶解状態の粉末となって分散することができる。ポーラスコンクリートの原料に、水に溶解されるよりも多量の栄養素を混合するコンクリートブロックは、非溶解状態でポーラスコンクリートに含有される栄養素量を相当に多くでき、ポーラスコンクリートから多量の栄養素を長い期間にわたって放出できる。また、ポーラスコンクリート原料に含有される栄養素量を相当に多くすることで、第2の成形工程において、未硬化状態の普通コンクリートの表面層に添加される栄養素の添加量も多くでき、普通コンクリートの表層部からもより長期間にわたって栄養素を放出できる。
【0036】
普通コンクリートは、好ましくは即時脱型普通コンクリートである。即時脱型普通コンクリートは、型枠で成形した後、セメントを硬化しない状態で脱型できるので能率よく多量生産できる。ただ、本発明のコンクリートブロックは、普通コンクリートを必ずしも即時脱型普通コンクリートとする必要はなく、流し込み普通コンクリートとすることもできる。流し込み普通コンクリートは、混練したコンクリート原料を型枠の成形室に振動を加えながら、又は振動を加えることなく充填して成形できる。本体部を流し込み普通コンクリートとするコンクリートブロックは、型枠にコンクリート原料を充填した後、未硬化状態のコンクリート原料の上面にポーラスコンクリートの原料を充填し、普通コンクリートが硬化した後、脱型して製作される。
【0037】
さらに、本体部2の原料となる普通コンクリートにも、藻類やコケ類などを含む水溶性の栄養素を添加することができる。すなわち、コンクリートブロック1は、第1の成形工程で成形される普通コンクリートからなる本体部2の原料と、第2の成形工程で成形されるポーラスコンクリートからなるポーラス層3の原料の両方に、藻類やコケ類などを含む水溶性の栄養素を添加して、普通コンクリートの本体部2とポーラスコンクリートのポーラス層3の両方に栄養素を添加することもできる。このコンクリートブロックは、本体部を成形する普通コンクリートに添加される栄養素により、さらに長期間にわたって栄養素を徐放出できる。
【0038】
栄養素が添加される普通コンクリートも、コンクリート原料への栄養素添加量を、コンクリート原料に添加する水に溶解される最大溶解量よりも多くすることができる。この普通コンクリートは、コンクリート原料中に溶解される栄養素に加えて、さらに水に溶解されない粉末状の栄養素も添加される。このコンクリートブロックは、普通コンクリートが硬化した状態では、多量の栄養素が非溶解状態となって全体に均一に分散されて、長期間にわたって栄養素を効果的に表面に移行できる。ただ、普通コンクリートは、長期間にわたって栄養素を経時的に表面に移行するので、必ずしもコンクリート原料に、栄養素を過飽和な状態で添加する必要はない。とくに、セメントが硬化して水分が減少するので、この状態で栄養素の一部を析出して非溶解状態の粉末となって分散することもできるからである。
【0039】
さらに、普通コンクリートへの栄養素添加量は、ポーラスコンクリートへの栄養素添加量よりも少なくすることができる。言い換えると、ポーラス層のポーラスコンクリートと本体部の普通コンクリートの両方に栄養素を添加するコンクリートブロックは、ポーラスコンクリートの栄養素添加量を普通コンクリートよりも多くする。これにより、コンクリートブロックを設置した後、速やかに多量の栄養素を放出して、短期間に藻類やコケ類等の植物を繁茂できる。
【0040】
以上のコンクリートブロックは、ポーラスコンクリートと普通コンクリートの配合比を以下の範囲とする。
【0041】
[ポーラス層のポーラスコンクリート]
(1)セメント使用量…200〜400kg/m3
(2)水/セメント比…20〜40%
(3)水混合量…………40〜160kg/m3
(4)細骨材/骨材……0〜25%
(5)セメントに対する栄養素混合率…0.1重量%〜5重量%
(6)栄養素混合量……200g〜20kg/m3
【0042】
栄養素のアミノ酸は1kgの水に125g溶解される。したがって、ポーラスコンクリートに添加する水量を40〜160kgとすれば、5〜20kgのアミノ酸が溶解される。したがって、水量を120kgとして、アミノ酸の添加量を20kgとする状態では、5kgの栄養素が非溶解状態としてコンクリート原料に含まれる。水量に対するアミノ酸量を多くして、コンクリート原料の非溶解状態の栄養素を増加できる。
【0043】
[本体部の普通コンクリート]
(1)セメント使用量…200〜400kg/m3
(2)水/セメント比…30〜60%
(3)水混合量…………60〜240kg/m3
(4)細骨材/骨材……35〜80重量%
【0044】
さらに、栄養素が添加される普通コンクリートにおいては、栄養素を以下の条件で添加する。
(5)セメントに対する栄養素混合率…0.1重量%〜5重量%
(6)栄養素混合量……200g〜20kg/m3
ここで、普通コンクリートに添加する水量を60〜240kgとすれば、7.5〜30kgのアミノ酸が溶解される。したがって、水量を120kgとして、アミノ酸添加量を15kgとすれば、アミノ酸はコンクリート原料の水に完全に溶解されて、非溶解状態とはならない。水量に対するアミノ酸量を多くして、コンクリート原料の非溶解状態の栄養素を増加できる。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
(第1の成形工程)
以下の配合比で普通コンクリートのコンクリート原料を調整する。
セメント量……………265kg/m3
混練水量………………100kg/m3
水セメント比……………38重量%
細骨材…………………1122kg/m3
粗骨材……………………831kg/m3
【0046】
以上の原料を混合して、図2(2)で示すように型枠4の成形室に充填した後、図2(3)に示すように、成形室の周壁5の内側にプレス板6を挿入して、上面を平面状に成形する。このとき、プレス板6に振動をかけながらプレスして、普通コンクリートの上面を平面状に成形して本体部2を成形する。その後、図2(4)に示すようにプレス板6を成形室の開口部から除去して、ポーラスコンクリートを成形する領域を即時脱型普通コンクリートの上面に設ける。
【0047】
(第2の成形工程)
以下の配合比でポーラスコンクリートの原料を調整する。
セメント量……………380kg/m3
混練水量………………95kg/m3
水セメント比……………25重量%
細骨材…………………101kg/m3
粗骨材……………………1532kg/m3
アミノ酸混合量……………10kg/m3
非溶解状態のアミノ酸量…0%
【0048】
以上の原料を混合して、図2(5)で示すように、普通コンクリートの上に設けた周壁5の成形室に充填する。ポーラス層3を成形するポーラスコンクリート原料は、未硬化状態の普通コンクリートの表面に供給される。ポーラスコンクリート原料は、振動を与えながら、あるいは、プレス板6でプレスしながら供給されて、一部が未硬化状態にある普通コンクリートの表面から内部に侵入する状態となり、ポーラスコンクリート原料に含有される栄養素が普通コンクリートの表層部に添加される。その後、図2(6)に示すように、ポーラスコンクリートの表面に、表面を凹凸模様とする成形プレート7を押し付けて、ポーラスコンクリートの表面を凹凸模様に成形する。さらに、図2(7)に示すように、型枠4を上下反転して、成形プレート7の上にポーラスコンクリートのポーラス層3と普通コンクリートの本体部2とを載せる状態とする。この状態で、振動締固めして、硬化していない普通コンクリートをポーラスコンクリートの隙間に侵入させて、ポーラスコンクリートに普通コンクリートを結合してポーラス層3と本体部2とを一体構造とする。締固めをした直後に、図2(8)に示すように、成形プレート7を降下させて本体部2とポーラス層3を下げ、あるいは型枠4を持ち上げて、本体部2とポーラス層3とを一体構造とするコンクリートブロックを脱型する。本体部2のポーラスコンクリートと、ポーラス層3のポーラスコンクリートが硬化した後、図2(9)に示すように、成形プレート7を外して完成されたコンクリートブロック1とする。
【0049】
[実施例2]
第2の成形工程において、ポーラスコンクリートの原料に添加するアミノ酸を10kg/m3から15kg/m3に増加する以外、実施例1と同じようにしてコンクリートブロックを製作する。この製造方法は、第2の成形工程において、全てのアミノ酸がコンクリート原料の水に溶解されず、3.1kg/m3のアミノ酸が非溶解状態でコンクリート原料に混合される。したがって、第2の成形工程で型枠に充填するコンクリート原料に3.1kg/m3の栄養素が非溶解状態で混合され、水に溶解されないアミノ酸を含む状態で成形室に充填される。したがって、この製造方法で製造されるコンクリートブロックは、ポーラス層のポーラスコンクリートに多量のアミノ酸が非溶解状態で均一に分散される。
【0050】
[実施例3]
第1の成形工程において、普通コンクリートの原料に、10kg/m3のアミノ酸を混合して添加する以外、実施例1と同じようにしてコンクリートブロックを製作する。この製造方法は、第1の成形工程において、全てのアミノ酸がコンクリート原料の水に溶解する。したがって、第1の成形工程で型枠に充填するコンクリート原料に非溶解状態の栄養素は含まれず、全ての栄養素が水に溶解する状態で成形室に充填される。
【0051】
[実施例4]
第1の成形工程と第2の成形工程において、コンクリート原料に添加するアミノ酸を10kg/m3から15kg/m3に増加する以外、実施例3と同じようにしてコンクリートブロックを製作する。この製造方法は、第1の成形工程では、全てのアミノ酸がコンクリート原料の水に溶解されず、2.5kg/m3のアミノ酸が非溶解状態でコンクリート原料に混合され、第2の成形工程では、全てのアミノ酸がポーラスコンクリート原料の水に溶解されず、3.1kg/m3のアミノ酸が非溶解状態でコンクリート原料に混合される。したがって、第1の成形工程で型枠に充填するコンクリート原料には2.5kg/m3の栄養素が非溶解状態で混合され、第2の成形工程で型枠に充填するコンクリート原料には3.1kg/m3の栄養素が非溶解状態で混合されて、水に溶解されないアミノ酸を含む状態で成形室に充填される。したがって、この製造方法で製造されるコンクリートブロックは、普通コンクリートとポーラスコンクリートの両方に多量のアミノ酸が非溶解状態で均一に分散される。
【0052】
[比較例]
実施例1において、普通コンクリートの表面にポーラスコンクリートを設ける工程を省力して、全体を普通コンクリートで成形するコンクリートブロックを製作する。
【0053】
実施例1〜4のコンクリートブロックと比較例1のコンクリートブロックを、水深2m前後の海中に沈めて、海藻の着床生育の様子を観察した。さらに同じようにして製作した、実施例のブロックと比較例のブロックとを、水深2mの河川に沈めて、珪藻の着床生育の様子を観察すると、実施例1〜4のコンクリートブロックは、1週間経過後に海藻の着生が認められたが、比較例1のコンクリートブロックは、1週間経過後には、海藻の着生が認められなかった。
【0054】
とくに、本発明の実施例2と4のコンクリートブロックは、ポーラスコンクリートの原料に非溶解状態のアミノ酸を添加するので、ポーラスコンクリートに多量のアミノ酸が添加されることから、1週間経過後において、この実施例のコンクリートブロックは実施例1及び3のコンクリートブロックよりも多量の海藻が付着された。さらに、実施例4のコンクリートブロックは、普通コンクリートとポーラスコンクリートの両方に多量のアミノ酸を非溶解状態の粉末状として均一に分散するように混合するので、6ヶ月経過後において、表面により多量の藻類やコケ類等の植物が繁茂する。
【0055】
以上の実施例は、栄養素としアミノ酸であるアルギニンを使用するが、他のアミノ酸や核酸も藻類やコケ類等の植物および動物の栄養素として作用することから、アルギニン以外のアミノ酸、あるいは核酸からなる栄養素を使用しても同等の効果が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のコンクリートブロックは海や河川において積ブロック等の護岸ブロックや根固めブロックとして使用され、あるいは魚礁ブロックや藻礁ブロックとして使用されて表面に速やかに藻類やコケ類等の植物を繁殖し、さらに動物に栄養素を供給して自然環境、生育環境に優れた状態を実現する。
【符号の説明】
【0057】
1…コンクリートブロック
2…本体部
3…ポーラス層
4…型枠
5…周壁
6…プレス板
7…成形プレート
8…ポーラスコンクレート原料
9…普通コンクリート
10…栄養素
11…粗骨材
12…セメント
13…隙間
図1
図2