特許第6086959号(P6086959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086959光ドロップケーブル用の信号減衰器、およびそれを使用した信号減衰・再開方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086959
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】光ドロップケーブル用の信号減衰器、およびそれを使用した信号減衰・再開方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20170220BHJP
   G02B 6/48 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   G02B6/02 436
   G02B6/48
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-161514(P2015-161514)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-40729(P2017-40729A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2016年2月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393011670
【氏名又は名称】兼藤産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】後藤 欣哉
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−033173(JP,A)
【文献】 特開2002−139651(JP,A)
【文献】 特開2008−039827(JP,A)
【文献】 特開平05−215923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
6/02
6/245−6/25
6/46−6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光ファイバ心線とその光ファイバ芯線を支持する支持線とが被覆部材によって覆われた光ドロップケーブル用の信号減衰器であって、
前記支持線に掛止される減衰機本体に、前記光ファイバ心線の中を通る信号を減衰できるように当該光ファイバ心線を絡げて曲げる複数の信号減衰用突部が立設されていることを特徴とする光ドロップケーブル用の信号減衰器。
【請求項2】
請求項1記載の光ドロップケーブル用の信号減衰器であって、
前記複数の信号減衰用突部は、それぞれ、
前記減衰機本体のカバーの外側面に立設されており、
そのカバーは前記減衰機本体に対し着脱可能に設けられていることを特徴とする光ドロップケーブル用の信号減衰器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光ドロップケーブル用の信号減衰器であって、
前記複数の信号減衰用突部は、それぞれ、
前記減衰機本体に立設された軸部と、
その軸部先端に設けられ、当該軸部先端から前記光ファイバ心線が脱落しないように当該軸部の外径よりも大きい抜止め部とから構成されていることを特徴とする光ドロップケーブル用の信号減衰器。
【請求項4】
少なくとも光ファイバ心線とその光ファイバ芯線を支持する支持線とが被覆部材によって覆われた光ドロップケーブルを加入者宅へ引き込み接続した後、加入者宅への当該光ドロップケーブルを介した信号の送受信を停止する場合には、前記支持線と前記光ファイバ心線を所定の長さだけ切り離すと共に、前記支持線を切断し、
前記支持線の切断された両端部を突き合わせるように請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の光ドロップケーブル用の信号減衰器の減衰器本体を掛止すると共に、当該信号減衰器本体に設けた複数の信号減衰用突部に前記支持線から切り離した前記光ファイバ心線を絡めながら曲げることによって前記光ファイバ心線の中を通る信号を減衰し、
加入者宅への信号の送受信を再開する場合には、前記複数の信号減衰用突部に絡めながら前記光ファイバ心線の中を通る信号が減衰するように曲げていた前記光ファイバ心線を前記複数の信号減衰用突部から開放して伸ばすことを特徴とする光ドロップケーブル用の信号減衰器を使用した信号減衰・再開方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルテレビや電話回線、インターネット回線等のデータや信号を加入者宅へ供給する光ファイバ心線を内蔵した光ドロップケーブル用の信号減衰器、およびそれを使用した信号減衰・再開方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケーブルテレビやインターネット回線等の放送と通信の進歩に応じて、データ量が増大しているため、同軸ケーブルからより高速、データ量が大きい光ファイバの信号ケーブル(通信ケーブル)に置き換えられている。
【0003】
ところで、このようなケーブルテレビやインターネット回線等は、通常は有料なため、加入者が料金を滞納したり、契約解除があった場合には、光ドロップケーブル中の光ファイバ心線を切断している。
【0004】
しかしながら、料金滞納の場合には、加入者が料金滞納後に溜めた料金を納付して契約を継続する場合も多々ある。このような場合、料金の滞納により光ドロップケーブル中の光ファイバ心線を切断しているため、契約を継続する際に、再度、加入者宅へ光ドロップケーブルを敷設すると費用が嵩む為、通常は、切断した光ドロップケーブル中の光ファイバ心線を再接続して対応している。
【0005】
そのため、一度切断した光ファイバ心線を再接続する光ファイバの再接続方法として、例えば、光ファイバケーブルから外被を所定長さ剥ぎ取って内部の光ファイバを取り出し切断し、その切断した光ファイバの一端を光ファイバドロップケーブルに接続後、切断した光ファイバを、再接続用の光ファイバを介して再接続する光ファイバの再接続方法であって、外被内に、光ファイバに接するように、光ファイバの長さ方向に沿って延在する中空部材を設け、所定長さ剥ぎ取った部位近傍の外被を一部剥ぎ取り、これら2箇所の剥ぎ取った部位相互間の外被内の中空部材内に、再接続用の光ファイバを挿入することを特徴とする光ファイバの再接続方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−33173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の特許文献1に記載の光ファイバの再接続方法では、加入者が契約後、料金を滞納したり、さらには料金滞納後に料金を納付する等、光ファイバ心線を使用したサービスを一時停止したり、一時停止後にサービス提供を再開する場合でも、光ファイバ心線を切断し、その後、一度切断した光ファイバ心線を再接続する必要があるため、光ファイバ心線を再接続(再結線)に手間がかかるという問題があった。
【0008】
特に、光ファイバ心線の再接続作業には熟練した技術が必要である為、熟練した技術が無い作業者が再接続した場合、加入者宅への信号が減衰して、十分な信号を加入者に提供できないこともある。
【0009】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、加入者が契約後、料金を滞納したり、さらには料金滞納後に料金を納付する等、光ファイバ心線を使用したサービスを一時停止したり、一時停止後にサービス提供を再開する場合でも、光ドロップケーブル中の光ファイバ心線を切断および再接続することなく、光ファイバ心線を使用したサービスの一時停止および提供再開を容易に行うことができる光ドロップケーブル用の信号減衰器、およびそれを使用した信号減衰・再開方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係る光ドロップケーブル用の信号減衰器は、少なくとも光ファイバ心線とその光ファイバ芯線を支持する支持線とが被覆部材によって覆われた光ドロップケーブル用の信号減衰器であって、前記支持線に掛止される減衰機本体に、前記光ファイバ心線の中を通る信号を減衰できるように当該光ファイバ心線を絡げて曲げる複数の信号減衰用突部が立設されていることを第1の特徴とする。
また、本発明に係る光ドロップケーブル用の信号減衰器は、上述の光ドロップケーブル用の信号減衰器であって、上述の光ドロップケーブル用の信号減衰器において、前記複数の信号減衰用突部は、それぞれ、前記減衰機本体のカバーの外側面に立設されており、そのカバーは前記減衰機本体に対し着脱可能に設けられていることを第2の特徴とする。
また、本発明に係る光ドロップケーブル用の信号減衰器は、上述の光ドロップケーブル用の信号減衰器において、前記複数の信号減衰用突部は、それぞれ、前記減衰機本体に立設された軸部と、その軸部先端に設けられ、当該軸部先端から前記光ファイバ心線が脱落しないように当該軸部の外径よりも大きい抜止め部とから構成されていることを第3の特徴とする。
また、本発明に係る光ドロップケーブル用の信号減衰器を使用した信号減衰・再開方法は、少なくとも光ファイバ心線とその光ファイバ芯線を支持する支持線とが被覆部材によって覆われた光ドロップケーブルを加入者宅へ引き込み接続した後、加入者宅への当該光ドロップケーブルを介した信号の送受信を停止する場合には、前記支持線と前記光ファイバ心線を所定の長さだけ切り離すと共に、前記支持線を切断し、前記支持線の切断された両端部を突き合わせるように請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の光ドロップケーブル用の信号減衰器の減衰器本体を掛止すると共に、当該信号減衰器本体に設けた複数の信号減衰用突部に前記支持線から切り離した前記光ファイバ心線を絡めながら曲げることによって前記光ファイバ心線の中を通る信号を減衰し、加入者宅への信号の送受信を再開する場合には、前記複数の信号減衰用突部に絡めながら前記光ファイバ心線の中を通る信号が減衰するように曲げていた前記光ファイバ心線を前記複数の信号減衰用突部から開放して伸ばすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光ドロップケーブル用の信号減衰器およびそれを使用した信号減衰・再開方法によれば、支持線に掛止される減衰機本体に、光ファイバ心線の中を通る信号を減衰できるように当該光ファイバ心線を絡げて曲げる複数の信号減衰用突部を設けたため、加入者宅への信号の送受信を停止する場合には、信号減衰器本体に設けた複数の信号減衰用突部に支持線から切り離した光ファイバ心線およびテンションメンバを絡めながら曲げることによって光ファイバ心線の中を通る信号を減衰させて加入者宅へのサービス提供を中断する。
その一方、加入者宅へのサービス提供を再開する場合には、信号減衰器本体に設けた複数の信号減衰用突部で曲げることによって信号を減衰させていた光ファイバ心線を複数の信号減衰用突部から開放、すなわち取外して伸ばして、加入者宅へ供給している信号の減衰を止める。
そのため、本発明に係る光ドロップケーブル用の信号減衰器およびそれを使用した信号減衰・再開方法によれば、加入者が契約後、料金を滞納したり、さらには料金滞納後に料金を納付する等、光ファイバ心線を使用したサービスを一時停止したり、一時停止後にサービス提供を再開する場合でも、光ドロップケーブル中の光ファイバ心線を切断および再接続することなく、光ファイバ心線を使用したサービスの一時停止および提供再開を容易に行うことができ、コストを低減できると共に、工事品質および作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の光ドロップケーブルの一例を示す断面斜視図である。
図2】本発明に係る実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器の平面図である。
図3】本発明に係る実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器の左側面図である。
図4】本発明に係る実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器の正面図である。
図5】本発明に係る実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器の背面図である。
図6】本発明に係る実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器の底面図である。
図7】本発明に係る実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器からカバーを取外した状態の減衰器本体の底面図である。
図8】(a)〜(c)それぞれ本発明に係る実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器のカバーの左側面図、正面図、底面図である。
図9】光ドロップケーブルを加入者宅へ引き込んだ状態を示す図である。
図10】(a)〜(c)それぞれ光ドロップケーブルにおいて支持線側と光ファイバ心線側を分離させた状態、分離した支持線側のセンターを切断した状態、切断したセンターから両側をそれぞれ3cmほどさらに切断した状態を示す図である。
図11図10に示すように切断した光ドロップケーブルの支持線に本実施形態の信号減衰器を掛止した状態を示す図である。
図12】料金の滞納等がありサービス提供を一時停止するため、図11に示すように切断した光ドロップケーブルの支持線に掛止した本実施形態の信号減衰器の複数の信号減衰用突部に、光ドロップケーブルから分離した光ファイバ心線側を絡めて信号が減衰するように曲げた状態を示す正面図である。
図13図11に示すように切断した光ドロップケーブルの支持線に掛止した本実施形態の信号減衰器の複数の信号減衰用突部に、光ドロップケーブルから分離した光ファイバ心線側を絡めて信号が減衰するように曲げた状態を示す底面図である。
図14】滞納していた料金の納付等があり本実施形態の信号減衰器によって一時停止させていたサービスを再開させるため複数の信号減衰用突部に絡めた光ファイバ心線側を外して伸ばした状態を示す正面図である。
図15】本発明に係る実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器のカバーへの複数の信号減衰用突部の別の取付け状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る光ドロップケーブル用の信号減衰器、およびそれを使用した信号減衰・再開方法の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態はあくまで本発明の一例であり、本発明が下記に説明する実施形態に限定されるものはなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0014】
<本実施形態の光ドロップケーブルの構成>
【0015】
本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1で使用する光ドロップケーブル2は、例えば、図1に示すように、ケーブルテレビのテレビ信号やインターネット回線等の通信信号を通す光ファイバ心線21と、その光ファイル心線21を支持する鋼線等からなる支持線22と、光ファイバ心線21を挟み込むようにテンションメンバ23,23とが被覆部材24によって覆われて構成されている。尚、光ドロップケーブル2には、種々のものがあり、光ファイバ心線21の数は、1本(1芯)でも、2芯や4芯等の複数本でも良い。また、テンションメンバ23,23は省略されていても良いし、光ドロップケーブル2にクマゼミ対策などが施されていても良い。
【0016】
また、本実施形態では、光ドロップケーブル2から幅狭部24aを切断することによって、支持線22および支持線22周囲の被覆部材24からなる支持線側2aと、光ファイバ心線21、テンションメンバ23,23、及びそれら周囲の被覆部材24からなる光ファイバ心線側2bとに分離することができる。
【0017】
<本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器の全体構成>
【0018】
本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1は、図1に示すように構成された光ドロップケーブル2の光ファイバ心線21を通る信号を減衰させてサービス提供を停止したり、その減衰を停止してサービス再開させるもので、図2図8に示すように、光ドロップケーブル2の支持線22に掛止される減衰機本体11と、その減衰機本体11に対し着脱可能で、光ファイバ心線21の中を通る信号を減衰できるように当該光ファイバ心線21を絡げて曲げる複数(ここでは、例えば、7本とする。)の信号減衰用突部13が立設されたカバー12とから構成されている。
【0019】
減衰機本体11は、長尺の円筒状(円柱状)のもので、左側減衰機本体11Lと右側減衰機本体11Rとの2分割構造で、左側減衰機本体11Lと右側減衰機本体11Rの前後をボルト14aおよびナット14bにより結合されるように構成されている。
【0020】
減衰機本体11の中央上部、すなわち左側減衰機本体11Lと右側減衰機本体11Rの対向面の中央上部には、その長手方向に幅狭部24aを切断することによって分離された支持線22および支持線22周囲の被覆部材24からなる支持線側2aを通す支持線側用通し孔11aを設けるための支持線側用通し溝11R1,11L1が形成されている。
【0021】
一方、減衰機本体11の中央下部、すなわち左側減衰機本体11Lと右側減衰機本体11Rの対向面の中央下部には、その長手方向に幅狭部24aを切断することによって支持線22から分離した光ファイバ心線21、テンションメンバ23,23、及びそれら周囲の被覆部材24からなる光ファイバ心線側2bを通すための光ファイバ心線側用通し溝11R2,11L2が形成されている。
【0022】
カバー12は、減衰機本体11の下側面側に係止爪等により着脱自在に取り付けられるもので、図8(a)等に示すように、円筒状(円柱状)の減衰機本体11の下側面の形状に合わせてほぼ半円形状に形成されている。
【0023】
複数の信号減衰用突部13は、それぞれ、市販のネジなど使用して、図8(a)〜(c)等に示すようにカバー12の底面に立設されるもので、カバー12の底面にネジ等を螺入して立設したもので、そのネジ等の軸部13aと、その軸部13a先端に設けられ、当該軸部13a先端から光ファイバ心線21が脱落しないように当該軸部13aの外径よりも大きいネジ等の頭部である抜止め部13bとから構成されている。
【0024】
そして、本実施形態では、7本の信号減衰用突部13は、光ファイバ心線21を絡げて曲げた際に、光ファイバ心線21の中を通る信号を減衰できるよう、図8(a)〜(c)に示すように複数(ここでは、例えば、7本とする。)の信号減衰用突部13が直線状でなく、ジグザグないしは千鳥足状等に配置され、特に、カバー12の長手方向中央で大きく曲がるように配置されている。
【0025】
ただし、図8(c)等に示す複数(ここでは、例えば、7本とする。)の信号減衰用突部13の配置は、あくまで一例であり、この配置に限定されるものではない。また、信号減衰用突部13は、7本に限定されることはなく、カバー12の表面から突設して、光ファイバ心線21を含む光ファイバ心線側2bを絡めて曲げることができる配置や本数であれば、特にこだわらない。
【0026】
<光ドロップケーブル用の信号減衰器1を使用した信号減衰・再開方法の動作>
次に、光ドロップケーブル用の信号減衰器1を使用した信号減衰・再開方法の動作について説明する。
【0027】
(加入者宅へ光ドロップケーブル2を引き込んだ状態)
まず、ケーブルTV会社等と加入者宅3のユーザと間で契約が成立しており、図9に示すように、加入者宅3へ光ドロップケーブル2を引き込んだ状態を示している。この場合、加入者宅3のユーザは、例えば、月ごと、または年毎にケーブルTV会社等に料金を支払う契約等を行っているものとする。
【0028】
(料金を滞納等した加入者宅へサービス(信号)を一時停止する場合)
しかし、その契約後、加入者宅3のユーザがケーブルTV会社等に対し料金を滞納した場合、ケーブルTV会社等のサービス提供会社としては、サービス(信号)の提供を終了する前に、一時停止等して通知ないしは警告をする必要がある。
【0029】
そのため、サービス提供会社は、提供しているサービス(信号)を一時停止するため、まず、図10(a)に示すように構成された光ドロップケーブル2を、幅狭部24a(図1参照。)のところで切り裂いて、支持線22およびその周囲の被覆部材24からなる支持線側2aと、光ファイル心線21とテンションメンバ23,23とその周囲の被覆部材24からなる光ファイバ心線側2bとに分離する。
【0030】
次に、図10(b)に示すように支持線側2aのセンターで切断し、さらに図10(c)に示すようにそれらの両側をそれぞれ例えば3cmほど、つまり合計6cmほど切断する。
【0031】
次に、減衰機本体11の前後両側のボルト14aおよびナット14bを緩めて、その上部に例えば、2mm〜3mm程度の隙間を空け、次いで図11に示すように両側をそれぞれ例えば3cmほど切断した支持線側2aを支持線側用通し孔11aに挿入し、その後、減衰機本体11の前後両側のボルト14aおよびナット14bを締め付ける。
【0032】
このようにすると、図11に示すように、支持線側2aに掛止した本実施形態の信号減衰器11の下方に位置する光ファイバ心線側2bに余長が生じ、光ファイバ心線側2bは、信号減衰器1の下方で弛むことになる。
【0033】
尚、本実施形態の信号減衰器11を切断した支持線側2aに掛止する際、図11に示すように、減衰機本体11に複数の信号減衰用突部13が立設されたカバー12が装着されていても良いし、支持線側2aに掛止した後から減衰機本体11にカバー12を装着しても良い。
【0034】
そして、弛んだ光ファイバ心線側2bのセンターを持ち、図12および図13に示すように、丁度、光ファイバ心線側2bのセンターを持ち、カバー12に立設された7本の信号減衰用突部13の内、例えば、中央の4個目の信号減衰用突部13に来るように引っ掛け、その後、図13に示すように他の信号減衰用突部13に絡げて曲げていく。
【0035】
その際、光ファイバ心線側2b中の光ファイバ心線21が折れると、伸ばした際に信号が減衰する恐れがあるので、光ファイバ心線側2b中の光ファイバ心線21が折れないように各信号減衰用突部13に絡げて曲げていく。
【0036】
そして最後に、必要あれば、図12および図13に示すように、支持線側2aと光ファイバ心線側2bとの分離箇所をビニールテープ2c等で巻く処理を行い終了する。
【0037】
これにより、図13に示すように、光ファイバ心線21が含まれる光ファイバ心線側2bが、カバー12に立設された7本の信号減衰用突部13に絡げて曲げられ、本実施形態の場合、カバー12の長手方向中央の3本の信号減衰用突部13の所で光ファイバ心線21が大きく曲がるため、光ファイバ心線21を切断せずに光ファイバ心線21中を通る信号を減衰させて、加入者宅3へのサービス提供を中断できる。
【0038】
(サービス(信号)を一時中断していた加入者宅へサービスの提供を再開する場合)
ところで、料金を滞納等していて図13に示すように本実施形態の信号減衰器1を使用し光ファイバ心線21を大きく曲げてサービス(信号)を一時中断していた加入者宅3のユーザが滞納していた料金を納付して、事業者側がサービス提供を再開する場合には、事業者側の作業者が、図14に示すように光ファイバ心線21が含まれる光ファイバ心線側2bを信号減衰用突部13から外し出来るだけ真っ直ぐに伸ばす。
【0039】
光ファイバ心線側2bが信号減衰用突部13から外され真っ直ぐに伸ばされると、光ファイバ心線側2bに含まれる光ファイバ心線21も真っ直ぐに伸びるので、光ファイバ心線21中を通る信号が減衰されずに送受信されることになる。
【0040】
そのため、料金を滞納等により図13に示すように本実施形態の信号減衰器1を使用し光ファイバ心線21を大きく曲げてサービス(信号)を一時中断していた加入者宅3に対し、本実施形態の信号減衰器1から光ファイバ心線側2bを開放して伸ばす簡単な作業だけで、再度、サービス提供を再開することができる。
【0041】
尚、本実施形態の信号減衰器1では、複数の信号減衰用突部13が立設されたカバー12は、減衰機本体11に対し着脱可能に設けられるため、加入者宅3へのサービス(信号)の提供を再開した場合は、図14に示すように、信号減衰用突部13が立設されたカバー12の代わりに、信号減衰用突部13が設けられていないカバー12’を装着しても良い。また、光ファイバ心線側2bの弛みが気になる場合は、図示しないがビニールテープなどにより光ファイバ心線側2bを減衰機本体11やカバー12’に貼り付けても良い。
【0042】
ここで、上述のように光ドロップケーブル用の信号減衰器1を使用して光ファイバ心線21を大きく曲げた場合と、伸ばした場合の信号の減衰量は、例えば、次のようになった。
【0043】
(1)光ファイバ心線21の太さが1310μmの場合
・本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1使用時・・・−9dBm
・本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1から取外した時・・・−0dBm
【0044】
(2)光ファイバ心線21の太さが1550μmの場合
・本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1使用時・・・−30dBm
・本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1から取外した時・・・−0dBm
【0045】
従って、本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1およびそれを使用した信号減衰・再開方法によれば、支持線22に掛止される減衰機本体11に、光ファイバ心線21の中を通る信号を減衰できるように当該光ファイバ心線21を絡げて曲げる複数の信号減衰用突部13を設けたため、加入者宅3への信号の送受信を停止する場合には、減衰器本体11に装着されたカバー12に設けた複数の信号減衰用突部13に光ドロップケーブル2から切り離した光ファイバ心線側2bを絡めながら曲げることによって光ファイバ心線21の中を通る信号を減衰させて加入者宅3へのサービス(信号)の提供を停止できる。
【0046】
そして、光ドロップケーブル用の信号減衰器1を使用してサービス(信号)の提供を一時停止していた加入者宅3に対し、サービス(信号)の提供を再開する場合には、複数の信号減衰用突部13に絡めながら信号を減衰させていた光ファイル心線21を信号減衰用突部13から開放して(取外して)伸ばし、加入者宅3へのサービス(信号)の提供を再開する。
【0047】
その結果、本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1およびそれを使用した信号減衰・再開方法によれば、光ドロップケーブル2中の光ファイバ心線21を切断および再接続することなく、光ファイバ心線21を使用したサービスの契約解除および契約再開を行うことができ、コストを低減できると共に、工事品質および作業効率を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1では、複数の信号減衰用突部13は、それぞれ、市販のネジ等を使用した減衰機本体11に立設された軸部13aと、その軸部13a先端に設けられ、当該軸部13a先端から光ファイバ心線側2bが脱落しないように当該軸部13aの外径よりも大きいネジの頭部である抜止め部13bとから構成している。
【0049】
そのため、光ドロップケーブル2から切り離した光ファイバ心線側2bが支持線側2aの下方に位置するような状態で複数の信号減衰用突部13に絡げても、光ファイバ心線側2bの脱落を確実に防止でき、風や台風等により信号減衰器1や光ドロップケーブル1が揺れたりする場合でも加入者宅3へのサービス(信号)の提供停止状態を安定して維持することができる。
【0050】
また、本実施形態の光ドロップケーブル用の信号減衰器1では、減衰機本体11の光ファイバ心線側用通し孔11bの中央部11b’はそれらの両側より水平方向の幅が広く形成しているため、この信号減衰器1を別用途、例えば、光ファイバ心線21同士をジョイント金具(図示せず。)等によって接続する場合には、この幅拡になった光ファイバ心線側用通し孔11bの中央部11b’にジョイント金具(図示せず。)を挿入して接続することができる。
【0051】
尚、このような別用途での使用の場合、複数の信号減衰用突部13は使用しないので、信号減衰用突部13を省略した図14に示すようなカバー12’を使用しても良い。また、光ファイバ心線側用通し孔11bの中央部11b’を幅拡に形成することは、任意であり、このような別用途での使用も任意である。
【0052】
また、上記実施形態の説明では、図3図8(a)等に示すように、複数の信号減衰用突部13は、カバー12の底面に垂下、すなわち鉛直方向に垂らした状態で平行に立設して構成したが、本発明では、これに限らず、減衰器本体11が円筒(円柱)状であるため、図15に示すようにその中心に対して市販のネジを放射状に螺子込んで複数の信号減衰用突部13を立設するようにしても勿論良い。図15に示すように市販のネジを放射状に螺子込んで複数の信号減衰用突部13を設けた場合は、軸部のネジ山の高さ(長さ)をカバー12の厚さ以下とすれば、同一のネジを使用しても、軸部のネジ山がバー12の中に埋まり、外部に露出し難くなるので、ネジ山が露出し易い図3図8(a)等に示すように複数の信号減衰用突部13を、カバー12の底面に鉛直方向に垂らして立設する場合よりも、光ファイバ心線21等をネジ山等によって傷付けることを確実に防止できる。
【符号の説明】
【0053】
1 光ドロップケーブル用の信号減衰器
11 減衰機本体
11a 支持線側用通し孔
11b 光ファイバ心線側用通し孔
11L 左側減衰機本体
11R 右側減衰機本体
11R1,11L1 支持線側用通し溝
11R2,11L2 光ファイバ心線側用通し溝
12,12’ カバー
13 信号減衰用突部
13a 軸部
13b 抜止め部
2 光ドロップケーブル
2a 支持線側
2b 光ファイバ心線側
21 光ファイバ心線
22 支持線
23 テンションメンバ
24 被覆部材
24a 幅狭部
3 加入者宅
図1
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