特許第6086961号(P6086961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086961
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】慣性調整機能付きバランス
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/06 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   G04B17/06 A
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-163495(P2015-163495)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-45209(P2016-45209A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2015年8月21日
(31)【優先権主張番号】14182343.5
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・グラフ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・シュトランツル
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 スイス国特許出願公開第00705238(CH,A3)
【文献】 米国特許第00510202(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02395402(EP,A1)
【文献】 特開2014−160037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用の慣性調整機能付きバランス(1)であって、
当該バランス(1)のピボット軸(A)を定めるハブ(4)と、リム(10)と、及び正中面(Pm)の両側の下側平面(Pi)と上側平面(Ps)の間に延在するウェブ(11)とを有し、
前記ウェブ(11)は、前記リム(10)を前記ハブ(4)に接続する少なくとも1つのアーム(2)を有し、
前記少なくとも1つのアーム(2)には、少なくとも1つの慣性ブロック(5)を適した位置に受け保持するように構成するハウジング(3)が設けられており、
前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)は、表面(52)及び裏面(53)を有し、前記表面及び前記裏面が前記上側平面(Ps)及び前記下側平面(Pi)に実質的にあるように当該バランス(1)の前記アーム(2)と一体となっており、
前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)は、前記ハウジング(3)内にて所定の保持トルクでクランプされており、
前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)を軸方向の適した位置に保持するために、前記ハウジング(3)は、前記上側平面(Ps)及び前記下側平面(Pi)において、止め(30)を有し、そして
前記慣性調整は、前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)自体を回転することにより調整される
ことを特徴とするバランス(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)の前記表面(52)及び前記裏面(53)は、前記上側平面(Ps)及び前記下側平面(Pi)に対して0μm〜1mm凹んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載のバランス(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)は、前記ウェブの正中面(Pm)にある
ことを特徴とする請求項1に記載のバランス(1)。
【請求項4】
前記ハウジング(3)及び前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)は、互いに相補的な形である
ことを特徴とする請求項1に記載のバランス(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)は、円筒状である
ことを特徴とする請求項1に記載のバランス(1)。
【請求項6】
前記アーム(2)は、前記正中面(Pm)において延在する弾性部分(20)を有し、
この弾性部分(20)は、前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)のアセンブリ時に変形することができる
ことを特徴とする請求項1に記載のバランス(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの慣性ブロック(5)は、前記バランス(1)の前記アーム(2)の前記ハウジング(3)内に推進される
ことを特徴とする請求項1に記載のバランス(1)。
【請求項8】
前記アーム(2)及び前記リム(10)は、同じ厚みを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のバランス(1)。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載のバランス(1)を有する
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【請求項10】
請求項に記載のムーブメントを有する
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性を調整する手段を有する慣性調整機能付きバランスに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなシステムを有する計時器用ムーブメント及びこのようなムーブメントを装備する計時器に関する。
【背景技術】
【0003】
スイス特許CH705238によって、バランスの慣性及び/又は平衡を調整する、クランプされた慣性ブロックを備えたバランスが知られている。このバランスには2つのアームがあり、その各アームには、慣性ブロックのアーバーを適切な位置に受けてクランプするハウジングが設けられている。この慣性ブロックの頭は、バランスの表面に対向するように静置されている。
【0004】
上記のバランスには、いくつかの課題がある。まず、ムーブメントのアーキテクチャに依存して、慣性ブロックへのアクセスが難しく、慣性調整が複雑になりうる。このことは、調整に伴うコストを増やしてしまう。また、このようなバランスは、比較的大きな場所を占める。慣性ブロックの頭がバランスの凹部にて静置されるからである。これによって、ムーブメントの厚みが大きくなりうる。
【0005】
また、欧州特許EP1351103によって、計時器用ムーブメントのための慣性調整機能付きバランスであって、突出部分がないように慣性ブロックを受けるための凹部がリムに設けられているものが知られている。このことによってバランスの調整が促進されるが、凹部を形成するためには機械加工が必要であり、このことは、比較的困難であり、時間を消費し、高コストである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの既知の技術の様々な課題を克服することを目的とする。
【0007】
より詳細には、本発明の目的の1つは、コンパクトな計時器用ムーブメントを得ることを可能にする慣性調整機能付きバランスを提供することである。
【0008】
また、本発明の少なくとも特定の実施形態においては、実装が単純で生産が低コストであるような慣性調整機能付きバランスを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的及び他の目的は、下記によってより明白になり、本発明によって、計時器用の慣性調整機能付きバランスであって、当該バランスのピボット軸を定めるハブと、リムと、及び正中面の両側の下側平面と上側平面の間に延在するウェブとを有し、前記ウェブは、前記リムを前記ハブに接続する少なくとも1つのアームを有し、前記少なくとも1つのアームには、少なくとも1つの慣性ブロックを適した位置に受け保持するように構成するハウジングが設けられているものによって、達成される。
【0010】
本発明によると、この少なくとも1つの慣性ブロックは、表面と裏面を有し、バランスのアームと一体となっており、これによって、表面と裏面は、上側平面及び下側平面に実質的にある。
【0011】
本発明の他の有利な変種によると、
−少なくとも1つの慣性ブロックの表面及び裏面は、上側平面及び下側平面に対して0μm〜1mm凹んでいる。
−少なくとも1つの慣性ブロックの表面及び裏面は、上側平面及び下側平面に対して0μm〜0.6mm突出している。
−前記少なくとも1つの慣性ブロックは、ウェブの正中面にある。
−前記ハウジング及び前記少なくとも1つの慣性ブロックは、互いに相補的な形である。
−前記少なくとも1つの慣性ブロックは、ハウジング内にて所定の保持トルクでクランプされている。
−前記少なくとも1つの慣性ブロックは、円筒状である。
−前記アームには、正中面において延在する弾性部分があり、前記弾性部分は、前記少なくとも1つの慣性ブロックのアセンブリ時に変形することができる。
−前記ハウジングは、前記少なくとも1つの慣性ブロックを適した位置に保持するために、上側平面及び下側平面にて止まる。
−前記少なくとも1つの慣性ブロックは、上側及び下側ウィングを有し、これらは、前記少なくとも1つの慣性ブロックを適した位置に保持するために、アームの両側をそれぞれ下側平面及び上側平面にて静置されるように意図されている。
−前記少なくとも1つの慣性ブロックは、バランスアームのハウジング内に押される。
−アームとリムは、同じ厚みを有する。
【0012】
本発明は、さらに、本発明に係るバランスを有する計時器用ムーブメントに関する。
【0013】
本発明は、さらに、本発明に係る計時器用ムーブメントを有する計時器に関する。
【0014】
このようにして、本発明の主題は、上記の異なる機能的及び構造的な態様によって、比較的コンパクトな慣性調整機能付きバランスを提供する。
【0015】
単に説明用の例(これに制限されない)によって与えられる本発明の特定の実施形態についての以下の説明及び添付図面を読むことで、本発明の他の特徴及び利点をより明白に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態による本発明に係るバランスの斜視図である。
図2】第2の実施形態による本発明に係るバランスの斜視図である。
図3図1に示した第1の実施形態によるバランスの断面図である。
図4図2に示した第2の実施形態によるバランスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1、2、3及び4を参照しながら、例示的実施形態の1つに係る計時器用ムーブメントを説明する。
【0018】
したがって、本発明は、計時器用の慣性調整機能付きバランス1に関し、これは、バランス1のピボット軸Aを定めるハブ4と、リム10と、正中面Pmの両側の下側平面Piと上側平面Psの間に延在するウェブ11とを有し、ウェブ11は、リム10をハブ4に接続する少なくとも1つのアーム2を有し、前記少なくとも1つのアーム2には、少なくとも1つの慣性ブロック5を適した位置にて受け保持するように構成するハウジング3が設けられている。
【0019】
本発明によると、当該バランスは、凹部14を有する表面12と、及び裏面13とを有し、この裏面13も凹んでいてもよい。
【0020】
特定の実施形態によると、リム10の高さは、ウェブ11と同一であることができる。この場合、ケースバランス1には凹部がなく、これによって、可能性のある最もコンパクトなバランスを得ることが可能になる。
【0021】
図示のように、バランス1は、4つのアームを有し、その交点でハブ4を形成する。ハブ4には、バランススタッフ41を受けるように意図された開口40が設けられ、したがって、ウェブ11は、4つのアーム及びハブ4によって形成される。
【0022】
リム10は、環状で、アーム2のように突起部がない。これによって、バランス1は、可能なかぎりコンパクトになっている。
【0023】
図面において観察することができるように、慣性ブロック5は、円筒状であり、表面52及び裏面53を有し、本発明の1つの実施形態によると、下側及び上側ウィング54及び55を有する。
【0024】
好ましいことに、慣性ブロック5はそれぞれ、この慣性ブロック5の正中面がウェブ11の正中面Pmと一致するような動作位置においてハウジング3内でクランプされている。
【0025】
バランス1は、ハブ4、リム10、及びリム10をハブ4に接続するアーム2によって形成される剛性部分を有する。ハウジング3は、一方では、バランス1の剛性部分によって、他方では、弾性変形可能なアーム20によって限界が定められている。
【0026】
図示していない本発明の特定の実施形態によれば、バランス1のリム10は、バランス1のアーム2と同じ厚みを有し、バランス1のアーム2と合流する。このようにして、アーム2とリム10が平坦な要素を形成する。
【0027】
本発明によれば、ハウジング3は、アーム2の剛性部分と、及びアーム2の剛性部分と一体となっている弾性部分20とによって限界が定められており、この弾性部分20は、ハウジング3の限界を定めるアーム2の剛性部分の方に絶えず戻される。
【0028】
好ましいことに、ハウジング3の拡張領域において、アーム2には、弾性部分20の変形を促進するように意図された凹部21が設けられている。
【0029】
好ましい実施形態によれば、ハウジング3は、慣性ブロック5と実質的に同じ形である。この実施形態は、慣性ブロック5がバランス1にマウントされた後のバランス1の厚みを制限するので、特に有利である。
【0030】
この好ましい実施形態では、弾性部分20は、ウェブの正中面Pmにおいて延在する。凹部21があるアーム2によって、弾性部分20の変形が促進される。
【0031】
バランス1は、さらに、円筒状の調整用慣性ブロック5を有し、この慣性ブロック5には、半月形又は他のいずれの形であってもよい開口50と、及び慣性ブロック5の位置を調整する推進手段51とが設けられており、この推進手段51は、例えば、調整用切り欠き又は当業者に知られている他の手段である。
【0032】
図1及び3に示す第1の実施形態によると、慣性ブロック5に対して相補的な形のハウジング3及び弾性部分20は、上側平面Ps及び下側平面Piにおけるハウジング3の上側縁及び下側縁の近くに止め30をそれぞれ有し、これによって、慣性ブロック5の回転を可能にしつつ、正中面Pmにおけるハウジング3内の適した位置に慣性ブロック5を保持する。
【0033】
これらのハウジング3によって、バランス1のアーム2に完全に埋め込まれた慣性ブロック5を得ることが可能になる。慣性ブロック5がハウジング3内に置かれると、慣性ブロックがハウジング3内においてクランプされ、このようにして、弾性アーム20の弾性による摩擦によって適した位置に保持される。
【0034】
図2及び4に示す第2の実施形態によると、慣性ブロック5は、上側及び下側リーフを有し、これらは、アーム2の両側にて、より具体的には、下側平面Pi及び上側平面Psそれぞれにおけるハウジング3の両側にて、静置されるように意図されており、これによって、ハウジング3内で慣性ブロック5が回転することを可能にしつつ、ハウジング3内に慣性ブロック5を保持する。
【0035】
好ましいことに、慣性ブロック5は、バランス1のアーム2と一体となっている。これによって、表面と裏面はそれぞれ、上側平面Ps及び下側平面Pi上に実質的にある。「実質的に」とは、第1の実施形態において、表面52及び裏面53が、上側平面Ps及び下側平面Piに対して0μm〜1mm凹んでおり、第2の実施形態において、慣性ブロック5の上側及び下側ウィングが、上側平面Ps及び下側平面Piに対して0μm〜0.6mm突出していることを意味する。このような構成によって、空間的な制約が少なくなった慣性調整機能付きバランスを得ることが可能になる。
【0036】
この本発明に係るバランス1によって、バランスのアセンブリの方向にかかわらず、特に、バランス1のアーム2に慣性ブロック5をマウントすることが可能になる。一般的には、バランス1がムーブメント内でマウントされた後に、慣性ブロック5へのアクセスの容易性に依存して、バランス1に対して慣性ブロック5をどの向きにしてアセンブリするかどうかを当業者が決める。
【0037】
本発明は、さらに、本発明に係るバランスを装備する計時器用ムーブメント及び計時器に関する。
【0038】
これらの異なる本発明の態様によって、計時器用ムーブメントの厚みを減らし、生産が低コストであるコンパクトなバランスを得ることができる。
【0039】
もちろん、本発明は、図示した例に制限されず、当業者が思い描くことができる様々な変種及び改変が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 バランス
10 リム
11 ウェブ
12 バランスの表面
13 バランスの裏面
14 凹部
2 アーム
20 弾性部分
21 凹部
3 ハウジング
30 止め
4 ハブ
40 開口
41 バランススタッフ
5 慣性ブロック
50 開口
51 駆動手段
52 慣性ブロックの表面
53 慣性ブロックの裏面
54 慣性ブロックの上側ウィング
55 慣性ブロックの下側ウィング
A ピボット軸
Pm 正中面
Pi 下側平面
Ps 上側平面
図1
図2
図3
図4